マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
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  •   [No.410] その13 フルボルテージの怒り 投稿者:マコ   投稿日:2011/05/06(Fri) 13:21:34     33clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    ※この話は、その9の後で、その10の前に起こったものです。

    5匹のポケモンを仲間にしたマイコが、友人であるトキとともに河川敷を歩いていたところ、明らかに傷ついている緑の体のポケモンが見つかった。
    「これは……ラクライだね」
    「ラクライ?電気のやつっぽいな。せやけど、何でこんなとこにおるんやろ?電気のポケモンなら、街中に居りそうなもんやろ」
    「そこなんだよね、問題は。……トキ君、何か嫌な予感がするんだけど」
    「どういう意味やねん」
    「虐待とか、捨てたとか、そういう線が浮かんできたんだ」
    「保護せなアカンのんちゃう?マイコ、ボール持ってんの?」
    「そこらへんの心配はいらないよ。ほら」
    そう言うと、マイコは桃色のボールをバッグから出した。
    「あれ、普通のモンスターボールとちゃうやん」
    「ヒールボールっていって、これで捕まえたら傷と状態異常を完全に治癒できるの」
    「お前セレブなん?結構値が張るって聞いとるで」
    言っておくが、このリアル世界では、モンスターボール以外の特殊な性能のボールは貴重なのだ。それを、普通の女子大生であるマイコが持っていることに、トキは首をかしげたというわけだ。
    「いや、バイトの店長から貰った。1個だけね」
    「それを、今使うんやな」
    「まあ、トキ君も私と同じ立場だったら使うと思うけど……」
    「言いたいことは分かった。人助け……ちゃうわ、ポケモン助けやろ」
    「そうそう」
    マイコはそう言って、ヒールボールを投げた。というより、転がした。
    傷ついていた稲妻ポケモンは、そのボールに反応し、開閉ボタンを押した。光となって吸い込まれ、数回ボールが揺れた後、それは収まった。出る様子はない。
    その瞬間、先程まで野良のポケモンだったラクライは、マイコの仲間になったわけだ。
    「フルメンバー勢揃いってやつやな」
    「とは言っても、戦って手に入れたポケモンじゃないけどね」
    「お前の優しさに惚れ込んで仲間になっとるんやから、へこむ必要はないんちゃう?」
    実際、マイコはポケモンを全てバトルではない方法でゲットしている。チャオブーはポカブの頃に家に送られてきた。ワシボンはヤミカラスにいじめられているところを助けた。ムンナは家に来訪した。フシギダネは老人から託された。ミズゴロウはタマゴから孵った。そして、ラクライは先程のように助けたというわけだ。
    「とりあえず、ラクライは保護したから家に戻ろうかな……」
    と、その時だった。若い男が2人の前に姿を現した。


    「誰ですか?」
    マイコが聞くと、
    「うるせえ!」
    としか返ってこなかった。
    「お前な、こっちが丁寧に聞いとるのに、うるせえはないやろ!」
    「ちょっとやめて、トキ君!ケンカは良くないって!」
    顔に青筋が立っているトキをマイコは必死になだめた。ここであまり大きな揉め事は起こしたくない。しかし次の瞬間、若い男はこう言い放った。
    「ちっ、ラクライはいねえのか」
    「どういう事?あと、あなたは誰?」
    「俺はシュウだ。ホントはこういうとこ、来たくなかったんだけどよ、俺が捨てたラクライが高個体だったようでさ、引き取りにきたんだよ」
    「「捨てた!?」」
    「すっげえ苦労したんだぜ?ライボルトにいっぱいタマゴを生ませて、孵った何十匹ものラクライの中からいいやつだけ選んで、残りはポイ、だ。都合がいいだろ?でもその中には泣く泣く捨てたやつもいるんだぜ。それがここに捨て……」

    パシン!!!

    言い終わる前に、マイコが男の頬を平手打ちした。
    「マイコ!?」
    驚いたのはトキだ。数十分前には怒る自分をなだめていたマイコが感情をあらわに怒っているのが信じられなかった。
    「ふざっけんじゃないわよ!!!たくさん生ませてその後はポイ?あんたバカじゃないの!?生ませたのなら責任持って育てなさいよ!捨てるなんてバカな真似すんじゃねえよ!!!」
    鬼気迫るマイコのキレ具合だが、男も負けてはいない。
    「わかったよ!!今からお前と俺とでフルバトルをして、お前が負けたらポケモンを全部捨てろ!」
    「シュウ、お前ふざけたこと言うなや!!なあマイコ、こんな勝負受けるだけ……」
    「受けようじゃないの」
    トキが止めても無駄だった。火のついたマイコは止められそうもない。自分から冷めるのを待つしかなかった。それでも、マイコが巨大なリスクを背負っている、負けられないバトルなのは明白だが。
    (なんで答えが賛成やねん!!おかしいやん!!落ち着いて考えたら受けたらアカンバトルって分かるやろ!?)
    トキは心の中で狼狽していた。マイコには勝って貰わなければならないのだ。


    そして、バトルはスタートした。6VS6。フルバトル。
    シュウが繰り出したのは、気性が荒く凶暴ポケモンと呼ばれるサメハダー。一方のマイコは背に種を背負う蛙のような種ポケモン、フシギダネを繰り出した。
    (サメハダーは特性が厄介なポケモンだから、触れずに倒さないと……。でも、その前に、前段階だ)
    「フシギダネ、日本晴れ!!」
    マイコが指示を飛ばすと、途端に太陽が輝きを強めた。暖かいというより、むしろ暑いくらいだ。それに対し、シュウは……
    「サメハダー、ロケット頭突き!」
    頭を引っ込めた凶暴ポケモンは防御の態勢を取り、種ポケモンに向かって、一直線に突っ込んできた!しかし、マイコは驚くほどに冷静だった。
    「ソーラービーム・クイックバージョン!!」
    強い日差しのおかげで溜め動作がなくなった太陽光線が凶暴ポケモンを一閃し、一撃ノックアウトとなった。
    「マイコ、いつの間に鍛えたん!?一撃なんて……」
    「作戦勝ちってとこかもね。向こうが気付かなかったってとこも大きいかも」
    「おいお前、忘れてんのか?日差しはまだ強いんだぜ!?ってことはよ、炎も強くなるんだよ!バグーダ、行け!」
    次いで青年が繰り出したのは、背に火山を2つ持つ、橙色の噴火ポケモン。
    「これでサメハダーの敵がとれ……」
    「戻って、フシギダネ」
    「ああ!?何で戻すんだよ!?」
    マイコは相性の悪さを感じ、種ポケモンを引っ込めた。草も毒も、バグーダのタイプである炎や地面に効果が薄いからだ。
    「じゃあ、ミズゴロウ、出番よ!」
    代わりに登場したのは、小さな沼魚ポケモン。
    「そんな小さいやつで、俺のバグーダにケンカ売るなんて見上げた根性だな!まあいい、バグーダ、突進!!」
    「ミズゴロウ、ジャンプして避けて!」
    一直線に突進してゆく様は恐怖だが、結局は当たらないと意味がない。ただでさえ小さい的がジャンプするものだから、当然の如く噴火ポケモンは沼魚を見失う。と、ここで、

    ポツ、ポツ、ポツ……

    雨が降り出した。
    「いつの間に雲が寄ってきたんだ!?後、ミズゴロウはどこに」
    「今よ、水鉄砲!!」
    「背中か!!」
    雨の補助を受けた水鉄砲は至近距離でヒットしたものだったためか、これまた一撃で噴火ポケモンが戦闘不能に陥った。
    「ジャンプの間に雨乞いしてまうなんて、判断がいつにも増して冴えとるな、今日のマイコは」
    「炎の攻撃を食らいたくなかったってのもあるけどね」
    (今こいつと戦ったとして、俺は勝てるんやろうか、神がかった判断をするマイコに)
    トキは傍観しながら、そんなことを思うのだった。


    次いで青年から出されたのはモジャンボ。モンジャラが原始の力を得て進化した蔓状ポケモンだ。マイコは当然の如くミズゴロウを引っ込め、雛鷲ポケモンのワシボンを登場させた。ミズゴロウでも冷凍ビームという有効打を持つが、草の攻撃を食らってひとたまりもなくやられるのが目に見えたので、交代させたのだ。
    「モジャンボ、日本晴れだ!」
    青年の指示により、太陽が再び雲の切れ間から顔を覗かせた。晴れたり雨が降ったり、また晴れたりと空も忙しい。
    と、途端に巨大な蔓状ポケモンの動きが素早くなった。
    「なるほど、葉緑素の特性ね」
    「勘がいいじゃねえか。でも終わりだ!パワーウィップで潰せ!」
    力のこもった鞭が雛鷲を襲う。
    「けっ、つまんねえやつ!そんじゃあ次のポケモンを出せ……!?」
    鞭で倒されたかに思われたワシボンが、素早く的確に燕返しでモジャンボに攻撃したのだ!
    「嘘だ!何でまだ攻撃できるんだよ!?」
    「タカをくくっていたみたいね。簡単に倒されるほど軟じゃないから。ワシボン、恩返しの一撃をお見舞いしてあげて!」
    マイコから受けた愛情を力に変えて雛鷲が放った一撃で、蔓状ポケモンは倒された。
    これでシュウの手持ちは半分がノックアウトされた。マイコはまだ6匹全員戦える。
    と、ここで、ワシボンの体が光に包まれ、大きく成長し、勇猛ポケモンのウォーグルとなった。
    「とうとう進化したのね!ワシボン、いや、ウォーグル!」


    青年の4匹目はこれまた巨大な2本牙ポケモン、マンムーだった。こちらはイノムーが原始の力を得て進化した姿である。マイコは相性の悪さと累積ダメージの量を考えて、進化したての勇猛ポケモンを引っ込め、彼女のパートナーである火豚ポケモン、チャオブーを出した。
    「どっちも有効打があるからなあ、弱点の突き合いになるやろうな」
    トキの言う通り、マンムーは地面技でチャオブーの弱点を突けるが、チャオブーもまた、炎や格闘の技で弱点を突ける。
    しかし、シュウの指示は意外なものだった。
    「霰!」
    途端に雪、いや、それより大きい塊がボロボロ降ってきた。
    「そして地震!」
    間髪入れず大地の震動が火豚を襲った。足元がふらつく。
    「耐えて、チャオブー、そして、火炎放射!」
    だが、炎は空しくも当たることはなかった。そして気付く。
    「なるほど、雪隠れで回避しやすくしたのね」
    ちょうどその時だった。2本牙ポケモンが火豚ポケモンの真後ろに陣取った。これはマイコにとって願ってもみないチャンスだった。
    「チャオブー、牙につかまって登って!」
    「マズイ、振り落とせ……」
    マンムーは必死にチャオブーを振り落とそうとするが、つかまる力が強く、振り落とせない。だいたい、動きがどちらかというと鈍い方に分類されるポケモンに速い動きを求める方が無茶な要求である。
    「至近距離からの火炎放射!!」
    雪隠れは距離があると効果が大きいが、至近距離だとほぼ意味がない。猛烈な炎に耐え切れず、マンムーもノックアウトされた。これでシュウの残り手持ちは2匹。


    青年の5匹目はカイリキー。マイコも5匹目、ムンナを出した。明らかにマイコが有利な対決である。と、ここで、カイリキーの体は猛毒に蝕まれた。それにマイコは心当たりがある。
    「わざと猛毒を起こすあたり、根性の特性を活かすのね」
    「そういうことだよ!カイリキー、気合いをこめろ!気合いパンチだ!!」
    カイリキーは4本ある腕のそれぞれに気を込め、技の発動準備を行った。しかし、それは逆に隙だらけという状況をもたらす。
    「チャージビーム!!」
    夢喰いポケモンの夢の煙を出す穴(?)のような部分から黄色い光が放たれ、気の注入が途絶えた。
    「何でだ!?気合いパンチをやろうとしたはずなのに」
    「1つ忠告しておくよ。気合いパンチはダメージが大きい分、相手からダメージを喰らったら集中が途切れて発動できないの」
    「ちっ、カイリキー、瓦割り!」
    「チャージビーム!」
    「岩雪崩!!」
    「チャージビーム!!」
    次々とカイリキーから繰り出される技にチャージビームで応戦するムンナ。
    (マイコのムンナならエスパー技で簡単にカイリキーを倒せるはずやねんけど……チャージビームを連射するあたり、何か策があるんやろうか?……!そうか!!)
    「クロスチョップ……」
    そして、それを待っていたかのように指示がマイコから放たれた。
    「サイコキネシス・パワーアップバージョン!!」
    夢喰いポケモンの放った強力な念の力は、カイリキーを簡単に吹き飛ばし、ノックアウトに追い込んだのだ。
    「マイコ、チャージビームを連発しとったのって、もしかして……」
    「相性としては普通だけど、特殊攻撃のパワーアップを狙っていったんだ。うまくいって良かったよ」
    これで、シュウのポケモンはあと1匹である。ラストに出されたのは……

    猛禽ポケモンのムクホークであった。


    マイコは考えた末に、ラクライを繰り出すことにした。
    「ラクライ、出てきて!」
    出てきた雷獣は、自分を捨てた相手にいきり立っている。やる気は十分のようだ。
    と、ここで、猛禽が強い鳴き声を出し、若干ながら稲妻ポケモンのパワーを削いだ。威嚇の特性である。
    さらにいきなり大技が出された。羽を畳んで突撃する、ブレイブバードだ。
    「ラクライ、電撃波!!」
    ここは必中の電撃をお見舞いしてやろうとマイコは考えたのだ。しかし、いくつかが当たった以外は弾かれ、逆にブレイブバードの直撃を喰らった。多少なりともムクホークにもダメージは来るが、ラクライのダメージも無視できなかった。
    「空を飛ぶ攻撃で、忌々しいあいつをコテンパンにしてやれ!!」
    猛禽が上空へ飛んだ。だが、これがマイコにとって大チャンスになっていたのをシュウは知らない。マイコがニヤリ、とした。
    「何がおかしいっ」
    「そうくると思った。ラクライ、雷!!!」

    ズドォンッ!!!!

    上空の相手には絶対当たる、猛烈な稲光とともに、先程まで上空から獲物を狙っていたムクホークは黒焦げとなって力なく墜落した。
    この瞬間、マイコの勝利が決まった。6匹全て残した圧勝だった。
    「おめでとう、すごいわ、マイコ!誰も戦闘不能になってへんなんて!!」
    「ありがとう!すっごく嬉しい!!」
    マイコとトキが喜び合っていると、シュウがどす黒いオーラを放っていた。
    「お前らなんかまとめて潰してやる!ベトベトン、行け!!」
    「お前7匹目なんて卑怯や!」
    「卑怯でも何でもいいんだよ!完膚なきまでに叩きのめされたのが腹立つんだよ!ヘドロ爆弾で骨まで毒に冒されながら苦しんで死ね!!!」
    「「うわああああっ!!!」」
    そして、2人に向けてヘドロの塊が発射された、その時だった。
    「メタグロス、サイコキネシス!」
    突如出現した鉄脚ポケモンの発した念の力で、ヘドロは方向が逸れ、遠くへ飛んでいった。
    ヘドロの直撃を免れた2人は、自分たちの父親と同じほどの年頃の男性に助けてもらい、メタグロスの上に乗った。


    「大丈夫かね、君たち」
    「あ、ありがとうございます……」
    「すみません、助けてくださって」
    「そんなに感謝しなくてもいい。当然のことをしたまでだ。ちなみに私はダンゾウ。あのシュウの父親だ。バカ息子がとんでもないことをしたな」
    「父親……」
    「さてと、降りるぞ。やつに制裁をしないといけないようだな」
    2人もダンゾウに促されて地上に降りた。


    シュウとダンゾウが向き合って話している。マイコとトキが入る隙間はなさそうだが、何か起こるといけない。
    「オヤジ、何でここが分かった」
    「お前が捨てたポケモンを拾いに行くと言ったから、多分ここだろうと目星をつけていた。そしたらお前は大量にポケモンを捨てたくせに親の顔を見せて無理な条件のバトルを押し付けたあげくにストレートで負けている。さらにそれを抹消しようとして毒を放つなぞ、トレーナーというより、人としてなっていない!そこの2人が話を聞いて怒るのも納得がいく」
    「もうオヤジも消えちまえばいいんだ!ベトベトン、ヘドロ爆弾!!」
    ヘドロポケモンから出されたヘドロの塊をダンゾウは避けるが、頬をかすめた。やはり完全に避けきるのは無理だったようだ。
    「ダンゾウさん!?」
    「頬が変色してる……このままじゃ……」
    マイコとトキの心配をよそに、ダンゾウは至って冷静だった。
    「シュウ、お前はそれでいいんだな?」
    「どういうことだ?まあ、いいけどよ」
    そして、指示が飛んだ。
    「メタグロス、サイコキネシスで動けなくして、コメットパンチ!!」
    念の力が反撃の動作すらも封じ込め、そこに隕石を思わせる鉄脚ポケモン十八番のパンチがヘドロを襲い、ノックアウトに追い込んだ。
    と同時に、バレットパンチのようにダンゾウの平手がシュウに直撃した。
    「この大馬鹿息子が!!!」


    結局、シュウはポケモン放棄とポケモンによる傷害容疑の現行犯で逮捕された。
    そして、2人はダンゾウの頬にモモン汁を塗っていた。変色の原因が毒というのは分かり切っていたことだったから。
    炎症も引き、何とか大丈夫になったところで、帰ることとなった。
    「あんまり無茶するんじゃないぞ。君たちはまだ若いんだから、ああいうようにならず、真っ当に生きなさい」
    「ありがとうございます。ダンゾウさんもあまり無茶せんといてくださいよ」
    「私たちも気を付けますから、ダンゾウさんもお元気で!!」
    面倒な事件を何とか解決できて、少しだけほっとした2人なのだった。


    おしまい


    マコです。ちょっと間が空きましたが元気です。
    2011年年明けから参加しているので、この度のログ消失に大変驚きました。
    プロットを作らない派でしたが、自作品専用USBメモリをプロット代わりに文章作成にいそしんでいます。
    とにかく、マサポケが大好きだってことを伝えたいです。


    このお話の後書きとして、ポケモンがリアル世界に来て、法体系とかも若干整備された感じにしてあります。もし仮に、マイコちゃんがシュウに負けたらマイコちゃんも捕まっていたでしょう。
    現実にペット放棄で捕まる人がいるのと同じように。でも、こんな展開になると主人公が逮捕となっていやなので、やっぱりハッピーエンドにしました。
    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【ポケモンを捨てちゃダメなのよ】


      [No.409] クチバシなかま 投稿者:リナ   投稿日:2011/05/06(Fri) 00:29:46     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]


     ポケモンたちの間でも情報化社会ですからねw
     私はツイッてないんでフォローとかなんとかとかしくみも良く分かってないんですが(>_<)


      [No.408] ほうきとタマゴ 投稿者:スズメ   投稿日:2011/05/05(Thu) 23:57:33     69clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

     暖かい春の、昼下がり。
    ステイを捕まえた我が学校が見渡せる、景色がいい丘にある育て屋さん。
    名前も決めていない適当なそだてや夫婦の育て屋さんの庭。
    時刻はちょうど、一番暑くなる頃のはず。
    日差しは暑いくせに、風はひんやりと・・・芝生の上を通り過ぎていく。
    すぐ近くに植わったシンボルツリーは、とても大きくてさわさわと揺れる日陰を作っていた。
    シンボルツリーの近くにある小さな泉には、透明な水の中に時折影が浮かび上がる。
    ポケモンたちは植え込みの木や、草むら(わざわざ作られた)に隠れながら遠巻きにこちらの様子を伺っていた。
    怯えなくても、食べるつもりはないんだけれどな。
    手に持った箒は、一昔前にはやった魔女の乗るような竹箒。
    その箒でがしゃがしゃと地面を掃いていく。
    バイトを始めて数日。
    今のところ、ひたすら箒で芝生の上を掃き続けていたりする。




    「何をしてるんだ」

     クラスメイトの友人ことソラメ(別名アブソルオタク)の視線が痛い。
    僕ってそんなへんなことしてるかな?

     ちょっと、自分の様子をみてみた。
    頭の上には尻尾のちょん切れたポッポ。名前はパト。
    エプロン&三角巾で掃除の叔母さんと化した僕。
    掃除のための箒にじゃれ付くステイことオタチ。
    簡単に言うと、そだてやの敷地内で掃除をしているだけ。
    こら、パトも首が痛いから頭から降りろ。
    確かに帽子代わりになるけれど、パトは体温が高いせいで頭がゆでたこになってしまう。
    後で鏡を見ようものなら羽だらけの自分を見る羽目になるんだよ、パト・・・
    あ、あと背中のリュックにタマゴを二つほど入れているか。
    育て屋のおじいさんがトレーナーに渡し損ねたって、職務怠慢じゃないのかなぁ?
    タマゴの中身は不明。
    そだてるのが大変だからって押し付けられた。まあいいんだけどさ。
     
     結論的に言えば、育て屋の敷地内で掃除をしているだけ。
    そういえば、ソラメたちにはバイト始めるって伝えてなかったっけ。
    いきなり働き出したからおどろいたんだろうな、たぶん。そうだと思いたい。
    ちょん切れたパトの短い尾羽が肩に当たる。そして、耳がつつかれる。
    何気に痛い・・・いや、痛くはないくすぐったい。
    動くな、跳ねるな、甘噛みするな! 
    ちょこちょこ跳ねる度に、ちょん切れた尻尾がくすぐったい。

    「・・・。」

     なんか、ソラメの視線が冷たくなった。
    うーん、まあ真面目に掃除を始めた方がいいよね。

     相変わらず、パトの散切り尻尾が首に当たってかゆい、くすぐったい。
    どっかにおいてみようか。
    とりあえず、パトをステイの上においてみた。

     「キュ、キョ!」
     「ポッッ」

     いきなり頭が重くなったせいで、ステイが混乱して回りだした。
    グルグルグルグルグルグルグワン・・・
    あ、こけた。
    パトは・・・あ、玉のように転がっていったみたいだ。
    拾いに行くべきか、先に掃除をするか。
    んー、バイト代減らされても困る。あれだ、こいつらのえさ代のためにバイト始めたんだから。
    落ち葉と一緒に丸い玉(ボールもどき)が二つ、箒にさらわれてゴロゴロゴロ・・・
    しまった、こいつらも一緒に掃いちゃだめだろう、洗うのが大変だしなぁ。
    箒を近くの木に立てかけて、丸まった二匹を回収しに向かう。
    ステイの毛にはたくさんの葉っぱがこれでもかとばかりに付着。
    ブラシは作業室に置いてあるから・・・しかたがない、転がしておくか。

     「ヂィゥゥゥ(ごろごろごろ)」

     なんか悲痛な声が聞こえた気がするけれど気にしない。
    ムクリと起き上がったステイの尻尾は、膨らんでふぁっさふぁさ。
    怒っているんだろうな・・・さすがにかわいそうだったか。
    ヂィウヂィウー?! と講義の声を発して訴えている。
    声の高低に比例して、尻尾もばたばたもふもふ・・・ステイはわかりやすいよね。
    あとで、ステイのために甘いミックスオレを買ってこようか。
    あ、ミックスオレにつられておとなしくなった。
    ボソッとつぶやいただけなのに・・・地獄耳め。
    大丈夫、あとでブラッシングもしてやるから。
    そう言ってなでたステイの頭は、ふかふかだった。
    目を閉じて、なんだか幸せそうな顔をしている。
    ・・・転がしてごめん。


     手の中には、羽毛球。
    ステイの頭とはまた違ったふわふわ感が、暖かい。
    くちばしがこつっと、手のひらに当たる。
    ポッポの平均サイズは、30cm
    パトの現状サイズは、20cm強
    両手で包み込めるぐらいに小さい、羽毛球。
    日向ぼっこを始めたステイの尻尾より小さい。

     チラッと振り返れば、ソラメが・・・え。
    いつの間にそだてやに進入したんだ、さっきまで柵の外の道路にいただろ。

    「乗り越えた」

     ・・・柵乗り越えてきたのかよ、おいおいって。
    相変わらず、アブソルのジャンプ力ってすごいねー。
    ソラメの視線が、パトに突き刺さった。目つき鋭すぎだよ、もうちょっと温かい目でみてやってよ。
    視線は、パトの尻尾に吸い込まれて・・・はいはい、説明するから。決して携帯獣虐待なんかじゃないから。
    わしゃわしゃアブソルを片手でなでつつ、丸く羽を膨らませたパトを、手のひらに乗せた。
    相変わらず、尾羽は真ん中辺りでみんなちょん切れている。
    保険の先生いわく、車とかこの辺では今時珍しい(らしい)のに尾羽を轢かれたんじゃないかと。
    昨日パトが、道路でこけたままのところを発見。
    そのままにする気は出来ず、保護→結局手持ちに追加。
    サイズ的に、子供。
    どっかの巣から落ちたか、さらわれたか。
    どうしようもないみたいなので、とりあえず、手持ちに追加中だったりする。
    パトはちっちゃくて、ふわふわで、大人気。
    手当てをしてもらって、部屋に帰ろうとすると、すれ違った人がみんな、かわいーかわいーって。
    尾羽の説明をすれば、かわいそうの連発。
    口をそろえていうのは、頑張ってお母さんを探してあげてね。
    なんともまあ、無責任な。どうしろっていうんだよ。
    今現在、おそらくピジョットである本物の親探し(一応ね)中。
    一度人間に保護されちゃってるから親はもう受け入れてくれないだろうな。
    ついでに木の実でも探してくるかな・・・?
    以上説明終わり。パト、疲れたならタマゴと一緒にリュックに入っていなよ。

    「ヂィウ」

     ・・・ステイは無理。
    まあいいや、今日は掃除も終わりでいいかな。

    「いいのか?」

     まあ、適当に掃除しておいてといわれただけだし。
    本格的な仕事は、その辺にいるお客さん(ポケモン)が僕になれてきたらね。
    さっきと言っていることが正反対なのは気のせい、フシギダネ。

     「おつかれさーん、明日もよろしくな〜」

     そういいながら手を振っているのは、育て屋の爺さん。
    ほのぼの老人という言葉が良く似合うナイスガイ。
    そういえば、ナイスガイってどんな意味だっけ?
    ま、多分いい言葉だし、結果オーライ。
    ソラメも、パトの親探し手伝ってもらえない?
    昨日、帰るときに野生ポケモンに追っかけられたんだよね。
    ステイはやめとけ、吹っ飛ばされて終わるから。せめてトレーナー戦で勝てるようになってからな。
    ・・・だめだ、毒なんかになったら毒消しもないんだから(貧乏)モモンのみは持ち運びにむかないし。
    親の心、子知らずって、本当なのかと一瞬思ってしまったけれど、とりあえず行こうか。
    ほら、ステイはボール入っておけ。今度また問題起こされたら大変だし。



     ただいま、おやつの時間をお届けしまーす・・・ちがう。
    時間はあっているけれど、おやつは食べていない。
    むしろ食べられそうだ。
    現在、隣町に続く道(途中から森の中に突っ込んで、洞窟まで抜けないと隣町につかない)
    パトを拾った辺りに来たのはいいけれど、出てきたのはリングマさん。
    そもそもなんで昨日こんなところに来たのかは・・・知らなかったんだよ。
    隣町に行くのがこんなに大変だとは。地域で学校が併合されちゃったわけだ。

     「不意打ち」

     ソラメの合図で、アブソルの攻撃開始。
    実際に不意打ちされたのは僕らだけどね。リングマさんが、いきなりガオーって出てきたんだ。
    今バトルをしているアブソルは・・・多分ヤイバ。
    多分っていうのは、いっぱいいすぎて時々間違えるから。
    今まで確認しただけで三匹は見たよ。ソラメのポケモンはみんなアブソルなんじゃないかと。

     ガオーって擬音語が似合いそうな勢いて、リングマが腕を振った。
    その後ろから、ヤイバが登場、不意打ち命中。よっぽど威力が高かったのか、リングマさんは体制を崩した。
    さすがソラメ、最初から予想済みだったらしく、合図もなしにヤイバさんの追撃が入る。
    いつの間に命令したんだよ。
    バトルは休むまもなく続行中で、今度はリングマさんの反撃。
    みだれひっかきと思われる爪攻撃がヤイバに命中・・・しなかった。
    ソラメの合図でヤイバは跳んだ。
    高さは・・・リングマを飛び越えるぐらい(実際に飛び越えた)すごいジャンプ力だよね、まったく。
    フィニッシュとばかりにヤイバの鎌が一閃。
    かなりの傷を負ったリングマは、最初の勢いはどこに行ったのとばかりに草むらに消えた。
    ポケモンってすごいよね。あんなに傷だらけになっても、健康なら次の日にはほぼ全快しているんだし。
    ほめてほめてとばかりにヤイバがソラメに擦り寄っている。なつかれているなー。
    命の危機が去ったので、改めて回りの確認。
    こら、ステイはいつの間にボールから出たんだ。
    前来たときは、勝手にスピアーの巣にちょっかいかけてぼろぼろになっていただろ、戻ってろよ。

    「チュ、チィ、ヂュヂュゥヂュ」

     もうしないからと、身振り手振りで必死に説明をしだした。
    手が上下に動くと、尻尾も上下に。左右に動けば、左右に。
    尻尾はぐるぐる動いて、ばたばた地面に当たって跳ね上がって・・・
    もふっとちっこい頭に手を置いて、判った判ったといってみた。
    ただし面倒なことはするなよ、草むらに入るとかな。
    ステイの目が光ったのは、気のせいか。

     目当てのもの(ポッポの巣)を探して、辺りの木を見上げる。
    さわざわと葉っぱが揺れて、肩に乗っているパトが身震いをした。
    足元ではステイが自分も肩に乗せろと騒いでいる。
    出来れば空気を読めるようになって欲しいというか、ステイを乗せると僕がつぶれる。
    ちょうどパトがこけていた(倒れていた)場所の上、木の枝にはアーボの抜け殻。
    パトの兄弟はアーボに食べられちゃったとか?
    でもさ、蛇って脱皮の直前には何も食べなくなるはずだよなぁ・・・ポケモンはわからないか。

     がさがさと、揺れる草むら。
    チロリとはみ出た尻尾。
    ぴんっと、立った耳まで揺れている草むらプラス@
    ついさっき草むらに入るなっていったばかりじゃないかな、このステイやろう。
    がさがさ引っ張り出してきたのは、ノコッチ。
    ツチノコ発見!・・・じゃないって、何やってるんだよ。
    あ、へびにらみされた。ステイは大丈夫か?
    ぐるぐるぐるーと尻尾で掘った穴にノコッチは消えた。
    あのしっぽって、ドリルみたいに使うんだね。

    「ウキュ、キュ」

     なんかぴくぴく痙攣(麻痺)している。
    クラボのみってあったっけ? まったく、麻痺だけでよかったな。 
    あ、こらは罰ゲームだからさっさと食え。
    甘党のおまえにはきつかろう、さっさと食いやがれ!
    もし残したら、チーゴの実も食わせるからな。
    ・・・あ、この木ってカゴの実かな。
    近くの木の一つ、少し細くてごつごつした木を見上げる。
    やっぱりそうだ、野生のものだけあって細い中にも強さが垣間見える。特に虫食いの跡とか。
    パトって渋い木の実が好きだったっけ? あ、ふつうなのか。
    まあ、せっかくだしとって帰ろうか。その前にポケナビの新機能でアーボノ抜け殻をパチリ。
    証拠写真的なものも撮ったことだし、目的達成かな?

    「ポッポ、クー!」

     ・・・どうしたパト、そんなにばたばたしてこら、つつくなどうした!
    甘えていると勘違いしたのか、ヤイバがソラメに擦り寄っている。
    もさもさだ、尻尾でパトを牽制しているようにも見える。
    パトは・・・何慌てているんだろう。上を見上げてって、あれ、ステイがいない。
    ソラメは、なんでそんな苦虫をかみ締めたみたいな顔を?

    「・・・前回は何に追っかけられたんだ」

     もしかもしてあれか・・・と、真剣な表情で指差された先を見た。
    苦々しい顔の意味がわかった、よくないけれど。
    あー、もしかもして昨日ステイが壊した巣の方々ですかねぇ。
    あっという間に再建しちゃって、スピアーの建築能力ってすごいと思ったんだ、思うよね。

    「のんきなことを言っている場合か」

     そういい終わるのが早いか、ステイが落ちてきたのが早かったか。
    逃げるしかないんだろうなーとつぶやきつつ、ステイをキャッチ。
    あれ、ステイちょっと重くなった? パトはリュックの中に入ってなよ、走っているときに落ちたら困るし。
    リュックのチャックも閉めて、ステイも引きずって・・・ヤイバ(ソラメのアブソル)がくわえてくれた。
    背中の皮が伸びてる伸びてる・・・結局尻尾は引きずられてるし。
    車も通れるように舗装された道路だから(洞窟の前まで)走るのには問題なし。
    頭上と背後からは、無数の羽音、身震いしたくなるそよ風。
    ってステイ、何持ってるんだ、コクーンなんてつかむな捨てろ!!
    違う齧るなそれは食べれないだろ。
    むっとした顔をしたステイは、持っているもの(コクーン)を投げ捨てた。
    振りかぶって、ポーイ。
    捨て方にも、もっと別の方法が・・・全力疾走中だから仕方がないか。
    投げられたコクーンはこーんと岩に衝突、スーパーボールのように跳ね返ってはまたポーン。
    あ、枝に引っかかった(みたいだ)後ろなんて振り返れないからわからないけれど・・・。
    多分無事にスピアーに保護されたんだろう、追い手のスピードが落ちたからね。

     やっとついた森の出口、育て屋の近く。
    背中のリュックをおろせば、器用にチャックを開けてはパトが出現。
    ステイは・・・背中の皮が伸びたのか、自業自得だろうそれ。
    わしゃわしゃ毛づくろいをする姿は本物のウサギみたいだ、サイズ以外。
    走っている最中も終始無言だったソラメは、ヤイバのブラッシング中。
    スピアーに対しての感想もなし・・・お叱りもなし。良かったねステイ。

     ぽっぽ、とパトが呼んでいるので、リュックのチャックを全開にしてみた。
    中からはタマゴがごろごろ×2
    ・・・走ったのがまずかったかな、ひびが入っている。
    ボンドで塞いではだめかな? 中身は出ていないし。
    よく見れば微妙に動くタマゴ。
    生きてるみたいだから大丈夫かな?
    タマゴの割れ目からは光がちろちろと見える。
    もう一つの卵が、ボスンボスンと大暴れ。

    「歩くと早く生まれてくるとは言うが」

     いつの間に近くに来たんだよ、ソラメ。
    足音消すな。え、消してないのか。
    大暴れしているタマゴと、割れ目が焦げているタマゴ・・・。
    ステイとパトの弟か妹達だね。
    こんなに早く生まれるとは思わなかったけれどさ。
    うれしそうにふられる尻尾はぼさぼさ。引きずられていたもんね。
    パトもクッククックとうれしそうにさえずっている。
    ヤイバは・・・割るのは手伝わないでいいから、見ていてあげてよ。

    タマゴが割れた、出てきたのはどんな子?

    【批評していいのよ】【書いてもいいのよ】【描いてもいいのよ】


      [No.407] 木の実泥棒と虫除けスプレー 投稿者:スズメ   投稿日:2011/05/05(Thu) 23:56:51     57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    木の実泥棒と虫除けスプレー




       そいつは、学校の花壇にいた。

       体長、約0,6m  この種族にしては小振り。
      体色はこげ茶を薄くしたような茶色。 
      狸のような尻尾には縞模様がある。
      そして、長い耳。 警戒心強いはずのそいつは、人が多くいる学校の
      敷地内の花壇に植えてある木の実を食べていた。 
      木になっているものは、木に登ってとったらしく、枝が折れている。
      地面に埋まっていたものも穿り出されたみたいだ。
      こいつは、たぶん、最近うわさになっているポケモンだ。
      
      通称、木の実泥棒。


       発見したのは、ついさっき。
      もうそろそろモモンの実がとりごろかと思って、見に来た際に見つけた。
      収穫しようとしていたモモンの実は、無残にも食い荒らされて残骸が転がっている。
      この種を植えたら、もう一度はえてくるのかな?
      踏み荒らされた花壇は足跡が目立つ。 
      今この瞬間も、みはりポケモンの足に踏まれた土たちが圧縮されている。
      あんなに踏み荒らしたら、また耕すのが大変そうだ。
      
       それにしても、真後ろで観察されているにもかかわらず、この食いっぷり。
      他の人や、友人が植えた木の実達にも被害が拡大中。
      どうも、甘いものが好きらしい。
      甘い木の実だけを狙ってムシャムシャ・・・
      甘いものが好きな性格ってどの性格だったかな?
      ようき? むじゃき? ・・・まあいっか。
      
       と、考え事なんかをしている間に花壇はボロボロ。
      甘い木の実だけじゃなくて、他の味の木の実まで姿を消し、苦い木の実だけが生き残っている。

       これは、とめるべきなのかな?
      ・・・とめるべきか。
      でも、どうやって?

       かばんのなかをあさってみる。
      僕、ポケモンを連れていないからなあ。
      なにか役に立ちそうなものは・・・けむり玉は?
      だめだ。 けむり玉なんか入っていないよ。
      あ、虫除けスプレーを発見!! 
      虫に効くぐらいならポケモンにも効くだろうし、使えるよね?


       そーっと、そーっと、茶色のポケモンに近づいていく。
      食べるのに夢中なのか、近づいても反応はなし。
      こいつ・・・本当に、野生のポケモン?
      誰かの手持ちじゃないのかな。
      もぞもぞ動くたびに揺れる尻尾を避けて、そーっと、そーっと・・・あ。

      「ヂュヂュゥ?!」

      「あ、ごめん。 よけきれなかったよ。」

       次からは気をつけるからって・・・聞いていないみたいだ。
      尻尾を踏まれたせいで怒ったのか、尻尾で立ち上がって威嚇をしてきた。
      いいや、そのままかけちゃえば良いんだ。
      
      あ! 野生の オタチが とびかかってきた!

       スプレー発射!!

      効果はばつぐんだ! オタチは 目を回して ぶっ倒れた!!

       「・・・どうしよう。」

       目のまえには、泡を吹いて倒れているオタチが一匹。
      倒すつもりではあったものの、泡を吹いて倒れるとは思わなかった。
      ・・・って、なんか痙攣している。
      そういえば・・・虫除けスプレーって、ポケモン自身にかけてよかったっけ?
      まずいかもしれない。

       とにかく、先生に診てもらおう。
      オタチを抱えて保健室に「う、重い・・」

       体重、およそ六キロ。 
      僕は三キロのダンベルは両手を使わないと持てない。

       どうする、引きずっていくわけにも行かないし、相手は野生のポケモン。
      いきなり起きたら、起きたら・・・どうなるんだろう?
      とにかく、えーっと。
      台車を借りるには場所が分からないし、野生のポケモンだから、ボールにも入れれないし・・・
      野生? そうだ、こいつって野生だよね?

       再びかばんの中をあさってみる。 
      かばんの中身は、相変わらずごちゃごちゃと、いろんなものが詰め込まれていた。
      分類用のポケットもあるにはあるんだけれど、整理するのが面倒なので一緒くたに入っている。
      整理はしなきゃと思うけれど、めんどくさいから、また明日。
      ようやく発見。 モンスターボール×1
      かばんと、中身一式を支給されたときに貰ったやつ。 売らなくて良かった。


       目を回しているオタチに、ポイっとな。

       ポンっと、光と共にオタチが吸い込まれた。
      まったく、モンスターボールはどういう仕組みになっているのかが気になるよ。
      一応、初ゲット!・・・じゃない。
      早く職員室に行かないと。



     


      「あーつかれた。」
      
       ポケモンに虫除けスプレーを吹きかけるなんて?! と、すごい剣幕で怒られた。
      どうも、虫除けスプレーの中には、あまり良くない成分が詰まっているみたいだ。
      だから、ポケモンがよってこないのか。 なっとく。

       シャクシャクと音がする・・・。

       振り向いた先には、オタチ。
      こいつ、いつの間にか僕のポケモンに決定されちゃったんだよな。
      いったん捕獲したなら、責任を持って世話をしろって。
      先生によれば、こいつも元々人に飼われていたやつが逃がされて、野生化したポケモンだろうって。
      だから警戒心が薄くて、学校に忍び込んでいたのかもしれないけれど。

       シャクシャクシャク・・・って
    ここは、僕の部屋・・・学校の寮に住んでいる、というか住まわせてもらっている。
      そして、僕はおやつ代わりに甘い木の実を育てている。 ここ大事。
      プランターを見てみるまでもない。


      「こら、プランターの木の実まで食べるな!! ご飯やるから、ステイ!」

       オタチが、ぴくっと動きを止めてこちらを向いた。
      ステイって、犬と同じ言い方で分かるのかな?
      いや、犬でも訓練しないと分からないはず。

       なに?といいたげに、こちらを見つめるオタチ。

      「・・・ステイ」

       ピヨンっと、長い耳が反応した。 そして、こちらに寄ってきた。
      茶色の毛皮は、意外とふわふわで、ウサギみたいだ。
      
      「ステイ」

       今度は、なに? と繰り返すように顔を近づけてきた。

       定着してしまった。
      「まて」 という意味ではなく、名前として。

      「あー、もういいやステイ、ご飯やるから少しまってろ。」

       本日、木の実泥棒改め、ステイを捕まえました。

       というか、僕はポケモンを育てたことなんてないんだ。
      いや、あったらあったで問題なんだけれど。
      理由? いろいろあったんだってば、それよりも。

       だれか、ポケモンの育て方を教えてください・・・


    【批評していいのよ】【書いてもいいのよ】【描いてもいいのよ】


      [No.406] メリープさんのメリーさん 投稿者:スズメ   投稿日:2011/05/05(Thu) 23:55:17     70clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    「メーリさんのメイリープ、メイリープー メイリープー メーリさんの・・・・・・むぎゃ」

     適当に作った歌を歌っていたら、メイちゃんから落ちそうになった。

    「メイちゃん落とさないで、走らないでゆれないでええ」
     黄色い塊となって動くメリープの群れ、その中でもひときわ大きい、どのくらいかというと、子供を乗せられるぐらい大きい
    そのメリープに、半ば埋まるようにして乗っていた少女が叫んでいた。
    叫んでも、大半がふかふかの毛と群れの足音に消されて聞こえない。
     何事かと止まったメイちゃんこと特大メリープ。助かった思ったのもつかの間、後ろからぶつかってくるメリープの
    衝撃に驚いて「進んで!」と叫んだ私を振り向いたその顔は、ふかふかの毛が邪魔して見えない。もしかもして

    「メイちゃん・・・・・・また太った?」

     後ろで伸びているメリープも気にならないほど、少女にとってその問題は大切だった。
    群れの先頭を歩いているはずの兄が群れの進行を止めさせてまで見に来ても、
    後ろで伸びているメリープたちのことで怒られたって耳に入らない。メイちゃんが太った、また大きくなった? 
    今でさえ標準の二倍以上なのに、また大きくなった。お医者さんに怒られる。

    「こら、キロお前なにしたんだ。」

     メイちゃんの後ろには、倒れて積み重なるメリープたち。積み重なるというほどでもないが、
    困ったようにメリー、メーと助けを呼ぶ声が絶え間なく聞こえてくる。少女には聞こえてなかったけど。
     相棒のヒツジ(デンリュウ)とメリープを助け起こしているキロの兄はそんな様子を見て、ため息をついた。

    「まーた自分の世界に入りやがった。」

     頭を困ったようにかきながら走っていった兄の背中を見おくったあと、少女は気づいた。いまさらだと。
    すでに体長は2メートルを越え(二倍どころじゃなかった、3倍以上)父からはあきれられ、兄はうらやましがり、
    メイちゃん本人はいつの間にか群れのリーダーになっていて、本当のリーダーである兄のヒツジちゃんことデンリュウと
    たいまんで勝負してたし・・・・・・しかものしかかりでノックアウトしていなかったっけ? 
    おかげで私はヒツジちゃんに睨まれる羽目に。そういえば、ヒツジちゃんとのリーダー争いでは、
    間一髪仲裁に間に合わなかったお父さんとアラタにメイちゃんが吹っ飛ばされて勝敗はうやむやになったんだ。
    相変わらず強いよね、お父さんのアラタ。結構ご高齢になってきたのに、毛並みが白くなっちゃってもメイちゃんを
    ふっ飛ばしちゃえるんだもん。あ、

     あ、という言葉もかき消されながら、少女の体は軽く宙に浮いた。メイちゃんが再び歩き出しただけだったりするが、
    上に乗っている少女にとっては大問題。黄色いもふもふで、暖かくなってきたこの時期には暑すぎるその毛をひっつかんで、
    バランスをとろうとした、バランスは取れた、バランスは。
     ぶち、という音と共にその手に残る黄色のもふもふ。意外にごわごわのその塊は、さっきまでメイちゃんに、
    ぶるぶると頭を振って、思考をまとめる。どっちにしろ、これから冬毛を刈りに行くんだから問題なし。
    手につかんだままの黄色い塊は、メイちゃんの背中に押し込んでおいた。
    後ろを見てみると、アラタが走っていた。早く早くと群れをせかしている。
     アラタの、その後ろを見れば赤い夕日。ぺラップが奇怪な声を上げながら飛んでいった、「あほーあほー」と。
    メイちゃんはキッとそのぺラップを睨みつけてた。小刻みに体が揺れていたからきっと怒ってる。
    ちらりと見えた角が突き上げるようにぴょこぴょこ動いているのと、地面を打ちつける足の音が・・・・・・怖いからやめて。
     相変わらず揺れはひどいけど、怒っているんだから仕方ない。さっさと家に帰り着くためにも怒りを静めてもらわなきゃ。
    周りのメリープがおびえていてなかなか進まないし、舌を噛まないように注意して歌ってみようかな、メリーさんのメリープ。
    なぜかメイちゃんが好きな有名歌。舌を噛まないようにするのは無駄な気もするけどね。さーて、ちゃんと聞いてよね。

    【批評していいのよ】【書いてもいいのよ】【描いてもいいのよ】


      [No.405] あたらしく 投稿者:スズメ   投稿日:2011/05/05(Thu) 23:51:50     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    君はまだ若いから、大丈夫。 きっと次が見つかるよ」

      目のまえに突きつけられた辞職届。
      目に焼きついたのは、上司の嫌味満載笑顔。
      つまりは、そういうこと・・・だ。


      

       あてもなしに街を歩く。
      スーパーの裏を通れば、生臭いにおいが鼻を刺す。
      においの元らしき液体が道路を伝って、排水溝にぽたぽたと落ちる。
      うっとおしいにおいを払いたくなって、表通りに戻ってみれば、学生らしき人たちがコンビニの前でたむろ。
      こちらとら仕事もないって言うのに、いい身分なもんだ。
     
       電気屋の前を通れば、テレビの中でパリッとした服を着たおっさんが仲間割れ。
      なにやってるんだよ、仕事しろといったのは誰か。
      どこからか「話しているだけの奴らの方が金を持っている世の中なんて」という声が。
      振り返ってみても、人ごみに流されて声の主はわからない。

      街でティッシュを配っている人にティッシュを貰った。
      それをポッケに突っ込みながら、人の流れを押しのけて裏道に戻った。
      なんだか、人に流されているみたいで気に障ったからだ。

      裏道に入ったとたんに生臭いにおいが戻ってきた。
      衛生環境は大丈夫なのかよ、これ。
      薄汚れた道に散乱したゴミ袋。
      ところどころ引き裂かれた後がある・・・ポケモンか?
      黒い汚れが所々にこびりついた裏道に、ギャンという子犬の声が響いた。

       人が集まってきている。
      水の少ない用水路・・・うわ、油が浮いている。
      その横にある道に、一匹の赤い犬・・・ガーディが数匹のワニノコに囲まれていた。
      周りの野次馬からは「野良ポケモン」だの、「捨てられたのか?」という声がぼそぼそ聞こえた。

      改めて、目の前のポケモンたちを見てみた。
      どちらも、標準より小さい・・・いや、ガーディの方は割りとしっかりとした体格を持っている。
      体中傷だらけでぼろぼろだが、おそらく人間に飼われていたのだろう。
      ワニノコのほうは、標準よりも確実に小さい。
      水色のはずの体が少し色あせて見えるのも・・・気のせいだと思いたいが。
      そもそも、彼らが住まうには街は狭すぎるし、人が多すぎる。
      そして、水も少ない。 ・・・本来彼らがいられる場ではないのだ。
      何故? おそらく、誰かが・・・「バキッ」
      とたんに、押し殺した悲鳴が広がる。

       それは人から人へと伝染して、震源地には折れた傘。
      みかねただれかか、ガーディを助けようとワニノコとガーディの間に傘を広げたらしい。
      今ではもうただのごみ。
      ワニノコたちはガーディから、間に入ろうとした人に対象を変えたのか、若い誰かを水流が襲った。
      隣の人が電話をかけている。 警察か?
      ほこりっぽい空気が一気にじっとりと、水気を帯びた。
      でて来たのは、アリゲイツ。
      この環境で進化するとは・・・見上げた根性だ。
      しかし、その皮膚には黒ずんだしみが見られる。
      こいつも長生きは出来まい。
     
       野次馬の中にトレーナーがいたのか、突然の閃光を合図に戦闘が始まった。
      現れたのはパチリス。
      ぱちぱちという音と閃光を発して、空中でターン、着地。
      どうやらコンテストに出場しているようなポケモンだ。
      バチバチと閃光が地を走るスパーク。
      対するアリゲイツは・・・うわ、穴を掘りやがった。
      アスファルトがゴリゴリとめくれていく。
      「ガゥ・・・」
      小さな声が聞こえた。 はっと振り向くと・・・白い尻尾。
      白い尻尾の半分は毛がむしりとられてしまっている。
      赤い毛皮の持ち主はガーディ。 ワニノコに囲まれていたあのガーディだ。
      何故かほおって置けない気がして、バトルを見るだけの人ごみを押しのけ、追いかけた。



       運動不足がたたった。 
      いや、そもそもポケモンに追いつこうとしたのが間違いだったんだ。
      ゼーハーゼーハー息を切らしながら叫んだ。
      公園に逃げ込まれたら見失ってしまうに違いないだろう。
      
     「まてっ!」

      走っていた子犬ポケモンが急ブレーキでとまった。
      次の瞬間、体制が伏せに変わる。
      やっとおいついた、その時。
      目が合ったんだ。 
      だが・・・トレーナーでもない、人の感情を読み取ることすらままならない俺にこいつの
      目の奥に隠れた心は読み取れなかった。

      逃げようとする子犬にもう一度「まて」と言う。
      びくっと見て取れるくらいに動きを止めて、子犬はまたふせをした。
      ・・・確実に何らかの訓練を受けている。
      なんで、捨てられたのか?
      子犬の前にしゃがみこんで気づいた。
      子犬のおなかからは、腹の虫のコンサートが聞こえていたんだ。

      
      その後は大変だった。
      昼食のあまりのパンを与えようとしたら、子犬が口にする直前にポッポにかっさらわれた。
      パンを見た瞬間の目のきらめき方と、目のまえで消えたパンを空なめしている瞳の色の変わりようがすごかった。
      だから空気をなめることしか出来なかった子犬に、俺はミックスオレを自動販売機で買ってきた。
      適当な容器にいれて目のまえに差し出すと、ものすごい勢いでなめ始めた。
      上下左右に動く頭と、振り切れんばかりに動く尻尾。
      頭をなでようとしたら、手がべとべとになった。
      俺はポケモントレーナーじゃないが、ポケモンを飼うのもいいかもしれないな。
      いつの間にか、無邪気な子供みたいなしぐさに心を奪われてしまった。
      家に帰ったら、まずシャンプーか。
      ボールも買わなきゃな・・・と、洗った手を拭こうとして気づいた。
      ハンカチがない。
      さっき貰ったティッシュがあるから、それで拭こうとしてその広告に気が付いた。
     
      「メリープの放牧をしてみませんか?」

      その下には、村の名前と住所。 仕事の内容と、村の様子。
      ミックスジュースに尻尾を振っている子犬を見る。
      そして、空を見上げたんだ。
      雲の多いここの空にしては珍しく、雲ひとつない高い空。
      風のにおいは、鉄にまぎれてごちゃごちゃと、きれいなものと良くないものと好きになれないものが。
      もう一度、空を見た。
      世界は、ここだけじゃない。
      仕事もない。 こいつもいつまで養えるか分からない。
      だが、別に仕事をここでしなきゃならん理由はない。
      大変だろうが、食ってはいけるに違いない。
      なにより・・・その村は風のにおいも澄んでいるんだろう。
      たくさんありすぎてわけの分からなくなった匂いよりも、きれいなにおいが。

       のみ終わって一息ついている赤い子犬。
      こいつは、俺が新しくなるきっかけだ。
      まさかこんなことになるとは思っていなかったけどな、俺は一度決めたらやりきるタイプだ。
      ずっと、このきっかけを、決意を忘れないために・・・お前と頑張るためにな。

     「お前は、今日からアラタだ。よろしくな」

      そういって、アラタの頭に手を乗せた。
      そうと決まったら、とりあえずシャンプーをしようか。
      
      
       【批評していいのよ】【書いてもいいのよ】【描いてもいいのよ】


      [No.404] 今日のメニュー 投稿者:スズメ   投稿日:2011/05/05(Thu) 23:51:05     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    今日のメニュー (画像サイズ: 525×756 95kB)

      『今日のメニュー』

       *チュリネと季節の野菜の新鮮サラダ

       *ユニラン・ダブランのフルーツゼリー


    ー----------------------------

       今日は、最近話題のお店とやらに来ました。
      あれだ、ここのお勧めは『今日のメニュー』という、日替わりメニューらしい。
      自称グルメの俺としては、食べるべきだろう。 話題らしいし。
      この話題についていける様になれば、俺もモテモテ、有名人へと早変わり。
      ってことで、早速。


       頼んだものが出てきた。
      写真に載っていた奴と同じ・・・タブンネ。
      スプーンをつかもうとしたら、ランクルスに横取りされた。
      え。
      ランクルスちっちゃくね?
      ゼリーと同じサイズだぞこいつ、というか共食いだろ?!
      改めてゼリーを見た。
      なんか動いている。
      半透明の緑っぽいゼリーの中には、ちっこいグミ・・・違う、ポケモン。
      うわ、動いているフルーツ食ってやがる、こっちみたああああ?!
      サイズがおかしい、共食いされかかっている、なんか食っている!!
      ゼリーの中に入っているくせに、フルーツ食っている奴が居る。
      こいつはもがいている、そもそもなんで動けるんだ、って、ゼリーの中身は動かないだろう?!
      おかしい、俺がおかしくなったのか、目がおかしいのか。
      もくもくと共食い(ポケモンは食っていない、ゼリーだけ。 というかゼリーでも共食いだろ。)を
      続けるランクルスと、ゼリーの中でこっちを見ているちっこいやつら。
      なんでこんなのが話題になっている、俺だけか? おかしいと思うのは俺だけなのか?!
      周りの客は、ぺちゃくちゃしゃべりながら普通に食っている。
      おい、話よりも手元を見ろ、おかしいだろこれ、気づけよ!


      「今日のサラダはこちらです」

       サラダ来た。
      ・・・俺、末期かもしれない。 病院探そうかな。
      おかしいだろ、何でみんな普通に食っているんだ、ちょっと待てよ!
      サラダはいい、普通のサラダの部分は。
      ちっこいのがこっちをみている。 こっちみんな、どっか行けよ。
      念力が届いたのか、ふわふわ浮かび上がって逃げていった。 一匹だけ。
      他のは、サラダに埋まっていたり、葉っぱだけ見えていたり、ふよふよ浮いたり、もぞもぞ動いたり。
      これを食えと、俺に踊り食いをすれと?!
      無理だ、やめろ、こんなの店で出すなよってか、サイズがおかしいどうなってるんだよ
      
     「こちらがドレッシングになります。お好みで「あさせのしお」もお使いください。」

        サラダに塩?
      ・・・これ、本当にあさせのしおなのか? 色がおかしい。
      何で青いんだ、塩だろ着色料が入っ「当店オリジナルのお塩です」まて、さっき「あさせのしお」って
      言ったよな? 自分で言っただろ、あさせのしおはホウエン地方のブランド塩だろ?!
      なんでオリジナルなんだ、おまけに色がそのまま青色1号。
      青じゃない、青っぽい紺色。 明らかに塩の色じゃない。
      目のまえには、うごめくサラダ。
      俺は人気メニューを食べに来たはずだ。 決してゲテモノ料理を食べに来たのではない。
      うごめくチュリネ(という名のサラダ菜)にもがくゼリーの中身(やけにのんきなのもいるけど)
      おまけに、ゼリーの方は共食いされている最中。

       何も見ていない、俺は何も見ていない・・・
      せっかく来たんだ、普通のサラダの部分だけでも食って帰ろう。 何だって、このメニューは俺の給料
      一か月分の約4分の1。 何のためにここまで来たんだ、高い金を払ったんだ。
      (ゼリーの方は、中身がモロバレル。そんなものを観賞しながら食う勇気は俺にはない)
      


       ドレッシングをかけてみた。


       チュリネがみんな、こっちを向いた。
      横を見れば、ランクルスとゼリーの材料も。
      にらめっこになった。

     「お前らこっちみるな!! 」

      チュリネの赤い目、こっちを見るゼリーの中身、ランクルスに周りの客。
      客・・・? なんで見てる、おい、どういうことだっ、ホラー映画かよ?!
      当たり前だが、余裕で負けた。
      おかしい、絶対におかしい。 夢か?そうだろ、そうであってくれ・・・
      テーブルの上には揺れるゼリーとサラダ。
      そこで、意識がぷつん。



      



      「はっ」

      なんか、見たことがある気がする。
      そうだ、最近話題の店とやらに俺は来たんだ。
      「今日のメニュー」って奴がお勧めらしい。
      自称グルメの俺としては、食べるべきだろう。 話題らしいし。
      この話題についていける様になれば、俺もモテモテ、有名人へと早変わり。
      ってことで、早速。


      結論・・・デジャヴ。
    【批評していいのよ】【書いてもいいのよ】【描いてもいいのよ】


      [No.403] 焼き鳥販売中。 投稿者:スズメ   投稿日:2011/05/05(Thu) 23:49:53     29clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    幸いにもパソコンに保存されていたということで、消えたものとかをまとめて置かせてもらいます。
    新しいものが混じっていたりもしますがきっと気のせいです。
    一部省いたままの作品があるかもしれませんがお気になさらずに・・・。
    【批評していいのよ】【書いてもいいのよ】【描いてもいいのよ】


      [No.401] 【書いてみました】 光と影の分岐歌 投稿者:巳佑   投稿日:2011/05/05(Thu) 20:38:39     31clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    【書いてみました】 光と影の分岐歌 (画像サイズ: 762×549 91kB)

    前置き:再投稿させてもらいました。よろしくお願いします。

    【Shade song】

     また人間だ――。
     
     白い毛並みに映える黒色の顔、
     そして頭には鋭利なカマみたいなものがついているポケモン――アブソルは体を震わせながらも近づいてくる人間たちから距離を取る為に逃げていった。

     
     最初は皆の為だと思って、やったことだった。
     本来ならアブソルという種族は災いを察知しては人々やポケモンたちの前に現れ、その接近している危険を教えてくれるときもある……というポケモンなのだ。
     しかし、その災いを知らせるという行為を、人間に勘違いされてしまって、いつしかアブソルは災いを運んでくるポケモンだという虚偽(きょぎ)が出回ってしまった。
     ……いや、もしくは勘違いではなく、起こってしまった災いに対する怒りをぶつける相手が欲しかったという、人間の我がままから生まれた虚偽かもしれない。
     
     そのような虚偽を信じてしまった人間たちに対して、アブソルの中では、もう人々に迫っている災いを感じても教えに行かないというものが出ているのも珍しくなかった。
     だけど、このアブソルは違った。
     なんとかして災いから人々やポケモンを守りたい。
     その一心で、今まで災いを察知しては人々に姿を現していたが……返ってきたのは、罵倒(ばとう)と襲撃で、その度に傷ついた。
     肉体的にもだが、精神的にも辛いことだった。
     守る為に、助けたい為に、災いを教えにきているのに、どうして皆、怖い顔をしてくるのだろうか?
     迫ってくる災いではなくて、自分に。
     
     
     どうして、そのアブソルは逃げなかったのか? 
     これだけ身も心も傷ついて、信用なんか一切してくれないようなモノなど、放っておいて、どこかに旅立てばよいものなのに。
     アブソルの身なら、旅立ちは不可能ではないし……逃げられるなら、いつでも逃げられたはずだ。
     近くにある村からもっと遠く、遠く離れた場所へと逃げることができたはずなのに、実際に来たのはまだ、村から近いと言われてもおかしくない場所。
     アブソル自身も、その場から離れられない自分に懐疑的(かいぎてき)な戸惑いを覚えていた。
     なんで、傷つくだけだと分かっているのに、理解を得られるなんて分からないのに、どうして……?
     アブソルのもやもやが膨らんだその日のことだった。
     アブソルは一匹の黒に黄色の模様を入れた、メスのポケモンに出逢った。
     彼女は一匹で旅をしているらしく、どうやら、何かワケありのようであった。
     久しく誰かと話すなんてことがなかったアブソルだったが、なぜだか、彼女と話しているとき、不思議な気分がした。
     安心できるような……そんな感じ。
     大抵、誰かと話す前に逃げられたり、攻撃されたりするのに、それがなかったというのもあるのかもしれない。
     けれど、それだけではない。
     警戒されなかったから良かったという気持ちだけではなかった。
     その気持ちが分からないまま、アブソルは思わず尋ねていた。

     彼女の旅に自分もついていっていいかと。

     けれど、彼女からは首を横に振られただけであった。
     無理強いするのもよくないと、仕方なく、彼女と旅をするのを 諦めたアブソルだったが、去ろうと思って駆ける足がなんだか重かった気がした。
     どうしてなのだろうか。ただ単に旅の同行を断られただけだというのに、どうしてこんなにも胸が痛いのか。
     爪が喰い込んできているのではないかと錯覚するぐらい、胸が痛くて……そして苦しかった。
     いつの間にか、アブソルの目から涙が頬(ほお)を伝って(つたって)こぼれ落ちていったのであった。


     不思議な雰囲気を出していた彼女に出逢ったその日の夜。
     アブソルはぼんやりと月を見ていた。
     今日のあの出逢いが頭から離れられなくて、眠れないでいたのだ。
     どうして、彼女が気になるんだろう。
     それと、自分があのとき感じたものはなんだったのだろうと――。

    「いたぞ! シェイドだ!!」

     刹那――シェイドと呼ばれたアブソルが我に返ると、何人もの人間が各々ポケモンを連れながら現れていて、あっという間に囲まれてしまっていた。
     シェイドという名前、それはアブソルが危険を察知して、知らせに行った村の人たちから名づけられたもので、アブソルの影を見ると災いが起こると言われたことから付けられた名前だった。
     ……その影が本当に映しているものは災いではなく、村の人たちやポケモンを助けたいというアブソルの想いだということは誰も気づいてくれなかった。  
     その影は本来なら希望を与えるものでもあるのに。

     アブソルは村のポケモンたちから一斉に攻撃を受けてしまった。
     反撃ができないこともなかったが……アブソルはどうしたことだか、攻撃一つもしなかった。
     ひたすら、飛んでくる水や炎や雷、ハサミみたいなものや、カマみたいなものから回避しているだけだった。
     本当は攻撃をして、生まれた隙(すき)から逃げ出さなければいけない状況のはずなのに、攻撃をしようとすると、なぜか動きが寸で止まってしまう。
     誰も自分のことを助けてくれないのに……そう思ったとき、アブソルの頭の中に光が走った。
     
     そうか……友達が欲しかったのかと。
     
     アブソルがそう思ったのと、肉が深く切れる不気味な音が鳴ったのは、ほぼ同時であった。
     
     首から赤い花が咲き乱れる、その痛みにアブソルは絶叫しながら……やがて倒れた。
       
     村の人たちやポケモンたちと友達になりたくて、そして、いつかなれると心のどこかで信じていたのだろう。
     村人やポケモンたちを助けたいという気持ちの他に、その気持ちがアブソルの足をつかんで、どこか遠くに行かすことをさせなかったのかもしれない。
     そして、あの彼女に出逢ったときに自分の中で芽生えたものはきっと……友達が欲しかったという気持ち。
     だから、旅について行きたいと言ったのだろう。
     あれだけ、色々と語ることができた相手だったから……きっと彼女とはいい友達になれると思った。
     
     ここで、ふと、アブソルはこう思った。
     
     友達になりたいと村人たちやポケモンたちに素直に言えばいいのだろうか?
     いつも攻撃されることを恐れて逃げるのではなくて、ちゃんと逃げずに伝えることができるのならば……。

    「な!? こ、コイツまだ立ってくるのか!?」
    「グライオンのハサミギロチンは決まったはずだぜ!?」

     首から血を垂らし、その身を赤く染めながらもアブソルは立ちあがった。
     友達になりたい、その気持ちを伝えたいんだという一心だけが、アブソルの足を支えていた。
     もう死んでもおかしくないはずのアブソルを見て、村人たちやポケモンたちが驚嘆(きょうたん)する中、アブソルは口元を動かし始めていた。
     すると……辺りには歌声のようなものが響き渡たり始めた。
     アブソルは歌っているつもりではなかった。ただ、ただ、伝わるかも分からない想いを声に出していただけなのだが、その想いが本人も気づかない内に歌になっていた。
     村人たちもポケモンたちも、その歌声を聴くと動けなくなった。
     何やら悲しくて、だけど強くて――。
     
     一人の人間が倒れた。
     次は一匹のポケモンが倒れた。
     続けて三人の人間が倒れた。
     更には四匹のポケモンが倒れた。

     最後には、村人もポケモンも全員、倒れていた。
     
     そして……アブソルも倒れた。
     
     ……意識が遠のいていく中で、かすんでいたアブソルの視界に、事実が映ることはもう叶わなかった。
     首から垂れた血がアブソルを完全に赤く染め上げた頃、アブソルは力なくだが微笑んだ。


     ――目が覚めたら、友達ができているといいな――






    【Moon lullaby】

    「はっ!!」
     いきなりの声が月夜に高く昇って消えていった。
     もちろん、隣にいたものは背筋に電流が走ったかのように尻尾を立たせながら、声の主を見た。
    「だ、大丈夫……? ライト」
    「……あ、ごめん。変な夢を見ちゃってさぁ、よく覚えてないけど……って、ライちゃんはまだ起きてたの?」
    「うん……今夜は月が奇麗だったから……つい、ね」
     一匹の黒に黄色の模様を入れたポケモン――ブラッキーのライの言葉に、白い毛並みに映える黒色の顔、そして頭には鋭利なカマみたいなものがついているポケモン――アブソルのライトも月に顔を上げた。
     確かに今夜は満月で、ライの言う通り、奇麗に夜空の中で映えていた。
     あの日――旅立ちの前で見ていた満月よりもなんだか不思議な感じで、寂しい気持ちになったりしなかった。
    「ねぇ……ちゃんと眠れてる? なんか、ときどきうなされていたみたいだけど……」
    「う〜ん、正直に言うと……なんかよく眠れない感じでさ」
     ライトは苦笑いしながら答えていた。
     
     ライトは元はとある村の近くに住んでいて、ある日、災い呼ばわりされた村人たちやポケモンに襲われてしまう。
     死ぬかもしれない、そのときにブラッキーのライという子が助けてくれて、一命を取り留めたライトはライと一緒に旅立つことになったのだが……。
     
     旅立ち初夜、謎のドキドキがライトを襲っていた。

     一体、なんでこうも胸がドキドキしているのだろうかとライトは思った。
     そして、その理由にたどりつく時間はさほどかからなかった。
     ライトは満月に向けていた視線を一回下ろしてみる。
    「どうしたの……?」
    「う、ううん! なんでもない! うん、大丈夫だから!」
     怪訝(けげん)そうな顔を向けてくるライに対して、ライトはただ笑っていた。
     その背中に冷や汗を垂らしながら、ドキドキしていることがライにバレないようにと白い歯まで見せながら。

     今まで一匹だけだった。
     親と一緒に夜を過ごしたことはあったのだが、こうして友達と一緒に夜を過ごすという経験は初めてだったのだ。
     なんか、くすぐったいというか、なんというか、興奮してしまって、ライト更には眠れなくなってしまった。
     顔が赤くなりそうなぐらいの興奮で……まぁ、顔は黒だから分かりにくいかもしれないが。
     仮に白い毛の色が赤くなったりしないだろうかと、変に心配してしまって、冷や汗が更にライトの背中から垂れていく。
     
     このように脳内で若干パニックを起こしかけそうになっていたライトの体に何かが触れた。

    「とりあえず……何があったのかは分からないけど、落ち着いて……ゆっくり体を休めさせないと……まだ、ケガが治ったばかりなんだから」  
     
     ライが静かにライトの横に隙間なく寄り、小さな黒い前足をライトの前足に乗せた。ライの黄色の模様が淡くて優しい光を放っている。
     すると、不思議なことにライトの沸騰寸前だった興奮が冷めていき、やがて、目を閉じた。
     
     誰かが一緒にいてくれること。
     隣にいてくれること。
     今までなかった触れあいにこれから戸惑うこともあるかもしれない。
     けれど、ライと一緒なら大丈夫……そう不思議に思えるからライは素敵な子だと思う。
     これから、今までできなかったことをライとたくさんしていこう。
     そして、ライに何かあったときには、力になりたい。
     ライトという名前にかけて。
     
     ライの体温から伝わってくる、その温もりにライトは身を寄せながら静かに眠りに落ちていった。
     そして、月明かりで照らされてできた影には希望が詰まっていた。
     
     
     ――ありがとう……ライちゃん……いつまでも友達だよ――




    【あとがき】

     最初はバッドエンドだけの予定でしたが、なんか、申し訳ないなぁ……と思いまして、
     後日談みたいなものも入れてみました。
     
     『Shade song』ではライトさんがどのような想いで、
     村人やポケモンの為に行動していたのかな……と考えながら書かせてもらいました。
     あのとき、ライちゃんが助けに来なかったらという、あくまでIfバッドエンドです。(汗)
     ちなみに最後の場面にあります歌とは『ほろびのうた』のことであります。(汗)

     『Moon lullaby』は最初に書いたとおり正規ルートの後日談のようなもので、
     ふにょんさんのライさんのイラストを見たとき、
     「あ、これはライトさんの視線からというのも考えられるかな」と思って、今回の物語を書いてみました。
     友達の家とか、修学旅行とかって中々眠れなかったよなぁ……と思いだしながら書きましたです。
     
     ちなみに『lullaby』とは子守唄のことです。
     

    【心の鎖の感想】 

     ライちゃんと最初はお呼びしようかと思ったのですが……すっかり大人びましたね!
     これはもうライさんとお呼びした方がいいかと思いましたです。

     それにしてもライトさん本当に優しいなぁ……。
     私だったら、『かまいたち』で辻斬りの真似ごとをしてたかもしれません。(汗)
     そしてライさんもまた一つ強くなったみたいで、
     自分に打ち勝ったところや、ライトさんを助けるところでは涙腺が熱くなりましたです!
     これからもライさんや、そしてライトさんの成長に期待大です!

     それと、『もどりのどうぐつ』が再登場するとは……!
     この五分間シリーズは個人的に、他の作品のキャラとクロスオーバーしているところも魅力の一つだと思っています。
     次はどんなキャラがクロスオーバーしてくるのかも楽しみにしてます!



    【最後に……】

     改めて……ふにょんさん、【バッドエンドもいいかもねぇ……なのよ】挑戦させていただきました! 
     ありがとうございました!
     

     それでは失礼しました。


    【大人びたライさんにトキメキました】
     


      [No.400] 【五年後を想像】 もふ恋。 投稿者:巳佑   投稿日:2011/05/05(Thu) 20:29:09     28clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    【五年後を想像】 もふ恋。 (画像サイズ: 358×525 54kB)

    もふ恋。

    前置き:再投稿させてもらいました。よろしくお願いします。

    【1】

     昔、わたくしがまだチュリネだった頃でしたわ。
     今まで元気だったのが嘘だったのかのように、重い風邪にかかってしまったことがありましたの。
     もう死ぬかもしれない、と幼いながらもわたくしは恐怖で震えていました。
     そのときにわたくしを助けてくださったのがエルフーン先生でしたわ。
     あの先生の手際の良さのおかげで、わたくしは生き延びることができ、そして、あの先生のおかげで今のわたくしがいますの。

     わたくしも病気のポケモンたちを助けたい。

     エルフーン先生はわたくしに命だけではなく、夢まで与えてくれたのです。
     それからわたくしはたくさん勉強しましたわ。
     看護師になって、できればエルフーン先生と一緒にポケモンたちを助ける仕事をする為に。
     ここまで大変でしたわ、例えば、ポケモンの体内構造は一匹一匹違いますから、その膨大な情報を頭にたたきこまなければいけませんでしたし。
     けれど、一途に夢に向かって努力した結果、ようやくわたくしは看護師になりましたわ。
     姿もチュリネからドレディアに変わり、そして、ついにエルフーン先生とお仕事をするという夢が叶いました。

     けれど、実はもう一つ夢がありましたの。

     その夢がなんだったのかは、当時のわたくしには分からなかったのですが。



    【2】

     つるつる……そんな言葉が似合う茶色の頭が窓から入って来る光を受けてフラッシュのごとく光っていた。
     その光を受けたのか頭に一輪の花を咲かせた者が眩しそうに眼を閉じている。
    「うぅ……ドレディアさん、抜きすぎないようにって僕、前も言ったよね?」
    「ごめんなさい、先生。つい、その……」
     つるつるの茶色の頭――エルフーン先生の泣きそうな顔を向けられた、頭に一輪の花を咲かせた者――ドレディアは一旦、言葉を詰まらせた。
     エルフーン先生はそのドレディアの様子に一瞬、頭から疑問符を出す。
     いつものドレディアなら、すぐに舌を出しながら「つい、やってしまいました♪」と楽しそうに言うのに。
    「へへへ、楽しくて、つい」
     エルフーン先生はやっぱりいつものドレディアだと思い直した後、小さな手で頭をさすると、思わずため息をついた。
     エルフーン先生の頭からは元々、もふもふとした綿がたっぷりと生えていて、採取して消毒すれば医療用に使えないこともなかった。
     そこでときどき、エルフーン先生はドレディアに頼んで、自分の頭から生えている綿を取ってもらっていたのだが、決まって、つるつる頭になるのがオチであった。
     エルフーンという種族は自分の綿を取られても、また生えさせることができることができるポケモンで、逆に放っておくと綿のもふもふが増えるのだ。
     しかし、だからといって頭がつるつるになるまで採られてしまったら、エルフーン先生いわく、元に戻るまでには最低でも一ヵ月はかかるというらしい。
     自分はつるつる頭のエルフーン先生も好きだとドレディアは言ってくれるし、病院にやって来る患者にも可愛いですね、と言ってくれるのだが……なんだか恥ずかしくて嫌だったエルフーン先生であった。

     ここは森の奥にあるポケモン病院。
     小さいながらもそこには腕の立つ医者のエルフーン先生と頼りになる看護師のドレディアがいた。
     ドレディアは今年十年目の看護師で、研修時代を経て、エルフーン先生と共にお仕事を始めてからは八年目になる。
     実はこのドレディア、チュリネの頃にエルフーン先生に助けてもらったことがある経験があるだが……どうやら、エルフーン先生は覚えていないみたいだった。
     自分以外にもたくさんの患者を相手にしてきたのだろうし、第一、ドレディアに進化して姿が変わってしまっていては気付かないのも無理ない。
     それに、自分があの頃、助けてもらったチュリネですと言っていないのだから仕方がない。
     何故、八年も一緒に仕事をしているのにそのことを告げなかったのか?
     理由はただ一つ――。
     
    「すまへんな……エルフーン先生はおらへんか……?」

     毎回、ここで言おうと思ったときに限って、患者が来訪してくるからである。
     これでは、エルフーン先生に告げたくても告げられない……その前に、このタイミングが悪い状況が八年間も続いていることに気がついたドレディアは思わずため息を漏らしてしまう。
     でもすぐに患者に対応する為に受付へと向かった。


    【3】 

    「さて……今のが今日の最後の患者さんだったかな?」
    「そうですね。今日はもう終業時間です」
    「ふわぁぁ……ようやく、終わったよ〜。僕はちょっと寝てくるね。後は任せてもいいかな?」
    「はい。了解しました、先生。ゆっくり体を休んでくださいね」

     エルフーン先生は眠そうな目をこすりながら、自室へと向かっていった。
     今日の患者も個性的な者達ばかりで、睡眠不足気味だった先生は若干バテながらも無事、対応し終えた。
     どんなに疲れていても正確に診断し、解決させていく先生の姿はいつ見ても尊敬するものだ。
     ドレディアの中で今日一番、印象的に残った患者は関西弁を話す赤茶色の狐――ロコンである。
     名前を『ひむ』と名乗っていて、腹が痛いから診てもらえないだろうかとエルフーン先生に頼みに来たのだ。
     とりあえず、患者の行動から診察してみようと、エルフーン先生がいくつか、ひむに質問してみたところ――。

    「……食べ過ぎによる、胃痛でしょう。胃薬出しておきますので飲んでください。 それと、今日はあんまり食事の量は控えてくださいね?」
                                                   
     ひむは納得してなさそうな顔だったが、みたらし団子を一日で一万本も食べたら、普通、そうなるであろう。むしろ胃痛だけでおさまったのが異常だ。
     でも他には特に怪しいところもなかったので、胃薬をひむに渡して、終わった。
     ひむが口にしたみたらし団子の数にも驚いたが、その数を聞いたときのエルフーン先生の大きく口を開けた顔も可愛いかったなぁ、とドレディアは思い出し笑いをした――。

     もふもふもふもふもふもふもふ!
     
     当然、ドレディアに聞こえて来たのは、何かが膨らむかのような柔らかい音。
     ドレディアは音がする方――エルフーン先生の自室に急いで向かうと、ノックもせずに扉を乱暴に開けた。
     一体、何の音だろうと、エルフーン先生に何かあったのではないかと、ドレディアが心配そうな瞳をエルフーン先生の方に向けた……。
     向けたのだが、ドレディアの心配そうな瞳が一転、驚いて丸くなった。
     エルフーン先生の綿は一回抜かれると、本人曰く、一ヵ月ぐらいはかかるはずなのに、もう生えていたのだ。
     抜かれてからまだ三日も立っていないというのに、確かにエルフーン先生のもふもふは元通りになっている。
    「……先生?」
    「へへへ! やったぞ! これで、いつも綿をいっぱい抜かれても一発で元通りだぁ!」
    「これは、一体?」
    「あ! ドレディアさん! へへへ、実はね、毛生え薬ならぬ綿生え薬というものを知り合いの薬屋からもらったんだ。効果は見ての通り!」
     エルフーン先生が嬉々としてドレディアに見せたのは小さな紫色のビン。
     ……確かに効きそうではあるが、なんだか毒が含んでいそうな色という印象をドレディアは抱いた。
    「先生、それ、副作用とかありませんよね?」
    「多分、大丈夫だと思うよ、あの薬屋の腕は確かなはずだから」
     エルフーン先生が自信を持って言っているのだから、きっと大丈夫なのだろうとドレディアは思うと、心配していた心が、ウキウキとしたものに変わっていく。
     いつでも、綿を生やすことができるということは、いつでもエルフーン先生の綿を取ることができるという意味でもある。
     エルフーン先生の綿が大好きなドレディアにとっては、これ以上にない朗報だったかもしれない。
     早速、取ってみようかしらという衝動に流されるまま草の手を伸ばそうとして――。

     もふ! 

    「ん?」
    「あら?」

     もふもふもふもふもふもふもふもふもふ!!

    「あわわわ! な、なんか、いっぱい綿が!!」
    「先生! 取らしてもらいます!!」
    「え!!??」
    「このままでは病院が壊れますから!!!」

     エルフーン先生から膨らんでくるもふもふに負けじと声をあげたドレディアは一息入れると、次から次へ、エルフーン先生のもふもふを取っては部屋の外に適当にポイ捨てしていく。
     部屋を埋め尽くすかもしれないと考えると、手を休ませてはいられない。もふもふによる病院の倒壊なんて、他人からしたら笑い話。当のこちらはもちろん笑えない。
     比較的危機的状況な為、ドレディアも楽しみながらエルフーン先生の綿を取っている余裕がなかった。考えるよりも先に手を動かさなければ! 綿を取っていかなければ! そんな真剣な想いがドレディアの手を加速させていく。
     定期的にエルフーン先生の綿を取ってきた、もふ取り数年のキャリアは伊達ではなかった。
     エルフーン先生の綿を取っているドレディアの手つきは鮮やかだった。

    「頼みますから!! 全部、取らないでくださいね!!??」   


    【4】

    「先生、廊下が綿だらけになってしまいましたね」
    「……まさかここまでの効果があったとは思わなかったよ」
     もふもふ大量発生事件が起こってから十数分間、ようやくエルフーン先生の綿がもふもふと膨らむのを止まってくれた。
     ドレディアがポイ捨てした綿は廊下一面、敷き詰められたかのように積もっている。
     今もまだ、多く生えているエルフーン先生の綿をドレディアが取っているのだが、薬の効果が切れているから落ち着いてゆっくりと取ることができる。
    「医療用だけでは、余ってしまいますし……どこかに売ってしまいましょうか?」
    「そうだね……他の病院とか?」
    「布団用にも売れると思いますよ」
     エルフーン綿100パーセントの布団……なんか気持ち良さそうだなぁ、と思い浮かべながらドレディアは作業を続けていく。
     しかし、ゆっくりとエルフーン先生のもふもふを取っていく度に、ドレディアは違和感を感じた。
     ……胸がドキドキするような、キュンキュンするような……。
     この違和感はこれが初めてではなかった。ここ最近、数ヶ月前からこんな感じだった。
     エルフーン先生の綿を取ると――もふもふに触れると胸がドキドキと鼓動がいささか速くなっているような気がする。
     今までは違和感が出て来るまでは楽しく取っていたのに、なんだか、もふもふに触れると胸のあたりが熱くなっていくような感覚がドレディアにはあった。
     しかも今回はいつもよりゆっくりと作業をしている為か、その違和感が若干強くドレディアの中に広がっていく。
     風邪を引いているのか? でも、そんなに体調が悪いというわけでもない。
     なら、この胸のドキドキは――。
    「う〜ん……この薬、まだあるんだけど、どうしましょうか、ドレディアさん」
     まだ残っていると思われる例の薬が入っているビンを眺めながらエルフーン先生が尋ねたが、ドレディアからの返事がない。
     エルフーン先生がもう一度、ドレディアに声をかけてみても返事がない。しかし、代わりに聞こえてきたのは――。
    「……寝てしまいましたか……って、ドレディアさん? 起きてくださーい。ドレディアさーん?」
     だけど、ドレディアの静かな寝息は止まることはなかった。


     それは昔、ドレディアがまだチュリネだった頃。
    「チュリネさん? まだ起きてたんですか?」
    「あ、せんせい」
     チュリネが病を起こして、エルフーン先生の病院に入院していた頃。
     最初は症状が重くて、緊急手術を施した……結果、なんとか峠を越えることに成功した。
     しかし、療養が必要とのことで、こうしてチュリネは入院していて、エルフーン先生によると、薬をしっかり飲んでここでゆっくりと療養すれば病も治ると言ってくれたのだが、死に際を経験したチュリネは不安だった。
     また病が起こるのではないかと。
     そう考えると不安で胸がいっぱいになって、とてもではないが眠れる気分ではなくなった。
    「もう……しっかりと寝ないと駄目ですよ? まだ病み上がりなんですからね」
    「うん、わかってるよ。でもね、こわいの」
     一室の病室、ベッドの上にいるチュリネにエルフーン先生が近づき、彼の手に持っていたランプが静かに揺れる。 
    「大丈夫ですよ……そうだ、今晩は僕がここに一緒にいますよ。それぐらいしか、今、できることがなくて申し訳ないのですが」
    「とちゅうでいなくならない?」
    「大丈夫。チュリネさんの傍から離れませんから」
     慣れない病室生活でイライラしたり、心細くなったりしている患者は珍しくない。
     こうやって、患者の心と向き合い助けるのも医師の務めだと、後にドレディアになったチュリネは聞くことになる。
    「隣、失礼しますね」
    「せんせいのからだは、だいじょうぶなの?」
    「あはは。もう忙しいのは慣れっこですよ。自分で言うのもなんですけど、打たれ強いですから、僕」
    「せんせい……おいしゃさんって、たいへん?」
    「そうですね……チュリネさんのときのように自分ではなく、他の方の命に関わる仕事ですから、結構、大変ですよ」
    「やめたいっておもったことはないの?」
    「それはもう。確かに変わった患者さんのときなんか特に……けど、やっぱり、僕は医者をやっていきますよ、今までも、これからも」
    「なんで?」
    「なんだかんだ言いながらもこの仕事に誇りを持ってますから」
     はにかみながら語ってくれるエルフーン先生の言葉にチュリネの不安が不思議と消えていった。
     すると、今までの疲れが押し寄せてくるかのように眠気がチュリネに襲いかかってきた。
    「わわわ、チュリネさん?」
    「せんせいのもふもふ……あたたかくてきもちいい」
     顔だけは残し、後はエルフーン先生の綿の中にチュリネは体をうずめた。
     気持ち良さそうな顔を浮かべながらチュリネがウトウトし始める。
     エルフーン先生のもふもふがチュリネの凝り固まっていた心を更にほぐしてくれているようであった。
    「しょうがないですね……ゆっくりお休み下さい」
     チュリネが出てこないことを悟ったエルフーン先生は苦笑いしながらも、もうすぐチュリネが眠れそうな雰囲気だったのでそれでよしとした。
     

    「せんせい……」
    「ん?」
    「ありがとう」
     
     もふもふに包まれて、チュリネが微笑みながら言った。
     体だけが暖かくなっただけではなくて、心までも温かくなった気分がチュリネの中に広がる。
     
     
     もふもふもふもふ。

     エルフーン先生のもふもふ揺りかごの中でチュリネが二つの夢を種まきした。

     一つはエルフーン先生のような医者になること。
       
     もう一つは――。



    【5】

    「……懐かしいものを見ましたわね」 
     
     ヨルノズクが夜空に子守唄を優しく響かせている真夜中、ドレディアが静かに起き上がった。
     どうやら、エルフーン先生のもふもふを抱きながら眠ってしまったらしいことを確認すると、ドレディアはエルフーン先生に声をかけてみる。
     しかし、返ってきたのは小さな寝息だけだった。
     仕方ない、いつも寝不足な上に今回のもふもふ大量発生事件の後では疲れも臨界点を突破したのだろう。
     とりあえず、ドレディアは残りの余分なエルフーン先生の綿取り作業に戻ることにした。
     
     もふりもふり……。

     また胸が高鳴ってきている。静かな真夜中だからか、その胸の音がドレディア自身にも聴こえていた。
     その音を聴く度にドレディアは顔を赤らめさせていく。その胸の高鳴りの意味をようやく知ったその身の体温は熱さを更に帯びている。
     エルフーン先生は自分が退院するまで、あの日から毎晩、あのもふもふの綿の中で眠らせてくれた……あのとき感じた温もりは一生忘れられないものだ。
     ドレディアがもふもふ好き、というのは裏を返せば――。
     
     ある程度、エルフーン先生の綿も取れて、形も整えたこのまま草の腕で起用にエルフーン先生を持ち上げると、ベッドへと運んでいく。
     静かに先生をベッドの上に置いて、ドレディアの目に映るエルフーン先生の寝顔。
     睡眠にありつけることができてこの上なく幸せそうだというような顔をしていた。
     その寝顔にドレディアが思わず、草の手でエルフーン先生の頬をさすると、顔を近づけていって……目が合った。
    「あ……ドレディア、さん? 起きてたの…………あれ? 頭が軽くなっているような……あ、取られ過ぎてない」
    「先生……」
    「ん? どうしたの? ドレディアさん……って、なんか顔が近いような気がするけど……?」
     お互いの顔と顔の距離は約十センチ。
     その気になれば、すぐにキスができる距離。
     ドレディアがあまりにも見つめてくるからか、エルフーン先生の胸の鼓動が速くなっていく。

    「先生……覚えてますか? 一匹のチュリネが先生の綿の中で寝ていたときのこと」
    「え……? あ、はい。今でも覚えてますよ。僕も初めてのことだったので結構印象に残ってます…………ってなんでドレディアさんが、それを?」 
    「……わたくし、あのときのチュリネだったんです」
    「えっ!? そ、そうだったの! …………良かった。立派に育ったんだね。本当に良かった…………」
    「わたくし、先生のおかげで看護師という夢を持つことができたんですよ」
    「あわわわ! な、なんか、えっと、その、光栄です……」
    「それと、もう一つ、夢を持てたのですが」
    「はい?」

    「大好きですわ、エルフーン先生。結婚してくれませんか?」

     突如、ドレディアからの告白で一瞬、辺りは水を打ったかのように静かになった。
     しかし、お互いの胸の高鳴りは更に強くなっていく。 
    「………………」
    「………………」
    「………………え?」
     ようやくエルフーン先生の意識が元に戻った。

    「そそそそそそれって、プロポーズってやつだよね!? ぼ、僕はこの場合どうすれば……!?」

     軽くパニックになりそうになり距離を離したエルフーン先生にドレディアは「ふふふ」と微笑んだ。
     チュリネの頃のエルフーン先生のもふもふから温もりと勇気をもらった。
     忙しかったはずなのに、残っている仕事もあったはずなのに、いつも夜になっては、あのもふもふの中で眠らしてくれた。
     そしてドレディアになって、エルフーン先生の姿に更に惚れていったのだ。
     ネガティブなことを呟きながらも、真剣に患者と向き合うその姿がかっこよくて。
     取り乱して、慌てふためくその姿が可愛くて。
     もふもふから好きになったのではなく、エルフーン先生のことを大好きになったから、もふもふが大好きになった。
     エルフーン先生のもふもふを取り過ぎてしまうのは、きっと愛情表現の一つ。

    「簡単ですよ。先生がわたくしのことをどう思っているのか、教えてくだされば」
    「え……と。僕の綿を取り過ぎてしまったり……イジワルなこともしてきますけど……いつもテキパキと行動してくれますし、アロマセラピーで患者さんの心を落ち着かせてくれたりとか、助かりました。病院のお母さん的な存在ですよね、ドレディアさんは。だから、頼りにしてます、本当に。えっと……その、だから、えっと………………」

     言っていてなんだか恥ずかしくなってきたエルフーン先生は顔が茹で(ゆで)上がったかのように赤くなっていく。
    「……あの……自分で言うのもアレなんですけど……僕って、結構鈍感、ってやつですかね……?」
    「そんな先生も大好きですよ」
    「茶化さないで下さいよっ」
    「茶化してなんかいませんよ」

     
     最後の距離を詰めた。


    「わたくしの気持ちは本物ですから」
     ドレディアがそう言った途端、エルフーン先生がベッドの上で横に倒れた。
     心なしか、エルフーン先生の顔から湯気が出てきてもおかしくなさそうな感じがした。
     そんな真っ赤な顔になっているエルフーン先生の唇から漂うのは花の甘い香り。
    「あらあら……ふふふ、ここで倒れてしまうなんていかにも先生らしいですわね。さて……わたくしも今日はここで寝かせてもらおうかしら」 
     ドレディアはエルフーン先生の綿の方に寝転がり、そして、ぎゅっと抱き締めた。
    「もう……あの時みたいに、もふもふの中には入れないですが……こうやって抱き締めることができるようになりましたわね」

     もふもふと優しい音色が辺りに漂う。
     それはもう一つの夢が花咲いた証でもあった。


    【6】
       
    「ついに、あの先生がな〜。結婚かぁ……先を越されたなぁ」

    「なぁ、ロコン。結婚って言うと、なんかあのときを思い出すよな」
    「えぇ……ルクシオさんがプロポーズしてくれた日……ふふふ、あの方々がどんなプロポーズをしたのか……後で話を訊かなくちゃ」

    「あのこええドレディアが結婚か、なんか信じられねぇよな」
    「そのドレディアさんを怒らした張本人が言うか」
    「んだと? シャワーズ」
    「やるのか、サンダース?」 
    「…………」
    「…………」
    「止めとくか。看護師にケガさせられるって変な話にしたくないし」
    「奇遇だな。僕もそう思っていたところだよ」

    「おい、あそこにホウオウ様がいるぞ!?」
    「マジっすか」

    「ふむ……これだけの人数が揃うとは」
    「みなさんエルフーン先生やドレディアさんのことが大好きですから」
    「まさか伝説のポケモンもお世話になっていましたとは」
    「他の者達にも困ったらエルフーンとドレディアがいる病院を勧めておいた」
    「ホウオウ様の知り合いの方々というと……どなたですか?」
    「近々、ルギアなどが来訪するかもしれんな」
    「こりゃ、先生もドレディアさんも大変だ」
    「けど、ますます、楽しみになってきたなぁ。あの二匹がどんな病院にしていくのかを」

    「あの……グラエナさん。私達もいつか……」
    「え、ちょ、エーフィっ!?」
    「おお!? ここにも春が来ましたかな〜?」
    「おら! ニューラ! てめぇはちょっと黙ってろ!」

    「何はともあれ、今日はめでたい日じゃな。ほ、ほ、ほ」
     
     過去と未来を見ることができる一匹の鳥が笑った後に吹きゆく春一番。 
     森の広場にて花満開の春が二匹を迎え入れる。
     一匹は恥ずかしそうな新郎――エルフーン先生。
     もう一匹は頭から白いベールをかぶっている新婦――看護師のドレディア

    「わぁぁ! 皆さん、本日はお忙しい中、集まってくれまして、あ、ありがとうございます!」
    「あら、先生、まだ緊張してます?」
    「うぅ、ドレディアさんは緊張してないの?」
    「はい! だって、皆がこうやって祝福してくれてますから、嬉しくて、緊張なんか忘れちゃいました」
     ドレディアは下を出しながらそう言うと、どこからか何やら取り出したのは一本の小さな紫色のビン。「ちょっと失礼」と一言置くと、ドレディアは近くに置いてあった大きなカゴを持って来た。そのカゴの中には赤、青、黄色、その他にも色々な色の花がぎっしり詰まっていた。
    「さて、先生、緊張で喉が渇いてますでしょう? まずはこれを飲んでください」
    「え、それどこかでみたことあるような……ちょ? ドレディアさん!? ゴキュ、ゴク、ゴキュン!! ……っぷはぁ!」
     半ば強引にドレディアがエルフーン先生に飲ませたもの、それは――。

     もふもふもふもふもふもふもふもふもふもふ!!!

    「わわぁぁあああ!!! やっぱり、あのときの綿生え薬だ!!」

     エルフーンの綿がいきなり増え始めたので、辺りが騒然となっていく中、ドレディアが見事な草の両手さばきでエルフーン先生の綿を取っては、その綿に何かを入れて、すぐに空へと飛ばしていく。
     その一ちぎれの綿が風に乗ってふわりと空中散歩をちょっとばかりした後、エーフィのところに落ちてきた。
     エーフィがそれをキャッチして、その綿を覗き込むと、数輪の花がそこには添えられていた。
     エーフィだけではない、ドレディアが次々に投げていく綿は風に乗って、集まった者達のところに着地していく。
     どの綿も数輪の花が添えられていた。

    「名づけて、もふもふブーケですわ! 皆さんに幸せのおすそ分けです!」

     手を素早く動かしながら、ドレディアがそう説明した。
     たくさんのもふもふブーケが風に乗って空中散歩をしていく。
     時折、春一番が吹いては空中を駆け抜けていくもふもふブーケもあった。
     この場に集まったポケモン達だけではなく、世界中のポケモン達にもこのもふもふブーケは届くことだろう。

     エルフーン先生との出逢いから始まった、もふもふな恋。
     
     その、もふもふブーケには確かに幸せが詰まっていた。

    「だから! 取り過ぎないようにって何度注意したらいいんですかぁ!!」
    「えへへ、嬉しくて、つい、やっちゃいました」

     その場に集まったポケモン達の笑い声が響き渡っていく。
     
     エルフーン先生のつるつる頭に反射した太陽の光が一つのもふもふブーケに当たっていた。






    【五年後を書いてみました】

     
     それは四月某日のチャットの日、ふにょんさんとのトークで盛り上がった、エルフーン先生、それが全ての始まりでした。 
    「最近、先生のもふもふに触れると胸がキュンってなりますの……これって……」
     このようなドレディアさんの台詞から一気に、今回の話を書かせていただけることになりました。
     さりげなく、自分の小説のキャラ(ひむ)も入れてみたりで色々と楽しかったです。
     ありがとうございます、ふにょんさん!
     そして遅くなって申し訳ありませんです……!(汗)

     ちなみに今回の物語の時間軸を一応表記しておきますと、
     ふにょんさんの五分シリーズのエーフィさんの占いのお話で出てきた、エルフーン先生の五年後のことです。
     
     とりあえず、個人的にはエルフーン先生がドレディアさんの尻に敷かれそうなイメージがあります。
     結婚後のプライベートな夫婦生活ではドレディアさんが色々とエルフーン先生を引っ張っていきそうな感じですかね?
     頑張ってください、エルフーン先生。(汗)
     変わって、病院での仕事中はそのエルフーン先生の手腕にドレディアさんは内心惚れ惚れしているといった感じで……。
     ……って、これって(ドレディアさんはツンツンしてないですが)ツンデレみたいなやつですかね?(汗)
     とにかく、エルフーン先生、ドレディアさん、末永くお幸せに!
     
     改めて、ふにょんさん。【五年後】書かせてもらいました、ありがとうございました!
     お気に召したら幸いです。(ドキドキ)


     それでは失礼しました。


    【皆さんのところにも届け、もふもふブーケ!】


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