【016】生まれゆく君へ 作:hokuto ☆7 ☆☆10 ☆☆☆13 =66 ☆☆☆ 「僕」の優しい語り口と海の描写がたまりません。大好きです。 と ☆☆☆ テーマはタマゴと思われる。誤字脱字誤用及び話の流れに不自然な点は見当たらなかった(5/14時点)。また、テーマのタマゴは作品全般でしっかり登場していた。以上の点から☆☆☆とした。これは評価と関係ないが、生まれるポケモンが最後になるまでわからなかった。描写から察するに亀なのはわかったものの、プロトーガと言われるまではゼニガメと判断がつきかねた。ポケモン世界にもこんなことはあるのだろうとしみじみと感じた。 あつあつおでん ☆☆☆ 何なんですかこの神秘的で感動的な作品!『タマゴの殻視点』も、読んでいて新鮮でした。シーン一つ一つの描写がとても丁寧で、アバゴーラのお母さんが美しい海を泳ぎまわる光景が、目に浮かびます。三点じゃ足りない…! ☆ 親のエピソードを延々と語っているので、どこに共感すればいいのか、いまいち分かりづらかった。親である前にポケモンであった親と自分たちの関係性が淡白で、どう反応すれば困ったという印象があった。個人的には、親視点から書いてみるとすっきりするのではないかと感じた。 西条流月 ☆ お題:タマゴ(物理的、主人公) 正直、初め主人公が誰だったのかよくわからなかったのですが、タマゴが主人公だったのですね、納得。それにしてもよく考えるタマゴだ(笑)ただ、母親がどんな想いだったのかがよくわからないかなと感じました。主人公たちのことを望まない子だと腹を傷つけていましたが、文章読んだ感じ主人公たちを産み落とすまでにも、何度も出産をくりかえしていたんじゃないかという印象があります。母になることを何度も経験しているだろうに、まだこの葛藤なのかと。ちょっとピンときませんでした。 レイニー ☆☆☆ グッと来た文【それは痛みの伴う作業だ。辛かったに違いない。ましてや、望まない子供だったのかもしれない。それでも――僕の番が来て、僕が彼女の腹から滑り出た瞬間、ちらりと見えた彼女の顔は。命を繋ぐ使命に燃える、ひとりの女の顔だった。】 タマゴには人格があって、生まれゆく子に話を聞かせてあげる……その温かい世界観も印象的でしたし、タマゴさんが聞かせてくれたお母さんプロトーガの話に胸を打たれました。お母さんプロトーガの苦悩な日々、もしもあの事件が起こってなかったら……と思うと胸が苦しくなりました。自分の卵をいくつか潰してしまうところでは更に胸が詰まりました。そして、生まれゆくプロトーガ君がこれから自分の目で世界をどんな風に見ていくのか……ドキドキしました。 巳佑 ☆☆☆ 海の描写がとても好きでした。「僕」の語る【青くて、深くて、途方もなく広い世界】の情景がありありと目前に浮かんできて、そこをぼんやり漂いながら、あるいは潮の流れに乗りながら、自由自在に羽ばたくように泳ぎ回る……。【どうだい、わくわくしてきただろう?】がまさにぴったりの場面でした。前半で美しい自由な世界への憧れをかきたてながら、後半では世界に生まれ出でる過酷さを説き。不安がる「君」に、【僕は心から信じてる。そして確信してる。君ならきっと、うまくやっていける。だから自信を持って。自分で可能性を潰さないで。】と語りかける。君、の誕生は自分の死であるというのに、心よりの祝福でもって小さな命を送り出すタマゴの殻に、言い知れぬ愛情を感じました。語り手がタマゴそのものでなく、殻であるというところが非常に面白かったのですが、もう一つ特筆すべきは登場するキャラクター達の「人間臭さ」かと。産卵や孵化の描写は動物的であり、心理描写は人間的であり。その見事な融合に感嘆するばかりです。すみません、もっと沢山述べたいことはあるのですが、語彙不足により表現できませんでした。とりとめの無い感想で申し訳ないです。とにかく、今回の応募作の中で五指に入る好き作品です、とだけ言わせていただきます。 ラクダ ☆ これはタマゴが中にいるプロトーガに語りかけるお話でしょうか? タマゴを語り部にして、誕生までのエピソードやらを語り聞かせ、最後まで主人公であろうプロトーガは沈黙のまま。すごく斬新な発想だと思いました。しかし好みにもよるのでしょうが、一本調子で物語に大きな起伏もないまま終わってしまったような気がします。 鶏 ☆☆ 「僕」が誰なのかと思ったら卵の殻だったとは驚きました。語りもとてもうまくてぐっときます。 ☆☆ 命とは何か。生きていくことの心得。アクアジェットで生きてきたアバゴーラの子。これはタマゴの視点ですかね。説教くさいですが、生きていく上での知恵を与えるには色々言いたいこともあるでしょう。ただ、それにしたって言いたいことがあります。くどい!5分で用事が終わって電話を切ろうとしたところ、長々とムダ話を聞かされて通話時間が1時間を超えてしまったような、そんなくどさ。題材は確かに素敵ですが、いかんせんバランスを欠いてしまっているような気がしてなりません。この半分の分量で書いて欲しかったなぁと思います。 乃響じゅん。 ☆☆☆ 語り手は卵の殻?! 着想がユニーク。非常に勢いを感じる作品。 >見上げると、お天道さまが波に取られてちらちら舞って、一面ベールの輝きに包まれている。「波に取られる」とか「ベールの輝き」とか、一つ一つの言葉を取り出すと意味が通らないのに、作者が伝えたい情景(と思われるもの)はなんとなくイメージすることができる。文章のあちこちに気になる点はあるが、もっと意味が通るように書きなおすことはできても、それだと味わいが薄れてしまいそうな気もする。不思議な文章。 >叩かれども叩かれども魚影は尻尾を現さない。つまり魚群がいつまでたっても途切れない、ということを言いたいんだと思うけど、この表現は直した方がいいような; >なんたって日にそんな顔をしているんだよ「なんだって、こんな日に……」か?>これから外へ駆り出していくわけだけれど「駆る」は他動詞。自分が出て行くのだから「駆け出す」「繰り出す」(大勢がそろって勢いよく出かける)か。 サトチ ☆☆☆ 海亀さんのタマゴの話。 ……これも、大好きな作品の一つです。読み始めて先ず第一の印象は、兎に角文字が団子になっている様な感じがしたこと!(笑) 特に、お話の中ほどが顕著ですね。短い文が折り重なるように連なっており、まさに作中に出てきたコイキングやバスラオの大群の様に、圧倒的な質量を持って攻め寄せてくる。 当初は何となく、読み難そうな文体だなぁと、心の中で溜息を吐いておりました。しかし、そんな事は無かった。その第一印象は、文字通り泡沫の如く、あっという間に消えてなくなりました。 ……面白い文章には、文字の密度なんて関係ありませんものね!当初は鼻から大きく息を吐き、片頬をやや突っ張り気味に読み始めたのも束の間の事。 視点を変えシーンを変えて、次々と描写されて行く美しい海の風景に、明け方まで起きっ放しでろくに回っていなかった自分の脳味噌は、まだ半分も読み進まない内に、フル稼働状態にまで持って行かれてしまいました。 ……いやはや、面白かった!(笑)特に好きなのは、深夜の海原にポツリと浮かんで、夜空の星々を眺めるシーン。 豊富で多彩な情景描写の中でも、主人公の語り口も相まって、最も鮮やかにその光景が、脳裏に浮かび上がってきた一節です。また、所々で触れられている食物連鎖や厳しい生存競争も、生まれ出て行く命を際立たせるのに、非常に大きな効果を齎しています。 作者の方が、こう言う生き物に関するドキュメンタリー番組を見た事があるのは、間違いない気がするなぁ(笑)主人公たるタマゴが、生まれて来るプロトーガを勇気付ける言葉も、幾度も繰り返される内に自然と染み込んで来るものがあって、何とも言えなかった。 メインとなるポケモンが地味にマイナーな連中で占められているのも、個人的には嬉しかった点。 ある意味では、些かツボを突かれ過ぎた気もする(苦笑)欠点としては、一気呵成に書き上げられたのかは分かりませんが、意外に誤字や使用語句の乱れが多いこと。 ……出来れば、もうちょっと丁寧に推敲をば(汗)良作であればあるほど、誤字・脱字の類で評価を落とすのは勿体無いですので…… クーウィ ☆☆☆ な、何をいってるかよくわからんと思うがとにかくきいてくれ。タマゴをお題にして小説募集したんだわ。そしたら来たよタマゴの小説。まさしくタマゴの小説だったよ。とにかくひたすらストレートにタマゴだった。その名もタマゴ一人称。しょっぱなから飛ばしまくるタマゴ、喋りまくるタマゴ。まさかここまで素直なのがくると思わなかったよ私。素直すぎて逆に新鮮だった。ちょっとこれ私には書ける気がしないわ。これはもうこの形式で書こう、としたってところから評価したい。<ここから感想>「やあ、目を覚ませ。もうじき夜明けのときだ。」冒頭の入り方がとにかくすばらしいと思った。どうせ、君はボクのことを忘れるとしながらも、君に対する態度はどこまでも前向きだ。それは保育器としての本能でもあるのだけど、こう生命全体を見つめている大きい存在のようなものが一時的にタマゴを介して語りかけているのかなぁという感想をいだいた。 お題:タマゴ タグ:一人称、タマゴ一人称、プロトーガ、誕生 地方:不明 死亡:あり? No.017 ☆☆☆ <作品情報> テーマ種別 →タマゴ 作品タグ →【物理的なタマゴ】【タマゴ一人称】【生命】【美しい光景】 ポケットモンスターシリーズの二次創作としての意義 →大いにある。問題ない。 テーマの消化度合い →主人公がタマゴ。発想の勝利。 <講評> 今回のコンテストの極めて特異な点として、「タマゴ自体が主人公になった作品」が存在していることが挙げられます。それも二つ。とんでもないコンテストです、ええ。それはともかく、「タマゴを主人公とした」という着眼点もさることながら、そのインパクトだけに頼らず、緻密に物語を組み立てているのが大変素晴らしいと感じました。海の中で生きる種々のポケモンたちの様子が事細かに描かれていて、美しい光景が瞼の裏に浮かぶようです。海の中に飲み込まれる心地でした。 本当に上手い作品を前にすると言葉が出てこない性質で、これ以上何も言うことができません。文句の付け所のない、素晴らしい作品だと思います。僭越ながら、今後の更なる活躍に期待しております。 586 ☆☆ イイネ! まさにこれこそ擬人化! タマゴの殻っていう目線、着眼点は素晴らしい。後に030と被りますが投稿順も加味しなくてもこちらが良かったと思います。 いやあその発想はなかった。最初ずっと「僕」は誰なのかなって思ってたんですが最後の最後で謎が解けました。 ただ、出来事がほとんど何も起きてなくてずっと「僕」の一人語りでしたので、どうもくどい印象を受けました。ごっそり削ろうとすれば削れる。 それでも途中で投げようとならない描写の丁寧さは好評価。それによく取材出来てると思います。お母さんマジビッチ。 根本的な質問なんですがお腹にいるはずの殻はなぜ外の景色が見えたのでしょう。……いや、流石に野暮ですね。 でりでり ☆☆☆ 一読目:プロトーガあぁぁぁ!俺のドツボです。なるほど、ひれやくちばしのくだりに納得。ラストですげぇ感動した。ハッピーバースデーのくだりでこれ大好きになった。うわーいごちそうさま。二読目:一読目はフィーバーしたけどじっくり読めば読むほど良いなぁこれ。流し読んでもゆっくり読んでも楽しめる。ただ、化石だよね?プロトーガ。カブトプスもそうだけど。ちょっとそこ考える。三から八読目:やっぱりこれ好きだ。うん。九から十読目:結論、☆3つ。こればっかりは個人的なのに走らせてもらう。ありがとう、めちゃくちゃおいしかったです。 音色 ☆☆ いやはや、タマゴに語らせるとは思わなかった(笑)。 タイトルにある「生まれゆく」というのは、こちらの世界へ「ゆく」ということであり、これは洋の東西を問わず宗教的には神仏の領域である。神秘性という点からも、ただのモノと扱われがちなタマゴが語るという設定は活きたと思う。 ウミガメの産卵に見立てている点は、よくドキュメンタリー番組などで見るけれど、上手くテキストに起こせていると思う。 渡邉健太 |