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こんにちは。紀成です。
幻影狂想曲完結から約十日ちょっと。今度はファントムという女性が主役です。…主役なのかな。
とある地方の古い街に来ていた彼女は、事故に遭いかけた少女を助けます。何故か懐かれた少女に連れてこられた場所は…
そして、彼女の最愛の祖母から託された懐中時計とは…
短編掲示板を見てないと分かりにくい場所もあるかもしれませんが、それは見ていただけば。
では。
町の中心部に現れた巨大な花のつぼみ。そして未確認情報ながら、地下鉄がポケモンとみられる物体に襲撃されたという情報。さらに情報網が至るところで寸断されていることが重なり、コトブキシティはパニック状態の様相を呈していた。
一方、引き続いてシンジ湖周辺で隕石の捜索に当たっていたポケモンレンジャーのアスカとチヒロは、レンジャーユニオン・シンオウ支部からの緊急の連絡を受け、コトブキシティに向かっていた。
「お姉ちゃん、それってポケモンなの?」
チヒロが心配そうにアスカに聞く。
「分からないわ。だけど、ポケモンにしては大きさが違うかもしれないわ。これまで発見されているポケモンでも、ホエルオーの3倍以上とも言われてるし、桁が違いすぎるわ。」
アスカの言う通りだった。これまで発見されたポケモンの中で最も大きいとされているのはホエルオーの14.5メートル。だが、コトブキシティのバンギラスデパートを突き破った草体は高さが50メートルになると言われていた。ホエルオーなど比較にならないほどの大きさである。
「今回のミッションはこれまでとは違うわ。かなりやっかいなことになるかもしれないわね。チヒロ、気をつけていこうね!」
「うん!」
やがてアスカとチヒロの乗った車はコトブキシティのメインストリートに到着した。
警察による非常線が張られていたが、ここからでも中心街に現れた不気味なつぼみのようなものははっきりと見受けられた。
「警察です。ここから先は立ち入り禁止です。」
ジュンサーに行く手をふさがれる。
「ポケモンレンジャーのアスカです。」
「同じくチヒロです。」
「この先は非常警戒区域です。バンギラスデパートに近づくのは危険です。妙な生物がデパートの周りを回っているのです。」
「妙な生物・・・?」
アスカがそう言ってデパートの方向を見上げる。
そこには、分類ならむしタイプのポケモンになるであろう、昆虫とも甲殻類とも区別のつかない物体が飛び交っているのが見受けられた。その数は10匹、20匹、いや30匹以上はいる。
「あれは・・・!?」
チヒロも息を飲んでその場面を見つめていた。
と、そのポケモンとおぼしき物体がアスカ達に向かって迫っているのが見えた。このままだと大変なことになりかねない。
「奴らが迫っているわ!行くわよ、チヒロ!」
「うん!」
アスカとチヒロは周囲を見回す。と、近くの電灯におびえた表情のムックルが数匹たたずんでいるのが見受けられた。
「キャプチャ・オン!」
アスカとチヒロがムックルをキャプチャする。
「ムックル、あのポケモンかどうかは分からない物体を追い返して!」
ムックル達はかぜおこしやエアカッターを放ってその物体を攻撃していった。
<このお話の履歴>
2011年2月27日、ポケ書内ポケボード・ラティアス部屋にて掲載。
No.017です!
うは! やった! 感想だ! 感想がついたぞ! ヤッホーイ!(小躍り)
「終わるまで待つ心算」だったとのことなので、なんかせかしてしまったようで悪い気もしますが(笑)
やっぱりうれしいなぁ。
> 弱々しい灯かりの周りを羽虫が舞う。
> 人口の灯かりを月の輝きと勘違いした小さな命は、月を追おうとしてぶつかっては弾かれ、また弾かれて、けれど月を目指すことをやめようとしない。
うひひ、実はこの描写は私も気に入っているのでお気に召していただいてうれしいです。
この描写はツキミヤ自身の置かれている状況を暗示しているつもり、です。
野の火ではほとんどそのことに触れていない為、そのうち別の話で語れたらいいと思っていますが、
彼はいわゆる四大の学士の過程を卒業した後、修士課程……大学院に進みます。
ですが彼の先生は「民俗学」の先生です。「考古学」ではありません。
彼自身はそっちを希望していたのにもかかわらず、です。
理由はなんとなく、おわかりですよね?
>……ただ、実際に精米機を使ってる側としては、連続使用をしてる時に一気に中身をぶちまけると、「詰まっちまうぞ」と突っ込みたくなって困ったり(笑 爆)
ぐふ!
精米機使ったことなくて、そのへんはまったくわからない。もう少し調べるべきだったか。
農家の方のツッコミお待ちしております。
穴守さんちはお金持ちなので、きっといい精米機なんですw
>「意識が夜の海に潜る。 記憶という名の深い深い海に潜る。夜の海に潜る。」――この表現を見たときに受けたショックの大きさは、マジで半端無かったですぜ(汗)
えっ
>……『ハトマッシグラ』とか誰得やねん(笑)
俺得です。きっとポケモンの飼料用の粒の大きい豆みたいな米なんじゃないですか?w
カントーやジョウトに出荷してるみたいです(遠い目
ネーミング的にはスバメニシキが気に入っています。
>友情出演のあの子
野の火は言うなれば、六尾稲荷のカゲボウズバージョンですが、
ツキミヤが絡むだけでなぜこうもひねくれた話になるのか……
>> 「コウスケ、こういう場所はね、昔むかしの世界への入り口なんだよ」
>> 売店で買い求めたアイスクリームをスプーンでつつきながら父親は言った。
>> 甘い味が染みた木のスプーンを奥歯で噛みながら、そんな父の話を聞いていたのを覚えている。
>此処も好きだっ!
>親父さんとの大切な思い出と、彼が抱いていた純粋な職業への思い。 アイスクリームの甘い味は、今の主人公の境遇とを暗に>比較させ、懐かしい中にもどこか翳りを帯びさせる――
>……木のスプーンを奥歯に噛んでとか、昭和世代の郷愁を直撃するようなモン書きやがってぇ!!(笑)
木のスプーンは小さい頃私もやりましたので。
甘い味はうん、狙っています。
神社のお参りシーンは絶対に入れたかったので、捕食シーンの次にまっさきに書きました。
>> いやだなぁ。それってはたから見ると結構あぶない絵じゃないか。
ツキ×ナナ いや ナナ×ツキ……?
げふんげふん、なんでもない。
そのほかに「脱げコウスケ」などの危ない台詞が散見されます。風呂に押し入ったこともありました。
マサポケはよい子も通える優良サイトです。(by586氏
>戦いは数だよ、アニキ!
>実に酷いやり方だとつくづく思う(苦笑)
私もひどいと思います(笑)
>ある意味九十九こそが、彼が初めて出会った共感者なのかもしれませんな。
この手の感想はうれしいなあ。
たぶん九十九自身もそう感じるところがあって、ツキミヤに頼んだんだと思います。
後々の展開見ても完全になりきっちゃってるもん。九十九様の人選は間違っていないと思う(笑
>> 「たしかに一族や種に名づけられる名はそうかもしれない。けれどね、一人や一匹や一羽だけの為だけにつけられる名はそうでは無いのだ。だから、軽々しく名乗ってはいけない。お前にとって名前とは大切な者に呼ばれるためにあるのだから」
>このやり取りには思わず唸らされた。 今の所、全体を通しても三本指に入る位好き……!
うわあ、ありがとうございます。
しかし後半にちゃんと描ききれるのか今から心配でもありますw
とりあえずネイテー(笑)の名前をどうしようかという問題(
>元々自分は、『嫉妬心』と言うものに対して非常に強い嫌悪感を持っており、これまでは意識して排除してきたのもあって、特に感じる事はありませんでしたが……どうやら此処に至って、遂にその魔の手に袖を掴まれちまった感じです(苦笑) 全く……こんなもん「ポン」と書けるのは、実に羨ましい(笑)
嫉妬とするとあの人がやってくるので注意してくださいw
かなり途中であれやるこれやる、歌も作る! でサボっていますが、足かけ二年なので、「ポン」とは書いてないですw
この前のラジオで語りましたが、ルーツをたどってみるとどうも「砂漠の精霊」の影響を受けてるらしいんですよね。
ショール越しばかりを(私が)ネタにしがちですが、あれは「こういうことやってもいいんだ!」と私に多大な影響を与えた作品です。
「砂漠の精霊」…ポケモン≒精霊(ジン)
↓
こういうことやっていいんだ! →「六尾稲荷」……ポケモン≒神様、妖怪
↓
DP発売、ミオシティ図書館の蔵書に感銘を受ける → 「遅れてきた青年」
このへんから民俗学的な領域に入っていく。
↓
カゲボウズシリーズで続き物をやりたい。
ネタ調達にと九州関係の本などを買い出す。 →「聖地巡礼」
↓
鎌倉に行く。とある稲荷神社でネタが降ってくる。 →「野の火」執筆開始
↓
京都に行く。三十三間堂で妄想する。
ガイドブックに乗っている伝説などに傾倒。 → 「豊縁昔語」
↓
買う本が民俗学系、日本の伝説系にシフト
みたいな流れをたどってますので。
つまり何が言いたいかというと「砂漠の精霊」すげえ! ショール越しすげえ! ということです。
だから私は砂漠の精霊が大好きだ(笑)。
「砂漠の精霊」のせいで神保町がどれだけ儲かったかしれない。
すべては「砂漠の精霊」からはじまったのさ……ということでここは締めておきますw
終始ニヤニヤしながら読ませていただきました。
これ後半もありとかおいしいな。
本当にありがとうございました!
本当は終わるまで待つ心算でありました。 ……しかし、刺激になるやも知れぬのであらば、聖域を汚してみるもまた一興(笑)
と、言ふ事で、ちょっと失礼させて頂きますです……
個々の部分に触れる前、一番最初に入れて置きたい事――それは、自分はこのお話が大好きだと言う事です。 ……と言うか、丁度仰ぎ見るような感覚で拝見させて頂いておりまする。
昔から自分が想起する『二次創作的妄想』と言うヤツは、8割方『歴史・伝奇』関連なのですが、この作品ほどその要素を満たしてくれている文章を、自分はまだ見た事がありませぬ。
自分が最も書きたい物語の図式―『テーマ』と『雰囲気』を、この作品は文字通り掴み出して置いて見せたようなものでして、将来的に書くかどうか迷っている幾つかの作品群に対し、今のこの瞬間も、大きな影響を与え続けてくれています。
元々自分は、『嫉妬心』と言うものに対して非常に強い嫌悪感を持っており、これまでは意識して排除してきたのもあって、特に感じる事はありませんでしたが……どうやら此処に至って、遂にその魔の手に袖を掴まれちまった感じです(苦笑) 全く……こんなもん「ポン」と書けるのは、実に羨ましい(笑)
けれども同時に、他ならぬこの作品こそが、元々目論んでいた妄想の具体化に対して、この上なく明確に道を切り開いて見せ、目に見えない形で激しく尻を叩いてくれている事も、また事実なんですよねぇ(笑)
この『野の火』から自分が得られた物は、こんな形では到底語り尽くせるもんじゃございませんが……それでも、これだけは言わせて頂きましょう。
素晴らしい作品をお書きになって頂き、本当に有難う御座います…! 実に幸せです(笑)
> 今宵、役者は面を被りて、出で立ち進むは石舞台。
> 舞いて祝詞を唱えれば、妖降り立ち甦る。
>
> 神と呼ばれ称えられる者、妖と呼ばれ恐れられる者、
> 今この地に集いし者、遠い昔この地に生きた者、企む者、阻む者、人、ポケモン、
> もろもろを巻き込んで、ポケモン伝記小説「野の火」開幕。
掴みの序文。
テンポと言い語感と内容と言い、この時点でとてもクオリティは高いですが(汗)……物語を読み進め、後から返して読んで見れば、味わいもまた一入の出来。
最後まで読み終えた時はどんな色に見えるのかが、今からでも凄く待ち遠しいです。
> ホウエン地方の蒸し暑い夏が終わり、山々の木々の葉は、緑色の衣から赤や黄に衣替えをはじめていた。
> それは地を彩る草々も例外ではなく、野も山も秋色に染まりつつあった。
> 夕暮れともなれば、あちらこちらから鈴の音に似た音色が耳に届く。
> つい最近までこの音色を聞く度に、まだ夏だというのに気の早い虫もあったものだなどと思っていたのも束の間、今はこの音がしっくりと感じられた。
最初の情景描写は、お定まりで王道パターン。 ……然れども、そこで作者の技量がある程度計れてしまうのも、また事実。
生活感に根ざした夕暮れ時の風景は、容易に目の当たりに出来るほどに鮮やかで、自分のレベルでは文句の付け様もありませんな。 出だしは結構注目しますけど、全く期待を裏切らないこの安心感がいいわ(笑)
> 早々に宿を確保したかった。いわゆるリーグを目指す本業ではないにしろ、トレーナーの免許を持っている青年はポケモンセンターならば無料で宿泊できる。だが、目的の施設が必ずしもこの先にあるとは限らなかった。あったにしても利用客が多かったりすれば相部屋になったり、場合によっては、他の有料宿泊施設を利用しなければならないこともある。何事も早めに越したことは無い。
こう言う細かい設定や背景は、やっぱり個々人の技量(『妄想力』とも言うか)をh(以下略)
野宿や無人施設での宿泊を旨としていた自分から見れば、彼はまだまだ未熟…!() ……と、言っちゃいたい所なんだけど、薄汚れたおいどんと違って、ツキミヤどんに野宿は似合いませんよね(笑)
……でも管理人さんの絵にあったように、仲間達と小さな明かりの中地図を囲むツキミヤどんも、悪くはないと思うんだ。
> 小柄だが、皿のような丸い眼に、きゅっと閉じられた口元は古狸という例えがしっくり来そうだ。それでいて、よく言えば意思が強そうな、悪く言えば頑固そうな顔つきだと彼は思った。
ばっちゃん登場。 この描写好きです(笑)
『古狸』はよく使う比喩だけども、『口元』や『丸い目』と言った裏付けを添えてくれる方って、意外とおられないんですよねぇ……(汗)
> 「ほれ、その肩の鳥ポケモンじゃ。何も考えていなさそうで、実は悟りきっている深遠なその表情。わしの好みじゃ。そりゃなんちゅう名前のポケモンだ?」
> 「……ネイティです」
> 「そうかネイテーというのか、覚えておこう」
>
> 老婆はネイテー、ネイテーと何回か反芻しながら満足げに頷いた。
そして「ネイテー」発言。
トゥートゥー一族の破壊力を存分に振るう穴守ばあちゃん。 ……無敵だ…(汗 笑)
> いつの間にか空はすっかりと暗くなっていて、彼の進む方向に集落の明かりが見えていた。
> それは人の気配。たくさんの人があの場所に居るという証明。
> にわかに太鼓の音、笛の音が聞こえてきた。
地味な部分かもしれないけれど、『旅人』としての視点を明確に内包した一文。 ……ツキミヤどんならではの感性も大きいのだろうけれども、ぶらぶら経験のある人間にとっては、懐かしい感触が尽きない一コマ。
区切りの一文としても秀逸だと思う。
第一話の誤字と思われる部分
> 青年はそんなことを呟いて、あたりを 『っ』 見回したが、
> 老婆は 『消して』『早く』 は無い
ツキミヤどんの親父さんの受け売りの部分は、シリーズ通して何度か出てますが……やっぱり好きだ!(笑)
> 傍から見たら無表情に見えただろうが、なんとなく微妙なニュアンスでうまそうに食っているのが彼にはわかるのだった。ネイティが最後のひとかけらをついばんで飲み込んだ。
なんだかんだ言いつつな両者の関係。 「羨ましいまでに良好である」()
> 思ったとおり、ボールから出したドータクンは米の料理に大して、おおよそ食欲という名の欲望を抱いてはくれなかった。
> 遠い昔の祭具に似た彼の生態はどのような形容詞で説明しても生物的であるとは言い難い。
> ツキミヤは今のところ彼がモノを食べているところを見たことが無いし、どこに口があるのかも知らなかった。
どーたくですから() ポケモンならではの光景ですよね。
こういう無機質な連中を生き生きと描ける技量には憧れます…… 586さんのモールスポリゴン見たく。
> たぶん普段は村の人々が集会所か何かに使っているのだろう。
> 中心にはせめてものといった感じで、火が炊かれ、小さく炎が踊っていた。
> ツキミヤが中に入ると先に来ていた何人かが、お前もかといった眼差しを無言で向けてくる。
此処は不覚にも吹いた(笑) 光景が目に見えるようだわ。
駅地下で新聞紙被って寝たことあるけど、その時も先客の方々に変な顔されたなぁ。
> 青年の意識が半分ほどこちらの世界へと引き戻されるのとほぼ同時に、背中で羽を膨らませていた小鳥ポケモンが飛び起きたという感触が背中から伝わる。
この辺りは本当に芸が細かい。 ……ここでネイティの反応にまで言及している所に、作者と物語とのシンクロの深さを感じる。
> ツキミヤはようやく肯定の意を口にした。
> 眠たい頭なりに記憶の一片にナナクサの存在を認めたのだ。
この行も好き。 ……何気ない一文なんだけど、表現方法はそうそう真似の出来ないレベル。
ここらいは流石に、執筆経験の長さが貫禄として滲み出てるよねぇ……(汗) 自分には到底無理な芸当。
> 「名目上? どういうこと?」
> 「この国の制度下ではトレーナー免許を持っていればいろいろ便利だからね。トレーナーの肩書きを持った兼業っていうのが結構多い。僕もその一人」
しっかりとした世界観を持つ方だけが出来る表現。
二次創作にリアリティを吹き込む為には欠かせない文面なんだけど、実際にやろうとしたらこれも難しいんだよねぇ…… さりげなく言わせてるけど(苦笑)
こういう部分は、駆け出しの人間にはすごく参考になりますです。
> ……ネイティが先かよ。と、声の聞こえない内心でツキミヤは呟いた。
……ワロタ。
済まん、ツキミヤどん……おいどんもネイテーが先だったよ……(爆 笑)
> 「そこまで言われたら、お世話をしている僕はこう提案せざるをえないだろう? では、タマエさん、僕がひとっ走り村を回ってネイテーとコース……じゃない、コースケとネイテーを探してきましょう」
そしてあなたもそーかシュージ君。 同志よ…!()
第三話の誤字と思われる部分
外に飛び出して調べないとわからないことがたくさんある。僕のいる『の』研究室の方針として、」
どこかで寒い思いをしているんじゃないかと『と』ずっと心配してたんだよ。 (「かとか」か「かって」辺りでしょうかね……)
> 相当に旧い、けれどしっかりとした造りの家である。通り過ぎた部屋に垣間見えた柱時計がぼーんぼーんと深夜の時刻を告げていた。
旧家だということを強調する、さりげない配置の柱時計。 ……しつこいよーだが、こう言う所にやっぱ技量が出るんだよn(以下略)
> 両陣営の中に一際目立つポケモンが一匹ずつ在った。ほとんど虫のような大きさの人間達、他のポケモン達に対し、絵巻のほぼ下から上までをほぼ目いっぱい使われて描かれたそれは、誰が見ても特別な存在であることがわかる。実際の大きさがどうであるかはともかくとして、その意味の大きさ、存在の大きさが描かれた大きさとして表れているのだ。
大きさで重要度を表現するという技法は、表現法としてはありふれたものです。 ……が、それを文章の中で説明して頂く事により、よりはっきりとした映像が、頭の中に浮かび上がってくる。
説明を用いて、間接的に『見せたい』ものを想起させる技巧が素晴らしい。 流石は絵師……(汗)
> こんな風呂にゆっくり浸かったのはひさしぶりだった。
> 身体を芯から温める湯の抱擁に身をゆだねながら、眠さに鞭を打ってここまで来た甲斐ががあったなと思う。
漂泊の旅の最大の悩みは、兎に角風呂に入れないこと。 逆に最大の楽しみは、やっぱりゆっくり湯船に浸かること…!
温泉入りたさに5キロ寄り道なんて普通の事。 ……欲求の赴くままに歩き続けられることも、また幸せなのだと今は思える(遠い目)
> そう呟きながら、寝室の襖を開くと、部屋の中心にいかにもやわかかそうな布団と毛布が用意してあった。
> 手でそれを押してみる。たぶん、チルタリスの綿毛が入っているのだ。高級布団である。
ポケモンのいる生活の風景。 チルタリスは見れば見るほどダウンなんだよなぁ……(苦笑)
好きな子だし、「羽を取るために密猟」なんてネタにはなって欲しくは無いなと願いつつも、やっぱり羽毛に目が行ってしまう(爆)
> 「妖怪を泊めた、か……言い得て妙じゃないか」
>
> 青年は面に向かって再び微笑み返した。
はい、フラグ立ちました()
穴守家の客人、またの名を妖怪変化。 抱え込んじまったからには、もう何事も無しには済みゃしませんぜ……?(黒笑)
第四話の誤字と思われる部分
眠さに鞭を打ってここまで来た甲斐が『が』あったなと
いかにもやわ『か』かそうな布団
> 季節を問わずに今でもときどき夢に見ることがある。
> それは、夏の夢。石段を上る夢。
『少年の帰郷』でも痛感したのですが、管理人さんは本当に『夢』の表現が上手いですね…(汗)
「意識が夜の海に潜る。 記憶という名の深い深い海に潜る。夜の海に潜る。」――この表現を見たときに受けたショックの大きさは、マジで半端無かったですぜ(汗)
意識の深層という夢の性質を、此処まで上手く表した二次創作作品を、自分は未だ知りません。 ……と言うか、普通の書籍作品でもあったかどうか(畏)
> 「毎年この時期になると一週間に渡る収穫祭が行われる。昨日はその前夜祭」
> 「前夜だって? あの規模で?」
> 「そう、正式な祭の日は今日から。だから村中大忙しさ。タマエさんもタイキ君も駆り出されちゃって動けない」
意外と大きなお祭りって、前夜祭の方が地元の人達は楽しんでたりするんですよね(笑)
本祭は観光なんかの要素もあって、忙しいんだけど……前夜祭はどちらかと言うと純粋に楽しむ為に挙行して、どんちゃん騒ぐ様を見かける感じです。
> 彼は自分達が歩く道の右と左に広がる水田で実っている米の種類をちらっと見ただけで見分けてしまうのだった。
> 右の水田を差しこれはコシヒカリ、左の水田を指しこっちはササニシキと言う具合にだ。
> ツキミヤも両者を見比べてみたが同じようにしか見えない。
一応退職農家の孫だから、違いぐらいはなんとなく分かる。 ……だが、種類までは到底(爆)
シュージ、恐るべし……()
後、色んな架空の稲の品種が出てきたのには笑いました。 『オニスズメノナミダ』なんかは、後に出てきた云われなんかと引き比べて、「なるほどなぁ」と唸りましたが……『ハトマッシグラ』とか誰得やねん(笑)
そういや昔、鳩がコンクリの畦に三羽並んで、稲穂から直接コメ喰ってやがったな…… 可愛い反面、怒りもあれば可笑しさも込み上げて……(爆 苦笑)
> だんだんと祭の全体像が浮かび上がってくる。
> おそらくは昔、昔から伝統的に引き継がれてきたであろう村の祭。現代に至っては観光資源と言った側が強いだろう。だが、この村にとって祭とは単なる観光資源以上の意味を持っているのだ。
> 古代の人々にとって祭とは今年の収穫への感謝であり、翌年の収穫への祈願だ。収穫量は何人が生き延びることができるかに直結する。そして今や祭の成功は、村の経済に直結している。
純粋に上手いなぁと思った行。 ……この時点でははっきりしないけれども、過去と現在に跨ったこの作品では、この手の描写が読者に与える感慨は、一際大きいもの。
後から読み返した場合は、特にひしひしとそう感じまする。 秀逸な仕掛けだわ……
> 水田を二分して伸びる道の向こう側から歩いてきた二人組と一匹があって、その中の小さい女の子がまっさきに声を掛けてきた。短い髪を二つに結わいた元気のよさそうな女の子だ。
>
> 「やあノゾミちゃん、おはよう。ニョロすけも元気だね」
友情出演のあの子。 クロスオーバーはまさに、作者の積み上げてきたものの結晶です(笑)
管理人さんもその内、手塚オールスター的な作品を書くのだろうか?←
> ノゾミがニョロモを捕まえたという大きな貯水池はいつできたとか、あの雑木林は誰それの所有で幽霊が出る噂があってとか、この一本道では時々マッスグマが競争しているんだとか、タイキのポケモンが駄菓子屋の菓子を盗み食いするのでいつも勘定を払っているとか、道行く過程でいろんなことを話し聞かせてくれた。
> かといって、しょうもないことばかり知っている訳ではなく、彼しか知らないような村の景色を一望できる場所や、四季折々の美しい花が見れる場所、トレーナーなら涎が出てしまうような珍しい木の実の生える場所、冷たい水がこんこんと湧き出る泉の場所を知っていたりする。
こういうシーンは好きですね〜(笑)
作中世界に引きこまれていくというか、なんと言うか。 ……後に使われるシーンの舞台や設定なんかも、ちゃっかりアピールしちゃってるし(笑)
> やってくるだけで、雨。
> おそらくこの神社はホウエン神話の"青いほう"に属しているのだ。
> 研究者としてのツキミヤはそう分析した。
豊縁昔話の世界とリンクする、物語の決定的な最初の一コマ。 ……前の絵も影響はあったけど、やっぱりここでのインパクトの方がずっと強い気がします。
天候変化の予兆が空に兆し、風の香りが少し変わったような感じでしょうか。
> 吐き捨てるようにナナクサは言った。
> ナナクサもこんな風に怒るのだ。今更ながら青年はそんなことを思った。
> ……今ならいい味がするかもしれない。
おいこら、ちょっと待て() ……などと、思わず突っ込みたくなる彼の感想(笑)
しっかりツキミヤどんです。 はい。 安心と信頼のカゲボウズシリーズ主人公。
> 「コウスケ、こういう場所はね、昔むかしの世界への入り口なんだよ」
>
> 売店で買い求めたアイスクリームをスプーンでつつきながら父親は言った。
> 甘い味が染みた木のスプーンを奥歯で噛みながら、そんな父の話を聞いていたのを覚えている。
此処も好きだっ!
親父さんとの大切な思い出と、彼が抱いていた純粋な職業への思い。 アイスクリームの甘い味は、今の主人公の境遇とを暗に比較させ、懐かしい中にもどこか翳りを帯びさせる――
……木のスプーンを奥歯に噛んでとか、昭和世代の郷愁を直撃するようなモン書きやがってぇ!!(笑)
> こんな時でも米の話か! こいつはどれだけ米が好きなんだ、と思う。
不覚にも(以下略)
このタイミングでこれはヒドイ。 笑うところじゃねぇから!(笑)
> それは、四つ足の獣の姿をしていた。
> その瞳は燃える夕焼け空のような紅。青白く輝く、鬼火の色にも似たその毛皮。身体よりも大きく映え、風にたなびくのは九本の長い尾。
> きつねポケモン、キュウコン。それも色違い、白銀の。
>
> ――コウスケ、こういう場所はね、昔むかしの世界への入り口なんだよ
>
> 一瞬の間。
> かつての少年の耳元で父親が囁いた気がした。
夢だと言うことは分かっています。 ……けれども心は呆然と佇む、幽玄な一幕。
今宵夢幻を生み出したるは白き獣。 古の昏き沼を抱く青年の耳に呟いた者は、果たしてこの日が来ることを予期していたのであろうか――
> 「そう、僕は今眠っていて、たぶん耳元でナナクサ君が舞台に出ろ出ろと囁いているに違いない」
>
> いやだなぁ。それってはたから見ると結構あぶない絵じゃないか。
待て待て待て待て。 なんと言うシリアスブレイカー発言……(爆)
いや、むっちゃ笑ったけどよ。
> 「形式とはいえ今は信仰が集まる祭の時期だからな。祭の本質は日常と切り離された特別な期間。ことに夜は格別だ。今や実体を無くし信仰の薄い私でもこうして誰かの夢を覗き見たり、夢枕に立つことくらいはできるのだ」
>
> ツクモは続けた。
> ここは私の夢であり、お前の記憶なのだ、と。
民俗学系の知識が覗くワンカット。
こう言うの大好物(嬉々) 知識と経験は物書きの最大の味方……!
> 「私の若いころは珍しいことではなかった。百を率いる一族の長なら人語くらい操れたものだ。今より昔、ポケモンと人はより近かった。始りの地の神話によればポケモンと人の間に垣根が存在せず夫婦の契りを交わすことすら自然だった時代がある」
> 「僕は断るけどね」
> 「同感だ。妻に迎えるなら美しい毛皮のある者がいい」
>
> 青年と妖狐は同意し、そしてお互いに微かに笑みを浮かべた。
意外と気が合うじゃん(笑)
突っ張りあって丁々発止と受け答えをしていると、結構こう言うシーンが出て来るんですよね。
でも、このネタ自体は物書きには非常に大事なソースなんすから、あんまり否定してはいけませんよ御二人さん()
> 「……皆、個を括るために名を使おうとする」
> 「え?」
> 「たしかに一族や種に名づけられる名はそうかもしれない。けれどね、一人や一匹や一羽だけの為だけにつけられる名はそうでは無いのだ。だから、軽々しく名乗ってはいけない。お前にとって名前とは大切な者に呼ばれるためにあるのだから」
> 「何が言いたい?」
> 「私のようにはなるなということだ、鬼火を連れし者よ」
>
> 重さを持った声でツクモは言った。
> 警告めいた言葉。けれどその後ろにあるものを今のツキミヤが読み取ることはできなかった。
このやり取りには思わず唸らされた。 今の所、全体を通しても三本指に入る位好き……!
自らが歩んだ道を仄めかす、古き産土神の静かな言葉。
過去の存在と通じ合うタイプの伝奇では、一番好みのパターンですね……
作者の世界観を垣間見るような味わいに共感を持った時ほど、読み手としては嬉しいもんも無いです(笑)
> 「出演報酬は豪華だぞ。米俵十俵と……」
> 「そんなもの持って歩けるか」
> 「それだけじゃない。副賞として、一年間ホウエン中のホテルが無料になるエメラルドカードという代物があるらしい」
>
> ぴくり、とツキミヤの肩が動く。
釣られた!(笑) ……結構世故に長けた神様だな。
米俵も、荷物用のモンスターボールに収納すれば大丈夫! ツキミヤどんの場合は、同居人(?)のお陰で一ヶ月持つか分からないが(爆)
> 「お前にならわかるはずだ。周囲の人間達は皆雨が降っているという。けれど、お前だけは本当の天気を知っている。だから、ずっと晴れていると叫び続けなければならない、その孤独が」
>
> 青年の脳裏に父親の姿がよぎった。
> 知ったようなことを言うな。お前に僕の、父さんの何がわかるというのだ。
周囲がみな酔っ払っている時、自分だけが醒めているのは妙なものです。 ……それは時として、命すらも失う可能性のある危険な行為。
けれども、それでも靡かず前に踏み出す旅人の生き様は、何時も我々の心を打つものです。
目に見えるものが全てではなく、残っているものが真実とも限らない。 ……歴史や通説とは、いつも残す者が描くものですから――
> 「私は思い出させてやりたい! 永きに渡り私を貶め、仮初の姿でしか私を知らぬ人間どもに。本来の神が誰であるかをを忘れた村人達に、私の炎を見せてやりたい!」
>
> 妖狐が夜空に吼える。
> 今この刻、抑えていた、たぶん何百年もの間溜め込んでいた何かが解き放たれた。
何故か激しく共感できるワンシーン。 ……何故でしょう?()
まぁ、鬱憤が溜まってるからお話書いてるんでしょうけどね。 自分は(爆)
「『文章に飢えた活字中毒者』は執念深く、怒りと憎しみに満ちた人物ですが、抱えた不満を文字にして叩きつける、悪魔的な習性を持っています。」(原文:HoI、『権力に飢えた扇動者』より)
> そう、僕はこの世界が嫌いだ。
> そうとも。父さんを棄てたこの世界など。
> みんなみんな燃えてしまえばいい、燃えてしまえばいいんだ。
具現化しとる……(汗)
なんかツキミヤどんが、Nのダークサイドみたく思えて来た今日この頃(爆)
……始まっちまったからには止められまい。 行き着くところに行き着くまでは――
> 選考会。ポケモンバトルという形のオーディションの舞台。
> その場所は土を盛り固めて作ったリングの上であった。
バトル…! バトルじゃああああ!!()
男も女も老いも若きも猫も杓子も、総員土俵に上がって乱れ打ち合うのj(強制終了)
> 発案者は知っていたのだろうか。相撲という神事の名を。
> もっともその発案者とやらはもうとっくに村にはいない人であるらしく、今となってはそれもわからない。
この世界では、『相撲』は神事のままなんでしょうな……この描写ですと。
個人的に相撲や柔道みたいなのは大好きです。 ……最近の不祥事が恨めしい(涙)
> それにネイティはタマエに貸し出し中だった。
> どういう訳だかタマエは出会った時から彼をいたくお気に召した様子だった。
> やはり宿を提供してくれた恩人にはそれなりのサービスというものをしなくてはなるまい。
> そしてサービスは現在も継続中なのである。
> もちろんサービス係の小鳥ポケモンにも青年自身がそれなりのアフターサービスをしなければならないだろうが……。
コレもワロタ。 ……管理人さんと言い『プレゼント』の586さんと言い、緩急のつけ方が絶妙なんだよなぁ。
ネイテーは大事にしましょう。 アフターケアは寧ろ喜びです(笑)
> と言って軍配団扇を上げると、ディグダも真っ青になりそうな程の恐るべき速さで土俵際に退散した。
> まともに炎技を喰らいたくないからである。
ぬお!? 神聖なる土俵で何たる体たらく!
カエセェ!モドセェ! プロとしての誇りは無いのかぁ!?()
……とは言ってもまぁ、普通の人間は逃げますよね(笑) 丸焼きとか御免ですし。
> もちろんこんな行為はルール違反である。だがそれを行司に訴える手段は子犬ポケモンにありはしなかった。野生を無くし感じる力が鈍感な人間達はこのトリックに気付けない。
仕方ないさガーディ君…… 人は残念だけど、もう君達とは違う世界に生きているんだよ()
> 「いやあ、いざとなったら君を負かした優勝者以下とそのポケモンの食べるものに下剤でも仕込んで、君を繰り上げ当選させようかと思っていたんだ。裏の山に生えてるキノコにすごいのがあるんだよ」
いや、本気で笑えんから(汗)
ナナクサ君は普段の態度が態度だから、こう言うことになるとやっぱり変な迫力と説得感がある(苦笑)
> 「繰り上げ当選させるんじゃなかったの? 今ならたった三人やるだけでいい。君の負担も軽いぞ」
> 「何のことを言っとるんじゃ」
> 「集団食中毒で収穫祭が中止になる話」
> 「なんじゃそりゃ?」
>
> 意味が分からないという顔をタイキがして「冗談だよ」と、ツキミヤは言った。
おみしゃんも引っ張らない(笑)
……ある意味ヒスイ君は、敗北によって毒飼いから免れたんだよなぁ……(汗) まぁ、目的自体は同じだったけども。
第八話の誤字と思われる部分
ツキミヤの皮肉がわかっているのかわかっていないのか、ナナクサはそのようにまとめた。『。』
> 取った。その影がはっきりと現れたその瞬間、バクーダの背中にある火山が噴火した。
> 炎を司るポケモンに炎は大したダメージを与えられない。だが、質量を伴ったマグマであればどうだ。岩や鉱物をふんだんに含んだ熱い土砂をぶつけるのであれば。それは高威力の打撃技を当てることと同等の意味を持つ。いくら炎ポケモンとはいえこいつの直撃を食らえば無事では済まない。バクーダは勝利を確信する。
ここは良かったですね〜。 『噴火』と言う技の性質と模様を、きちんと目に見える形で描写なされてる。
裏付けがはっきりとしていますから、単なる技の撃ち合いなんかとは比べ物になら無いぐらいの、リアルな味わいがありました……!
結の形も実にお見事です。 良いお手前で…!
> 湧き出した影達が黒く禍々しいオーラの玉をいくつも発生させる。
> それが霧の発生源に向かって何十発も、何十発も打ち込まれた。
> 濃い霧で対象ははっきりとは見えない。が、熱をもったそれはのだいたいの位置を掴むことはできた。これだけの数を打ち込めば無傷ということはあるまい。
戦いは数だよ、アニキ!
なんという民主主義戦法。 ……これが持てる者の力というヤツか(爆)
実に酷いやり方だとつくづく思う(苦笑)
> ツキミヤは挑戦的な台詞を吐く。だが、柔らかい笑みは崩さなかった。その顔はまるでどんな場面でも変わらない表情の能面のようでもあった。面の下の素顔がどんな表情をしているのかは誰も知らない。
常人は非日常を演ずる為に面を被る。 ……しかし彼は、日常を演ずる為に面を被っている。
それを嘆くよりも、その運命を心の中で弄びながら。
けれどもその心の奥底にあるものを、誰も見ようとはしない。 そしてまた彼自身も、それを決して見せようとはしない。
ある意味九十九こそが、彼が初めて出会った共感者なのかもしれませんな。
> 「懐いている? ナナクサ君が僕に?」
> 「気が付かなかったかい。あの子は、コースケ以外を呼び捨てでは呼ばないよ」
これ好きです。 ……まぁ、今はまだ全てが見通せた訳ではありませんから、一概にこの雰囲気に飲み込まれていいのかは分かりませんけど――
> 弱々しい灯かりの周りを羽虫が舞う。
> 人口の灯かりを月の輝きと勘違いした小さな命は、月を追おうとしてぶつかっては弾かれ、また弾かれて、けれど月を目指すことをやめようとしない。
時折挟まれる、この手の小文。
必要に応じ抜かりなく挟み込むことによって、物語の完成度は飛躍的に高まるものですが……そのタイミングを見極めて適時適切に加えて行く難しさは、並大抵のものではありません。
これぞまさしく技量の賜物。 お見事にして、羨ましい限りですな……(笑)
> 彼女は急いで袋の中身を精米機に飲み込ませると、その場を立つ。
> だが、持ち場を離れ、彼女が家の外に飛び出した時、すでに青年の姿は消え失せていた。
> 置き去りにされた精米機だけがごうんごうんと物欲しそうに音を響かせていた。
この回も終わり方は実に良く纏まってて……(汗)
次に待つ波乱を予期させる、含みのある沈黙。 ……精米機の唸りだけが残る風景は、タマエさんの心情を良く表してて、実に良い感じです。
……ただ、実際に精米機を使ってる側としては、連続使用をしてる時に一気に中身をぶちまけると、「詰まっちまうぞ」と突っ込みたくなって困ったり(笑 爆)
> 銅鐸がもう五度ほど動いた。彼はもうひと睨みされたような気がした。
>
> 「すすす、すみませんっ」
>
> 年経た銅鐸に気圧されて若者は矢倉からそそくさと退散していった。
さすがは第四世代の対戦環境を風靡した銅鐸様。 名も無き力自慢など眼力で十分()
まぁ、実際アレに睨まれたらかなり怖そうだよね。
> それから数分ほど経過しただろうか、ツキミヤが指差した先を見てナナクサは驚いた。農村の夜空に謎の飛行物体が現れてこちらに近づいてきたからだ。ゆらゆらと左右に旋回しながら近づいてくるそれは未確認飛行物体――UFOのそれに見えなくも無かった。
>
> 「なんてこった。コウスケは違う星の人間だったのか」
待て待て待て待て(二回目) どーしてそーゆー結論に達する!?
思い出したように飛んで来るギャグ。 対戦での先制技見たいな割合ですが、ギャグが好物な自分にとっては何よりの馳走です(笑)
> 「ああ、あとね、最後にオーバーヒート喰らってもカゲボウズが倒されずにいたのは、ドータクンの特性をスキルスワップしておいたからなんだ」
>
> スキルスワップ。ポケモン同士の特性を入れ替えるトリッキーな技。
> いつのまにかツキミヤはナナクサとは反対方向を向いて、そう解説していた。
此処までの展開や仕掛けは、ある程度予測しやすかったのですが……この最後の一手はしてやられました。 こいつはハタと手を打った……(汗)
ドータクンと言うポケモンをフルに使った物語構成に、改めて敬服した一瞬ですね。 良い仕込みをやってくれたもんだよ。ったく(笑)
> 「あーっ、お前は決勝のジャポニカ種!」
>
> と叫ぶ。
> トレーナーは怪訝な顔をした。
突っ込まん、突っ込まんぞ…! とか思いつつも、やっぱ上げてしまう(笑)
ナナクサさん良い仕事し過ぎ……
なんか見返してみると、結構長くなってますので……取りあえずは、一旦此処で切って置きまする。 ちょっと時間も怪しい感じですし(汗)
さて、残り半分はどうグダってやろうかしら(笑)
では。 また後編にて…… 一旦失礼致しまする〜
地下鉄で異常事態が起きていたちょうどその頃、地上でもまた異常な事態が起ころうとしていた。
コトブキシティの中心街にあるコトブキバンギラスデパート。地上10階、地下2階建てで、コトブキネットレール・バンギラスデパート駅とも地下通路で直結している、シンオウ地方有数のデパートである。
まだ開店時間前と言うことから人気もなかったデパート内だが、突如としてデパート全体が大きく揺れ始めたのである。
それは、まるで下から突き上げる地震の縦揺れに似ていた。建物全体が、下から何かの強力な力で突き上げられている感じだったのである。
と、すさまじい音が鳴り響き、地下深くから何かしらの物体が出現し始めたのだった。
それは、何かしらのつぼみにも見えた。ポケモンで言えば、フシギダネやフシギソウ、フシギバナなどの背中に生えている草――進化してフシギバナになると大きな花が開くが――にも似ていた。
だが、それはフシギダネ系統のそれとは似て大きく異なるものだった。むしろフシギダネなどのそれとは全く違う、別物というべきものだった。
そのつぼみのようなものが突き上げるにつれて、建物全体が激しく揺れ動く。そして、そのたびごとに瓦礫が外に飛び散るのが、はっきりと見て取れるのだった。
そして――。
巨大なデパートを突き破って、これまで見たこともない巨大な植物とも花とも区別が付かない、異様な物体が、その姿を現したのだった。
「あれは!?」
「何!?」
道行く人たちはパニック状態になる。今まで見慣れていた光景に、いつもとは全く違うもの、それも異様な物体が出現していること自体、信じられないことだったのだ・・・。
「番組の途中ですが、ここで臨時ニュースをお伝えします。」
テレビのアナウンサーが、緊迫した面持ちで状況を伝える。
「今朝早く、シンオウ地方・コトブキシティのコトブキバンギラスデパートに、巨大なつぼみと見られる物体が姿を現しました。この物体は、バンギラスデパートの建物を突き破って姿を現したことから、少なくとも高さは50メートル以上あるのではないかと言われています。また、この物体が出現する直前、付近を走行するコトブキネットレール・ナエトルラインの列車が、ポケモンと見られる物体に襲撃されたという未確認報告もあり、現在、確認が進められております。なお、この事態に伴い、コトブキネットレールは全線が始発から運転見合わせとなっています・・・。」
<このお話の履歴>
2011年2月20日、ポケ書内ポケボード・ラティアス部屋にて掲載。
隕石落下から5日後。
コトブキシティを中心に路線網を伸ばしている地下鉄・コトブキネットレールの路線の1つ、ナエトルラインのテレビコトブキ前駅では、コトブキシティの南部にあるシンオウ自然公園行きの始発列車が到着していた。
始発列車と言うこともあり、乗客はまだ少ない方である。しかしこれから朝のラッシュ時を迎えると言うことからか、それなりの客がいた。
「次は、コトブキバンギラスデパートです・・・」
次の駅を伝える自動音声が鳴り響く。次の停車駅であるコトブキバンギラスデパートは、トバリシティのトバリ百貨店と並ぶシンオウ地方でも有数のデパートである。
列車は何事もなく次の駅に向かって運転しているかに見えた。だが、運転手は次の瞬間、驚愕の光景を目の当たりにすることになる。
「・・・!?」
全身が妙な甲殻で覆われた、見たこともない物体。ポケモンなのは間違いない。だが、それは未だかつて、誰も見たことがないものだった。正確に言えば、警備員が飲料工場でこれと似たものを目撃していたのだが・・・。
「何だ、あれは!?」
運転手は思わず非常ブレーキを作動させる。瞬間、列車は勢いよく停止して、乗客は勢いよく放り出されてしまう。それとほぼ同時に車内の電灯が明滅した。
「あれは・・・、ポケモンか!?」
その異様なポケモンは窓ガラスに激しくぶつかる。運転台から見て、その数は10匹、20匹といただろうか。群れをなして行動しているのは間違いない。
電灯の消えた車内で乗客達も不安げな表情で事態を見守っている。だがただ事ではないという空気が車内に漂っていた。
「何をするんだ!」
窓ガラスが突き破られ、そのポケモンが運転台に進入した。これほどまで多くのポケモンに襲いかかられてはたまったものではない。
「ぬわーーっっ!!」
運転手の悲鳴が車内にこだました。
それと同時に車両の両側にその無数のポケモンが繰り返し現れる。瞬く間にそのポケモンは窓の外を覆っていく。30匹、50匹、いやそれ以上いるのは間違いない。
「何なんだ、あれは!?」
「ポケモンか?」
ポケモンは見た目からしてむしタイプにも見える。だがメガヤンマなどと同様、空を飛び回ることもできる。そしてそのスピードも桁が違う。
「おい、この中でポケモントレーナーはいないのか!?」
だがそれをかき消すかのごとく、そのうちの1匹が窓を突き破り、車内に入り込んだ。
「何をするんだ・・・!」
それと呼応して次々とそのポケモン達が車内に入り込んでいく。この状況では例えチャンピオンマスターのシロナがいたとしても間に合わなかっただろう。
「ぎょえーーっっ!!」
逃げ惑う乗客達の悲鳴が車内にこだましたのだった・・・。
<このお話の履歴>
2011年2月20日、ポケ書内ポケボード・ラティアス部屋にて掲載。
26
「――本当に来るのか?」と、アキラ先輩。
「もちろん、必ず来るわ。素敵な『置き土産』をしてきたもの」と、マキノ先輩。
時刻は午後11時半を回った。
校門に詰めている警備員も見回りが終わったようでいそいそと家路につく。
降り積もる雪が雑音を吸い取り、ミオ大学のキャンパスは静寂に包まれていた。
僕らは校門からすぐのところにある学生会館の前の広場に集合した。
夏の天気の良い日であれば、ベンチで昼食をとったり、授業の合間に一服したりできる場所である。
しかし今の季節は真冬。おまけに今年一番の冷え込みが予想された今日は、昼間でも顔が痛くなるほど風が冷たかった。
夜になり風はおさまっていたが、凍てつく空気が僕たちをその場に縛り付けていた。
僕らが突き止めた暴力団の「アジト」は、例えばドラマなんかでよく出てくる人気のない港の閑散とした倉庫ではなく、街の外れにある何の変哲もない雑居ビルで、とても戦いを繰り広げられるような場所ではなかった。
そこで僕たちは、夜のミオ大学にやつらをおびき出す作戦に出た。当然僕たちのホームであるこのキャンパスでは地理的に有利に戦えるし、夜中の大学というのは都心のオフィス街と同じで夜間人口が少ないもの。決戦の場としてはうってつけだった。
僕ら「ヘル・スロープ」のメンバー九人は、ガタガタと寒さに震えながらこの広場に身を寄せあって立っているのだった。
なかなかシュールな光景だと思う。こんな感じでうまくいくのだろうか?
「アジト」にちょっかいをかけてきたのはマキノ先輩だ。
彼女は相棒のゴローニャ、トレスクと共に入口で待ち伏せし、暴力団員を一人、滅多打ちにして置き手紙をしてきたという。
普通大学生が出来ることじゃない。
仲間が一人やられたとなれば必ず仕返しに来るはずだ。ヤクザとかってそのあたりの仲間意識はすごく強い――というのは勝手なイメージだが。
僕はポケットに手を突っ込んで身を小さく縮めながら、カオリのことを考えていた。
結局、カオリとは上っ面でしかこのことを話してこなかった気がする。
今日カオリを見送った時も、彼女が僕の身を案じるばかりだった。「気を付けてね」と、何度言われたかわからない。
そして彼女は、ずっと伏し目がちだった。
まるで別れ話を切り出そうとしている恋人のそれのようで、その仕草に僕は緊張した。
しかし結局最後も「気を付けてね」で締めくくり、暗い影を落としたまま彼女は背を向け、大学を下った。
「カオリちゃんか?」
僕の思っていることを見透かすように、ケイタが小さい声で訊いた。
「――ああ。最後まで対策が思い浮かばなかったなと思って。せめてカオリとしっかり話し合うべきだったな」
「心配するな」ケイタは僕の肩を叩いた。「ヤバくなったらおれも一緒にトンズラしてやる。あ、それとも逃避行は二人っきりの方が良いか?」
なんだよこいつ。こっちは気が気でないのに。
そして突然、車の急ブレーキの音が鳴り響いた。
「――それより集中しろよ。お前が死んだら元も子もない」
黒のバンが四台列になり、雪けむりを立てて大学構内に乗り入れてくる。
「分かってるさ」
僕たちは全員モンスターボールを開けた。
ケイタのレントラー、エルク。
ヤスカのフローゼル、バロン。
タツヤのムウマ、ポウル。
コウタロウ先輩のキュウコン、メイヤ。
シン先輩のカポエラー、メストリ。
ユウスケ先輩のキリンリキ、ジーナ。
アキラ先輩のトドゼルガ、レフ。
マキノ先輩のゴローニャ、トレスク。
そして僕、シュウのウインディ、ヒート。
大小様々、属性もバラバラの総勢九匹が厳冬夜のキャンパスに出揃った。
「みんな――締まっていこう」アキラ先輩の緊張した声。
僕たちからほんの十メートルほどのところに四台のバンは乱雑に止まり、バタバタとドアが開いた。
黒のスーツを着込んだ男たちが意味不明に叫びながら次々に姿を現した。
まるで刑事ドラマのワンシーンのように、暴力団のメンバーがガンを飛し、こちらに向かい合った。
さすがにその光景には僕も息をのんだ。
一番先頭に車から降りてきた男はサングラスに坊主頭という出で立ちだった。
「随分と豪華なお出迎えじゃねぇか? あァ?!」
最後の「あァ?!」はびっくりするほど大きな声で、大学中に反響した。
僕の隣りでヤスカがビクッと震えるのが見えた。
白い雪を踏み荒らし躍り出た黒い集団は総勢約二十人。
いずれもパンチの利いた顔ぶれだ。とても形容できたものではないので、平たい表現だが「ヤクザ顔」とだけ言っておこう。
ただ、こんな田舎の暴力団だからなのか、全員が全員「立派なヤクザ」とはとても言い難かった。
サングラスの男の隣りにいるやつはどう見たって中学生じゃないかと思うくらい童顔だったし、右端のやつなんてハムみたいに太っている。
僕はほんのちょっとだけ、拍子抜けした。
「『お土産』はご覧になったかしら?」マキノ女帝が威風堂々と言った。
黒い集団は一斉に罵声を飛ばした。それをサングラスの男が手を挙げて制す。どうやらこの男がリーダーらしい。
「ガキには手出さねぇ性分だったんだがなぁ。やられちゃだまっちゃいられねぇ。一体どういう要件だ?」
男は言った。こちらが全員手持ちを繰り出しているので一定の距離こそ取っているが、今にも殴りかかってきそうな迫力だ。
じっとマキノ先輩を睨みつけている。
「――この大学に薬流してるのはあんたらよね?」
マキノ先輩も全く引かず、男を睨み返した。
「……あァ、そういうことかい――」
グラサンの男はケラケラと笑った。周りの仲間も同じように並びの悪い歯をこちらに見せる。
「学び舎を脅かす悪を討つ、『正義の味方』ってわけだ。だがな、それで俺らを恨むのはお門違いだぜ? 実際に薬買ってんのはお前らだからな。欲しがってるやつに売って何が悪い?」
うちの代表の背中がにわかに盛り上がったように僕には見えた。
それに同調するようにゴローニャがグルグルと唸る。アキラ先輩のトドゼルガが白い鼻息をはいた。
空気の流れが変わった気がした。
「あーそれがねぇ、悪いのよ。別に私は正義の味方ヅラするつもりもないし、正直言ってあんたらが誰にどう薬売ろうと興味はないの。知ったこっちゃないわ」
「あァ?」男は眉を吊り上げた。「じゃあ黙って家でお勉強でもしてな。なんでしゃしゃり出てくる?」
「――腹が立つ」マキノ先輩は言い捨てた。「癇に障んのよ。うちの後輩が面倒に巻き込まれてからは特に。あんたらさ、商売止めてどっか行ってくれない?」
声を裏返して男は笑った。それを真似するのがルールだというように周りの仲間もまた一緒にゲラゲラと笑う。
「最近の学生さんは頭が悪いんだなァ! できるかよそんなこと!」
いつの間にか風が吹き始めていた。ゆっくりと舞い降りていた粉雪が角度をつけ、無数の白い線になってゆく。
マキノ先輩のコートが翻った。
「そうね――言ったって無理よね」
「当り前だろうが! 何様のつもりだ?!」
マキノ先輩はアキラ先輩に目配せをした。
「あんたらをぶっ飛ばすつもりよ」
それを合図に、アキラ先輩のトドゼルガが汽笛のような雄叫びを上げ、天を仰いだ。気候を司る聖獣が審判を下すように。
荒れ始めていた天候がさらに酷くなり、氷の粒が肌に突き刺さる。
「ガキが生意気言いやがる! 野郎ども!」
男が号令をかけると仲間たちがいっせいにモンスターボールを取り出し、思い思いに放った。
ゴルバット、ヘルガー、ドクロッグ、アーボック、ラッタ、シザリガーなど、ポケモンが次々に雪原に姿を現した。
しかし僕にはそのポケモンたちのシルエットが少し垣間見えただけで、すぐにかき消された。
「クソっ! 急になんだ、この天気は?!」暴力団は口々に悪態をつく。
もはやキャンパス一帯はトドゼルガの吹雪によって完全に覆われていた。
僕の目の前も真っ白な雪で視界が遮られ、ヒートの尻尾がかろうじて霞んで見える程度だ。
しかしそれは相手もこちらも同じ。
加えてここは通い慣れた大学の構内だ。多少視界が悪くても僕たちは頭に地図を描いて動くことができる。
作戦開始だ。
(鬼さんこちら! 手の鳴る方へ!)
僕らは打ち合わせ通り、二人ペアになってその広場から離脱していった。
「なめた真似しやがって! 野郎ども! 絶対に逃がすんじゃねぇぞ!」
暴力団たちは凄まじい叫び声を上げた。がむしゃらに僕たちを追いかけ始めたようだ。
僕はケイタと共に第三講義棟へ向かって疾走した。
「どこ行きやがった?!」暴力団の一人がわめいた。
雪を踏みしめる音が背後から無数に聴こえる。
「じきに吹雪が晴れる。タイミングが大事だ」
ケイタが傍らを走るレントラーを横目で確認しながら言った。
「大丈夫、任せろって」
相手の戦力をここで分散する。
視界を遮ることで僕たちは距離を取りやすくなる。相手が均等に戦力を配分してくれればこっちのものだ。
「ルアー」を使い、上手く誘い出さなければならない。
予想通りキャンパス全体を覆っていた吹雪は次第に治まっていき、後方に黒い塊とポケモンの群れが四方八方へ広がっていくのが僅かに見えた。
「ヒート、頼む!」
少し前を走っていたヒートが急ブレーキをかけ、その場で後ろを振り返った。
ヒートは大きく振りかぶり、天に向かって思いっきり炎を吐き出すと、炎の明かりで辺りは煌々と照らし出された。
「いたぞ! あそこだ!」目標なく散らばっていた黒い影の一人がこちらを指差して叫んだ。
他のペアも次々に「ルアー」を投下した。
広場を挟んで反対側ではコウタロウ先輩のキュウコンがヒートと同じように炎で周りを明るく照らしている。体育館の方では心配だったタツヤのムウマがちゃんと「怪しい光」を天高く打ち上げていた。ユウスケ先輩のキリンリキは研究棟の影で電気の塊を発射していた。
「挑発なんてガキには十年早いんだよ! 野郎ども! ここにまた全員引っ張りっ出してこい!」
リーダーのグラサン男は広場のど真ん中で仲間に単純明快な指示を出した。
暴力団の面々は怒り狂いながらそれぞれ「目印」に向かって走っていく。
僕とケイタの方には四人の男がそれぞれの手持ちを連れて駆けてくる。
「入れ食いだ――よし、ポイントまで誘うぞ」
ケイタがそう言ってまた走りだした。僕とヒートもその後に続く。
「あの野郎! まだ逃げんのかコラァ!」追ってきた四人の男のうち一人が叫んだ。
僕たちは四人を引きつけたまま第三講義棟の裏へ回った。
27
「やっとやり合う気になったか? ったくこんなとこまで走らせやがってよォ?!」
第三講義棟の裏は狭い路地になっている。昼間でもあんまり人は通らないので、除雪こそされているものの歩きやすい路とは言えない。
しかし今、この路地こそ僕たちの「バトル・フィールド」である。
相手は四人。繰り出しているポケモンはザングースと、ラッタが二匹、そしてシザリガーだった。
「さて、始めようか」
ケイタそう言うと、レントラーが前足を伸ばし体制を低くした。その身体には電流を帯び、パチパチと音を立て始めた。
四対二。数では不利ということは自明だった。
しかしそれも戦いようによる。
「覚悟決めやがれ! 野郎ども!」
四人がそんな感じで叫び声を上げると同時に、四匹ともこちらへ襲いかかってきた。
「まずは相手の主力、シザリガーを速攻で仕留める。援護頼むぞ」とケイタ。
足の速いラッタが一気に間合いを詰めてきた。
「ああ、頼まれた! ヒート!」
二匹のラッタが鋭い前歯を剥き出しにして飛びかかってくるのを、ヒートは炎の渦を吐き出してけん制した。
続けざまにザングースが爪を長く伸ばして、ヒートの首元目がけて切りかかってくる。
ヒートは身を屈めてそれをかわし、頭突きでカウンターを仕掛けたがザングースもバックステップでそれをかわした。
「あんまりもたねぇぞ! ケイタ!」
「もう少し踏ん張ってくれ」
レントラーは後方で身動き一つしない。蓄積されていく電流がバチバチと弾け飛ぶ。
ザングースの二回目の攻撃がヒートの前足をかすめた。
ヒートは唸り声を上げ火炎放射で応戦するが、すぐに相手は距離を取り、簡単には当たらない。
ワンテンポ遅れてシザリガーが大きなハサミを振り下ろしてきたのを、ヒートは間一髪でかわした。
「あんまりチームワークがよろしくないんじゃねぇか?!」暴力団の一人が嘲った。
「まだか?! ケイタ!」
僕が訊くのと同時に、レントラーの目が黄金色に輝き始めた。
「充電完了だ! どけてろ!」ケイタが叫んだ。
レントラーの発する電流の熱エネルギーで、周りの雪はほとんど融けきっていた。
夜ということを忘れてしまうほど、辺りは明るかった。
「エルク!」
レントラーの身体から解き放たれた電流は、凄まじいスピードでシザリガー目がけて一直線に突き進む。
バチンと耳をつんざくような音がして、電流はシザリガーに直撃した。
光で一瞬視界が眩む。
目を庇った腕を避けると、甲羅にヒビが入り、黒く焦げ付いたシザリガーはその場にドサリと倒れた。
辺りには唐突な静寂と、生き物の焦げる臭いが漂う。
「――まず、一匹だ」ケイタは息を切らしながら呟いた。
「てめぇ……!」シザリガーの主人はその黒い塊をボールに戻す。
僕はこんなに本気になっているケイタを久しぶりに見た。
(薬から完全に逃げ切れたわけじゃないんだ――)
ケイタが弟の話をしてくれた時のことを僕は思い出した。
相手の主力が倒れたことで戦況は逆転しつつある――そう思ったが、ザングースやラッタたちは鼻息荒く怒り狂っていた。
「数でまだこっちに分があるんだ! ひるむんじゃねぇ!」
再びザンクースが後ろ足で立ち、毛を逆立ててヒート襲ってきた。長い爪が空を裂く。
二匹のラッタはレントラーにターゲットを替えていた。
素早さで劣り、放電した直後のレントラーはラッタたちにかなり押されている。
「エルク、落ち着いて狙うんだ!」
レントラーは攻撃を見切りながら時折電気ショックを浴びせようとするが、ラッタたちはゴムボールのように身軽に跳ねてそれをかわし、鋭く尖った前歯で何度も首元を狙っている。
早く加勢しなければ危ない。
しかしザングースも猛攻を止めない。
まるでカンフー映画の俳優のように、爪の攻撃に加えて回し蹴りを織り交ぜてくる。
攻撃のパターンが読めず、かわすだけで精一杯だった。
肉弾戦では分が悪いか――
次の瞬間、ザングースの回し蹴りがついに顔面に直撃し、ヒートは真横に倒された。
「ヒート!」
ヒートはすぐに立ち上がって身体についた雪をブルブルとはらった。
致命傷にはならなかったが、このままでは確実にあの長く鋭い爪にやられ、大ダメージを負うことになる。
戦法を変えなければ――
しかしあの身軽さだ。火炎放射などの遠距離攻撃もかわされてすぐに間を詰められてしまう。
大技の後に隙ができればダメージは避けられない。
考えろ。何か策があるはずだ。
「もう一発かましてやれ!」ザングースの主人はそう叫んだ。
ザングースは素早く間合いを詰め、爪を光らせる。
――この手でいこう。
「ヒート!」
振り下ろされたザングースの爪は、ヒートの左肩に襲いかかる――
その瞬間、ヒートの身体が一気に炎で包まれた。
地鳴りのような轟音とともにその炎はみるみるうちに巨大化し、ザングースを飲み込む。
しかし爪は左肩をわずかに切り裂き、ヒートは痛みで顔をしかめた。
「おい、ジャッキー!」ザングースの主人がわめいた。
ザングースは悲痛な叫び声を上げてもがいた。
やっとの思いで炎から抜け出すと、無茶苦茶に雪に突進して体温を冷まそうとのたうち回った。
そして、やがて動かなくなった。
それを見届ける前に、ヒートは炎を纏ったままラッタたちの方へ突進した。
ラッタたちは慌てて左右に飛び退く。
「や、やべぇ!」相手の一人が腰を抜かした。
オーバーヒートは戦況をひっくり返した。
「たたみかけるぞ! ケイタ!」
紀成です。現在布団の中です。携帯から書いてます。もふーん。
さて、長そうで短かったコラボ小説ですが・・。まず最初に。
No.017さん、快く許可してくださって、本当にありがとうございました!
他の人が作ったキャラクターを動かすのはほんと勇気がいるものですね。
というわけでちょっとした裏話を。
カオリは元々、レギュラーキャラとして出す予定は全くありませんでした。何か面白い感じのイメージで書きたいなーと思ってたらこうなりました。
今やファントムとして世界を回る日々・・でもないか。
彼女が今からどんな物を見つけて、何を確信して、どんな最後を向かえるのか・・
大体は出来てますが、これだとあまりにも救いが無いのでちょっと変えようかと思ってます。
でも救いが無いのもたまには・・
ツキミヤさんを知ったのは六年くらい前になります。まだ小学生でした←
鳩急行のイラコンのリンクから飛んだこのサイトで、初めてNo.017さんの存在を知りました。水彩画の美しさに呆然とした覚えがあります。ちなみに当時No.017さんを男だと思っていた事実。
本当すみません。
まさか当時はこんなことになるなんて思いもよらなんだ。
改めて、感謝です!
それでは、短編掲示板の方でまたお会いしましょう。
ありがとうございました!
『その後私はカオリを宿舎に連れて行った。意識は回復したが、あの男の言った通り、何も覚えていなかった。…いや、まるでそんなことが最初から無かったかのようだった』
所変わって、現在のやぶれたせかい。長い長い話がやっと終わろうとしていた。
『で、そのツキミヤとかいう奴はどうしたんだ?』
『去って行った。何処で何をしているのかも分からない。それ以前に、何故カゲボウズを大量に引きつれ、感情を食べさせているのか…』
『ふーん』
それだけ言うと、レントラーはそのまま眠ってしまった。
『カオリが何も無ければ、私はそれでいい。そう、思い出さなくていいんだ…』
カオリ…ファントムは、曇り空の下を歩いている。大通りの交差点の信号が青になり、駅とセンター街から一斉に沢山の人間が吐き出される。彼らの中に混じって、ファントムも歩く。
真ん中まで歩いた時、一人の青年とすれ違った。落ち着いた色合いの金髪、整った顔立ち。不思議な雰囲気を持つ者だった。
ファンは何も言わず、センター街の方へ歩いて行く。
灰色の空から、白い物が舞い落ちる。
最後の日の街に、雪が降って来た。
―THE END
風を切り裂くような音と、パリン、と何かが割れる音がした。
何が起こったのか分からないまま、ミスミは落ちた破片を拾い上げる。自分がさっきまで使っていた双眼鏡のレンズ部分が、木っ端微塵になって地面に落ちていた。
勿論、彼女自身が木にぶつけたわけではない。
「?」
しっくりこなかったが、今はカオリを探す方が先と考え、ミスミは再び走り出した。
ぞぞぞ、とカオリの足をカゲボウズ達が飲み込んでいく,もう身動きは取れない。別に逃げるつもりも無いのだが。這いつくばってまで逃げるなんて、カオリのプライドが許さなかった。
「やっと分かった。ツキミヤさんのカゲボウズが私のカゲボウズと違う理由。…こんな物食べさせてたら、元気になるはずだよね」
「怖くないのかい」
「…聞いてもいいかな」
反対に質問されて、ツキミヤが少し怒ったような表情を浮かべた。
「何?」
「分からない。分からないんだ。こんなことになっているのに、恐怖心はあまり感じない。でも、何故か別の意味での嫌な予感はする。このまま食べ尽くされて、気を失って、すぐヨノワールが来て、私を宿舎へ連れて行く。
そして次に起きた時私は…」
カオリの右目から、丸い雫が落ちた。
「ツキミヤさんのことを、全て忘れてるんじゃないかって」
「…そうだよ。今まで食べてきた人間は、皆この状況を嫌だとか、怖いだとか喚いていた。そういう感情を植えつけられても仕方の無いことなんだ。でもそれを思い出すことはない。だって怖いっていう感情も残らないくらいに喰らいつくすから」
そして、それを与えたツキミヤの存在も、忘れてしまう。
「いくらゴーストタイプが見える君でも、それは変わらない」
「じゃあ、もう一つだけ答えて」
腕まで飲み込まれた。並みの人間ならもうまともに話すことすらままならないだろう。
「…この気持ちは、何?」
人の話す声がして、ミスミは足を止めた。そのまま、一歩、二歩とゆっくり歩みを進めていく。
木に隠れて声だけを聞く。カミヤさんと、若い男の声がした。おそらく、昨日浜で話していた青年だろう。
ただ、昨日のような雰囲気は何処にも無い。コップに入れた水が、今にも溢れ出しそうな感じだ。
「私は、喜び、哀しみ、楽しみ、そして怒りや恨みの感情を知ってる。怖さも幼い時に経験したことがある。でも、ツキミヤさんに対する感情だけは分からないんだ。
怪我をしているわけでもないのに、胸がすごく痛くて、走った後でもないのにドキドキして、呼吸が苦しくてたまらないんだ」
ミスミは確信した。やっぱりカミヤさんは、この人のことを…
「忘れた方が楽になれる気がする。でも何故だろうね。
…貴方のことだけは、忘れたくないんだよ」
カオリが言葉を発したのは、それが最後だった。カゲボウズが、身体を全て飲み込み―
「!」
「えっ?」
「…」
三つの反応が重なった。何かが攻撃を仕掛けてきた。丸くて深い穴が、ツキミヤの後ろの木についている。
「これは…」
言う前にもう一発打ってきた。ツキミヤの髪の端が少し持っていかれる。木に隠れているミスミも、そっと覗き込んだ。スコープのような物を持っていればいいのだが、生憎そんな便利な物は持っていない。
だが、無くても別に構わなかった。カオリの身体からカゲボウズを引き剥がした後、それは実体を現した。
灰色の身体に、黄色い模様。赤い瞳の一つ目。
ツキミヤが、その名を呼んだ。
「ヨノワールか」
ミスミは、写真以外でヨノワールを見たのは初めてだった。図鑑で見るより大きく、そしてずんぐりむっくりしている。
(塀の上に座ってたら、ハンプティ・ダンプティみたい)
こういうことを考えられるあたり、この状況を楽しんでいる気がする。何かヨノワールが話している感じがするが、ミスミには分からない。
ツキミヤには、テレパシーのような物で話しかけてきた。口調は普通だが、凄まじい怒りのような感情が入っていることがよく分かった。
『傷つけてはいないな』
「ちょっと食べさせてもらったよ。甘すぎて喉の奥が焼けそうだ」
わざとらしく咳払いをするツキミヤを尻目に、ヨノワールはカオリを見た。特に苦しそうな様子も、外傷もない。
右目から何かが流れた跡はあるが。
「次に起きた時、全て忘れているよ。彼女は」
『思い出すことは無いのか』
「僕は、最初から彼女に会わなかった。彼女も僕という存在なんて最初から知らなかった。完全に抹消される」
『完全?…笑わせるな』
言葉が分からないミスミも、この時ばかりは身体が震えたという。一応ボールに入れて連れて来ていた二匹のポケモン達が、中で泡を吹いていた。
立っていられなくて、その場に座り込んだ。
『完全という物は、神にしか通用しないものだ』
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