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宿命と呼ぶにふさわしい対戦。この時を俺はいつの間にか待ち望んでいたらしい。
奥村翔、あいつに負けてからというものの負けによる虚しさとは違う、俺にとってプラスになる『何か』が芽生えた気がする。
その『何か』を確かめる為に、今一度手加減のない全力の戦いを望む。迷いは無い、ただ真っ直ぐに行くだけだ。
『決勝戦を始めます。選手は試合会場七番にお集まりください』
ラストコール。時刻は既に午後の三時半を廻り、初めはたくさんいた人も自分の対戦が終わって興味が失せたという人が散らばり会場の人口が減ってきている。しかしギャラリーはこれだけいれば十分だ。
そして最後の最後に今まで共に闘ってきた三十枚のカードを見つめる。お前たちは非常に頑張ってきてくれた。お陰で俺はこうして翔と戦える。だから、次の一戦は負けるわけには行かない。
ステージに立ち、向かい合う。翔は特に負けられない戦いなのだというのに、普段と変わらぬ満面の笑みでこう言った。
「さあ、楽しい勝負にしようぜ!」
「望むところだ」
ガラになく胸が早く鼓動を刻む。そのせいかデッキを切る手がおぼつかない。ようやっとデッキを切り終わり、カードを引く。そしてサイドを三枚伏せてポケモンのカードを伏せる。
互いに準備が出来、ポケモンをリバースさせる。俺の最初のポケモンはフカマル60/60。翔のバトルポケモンはノコッチ60/60で、ベンチにヒコザル50/50。
「さあいくぜ、風見。俺が先攻だ! 手札の炎エネルギーをヒコザルにつけてノコッチの蛇取りを発動。その効果で山札からカードを一枚引いてターンエンド」
「遠慮はせん。俺のターンだ。フカマルに炎エネルギーをつける。続いてサポーター発動、スージーの抽選。その効果によって手札のボーマンダと水エネルギーをトラッシュし、山札からカードを四枚引く。更に、トレーナーカードのゴージャスボールを発動して山札からガブリアスを手札に加える。そこで不思議なアメを使い、フカマルをガブリアス(130/130)に進化させる!」
「い、一ターン目からガブリアス!?」
これでこのターンで一気にデッキが半分を切った。手札とトラッシュは潤ったものの、ガブリアスはエネルギーが足りずノコッチにダメージを与えるワザが使えないのでここで自分の番を終わらせる。
「俺のターン。まずはアチャモ(60/60)を場に出す。そして俺もゴージャスボールを発動だ。山札からゴウカザルを手札に加え、もうひとつトレーナーカード、不思議なアメ! その効果でヒコザルをゴウカザルへ進化させる!」
ベンチのヒコザルが光の柱に包まれる。そしてゴウカザル110/110へとフォルムを変える。ゴウカザルの雄たけびと共に、ゴウカザルを包んでいた光の柱は拡散しながら消えていく。
「まだだぜ。更にアチャモに炎エネルギーをつけ、ポケモン入れ替えを発動。そしてノコッチとベンチのゴウカザルをバトル場へ出す!」
先に仕掛けてくるのは翔からだった。ノコッチを引っ込めてゴウカザルから攻勢に入る。早速来たか。
「ゴウカザルで攻撃、ファイヤーラッシュ! このワザでゴウカザルの炎エネルギーをトラッシュしてコイントスを行い、オモテの数かける80ダメージを与える!」
序盤からいきなりの大技にたじろぐ。これが決まればガブリアスのHPが半分以上持って行かれてしまう。
それだけは避けたい。……と思っていると、願いが通じたのかウラ。攻撃は不発に終わった。
「調子があまりよろしくないようだな」
「これで勝負が決まるのもつまらないだろ?」
「ふっ、俺のターン。ガブリアスに水エネルギーをつけさせ、ガブリアスでゴウカザルを攻撃、ガードクロー!」
ガブリアスがゴウカザル70/110に右の翼を叩きつける。攻撃後、自分の場に戻ったガブリアスは両手を自分の前でクロスさせた。ガードクローは相手に40ダメージ与えるだけではなく、次の番に相手から受けるダメージを20だけ軽減させる効果を持つ。攻めと守りを文字通り一体化させたワザだ。
もし次の番にファイヤーラッシュを食らってもダメージは60だけでHPは70も残る。そして俺の手札には水エネルギーがあるので次の番にガブリアスのもう一つのワザ、スピードインパクトを使って確実にとどめを刺せる。手はずに間違いは無い。
「俺のターンだ。アチャモをワカシャモ(80/80)に進化させ、炎エネルギーをゴウカザルにつける」
これで翔は手札を使い切った。捨て身の戦法、とでも言うべきか。
「ゴウカザルでもう一度ファイヤーラッシュ! ゴウカザルについている炎エネルギーを一枚トラッシュする。……よし、今度はオモテだ!」
「しかしガードクローの効果によってガブリアスが受けるダメージは60となる!」
ゴウカザルの炎の一撃を、ガブリアスはがっちりと両手で受け止める。それでもガブリアス70/130は圧されてダメージは受けたが想定通り次のターンにゴウカザルを撃破できる。問題ない。
「俺のターン。水エネルギーをガブリアスにつけて、トレーナー、ミステリアスパールを発動。発動後にサイドカードを確認し、その中のポケモンのカードとミステリアスパールを入れ替える。俺はタツベイを手札に加え、ミステリアスパールを表向きのままサイドに置く。そしてタツベイ(50/50)をベンチに出す」
今の手札はまだ使えそうなカードがない。ここは後のために温存して今は攻めるのみ。
「ガブリアスでゴウカザルに攻撃、スピードインパクト! このワザのダメージは、相手のエネルギーかける20ダメージぶん、小さくなる。ゴウカザルにはエネルギーがない、よって120ダメージだ!」
ガブリアスは翼を頭の前でクロスさせると、そのままジェット機のように加速してゴウカザルに突っ込んだ。派手な爆発音とボールのように吹き飛ぶゴウカザル0/110が印象的だ。まだまだ余裕があると思っているかもしれないが、120を叩き出せば並大抵のポケモンは抗えない。それはゴウカザルとて例外ではない。
「ゴウカザルはこれで気絶だ。サイドカードを一枚とる」
俺はミステリアスパールではないサイドカードを一枚手札に加える。今手札に入ったのは不思議なアメだ。もちろんミステリアスパールの効果でめくったときに確認していたので予定調和だ。ミステリアスパールではトレーナーカードを手札に加えれないので、このタイミングで取らないと次のターン使えない。
そう、今の俺の手札にはボーマンダもいる。次のターンにベンチのタツベイを一気にボーマンダに進化させ、ゆっくりベンチ育成させる。畳み掛けるように。
ふとモニターを観ると、次の翔のバトルポケモンは予想外にもノコッチだった。ノコッチはエネルギーなしでワザを使えるが、デッキからカードを一枚引く「蛇取り」と、相手に10ダメージだけ与えてベンチポケモンと入れ替わる「噛んで引っ込む」のワザしかなくノコッチ自身のHPも60。確実に次のターン、ガブリアスの餌食となる。そうとわかっていて何故ノコッチだ。飛んで火にいる夏の虫、と言いたいところだが翔がこうする以上何かあるのかもしれない。
「見てろよ風見! ここからが俺のタクティクスだ!」
翔「今日のキーカードはスージーの抽選!
手札のカードをトラッシュさせながら、
一気に複数ドローだ!」
スージーの抽選 サポーター (DP4)
自分の手札を2枚までトラッシュ。
1枚トラッシュしたなら、自分の山札からカードを3枚引く。2枚トラッシュしたなら、4枚引く。
サポータは、自分の番に1回だけ使える。使ったら、自分のバトル場の横におき、自分の番の終わりにトラッシュ。
「出番よギャラドス、実力を見せつけなさい」
イブキが投てきした2個目のボールから出てきたのは、ハクリューと似たような体型のポケモンである。ただし、太さ長さは段違い。鋭い目つきでイーブイを威嚇している。
「2匹目はギャラドスか。さすがにこいつは知ってるぞ」
こう呟きながらもダルマは図鑑に目を通す。ギャラドスは、有名なコイキングの進化形である。威嚇により物理攻撃に強いため耐久型もできるが、メジャーなのは竜の舞いを使ったエース型だ。また、豊富な技を活かして特殊型に育てる者もいる。様々な戦い方ができるので見極めが重要だ。
「イーブイはちょっとキツいか。よし、電光石火で削れ!」
勝負の第2幕はイーブイの急加速から始まった。イーブイはみるみるうちに距離を縮め、ギャラドスにぶつかる。しかし、ぶつかったイーブイの方が空中に投げ出されてしまった。
「甘いわ、たきのぼりよ」
この隙を逃すイブキではない。ギャラドスはイーブイに頭でどついた。イーブイはダルマの手元まで吹き飛ばされ、ダルマは慌ててキャッチする。
「ありゃりゃ、さすがにやられたか。しかしかなり硬いな、あのギャラドス」
「フン、当然ね。フスベジムは完璧をもってよしとする。このくらいの攻撃ではびくともしないわ」
「なるほど。じゃあ俺の2番手はこいつだ!」
ダルマは次のボールを投げた。出てきたのはスピアーである。今日も両腕の針は輝いている。
「スピアーとは、私も舐められたものね。ギャラドス、竜の舞い」
「ならばこっちはにほんばれだ。たいよおっ!」
先に動いたのはギャラドスだ。ギャラドスは激しい戦いの踊りを始めた。一方、スピアーは両腕を天に伸ばして唸り声をあげる。すると、大空を隠す雲という雲がどこかへ消えてしまった。フスベジムには屋根がないので、直射日光がさんさんと降り注ぐ。端から見れば何かの儀式と思われそうだ。
「にほんばれですって……。仕方ないわね、じしんで沈めなさい!」
ギャラドスは自らの胴を地面に叩きつけた。その直後、大地の咆哮がスピアーに襲いかかる。なんとかしのいだスピアーは背中の羽をはばたかせた。
「危ない危ない、よく耐えた。よし、逆転の切り札、追い風を吹かせろ!」
スピアーは紅の瞳から閃光を放つ。その瞬間、スピアーの背後から台風を彷彿とさせる風が流れてきた。スピアーはすぐさま追い風に乗る。
「くらえ、がむしゃら攻撃!」
「くっ、速い……!」
スピアーはギャラドスにしがみつくと、反撃を受ける前にあちこちを針で刺したおした。ギャラドスは苦痛に表情が歪むものの、辛うじて返しのたきのぼりをヒットさせる。スピアーは崩れ落ちた。
「スピアー戦闘不能、ギャラドスの勝ち!」
「……他愛ないわね」
ダルマはスピアーをボールに回収した。そして最後のボールを手に取る。
「それはどうですかね。スピアーが整えた場で、俺の切り札が火を吹きますよ。ヒマナッツ!」
ダルマは切り札の入ったボールを送り出した。中から出てきた切り札は、今日が初陣のヒマナッツである。ヒマナッツは何か妙な眼鏡をかけており、体中から煙が上がっている。
「あら、これが切り札かしら? ……ギャラドス、たきのぼ……」
「ソーラービーム!」
ヒマナッツは機先を制した。頭の双葉から大量の光を集め、その口から集約した光線を発射した。光線はギャラドスを飲み込み、丸焼きにしてしまった。
「……はっ、ギャラドス戦闘不能、ヒマナッツの勝ち!」
「な、なんなの今のパワーは……」
イブキは床を蹴りながらギャラドスをボールに収めた。ダルマは不適な笑みを浮かべる。
「これがサンパワーの力か。勉強の甲斐はあったみたいだな」
「……ここまで追い詰められたのはいつ以来かしら。これで全てを決めるわ、キングドラ!」
イブキは3匹目のボールを場に出した。登場するのは口の長いポケモンである。
「どれどれ、キングドラか」
ダルマは図鑑のキングドラのページをチェックした。キングドラはシードラの進化形で、ドラゴンタイプでありながら氷タイプを弱点としない。特性のすいすいを活用して雨を戦術に取り込む者もいるという。
「キングドラ、格の違いを教えてあげるわよ。竜星群!」
イブキの号令の下、キングドラは身震いした。すると、なんということだ。上空から燃え上がる岩石が無数に飛んできたではないか。イブキは勝利を確信したのか、ガッツポーズをとる。
「……俺達は負けない。ヒマナッツ、飛び上がれ!」
ここでヒマナッツは、双葉を上下に動かした。追い風の効果もあり、ヒマナッツ徐々に舞い上がっていく。しまいには太陽に重なってしまった。
「そのままソーラービーム発射!」
ヒマナッツは今一度、極太のビームを撃った。地上での攻撃とは異なり、空中での攻撃において反動が如実に現れる。ヒマナッツは顔面を振り回された。
「あらあら、そんなに狙いが逸れていては……」
「いや、これこそが作戦だ!」
ダルマは胸を張って答えた。ヒマナッツのソーラービームは四方八方乱射されているが、それにより流星群が次々に塵と化していく。キングドラも良く避けていたのだが、不運にも流れ弾が直撃。たちまち光に包まれ、そのまま壁に激突した。
「……キングドラ戦闘不能、ヒマナッツの勝ち! よって勝者はダルマだ!」
「そ……そんな! この私が、こんな素人に!」
ワタルのジャッジが下った瞬間、イブキは身動きが取れなかった。それを横目にダルマはヒマナッツのもとに駆け寄る。
「すごいぞヒマナッツ、あそこまで強烈だとは思わなかったよ」
ダルマはヒマナッツの頭を撫でた。ヒマナッツは気持ちよさそうに喉を鳴らす。
「いやあ、見事な作戦勝ちだったよダルマ君」
「ワタルさん、本当ですか?」
「ああ。スピアーのサポートからヒマナッツの火力を引き出す……ポケモンバトルが1匹だけのものじゃないことを改めて実感したよ。さて……」
ワタルはイブキの方を向き、満足げな顔で再び頼み込んだ。
「イブキ、これでわかったかな。約束だから訓練手伝ってくれよ。それと、バッジもね」
「うるさい、わかってるわよ」
イブキはダルマに歩み寄った。途中でワタルの足を全力で踏みつけたのは内緒である。
「これがフスベジム勝利の証、ライジングバッジよ。さっさと受け取りなさい」
「ありがとうございます。よーし、ライジングバッジゲットだぜ!」
イブキからバッジを受け取ったダルマは、それを天に掲げるのであった。
・次回予告
がらん堂との戦いに備え、1人鍛練をするダルマ。そこに父が現れ、2人で話を始めたのだが……。次回、第45話「技の継承」。ダルマの明日はどっちだっ。
・あつあ通信vol.25
かなりカオスな勝負になりましたが、ようやくダルマの戦い方が提示できたと思います。ちなみに、全員6Vレベル40前提ですが、ダメージ計算はなんとか辻褄が合います。意地っ張り全振りハクリューの逆鱗でイーブイ乱数1発。返しの適応力じたばたで確定1発。無振りギャラドスの竜舞地震をHP全振りスピアーは高乱数で耐え、追い風で抜けます。ひかえめ素早全振りヒマナッツは無振り竜舞ギャラと無補正全振りキングドラを抜き去り、サンパワー眼鏡ソーラービームで無振りうっかりやキングドラを乱数1発で葬れます。うっかりやだと特防が下がるとはいえ、種族値オール30のヒマナッツがキングドラを一撃にできるとは……太陽神となる時が楽しみです。
あつあ通信vol.25、編者あつあつおでん
「ジョバンニさんジョバンニさん」
「どうしましたかーダルマ君、お金なら別の人に借りてくださーい」
発電所の攻防から一夜明け、ダルマ達はフスベの町中を歩いていた。山の上にあるフスベシティは空気が薄いのだが、5日間もかけて山越えをした彼らには大した問題ではなさそうだ。ドーゲンとボルトに至っては呑気に鼻歌オーケストラをやっている。
「いやいや違いますよ。がらん堂の技術についてです」
「ほー、あなたも科学に興味がありますかー。なんでも聞いてくださーい」
「では遠慮なく。人の転送と怪電波なんて、誰が開発したんでしょうか?」
「ふむふむ、なーるほど」
ジョバンニが何度もうなずく。はっきりしないジョバンニに、ダルマは詰め寄る。
「正確に答えてください。これらの技術は表立ってできるものではありません。その道の専門家が長い年月を費やさなければ実現は難しいでしょう。あなたは昔科学者だったそうですが、このような分野の研究者に心当たりはありませんか?」
「……そうですねー。私も年ですから、少し記憶が曖昧なのでーす」
「じょ、ジョバンニさんっていくつなんですか?」
「今年で35になりまーす」
「十分若いじゃないですか!」
「ふふっ、あなたも年を取ればわかりまーす」
「な、なんだか地味に突き刺さる台詞だ……」
「とにかく、キキョウに戻ったら自宅の資料を調べてみましょう。それまでは待つことでーす。焦らない焦らない」
「は、はあ。ではお願いしますね」
ダルマは複雑な面持ちで歩き続けた。対してジョバンニは軽快に跳ね歩く。
「お、やっと見えてきたな」
やがて、とある建物が視界に入ってきた。ワタルは額の汗を拭いながらそれを指差す。
「あれはフスベジム。僕も昔修行した場所だけど、皆元気かなあ。がらん堂の被害に遭ってなければ良いけど」
「ほう、人をも巻き込むはかいこうせんはそこで身につけたのか。中々面白そうだな、がはははは」
ドーゲンの言葉に唇を震えさせながらも、ワタルは歩を進めた。そして、ようやく入り口にまで辿り着いた。古ぼけた外装に柱の曲がったポスト、立て札にはかすれた字で「フスベシティジム。ジムリーダー」とまでは書かれている。だが、肝心要のリーダーの名前がきれいに消えている。
「懐かしいな、この感じ。ただいまー」
ワタルは引き戸を引いた。滑りが悪いものの無事に開き、一同は中に入り込む。驚くべきことに、屋根がない。どうやら外から確認できたのははりぼてのようである。ジム自体は学校のグランド程度の広さがあるので、大型のポケモンでも縦横無尽に戦える。
「……誰かと思えば、負け犬に成り下がったチャンピオン御一行じゃないの」
「おいおい、久々の再開の第一声がそれはないだろイブキ」
そこに、1人の女性がいた。ワタルに苦笑いされたイブキと呼ばれる女性は、まずワタル同様マントを羽織っている。肘までの長い手袋をはめ、ブーツを履き、膝すれすれのスカートを着用。お互い似たり寄ったりなセンスを持ち合わせているみたいだ。
「皆さん、こちらはフスベジムリーダーのイブキ、僕の妹弟子です。気難しいやつですが、どうかいたっ!」
「……余計なことは言わなくてよろしい」
イブキはさりげなく左腕でワタルの首の後ろをチョップした。ワタルはすぐさまその部分をもみほぐす。
「それで? 大挙してジムに押しかけた理由は何かしら」
「ああ、まずは無事か確かめに。もう1つは訓練に付き合ってほしい」
「なるほどね。……私達は無事よ。完璧をよしとするフスベジムが雑兵ごときに遅れをとることなどあり得ないわ」
イブキは胸を張って答えた。ボルトは彼女のボディラインに釘付けだが、彼女の一睨みで真顔に戻る。
「最初に言っておくけど、私は弱いトレーナーと訓練する気なんてさらさらない。だからまずは手頃な相手と勝負させてもらうわ。そうね、そこの冴えない男がおあつらえ向きかしらね」
イブキは人差し指で実験台を指し示した。ジョバンニの隣で眠そうにあくびをするダルマが犠牲者である。
「お、俺ですか?」
「そうよ。神聖なジムであくびをするその無神経さ、私が叩き潰してあげるわ。感謝することね」
「使用ポケモンは3匹ずつ。その他は公式ルールに則ります。では、始め!」
ダルマとイブキは対面し、審判をワタルが務める。他のギャラリーは遠巻きに眺めている。そのような状況で、フスベジム戦は幕を開けた。
「初陣だ、イーブイ!」
「ハクリュー、まずは小手調べよ」
ダルマの先頭はイーブイ、イブキのトップはハクリューだ。ダルマは早速図鑑に目を通す。
「なになに、ハクリューはドラゴンタイプのポケモンで、耐性に優れている。弱点は氷かドラゴンのみにもかかわらず水、草、炎、電気に抵抗を持つ。ただし耐久は平凡なのでそこまで頑丈ではない、か」
ダルマはハクリューを見やった。群青の背中に純白の腹、首根っこの玉に頭部の羽が目立つ。一方イーブイは、ハーネス代わりか赤いひものようなものを胴に巻き付けている。
「先手はいただくわ、げきりん!」
先に動いたのはイブキのハクリューだ。体から湯気を放ちながら尻尾でイーブイを打ちのめしまくった。ところがイーブイは避けようともせずに攻撃を受けた。
「へへ、たった1回の攻撃じゃあイーブイは倒せないよ。じたばただ!」
ハクリューの攻撃が一段落するとイーブイの反撃が始まった。先程の手痛い打撃をものともせずハクリューの懐に飛び込むと、力一杯暴れたのである。引っ掻き傷やはたかれた跡で彩られたハクリューは、たまらず地に伏せてしまった。
「ハクリュー戦闘不能、イーブイの勝ち!」
「くっ、今の攻撃……あんな小柄のポケモンが出せる力じゃないわ。一体何が起こったというの?」
イブキは目の前の出来事を信じがたいのか、拳を握り締めながらハクリューをボールに戻した。
「あれはおそらくダルマ様の得意技、気合いのタスキとじたばたの組み合わせですね。ですが、それだけでハクリューを一撃で倒せるでしょうか?」
「なんだお嬢ちゃん、適応力を知らんのか?」
外野では、戦況のチェックに余念がないユミにドーゲンが補足をしている。
「適応力は、自分と同じタイプの技を使うと威力が上がるという代物でな。タスキとじたばたと組み合わせればイーブイの進化形より高い決定力をはじき出せるというカラクリよ」
「なるほど。さすがドーゲン様、道具職人はバトルに関する造詣が深いですわ」
「なに、これくらいは基本よ。俺もダルマのように旅をしていたもんでね。さて、そろそろ次の勝負が始まるぞ」
ドーゲンは自信満々な表情でイブキに注目した。彼女は既に2匹目のポケモンを用意している。
「フン、最後に勝つのはこの私よ。この子でそれを完璧に証明してみせるわ」
・次回予告
イブキのポケモンはどれもこれも鍛え上げられており、正攻法では勝ち目がない。ダルマはあらゆる技を活かして戦わざるを得ない状況に。そして、遂にとんでもない戦力が目覚める。次回、第44話「フスベジム後編、空飛ぶ砲台」。ダルマの明日はどっちだっ。
・あつあ通信vol.24
ダルマ、ゴロウ、ユミの3人の中で、今1番強いのは誰なんでしょうか。個人的にはダルマですが、四天王のポケモンを倒すゴロウも有力。もっとも、最終的な面子はどう考えてもユミが優勢(夢イーブイ、フカマル、ウパーなどの実力者が数多く在籍)。まあ、主人公が誰かわからないのでなんとも言えないですね、今は。
あつあ通信vol.24、編者あつあつおでん
「ああ、久々にゆっくりできるぞ」
「そうですね。5日も山を歩き続けて皆さんお疲れみたいですし、丁度良いですわ」
フスベシティのポケモンセンター。その一角でダルマとユミはソファーに座って一息ついていた。外は山ならではの澄み切った夜空で、星がウインクする様まで丸見えだ。
「けど、籠城してると思ったのに誰もセンターにいなかったのは妙だよな」
「それは私も考えていました。カラシ様が来られたとはいえ、私達は全滅に等しい状況でした。みすみすチャンスを潰すのはおかしいですよね」
「なんだ、俺がどうかしたか?」
と、2人の話にカラシが入ってきた。彼はソファーにどっかり腰を下ろすと、テーブルに置いてあるのど飴をさりげなくポケットに入れた。
「そういえば……カラシ、何故セキエイ陣営に加入しようと思ったんだ? 最後に会った時はロケット団の用心棒をやってたじゃないか」
「なんだ、そんなことか。ロケット団が壊滅し、俺の仕事がなくなった。だからここに仕官しただけのことだ」
「あら、私達と同い年くらいに見えますが……お仕事をなさるのですか?」
ユミの問いかけに、カラシは窓の外を眺めながら答えた。
「……俺の家は『赤貧洗うが如し』という言葉を体現したかのようなところでな。食べ盛りの子供は家族に負担をかけちまう。だから、旅をしながら稼ぐことにしたんだよ。なのに……」
「なのに、どうしたんだ?」
「……俺がちゃんと旅ができるようにって、ない金はたいて準備してくれたんだよ。馬鹿らしいだろ? まあ、俺はそれに報いるためにこうして仕事を探していたわけだ。バトルが上手いのも、それを仕事にするためさ」
カラシはソファーにもたれかかり、腕組みをしながら目を閉じた。ダルマとユミは互いに見合わせ小声で話す。
「……カラシ様、とても大変そうですね。私達に何かできないでしょうか?」
「どうかなあ。俺達もなんだかんだで金があるわけじゃないし……」
「ふん、余計なお世話だ」
不意にカラシが発言をしたせいで、ダルマとユミは飛び上がり冷や汗を流した。カラシは機嫌良く続ける。
「ところで、がらん堂の技術はもう聞いたか?」
「技術ですか? もしかして、人が突然消えたりするあの?」
「察しが良いな。あれはポケモン交換システムを人に使えるように改良したらしい。人をポケモンと同じように処理すれば移動も楽なんだろう。サトウキビという男が各地のポケモンセンターの機器を不正に改造していたそうだ」
「な、なんだって……。サトウキビさん、初めて会った時はポケモンセンターの修理って言っていたけど、このためだったのか。それでも、そんな技術聞いたことないぞ」
「そりゃそうだろ。こんな技術、失敗したら命の保証なんてない。表立ってやれる方がよっぽどおかしい」
「……言われてみればそうだな」
ダルマは納得したのか、何度もうなずいた。しかしカラシの説明は止まらない。
「そうそう、何故人々が抵抗しないか。怪電波でコントロールしているってよ」
「か、怪電波、ですか?」
博識のユミも首をかしげた。ダルマに至っては言うまでもない。
「そうさ。元々コガネシティは旅人や住人にバッジや記念品をばらまいていた。それが実は中継機になっていて、ラジオ塔の怪電波を受信して持ち主の家で猛威をふるうという寸法だ。」
「……そういやサトウキビさんが言ってたな、『連帯感や一体感を高めるために配っている』って。俺達危なかったんだな……ん、ちょっと待てよ。どうしてカラシはそんなに詳しいんだ? 専門のジョバンニさんとボルトさんでもわからなかったのに」
ダルマはカラシに疑いの目を向けた。ユミも不安げな表情をとる。しかし、カラシの次の一言が彼らの注目を完全に彼から逸らした。
「……それはさておきだ。かばんが光ってるぜ、あねさん」
「え? あ、これはもしかして……」
ユミは大急ぎでかばんからあるものを取り出した。それは、今にも割れんと輝く2つのタマゴである。3人の目の前で殻が勢い良く飛び散り、そして……。
「これは、イーブイに……なんだこのポケモンは」
ダルマは図鑑を引っ張り出して調べた。1匹はイーブイ。有名なポケモンだが、特筆すべきはそこではない。この個体、特性がきけんよちなのである。
「あれ、イーブイの特性にきけんよちなんてないぞ。もしかして、新種かな?」
ダルマは感嘆のため息をついた。ユミがイーブイを静かになでると、イーブイは健気に鳴き声をあげた。
「で、こっちはえーん、フカマル? タイプはドラゴンと地面……え、ドラゴン?」
ダルマは図鑑を穴が開くほど見つめた。フカマルはシンオウ地方のとある洞窟に生息するポケモンで、進化形のガブリアスは非常に高い能力を持つ。対策必須と言っても過言ではない。だが、ダルマが驚いたのはそれだけではない。
「おい、色が明らかに違うぞ」
ダルマはフカマルを指差した。本来のフカマルは青い体に赤の腹だが、この個体は藍色の体に黄色の腹部を持つ。
「なるほど、こいつは色違いだな。しかもジョウトでは見かけないポケモン……ついてるな、あねさん」
「そ、そんなことないです。ですが、やっと会えましたね。イーブイにフカマル、これからよろしくお願いしますね!」
ユミの呼びかけに応じ、イーブイとフカマルは元気に前足と手を持ち上げるのであった。ユミに新しい仲間が加わった瞬間である。
・次回予告
さらなる激戦が予想される中、ワタルの案内で一同はある場所に訪れる。そこでは強力なトレーナーが待ち構えていた。次回、第43話「フスベジム前編、ドラゴンへの道」。ダルマの明日はどっちだっ。
・あつあ通信vol.23
実はこの連載、金銀世代までの251匹をメインに使ってるんですよ。ユミのフカマルなんかは例外ですが、野生やトレーナーが使うポケモンは原則ジョウトまでのポケモンのみ。他の地方に行ったことがあるトレーナーやタマゴから生まれたポケモンには他の地方のポケモンも採用すると。これだときっと最後はネタ切れ必至ですが、のらりくらりとやってみますよ。
あつあ通信vol.23、編者あつあつおでん
風見杯準決勝第二試合。残す対戦数も僅かとなった。
俺のバトル場には炎エネルギー一枚、水エネルギー二枚のボーマンダ140/140、サイドは三枚。
向かいの長岡のバトル場には水エネルギー、雷エネルギが一枚ずつついているスピンロトム70/70。そのベンチにはエレキブル90/100とプラスル50/60がいる。サイドは二枚、やや長岡有利な状況だが、いくらでも巻き返しは効く。
「今度は俺から行かせてもらうぞ。俺の番だ」
引いたカードはミステリアスパール。ベスト、なカードではないが、ここは手早く使っておこう。
「手札のトレーナーカードを発動。ミステリアスパール」
「なんだそれ。始めてみるカードだぜ……」
「このカードの発動後、俺は自分のサイドを確認して望むならポケモンを一枚相手に見せてから手札に加える。その場合、このカードをオモテにしてサイドに置きかえるカードだ」
そう言ってサイドを確認。炎エネルギー、フカマル、コモルー。ポケモンは二枚いる。ここはたねポケモンがほしいのでフカマルを長岡に見せて手札に加える。
「フカマル(50/50)をベンチに出して炎エネルギーをボーマンダにつける。さあ、ボーマンダでスピンロトムを攻撃だ。蒸気の渦!」
蒸気の渦の威力は120。白く強く渦巻く激しいボーマンダの攻撃を正面から食らったスピンロトム0/70は空高く吹き飛ばされ、力なく落ちていく。
「俺は蒸気の渦のコストとしてボーマンダの炎エネルギーと水エネルギーをトラッシュする。サイドを引いてターンエンドだ」
スピンロトムはポケパワーと特性の効果が相まって、俺のデッキには脅威となる。蒸気の渦はやや勿体無い気がしないでもないが、後を考えれば当然のプレイングだ。
長岡の次のポケモンはプラスル50/60。低HPのポケモンを晒すという事は、本命であるベンチのエレキブルを育てる為の時間稼ぎだな。
「俺のターン! エレキブルに雷エネルギーをつけてヒートロトム(80/80)を場に出す。そしてプラスルの欲張りドローだ。今、互いの手札は三枚だからカードを一枚引くぜ」
「もう終わりか。ならば俺の番だ。フカマルをガバイト(80/80)に進化させ、ガバイトに炎エネルギーをつける。そしてボーマンダで火炎攻撃!」
ボーマンダが口から人一人は飲み込めるほどの大きく真っ赤に燃え盛る火球を発し、プラスル0/60を飲み込むようにぶつける。良い感じだ。
「プラスルが気絶したことにより、サイドを一枚引く」
どうやら長岡のデッキは燃費があまりよろしくない。お陰でこうして壁を作らざるを得ないのは、敵としては非常においしい。長岡の最後のバトルポケモン、エレキブル90/100は果たしてどこまでやるか。
「俺のターン。エレキブルに雷エネルギーをつけて、ポケパワーを発動する。電気エンジン!」
帯電して電撃をバチバチと散らしながらエレキブルは右手を地面に突き刺し、引っこ抜くとその右手には雷のシンボルマークがしっかり握られ、それが手のひらに吸収されていく。
「このポケパワーによってトラッシュの雷エネルギーをエレキブルにつけることができる。さらに手札の雷エネルギーをエレキブルにつけて攻撃だ。放電! このワザはエレキブルについてる雷エネルギーをすべてトラッシュし、トラッシュしたエネルギーの数だけコイントスしてオモテかける50ダメージを相手に与える大技だ」
「はっ。ボーマンダのHPは120もある。三回全てオモテでも出さない限り倒すことは出来ない」
「だったら三回オモテにすればいいんだろ?」
思わず聞き返したくなるセリフだった。コイントスは実際にコイントスをするのではなくて機械のスイッチを押して機械が判定を出す仕組みである。よってコインに何かするなどという人為的な作用は一切効かない。
それで三回ともオモテにする確率は八分の一だ。そんな馬鹿げた事が簡単にあってたまるか、とでも言いたくなる。言って出来れば誰も苦労はしない──。
「ほら、オモテ、オモテ、……オモテだ!」
「馬鹿な!」
エレキブルが蓄えていた体から迸る電撃が咆哮とともに波動状に飛び散り、向かいのボーマンダ0/140の体を持ち上げるまでの強烈な衝撃を与える。
俺のベンチにはもうガバイト80/80しか残っていない。切り替えて、こいつをバトル場に送る。
「さあ、サイドを引いてターンエンドだ!」
ウォッシュロトムの脱水に引き続きエレキブルの放電。本当に何か仕掛けをしたのかと疑いたくなるし、今起こっている状況に目も疑いたくなる。
運の差は天地のそれそのもの。あいつに比べて俺があるのはカードとの知識と、経験だけだ。
そう、それだ。俺は自分で考えてデッキを組み、考えに考えてプレイングしている。現に今までその努力の結晶が実を結び勝ち進んできた。それこそ運の左右にも負けないくらいに!
「へっへーん、どうだ風見! 参ったか!」
「その程度で浮かれるようじゃ、まだまだ話にならないな。俺のターン」
今の手札で可能なことを考える。しかし今の手札だけではパッとしない。いや、今の手札でダメならば新しい手札にすればいいのだ。今、手札には自分の手札が六枚になるまでドローできるデンジの哲学がある。それを最大限に活かすには……。
「トレーナーカード、ポケモンレスキューを発動する。トラッシュのポケモンを手札に加える。俺はガブリアスを手札に加え、ガバイトをガブリアス130/130進化させる。続いてガブリアスに水エネルギーをつけてサポーターカード発動、デンジの哲学。その効果で俺は手札が六枚になるようにカードを引く。さらにこのカードを発動させるとき、任意で手札一枚をトラッシュできる。俺はミステリアスパールを捨てたことにより手札はない。よって六枚ドロー!」
だがまたしても手札が芳しくない。手札はこれだけあれど、今から新たに何かする事が出来ない。
「ならばガブリアスで攻撃だ。ガードクロー!」
ガブリアスがエレキブルに向かって、風となるようにダッシュし、右の翼の一振りでエレキブル50/100に襲いかかる。さらに攻撃後、バトル場に戻ってきたガブリアスは両翼を前で交差して守備の動作を取った。
「たった40ダメージくらい、なんてことないぜ。俺のターン! エレキブルのポケパワー、電気エンジン発動。トラッシュの雷エネルギーをエレキブルにつける。さらに手札の雷エネルギーもつけるぜ。それだけじゃない。エレキブルをレベルアップ!」
エレキブルが光に包まれ、エレキブルLV.X70/120にレベルアップする。なるほど、これが長岡のエースカードか。
「さあ、エレキブルLV.Xで攻撃だ。パルスバリア!」
エレキブルLV.Xは電気で四角形の壁を作りだすと、それを真正面にいるガブリアスへと押し出す。
「この瞬間ガードクローの効果発動。相手の攻撃を受ける時、ダメージを20だけ軽減する。よってパルスバリアの威力は50だが、ガブリアスが受けるダメージは30! そしてガブリアスのポケボディー、竜の威圧が発動。エレキブルLV.Xの雷エネルギーを手札に戻してもらおう」
「それでもガブリアスの残りHPは100だ。次のターンに電気エンジンをして、今戻したエネルギーをつけなおしてエレキブルLV.Xで放電したら俺の勝ちだぜ?」
放電はコイントスでダメージを与えるワザだ、確実性に欠ける。……と言ったところでこいつには薬にも何にもならない。おそらく本気でやってみせるだろう。
しかし恐れていた事態は逃れた。なんらかして先ほどのターンに雷エネルギーをつけられ、放電でガブリアスが倒されることもない、またはエネルギー3つ残したまま俺の番が回っても来なかった。
「果たして、そんなことを俺がみすみすやらせるかと思ったか」
「なんだと?」
「俺のタクティクス、しかと目に焼き付けるがいい。俺のターン! ガブリアスに炎エネルギーをつける」
「待った! その瞬間にエレキブルLV.Xのポケボディー発動。ショックテールっ! 相手が手札からエネルギーをポケモンにつけたとき、そのポケモンに20ダメージを与える!」
エレキブルLV.Xの尻尾から一筋の電撃がガブリアスにヒットする。ふらついたガブリアス80/130だが、なんなく元の体勢に戻ってエレキブルに向けて構える。
「そんな微々たるダメージは構わない! さあ食らえ、ガブリアスでスピードインパクト!」
ガブリアスが一瞬にして衝撃波と化して見えなくなると共に爆音が会場に響き渡る。ガブリアスは翼を折りたたんでエレキブルLV.Xに特攻したのだ。
「このワザのダメージは120から相手のエネルギーの数かける20を引いた数値。今エレキブルLV.Xについているエネルギーは一つだけだ。よってエレキブルLV.Xに100ダメージだ」
「100だって!?」
攻撃を受けて吹っ飛び、仰向けに倒れたエレキブルLV.X0/120が気絶し、消えていく。
「サイドを一枚引いて、これで終わりだ」
最後のサイドを引くと試合開始の時と全く同じブザーが聞こえる。時計を見れば試合時間はたいした事がないが、もっと長い間戦っていたような気がした。
「なかなか、お前にしては頑張ったほうだな」
「くっそー、自信あったのになぁ。またいつかリベンジだ」
ふっ、とつい笑みがこぼれた。どこまでも前向きなヤツだ。踵を返し、背中を向けながらこう言ってやった。
「その時を楽しみにしている」
さあ、後は最後の戦いを控えるだけだ。俺と翔の、因縁の戦いとでも呼ぼうか。決勝を飾るにふさわしい組み合わせだ。
翔「今日のキーカードはガブリアス!
ポケボディーでエネルギーをバウンスさせて、
スピードインパクトで決めてやれ!」
ガブリアスLv.71 HP130 無 (DPt1)
ポケボディー りゅうのいあつ
このポケモンが、バトル場で相手のワザのダメージを受けたとき(このポケモンのHPがなくなっても)、そのワザを使ったポケモンのエネルギーを1個、相手の手札にもどす。
無無 ガードクロー 40
次の相手の番、自分が受けるワザのダメージは、「−20」される。
無無無 スピードインパクト 120−
このワザのダメージは、相手のエネルギー×20ダメージぶん、小さくなる
弱点 無+30 抵抗力 ─ にげる 0
───
長岡恭介の使用デッキ
「10000Ω」
http://moraraeru.blog81.fc2.com/blog-entry-672.html
「はあっはあっ……倒しても倒してもきりがない」
がらん堂との対決が始まって30分ほど経過した。ダルマ達は善戦を続けていたが、がらん堂の人海戦術に押されがちであった。ダルマは息切れしながらも叫ぶ。
「まだまだ、この程度じゃ終わらない! アリゲイツ、水鉄砲!」
ダルマの相棒アリゲイツは、がらん堂の若者目がけて弾丸を撃ち続ける。たかが水と言えど、ポケモンが放つものだ。1人ずつ確実に吹き飛ばし、有刺鉄線に叩きつける。だが、いくら痛め付けても彼らは立ち上がり、ダルマ達に詰め寄る。
「くそっ、まだ動けるのか。さすがに鍛えてるな」
ダルマは舌打ちをした。彼の耳に、徐々に苦しくなる戦況が続々と聞こえてくる。
「うわっ、おじさんのポケモン全部やられちゃったよ……」
「ぬぬぬ、このドーゲンが最後の1匹まで追い込まれるとは」
「きゃっ! 全員瀕死ですわ……」
各員の手持ちをどんどん倒され、残ったメンバーに新たな敵が迫る。それによりまた敗退する者が現れ、また別の者に矛先が向けられる。ジリ貧を通り越してどうしようもなくなってきた。
「……言ったはずだ、多勢に無勢と。貴様もそこまでだ、チャンピオン」
「ぐぐ……まさかここまで強かったとは。がらん堂、少々侮ったな」
発電所の入り口付近ではワタルとサバカン達の戦いが展開されていた。辺りには下っぱの山ができているが、ワタルも無傷では済まされなかったようである。既にポケモンは5匹倒され、切り札のカイリューも片膝をつく有様だ。
「だ、ダルマ様……このまま私達、負けてしまうのですか?」
「ば、馬鹿言うなよ。まだ逆転のチャンスはあるはずだ」
「それでも! まだ戦っているのはダルマ様とワタル様だけですよ……?」
ユミは左右に目を遣った。あちこちでセキエイ陣営のメンバーが縄で縛られ、残すところダルマとユミ、ワタルのみとなった。ダルマはユミを背後に連れ、発電所の壁を背に奮闘しているが、もはや四面楚歌と言うにふさわしい状況である。
「まあ、確かにヤバいな。けど、弱音を吐くのはまだ早いよ」
「え……?」
「……コガネで俺が諦めた時、ユミは俺を鼓舞した。だから俺も言わせてもらう。まだ終わるような時間じゃねえ!」
ダルマは目の前をアリゲイツに任せ、側面から迫るがらん堂の内側のすねにローキックをかました。痛みに悶絶するがらん堂員はその場にうずくまる。
「俺達は世間的には犯罪者。ここで捕まったって、これ以上どん底に落ちることなんてないさ。だったら、あらゆる手段で抵抗してやるよ。思い残すことがないように!」
「だ、ダルマ様……」
ダルマは、右へ左へ大忙しに攻撃を加える。駆け付ける人数が撃退する人数より多いのでますます囲まれていくが、ダルマは抵抗を止めようとしない。
「……私だって、最後まで意地を見せます!」
ユミは拳を握ると、勢いをつけて飛び上がり、がらん堂員の胸元を蹴った。その一撃は多数の構成員を巻き添えにした。さながら、ポケモンの技にあるとびげりのような威力だ。
「チェストー!」
ユミの雄叫びで周囲がにわかに怖気づいた、まさにその時。近くで何かが落ちる音が鳴り響く。あまりの大きさに、全ての者が音源に注目する。
「……そこまでだ。3人がかりなれば、チャンピオンとて心得なき素人の如し」
「か、カイリュー!」
地響きの正体は横たわるカイリューであった。ワタルはカイリューをボールに戻すと、苦虫をつぶしたかのように顔を歪ませる。
「余興は終わりだ。皆の衆、残った3人を捕らえよ」
サバカンの号令のもと、がらん堂員は大挙してダルマ達に襲いかかった。ワタルは観念したのか、目を閉じ両手を上げた。
「ここまでか……」
ダルマも快晴の青空を見上げた。彼は回転しながら接近する棒状の物体した。物体はぐんぐん距離を縮め、がらん堂員をなぎ払いながら地上に到達した。
「な、何が起こったんだ……?」
「ダルマ様、あれを見てください!」
流れが掴めないダルマはもちろん、あらゆる勢力が上空を注視した。よくよくチェックすると、発電所の屋上に1人と1匹がいるではないか。各々が驚嘆の声をあげる中、1人と1匹は飛び降りた。1人は迷彩柄のズボンに真っ黒なシャツを着た少年。1匹は頭蓋骨をかぶり、中から眼を光らせている。
「あ、お前は……カラシ! それにそのガラガラ、進化したのか」
「久しぶりだな、確か……ダルマだったか。ガラガラも挨拶してるぜ」
飛び降りた1人と1匹、カラシとガラガラはダルマに一礼した。ガラガラはそのまま、地面に刺さっている骨を回収する。
「カラシ様、どうしてこちらに? あなたはロケット団と協力していたのでは?」
「おっと、話は後だ。まずは邪魔者を蹴散らす。俺達の力をよく見ておくことだ」
カラシは口笛を吹いた。それに呼応し、ガラガラは得意の骨ブーメランを放った。以前のように、パワー不足で飛距離が伸びないということはなく、ばっさばっさとがらん堂員に土をつける。一方カラシはブーメランの軌道を縫うように移動し、取りこぼしたがらん堂員を別の構成員目がけて投げ飛ばす。快刀乱麻とは彼のためにある言葉だと唸りたくなる手さばきで、見事下っぱの大半を地に伏せさせた。
「き、貴様は凶悪犯罪者ロケット団のカラシか! がらん堂の前に立ちはだかるとは……」
先程まで優勢だったサバカンは、歯ぎしりしながらカラシとガラガラを睨み付ける。だが、もはやそのような威嚇に力は伴っていないのは、誰の目からも明らかだ。
「なら、俺と1試合やるか? チャンピオンを倒したとはいえ、そっちも手負いみたいだが大丈夫か?」
「……ぐ。今日のところは見逃しておこう。だが覚えておけ、がらん堂は貴様らを逃すことなからん」
「へ、おとといきやがれ」
「いやー助かったぞ少年。この年であれだけ強いとは、息子にも見習ってもらわねばな」
「父さん、それは余計なお世話だよ」
「でも、本当に助かりましたわ。ありがとうございます」
がらん堂が撤退した後、捕縛されたセキエイ陣営を救助し、カラシとの対面を果たした。感謝の言葉にも彼は顔色1つ買えない。ダルマはそんな彼に根本的な質問をした。
「ところでさ。なぜ俺達がここにいるとわかったんだ? それと、助けた理由は?」
「……簡単なことだ。1つ、情報収集をした結果から推測しただけ。2つ、お前達セキエイ陣営に協力しようと思ったからだ」
「え、もしかして君も参加してくれるのか?」
予想外の発言に、ワタルの声はうわずった。カラシは不敵な笑みを浮かべて言う。
「ああ。ただし、それ相応の報酬を頂く」
「なるほど。じゃあ、ポケモンリーグの出場資格なんてどうかな?」
「……中々悪くないな。では、俺は今日から正式に協力させてもらう。今から俺の活躍ぶりに舌を巻くがいいさ」
カラシがセキエイ陣営入りを宣言すると、各人は大いに沸くのであった。ダルマ達に心強き味方が加わった瞬間である。
・次回予告
ダルマ達一行はフスベシティのポケモンセンターを奪回し、束の間の休息を楽しむ。そこで、ユミの2つのタマゴが激しく揺れるのであった。次回、第42話「新たな仲間は色違い」。ダルマの明日はどっちだっ。
・あつあ通信vol.22
最近はワタルが喋る機会が多いので、誰が主人公か自分でも度忘れしている感じです。しかし今日は久々にダルマが主人公らしい台詞で存在感を発揮できたと思います。彼は最後まで主人公の座を守り切ることはできるのでしょうか。様々な面で彼に試練が続きます。
あつあ通信vol.22、編者あつあつおでん
「見えたぞ、あれが発電所だ」
林の茂みにしゃがんで隠れながらワタルが指差した。その先には、有刺鉄線で囲まれた建造物が鎮座している。それほど異常なものには思われないが、中から人の気配はまるで感じられない。
「あれがフスベシティにできた新しい発電所ですか」
「ただの小屋のようにも見えますわね」
「うん。コガネシティの人口増加に伴ってカントーの発電所じゃ足りなくなったんだ。そこで、この山に囲まれた土地に新たな発電所を作ったというわけさ」
ワタルが発電所の説明をした。口調は軽快だが、既にその目は次のバトルに向けて燃えている。
「しかし、こんな場所だと来るのだけで大変ですよね」
「それは彼らにとってメリットだね。山と有刺鉄線に守られるだけでも攻略は難しくなる。しかもここは発電設備を地下に置いているから、侵入されてもかなり抵抗されるはずだ。隊を分けずに攻め入るのもわかるだろ?」
「確かに。……あ、そろそろ時間ですよ、ワタル様」
ユミは腕時計の時刻を示した。そろそろ午前10時になりそうだ。それを確認したワタルは全員の方を向く。
「皆さん、セキエイ高原から休みなく歩き続け5日経ちました。私達はいよいよフスベシティ発電所に攻撃を開始します。本当は施設の破壊ができれば楽なのですが、こちらがポケモンセンターに頼れない等のデメリットが大きいので、今回は占領するだけです。戦略としては、まず僕が先陣を切り突入します。皆さんは僕に続き畳み掛ける。とにかく素早くことを進めて、最小限の犠牲で勝利しましょう!」
ワタルの話が終わると、皆はゆっくりうなずいた。ワタルは力強く立ち上がった。
「では行こう。全員僕に続け!」
ワタルは茂みを飛び越え、発電所目がけて走りだした。ダルマ達も遅れないように必死で追いかける。
「くっそー、邪魔する奴らは毒針の餌食だぞ!」
「おらおら、雑魚はすっこんでな!」
ダルマとユミが前を、その後ろをドーゲン、ボルト、ハンサム諸々、そしてジョバンニがしんがりを務める格好で、勢い良く扉をけやぶり発電所内に入り込んだ。
「御用だ御用だ、ドーゲン様の……ありゃりゃ、誰もいないぞ」
ドーゲンは辺りを見回した。一同もあちこちを探す。しかし、人っ子1人いない。拍子抜けしたダルマは深呼吸をした。
「なーんだ、意外とあっさり攻略できちゃったじゃないか。心配して損したよ」
「しかし、こうも簡単に動力を手放すものかなー。技術者の僕から言えば、罠だと思うよこれ」
「ははは、まさか……」
ダルマがボルトの言葉に笑って受け答えすると、外から土を踏む音が聞こえてきた。足音は1人でも2人でもない。10人は軽く超えているだろう。ダルマ達の額から冷や汗が一筋流れる。
「……あのーワタルさん、これってもしかして?」
「ああ、そのようだな。皆さん、モンスターボールを準備してください」
ワタルは各員を促し建物の外に進んだ。ダルマ達はボールを1個握りしめ、その時に備える。
「また会ったなワタル。それがしを忘れたとは言わせぬ」
「……サバカンか。君も忙しいな、この前はセキエイで今度はフスベとはね」
ワタルは見覚えのある男へ気の毒そうな言葉を投げかけた。5日ぶりにワタルの前に立ちふさがるのはサバカンである。
「……無知はこれだから困る。先生は、我らがためにあるものを残された。移動に苦しむ理由なし」
「なるほど。やはり、セキエイでまんまと逃げられたのは何か仕掛けがあったからか」
「……この度は以前と異なり、手加減は無用との沙汰なり。こちらは総勢50人に対しそちらはたかだか10人前後。多勢に無勢なる言葉知りたるならば、諦めたくならぬか?」
サバカンの問いかけに、ワタルは鼻で笑った。彼は右手にボールを持ち、臨戦態勢を取る。
「生憎、諦めは悪いものでね。僕はチャンピオンだ、何人がかりでも撃破してみせる」
「……愚かなり、チャンピオンよ。ここで投降すればがらん堂の慈悲にすがることもできたものを。されど、もはや情けは与えぬ。貴様の、薄氷のごとき見栄で他人が苦しむ姿、しかと目に焼き付けよ。皆の衆、かかれ!」
サバカンの怒号に従い、着流し姿の若者が一斉に有刺鉄線の中になだれ込んできた。ワタルは舌打ちしながらも叫ぶ。
「くっ、下見ではここまでいなかったはず……。皆出動だ、なんとしても全員倒すぞ!」
・次回予告
がらん堂の軍勢相手に良く戦うダルマ達であったが、遂に追い詰められた。しかし誰もが敗北を確信したその時、とんでもない援護が飛んでくるのであった。次回、第41話「心強き味方」。ダルマの明日はどっちだっ。
・あつあ通信vol.21
以前チャットで「天才型主人公の話は難しい」という話題が上がってました。もしこのようなタイプが主人公だとしたら、先生や監督等の指導者にするのが良いかなと思います。「自分がやればすぐ終わるが、部下が上手くいかずやきもきする」といった中で部下の成長を見ていくのは中々面白そうです。
あつあ通信vol.21、編者あつあつおでん
「拘りメガネで特攻は何倍になる?」
「1.5倍になります」
「じゃあ狙いのまとの効果は?」
「確か、『持たせたポケモンに効果のないタイプの技が効くようになる』でしたよね?」
「……すごいな、全部あってる。ユミは努力家なんだね」
満天の星空の下、ダルマとユミは来るべき戦いに備えて知識を蓄えていた。セキエイ高原からフスベシティに向けて出発し早3日。今晩はやや開けた、山の中腹でキャンプを張り、各自翌日を待っている。ワタルは地図とにらめっこ、ボルトとジョバンニは何やら話し込む。そしてダルマとユミは先程の通りである。たき火の炎が2人の顔を赤く染める。
「そんな、私なんてまだまだです」
「そうかなあ。俺は道具職人の息子だけど、狙いのまとなんて最近まで名前しか知らなかったよ」
「あら、ドーゲン様は道具職人なのですか?」
「うん。せんせいの爪から命の珠まで幅広く扱ってるよ。ヒワダジム戦でカモネギに気合いのタスキを持たせたんだけど、あれは俺が作ったんだ。まあ、俺のはまだまだ売れるものじゃないけどさ」
ダルマはドーゲンの寝ているテントに目を遣った。そこから、周囲にダメージを与えかねない大いびきが耳に入ったのですぐに目線を逸らす。
ダルマは側にあるヤカンから麦茶をコップに注ぎ、一口飲んだ。そしてユミにこう尋ねた。
「ところでさ、ボルトさんとジョバンニさんは何やってるの? フスベシティまで一緒だけど、妙に急いでるみたいだし」
「そうですね、多分出発前の事件の調査かと思われます」
ダルマは険しい表情をした。コップに残った麦茶を飲み干すと、こう口を開いた。
「がらん堂のサバカンか。現場には何も残ってなかったし、もしかして交換システムが怪しまれたのかな? だとしたら、ボルトさんはともかくジョバンニさんが機械に詳しいなんて意外だなあ」
「……先生は10年前まで科学者と技術者をやってたそうですよ。ダルマ様の憧れるトウサ様も科学者だったそうですね」
「へえ、あの人科学者だったのか。確かにトウサさんの特集でやってたような気がするなあ。ある時を境に、両方とも突如として第一線から姿を消したらしいけど、何か聞いてる?」
「そこまでは……。ですが、先生は当時活躍していたそうですし、単に引退したというわけではなさそうですね」
ユミは読んでいた本を閉じ、熱々の麦茶で喉を潤した。山の夜は静かだ。中腹にたまった水からできる霧がそよ風に乗り山道を隠す。植物は霧に負けまいと成長するが、どうしても霧の流れる高さを越えられない。数世紀にかけて続く山の自然は、今も変わることなく動いているのだ。
「落ち着きますね……」
「まったくだよ。早くこの戦いを片付けてゆっくりしたいな」
「ふふっ、まだ始まってもないですよ」
「そういえばそうだな」
ダルマとユミから思わず笑みがこぼれた。少しの間が空き、ユミが真面目な面持ちでダルマを見つめる。
「ダルマ様、1つ頼みを聞き入れてもらえませんか?」
「た、頼み? 俺でできることなら手伝うよ、言ってみて」
「は、はい。ダルマ様に、私の……」
「私の?」
ダルマは不意に唾を呑んだ。ユミは紅葉のごとく紅潮しながらも、最後の言葉を絞りだした。
「私の……ライバルになってください!」
「……ら、ライバル?」
「はい。とある事情でライバルを持った方が良いというアドバイスを頂きました。一緒に旅をしているダルマ様にライバルになってもらえれば、私はもっと成長できると思うのです」
「な、なるほど。それくらいなら構わないよ」
「ほ、本当ですか? ありがとうございます! ふつつかものですが、よろしくお願いします!」
「ふつつかものって、結婚するわけじゃないんだから。まあいいか、改めてよろしく、ユミ」
ダルマは右手を差し出した。ユミもそれに応じて固い握手を交わすのだった。
・次回予告
フスベシティに乗り込んだダルマ達は、総力をあげて発電所に攻め上がる。ところが、がらん堂の援軍が大量にやってきて、ダルマ達は完全に囲まれた。この危機を突破することはできるのか。次回、第40話「誘い込み作戦」。ダルマの明日はどっちだっ。
・あつあ通信vol.20
前回ハッサムがカイリューを追い詰めてましたが、いじっぱり攻撃全振りテクニシャンハッサム@拘り鉢巻きのバレットパンチでHP全振りカイリューが乱数2発となります。マルチスケイルなら確定3発。結構な決定力ですが、鋼タイプは半減されやすいのが難点。また、ハッサムはメジャータイプに等倍ダメージを受けるので、繰り出しが微妙に難しい気がします。強いポケモンなのは確かですが、色々惜しいですね。
あつあ通信vol.20、編者あつあつおでん
運ばれていく藤原を見送り、準決勝第二試合が始まる。先ほどの異常とも思える光景から平静を取り戻した会場は、再び熱気を巻き起こしている。
第一試合の勝者は翔。既に決まっている。つまり、これから始まる第二試合。俺か、長岡恭介のどちらかが決勝で翔と戦うことになる。
『準決勝第二試合を始めます。選手は試合会場八番にお集まりください』
俺の対戦を観ると言っていた松野さんの姿が見当たらないが、今は集中だ。翔には既に二度痛い目に遭っている。今日こそ、この場で大々的にリベンジを目指す。
そのためには目の前の一勝を取らなくては話にならない。たかが三十枚しかないハーフデッキを右手で握り、意を決してステージへ向かう。
「風見、俺はお前に勝つぜ!」
ステージに着くなり長岡の堂々とした勝利宣言が待っていた。さすがに準決勝まで勝ち進んだからなのか、まだカードを始めたばかりの初心者とは思えない、ある種の風格を僅かに感じる。
対戦相手としては悪くない。最低限の条件はクリアだ。
「笑わせる。返り討ちにしてやる」
「へっ、そうはさせないぜ。俺のターンからだ!」
バトルポケモンにプラスル60/60、ベンチポケモンにはエレブー70/70を並べた長岡が先攻で始まる。俺はフカマル50/50のみだ。
「まずは手札からウォッシュロトム(90/90)をベンチに出す。続いて水エネルギーをウォッシュロトムにつけてプラスルのワザを使うぜ。欲張りドロー! 自分の手札が相手の手札の数より一枚多くなるよう山札からカードを引く。今俺の手札は四、お前の手札は六枚だ。よって三枚カードを引く」
「ふん、中々面白いワザだな。今度は俺の番だ」
しかし手札が芳しくない。ボーマンダ二枚に炎エネルギー、水エネルギー、スージーの抽選、不思議なアメ、ガブリアス。重たいポケモンが被ってしまい、身動きが取り辛い。
もしかして運の強い長岡は俺の手札をも悪くしたとでも言うのだろうか。それはともかくこうなった以上は作戦変更、ここまでは何も予定内だ。
「不思議なアメでフカマルをガブリアス(130/130)に進化させる。そしてスージーの抽選を発動」
「スージーの抽選……。手札をトラッシュしてトラッシュした枚数に応じて新たにデッキからドローできるカードか」
「俺は手札を二枚トラッシュする」
トラッシュするカードはボーマンダと水エネルギー。躊躇い無くトラッシュしたそれらのカードをモニター越しに確認した恭介が驚愕する。
「えっ、ボーマンダをトラッシュすんのかよ!」
「そして俺はカードを四枚引いてターンエンドだ」
「何でボーマンダをトラッシュしたんだろう……。まあいいや、俺のターン! ウォッシュロトムに雷エネルギーをつけて手札からワープポイントを発動だ」
プラスルとガブリアスの足元に青い穴が開き、青い穴にそれぞれのポケモンが吸い込まれていく。
「このカードの効果によって、互いにバトルポケモンとベンチポケモンを入れ替える。俺はプラスルをベンチに戻してウォッシュロトムを場に出すぜ」
ウォッシュロトムの足元にも青い穴が開き、穴へ落ちていった。するとウォッシュロトムが落ちた穴からプラスルが。プラスルの落ちた穴からウォッシュロトムがそれぞれ入れ替わるように現れる。
「俺のベンチにはポケモンがいないのでガブリアスは入れ替わらない」
こちらは滑稽にもガブリアスが落ちた穴からガブリアスが這い出て来た。落ちる必要性がなかったなと軽く一笑する。
「ウォッシュロトムでガブリアスに攻撃だ。脱水!」
恭介は技の宣言と共にコイントスをする。脱水はウラが出るまでコイントスをして、オモテが出た数だけ相手の手札をトラッシュさせるワザだ。所詮確率なんて高が知れている。という認識はあまりにも浅はか過ぎた。
「オモテ、オモテ、オモテ、ウラ! 30ダメージと同時にお前の手札を二枚トラッシュするぜ。左側の三枚だ」
「さ、三枚だと!? くっ。ボーマンダと炎、水エネルギーの三枚をトラッシュする」
ウォッシュロトムの攻撃が襲いかかり、弾ける水の音と共にモニターにダメージカウンターが加算されていく。ガブリアス100/130が体勢を持ち直す横で、二枚目のボーマンダがトラッシュされたためか、恭介がかすかにガッツする。同じカードはハーフデッキは二枚までしか入れられない。つまり俺は新たにボーマンダを加えることが出来ない。そう思っているのだろう。
「ポケボディー、竜の威圧がこのタイミングで発動する。このポケモンがバトル場で相手からダメージを受けたとき、そのポケモンのエネルギー一個を手札に戻させる。雷エネルギーを戻してもらおう」
「マジかよっ……。めんどくさい効果だな!」
「何とでも言え。俺の番だ」
すっかり寂しくなった手札が賑わいを見せる事は無いが、良くぞこのタイミングで来てくれた、と手を打ちたい。序盤から全速力で攻める好機だ。
「お前がトラッシュにカードを大量に送ってくれたことで、俺のコンボが早々に完成することになる。感謝するぞ。さあ、俺はガブリアスをレベルアップさせる!」
ガブリアスに一瞬だけ白い光が包み込む。ガブリアスの咆哮と共にその光は弾け消えていき、モニターにもガブリアスLV.X110/140と表示される。
「そしてこのレベルアップした瞬間、ガブリアスLV.Xのポケパワー、竜の波動が発動する。コインを三回投げ、オモテの数ぶんのダメージカウンターを相手のベンチポケモン全員に乗せる。……ウラ、オモテ、ウラ。計10ダメージだな」
ガブリアスが再び体を前に傾けながら長岡のベンチにいるエレブーとプラスルを一瞥してから咆哮した。見えない力かプラスル50/60とエレブー60/70は衝撃波を食らったかのように後ずさる。
「レベルアップしただけでダメージかよ!」
「ここからが本番だ。ガブリアスLV.Xのワザを使う。さあ、遡行せよ! 蘇生!」
ベンチゾーンに光る白い穴が開く。そしてその中から這い出るようにボーマンダ140/140が姿を現す。予定調和だ、いい感じで事が進んでいる。
「このワザは俺のトラッシュのポケモンを一体選び、たねポケモンとしてベンチに出す。その後トラッシュの基本エネルギーを三枚まで蘇生したポケモンにつける。ボーマンダに炎エネルギー一枚と水エネルギー二枚をつけて俺の番は終了だ」
「なっ、わざわざトラッシュしたのはこのためか! なんのっ、俺のターン!」
苦虫を潰したような顔をチラと見せた長岡だったが、引いたカードが良かったのか再び喜色満面になる。忙しいやつだ。
「よし、まずはサポーター、プルートの選択を発動するぜ。バトル場のウォッシュロトム(90/90)を山札のスピンロトム(70/70)と入れ替える!」
洗濯機に憑依していたロトムが分離すると、洗濯機の元に白い穴が開いてそれが吸い込まれていく。それに代わるように扇風機が穴から出してきて、ロトムはそれに憑依する。
「そしてスピンロトムに雷エネルギーをつけてエレブーをエレキブル(90/100)に進化させる! まだだぜ、風見。目ん玉ひん剥いてよーく見とけよ。スピンロトムのポケパワー発動。スピンシフト! スピンシフトは自分の番の終わりまで、スピンロトムを無色タイプとして扱うポケパワーだ」
「無色タイプに。なるほどな、ガブリアスLV.Xの弱点は無色タイプだ。それを狙ってか」
「そういうこと! スピンロトムで攻撃、エアスラッシュ!」
スピンロトムが不可視の衝撃でガブリアスLV.Xを弾くように攻撃する。本来は60ダメージなのだが、無色タイプとなったスピンロトムはガブリアスLV.Xの弱点をついている。60ダメージが二倍となって120ダメージだ。残りHPが尽きたガブリアスは天井を見上げるように仰向けに倒れ、気絶に追いやられた。
「そしてコイントス。ウラならスピンロトムのエネルギーを一枚トラッシュする。……オモテ、セーフだ」
「それだけじゃないぞ。ガブリアスのポケボディー、竜の威圧を忘れてもらっては困る。雷エネルギーを戻してもらう」
「でもガブリアスLV.Xが気絶したから俺はサイドを一枚引く。ターンエンド」
長岡の番が終わることでスピンロトムは元の雷タイプに戻る。虚を突くようなプレイングで予定よりも早くガブリアスLV.Xが倒されたが、まだエネルギーが大量についているボーマンダ140/140がいる。
「勝負はこれからだ。今度は俺から行かせてもらうぞ」
翔「今日のキーカードはスピンロトム!
こいつは無色タイプにもなれる!
せんぷうで2進化、LV.Xのポケモンを手札に戻してやれ!」
スピンロトムLv.46 HP70 雷 (DPt2)
ポケパワー スピンシフト
自分の番に一回使える。この番の終わりまで、このポケモンのタイプは無色タイプになる。
無無 せんぷう
コインを1回投げオモテなら、相手と相手についているすべてのカードを、相手プレイヤーの手札にもどす。
無無無 エアスラッシュ 60
コインを1回投げウラなら、自分のエネルギーを1個トラッシュ。
弱点 悪+20 抵抗力 無色−20 にげる 1
───
藤原拓哉の使用デッキ
「ペインフルナイト」
http://moraraeru.blog81.fc2.com/blog-entry-668.html
「あれ、ボルトさんとハンサムさんとゴロウは?」
数日後。出発の準備が整ったダルマ達セキエイ高原の面々は、進軍経路を確認するためにポケモンリーグ本部ビルのある部屋へ集められていた。既に夜は更け、隠密活動をするにはもってこいである。現在集合しているのは、ダルマとユミ、ジョバンニとドーゲンのみだ。
「ボルト様とハンサム様は別行動だそうです。ゴロウ様はどうされたのでしょうか」
「彼なら特別に修行中だよ」
そこに、ワタルがドアを開けて入ってきた。右手には丸めた大きな紙がある。
「なんでも、キョウさんに付きっきりで稽古してもらってるらしい」
「キョウって、四天王のですか?」
「うん、だから僕達の隊はしばらくこの5人で進むことになる。彼は後々援軍として参加してもらうよ」
ワタルはそう説明すると、咳払いを1回した。一同が彼に注目する。
「さて皆さん、僕達は2つの隊に分かれてコガネシティを目指します。1つは僕が率いる隊で、メンバーはここにいる全員です」
「おいおいあんた、いくら人手不足といっても、さすがに5人は……あ、チャンピオンだったねあんた」
ドーゲンは自分の疑問に勝手に納得し、うなずいた。ワタルは続ける。
「はい、こちらには僕とジョバンニさんがいるので大丈夫です。それでは、進路の確認をしときますね」
ワタルは机に右手の紙を広げた。書いてあるのはジョウト地方の地図と大量のメモ書きである。
「まず僕達はセキエイを抜け、直接フスベシティに進みます」
「いきなりフスベですかー。何かあるのですか?」
「……ここにはジョウト地方の電気を賄う発電所があります。がらん堂の強さはポケモンセンターによる無尽蔵の回復ですから、それを止めようというわけです。もっとも、ポケモンセンターには予備電源がありますから油断はできませんけど」
「なるほど。では、その次はどうするんですか?」
「……フスベを攻略した後は、隊を分けて進みます。僕達はキキョウシティ、別動隊はチョウジタウン経由でエンジュシティに。どちらの街も交通の要地だから、ここを押さえれば物資の輸送を止められます」
「どれどれ、キキョウシティに行くにはくらやみのほらあなを通るのか。ゲリラ戦もいいところだな」
「ドーゲンさん、それは言わない約束ですよ。ともかく、2つの隊は36番道路で合流して決戦に臨みます。相手は民間人、鍛えぬかれたポケモンリーグの敵ではありません」
そこまでワタルが言い切った時、彼の背後にある扉がひとりでに動いた。外から1人の男が入室してくる。
「そいつは聞き捨てならぬ台詞なり。速やかに撤回すべし」
「だ、誰だ!」
ワタルは背後の男に向けて叫んだ。男は簡素な防具を身につけ、円錐型の帽子をかぶっている。無精髭を生やし、モミアゲがあごでつながっている。
「背後を取られてその余裕……また、愚かならずや」
「……あの、言ってることがよくわからないんですけど」
ダルマは冷静に突っ込みを入れた。ジョバンニがそれをフォローする。
「どうやら、『背後取られてそんな呑気とは、なんて愚かなことだ』と言ってるようでーす。文語を使うとわかりづらいですねー」
「それで、あんたは誰だ? 俺はドーゲンという者だが」
「……名乗られた手前、名乗るべし。それがしはサバカン、がらん堂が誇る猛者なり」
謎の男サバカンの言葉に、周囲は言葉を失った。無理もない。厳重警備されているはずのセキエイ高原にがらん堂の刺客の登場が意味することは明白だからだ。
「一体どこから入った? いや、それより他の隊員は!」
「焦るな、チャンピオンよ。今宵はそれがし1人、他には手をつける余裕なし。それがしは、内より入りて衛士を見ず」
「衛士とは警備のことでしょうか。内側から入ったということは、このビルのどこかに隠された入り口でもあるのですか?」
「……それ以上は他言不用だ、娘。さて、それがしの役は貴殿らの力を計ることなり。いざ尋常に勝負!」
サバカンは廊下まで下がると、ボールを取り出して投げた。出てきたのは赤く、両手に目玉のあるハサミを持ったポケモンである。通常より3倍くらい速そうだ。また、頭には妙な柄の鉢巻きを装備している。
「あのポケモンは……」
ダルマの図鑑の出番だ。サバカンのポケモンは、ハッサムと呼ばれるストライクの進化形である。鋼タイプがつき素早さこそ低いものの、優秀な耐性で繰り出しやすい。最近はバレットパンチを習得するようになり、決定力がかなり向上している。
「よし、ここは僕に任せてほしい。カイリュー!」
ワタルもサバカンに対抗してポケモンを出した。太い尻尾に小型の翼と角を持つ、ダルマ達が脱出する時に乗ったポケモンだ。
「あれは、この間のカイリューですわね」
ユミも図鑑を引っ張り出した。カイリューは珍しいドラゴンタイプを持ち、攻守にわたり高い能力をほこる。近年野生の個体が発見されて大騒ぎになったそうだ。
「さあ、いざ参らん。バレットパンチだ」
「甘いな、大文字!」
先手はハッサムだ。ハッサムは自らを白銀の弾丸とし、勢いをつけてカイリューに突進した。攻撃に成功すると一気にサバカンの元に逃げ帰り、カイリューの炎を軽やかに避けきった。カイリューは苦しそうな表情である。
「くっ、たかが先制技でここまで効いてくるなんて……」
「ハッサムの特性はテクニシャン。持ち物はこの拘り鉢巻き。元より高き攻撃を活かせば、チャンピオンのポケモンと言えどかくなるべし」
「あのハッサム、スピードをバレットパンチでカバーしとるな。こりゃ普通にやっても捕まらんぞ」
端っこで鍋をかぶりながらドーゲンがハッサムの戦いを分析する。それを聞いたワタルは不敵な笑みを浮かべた。
「大丈夫ですよ。僕は腐ってもチャンピオンですから」
「ほう、それはなんともかたはらいたし。ハッサムの攻撃は耐えてせいぜい2回……所詮この程度よ。げに悲しきは貴殿が弱さ。トドメだ、バレットパンチ」
ハッサムは再び動き始めた。しかし、カイリューは引き付けるだけで何もしてこない。
「……そこだ。カイリュー、燃えろ!」
ワタルが叫ぶと、カイリューは自らに火を放ち、瞬く間に火だるまとなった。加速していたハッサムだったが、カイリューの熱で少し怯んだ。これを見逃すチャンピオンではない。
「今だ! カイリュー はかいこうせん」
カイリューは素早く体の炎を消し去ると、口から黄金色の光線を発射した。光線はハッサムの胸部を直撃し、サバカンもろとも壁に叩きつけた。ハッサムは崩れ落ち、サバカンも片膝をついた。
「ぬぬぬ、少し見くびったか。……今日はこの辺で失礼する。しかと報告せん、『ポケモンリーグのワタルはやや危険だ』と」
サバカンはハッサムをボールに回収すると、膝を引きずりながらも一目散に走りだした。
「あ、待て! 皆さん追いかけましょう!」
「はい!」
「了解です!」
「逃がしませんよー!」
「待たんか若造!」
ワタルに促され、皆一斉にサバカンを追った。彼の背中を捕まえようと懸命に走るが、いまいち距離が縮まらない。しばらく走ったサバカンはポケモン交換システムのある部屋に入り込んだ。5人もすぐさま後に続く。
「御用だ、観念……あれ?」
「サバカンが」
「いないです」
「だと……?」
「おー、これはミステリーでーす」
一同は呆気に取られた。交換所には人1人おらず、もぬけの殻と言って差し支えない状況である。部屋には隠れ得る場所などなく、また逃げられる場所もない。ダルマはまごついた。
「うーん、どういうことだろう。手品でも使ったのかな?」
「それはないと思います、ダルマ様。タネになりそうなものなんてどこにもないですもの」
「確かに。じゃあもっと根本的な何かがあるのか……」
ダルマは頭をかきむしった。ユミ、ジョバンニ、ドーゲンも考え込む中、ワタルは気を取り直してこう指示するのであった。
「しかし、やつがいないのは明らかです。安全が確保された今、大至急状況の把握に移りましょう!」
・次回予告
いよいよ打倒がらん堂の勢力が出発した。最初の目的地、フスベシティに向かう道中、ダルマ達は様々な話をする。それは、今の彼らにとって数少ない安らぎの時であった。次回、第39話「戦場ティータイム」。ダルマの明日はどっちだっ。
・あつあ通信vol.19
この連載でのコガネシティは色々ぶっとんでます。前近代の街並み、生活風景、コガネ城etc...。しかし、構想段階ではこれを遥かに上回るトンデモ設定でした。まず街がガラス管(上空数百メートルまで続く)で覆われ、地上からの強力な電磁石の反発で大地を浮かべます。上部の大地が影を作らないように高度は調整可。連絡手段はエレベーターのみ。で、上は現代のような大都会、下は風情残る街並み(連載でのコガネシティと同じ感じ)というものでした。今思うと……うん、企画って大事。
ちなみに、サバカンさんが言っていた「かたはらいたし」、近世以降は「笑っちゃうぜ」という意味ですが、それ以前は「傍ら痛し」で「気がかりだ」とかいう意味となります。今回は前者の意味が適切でしょうか。
あつあ通信vol.19、編者あつあつおでん
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