マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
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  •   [No.520] 風物詩シリーズ 投稿者:   投稿日:2011/06/10(Fri) 01:22:58     43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    初投稿です、鶏です。

    なんとなくだらだらと書いてみました……。
    たぶん更新するとしたら、これからもそんな感じで更新します。
    なのでクオリティは期待しないでください!

    時季を先取りしたノベルになってたらいいなって思います。


    【書いていいのよ】【描いていいのよ】【批評していいのよ】

    一応つけておきます!


      [No.519] 23話 本戦二回戦開始 太古の化石 投稿者:照風めめ   《URL》   投稿日:2011/06/08(Wed) 23:36:25     69clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    「エレキブルで攻撃!」
     激しい音と光が巻き起こるが、モニターはしっかりと確認出来る。相手のポケモンのHPは尽き、最後のサイドを引くと試合終了のブザーが鳴る。
     急いでステージから降りて愛する彼女の元へ向かった。
    「百合、仇はとったぜ」
     コツンと誰かが後ろから俺の頭を叩いた。振りかえれば仏頂面の翔がいる。
    「バーカ、お前が勝っただけで長谷部さんの仇はとれてねーよ。仇とった言うなら風見倒してからにしろよ」
    「ちぇっ」
     不満そうに言葉を吐くと、深く深呼吸してからふざけていた雰囲気を捨て、真剣な眼差しで翔を見つめる。
    「翔、お前も負けんなよ」
    「当たり前だ。そんな簡単に負けるかってんだ。ま、決勝で当たったらそんときはよろしくな」
    「おうよ」
     決勝……。そう考えると胸の中からふつふつと熱いものが湧きあがってくる。ようし、やってやる! 待ってろよ!



     恭介と言葉を交わしたすぐあとに、違う場所から対戦終了のブザーが鳴る。そっちに目をやると、悠然と立ち去ろうとする拓哉。その様子から勝ったのだと伺える。負けてあんな立ち回り出来るほどあいつはおとなしくない。
     ステージが二つ開いたとなれば、そろそろ俺の出番がやってくるはずだ。一分経たないうちに、予想通り俺の名前が呼ばれる。
     指定されたステージに上がり、山札をシャッフルして所定の位置に置く。俺の二回戦の対戦相手はボサボサの短髪にポケットが大量にあるベージュのズボン、そしてやや汚れた白いTシャツを身に纏っている。とてもじゃないが季節を間違えている。今は冬だ。寒くないのかこいつ。
     ……ああ、でも小学校のときって冬でも半袖短パンのヤツいたよなぁ。アレと同じ理論なのか。
     してその対戦相手の名前は石川薫か。俺の一つ年下らしい。一つ下ってことは中三か。中三でこの服装なのか。
    「よろしくな」
    「……よろしく」
     うーん、返ってきた返事があんまり芳しくない。まあいい、ただただ全力でぶつかるだけだ。
    「さあ、そこの坊主! 勝負だ!」
    「……俺は女だ!」
    「そうか、じゃあ……って今なんて?」
    「俺は女だって言ってるんだ。坊主じゃない」
     はぁ? 渋柿を食べたような苦い表情がモロに現れる。
     えーと、どういうことだろう。もう一度石川の容姿を見てみる。うん。さっきと一緒の季節感が一切ない服装だ、変身したわけでもなんでもない。
     いやいやそんなことではないだろう。ルックスなんて関係ないんだ、ボーダーレスだ! 見た目で判断するのは一番いけない。先入観は危険だ。そう言って必死に自分をなだめる。うん。そういうのは良くないね。
     とはいっても一人称が俺って珍しいよね。っと、今はそっちに現(うつつ)を抜かしてる場合じゃない。
    「はぁ、そうか。じゃあ仕切り直しだ」
     と言って一つ咳払い。
    「よし、そこの……。勝負だ!」
    「そこの、ってなんだよ。いいからさっさと始めよう!」
     先攻は俺がもらうことになった。山札から七枚カードを引き、たねポケモンをセット。続いてサイドカードを三枚伏せて対戦が幕を開ける。
     俺の最初のバトルポケモンはヒコザル50/50。一方相手のポケモンは……。なんだこれ、これはポケモンなのだろうか。
     バトル場にはポケモンがおらず、ただただ小さな石ころが転がっているだけで、イシツブテでもなさそうだ。
    「なんだこれ? まぁいいや、俺のターン。手札の炎エネルギーをヒコザルにつけて、噛みつく攻撃だ!」
     ヒコザルが果敢に突撃して攻撃すると、石ころは無機質な音をたてて転がっていった。念のためにモニターで確認すると、きちんと石ころ30/40にダメージカウンターが乗ってる。ということはポケモン扱いのようだが。
     と同時に妙なことに気づいた。俺のヒコザル40/50がいつの間にかダメージを受けている。
    「あれ、ヒコザルになんでダメージカウンターが」
     戸惑う俺に、向かい側から得意げな顔をした石川が声をかける。
    「お前が攻撃したことによってツメの化石のポケボディーが発動したんだ。鋭い石室。このポケモンが相手によるワザのダメージを受けたとき、ワザを使った相手にダメージカウンターを一つ乗せる」
    「か、化石?」
    「そう、化石だ。化石のカードは本来はトレーナーカードだが、総じて無色のたねポケモンとして場に出すことができる。そしてこれを気絶させればもちろんお前はサイドを引くことが出来る。化石は特殊状態にはかからず、逃げれない。そして俺の番に任意にこいつをトラッシュできる。しかし俺が任意でトラッシュした場合はお前はサイドを引けない」
     へえ、つまりその石ころもほとんど普通のポケモンと大して変わらない立ち振る舞いが出来るってことだな。
    「化石デッキか。ツメの化石ということはアノプス、アーマルドだな」
    「へっ、俺のターン。ベンチに新たな化石を呼び出す。ねっこの化石!」
     相手のベンチエリアにこれまたちっさい石ころ40/40が転がる。
    「ねっこの化石はポケボディー、吸い取る石室の効果によってポケモンチェック毎にダメージカウンターを一つ取り除いていく」
     中々味な効果だ。ダメージを与える化石と、回復する化石と、か。
    「そして化石は現代に蘇る! 手札から不思議なアメを使い、ツメの化石をアノプスに進化させる!」
     化石が光を放ちながら大きくなり、そこからようやくご存じアノプス70/80の登場である。
    「アノプスに闘エネルギーをつけて攻撃。ガードクロー!」
     近づいてきたアノプスの鋭い爪による一撃を受け、ヒコザル20/50のHPがあっという間に風前の灯だ。まさかいきなりこんな後手に回されるとは。
    「ガードクローを使ったため、次のターンアノプスが受けるワザの威力はマイナス20される」
     二ターン目で早速−20されるというのはいくらなんでも厳しいぞ。
    「お前がいくらヒコザルにエネルギーをつけたところで使える技は噛みつくと炎のパンチだけ。炎のパンチは追加効果もなくダメージも20。お前は俺のポケモンにダメージを与えることすらままならない」
    「だが、進化したらそれも別の話だろう? 俺のターン、まずはヒコザルをモウカザル(50/80)に進化させる! そしてベンチにもう一匹のヒコザル(50/50)を出す」
     次の相手のターンでアノプスのもう一つの技、シザークロス、元の威力は30だがコイントスでオモテなら威力が20上がるワザで攻撃されればコイントスの結果次第だがモウカザルは気絶してしまう恐れがある。目先を追うより先を見たプレイングで手を打っていかないと。
    「ヒコザルのほうに炎エネルギーをつける」
    「ん、それでいいのか?」
    「ああ。モウカザルのワザは二つある。片方がエネルギー二個で使えるにらむだ。コイントスがオモテなら相手をマヒにできるが、ワザの威力は20。ガードクローの効果で相殺されてダメージが与えられない。それならエネルギー一つでも使えて40ダメージもあるファイヤーテールを優先するぜ。さて、モウカザルで攻撃。ファイヤーテール!」
     モウカザルが燃え盛る尻尾を振って、アノプスを殴りつける。
    「ファイヤーテールのダメージは40。ガードクローがあれど20ダメージは受けてもらう。そしてファイヤーテールの効果。コイントスしてウラならば、モウカザルについている炎エネルギーを一枚トラッシュ!」
     コイントスをオートで判定してくれるボタンを押す。その結果は……ウラ。仕方あるまい、炎エネルギーをトラッシュへ送る。
    「俺のターン! 手札の闘エネルギーをアノプスにつけ、ひみつのコハクをベンチに出す。ひみつのコハクのポケボディーはハードアンバー。ベンチにこのカードがある限り、このカード自身はワザのダメージは受けなくなる」
     ツメの化石とは違って、ねっこの化石ともやや違う方向性だが保守的な効果だ。
    「そしてねっこの化石をリリーラへと進化させる」
     先ほどと変わらないエフェクトで、ねっこの化石がリリーラ80/80が現れる。闘タイプのアノプスに対し、こちらは草タイプか。
    「そしてアノプスで攻撃。シザークロス!」
     石川がワザの宣言と同時にコイントスボタンを押す。
     このシザークロス、先ほど言ったように攻撃時にコイントスをしてオモテなら追加ダメージを与える。ウラが出ればモウカザル50/80はかろうじて耐えれるが……。
    「オモテだ!」
     石川の声と同時にアノプスの二対の鋭いツメがモウカザルに振り下ろされる。
    「サイドを引いて俺の番は終わりだ」
    「くっ、俺のターン」
     俺のベンチにはヒコザル50/50しかいないので次のバトルポケモンは強制的にヒコザルになる。しかし参ったな、まさかこんなに早くサイドをとられるのか。
     今引いたカードはノコッチ。しかしアノプスが闘ポケモン。下手してノコッチを出すのは相性的にリスキーか。
    「サポーターのオーキド博士の訪問を発動。カードを三枚引いてその後手札を山札の一番下に置く」
     一番下に置いたのはノコッチ。そして引いたカードはモウカザル、アチャモ、ゴージャスボール。よし、いい感じだ。
    「続いてグッズカード、ゴージャスボールを発動。山札から好きなポケモンを一枚手札に加えてデッキをシャッフル。俺はゴウカザルを手札に加える」
     打開策への道は開けた。とりあえず今は攻勢に回って攻めて攻めて攻めまくる!
    「アチャモ(60/60)をベンチに出し、ヒコザルをモウカザルへ進化させる。そしてアチャモに炎エネルギーをつけてモウカザルで攻撃。ファイヤーテールだ!」
     モウカザル80/80がアノプスに再び炎の尻尾で攻撃する。これでアノプスの残りHPは10/80だが、コイントスの結果によってはエネルギーをトラッシュしなくてはならないが。
    「コイントスの結果は……オモテ。これでエネルギートラッシュの必要はないな」
     しかしなんて面白味のないやつなんだこいつ。ただ対戦を淡々と作業のようにこなしているように感じる。
    「俺のターン。サポーターの化石発掘員を発動。自分の山札からトラッシュを選び、その中から名前に化石とつくトレーナー、または化石から進化するポケモンのうち一枚を選び手札に加える。俺は山札のアーマルドを手札に加え、アノプスに進化させる!」
     地を這っていたアノプスが、急に一・五メートルの二足歩行になるだけで威圧感がある。が、そういう大きさによる威圧感だけではなく、このアーマルド70/140はきっと面倒くさい相手になるようなそういう予感も感じさせる。
    「アーマルドに草エネルギーをつけて攻撃。ブレイククロー!」
     指示を受けたアーマルドは、姿かたちに似合わず全速力でこちらに駆けて来て爪を振り下ろし、その実力を徹底的に発揮する。



    注・一番最初に化石のカードをセットするというプレイングは実際の対戦では行えません。このプレイングはあくまで演出によるものですので、真似はしないでくださいね♪

    翔「今日のキーカードはアーマルド!
      硬いガードで相手の攻撃を防ぎつつ、
      ブレイククローで大ダメージ!」

    アーマルドLv.52 HP140 闘 (DP5)
    ポケボディー かせきのよろい
     このポケモンの受けるワザのダメージが「60」以下なら、このポケモンはそのダメージを受けない。
    闘闘無 ブレイククロー  60
     次の自分の番、このワザを受けた相手が受けるワザのダメージは、「+40」される。
    弱点 草+30 抵抗力 ─ にげる 2


      [No.518] 8、かっこよさとは 投稿者:キトラ   投稿日:2011/06/08(Wed) 22:30:59     74clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

     コンテスト会場は、マスコミに囲まれていた。カナシダトンネル崩壊にくわえ、コンテスト会場に現れた謎の黒いローブ。放っておくわけがなく、入り口はあっという間に塞がれる。観客の一部はインタビューに答えていたが、ガーネットとミツルはそれに興味がなかった。むしろ目の前で全ての力をかき消した男の人。そこらのポケモンには出せないような強い力を一瞬で無にした。そのことが引っかかる。
     無言で歩いて行く。コンテスト会場から遠くなるように。ふと思い出したようにお互いの顔を見合わせた。意思疎通ができるわけでもなく、どちらかともなく口を開いた。最初は無難な会話だったが、だんだんミツルの話題が傾いてくる。
    「あの人は、無事ですかね」
    あの人とはコンテストに出ていた人。カイリューがとても目立っていたし、何より青と白の統一された服装は目立っていた。ミツルが気になるのも無理はない。ガーネットも妙に気になる。どうみてもコンテスト用に調整されたカイリューという感じはしないし、戦場をくぐってきたような強さが溢れていた。
     しばらく行くとミツルが駆け足で去って行く影にぶつかった。ラルトスがかばうように前に出る。その影は振り返ると、小さく謝る。さらに行ってしまいそうだったのをミツルが引き止める。コンテストに出ていた人だ。
    「あっ、トウカシティの!」
    驚いたようにミツルを見ていた。青いブラウスに濃い青のスカート。紺の靴は履き慣れている。白い上着は走った後でとても暑そうだった。誰かを探しているようだった。けれど走ることなくミツルに近づく。
    「初めまして。私はミズキ。一応ポケモントレーナーよ」
    「あ、ミツルです、よろしくおねがいします」
    「ガーネットです、どうも」
    ミズキの足元には炎の鼠、ヒノアラシ。早く行こうと誘うように飛び跳ねる。足にすり寄り、あまえてるようにも見える。けれどぴたりと動きをとめ、背後から来る人間に威嚇の構えを見せた。ミズキが唖然とした表情を見せる。ガーネットとミツルも驚いた。あのステージに上がってきた男、その人だ。
    「ご無事でしたか、ミズキさん」
    ヒノアラシは今にも噛み付きそう。コンテストの様子から知り合いだと思っていた。けれどヒノアラシを見れば一目瞭然。ヒノアラシだけじゃない。その場の人間は密かにボールを構えていた。
    「妖しいものではありませんから、そうポケモンを構えなくてもよろしいでしょう」
    「妖しくないのであれば、まず名を名乗りなさい」
    男はミズキの命令に導かれるように話しだした。
    「私はハウト。ただの興味であの黒いローブを追い掛けてます」
    落ち着いた様子。悪い人には見えないけれど、信じるには材料が足りなすぎる。警戒したようなミズキの目がそういっていた。
    「まあ初めましてがあんな場所では信じてもらえないのも納得です。けれど私は貴方の敵ではないと断言しておきます。私はホウエンに住んで長いですので、貴方が探している人のことも教えられると思うのですが」
    「なぜそれを知ってるの!?」
    「私はホウエンにかなり長いこと住んでいますから、たいていの事は解りますよ。それとガーネットさん、貴方の片割れは無事ですし」
    見透かすような紅色の目。じっと見続けると意識を持って行かれそうだ。思っていることが全て筒抜けになるような感覚がする。ミツルに肩を叩かれ、ようやくガーネットは目をそらした。
    「またあの黒いローブのやつは来ます。ただ本当に予想がつかないので、危なくなったら私に連絡ください。出来る限り飛んで来ますよ」
    自分から連絡先を明かす。ハウトのメモを受け取るミズキの顔は困惑していた。それだけ言うと去っていくハウトを見送る。不思議さが残る出来事だった。


     ハウトが言っていた、片割れが無事ということ。もしかしたらの期待を胸に走りに走って、彼のところへと急ぐ。エレベーターも待ってられず、階段を駆け上がって。廊下を走るなというポスターに目もくれず。目当ての病室へ走り込み、閉まっているカーテン越しに声をかけてみる。息が上がって上手く声をかけられない。
     返って来たのは、間の抜けたような声。起きたのか、とカーテンを開けたら、エネコと共においしそうにプリンを食べてたザフィール。最後に見た姿とうってかわって元気そうな彼に、多少の力が抜ける。
    「お、ガーネット無事だったんだ!」
    「無事も何も・・・全くもう」
    しかし一体いくつ食べたんだ。空が積み上がっている。訳を聞けば、空腹が耐えられないと訴えたところ、口を切ったこともあって柔らかいものなら許可が出たそうだ。それでその有様。また歩けるなら歩いて良いと言われてしまったがためにこんな大量のプリンが。ゴミ箱を覗いたらアイスの袋もある。あきれてガーネットは二の句がつなげない。
    「ご飯食べれば良かったじゃない!」
    「いや気付いたらさあ、お昼ご飯過ぎててさあ。夕方からならいいよっていわれたんだけど待てなくて」
    今度は食べ過ぎで入院してしまえ。軽く頭を小突く。一つ食べるかと誘われ、ありがたくもらった。プリンのふたをはがした時に、思い出したようにザフィールが側の棚に手をかける。その時、袖からのぞいた手はかなり先まで包帯が巻かれている。
    「これ、ありがとう。血で汚したみたいで、ラッキーが洗ってくれたらしいんだけど」
    「あ、忘れてた。大丈夫、怪我した時のために赤いもんだから」
    ラッキーの洗濯技術はすごい。汚れたらしいが、全く跡がない。元々、目立たないように赤い色をしているのだ。外で何かあったとき、応急処置ができるように。帽子兼救急のバンダナ。再びガーネットが頭に慣れた手つきで結ぶ。
    「ワイルドだなお前・・・」
    「そう?外に行くんだから当たり前じゃない?」
    「そんな用意のいい人間なんていないよ」
    笑ってる。一応、褒め言葉として受け取る。話してるうちに、ザフィールが10個目のプリンを完食していた。次に手をかけた時、さすがにもうやめなよ、と言葉が出た。
    「プリンばっかりじゃ飽きるでしょ。明日やわらかいもの買ってきてあげるから」
    「いいの?」
    「仕方ないじゃない、けが人なんだし」
    まだプリンが5個も見える。明日食べろと、全部冷蔵庫にしまわせる。


    「はー、やっぱり足りねえよ」
    その日の夕食も完食。けれど成長期の彼には足りないらしく、9時の消灯後に空腹で目が覚めた。廊下しか電気がついてない。他には誰も起きてない。トイレに行こうかと起き上がる。夜の病院は昼に聞こえない機械音が目立つ。少し長い廊下を行くと、一人の男とすれ違う。自分のことは棚にあげて随分若いなと思った。
    「みつけた、負の感情・・・」
    大きくなった。真っ黒な人形がザフィールに覆いかぶさる。思わず叫んだ。足は痛むが、逃げなければ殺される。そんな予感がした。人間は明るい方へと行く習性があるのだという。夜中も明るい詰め所へと駆け込んだ。
    「ゆ、ゆうれい、幽霊がでたんです!!!」
    それを聞いたスタッフはあきれたように言った。
    「そんなものいるわけありません。ゴーストタイプのポケモンはもういませんから、安心して寝てください」
    「いやちがうそういうのじゃなくて、真っ黒な人形みたいのが!!!」
    「だから・・・」
    ラッキーが肩を叩いた。スタッフたちにここは任せろと言ったようだった。怖がるザフィールの手をひいて、幽霊を見たという現場に行く。そこにはすでにいつもの夜の廊下だった。
    「いやだからここにいたんだよ、幽霊が!」
    ラッキーは歌いだす。わけのわからなくなって暴れる人を眠らせる為の技、歌う。例外なくザフィールもその音色に眠ってしまった。


     元気なのだから、怪我が治り切る前に退院できそうだった。ということはその日まではそこにいるということ。それに午前はどうしても会えないのだから、その間はシダケタウンの散歩となる。疲れて公園に座った。そういえばどうして助けてしまったのだろう。あのまま見ていれば、直接手を下さなくても死んだはず。いや目の前で人が死ぬのを見ていられなかった。それが誰であっても。
    「ガーネット!」
    手を振っている人。確かあれはミズキ。青と白の服装は相変わらず。
    「まだいたんだ!てっきりもう違う街に行っちゃったのかとばっかり!」
    「知り合いがちょっと入院しててね、それまではここにいようかと思う」
    相変わらずヒノアラシがくっついて来ている。隣に座ると、ヒノアラシもミズキの膝の上に乗ってきた。
    「そうなの?大変だら」
    「怪我したのは私じゃないからね」
    ヒノアラシがガーネットの膝の上にも乗ってくる。随分と人懐っこいポケモンだ。先日のハウトを警戒していた時とは大違い。
    「そういえばミズキはコンテストたくさんやってるの?」
    「あんまりやってないんだら、久しぶりにやってみようかとおもって。かっこよさコンテストって迫力あって一番好き」
    「ミズキの思うかっこよさって、迫力なの?」
    「そこまで言うとちょっと違うかな。かっこよさってね、普段どれくらいだるくてなまけててもね、決めるところ決める。それがかっこよさだと思うんだよ」
    「どういうこと?」
    「そうだねえ、私は音楽を習った時に先生に言われたのが、決めるところ決めることが出来るなら、後はみんなバラバラでもいいって言われた。確かにその通り。人間の記憶なんてね、全部残らないんだから。しかもコンテストみたいな時間の流れる舞台では、ここだというところで技を出せれば全て決まるもの」
    ミズキが立ち上がる。もうそろそろ昼食の時間。一緒にどうかと誘われる。不思議な人だけど、どうも知らない人という感じがしない。言葉のイントネーションが地元に似ているからだろうか。もっとカントー寄りの音に似ている気がした。


    「どうしたのそんな顔して」
    甘いのが好きならモモンの実。やわらかくて評判だった。時期は多少はずしているけれど。喜ぶと思って持って行ったら、ザフィールはものすごい真剣な顔つきをしていた。真剣というよりもおびえたような顔だった。エネコが慰めるように彼の上に乗っている。
    「ガーネット、俺の話信じてくれる?」
    「ザフィールが犯人って白状する話なら信じてあげる」
    数秒の沈黙。ザフィールが顔をそむけた。誰も信じてくれない落胆の顔で。
    「・・・で?」
    「信じてくれる!?」
    食いつきの良さから、誰にも相手にされなかったのだろう。話してみ、とガーネットが言うと、小声で話し始める。
    「実は、幽霊を見たんだ」
    「病院に幽霊がいるって有名じゃん、見たことないけど」
    「それが、昨日会ったんだ。大きな黒い人形で、わーっと大きくなったと思ったら、『みつけた』とかいっちゃって、俺にかぶさってくるの。怖くてスタッフさんにも言ったんだけど誰も信じてくれなくて」
    「にわかに信じられないけど、どこで見たの?」
    「部屋でて廊下を右にまがってしばらくいったところ」
    行ってみようと誘い出す。ガーネットを前にして、おそるおそる歩いているのを見ると、やはり本当に見たのだろう。昼間は明るく、外の光が入ってくる廊下は、見舞い客や他の入院している人が行き交う。ガラガラと点滴棒を引きずった人が、若いねーとはやし立ててくる。
    「ここか、夜になると出るのかもしれないね」
    「しれないじゃなくて・・・」
    昨日見た男。青い死んだような目でこちらを見た。そしてザフィールと目が合うと、にやりと赤い口角をあげる。
    「今日は2ひき・・・負の感情・・・」
    大きくなる。そして黒い幕が広がり、飲み込まれそうになる。逃げたいが、手を引いて逃げ足を出せるほど今は状態が良くない。
    「行け、シルク!」
    ポニータのたてがみの炎が揺れる。その熱さに一旦影は引いた。そして火の粉を命じる。室内にも関わらず、ゆらゆらと揺れる火の粉は影の本体を捉えた。熱さに身もだえる黒い影。その正体は随分と小さいもので、ザフィールはポケモンの名前をつぶやいた。
    「カゲボウズ・・・」
    「え?なにそれ?」
    「人の恨みとか妬みとか、そういったマイナスの感情を吸い取って生きてるって言われてるポケモンだ。もしかして!」
    カゲボウズは恨むようにシルクを睨みつける。頭の上に小さな黒い玉を作り出す。それはどんどん大きくなりトレーナーに向けて発射される。それはザフィールの方へ飛んで行き、彼の胸を直撃した。あまりの痛みに座り込む。全ての傷が再び主張を始めるように痛みだす。廊下に倒れそうになった時、ガーネットが体を支えた。
    「火の粉で燃やせ!」
    火の粉がカゲボウズの作る影に舞う。影が風で火の粉を本体に飛ばさないようにしていた。シルクは届くまでずっと火の粉を飛ばし続ける。やがて焦げ臭い匂いが廊下一帯に充満する。何が焦げているのか解った時にはカゲボウズは悲鳴をあげていた。恨みを込めて生まれた人形の体に、火がついたのだ。そして火災報知器や煙探知機が警報を鳴らす中、熱さにたまらず空いていた窓から外へ出て行く。

    「シャドーボール食らったねこりゃ」
    そう診察され、痛み止めを処方されただけだった。これくらいなら何も治療しなくて大丈夫と。後でもらえるとのことで、ベッドで待つ。
    「さすがの病院ね、あんなゴーストポケモンがいるなんて」
    「それは、病院だけのせいじゃないよ」
    ザフィールは覚えてる。カゲボウズは負の感情が2匹といっていた。夜中にカゲボウズに会ってしまったのも、自分の中にある負の感情が餌だったのかもしれない。これじゃガーネットのことを言えた義理じゃない。
    「ザフィール?」
    「いや、なんかそう思ったんだよ」
    心配そうに見てくるガーネット。大丈夫、と笑って和まそうとした。なんだかんだでいつも助けてくれる不思議な彼女を。


      [No.517] Re: 1巡目―春の陣5:皐月(さつき)の体育祭はあっという間に。 投稿者:フジョシ   投稿日:2011/06/08(Wed) 14:19:15     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    こんにちは、私はフジョシです。
    BL系です。何か?
    少しそんな要素を入れてくれたらこんな私でも楽しめちゃうかも知れません。
    例えば、体育祭のあとのシャワールームでとか…
    あ、すみません。もし無理だったら勝手に想像します。
    でももし興味があれば私が書いて見ようかな


      [No.516] Re: 1巡目―春の陣5:皐月(さつき)の体育祭はあっという間に。 投稿者:伊藤   投稿日:2011/06/08(Wed) 14:14:34     41clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    こんにちは、いつもトイレでよんでます。なぜなら、これを読むとよく出るからです。
    やっぱ出る杭は打たれますね、それが日本の文化ってもんです


      [No.515] Re: 1巡目―春の陣5:皐月(さつき)の体育祭はあっという間に。 投稿者:ハエ男   投稿日:2011/06/08(Wed) 14:11:19     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    いい忘れました。落とし物にTake care of yourself.


      [No.514] Re: 1巡目―春の陣5:皐月(さつき)の体育祭はあっという間に。 投稿者:ティン   投稿日:2011/06/08(Wed) 14:04:21     41clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    巳佑さん、よ!マレシアにすんでいるティンです。はじめまして、私はあなたの話し読んだ。あなたはすごい。あなたはきっと有名なサッカになる。
    私はあなたを尊敬する。私は日本の文化が好きです。アニメ、マンガは私の国でも有名だ。
    私は大学で日本語をべんきょうし、いつか日本に行って、コミックマーケットに行きたい。だからいま私は貯金している。
    そこで会おう!


      [No.513] Re: 1巡目―春の陣5:皐月(さつき)の体育祭はあっという間に。 投稿者:ハエ男   投稿日:2011/06/08(Wed) 13:59:25     46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    はじめまして、ハエ男です。趣味は占いです。今日のあなたの運勢を占ってみました。
    あなたの今日のラッキーカラーは若草色です。そうすれば色っぽい人生があなたを待ち受けています。


      [No.512] Re: 1巡目―春の陣5:皐月(さつき)の体育祭はあっという間に。 投稿者:中村房枝   投稿日:2011/06/08(Wed) 13:55:30     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    はじめまして、中村房枝、58才主婦でございます。はじめましてこのサイトを訪れ、少々戸惑いを覚えながらも、はまってしまいそうです。老後の楽しみが一つ増えました。


      [No.511] Re: 1巡目―春の陣5:皐月(さつき)の体育祭はあっという間に。 投稿者:ブランド品   投稿日:2011/06/08(Wed) 13:52:33     40clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    みすけさん、今日は狐日和ですね!ところで、好きな食べ物は何ですか?私は鍋です!


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