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「先程までの勢いはどうしたのでしょう、マイコさん。」
「……言われる筋合いは、」
ないです、と言いかけたけど、思い当たる節がある。
ダストダスの発する悪臭に鼻が曲がりそうだ。でも、私以上に、傍らにいるゼブライカの方がきつそうだ。鼻が利くからか。
ギギギアルをノックアウトする時にボルトチェンジを受けたから、電気技はパワーアップしたけど、やはりちょっとやそっとじゃ倒れてくれない。
ここはいっぺん戻すか。
「ゼブライカ、ボルトチェンジ!」
ゼブライカは素早く動き、ダストダスにぶつかった。その勢いのまま、ボールに戻り、私の傍らには、最初に出した4本脚の鋼ポケモンが姿を見せた。
「そうですか、毒には鋼をもって勝負を決めるのですね。」
「勝負が好転してくれればいいですけど。」
「デンチュラ、ワイルドボルトで弾き飛ばして!」
「させるか!ルカリオ、悪の波動で攻撃を止めたれ!」
メタグロス同様、鋼タイプを持つルカリオの登場で、クロスポイズンを封じられたデンチュラはワイルドボルトで攻勢に出た。
シザークロスも、ルカリオには効果が薄い。
ケンジ先輩は、デンチュラが場に出たことに最初は戸惑っていたけど、直ぐ持ち前の冷静さを取り戻して、負けじと攻勢に出た。
私達の場合、守りをあまり考えずに速攻でいかないとマズイ、ということをお互い話した。
でも、そろそろお互い限界。それは、ノボリさんも、クダリさんも同じみたい。
「そろそろ、かな。ポケモン達が肩で息をし始めているよ。」
「わたくし達もここまでギリギリの戦いをするのは久しぶりでございますし。」
「勝ちたい、私達はこの先が待ってる!」
「お互いに高い次元やから、恐怖が興奮に変わりよる。俺も、勝ちたい!」
そして、最後の指示になりそうな言葉が出た。
「ダストダス、気合い玉!」
「デンチュラ、ワイルドボルト!」
「ルカリオ、神速!」
「メタグロス、コメットパンチ!」
ドーーーン!!!
電車があまりの衝撃に、たちまちストップしたみたい。
私達の車両は煙で何も見えなかった。
けど、ケンジ先輩が私の手をしっかり繋いでた。
「大丈夫やから、心配すんな。」
戦いと同じくらいドキドキしてるかもしれない。
そして、煙が晴れて、状況がようやくわかった。
目の前には、倒れているダストダスとデンチュラ、そして、すんでのところで踏み留まったメタグロスとルカリオがいた。
「勝った……!」
「勝った……な、」
「「やったーーー!!」」
初めてサブウェイマスターに勝った。長かったけど、体感はあっという間みたいに感じる。
「僕たちに勝つって、君たちすごい!強いね!」
クダリさんが祝福してくれた。嬉しい!
「ブラボー!あなた方はコンビネーションを猛攻撃として体現してくれました。それにわたくし達は圧倒されました!ですがこれはまだまだ通過点、もっともっと力を磨いてくださいまし!」
ノボリさん、何かテンション振り切れてます。
思い思いの言葉で祝福された私達は電車を降りた。
「長かったですね。」
「確かにな、でも、いいストレス解消にはなったやろ?」
「今日、色々ありすぎてびっくりしましたよ。」
ケンジ先輩との8年振りの再会、マルチトレインのバトルの数々、死にかけたこともあったっけ。
「サカモト、いや……、マイコ、」
「ケンジ先輩……?」
いきなり、ケンジ先輩が私のことを下の名前で呼んだ。どうしたんだろう?
「俺はずっと言いたかったことがある、」
え……?
「高校の頃からお前のことが好きやった。」
嘘……!?
「やから、……、結婚、してくれないか。」
まさか……そんなこと……。
「いきなり言うてすまん。けど、今の俺の本当の気持ちやねん。」
「先輩……。」
涙が出てきた。
「どうしたん?」
「私もケンジさんのことが、……、大好きです。あなたと一緒に歩いていきたい。」
両思いだったんだ。私達は心が結ばれた記念に、長い長いキスをした。
私達のポケモン12匹が出てきて、私達を祝福してくれた。
世の中は世知辛い。けど、大切な人がいて、仲間達がいれば、足をつけて生きていける。
そして、相手をずっと想い続けていれば、いつか結ばれる。
8年かかったけど、私達はほら、こうして2人で歩ける。
私達を結んだバトルサブウェイ・マルチトレインに感謝を込めて。
おしまい。
マコです。ようやく完結です。
長かったです。ポケモン世界でもこんなラブストーリーがある、はずです。
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【皆さまも恋してほしいのよ】
さっきのマルチトレインの20戦目は、相手の降参ということになった。
あの女達は、あんなことをしたから、そうなってもおかしくはなかったけど。
いよいよ、21戦目、つまり3周目のファイナルだ。
ようやくサブウェイマスターと戦える。
シングルトレインで戦うノボリと、ダブルトレインで戦うクダリ。マルチトレインでは、2人共出るらしい。
「どうしよう、初めて戦うし、負けたら……」
不安で押し潰されそうになって、こう言った私の頭を、ケンジ先輩は軽くポンポンと叩いて言った。
「こういう勝負は、自分達が勝つと思わなアカンねん。イメージして、自分達が勝つ、と。」
「勝てる、勝てる!」
「よし、大丈夫。ほんなら、行くで!」
私達は意を決して、次の車両に向かった。
次の車両で、黒い服の人と白い服の人が出迎えてくれた。あれ、この2人、何か似てる?
「わたくしはサブウェイマスターのノボリと申します。」
黒服の人が冷静に言った。
「僕もサブウェイマスターのクダリ!君たちは?」
白服の人は明るく言った。どうやら、私達も名乗る必要があるらしい。
「私はサカモト マイコと言います。」
「俺はオオバヤシ ケンジ。よろしく。」
私達も名乗った後、ノボリさんが本をパラパラとめくって言った。
「マイコさんはシングルとダブルに6回ずつ挑戦し、最高は13連勝。」
乗客名簿らしい。ってか私、こんなに挑戦してたのね。
「ケンジさんは……初めて?!」
ケンジ先輩は名簿に名前がなかったみたい。……ちょっと待って、いきなりの挑戦でこれ?!3周目?!
そして、私達は先程から少し気になっていたことを聞いた。
「さっきの放送ってあなた達が流したんですか?」
「そう!僕達はバトルを監察する役割も担っているからね!」
「公正なバトルをしない20戦目の女性達の様な方は、車両から排除することになっております。もし、仮にあの方達が勝っても、私達は対戦しませんよ。」
「ほんなら、俺らの場合は……?」
「勿論、戦います。」
ノボリさんは言い切ってくれた。良かった。
「君たちならいい勝負できそうだよ!」
クダリさんも言ってくれた。
「話はそれくらいにして、勝負です!」
ノボリさんの言葉から、勝負は始まった。
「ギギギアル、行きなさい!」
「アイアント、出てきて!」
「頼んだよ、メタグロス!」
「ウインディ、行けっ!」
場にいるポケモンのうち、ケンジ先輩のウインディ以外が鋼タイプを持っている。
最初に動いたのは大きな犬の様な形のポケモン、ウインディだった。
「ウインディ、アイアントに火炎放射!」
大きな質量の炎が鉄の蟻を包んだ。かなりのダメージを負いながら、ウインディに一発攻撃し、アイアントはノックアウトとなった。
「オッカの実を持たせておいて正解だったね!」
「何でそう言い切れるん?」
「そのままだとアイアントは反撃できずに一発で力尽きていたからね。」
「なるほど、炎にかなり弱いなら、半減系統の実を持たせて、反撃を狙った方が得策ってわけやね。」
「さすが、勘が冴えてるね!けど、次の相手はどうかな?」
「メタグロス、仕掛けるよ!アームハンマー!」
「ギギギアル、ギアチェンジ。」
4本の鉄脚のポケモンから繰り出された重い脚の一撃を食らうも、耐えるギギギアルは速さを上げてきた。さすがサブウェイマスター、耐久力が違う。
「ギギギアル、ボルトチェンジ。」
チャンス!
「行け、ダストダス……何?!」
ギギギアルは戻っていなかった。嫌、戻れなかった。
「ノボリさん、ボルトチェンジは相手に攻撃がヒットしないと交代できないですよ。」
「さっきヒットしたはず……あっ!」
私はボルトチェンジのタイミングを見計らって、メタグロスを引っ込め、シマウマの形の雷電ポケモンを出していた。
「そうですか、ゼブライカは電気を己のパワーとして吸収するのでしたね。」
「はい、ゼブライカ、10万ボルト・パワーアップバージョン!」
ギギギアルは雷以上の威力に達した10万ボルトに堪らずノックアウトとなった。
「自分が使うポケモンを相手も使うってどう?」
「気分は余り良くないな。」
クダリさんの2番手は、ケンジ先輩の最初のパートナーと同じ電気蜘蛛、デンチュラだった。
「デンチュラ、クロスポイズン!」
紫に染まったデンチュラの爪がウインディに当たり、ウインディはノックアウトとなった。先程のアイアントの攻撃、シャドークローも当たっていたため、累積ダメージであるらしい。
「頼むで、ルカリオ!」
一筋縄ではいかない。なんとしても、勝ちたい!
続く
マコです。サブウェイマスター戦は長くなりそうなので、前後編に分けます。白熱した戦い、勝つのはどっち?
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【バトルサブウェイ体験談募集中なのよ】
バトルサブウェイでは、一周、つまり7連勝するごとに休憩がはさめる。
その時に、ポケモンをチェンジすることも可能なのだ。
私達はお互いの手持ちを知るという意味を兼ねて、一周終わるごとにポケモンをチェンジした。
私の他の手持ちはドレディア、ウォーグル、メタグロス、ゼブライカ。
ケンジ先輩の他の手持ちはキングドラ、ロズレイド、ウインディ、ルカリオだった。
そのメンバーで勝ち続ける中で、2周目の途中、こんなことがあった。
対戦相手のうちの一人がこういうことを言ってきたのだ。
「何でお前、ドレディアなんて使ってんだ?草技しか使えない能無しに……」
心なしか、ドレディアが泣きそうだ。ビーズのような、橙色の瞳が潤んでいる。
「お前何アホなこと言うて……」
私はケンジ先輩の言葉を遮って言った。
「ドレディアをバカにしないで!……ドレディア、あなたは私の大事な仲間の一人だから。ケンジ先輩、……ここは私があいつに断罪してやります。」
「わかった。」
「ドレディア、蝶の舞、そして、花びらの舞。」
「バカか!お前。花びらの舞は何回か強い威力で攻撃できるけど、その後混乱するじゃねぇか!しかもさぁ、キーの実持ってねぇじゃん!」
「私のドレディアは混乱しないんですよ。」
「バカだろ、どうせお前も」
「最後まで聞いて下さい。私のドレディアの特性はマイペースです。我を見失わないマイペース。」
「……!」
蝶の舞で威力が上がった花びらの舞は相手を追い込むのに良かった。
「ポケモンのことをバカにするあなたに、バトルサブウェイは厳しいの。考え方変えないとダメだね。」
私はうなだれる相手にそう言った。
「お前、なかなかカッコ良かったで。俺、あんなに落ち着いて相手を怒れへん。」
ケンジ先輩に言われた私はこう返した。
「自分をバカにされることは耐えられます。でも……、自分の仲間や、大切に思う人がバカにされることは耐えられません。」
そして、いよいよ20戦目。これに勝つと、サブウェイマスターと戦える。3周目なんて初めてだ。相手もかなり強いし。
ただ、相手を見て私は絶句した。最初にケンジ先輩に言い寄ってきた女がタッグを組んで、私達のもとにきたのだ。
「まぁだこんなブスと組んでたのオオバヤシくん。」
ふざけるな。あなた達は気持ちが汚れてる。
何で僻むことしかできないの?
尊敬ができないの?
「サカモトを悪く言うんや。お前ら最低や。」
「ブスの女のことでしょう?」
ケンジ先輩は極めて冷静に言った。
「最低なのはお前らや。心がアカンってここ乗る前に言うたよな?何回も言わすな。」
「オオバヤシくんに好かれるために……ブス女を潰してやる。」
バトルは始まったけど、事件はすぐに起きた。
女達はホイーガとダブランを出した。
私はメタグロスを、ケンジ先輩はウインディを出した。
ウインディが神速で駆け出し、ダブランを弾き飛ばしてノックアウトしたと同時に、ホイーガはメタグロスに毒針を出した。メタグロスに毒は効かないが、なんと、その毒針は私に刺さったのだ!
「ホーッホッホッ!私はホイーガに『ブス女に毒針を撃って』と命令したのよ!これでトレーナーが一人だけだから私の勝ちね」
バシッ!!!
乾いた音が車内に響いた。
「お前……自分がしたことの重大さ分かっとるんか?あぁ?!トレーナーとして最低のことしよるやんけボケェ!」
「ケンジ……先輩……?」
周りの景色が歪んできてる。
ピンポンパンポーン
「マルチトレイン20戦目の女性2人連れ、バトルサブウェイ規約第3条に違反したことにより、警察があなた方を連行します。トレーナー資格剥奪の厳罰も覚悟して下さい。」
女達は、雪崩れ込む警官隊に連れられて、どこかに行った。
「サカモト、頼む……生きてくれ!」
俺はバッグの中にあるモモンの実をサカモトに口移しで与えた。弱っている人に口移しで食べ物を与えるのはいい方法だろう。モモンの実なら人にも合う味で、解毒作用もある。
「ルカリオ、癒しの波動。」
他のポケモンを癒す技、癒しの波動をサカモトに行った。あくまでポケモンの技やから、人に効くか微妙やけど、やるしかない。
私、嫌、私の意識は真っ白な場所で目を覚ました。
「ここ、どこ?電車は?ポケモンは?ケンジ先輩は?」
川が私の目の前にあった。多分これが三途の川だろう。
「あぁ、私、死んだんだ。」
その川の向こう側に2人いた。
「おじいちゃん、おばあちゃん!」
私は駆け寄ろうとしたけど、
「マイちゃん、あんたはまだ来ちゃいけないよ。」
おばあちゃんに止められた。
「何で、私死んだのに」
「あんたを助けるために必死になっている男の子とポケモンがいるのに、あんたはそれを見捨てるの?」
「嫌、それは嫌だ。みんな心配してるのに、私が諦めたら、今まで歩いてきたポケモンと、大切な人が悲しむ。」
私は号泣した。
「走って戻れば間に合うから行きなさい。」
「わかった、おじいちゃん、おばあちゃん!」
私は走り出した。みんなのために。自分のために。
先輩、初めて見た時から言葉には出せなかったけど、大好きが溢れ出しそうでした。
カッコ良くて、口数はあまり多くないけど、音楽とバトルでの勇姿が輝いてました。直接話す機会が少なかったのに、話した時に親身になって聞いていたのが嬉しかったんです。
高校時代から数年後、今日、ここで再会した時、言葉に出すと恥ずかしいけど、運命ってこういうものかなって思いました。
生きて帰ったら言います。
「ケンジ先輩、あなたの全てが大好きです。」
俺はみんなが思うほどカッコ良くない。ケンジくん、ケンジくんってみんなちやほや言うけど、ちやほやされんの嫌やねん。
けど、お前は違ってた。俺に憧れてたのはみんなと一緒やったけど、あまり積極的にアタックして来ぉへんねん。
その控えめさが逆に良かった。
実は、高校時代からサカモトのこと好きやった。けど、言われへんかった。
俺が好きって言うたらあいつは嫉妬されまくっていじめられてここにいないはずや。あぁ、この頃からか。俺が恋を叶えられないのは。
再会して、バトルサブウェイでタッグを組んで、相棒としてぴったりやったって感じた。
お前が帰ってきたら言うわ。
「サカモト、俺はお前が大好きや。」
「……モト、サカモト!」
ケンジ先輩の声がする。
「……先輩……」
やっとのことで声を絞り出すと、ケンジ先輩が強く抱き締めてきた。
泣いているのかもしれない。嫌、ケンジ先輩は泣いていた。
「お前が、生きて帰って来てくれて、良かった。」
「私もです。先輩。」
私達はしばらくお互いを離そうとしなかった。
続く
マコです。いよいよ佳境です。次で完結するはずです。
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【2人がどうなるか温かく見守ってほしいのよ】
マルチトレインに乗りこんだ私とケンジ先輩を待っていたのは、男性2人連れだった。まあまあいい年をしているみたい。ちなみに私達は25、6歳くらいか。
「カップルか、お似合いだなぁ。」
片方のおじさんが言った。
「カップルではないです……。」
私は返したけど、
「いーや、あんたらカップルだね。」
もう片方のおじさんが言った。待て、この人酒臭い!
ケンジ先輩も顔をしかめている。
「はよしようや。さっさと済ませたいわ。あの手の人は絡んでくる。」
「じゃあやろうじゃねぇか!」
バトルの口火は切って落とされた。
おじさんの出したポケモンは、シラフのおじさんの方がハトーボー、酔っ払いがドッコラーだった。
私はエンブオーを、ケンジ先輩は先ほども出たデンチュラを出した。
お互い最初のパートナーを出した形だ。
一番最初に動いたのは、デンチュラだった。ものすごい速さで動き、ハトーボーにぶつかった。ハトーボーはかなりよろめき、そこで反撃を試みたが、既にデンチュラはいなかった。
デンチュラがさっきいた場所には原色の始祖鳥がいて、すばやい動きでハトーボーをノックアウトした。おじさんは何が何だか分からなかったみたい。
ケンジ先輩の2番手は最古鳥ポケモン・アーケオス。さっきのトリックの種明かしは、デンチュラのボルトチェンジで交代したアーケオスがアクロバットした、と説明できる。
私は私で、エンブオーに火炎放射を命じ、ドッコラーをノックアウトした。
焦ったおじさん達はチラチーノ2匹を出した。
「サカモト、決めるで。俺が攻撃、お前は守備。」
「はい!エンブオー、守って!」
「よし、アーケオス、地震!」
アーケオスの地震は物凄く、チラチーノは敢えなくダブルノックアウトとなった。
バトルはほぼ完勝、しかしこの方法の難点は、人間が足場のふらつきに耐えにくいということだ。
2戦目、私は先ほどとは違うポケモンを出した。
世界一美しいと言われる、海蛇型のポケモン。
「ミロカロス……!」
このミロカロスには私自身かなり思い入れがある。
高校時代の家庭科の授業でポロック・ポフィン作りを行った時、とても綺麗な作品ができた。そこでヒンバスに食べさせたところ、翌日のバトルの授業で進化し、ミロカロスとなった。という訳だ。特に出来のいいポロック・ポフィンとともにチョコもケンジ先輩に渡したのも、いい思い出。
ミロカロスはバトルで優雅に相手を倒していく。竜の息吹、冷凍ビーム、水の波動。多少の傷は自己再生で癒す。
アーケオスとの相性も良く、岩雪崩で相手を怯ませたところにミロカロスの一撃を食らわせる戦法がはまった。
「お前なかなかバトル上手いな!」
「ケンジ先輩こそ凄いです!私一人だとああいうことできません。」
何だか私とケンジ先輩は即席タッグって感じがしないほどに息がぴったりだ。
ハイタッチをした私達は次の車両に向かった。
続く
マコです。ヒロイン・サカモトさんとケンジ先輩のタッグは順調に勝っています。まだ女達が邪魔していないのが不穏ですが。
【もう少し続くのよ】
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
舞台は、バトルサブウェイ・マルチトレイン(ノーマルトレイン)です。
21戦あるうち、数戦しか書かないことは謝っておきます。
ここで、主人公となる二人の紹介です。
ポケリアと登場人物の名前が一緒ですが、別人です。
サカモト マイコ
25歳の会社員。したっぱで、会社内ではさげすまれている。
しかし、バトルには一定の才覚がある。
手持ちはエンブオー、ウォーグル、ゼブライカ、ドレディア、ミロカロス、メタグロス。
オオバヤシ ケンジ
26歳のタレント。かっこいい。女性のファンが多い。
学生時代、マイコから恋心を持たれていたが、はっきりとは返事ができなかった。
でも、本当は・・・。
手持ちはデンチュラ、アーケオス、キングドラ、ウインディ、ロズレイド、ルカリオ。
毎日、毎日、上司のおじさんのお茶汲みばかりさせられる。部長からは蔑まれる。
そんな女性が下に見られてきつい会社員の仕事も、今日は休み。
たまの休みに、バトルサブウェイに行くのが、私の息抜き、そして、ストレスの捌け口。
したっぱ社員の私にも、バトルの腕は多少なりはあったみたいで、ノーマル車両なら2周くらいいく。バトルカンパニーに就職すれば良かったかと、今は思う。
ただ、サブウェイマスターとはまだ一戦も交えたことがない。噂ではかなりの強さらしい。
シングルやダブルは普段からしているから、今日は気分を変えて、マルチに乗ってみよう。
ん?何か変だな。
……しまった。
私、一人で来たんだった!
誰と乗ろうか。マルチトレインはシングルやダブルと違い、2人いないと、乗車拒否される。
諦めかけた、その時だった。
「おぉ、サカモトやん!」
え……?
「ケンジ、先輩……?!」
高校の先輩の、オオバヤシ ケンジ先輩。軽音部の部長で、イケメンで、楽器もギターを始めとしてどれも上手く、女子生徒の憧れの的だった。私も憧れてたけど、あまり話せなかった。そんなにかっこいいのに、彼女はいなかったらしい。他の女子のアタックは凄かったけど、それでも先輩は彼女を作らなかった。
「何で、バトルサブウェイに来たんですか……?」
「仕事がいきなり休みになってん。サカモトは?」
「……私はもともと休みで、ここに来る予定でした。」
「まさか、一人でマルチに乗ろうとしとった?」
「パートナーを探してました。」
(本当は先輩の言うとおり、乗ろうとしてました。)
そこから、話は何でもないことに飛ぶことになる。
「今何の仕事しとるん?」
「会社員です。ケンジ先輩も、最近テレビで見ますよ。」
「ありがとう。」
ケンジ先輩は、今、タレントをしている。若い女の子に人気なんだ。今だって、周りに女の子が一杯。私、睨み付けられてる?
「先輩、マルチトレインに一緒に乗りませんか?」
私が言った直後だった。
「私でしょ!」
「私でしょ!」
「私でしょ!」
次々女の子が言い寄ってきた。
「嫌、俺はこの人からパートナーのお誘い受けてんねん。」
ケンジ先輩は、私の肩をトン、と叩いた。途端に女達の顔色が変わる。皆、一様にギロリと私を睨んで言った。
「あんたがいるからオオバヤシくんは私達を選ばないのよ!!」
「あんたなんかいなくなればいいのに!」
そう言ってポケモンを出して、一斉に私を狙ってきた!
ヤバい、と思った。
私殺される、と思った。
「しゃあないなぁ、悪い女達をとっちめるか。」
そう言って、ケンジ先輩はボールを投げた。
黄色の、大きめな電気蜘蛛、人よりはまだ小さい子、が姿を見せたんだ。確か、あの子、高校の頃は手乗りサイズだったはず。
「デンチュラ、……放電。」
さっきの女達のポケモンは、全員そのまばゆい光の前に屈した。
ケンジ先輩は、強い。しかも、かなり。
「お前らみたいな奴と、俺は組みたないねん。」
「何であの女がいいのよ!そんなに綺麗じゃないのに」
「お前ら、顔は仮に化粧で綺麗になっとるとしても心どす黒いやんけ!俺はお前らが集団で一人を攻撃しようとするんが腹立つねん!文句あるならバトルでも口論でもサシでやれや!!」
女達は散り散りに逃げていった。そのうち一人はキッと私を睨んで去った。
口パクで、こう言っていた気がした。
「ゆ、る、さ、な、い」
落ち着いてから、ケンジ先輩はこう切り出した。
「さっきの、お前のお願い、」
「乗車してくださいってやつですよね?」
「おぉ、そうや。俺からも言ったる。……俺もサカモトと一緒に乗りたい。文句はないか?」
「ないです!」
こうして、私はケンジ先輩と一緒にバトルサブウェイ・マルチトレインに乗ることになった。
車掌さん(サブウェイマスター)のところにたどり着けるのだろうか。
あの女達に邪魔されないだろうか。
駅員さんに案内され、ポケモンを最大限元気にしてもらい、私達は乗りこんだ。
続く
マコです。バトルサブウェイのマルチトレインの乗車の時に、実際にこういうやり取りがあるのかなぁ、と思い、話を作りました。
女の嫉妬の気持ちが怖いって書いていて思いました。
学生時代に片思いしてた相手と、もしこういう状況になったら、皆さんはタッグを組めますか?
【意見募集中なのよ】
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
こんにちは。マコです。
これは、完結済みの長編で、以前ポケモンストーリーズ!に載せていたものを転載したものになります。
全5話となっています。
舞台はバトルサブウェイのマルチトレインです。
それでは、いざ、出発進行!
リンネに連れてこられた屋敷は、見事な物だった。外装は綺麗に装飾され、堂々としている。庭にはパラソルとテーブル、椅子が二つ。
「服を貸してあげる。クリーニングしないと。そのコート埃だらけじゃない」
リンネを庇った時に擦れて付いたものだ。手袋とパンツ、靴にも汚れが付いている。
「一つ聞いていいかな」
「何?」
「何故見ず知らずの私を家に入れるの」
分からなかった。ここらでは知られていないにしても、自分は人を襲う者だ。それを知らないにしても、見ず知らずの旅人を自分の家に上げる神経が理解できなかった。
「見ず知らずじゃないわよ。貴方は何の見返りも考えずに私を助けてくれた。この街で私を知らない者はいないわ。言い寄ってくる子達は皆自分の会社の評判を上げたい者ばかり。私がこの地位を無くしたら、友達のポジションを取っている子も見向きもしなくなる」
ドアが開いた。廊下にメイドが十数人立ち並び、深々とお辞儀をする。
「お帰りなさいませ」
「この人を客人の間にお通しして。あとバスの用意を。服をクリーニングして」
「かしこまりました」
メイドの一人に案内されて、ファントムはバスルームに来ていた。温度を調節して、シャワーを頭から被る。ついでにカゲボウズ達も洗ってやる。
『くすぐったいー』
「じっとしてなよ。かなり汚れてる」
ドアの外でガタンという音がした。着替えを持って来たらしい。
しばらく浴びた後、備え付けのタオルで体を拭いて外に出た。
客人の間で紅茶を飲んでいると、ドアが開いてリンネが入って来た。さっきの格好とは違う、フリルのついた黒いワンピースを着ている。そして首には鎖のついた懐中時計。
「ちょっと立ってみて」
リンネに言われ、ファントムは立ち上がった。今の彼女の服は、シルクのダークスーツだ。
「うん、似合う」
「わざわざこんな服持ってこなくても良かったのに」
「これが一番似合いそうだったの!他はドレスばっかりだから…」
外見は確かに地味だ。だが着ている心地がしない。やはりいつも着ている服がしっくり合っていい。
「ねえ、ファントムってやっぱりオペラ座の怪人からなの?」
「まあ」
「私ね、こんな立場だから沢山勉強しないといけなくて、それぞれの教科に家庭教師がいるの。フランス語、英語、ピアノ、ヴァイオリン、数学、絵画、そして歴史。歴史はその時代を反映したオペラを毎回見に行くの。だからエリーザベトもオペラ座も知ってるのよ」
またドアが開いて、ワゴンを押したメイドが入って来た。銀のボウルと、装飾された皿。ティーカップ。プチフールやケーキ、サンドイッチ、スコーンなどが盛られた小さな皿の塔。
「アフタヌーンティーをお持ちしました」
「紅茶は何があるの」
「本日はアッサム、ウバ、カモミールがございます」
「飲みたいのある?」
いきなり話を持って来た。紅茶はあまり飲まない。
「任せるよ」
「じゃ、ウバのミルクティ」
「かしこまりました」
メイドがテーブルの上に物を置いていく。見たことが無い品の数々に、側にいるカゲボウズ達が目を丸くしている。
「ありがとう。下がっていいわ」
「失礼します」
パタン、という軽い音と共にドアが閉まった。リンネが肩の力をフッと抜く。
「あー、疲れる」
「至れりつくせりだね。もっと簡単でいいと思うけど」
「仕方無いのよ。今の家の主人は私だから」
「へえ」
しばらくの沈黙。破ったのはリンネだった。
「聞かないの?私が主人の理由」
「別に。興味ないから。それより食べていいかな、これ」
「ええ」
ファントムは椅子に深く座って、ひと言呟いた。
「いいってさ」
待ってましたと言わんばかりにカゲボウズ達が飛びついた。ファントムも紅茶だけは死守する。
美しく盛られたプチフールが、スコーンが、瞬く間に消えていく。あっけに取られるリンネに、ファントムは言った。
「私は紅茶だけでいいから、食事はこの子達にあげてもいいかな」
「ちょ…」
リンネが部屋を出て行った。数分後、息を切らせて戻って来る。既に食事はひとかけらも無い。
「それは?」
リンネは右手に何か持っていた。双眼鏡のような感じがする。
「ホウエン屈指の大企業、デボン・コーポレーションの製品。見えない物を見るデボンスコープ。いつだったかパーティの時に来てた息子さんにもらったの」
「叫んだりしない?」
「…一応口を押えとく」
ゆっくり深呼吸。丸い目にスコープのレンズを押し当てる。ぼやけた世界がハッキリしてくる。
「!!」
声にならない悲鳴を上げるリンネ。彼女の目には、広い広い部屋にひしめき合う沢山のゴーストタイプが映っていた。
「私を追い出す?それでもいいよ」
柔らかい口調だが、その声はただではすまないような凄みがある。
「すごい…こんなに連れ歩いてるなんて」
「違う。勝手についてくるんだ」
「ボールとかに入れてるんじゃないの!?」
ポケモンを引き連れているのはそんなに珍しいだろうか。大げさに騒ぐリンネを、デスカーン達は呆れた目で見ていた。
「ねえ、このジュペッタ、キャンディ食べる?」
「まあ」
「あげていい?」
主人の顔から一転、子供の無邪気な顔になった。ファントムがうなずくとリンネはポケットからロリポップを取り出した。白い砂糖で文字が書かれている。
「薔薇は紅い。スミレは青い。お砂糖は甘く、貴方も素敵。
…マザー・グースだね」
ジュペッタの口のチャックを開けて、中に押し込む。口の中で動かしていたが、しばらくしておとなしくなった。
「ねえ、何でこんなに懐かれてるの?しかもゴーストタイプばっかり」
「私もよく分からない。気付いたらこうなってた」
もちろん、これは嘘だ。いつから見えるようになったのかも、そのきっかけも傷と共にはっきり覚えている。理由だけは未だに分からないが。
「こうして見ると、全部別種類が一匹ずつってワケじゃないのね。見分けつくの?」
「一匹しかいないのは強いもの。そして付き合いが長いもの。カゲボウズ達みたいに多いのは見分けはついてるよ。微妙に。
よく食べるもの、よく笑うもの、よく驚かすもの、よく喧嘩するもの」
「まるでサムシング・フォーね」
「マザー・グースが好きなんだ?」
うなずくリンネ。サムシング・フォーとは、花嫁が身につけると良いとされている物で、『何か新しい物』『何か借りてきた物』『何か古い物』『何か青い物』の四つを表す。
「失礼します」
メイドが部屋に入って来た。途端にリンネの顔が引き締まる。
「どうしたの」
「マルトロン伯爵がお見えになっておりますが、いかがいたしましょう」
「…」
その名を聞いたリンネの顔に戸惑いの色が浮かんだ。メイドが心配そうに見ている。
「また来たのね、あの男」
「お引取り願いましょうか」
「いえ、こちらに通して」
「かしこまりました」
ドアが閉まった。ファントムは立ち上がる。
「私、別の部屋に行って…」
「ううん、ここにいて」
思わず気の抜けた返事をしてしまった。私も客人だよ、一応。
「ファントムになら、話してもいいと思ったから。ここで私と一緒に、今から来る男の話を聞いて。ゴーストポケモンも、皆」
私はデスカーン達を見た。ハッキリうなずく。
「分かったよ」
「お久しぶりですね、レディ・ヴァルヴァローネ」
猫撫で声で最初の台詞を切り出した男は、すぐにファントムの存在に気付いたようだ。元々細い目がさらに細くなる。
「ちなみに、レディ・ヴァルヴァローネ。そちらの方は?」
「友人ですわ。ファントム…」
「ファントム・トループです。ミスター・マルトロン」
「ほう。随分歳の離れたご友人ですな。では、一つよろしいですかな」
声がブリザードのように冷たくなる。
「席を外していただけないだろうか。部外者に聞かれては…」
「お黙りなさい!」
部屋の空気が震えた。少女とは思えないくらいの剣幕だ。ジュペッタがファントムに耳打ちする。
『敵に回したくないタイプだな』
「…まあね」
敵に回そうなどとは最初から思っていないが。
「招かれざる客の身分で友人を貶すようならば、即刻お引きとり願いますわ」
「ほんの冗談ですよ。さて、本題に移りましょうか」
リンネが座った。握り締めている手が微妙に震えている。
「ご友人ならば、このヴァルヴァローネ家に伝わる品のことは既にご存知ですな?」
(品…?)
リンネがファントムの着ている服の裾を引っ張った。視線はそのままにして、手のひらに指で文字を書いていく。
書かれた通りにファントムは言った。
「青の金剛石がはめこまれた、懐中時計のことですね」
みなさん本当にありがとうございます。
これだけ言われて一話で頓挫させたら心の底から罵ってくださいね。
>No.017さん
まずはご一読に感謝を。
> とりあえずタイトルに釣られて呼んだ。
計画通り
> ん? もしかしてトウヤ・トウコのトウ?
そうなんです。
しかしあくまでも見切り発車ですので、この後もしもトゥートゥーが出てきたら間違いなくこちらのレスのせいです。
>あつあつおでんさん
吹いていただいて実に計画通りです。ありがとうございます。
> 私の作品の主人公もいい加減な理由で旅をしていますが、トウヤ君のそれは潔いくらい適当だと思います。ただ、それだけに成長が楽しみでもありますよね。
そうですね、しかし成長まで書けるかしら……。
> 連載板にはこのようなお笑い要素を含んだ作品が少ないので、是非とも続きが見てみたいです。きっと良い作品になりますよ!
ありがとうございます!
連載板いちしょうもない作品になれるよう粉骨砕身頑張ります!
>ふにょんさん
お読みいただき嬉しいです、ありがとうございます!
> 調理済みが食卓にでるって
> まさか
> 食べちゃったり?
その まさか です
そうでないと信じたい程度にポケモンを調理することが倫理的に許せない方はものすごく注意して読んでください。
から揚げの材料はマメパおや、誰か来たようだ……。
続きは現在、鋭意執筆中です。
調理済みが食卓にでるって
まさか
食べちゃったり?
なんてことをするんだっ
てヵ ポケモンって食えるの!? と部屋のなかで一人で吹いたふにょんです
たぶん、そーいう意味で言ったんじゃあないと思いますが。そうと信じたいのですが。どーなんでしょーね
とりあえず。次をお待ちしております。
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