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それは、秋の夕暮れ時の話だ。
テレビクルーである、モリシマとカザマ、この2人の男に連れられ、3人の男性と1人の女性は、オオサカ郊外の田舎道にいた。唯一の女性、マイコは、「オオサカにもこんな田舎道があるなんて!」 と、ポケモン達とともにはしゃいでいた。無理もない。彼女はキュウシュウのミヤザキという場所からオオサカに来て、しかも都会の方しか見てきたことがなかったから。
そんな様子を見たオオバヤシ、ハマイエ、トキは揃ってこう思った。
(((こいつホンマに20歳なんか?子供みたいにはしゃぎよるやん!)))
でも、この日の目的ははしゃぐことでも、それを見ることでもない。この田舎に建てられたという、悪事をオオサカの至る所で働いている、悪党のアジトに潜入することなのだ。
この企画の発案者はモリシマだ。旧知の仲というカザマを引き連れ、偶然劇場にいたマイコ以外の3人に声をかけたのだ。そこにマイコが話を聞きつけ乱入した、という次第である。当然3人は猛烈に反対し、あと一歩で3対1のバトルに発展するほどの険悪ムードになったが、モリシマとカザマがマイコの参加を認め、4人は無事に仲直りしたわけだ。その企画説明の前に、モリシマが独自に取材したメモによると、今回入るアジトの所有はロケット団。そいつらは初心者トレーナーでも、簡単に倒せる悪党らしい。
しかし、4人ともその怖さを見ているので、モリシマ達が去ったあと、話になった。
「あのメモって、ちょっと信憑性に欠けるよ。ヤバい奴はゴロゴロいるじゃん」
マイコが率直に言うと、みんな納得して自分達の経験談を話し始めた。
「俺は博物館で奴らと戦ったで。マイコもおったやろ」
「うん、そうそう。怖かったからね」
「モンメンがエルフーンに進化せえへんかったらヤバかったで。人質も取られるし……」
ハマイエの経験談はその5の前後編に入っている。太陽の石によって、ピンチを救われた。
「人質、と言うたら、お前らみんなが人質の状態で、俺はあいつらと戦ったで。みんなヤバいってなったときにバチュルがデンチュラに進化したから良かったけど、おらんかったら……」
オオバヤシの経験談はその7に入っている。一番背負ったものが大きかったバトルでもある。
「俺は最近、マイコと一緒に戦ったで。そいつら、エリートズって言うてて、他の奴らとはちょっと別格やったわ。ランプラーがおらんかったらって思うと……」
「あれは本当にピリピリしたよ。頭の中に、負けがちらついたからね……」
トキの体験談はその9前後編である。大ピンチから逆転したのは、運も少しあったはずである。
どれも修羅場としか言いようのない激戦だった。
「あの人らって、いざ戦いってなっても大丈夫やろうか?」
オオバヤシが言うと、3人とも疑問を浮かべていた。
「「「うーん……」」」
そんなこんなで、ロケット団のアジトが見渡せる場所に着いた。とても田舎にあるとは思えないくらい、近代的な建物である。ここでカザマから1つの提案が出された。
「ここで二手に分かれましょう。僕とモリシマ君とで。そっちは2人づつに」
「じゃあ、グーとパーで分かれようか」
マイコの掛け声とともに、4人は右手を出した。
「「「「グーとパーで分かれましょ!!」」」」
結果、モリシマの方では……
「オオバヤシさん、こっちの方に見張りの奴が多くおるんちゃいます?」
「トキ、それは多分錯覚やわ。どっちも同じくらいちゃう?」
タッグはオオバヤシと、トキである。
つまり、カザマの方では……
「ハマイエ君、なんか多くない?警備の人達……」
「気のせいやろ、マイコ!大丈夫やって!」
こちらはマイコとハマイエがタッグを組んでいる。
「なんか来やがった!」
「早く戦いましょう!」
二手に分かれたはずなのに、まるで計ったように同刻に悪党どもが襲いかかってきた!
「ウォーグル、燕返し!フシギソウ、タネ爆弾!」
「モウカザル、炎のパンチ!ハスブレロ、バブル光線!」
「ルクシオ、電撃波!ガバイト、ドラゴンクロー!」
「ホイーガ、ベノムショック!コマタナ、騙し討ち!」
4人それぞれが複数ポケモンを出し、懸命に戦っていた。やはり、いくつもバトルを重ねるうちに力をつけていったのだろう、警備の下っ端どもとの差は歴然としていた。
と、ここで……モリシマが逃げる素振りを見せていた。
「モリシマさん!あんたどこ行こうとしとんねん!まさか、逃げ……!」
「オオバヤシ、逃げるわけねえだろうが!少し離れるだけだ、行け、ミノムッチ!」
テレビクルーから繰り出されたポケモンは、環境によってミノを変える変わったポケモン。桃色のゴミのミノを身にまとっていた。
「目覚めるパワー!!」
蓑虫ポケモンから出されたのは、ポケモンによってタイプの変わる特殊な技だった。今回は氷の力がほとばしってダメージを与えていた。
「意外と、強いんですね……」
「うわ、凄い……」
「オオバヤシ、トキ、ちょっとは俺を見直したか?」
「「はい、ちょっと……」」
一方のカザマ側は……
「ブイゼル、スピードスター!!」
小さな海イタチポケモンから繰り出された星形の光線が、的確に敵を貫いていた。
「カザマさんのポケモンって、この1体だけなのかな?」
「多分ちゃうと思うで。でも、エース級やろうとは思うけどな」
「ハマイエ、マイコちゃん、どう?」
「「凄いと思います……」」
下っ端を撃退したところで、2人のテレビクルーは行動を起こした。それは、マイコ達4人にとって、裏切りとも呼べる行為であった。
まず、モリシマ側では何が起こっていたかというと……
「ガーメイル、サイコキネシス!」
「モリシマさん!あんた何してんねん!」
「味方に何してんすか!?」
オオバヤシとトキを抵抗できない状態にするため、ミノガポケモンに強い念力を放たせた。ミノムッチが進化する2種類のポケモン、ミノマダム(メスが進化)とガーメイル(オスが進化)。念力系の攻撃も得意なのだ。さらに、
「ミノマダム、草結び!」
グルグルグルッ!!!
「離せっ!離せっ!!」
「どこで裏切ってん!!俺らを奴らに突き出すん!?」
草木のミノに覆われたミノマダムが出した草によって2人は身動きがとれなくなってしまった。
それを確認し、モリシマは駆け出した……。
一方、カザマ側では……
「パラス!キノココ!タマゲタケ!みんな揃ってキノコの胞子!!」
パラパラパラ……
「ふわぁー、何だか眠く……ZZZ……」
「マイコ、お前、寝るなぁー……ZZZ……」
確実に眠りに落とされる胞子をキノコを持つポケモン達から食らい、こちらの2人は眠った。
カザマもそれを確認し、駆け出した……。
後編へ続く
マコです。不穏な空気をため込んで後編へ行きます。
次回は、マイコ、オオバヤシ、ハマイエ、トキの4人を裏切ったと言えるモリシマ、カザマにある悲劇が降りかかります。
そして、それは、救いようがない結末へと進んでしまうのです……。
【書いてもいいのよ】
【次は泣いてもいいのよ】
マイコは劇場の友人に会いに行くとき、「今から行く」というメールを送り、ポケモン達と共に向かうということを習慣にしている。
その日も、いつものようにメールを送った。しかし、何時間経っても来なかった。
1時間後ぐらいでは、みんな、
「たぶん、気が変わって、今日は行かんでええやろ、って思ったんやろ」
と、楽天的な見方であった。
しかし、2時間が経ってくると、さすがに心配し始めた。
「何か厄介事にでも巻き込まれてんちゃう?」
「確かにポケモンをたくさん持っとるし、強いけど、もっと強いやつに打ちのめされたんちゃう?」
そして3時間経とうとしたとき、1通の手紙が来た。
差出人は不明である。代表してオオバヤシが封を破ることにした。
中には手紙が1枚。文字は新聞の見出しを切ったような、サスペンスでよく出るものである。
「女の子は預かった。返してほしければオオサカのキンリン公園に来い。」
とりあえず、大人数で行くとまずいので、3人で向かった。
公園に来たが、それらしき人物はいない。でも、不意打ちされると困るので、ポケモンは出した。
デンチュラ、エルフーン、ドレディア。
誘拐犯の来訪を待つ間、自然と会話になった。
「何で誘拐犯が、何もこっちに要求してへんのやろう?おかしないですか?」
カワニシが若干疑問視していたことを言うと、二人とも少し考えて言った。
「確かに。身代金とか言うてへんかったよなあ」
ハマイエが言ったが、オオバヤシはちょっと違う見方をした。
「俺は何か裏があると思うわ。マイコのこと処分してもうたで、とか」
そんな話をしていると、怪しそうな人が現れた。
「あ、こ、こんにちは……」
いやに低姿勢である。その人は長い髪、でかい眼鏡、チェックのシャツ、(しかもパンツにインしてる)すらっとしたを超えてヒョロッとしたもやし体型、そして大きなリュック。
それだけ言われればすぐわかるだろう。
(((オタクや……何か気持ち悪い……)))
3人同時に寒気を感じた。
と、ここで、オタクはリュックから何かを出した。
3体の、ぬいぐるみである。全部ピカチュウの。
正直、攻撃すべきか迷った。「身代わり」という技なら、ダメージを与える技を放って本体を引きずり出すべきである。状態異常を起こす技は無意味だからだ。しかし、本当のぬいぐるみで、中に爆弾が仕込んであったら?ポケモンも人間も危険だ。
結局、攻撃することを選ぶ3人。
背中に大きな綿をもつ風隠れポケモンが飛行タイプ最強クラスの大技、暴風でぬいぐるみを打ち上げたところに、電気蜘蛛ポケモンが虹色の、混乱を引き起こせる光線、シグナルビームを放つ。さらに、頭に赤い花を持つ花飾りポケモンが、必中の特殊な葉っぱ、マジカルリーフを繰り出す。
結果、ぬいぐるみは手足がもげて所々から綿がこぼれるというめちゃくちゃな状態になった。
「うわあああん!!ピカチュウちゅわあん!痛いでしょう、痛いでしょう」
オタクはすぐ寄ってぬいぐるみと一人芝居をしていた。
そのあまりのイタさに、3人と3匹はただ呆然としていた。
「あのー、芝居中すみません。マイコちゃんは今どこに……」
カワニシが丁寧にそのオタクに聞いたところ、案外素直に白状した。
「エルミーハウスの305号室。縄で縛っておいたけど、縛り方が分からなくて緩い結びになったから、多分今はもう脱出してるよ」
「「「はぁ!!?」」」
とりあえずツッコみたい気分である。
「縛り方が分からんって」
「縄を用意したまではいいけど、女の子を見るだけで鼻血が出まくって」
「「「中学生かっお前は!!!」」」
「だって本当に分からなかったんだもん」
「もんって言わんといてや!!」
「ブリッコかっキショイッ」
「もう脱出したって……監視どんだけ緩いねん」
3人ともあまりの酷さにただ呆れている。
「あ、あのー、僕のぬいぐるみへの愛、聞きます?」
オタクがそう聞いてきたので、同時に言い返した。
「「「遠慮します」」」
しかし、それを知ってか知らずか、
「まずピカチュウちゃんだね。ずんぐりとして、何よりこの愛らしい顔!」
喋りだした。相手の反応なんて無視して。
30分後……、熱弁は止まらない。
「綿でしかできてないけど、中に時計を内蔵したものがあったりとか」
オオバヤシも、ハマイエも、カワニシも、顔に青筋が立ちそうである。
さらに30分後……
「軽いものから重いものまでいろいろと……大丈夫ですかみなさん?」
全員倒れていた。聞きたくもない話を1時間聞かされるのは、バトルとは違う意味で精神的に削られる。
「すみませーん……三途の川が見えてきました……」
カワニシの目には、確実に幻覚が見えているはずである。ボロボロになっている。
「え、ホンマ!?それアカンって、ケンちゃん!」
そんな彼を介抱しようとしているのはハマイエ。比較的意識はハッキリしているようだ。
「ハマイエ、カワニシ、お前ら何しとんねん……おええっ」
一番ボロボロなのはオオバヤシだろう。ストレスを感じすぎて嘔吐している。
そして、そんなときである。上空から一人、降りてきた。
「あれ、ばーやんにハマイエ君にカワニシさんじゃん。何してんのそんなとこで」
ワシボンが進化した勇猛ポケモン、ウォーグルに乗って、マイコが降りてきた。
「マイコや!!」
「えっ、マイコ!?」
「マイコちゃん!?」
本当に脱出していたのだ。これには驚きを隠せない3人。
「ケガないか?何か精神的にやられたとか」
「特にないよ。内面も外面も大丈夫」
「縄はすぐほどけたん?」
「というか、私を縛るサイズじゃないくらいでかすぎる輪っかだったから。全然平気だった」
「「「……」」」
いろいろ凄い告発を聞いた後に犯人に待っているのは、とりあえず、お仕置きである。
「さあさ、僕のことを早く警察に突き出しなよ、さあ!」
オタクはそう言って両腕を突き出したが、オオバヤシは言った。
「断る。マイコもケガないし、何も取られてへんし」
「えー……」
「ただ、1個だけ、やっとこうと思う。」
そう言うと、デンチュラに、犯人の片手の甲を寄せて、指示した。
「デンチュラ、2,3滴の胃液を頼むわ」
電気蜘蛛の口から、酸が出てきた。
ジュウ、ジュウッ
タンパク質が溶けてる音がした。
「ギャアアアアッ」
断末魔の叫びが聞こえてきた。(※よい子のみんなはマネしないでね。)
そして泣きながら、逃げ帰った。
「あれ大丈夫なんすかね?」
「表皮だけにかけたから。1,2日で跡形なく消えるから問題ないで」
そこはだいぶ問題である。
しかしながら、マイコが無傷で帰ってくるだけありがたいとみんな思うのだった。
おしまい
マコです。
なんかすみませんでしたあああ!!!ギャグって私が書くと、ついアホなだけの話に……!
普通、こんなおマヌケもいいとこな誘拐犯、いませんよね!?
ポケモンがいるから、余裕で対応できてる3人。でも、興味のない話にはポケモンで牽制できないから、その人の気の持ちようしか対処法はないです。
あと、最後にオオバヤシさんがやった方法は、絶対危ないのでやってはいけません。きっと傷跡がしばらく残ります。
次の話は、今回の話とはちょっと違い、シリアスになります。
私の話では初めて、バッドエンドなものだと思います。
【書いてもいいのよ】
【誘拐とオタクには要注意なのよ】
「さて、修行とはいったけど……」
ヒワダの町外れを、ダルマはぶらぶらしていた。ダルマの後ろをアリゲイツとビードルが続く。南には松の木が隙間なく植えられ、視界がよくない。また、上空には鳥ポケモンが風に乗って鳴いている。一方、はるか北には手付かずのままである山が幾重もそびえ立つ。山とダルマの間には何枚もの畑に水路があり、いかにも田舎といったようである。
「とにかく、体を動かさないとなあ……ん、潮の香りがするな」
ふと、ダルマは歩を止め、目を閉じながら鼻を立てた。アリゲイツとビードルも主人の真似をする。他のポケモンでやれと言われそうな光景である。
「思えば、家を出てから匂いや香りを気にする時なんかなかったな。父さんは大丈夫だろうか、家事は俺がしていたし……どうしたアリゲイツ?」
ダルマが下を見ると、アリゲイツがズボンの裾を引っ張り、何かを指差している。視線の先に目をやると、松の木の間に道があり、奥には砂浜が見える。
「砂浜か、どうりでにおうはずだ。ちょっと行ってみるか!」
ダルマはビードルを左肩に乗せて走った。みるみるうちに砂浜は大きくなっていく。砂浜に入ると、彼の眼前には途方もなく大きな海が広がった。
「やっぱり海があったか。せっかく来たわけだし、泳いでいくか。アリゲイツ達もどうだ?」
ダルマの問いかけに、アリゲイツは答えるまでもなく駆け出し、ダイブした。一方ビードルはダルマの肩から降り、砂遊びを始めた。
「ビードルは泳がないか。それじゃ、荷物を見といてくれよ」
ダルマは松の木の死角に隠れ、なぜか持ってた海パンに着替えた。海パンと言っても、海パン野郎御用達のタイトなものではなく、ハーフパンツに近いものである。
着替えたダルマは、準備運動もそこそこに、海に足を踏み入れた。誰も来ないのか、水はどこまでも見渡せるほどの青さで、水平線で空と同化している。そのおかげで、腰がつかるくらいの深さでも足がはっきり認識できる。
「お、思ったより冷たいな。それとも暑いからそう感じるだけか」
ダルマは肩をさすると、ゆっくり泳ぎだした。足で蹴り、腕で横に水をかきわける、平泳ぎである。10秒ほど息継ぎせずに泳ぎ、頭を出した。
「うーん、やっぱり息継ぎが上手くいかないな。水ポケモンは息継ぎしなくていいから楽そうだ」
ダルマは深呼吸をしながら、離れてはしゃぐアリゲイツを眺めた。すると、他にも何かが動くのが見えた。
「な、なんだあれは……?」
ダルマは怪しげな「何か」に近づいていった。「何か」は紫の糸の束のようなものである。その下にも何かあるようだが、距離があるのでまだはっきりしない。
一歩一歩近づき、ようやく手の届くところまでやってきた。ダルマが顔を寄せると、突然「何か」が水から飛び上がった。
「うおっ!危ない危ない」
ダルマはさっと後退した。彼は「何か」をまじまじと見つめた。どうやら「何か」の正体は人間みたいだ。紫の糸のようなものは髪の毛で、海水が滴り日光に輝く様子はどことなく色っぽい。
「あ、ゴメンゴメン、驚かせちゃったね」
「いや、いいよ。それより、あんたは誰だ?」
「僕?僕はツクシ。君は?」
「俺はダルマ、旅のトレーナーだ」
「へえ、旅のトレーナーか。それがどうして泳いでるの?」
「実はな……」
「なるほど。ジム戦に向けて特訓しようとしたけど、何をすべきかわからなかったから泳いでたんだ」
「まあ、そういうとこかな」
しばらくして、2人は浜辺にあがっていた。その傍ら、アリゲイツは砂風呂をやっており、ビードルは自分の砂の像を作っている。
「それなら話は早いや、僕とバトルしようよ!」
「ええ、あんたと?大丈夫か?」
「大丈夫大丈夫。こう見えて、僕はダルマ君より年上なんだよ」
「な、なんだってー。12くらいだと思った。まあ、それなら大丈夫かな」
「そうと決れば、早速始めよう!出番だよ、ストライク!」
ツクシが腰のボールを投げると、中から両腕にカマを持つポケモンが出てきた。
「よし、こっちはビードルだ!」
ダルマは遊んでいるビードルを呼び寄せた。ビードルも像が完成したのか、すぐにやってきた。これで準備は整った。
「それじゃ、先手はもらうよ!ストライク、つばめがえし!」
先手はストライクだった。ビードルが動く暇もないほど素早く移動して、一瞬のうちに右のカマで切り付けた。ビードルは為す術なく崩れ落ちた。
「ビードル!」
「よし、まずは1匹!この調子この調子!」
ツクシがガッツポーズを取るのとは対照的に、ダルマはビードルをボールに戻した。
「さあ、次のポケモンはなんだい?」
「……次はこいつだ!」
ダルマはそう叫ぶと、砂の中からアリゲイツを引っ張り出した。アリゲイツが身震いすると、体の砂はあらかた落ちた。
「め、珍しい登場のしかただね」
「まあな。ちなみに、こいつが最後の1匹だ」
「なるほど、じゃあこっちも全力を出すよ。ストライク、シザークロス!」
ツクシは寸分の隙も与えない。再び踏み込んだストライクは、今度は両腕のカマを交差させた。アリゲイツは左へと避けようと試みるが、右脇腹に左のカマの一撃が入った。アリゲイツは倒れそうになるが、受け身を取って立ち上がった。
「それでは、トドメの電光石火だ!」
「なんの、一矢報いれ、氷のキバ!」
2匹は同時に動いた。ストライクは急加速してアリゲイツにぶつかりにいった。一方アリゲイツは、奥のキバを中心に冷気をため込み、ストライクの左肩を力いっぱい噛んだ。どちらの攻撃も相手に当たったが、氷のキバがより大きなダメージを与えたようだ。
「どうだ!噛み付かれたら動けないだろ!」
アリゲイツはストライクを噛んだままだったので、ストライクは身動きが取れないでいた。アリゲイツのあごの力は並大抵ではなく、そうやすやすと抜けることはできない。
「なるほど、上手い考えだね。ならこれはどうかな!シザークロス!」
「なんだとっ!」
ストライクは自由な右腕を振り上げ、素早く振り下ろした。アリゲイツは、不意の一撃に防御することができず、そのまま倒れた。
「アリゲイツ!」
「よし、僕の大勝利だ!」
ダルマがアリゲイツの側に駆け寄るのと同時に、ツクシはガッツポーズを取った。
「ダルマ君、良いバトルだったよ」
「……まあ、あんたからすれば丁度いいサンドバッグだったろうけどさ」
ダルマはストライクを眺めながら答えた。
「うーん、中々面白い動きだったけど、どこかうっかりしている部分があったね。あとやっぱり能力不足かな?」
「……それ、ガンテツさんにも言われたんだけど」
ダルマのこの一言に、ツクシは意外そうな表情を浮かべた。
「え、そうなの?なら聞き入れた方が良いよ。ガンテツさん、弟子なんかは取らないんだけど、トレーナーとしても指導者としても優秀なんだ。僕もあの人に色々アドバイスしてもらってるし」
「はあ。一体どんなことを言われたんだ?」
「えーと、確か『伸ばしたい能力が高いポケモンと戦う』だったかな。『自分より優れた力を持つ相手と勝負を重ねれば、おのずと慣れて、いつしか相手と同じくらいの能力に到達できる!』ということみたい。僕も実践してみたけど、それが今のストライクさ」
「なるほど……参考になった、ありがとう」
「どういたしまして。それじゃ、僕はそろそろ帰るね。次に会う機会を楽しみにしているよ」
ツクシはこう言い残し、海岸から出ていった。南中した太陽が照らす浜辺にいるのはダルマだけになった。
「また会う機会ねえ、旅人が同じ相手と2度も会う機会なんて無いだろうに」
ダルマはアリゲイツに傷薬を吹き掛けた。背中に負ったカマの傷はすぐにふさがっていく。
「さて、あんだけ強いポケモンを見せつけられたんだ。あいつの特訓方法を真似させてもらおう。じゃあどの能力を伸ばそうか?やっぱりすばやさは大事だよなー、ならすばやいポケモンを探すか」
ダルマはなんとなく空を見上げてみた。アリゲイツも見上げた。すると、アリゲイツが何かを指差した。ダルマがその先に視線を送ると、1匹のピジョンが見えた。ピジョンはしばらく海上を旋回し、ダルマの近くにある松の木の枝に降りた。
「……鳥ポケモンならすばやさは申し分ないな。よし、アリゲイツ、ピジョンのいる枝に飛び付け!」
アリゲイツは走りだし、松の枝目がけてジャンプした。気付いたピジョンは隣の木に悠々と飛び移った。そのままアリゲイツは枝にしがみついたのだが、枝が折れてアリゲイツは地面に落下した。
「あれ、おかしいな。ビードルを捕まえた時は枝が折れることなんて無かったのに」
無理もない話である。松はビードルがいた木ほど太くないというのもあるが、体重が違いすぎたのである。ワニノコは9.5kgなのに対し、アリゲイツは25kgあり、およそ3倍もあるのだ。これではワニノコほど機微のある動きは望むべくもない。
「くっそー、こりゃ中々面倒だな。あ、せっかくだからビードルも鍛えとくか」
ダルマはボールから再度ビードルを出し、傷薬を使った。
「よし!2匹がかりでもピジョンを倒すぞ!」
「よし、今度こそ!まずはアリゲイツ!」
太陽が西の海に近づくまで、ダルマ達は動き続けた。あたりには犠牲になった松の枝が散らばっている。
そんないたちごっこにも遂に決着がついた。まずアリゲイツが枝に飛び付く。もう枝は折れなくなっている。そのうえ始めたころより格段に機敏になっている。しかし、やはりピジョンは何食わぬ顔で飛び上がる。
「今だ、ビードル!」
このときを待っていたかのように、ビードルが糸をはいた。こちらもレーザーのように鋭く、速い。ピジョンは抵抗する間もなく糸を翼に絡ませてしまい、ゆっくり地面に着地した。
「へへ、飛んでるときは上手く技が出せないのに気付けば案外楽だったな」
ダルマは大きく深呼吸すると、体を伸ばした。そしてピジョンのもとへ近づき、翼の糸を取り払った。ピジョンはすぐに山の方向へ飛んでいった。
「さてと、今日は良い練習ができたな。これならツクシのストライクにも何とか……って、これは!」
突然、足元で何かが光りだしたので見てみると、ビードルが光に包まれていた。そのまま体が大きくなり、そして光は収まった。そこには、さなぎのようなポケモンがいた。
「ビードル……遂に進化したか!よし、これで役者は揃った。明日はジム戦頑張るぞ!」
ダルマは明日の勝利を夕日に誓い、海岸をあとにするのであった。
・次回予告
明日の勝利を目指すダルマに、新しい仲間が加わった。しかしそいつはとんだ暴れん坊だった。ダルマは新しい仲間と共に、ヒワダジムに殴り込む!次回第20話「タマゴが孵った!」ダルマの明日はどっちだ!
・雑談タイム
今回の雑談では、私の小説の投稿の流れを紹介します。例えば19話の場合、
・19話、20話を書く
・推敲して19話投稿
と、常に1話分ストックを持つようにしています。
ちなみに、大長編ポケットモンスターは30話頃までには大事件が起こります。それはこの作品の折り返し地点であることをお知らせしときます。
容赦なく、こちらに向かってくる攻撃に、トキは目をつぶった。
(こんなん、もうアカンやん。俺はこのまま……)
しかし、彼に攻撃が降りかかってくることはなかった。たくさんの技が降りかかろうとしたその瞬間、大きくて分厚い炎の壁が彼を守り、攻撃を押し留めていたのだ。しかもその壁は、炎の弱点である水や岩、地面の攻撃ですら無力化してしまうほどであった。
さらに、炎はだんだんエリートズの方向に近寄り……、
勝率 5%、
勝率 23%、
勝率 42%……
「馬鹿な、0%から勝率が上昇するなんてこと……迫ってくるぞぉぉぉっ!!!」
「そんなことあるはずが……うわあっ、何だこの炎は!!!」
彼らを一気に燃やしたのだ。それと同時に金縛りは解けた。
「マイコがやったん?あの炎は?」
「私、動けなかったから関わってないよ。ん?……あれじゃない?」
トキは疑問をぶつけたが、どうも、マイコはそれとは無関係らしい。しかし、彼女は、上空にふよふよ浮かぶ、黒いランプのような形をしたポケモンを見つけた。
(あれ、さっきまで抱いてたはずのヒトモシがおらんようなってる……?)
そのポケモンはふよふよと降りてきて、トキにすり寄ってきた。ポケモンのほうは、なんだか嬉しそうである。主人の戸惑いを、尻目に。
「え、こいつは……?」
「ランプラー。ヒトモシの進化したポケモンだよ。つまり……さっきの炎の壁は、きっとランプラーが作ったものね。」
マイコは携帯電話の「ポケモン図鑑アプリ」のページの一つ「ランプラー」を見ながら言った。
勝率 70%
「く、くそう、勝率が回復するとは、どういうことだ……。」
ロケット団エリートズのうちの一人が言った。戦況はすっかりひっくり返っている。
先ほどの炎はプライドまで傷つけたのだろう。
「ここから戦いを立て直せ!エリートに敗北の二文字は似合わない!許されないのだ!」
悪党どもはだいぶ切羽詰まっている。それを見つつ、青年は冷静に指示をした。
「つまらんプライドで動くやつにはお仕置きやな。ランプラー、煉獄の炎で焼いてくれ」
トキのこの指示をロケット団は嘲笑った。
「ハッハッハ、煉獄は確かに強いが、命中のしにくい技だ!そんなもの当たるはずが」
「当たるわよ!!!」
マイコが口をはさんだ。言葉を遮られた形となったロケット団は怒った。
「なんだと小娘、あの生意気な男の命令した技は当たんねえんだ」
「コンボの勉強が足りないわねエリートさん!ムンナ、テレキネシス!!」
桃色の夢喰いポケモンが放った、これまた桃色の念波はエリートズを浮かせて、そして……
勝率 88%
「隊長!勝率が最高値を更新しております!」
「そんなことはもういい!ひどい炎が当たる!当たるぞぉぉっ!!!」
そのまま、先ほどの炎よりもっと猛烈な炎が悪人たちを飲み込んだ。
テレキネシスを喰らった側は、しばらくの間、地面技以外が当たり放題となってしまう。(相手を浮かせるという技の性質上、地面技は逆に効果がなくなるため)
確かにエリートズの言うとおり、煉獄の命中率自体は半分といったところで、大変ギャンブル的な技だが、テレキネシスで必中となり、デメリットがなくなった。
勝率 98%
「しょ、勝率が100%近い、です……」
エリートズは丸焦げで、息も絶え絶えである。落伍者という表現が似合いすぎる。
「ま、まだだ……クリスタルオルゴールさえ、あれば……」
「あのさ、クリスタルオルゴールって、これのこと?」
「!!!いつの間にっ」
マイコはきっちりオルゴールを奪還していたのだ。
「ムンナのサイコキネシスと、フシギダネの蔓のムチで取り返させていただきましたよ。って言うかさ、自分たちの所持品面してるけど、私のだからね!」
マイコはそう言い放ち、そして、エリートズに忠告した。
「今の私も十分怖いだろうけど、もう一人、私より怖ーい人、いるんだ。多分、あんたらをふっとばすことくらい、簡単にしちゃいそうだからね。……そうだよね、トキ君?」
「そういうこと。……よお聞け、エリートとかいう奴!」
実際、マイコよりトキの方が怖いオーラを出しまくっていた。もともと180センチのすらっとした青年だが、オーラのせいか、エリートズにとっては何メートルもあるように見えた。
「俺は高校もまともに行ってへんかったから、お前らみたいな頭はない。けどな、マイコがめっちゃ大事にしとったオルゴールを奪って攻撃して、挙句の果てには俺らを殺そうとした。そんなお前らを俺は許さへん!!!」
勝率 100%
「や、やめてくれ、お前らのことちゃんと許すから」
「絶っ対許さへん!!ランプラー、シャドーボールや!とびっきりでっかいの、頼む!」
トキの指示を受け、進化したてのランプポケモンは頭上に影の塊を集めだした。その大きさは通常サイズをはるかに超えて、黒い太陽とも呼べるくらいのシロモノになっていた。
勝率 測定不能 ツヨスギマス コワレマス
勝率を測っていたゴーグルも壊れた。エリートもそのヤバさにパニックを起こしかけている。
「こんなことはいやだ!エリートは絶対勝つ……」
「お前もう諦めろや!往生際が悪いねん!!」
そして、もう影の球が大きくならないところ、つまり限界点で、トキは叫んだ。
「ランプラー、一気に投げつけろぉぉっ!!!」
ドドドドドドッ!!!!!
巨大なシャドーボールがエリートズを巻き込んでいった。
「覚えてろぉぉぉっ!!!!」
その言葉とともに、ロケット団エリートズは空の彼方へと飛ばされていった……。
「やっと……勝った……」
「なんとか……エリートズを……吹き飛ばしたね……」
マイコもトキも疲労困憊である。総力戦だった上に、一度は敗北まで覚悟したくらいだ。最悪の事態から勝利まで持って行ったのは、底力と運が両方関わっていると言える。
「あのさ……」
「どないした?」
「最後のシャドーボール、……ちょっと、やりすぎたんじゃない?」
「……ハハハ、でも、あんぐらいやらな、気が済まんかったからなあ」
シャドーボールの軌道の跡は、アスファルトがえぐれるほど。
とりあえず、あまりにもすごいバトルだったので、早く家に戻って、休息をとる必要があった。
マイコの家にて。とりあえず、オルゴールの具合を確かめることにした。もちろん、ポケモンを全員出した状態で。
「あれ、何も傷がついてへん。あんだけ激しく攻撃を受けたはずやのに」
「硬度が地球上でも最高クラスで、衝撃にも強いって本当なんだ」
クリスタルオルゴールはポケモンの攻撃にかなり強い。二人はただただ驚いていた。
そして、マイコはオルゴールのゼンマイを回した。
そこから流れてきたのは、ポケモンも人間も癒される、素晴らしい音色だった。
そんな優しい音色が奏でられる中で、忙しかった一日は更けていくのであった。
おしまい
マコです。このランプラーの特殊技の威力に、ただただ書いている中でおびえました。もともとヒトモシ系統は特殊攻撃が高いことで有名ですが。
トキ「別に怯える必要ないねんで。敵に回したら怖いなあ思ってるだけやろ」
ランプラー「ふゆー、ふよーん」(くるくる回っている)
この子がシャンデラに進化したら……彼に早く闇の石を持ってきてください……。
とりあえず、無事にハッピーエンドまで持っていきました。
次は10回目。(本当は10じゃなくて、何回か前後編に分けていますが)
ちょっと、いや、かなりギャグチックな話を書く予定です。
【書いてもいいのよ】
【ヒトモシ系の特殊攻撃力いかついのよ】
> ロケット団とのバトルの行方…………すごく気になります。
ありがとうございます。こう言っていただけるとありがたいです。
> 化石、アーケンでしたか。
> なぜいままでこういう化石ポケモンいなかったんでしょうね。
なぜでしょうね。単純に、次に次にっていうことを繰り返した結果でしょう。
> ミズゴロウのしめりけ………
> ふにょんの捨て駒4兄弟の大敵ですね。
> ゴーストタイプとともに。
ということは、捨て駒=自爆キャラですか!爆発できませんもんね。湿り気だと!
> >「主人公側はどんなに危機を迎えても、ハッピーエンドに収める。」
> これ、いいですね。
> ふにょんは………一回バッドエンドを書いたことがあります。
> 主人公が、友達を……
> それで……主人公も………
> たまーにバッドエンドも書いてみたくなるのです。
ハッピーエンド主義の私ですが、今、これからのポケリアの中で、人が死ぬ、というか消え去ってしまう話が浮かんでるんです。ただ、その人はポケリア主要人物ではない、とだけ伝えておきます。
> ふにょんは、どちらかというと、主人公がポケモンの話しがおおいです。
> ポケモン率、かなり高いです。
> むしろ、ポケモンのほうが書きやすいっていう………
> 人が主人公の話を考えてっかり書けるマコさんは羨ましいです。
> ふにょんは、いつでもマコさんを応援しています! 続きも頑張ってくだしあ!
ありがとうございます!!
私は、主人公が人間で、その人とポケモンが協力するパターンが書きやすいだけなんです。
とりあえず、その9に関しては、早く完結させます。
ロケット団とのバトルの行方…………すごく気になります。
化石、アーケンでしたか。
なぜいままでこういう化石ポケモンいなかったんでしょうね。
ミズゴロウのしめりけ………
ふにょんの捨て駒4兄弟の大敵ですね。
ゴーストタイプとともに。
>「主人公側はどんなに危機を迎えても、ハッピーエンドに収める。」
これ、いいですね。
ふにょんは………一回バッドエンドを書いたことがあります。
主人公が、友達を……
それで……主人公も………
たまーにバッドエンドも書いてみたくなるのです。
ふにょんは、どちらかというと、主人公がポケモンの話しがおおいです。
ポケモン率、かなり高いです。
むしろ、ポケモンのほうが書きやすいっていう………
人が主人公の話を考えてっかり書けるマコさんは羨ましいです。
ふにょんは、いつでもマコさんを応援しています! 続きも頑張ってくだしあ!
マイコには、チャオブー、ワシボン、ムンナ、フシギダネ、ミズゴロウの5匹のポケモン以外に、とても大切にしているものがある。それは、クリスタルでできたオルゴール。
なんでも、マイコの故郷であるキュウシュウのとある名工が1年のうちにたった1個しか作らない名品なのだという。成人祝いに親がくれたもので、10万円はするらしい。
さらに、そのオルゴールには秘密が隠されているのだ。
「これには、安らぎの鈴っていう道具と同じ効果があるみたいなの」
マイコは自分の家で、劇場での友人のうちのひとりである、トキにこう言った。
「そもそも、安らぎの鈴の効果自体わからへんねんけど」
「鈴の方は、ポケモンに持たせて連れ歩いていると懐いてくれるっていうものだよ。で、このオルゴールは、鳴らすと懐いてくれるのよ」
「それは1匹だけやなくて、聴かせたやつら全体に効果がでるん?」
「当たり。だからとても貴重で、喉から手が出るくらい欲しい、って人もいるのよ」
「ふーん。ほんなら、マイコのポケモンと俺のポケモンを出してみんなに聴かせると、それぞれに効果があんねや」
「そういうことかな」
そう二人が話していると、いきなり窓が開き、ドガースが出てきたのだ。
マイコもトキもボールを投げようと構えたが、投げる前にドガースが煙幕を吐いてきたのだ!
「ゲホ、ゴホッ……」
「見えへんやんなにも、ゲホゲホッ」
目と喉にくる煙幕が消え去った後、(あの後二人とも視界不良に苦しみながら窓を開けた)呆然とした。
「「クリスタルオルゴールが、ない……!」」
さっきまで置いてあったはずのオルゴールがそっくりそのままなくなっていた。
そして置き手紙があったので、マイコが読んだ。
「悔しかったら俺らを見つけてみろ そう遠くには逃げてないぜ ロケット団エリートズ」
「明らかな宣戦布告やな、挑発的やんけこいつら」
トキはそう言った。少し怒りを感じているようだ。
「空から探そう。空からなら、きっとわかるはず……!」
マイコはそう言った。盗ったやつへの怒りで腸は煮えくりかえっていた。
マイコはワシボンを、トキはヒトモシを出し、ワシボンの背にヒトモシが乗る形となった。
「ワシボン、上空から怪しい奴らを追ってね」
「ヒトモシはそいつらを見つけ次第、鬼火を放って、俺らを案内してくれ」
雛鷲ポケモンは蝋燭ポケモンを乗せて、空へと力強く羽ばたいた。
ほどなくして、10人ほどの黒ずくめの集団がオルゴールを大事に抱えて逃げるのを発見できた。
すると、蝋燭ポケモンは、頭の上の紫の炎から、報告を待つ二人の元に鬼火を放った。
小さな炎はふよふよと浮き、二人の元へ届いた。
「マイコ、走るで」
「え!?嘘でしょ、トキ君!?」
マイコはあせったが、無駄なあがきである。
「お前のオルゴールやろ。盗られてもええもんなん?」
マイコは首を横に振った。
「嫌やろ?そうと決まったら行こうや」
実はマイコ、走るのがかなり苦手なのだ。しかし、そんなことを言ってられる状況ではない。意を決して走った。呼吸が乱れるということが待っていても。
黒ずくめの集団、つまりロケット団はオルゴールを持って逃げていた。
「これを売り飛ばせば、めちゃめちゃ大儲けできるぞ!もっと早く逃げ……」
「ヒトモシ!弾ける炎!!」
逃げようとした時、不意に上空から降ってきた炎により、彼らは足止めされた。しかもその炎、着弾したと同時にたくさん火の粉を飛ばしたのだ。
「「「あちっ!あちっ!!」」」
ヒトモシに指示が飛ぶ、ということは、つまり、マイコとトキがようやく追いついたということだ。ただし、マイコは息がだいぶ切れていた。
「お前ら、もう逃げ場はないで。大人しくマイコにオルゴールを返せ!」
「フフッ、フフフフフ」
「何がおかしいのよ。オルゴールは私の、早く返してよ!」
「お前ら、ただの落ちこぼれのくせに、有名大学を卒業したロケット団エリートズの俺らにたてつこうなんぞ100万年早いんだよ!!」
団員の一人はそう言って挑発したが、
「エリートズってだっさいで。頭ええんやったらもっとええネーミングあったやろ」
トキに一蹴された。さらに、
「少なくとも、エリートって言うのならこんなことしてないで頭を活かしたら?あんたたちろくでもないね」
マイコにまで一蹴された。しかし、めげないのがロケット団である。
「お前らはポケモンを1匹しか持ってない新米トレーナー。ヒトモシとポカブしか持ってなかったから、勝率は……」
何やらゴーグルみたいなもので計算し始めた団員。しかし、何か大事なことが抜けている気がする。
「5%。せいぜい5%で足掻くんだな!」
ここでマイコが食いついた。
「あんたさっきさあ、ポカブしかって言ってなかった?」
「そうだ。ポカブしか持ってないんだろ?」
「いつのデータよ!」
そう言うと、マイコはすでに場にいるワシボン含め、5匹のポケモンを出した。
「お前らデータあるってくせに、不正確なもんでようやってけたな!後、俺に関するデータも古いで!」
トキもポケモンをすべて繰り出した。こちらはヒトモシ含め、4匹である。
チャオブー、ワシボン、ムンナ、フシギダネ、ミズゴロウ、ヒトモシ、コジョフー、タマザラシ、コリンク。9匹揃った。
「隊長!勝率があがっております!」
勝率 60%
「やばいぞお前ら、一斉に攻撃しろおおっ!!」
ポケモンたちが次々と、ロケット団側から出されていく。
「チャオブーは火炎放射!ワシボンは燕返し!ムンナはサイコキネシス!フシギダネはマジカルリーフ!ミズゴロウは熱湯!」
「ヒトモシはシャドーボール!コジョフーは飛び膝蹴り!タマザラシは冷凍ビーム!コリンクは10万ボルト!」
的確に、きびきびと指示を与える二人。
勝率 85%
二人だけで勝負の流れを引き寄せられて、エリートのプライドが激しくなった。
「こうなったら……フローゼル、ヒトモシの火にアクアジェット!」
公式バトルでは、危険攻撃は反則となっている。しかし、相手はエリートとはいえ、ロケット団。ルールはないのだ。一瞬のうちに、むき出しの火に向かって水をまとった海イタチポケモンが一直線に激突したのだ。火は小さくなってしまった。
マイコとトキは動揺した。特にひどい動揺を見せたのはトキの方だ。
「ヒトモシ!!!火が、小さく……」
フローゼルはムンナのチャージビームおよびコリンクのスパークで仕留められた。
勝率 55%
さらにやばいことに、ボールポケモンまで迫っていた。
「追い打ちをかけてやる!マルマイン、大爆発!……ん?」
しかし、爆発は不発に終わった。煙だけ出して目を回している。
マイコがニヤリとしていた。
「残念でしたっ。ミズゴロウがいるから、爆発は起こせないよ」
「何でミズゴロウごときにっ」
「この子は少し変わってて、湿り気の特性を持っているのよ。だから爆発はどうやっても無理ね」
少しだけ優勢を取り戻したかに見えたマイコたち。しかし……、
「ドリュウズ、地割れ!」
鋼のモグラの出してきた攻撃は、一撃戦闘不能を狙ったわけでなく、マイコとトキを引き離すのが目的であった。思惑通りに引き離される。
勝率 32%
「ユンゲラー、金縛り!」
見えない力で、マイコも、トキも、彼らのポケモンたちもみんな動けなくなってしまった。ヒトモシはまだ回復できていない。傷の治療はしたのだが、炎が大きくならないのだ。
勝率 0%
そして、あろうことか、エリートズは、ヒトモシを抱いたままで無防備なトキに向かって総攻撃をやろうとするではないか!
「これで終わりだ!勝率はもはやゼロだ。落ちこぼれはいつまでたっても落ちこぼれなんだよ!!」
「やめてえっっ!!トキ君に攻撃しないでえっ!!!」
マイコが叫ぶも、無駄であった。
そして、一斉に攻撃が降りかかってきたのだ……!!!
後編につづく
マコです。ポケリア史上最大級のピンチ場面で切ってしまいました。
トキ君とのタッグはなかなかの腕ですが、ピンチを迎えると若干弱さが見えるんです。若いから。
でも、私のモットーとして、「主人公側はどんなに危機を迎えてもハッピーエンドに収める」というのがあります。
だから、なんとかして勝利にもっていきたいと思います。
人を見下すものは報いを受けます。マイコちゃんと、トキ君がどうエリートズに逆襲するのか、そこらへんを楽しみに。
【書いてもいいのよ】
【人を見下しちゃダメなのよ】
帰り道、二人で歩いていると、1人のお爺さんが道で何かを売っていた。
「ポケモンを売ってまーす。引き取り手のいない子たちでーす。」
気になって、行ってみることにした。
「あのー、ポケモンを売るって、それってええんですか。法には……。」
「わしはただ、捨てられた子を拾っただけじゃから。この子たちは、親から良い技を引き継いでもらったものの、選抜思想のせいで、トレーナーから集団で捨てられた残りじゃ。これでも、だいぶ減った方じゃぞ。ひどいときはこれの3倍おったからのう」
「いらないからただ投げ捨てるように放ったってひどい……。」
「ほんで、このポケモンを俺らに売る、と。」
「そうじゃ。代金はいらん。引き取ってくれる、その心構えだけで十分。」
二人にとってはかなり意外だった。ただし、言葉には続きがあった。
「ただし、条件がある。」
「何です?」
「わしとバトルをして勝ったらタダでやる。負けたら500円をわしにくれ。まあ、ポケモンはどちらにしても渡すがな。」
マイコとオオバヤシはお爺さんの意見に対して相談することにした。
(マイコ、どうする?俺はやるで。アーケンがどんなやつなのかも知りたいからな)
(私もやろうかな。ワシボンもムンナも実戦は初めてだし。どう戦うか見たいわね)
「どうするかの」
「「やります!」」
二人とも決意は固かった。
「まずは彼からかの」
「お願いします、おじいさん」
老人とオオバヤシはがっちりと握手をした。
「ルールはシングル。1対1でやるが、異論はないかの。」
「特にないです」
そして、二人は同時にボールを投げた。老人の出したポケモンは、サボテンの球に手足のついたような草タイプ、サボネア。一方のオオバヤシはアーケンを出した。
「サボネア、ミサイル針じゃ!あの鳥を近づけさせるな!」
サボテンポケモンの周囲から、たくさんの鋭い針が出現し、最古鳥ポケモンをけん制してきた。しかし、青年はかなり冷静に状況を見ていた。
「針を避けつつ接近してくれ、アーケン!」
飛べない鳥のどこにそんな敏捷性があるのか、無数の針は原色の鳥にとって効果を示さぬまま終わった。
「そこから何度も翼で打つ攻撃!!」
まだ、飛ぶために発達していない翼でしたたかにサボネアを打つアーケン。しかし、効果抜群のこの技に何とか耐えつつ別の技を繰り出す緑色のサボテン。
「ニードルアーム!!」
このニードルアームと翼で打つにより、お互いをバシバシと殴りあう打撃戦へともつれていった。もはや、トレーナーの指示がなくとも、精神で持っているようなものだ。
そして……先に倒れたのは……、
サボネアだった。
実はアーケンも、特性である弱気が発動していた。しかし、相性で勝る攻撃をしていたこともあり、勝利をつかんだのだ。
「ありがとう、アーケン。お前のおかげや。ようやった。」
オオバヤシは熱戦で疲労困憊の最古鳥をねぎらうようにこう言った。
その様子を見ながらマイコは思った。
(ばーやんは粘り勝ちした。私も頑張らなきゃ。)
「マイコくん、」
「はい、」
「君はポケモンの数も多いことじゃし、ダブルバトルでもしてみるかの」
「ダブル……ですか」
マイコにとってダブルバトルは未知の領域である。これまでしてきたのはシングルばかりだ。
「まあ、硬くならずにやろうではないか。リラックスこそ気持ちいいバトルの鉄則じゃ」
「は、はあ……」
ここで老人が出したのはロゼリアとジュペッタだった。マイコはバトルの腕を見るのを兼ねて、ワシボンとムンナを繰り出した。
「ジュペッタ、騙し討ちじゃ!ムンナを狙え!」
「ムンナ、リフレクターを展開して!」
必中の悪技の威力は、夢喰いポケモンの周囲に広がった青色の壁によって軽減された。ムンナ自身、エスパータイプではあるが、耐久力が売りである。あまり大きなダメージにならずに済んだ。
そして、攻撃を終えたぬいぐるみポケモンの後ろには、すでに雛鷲ポケモンがいた。
「ワシボン、そこで、ジュペッタにシャドークロー!!」
鋭い影の爪がジュペッタを襲う。運よくクリティカルヒットが起こり、体力は大部分奪われた。そこで茨ポケモンが必中の葉っぱを放つ。マジカルリーフだった。
その攻撃自体はムンナを狙ったものだったが、ワシボンがムンナをかばっていたのだ。効果が薄いとはいえ、受けすぎると危険である。マイコは次の一手をサッと決断した。
「ムンナ、光の壁を展開して!」
今度はオレンジ色の壁が出現し、特殊攻撃も軽減された。守りは十分。後は、攻撃だ。
「ワシボン、岩雪崩!そこからムンナはサイケ光線!」
岩雪崩は2体同時攻撃であり、その場合若干ながら威力低下がみられる。しかし、先のシャドークローで体力のほとんどをごっそり持って行かれたジュペッタはこの攻撃を避けられず、そのままノックアウトされた。
こうなると風向きは一気にマイコ方向に傾く。ロゼリアは草と毒の複合タイプ。ワシボンでも、ムンナでも、弱点を突く攻撃が可能だ。さらにこのバトルは性質上、1体になるとほぼ負ける。燕返しとサイケ光線によってロゼリアも倒され、ここでマイコの勝利が決まった。
そして、約束通り、二人ともポケモンを譲り受けることとなった。
「わしの仕事は、新米が伸びるように援助してやることじゃ。二人とも良く伸びるとみた。」
「「あ、ありがとうございます!」」
二人とも照れていた。老人の発言に嘘はない。
「まずは、オオバヤシくんかの」
「はい」
「ポケモンの数がまだ少ないからのう。2匹あげよう。ハスボーと、モノズじゃ。」
「ありがとうございます!!」
オオバヤシに渡されたのは、ギガドレインや冷凍ビーム、バブル光線を覚えている浮草ポケモンのハスボーと、ドラゴンと悪の二つの波動を使いこなすモノズだった。
「水の石を発掘していてよかったね」
マイコは言う。
「何でよかったん?どっかで必要なんか?」
「ハスボーが最終進化するときに水の石が必要なの。あと、モノズはとても大事に育てたら、すっごく強いサザンドラになるから。」
「へえ……」
思わぬプレゼントに喜びを隠しきれないオオバヤシ。そして、マイコにもポケモンが渡された。
「この子はフシギダネじゃ。マイコくんならきちんと育ててくれることじゃろう」
「ありがとうございます」
マジカルリーフやヘドロ爆弾といった、マイコのパーティに足りないタイプの技を覚えているフシギダネが加入した。これにより、二人とも4匹のポケモンが仲間になったことになる。
老人が導いたポケモンたちとの出会いによって、少しだけ強くなったマイコとオオバヤシなのだった。
おしまい
マコです。二人ともだいぶポケモンを味方につけてますね。
実を言うと、老人は二人だけじゃなく、マイコのほかの友人にも援助をしています。
次の話は、強敵がマイコたちの前にたちはだかります。
そして、マイコは、新しい登場人物と一緒にバトルします。
彼は一度、その4で登場していますが、本格的に登場するのはおそらく初です。
マイコちゃんとマコの関係?
マコの本名がマイコなんです!そう、モデルは私自身!でもだいぶ脚色したところはあります、正直。
でも次回のその9では、実際の設定「運動は超音痴」がちょっと出ます。
【書いてもいいのよ】
【ちょっとネタばらしたのよ】
4月7日、すっかり体調の回復したオオバヤシは、マイコに連れられてある場所に向かっていた。
「おい、マイコ」
「どうしたの?」
「お前は今日、俺をどこに連れていく気なん?」
「ニシニホン博物館に」
「あそこは壊れてんぞ、知らんかったんか?」
「すみません、知ってます……。」
実を言うと、少し前に、マイコはハマイエやカワニシと共にロケット団と一戦交えていた。人質をとられるという危機に瀕しながらも、太陽の石による進化で逆転し、勝利をつかんだのだ。そのバトルのせいで博物館は壊れている(その5前後編参照)。
「でも、そこの跡地に新しい施設ができてるんだよ。」
「……そこは俺も知らんかったな」
「行く価値はあるはずだよ」
着いた場所は、「府立 カセキ復元・発掘センター」
「こんにちは、カセキ復元・発掘センターへ。本日はどのようなご用事でしょうか。」
係員の人が聞いてきたので、マイコが答えた。
「すみません、この人の持っているカセキを復元してもらいたいんですけど。」
そういったのちに、オオバヤシに促した。
(ばーやん、昨日もらったあの箱出して)
(お前、そのために俺をここに……!?)
(ほらお願い、早く開けて!)
オオバヤシが開けた箱の中には、1枚の何かの羽のようなカセキがあった。
「これは……羽のカセキですね。復元するとアーケンになりますよ。」
「はねの……カセキ??アーケン??何なんですかそれ」
「後で説明しますんで、発掘コーナーで楽しんできてくださーい。あと、番号札お渡ししますので、放送されたら来てくださいね。復元には多少の時間を要します。」
番号札は5番である。二人は時間潰しついでに発掘コーナーに向かった。
着いてすぐ、二人にハンマーとピッケルが渡された。
「こちらの2つの器具で壁を削りながら進化の石を探してください。出てきたものは持って帰れますよ。」
係員にそう説明されるが、二人は心の中でこう思った。
(進化の石って結構高いんちゃうかったっけ?)
(この施設ってちゃんと成り立つのかな?)
自分の心配より経営の心配である。
説明ののち、二人は壁を掘ることにした。掘れる区域が決まっているらしく、二人は少し離れることにした。
カン、カン、カン、カン……
器具を壁に打ち付ける音だけが聞こえてくる。ハンマーで大まかに壁を崩し、頃合いを見てピッケルで形を整えていく。
ここの壁は結構柔らかめで、ビギナー用らしい。1回のハンマーで大体、何かが埋まっていることはすぐ分かった。
ほどなくして、収穫が得られることになる。
「あ、あった!月の石だ!本当に夜空みたい!」
「こっちには水の石があったで。模様も入っとるな」
それは月の石と水の石。
「ムンナに使えるけど……、まだいいや。」
そう言って、マイコは月の石を道具入れのバッグにしまう。
「え、何で使わへんの?」
オオバヤシもバッグに水の石をしまいつつ、マイコに聞いた。
「まだ、《進化の必要なとき》が来てないから。」
「どういう意味なん?」
「ばーやん、それはじきに分かるよ」
そのような会話が交わされて、すぐ放送が鳴った。
ピンポーン、ピンポーン
「番号札5番をお持ちのお客様、カセキが復元できましたので至急、案内コーナーに来てください。」
二人は走って案内コーナーに向かった。
案内コーナーで渡されたボールから、オオバヤシはポケモンを出した。
原色の、《飛べない》始祖鳥、最古鳥ポケモンのアーケンであった。
「アーケンは、ちょっと特性にクセがありますが、とても強いポケモンです。進化するとアーケオスという、かなり強力なポケモンになりますよ。」
「へえ……そうなんや……」
オオバヤシは係員の説明を聞き、少しだけ考える素振りを見せるのだった。
そして、マイコに疑問をぶつけることにした。
「アーケンの特性にクセがあるってどういう意味なん?」
マイコは、ポケモンが来てから最初の日に携帯電話に入っていたアプリケーション「ポケモン図鑑」の「アーケン」の項目を見ながら答えた。
「えっと……確かアーケンの特性は……《弱気》だったね。」
「その効果は?」
「体力が残り半分を切ると、素早さ以外の能力が下がるの。」
「えっ……それって良くないんちゃう……?」
「でも、それを補うくらい能力は高いし、えっと……つまり、体力が減らないうちに勝負をさっさと決めることが重要ってこと!」
アーケンを使いこなせる人は、バトルに一定の才覚があるのではないかとマイコは思うのだった。
後編へ続く
マコです。
プレゼントは羽のカセキ、すなわちアーケン!
特性がどうにかならないかって真剣に頭を抱えてしまいますが、それより圧倒的な攻撃力は玄人もうなります。
そして、仲間の新加入は後編でも続きます。
オオバヤシさんだけでなく、マイコちゃんにもね!
次はバトル編。今回は悪党相手ではなく、路上での気兼ねないけど真剣なものです。
【書いてもいいのよ】
【感想待ってるのよ】
「っは〜、やっと着いた〜。」
アレンは301番道路を越え、『スガワタウン』に到着した。スガワタウンは自然に満ち溢れ、南には浜辺もある、ランパ地方屈指の観光スポットである。
「さて、まずはゴチミル達を休ませるためにポケモンセンターに向かうとするか。」
* * *
「お待たせしました。お預かりしたポケモンは皆元気になりましたよ。」
「ありがとうございます。」
アレンはジョーイからポケモンを受け取り、ポケモンセンターをあとにした。
* * *
「さて・・・これからどうするか・・・。」
アレンは何となくまわりを見渡した。すると、一人の少年が木陰で寝ているのを発見した。年齢はおそらく17歳くらいだろう。
アレンはその少年に何かを感じたのか、そこへ歩み寄って行った。そしてしゃがみこみ、少年の顔をじっと覗き込んだ。
「この人・・・もしかして・・・。」
すると、少年が目を覚まし、急に起き上がった。その所為でアレンは顎に思い切り頭突きをくらった。
「ふぼっ!」
「す、すまない!大丈夫か!?」
「あ、ああ。なんとか・・・。」
アレンは改めて少年の顔を見つめた。アレンはこの少年に見覚えがあったのだ。
「・・・?どうした?俺の顔に何かついてるのか?」
「いや・・・。どっかで会ったような気がするんだけど・・・。」
「そうか・・・。」
その少年は考え込むように腕組をした。
「・・・俺はお前に会った記憶はないんだが・・・。」
「そっか・・・。一応聞くけど・・・君の名前は?僕はアレン。アレン・デュナスだ。」
「俺はダルク。ダルク・レイジェル。ポケモントレーナーだ。と、いっても、少し前に旅を始めたばかりだがな。」
「ダルク・レイジェル・・・。」
アレンは暫くの間考え込んでいた。そして、
「・・・!!ダルク!もしかして、ランパ地方に伝わる『七つの伝説』を先祖代々伝え続けている、レイジェル家第13代当主の!?」
「ああ。もっとも、当主と言っても代行だけどな。だが、さっきも言ったように俺はお前とは会ったことはないぞ?」
「テレビで見たんだよ。君がインタビュー受けてるところを!」
「そうか・・・。それでか。あれを見ていたとはな。」
少年――――ダルクは少し恥ずかしそうに頭をかいた。
「ところでお前・・・七つの伝説の内容については知ってるのか?知らなければ教えてやるが・・・。」
「うーん・・・。一つだけなら聞いたことがあるんだけど・・・。自分の気に入ったトレーナーのパートナーとなり、勝利をもたらすポケモン、ビクティ二の事。」
「そうか・・・。」
ダルクは再び腕組をして、南にある浜辺の方を見た。
「残りの六つは知らないんだな?」
「うん、全く知らない。ビクティニの伝説のほかに後六つあるってことだけ。」
「そうか。では、話すとするか・・・。少し長くなるかもしれんが、構わないか?」
「全然いいよ。僕どうせ今暇だし。」
ダルクは軽くうなずくと、一呼吸置いて、話し始めた。
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後書き:本編シナリオでは七つの伝説の内、三つを画いていきたいと思います。他の四つは番外編として他のキャラの視点から書いていきます。
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