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おっかしいなー
いつも自分で妄想してることなのに、他の人が書くと怖い怖い。
ツッキーこえー。
おいしいです。
いろんな意味で。もぐもぐ
最近連載板に通うのが楽しみです。ほんと
シロナ「言っておきたいことがもう一つ、最深部にいるウルガモスは強いから気をつけてね」
ダイスケ「情報提供、感謝します」
シロナ「どういたしまして」
ダイスケがコーヒー一杯一気飲みした後、シロナが引き出しから一枚の紙を取り出し、ダイスケに渡した。
シロナ「ちょっと面白い話があるけど、聞く?」
ダイスケ「ええ、いいですよ」
ワンダーブリッジ
一方、マリーはワンダーブリッジから海を眺めていた。
マリー「いい景色…。こんなスポットがあったなんて」
じっくり見つめた後、エレベーターに乗ろうとしたがエレベーターは来ない。10分、20分待っても来なかった。
マリー「おかしいな〜、ちゃんとスイッチ押したのに」
その時、マリーの耳元にこんな言葉が…
???「いくら待ってもエレベーターは来ないよ。だって、エレベーターのシステムは私が掌握したから」
マリー「…誰!?」
???「私を一人にしないで。あなたがここに来た理由は私に会いに来たのでしょう?」
マリー「ち…違う……私は」
???「お願い。私を一人にしないで」
サザナミタウン
シロナ「つい最近、新しくできたワンダーブリッジ。あそこでは奇妙なうわさがあるの」
ダイスケ「うわさ?」
彼は耳を疑った。どんなうわさなのか知る気満々だった。
シロナ「あそこでは、夕頃になるとエレベータのシステムが機能しなくなっちゃうの。整備員によると『ただのシステムトラブルだ』っていうけれど、実際は『幽霊がいるのじゃないか?』という話があるの」
ダイスケ「あのワンダーブリッジに、何か悲しい出来事があったのですか?」
シロナ「……ええ。だけど、それを表に出してはいけないから」
ダイスケは考えた。もしかしたら、予期せぬ事故でも起きたのか。と
ダイスケ「すいません、もうそろそろ行かなければならないので」
シロナ「ワンダーブリッジのほうは通らないほうが身のためよ」
そう言われるとダイスケは頷き、感謝の言葉を述べた後、別荘から出て行った。
シロナ「…さて、あの人、無事であるといいけど」
続く
ポケモンを廃人から守るため・・・。
199X年から201X年にかけて、ある青年とその父がポケモンを開放しようとたくらんでいた。
この年代にポケモンが心無い廃人によって傷つけられ、生態系を破壊していったおかげである。使
い物にならなければ捨てられ、一部のもののポケモンだけが強くなっていく。それが許せなかった。
そう、ポケモンと人間は完全に隔離せねば!と。
阻止派も大勢いたがどうだろう、みなも廃人同然の育成をしている。これが実態だった。
トモダチ?ペット?関係ない。ポケモンに人間の手など邪魔に過ぎない。
そしてその青年は神のポケモンを駆使し、実現させた。
幾多の阻止をも振り切って。
「ポケモンは、須くして独立して生きる生き物だ。これでもう・・・大丈夫だよ。僕の、トモダチ」
こうして、ポケモンと人間の共存という名の人間のエゴは終わった。
人間界にポケモンはいなくなった。1匹たりとも。
そして、その青年によって作られたポケモンのみが住む島、ソウハク島である。
人間から独立して2X0年後。ポケモンは人間にも劣らない文明を成し遂げた。
人間やアニメのニャース(笑)同様、人間の言葉を話せるようになった。
日本語も英語も、フランス語や関西弁だってしゃべってしまう(笑)。
ポケモンが人間に従うのではなく、ポケモンが独自に創造することができたのだ。
もはや最初から人間なんか存在していなかったかのように。
ソウハク島にもはや50万個体生息し、それがそれぞれ企業を立ち上げ、技術を磨き、教育を施し
、経済活動や政治、医療まで執り行っている。201X年当時649種族がいくつに増えただろうか。
そんな22XX年夏のことである。
人間界では地球環境云々となっている時期だと思うがソウハク島のある星では関係ない。名ばかり
でない持続可能な開発を続け、過度な温暖化を防止した。人間界で「流行っていた」ソーラー発電だ
って安くつけられるようになった。
そして夏といったら海!・・・と思っていたら大間違いである。ソウハク島では7月に高校の入学試
験がある。どこかの国では4月に入学をしていたみたいだがこの島(というか現に世界では多いんだ
けど)は9月に入学をする。
7月某日。平治(ゼニガメ)は半そでシャツを身にまとい、紺碧の肩掛けカバンを背負って若葉電
鉄に乗り込んだ。2両編成の車両である。現実団地駅から乗り込んだ。空気式のうるさいドアの閉ま
る音を残し、発車した。
平治は周りをきょろきょろとして、落ち着きがないように見える。冷房が冷や汗にかかってさらに
身震いしている。
「あぁぁ、今日落ちたら宋台行きじゃないか〜・・・。宋台はやめてくれ〜・・・」
受験票を大切に持ちつつ、こぶしを震わせていた。
若葉駅で東本線に乗り換え、3つ目の双葉駅に降りた。電車は30分に1本しかない。淡い緑で塗
ってある鉄筋コンクリの、とがった直角三角形の屋根が2つの駅舎だ。双葉をモチーフにしたのだろ
うか。そしてもう合格を知ったのか、喜んでいるのもいれば、落ちたのか、駅前のコンビニの前でう
ずくまるやつがいる。平治は足がすくみそうになった。
駅から歩いて6分ほど、平治が最後に受けた双葉智開高校が見えた。純白の校舎が並木道の向こう
に見える。この学校を受けたポケモンたちが見える。
平治の受験番号は『17』。
そして智開高校は定員56人に対し受験者81人。倍率は1.45倍と結構な倍率である。
数字が並んでいる掲示板にたどり着いた。平治はたて横斜めにに首と目を動かし、『27』という
数字を探す。1番から順番になっているのに、右往左往に顔を動かしている。
するとふと左上に目をやると『17』が見えたような気がした。平治は目をこすり、もう一度顔を
上げた。
―幼稚園のころから足が遅いとからかわれ、テレビゲームも弱かった。靴も隠された。
しかし小学校5年から始めた野球があった。土日のきつい練習も耐え、正捕手になった。中学でも
2年から正捕手になった。3年の2月まで野球にのめりこんだ。すばらしいチームメイトとともに。
だが勉強で少し遅れが出た。2年までは上位5パーセントに入っていて、学区ナンバー1の若葉東
高校も夢ではなかった。しかし3年12月ごろから手詰まりになってしまった。国語の読解が壊滅的
になった。同級生が学力を上げているのに、自分は・・・。
成績を上げて喜んでいる同級生を見るたびに自然とこぶしを作った。
「平治、東はきついなぁ」
担任がため息をついて言う。平治の目の前には成績表が置いてある。強烈な西日が照っていた。
「でも、僕は、行きたいんです!」
「まあ万が一落ちたら・・・II期はフタチ(双葉智開のこと。ある御三家に似ているがきにしない)でい
いんだな」
「・・・はい、覚悟しています」
「じゃあまずSPEで宋台と東条で出すから、そこを押さえてからだな」
SPEとはSurely Pass Examの略で、内申書のみで合否を決める。ソウハク島には例の青年の『ポ
ケモンにまで教育格差を作るとはけしからない。すべて公立で平等に』との理念から、私立高校がな
い。SPEはいわゆる滑り止めのようなものだ。
ソウハク島の高校入試はこうだ。SPEで2校まで出願できる。それは自分の実力より2〜3段階
下の高校しか選べず、その高校の数も限られる。これが6月初旬に行われる。ちなみにその学校に内
申が行く前に高校から送られる、生徒には非公開の審査基準を中学校で行うが、それを満たせばほぼ
合格する。
「おい平治、どっちも取れたぞ」
「ええ、まあ、本命には程遠いですが・・・」
「I期は東だな。がんばれよ!」
「はい!」
そのI期で見事に玉砕した。後で聞いた話によると若葉東をパスした連中は多くはSPEは取って
いないかSPEが出来る高校で最難関の桔梗高校だったそうだ。
そして、II期で単位制というのと綿密な進路指導がウリの少し気になっていたフタチを受験―
「あった!あったぞ!」
平治は軽くガッツポーズをした。ほっとしすぎたのかうれしいのか、足がほころびながらも受付で
手続き書類をがっちりと受け取るのだった。
(ポケ野球小説) フタチの球世主
ポケモンを廃人から守るため・・・。
199X年から201X年にかけて、ある青年とその父がポケモンを開放しよ
うとたくらんでいた。
この年代にポケモンが心無い廃人によって傷つけられ、生態系を破壊
していったおかげである。使い物にならなければ捨てられ、一部のもの
のポケモンだけが強くなっていく。それが許せなかった。
そう、ポケモンと人間は完全に隔離せねば!と。
阻止派も大勢いたがどうだろう、みなも廃人同然の育成をしている。
これが実態だった。
トモダチ?ペット?関係ない。ポケモンに人間の手など邪魔に過ぎな
い。
そしてその青年は神のポケモンを駆使し、実現させた。
幾多の阻止をも振り切って。
「ポケモンは、須くして独立して生きる生き物だ。これでもう・・・大
丈夫だよ。僕の、トモダチ」
こうして、ポケモンと人間の共存という名の人間のエゴは終わった。
人間界にポケモンはいなくなった。1匹たりとも。
そして、その青年によって作られたポケモンのみが住む島、ソウハク
島である。
人間から独立して2X0年後。ポケモンは人間にも劣らない文明を成
し遂げた。
人間やアニメのニャース(笑)同様、人間の言葉を話せるようになった
。
日本語も英語も、フランス語や関西弁だってしゃべってしまう(笑)。
ポケモンが人間に従うのではなく、ポケモンが独自に創造することが
できたのだ。
もはや最初から人間なんか存在していなかったかのように。
ソウハク島にもはや50万個体生息し、それがそれぞれ企業を立ち上
げ、技術を磨き、教育を施し、経済活動や政治、医療まで執り行ってい
る。201X年当時649種族がいくつに増えただろうか。
そんな22XX年夏のことである。
人間界では地球環境云々となっている時期だと思うがソウハク島のあ
る星では関係ない。名ばかりでない持続可能な開発を続け、過度な温暖
化を防止した。人間界で「流行っていた」ソーラー発電だって安くつけ
られるようになった。
そして夏といったら海!・・・と思っていたら大間違いである。ソウ
ハク島では7月に高校の入学試験がある。どこかの国では4月に入学を
していたみたいだがこの島(というか現に世界では多いんだけど)は9
月に入学をする。
7月某日。平治(ゼニガメ)は半そでシャツを身にまとい、紺碧の肩
掛けカバンを背負って若葉電鉄に乗り込んだ。2両編成の車両である。
現実団地駅から乗り込んだ。空気式のうるさいドアの閉まる音を残し、
発車した。
平治は周りをきょろきょろとして、落ち着きがないように見える。冷
房が冷や汗にかかってさらに身震いしている。
「あぁぁ、今日落ちたら宋台行きじゃないか〜・・・。宋台はやめてく
れ〜・・・」
受験票を大切に持ちつつ、こぶしを震わせていた。
若葉駅で東本線に乗り換え、3つ目の双葉駅に降りた。電車は30分
に1本しかない。淡い緑で塗ってある鉄筋コンクリの、とがった直角三
角形の屋根が2つの駅舎だ。双葉をモチーフにしたのだろうか。そして
もう合格を知ったのか、喜んでいるのもいれば、落ちたのか、駅前のコ
ンビニの前でうずくまるやつがいる。平治は足がすくみそうになった。
駅から歩いて6分ほど、平治が最後に受けた双葉智開高校が見えた。
純白の校舎が並木道の向こうに見える。この学校を受けたポケモンたち
が見える。
平治の受験番号は『17』。
そして智開高校は定員56人に対し受験者81人。倍率は1.45倍と結
構な倍率である。
数字が並んでいる掲示板にたどり着いた。平治はたて横斜めにに首と
目を動かし、『27』という数字を探す。1番から順番になっているの
に、右往左往に顔を動かしている。
するとふと左上に目をやると『17』が見えたような気がした。平治
は目をこすり、もう一度顔を上げた。
―幼稚園のころから足が遅いとからかわれ、テレビゲームも弱かった
。靴も隠された。
しかし小学校5年から始めた野球があった。土日のきつい練習も耐え
、正捕手になった。中学でも2年から正捕手になった。3年の2月まで
野球にのめりこんだ。すばらしいチームメイトとともに。
だが勉強で少し遅れが出た。2年までは上位5パーセントに入ってい
て、学区ナンバー1の若葉東高校も夢ではなかった。しかし3年12月
ごろから手詰まりになってしまった。国語の読解が壊滅的になった。同
級生が学力を上げているのに、自分は・・・。
成績を上げて喜んでいる同級生を見るたびに自然とこぶしを作った。
「平治、東はきついなぁ」
担任がため息をついて言う。平治の目の前には成績表が置いてある。
強烈な西日が照っていた。
「でも、僕は、行きたいんです!」
「まあ万が一落ちたら・・・II期はフタチ(双葉智開のこと。ある御三
家に似ているがきにしない)でいいんだな」
「・・・はい、覚悟しています」
「じゃあまずSPEで宋台と東条で出すから、そこを押さえてからだな
」
SPEとはSurely Pass Examの略で、内申書のみで合否を決める。ソ
ウハク島には例の青年の『ポケモンにまで教育格差を作るとはけしから
ない。すべて公立で平等に』との理念から、私立高校がない。SPEは
いわゆる滑り止めのようなものだ。
ソウハク島の高校入試はこうだ。SPEで2校まで出願できる。それ
は自分の実力より2〜3段階下の高校しか選べず、その高校の数も限ら
れる。これが6月初旬に行われる。ちなみにその学校に内申が行く前に
高校から送られる、生徒には非公開の審査基準を中学校で行うが、それ
を満たせばほぼ合格する。
「おい平治、どっちも取れたぞ」
「ええ、まあ、本命には程遠いですが・・・」
「I期は東だな。がんばれよ!」
「はい!」
そのI期で見事に玉砕した。後で聞いた話によると若葉東をパスした
連中は多くはSPEは取っていないかSPEが出来る高校で最難関の桔
梗高校だったそうだ。
そして、II期で単位制というのと綿密な進路指導がウリの少し気にな
っていたフタチを受験―
「あった!あったぞ!」
平治は軽くガッツポーズをした。ほっとしすぎたのかうれしいのか、
足がほころびながらも受付で手続き書類を受け取るのだった。
「何、あれ」
『分からん』
カオリの表情は青ざめていた。口調は至って冷静だが、中身が落ち着いていないことは自分自身がよく分かっている。
今まで生きていてこんなおぞましい物を見たのは初めてだった。黒い影が人間の全身を覆い、何かをしている。ツキミヤはまだこちらには気付いていないようだ。
「見つかったら同じ目に遭う気がするよ」
『逃げるか』
「待ち合わせ場所に戻っても、動揺していたら意味無いから」
沈黙する一人と一匹。重い口を開いたのは、カオリだった。
「デスカーン、約束してくれる」
『何だ』
「今から私が指示を出すから、それをした後、ヨノワールを呼んで」
『!?』
「お願い」
デスカーンには、カオリの言っていることが理解できなかった。否、理解したくなかったの間違いかもしれない。
『カオリ』
「私、はっきり言って怖い。こんな状況初めてだから、どうしたらいいかも分からない。分かるのは、ツキミヤさんが私達の力に負えるような簡単な力の人じゃないってこと。
断言してもいい。絶対デスカーンと私だけじゃ勝てない」
『ヨノワールに頼むのか』
「どちらにしろ、このままじゃ見つかる。行くよ」
有無を言わせない威圧感に、デスカーンは思わず頷いていた。
ザッと木の影から飛び出す。ツキミヤが少し驚いた表情でこちらを見る。
カオリが、叫んだ。
「シャドーボール!」
爆発音が響き渡った。それは、当然ミスミとヨノワールにも聞こえていた。
ミスミは走り出す。音の方へ。
途中何かとすれ違った気もしたが、そんなことは今はどうでもいい。
知りたいことは、一つだけ。
(何が起きてるの!?)
もうもうと土煙が上がる。風で着ていたジャケットがなびく。何も見えない。
口を手で押えながら、カオリは辺りを見回そうとした。
だが。
「!!」
体が動かない。足元が真っ黒だ。光も何も無い、ねっとりとした闇。何かが足元に密集している。吐き気とも言えるような何かがこみ上げて来て、冷や汗が額を流れ落ちた。
「見られちゃったか」
「…ちょっと気になったから」
荒い息を鎮め、カオリは向こうを見た。女が倒れている。
「何をしていた?」
「ちょっと食事をね」
「…食事?」
意味が分からないという顔をすると、ツキミヤは笑って、
「言い方が難しかったかな。彼らに食事をさせてたんだよ。その足元にいる彼らにね」
「…」
「じゃあ、問題。カゲボウズの好物は?」
こんな時に問題を出してくるツキミヤへの腹立たしさと、それを考える自分への情けなさに頭を抱えたくなったが、それどころではない。
カオリは今までに読んだ本の中から記憶をほじくり返す。私について来るカゲボウズ達は甘党で、キャンディが大好きだけど、普通に食べる物といえば…
そこまで考えて、ふと頭の隅にひっかかっていた謎が解けた。ツキミヤのカゲボウズと、自分に懐いているカゲボウズの違い。
「…食べている物が違う。彼らの主食は、感情。喜びとかじゃない。負の感情。恨み、妬みとか」
ツキミヤが拍手するような仕草をした。
「ご名答」
「そこに倒れてる人は?」
「ああ」
起き上がってくる気配は無い。胸が動いているため、死んではいないようだ。
「彼女は泊まっている場所で知り合ったんだ。只の一般人。会った時から彼らが騒がしくてね。押えるのが大変だったよ。弟を溺愛していて、その弟に彼女が出来たと知ってずっと恨んでいたらしい」
「…悪いけど、私は食事相手にならないと思うよ。だって特に恨みたいと思ってる奴なんて」
「恨みたいだけ、かい?」
ツキミヤが何を言いたいのか分からない。
「カゲボウズ達は言ってたよ。出会った時から、恨みはあんまり伝わってこないけど、怒りは伝わってくる。決して表には出さないけど、何かに対する凄まじい怒りが」
「カゲボウズ達に何をさせる気?」
その質問の答えは、ゾッとするような台詞だった。
「知ってる?感情って甘い味がするんだよ」
「ゆけ、ビードル!」
ダルマはまずビードルを繰り出した。崖の上にいるカラカラが、下にいるビードルを見下ろす形で、リベンジマッチは始まった。
「ふん、その勇気は認めてやるが、無謀が過ぎるぜ」
「何だと!?」
バトル開始早々、ダルマはカラシの挑発に耳まで紅潮させた。
「先手はもらった!ホネブーメラン!」
ダルマが挑発に乗った隙に、カラカラが先手を取った。カラカラは、自らの腕より太い骨をビードルめがけて投げ付けた。
「させるか!ビードル、後退だ!」
カラカラの動きを見たダルマは、すかさずビードルに指示を出した。ビードルはじりじりとカラカラとの距離を離した。
「……少なくとも、賢くはなっているようだな」
ビードルに当たらなかった骨をキャッチするカラカラを見ながら、カラシは言った。
「あたりまえだろ。ビードル、糸をはくだ!」
カラカラの次はビードルの攻撃だ。ビードルは口から糸を吹き出し、カラカラの骨に絡めた。
「よし、そのまま引っ張れ!」
ビードルは糸をたぐり始めた。一方カラカラは、引っ張るということもなく、ただ右手で骨を握っているだけである。次第にカラカラは引きずられ、立っている崖の端にまで到達した。
「よし、そのまま落とせ!」
ビードルの勢いは止まらない。そのまま首を右に大きく傾けようとした。
「……チャンスだ、振り抜け!」
ここにきて、カラシが動いた。カラカラは、左足を前方に出して右膝を曲げ、右手で骨を引き抜いた。すると、たるみ無く張っていた糸の束はいとも簡単に千切れてしまった。引き抜く勢いでカラカラの左足は宙に浮き、ちょうど右足立ちの状態になった。
「何っ!」
「そのまま骨ブーメラン!」
ここで、カラカラは左足を強く踏みしめた。そして体全てを使って骨を投げつけた。骨は空中を縦に一直線に割き、振り向きざまのビードルの頭部を直撃した。ビードルの体は山なりに飛び、ダルマに近づいてきた。
「うおっとおい、危ない危ない」
ダルマはすんでのところでビードルを受けとめた。ビードルの、その弾力ある胴体はダルマの手元で軽く跳ねた。ダルマは何も言わず、ビードルをボールに回収した。
「どうした、もう戦わせないのか?」
カラシは全てをわかっているかのような口振りでダルマに聞いた。ダルマは次のボールを片手に答えた。
「……どうも、一撃でやられたみたいだ。俺がビードルを受けとめた時、もう首が据わってなかったからな」
「なるほど、ならさっさと次のポケモンを出しな」
「言われなくても!頼むぞ、ワニノコ!」
ダルマは、自身の左側にボールを投げた。ボールからはワニノコが登場した。ワニノコは目を大きく見開き、ヒレをゆらゆら動かしている。また、カラカラとワニノコの距離は、ビードルとカラカラのそれより大分離れている。
「……何故だ、いつもなら躊躇なく目の前に出すというのに」
ダルマの普段通りではない動きに、カラシは逆に警戒した。一方、ダルマは胸を張って言った。
「へへっ、これならブーメランも届かないだろ?」
「随分と単純な発想だな。それならこれでどうだっ!」
カラシは、洞窟内に反響する拍手を1回した。すると、カラカラは天井を見上げ、骨を飛ばした。骨は天井すれすれの高さまで達し、加速しだした。あろうことか、届かないはずの骨はワニノコの目の前まで迫っていた。
「ヤバい、水鉄砲で打ち落とせ!」
ワニノコは、斜め上方から来る骨をめがけ水鉄砲を撃った。弾丸は骨に直撃したが、わずかに軌道を変えただけだった。骨はワニノコの左脇腹をえぐり、カラカラの手元に戻った。
「ワニノコ!」
ワニノコは左に1回転し、片膝をついた。ダルマは思わず唾をのんだ。一方、カラシは唾を吐いた。
「ちっ、仕留めそこねたか。だが、次で決める!」
カラカラは再び天井めがけて骨を投げ掛けた。やはり骨は弧を描き、徐々に加速してきている。
「くっ、しょうがない。ワニノコ、しばらく避け続けるんだ!」
ここからの展開は半ば一方的であった。ワニノコは迫り来る骨をかわし、すかさずカラカラが追撃を行う。この流れが延々繰り返されると思われた。
「くそっ、これで15回目……まだ避けるか!」
「ぐう、何だかワニノコ、疲れてきてるぞ。このままじゃまずいな……」
この長丁場に、ポケモン達はもちろん、カラシとダルマも疲れを見せ始めていた。カラカラの骨の軌道は徐々に鈍くなり、ほとんど落下の勢いだけで攻撃しているようだ。他方ワニノコは、避けるだけなのだが、最初に受けた一発がボディーブローのごとく効いてきた。
「ええい、往生際が悪い!」
カラシが叫んだ、その時だった。カラカラの骨が遂にワニノコに当たった。今度は正面だったが、スピードが遅いのが幸いした。ワニノコは両手をクロスさせて防御姿勢を取り、何とか弾き返した。だが、当然無傷ではない。ワニノコは骨が当たった部位をさすりながら揉んでいた。息も絶え絶えで、今にも座りこみそうだ。
「ふん、ようやく当たりやがったか。そのままトドメだっ!」
カラシはしてやったりの表情だった。カラカラは右肩を軽くほぐすと、最後の攻撃の態勢に入った。
「おいダルマ!このままだと前みたいに負けるぞ!」
「言われなくても分かってる!……しかし、いったいどうする?」
ダルマの手のひらから汗がにじんできた。この場で勝ち誇っているのはカラシとカラカラだけであった。
「……万事休す、か?」
ダルマの目から闘争心が消え失せ、彼は下を向いた。
「上を向くんじゃひよっこめ!」
突然、カラカラがいる崖の方から怒鳴り声が飛んできた。場にいた皆が声の出所を注目した。
「?誰だ!」
「わしじゃ!」
「この声は、おじいさん!」
「こら、ええ加減年寄り扱いするな!」
声の主は、先程腰を痛めたおじいさんだった。老人は、崖を慎重に降りて、ダルマに歩み寄ってきた。
「何を諦めておるのだ!ひよっこ程度の実力のお前さんが、そんな状態で勝てると思ったか!」
老人の顔は溶岩のごとく湯気を撒き散らしていた。ダルマは1歩後退し、言った。
「け、けど、もうワニノコが倒れるのも時間の問題。一体どうしろと?」
「……逆転じゃ」
「逆転?立場がひっくり返ったりするあれですか?」
「そうじゃ。大方、今まで『どうやったらカラカラの攻撃を避けられるか』ばかり考えてきたと見える。違うか?」
「うっ、確かに、言われてみれば心当たりが」
「上手くいく時は別に構わんが、そうでない時は同じ考えに固執しちゃいかん。『いかにして攻撃を避けるか』ではなく、『そもそもどうしてこうなったのか』を考えるのだ!」
「!……わかりました、やってみましょう」
おじいさんの叱咤激励に、ダルマの目に輝きが戻った。それに呼応して、ワニノコも鼻息を荒くする。
「ふっ、長話は終わりか?今度こそかたをつけさせてもらうぜ」
カラシは深くため息を吐いた。カラカラも再度骨を振りかぶった。
「そもそも、あのブーメランが当たらないように後ろに下がった。すると斜め上に投げた。天井すれすれを通り、ワニノコに……あれ?もしかしたら……!」
「何をごちゃごちゃ言ってやがる!カラカラ、これで決めろ!」
「させるか!ワニノコ、思い切り飛び上がれ!」
カラカラが骨を投げる直前、ワニノコは渾身の力で地面を蹴りあげた。その体は2メートル半にまで到達した。そして、ワニノコは手近な岩を掴んだ。これでワニノコとカラカラのいる高さはほぼ同じである。
「ちっ、気付きやがったか。だが、それでは何の解決にもなってねえな!」
「それはどうかな?」
ダルマはカラシの言葉をものともしていない。その態度に、カラシは眉を吊り上げ歯ぎしりをした。
「カラカラ、もっと上だ!何としても当てろ!」
カラシの怒号と同時に、カラカラは骨を天井へ投げつけた。その軌道は、最初の投てきより更に高く、このままいけばワニノコに当たることは間違いない。
「まだだ……あともう少し……!」
ダルマの呟きが漏れた時である。骨は天井まで到達し、何か、湿った地面を削る音がしたかと思えば、急に勢いをなくして落下しだした。
「な……カラカラ、気をつけ!」
「もらった!水鉄砲で撃ち抜け!」
カラシが全部言い切らないうちに、ワニノコから一発が放たれた。水鉄砲は、カラカラとワニノコと同じ高さで骨に当たった。激流のごとき水色の弾はそのまま骨を押し流し、遂にカラカラに一撃を与えることに成功した。その後、骨は崖の下に落下した。
「ぐっ、カラカラ!」
「な、なんだ今のは!?いきなりブーメランの勢いがなくなるなんて」
この展開に、カラシとゴロウ達はにわかにざわつきだした。
「へへっ、勝機はブーメラン自体にあったのさ!」
「え?」
「そもそもブーメランを斜め上に投げていた理由は何か?今考えれば、飛距離を稼ぐためだったんだ。その際、軌道は天井すれすれを通っていた。だから、もっと高い位置にいれば、天井に骨をぶつけるのを誘発できる。仮にそれを読まれても、攻撃をされなくなる。まさに起死回生の一手さ!」
ダルマはガッツポーズを取った。一方カラシは、苦虫をつぶしたかのような表情である。
「このまま決着をつけるぞ。ワニノコ、撃ちまくれ!」
ワニノコは、間髪入れずに水鉄砲を乱射した。今のカラカラには十分すぎる威力を持った攻撃を受け、カラカラは背後の壁に叩きつけられた。そして、そのまま地に伏した。
「……これは……」
まさかの事態の連続に、カラシはただただ目を疑うほかなかった。
「ふうう、何とか上手くいったか。よくやったぞワニノコ!」
激戦を制したダルマは、ワニノコに向けて手を伸ばした。ワニノコもダルマに向かって岩壁から飛び降り、ダルマの腕の中に納まった。すると突然、ワニノコが太陽のごとく輝きだした。
「うわっ!なんだこりゃ?」
思わずダルマは手を離した。光はどんどん強くなる。
「ダルマ様、これは進化じゃないですか?」
「進化?随分派手な演出だな」
ダルマ達が言い合う間にもワニノコの光は強まり、次第に形を変えた。
「おおお、これは!」
光が消えた途端、ダルマはうなった。背丈は倍近くになり、尻尾は太く、長い。腹には、黄色の皮膚が広がる中に水玉模様が見られる。
「アリゲイツになりましたよ!」
「アリゲイツか、良い名前だな。これからも頼むぜ!」
ダルマは進化したてのアリゲイツの頭を撫でた。アリゲイツはキバを見せて笑った。
「そういえば、カラシはどこだ?」
ふと、ダルマは辺りを見回した。近くには人の気配が全くせず、ダルマ達と老人しかいない。ただ、地面に麻の縄が散らばっていただけである。
「ふむ、あの少年は既に脱出したぞ。あなぬけのヒモでするするっとな」
「あ、おじいさんいたんですね」
「当たり前じゃ。お前さんみたいな危なっかしい若者は放っておけんからの」
「すみません……」
「それより、邪魔者はいなくなった。急いでヤドンを助けるぞ!」
「そういえばそうだった。行くぞ2人とも!」
「はい!」
「任せろ!」
一段落したところで、老人は洞窟の奥に突き進んだ。3人もすぐさま後を追うのであった。
午後三時半。カオリは、少し早く駐車場に来ていた。今のお供はデスカーンだけだ。
そしてその五百メートルほど後方に双眼鏡を構えている人物。
ミスミ。
そしてさらにその双眼鏡のレンズの中からカオリを見ているポケモン。
ヨノワール。
こうして見るとかなりカオスな状態だが、ミスミは当然ヨノワールがいることに気付いていないし、またカオリも一人と一匹に見られていることに気付いていない。
「少し早く来たけど…いいよね」
『遅れるよりはマシだろう』
そう言いながらも、デスカーンはツキミヤのことを信用できなかった。何故カオリに話しかけたのか。何故浜ではなく、この場所を選んだのか。
…そして。
何故、カゲボウズを引き連れているのか。
カオリのような過去を持つということも考えられる。だが、それなら人と関わるようなことはあまりしないだろう。ましてや、同じような境遇を持つ者と。
過去を話したくないのなら、なおさらだ。
そして、カオリの引き連れているカゲボウズと何かが違う。こう、イキイキとしているというか、もっとこう…
『気』が強いと言ったほうがいいか。
ガサガサッ
「!」
数分後、駐車場の裏にある森から何かが出てくる音がした。
「誰」
『人じゃない。立てる音が小さい。…ポケモンか?』
それは、茂みから出てカオリの姿を見ると、そのまま飛び掛って来た。
「おっと」
かわしたカオリにもう一度立ち向かおうとしたが、痙攣を起こして倒れてしまった。
「ヨーテリーだ」
『首輪がついている。トレーナーのポケモンか』
カオリは森の方を見た。夕方とあって、明るい場所と暗い場所の差が激しい。
「…行ってみようか」
その時のカオリは、ツキミヤに会う前の、冷静な目をしていた。
「カミヤさんが森に入ってく」
遠い場所でそれを見ていたミスミも、少し間を置いてから森に入っていった。もちろん、レンズを通して見ているヨノワールも。
夕方の森は不気味だ。光があまり入らない上に、静かすぎて不気味だ。
「今のヨーテリー、すごく怖い目に遭ったんじゃないかな」
『何故だ』
「主人を置いて逃げるなんて、ヨーテリーは普通しない。相手がポケモンや人なら立ち向かっていくだろうね。そう、敵が認知できる物ならね。
…でも、得体の知れない物だったら」
ポケモンは何かを感じる能力が人より遥かに優れている。自然災害の前には危険を感じて安全な場所へ移動したという例もある。
「見えないゴーストタイプに反応して吠えたりする場合もあるけど…。もっと別の何かかもしれない」
『…』
「デスカーンも…感じる?私も何か嫌な感じがする。寒気っていうか、もっとこう…吐き気?」
『吐き気は分からないが、とにかく負のオーラが出ているな』
「どうする?」
『慎重に行くぞ』
だが、慎重に行く必要など無かった。次の木を通り過ぎた瞬間、彼らは見てしまった。
二人の人間と、そのうちの一人に侵食する黒い影を。
生気を失った人間の目を。おぞましい負の感情を。
そして。
その情景を笑って見つめている、ツキミヤという名の人間を。
コトブキシティ郊外にある飲料工場。ここではおいしいみずやサイコソーダ、ミックスオレ、モーモーミルクなど、ポケモンや人間が喜ぶ飲み物を製造している。出荷された飲み物は各地の自動販売機やフレンドリィショップに並べられ、人間やポケモンののどを潤しているのである。
その日も警備員が見回りに当たっていた。この日の当直は2名。場内の見回りはほとんど終わっており、残るは飲み物を詰める瓶を保管する保管庫だった。
「保管庫、異常なし!」
警備員は懐中電灯を照らして保管庫の中をチェックする。誤認を防ぐため、警備員は必ず複数名で警備に当たっているのだった。
「こちらも異常なし・・・ん?」
もう1人の警備員がチェックしていたときだった。
瓶が保管されているケースが、妙にがさごそという音を立てていたのである。
「おい、何だ、あれは!?」
「どうした!?」
ケースが妙な音を立てているのが見られる。中に誰かいるのだろうか。しかしここは工場の中。部外者は立ち入り禁止のはずだが・・・。
と、ケースが音を立てて開いた。そ立てて開いた。その瞬間、警備員は自分の目を疑ったのである。
「!?」
それは、今まで誰も見たことがないものだった。ポケモンなのは間違いない。だが、そのポケモンは未だかつて誰も目撃したことのないものだったのである。
体長はおよそ1メートル50センチ程度。だが、それは異様なほどの甲殻で覆われていた。胴体の中央部に大きな目とおぼしきものがあり、さらに小さな目も2つ、3つと配置されている。
「こんなポケモン、見たことがない・・・。」
警備員の1人がつぶやく。だが次の瞬間、その謎のポケモンは驚くべき行動に出たのだった。
何と、ケースに並べられていたガラス瓶を奪っていったのである。
「何をするんだ!?」
しかし次の瞬間、謎のポケモンはケースいっぱいのガラス瓶もろとも姿を消してしまっていたのだった。
「おい、一体何が起きたんだ・・・!?」
「全く分からない。だが、今のは何だったんだ・・・!?」
警備員が目撃した謎のポケモン。それは、これから起こる悲劇の前兆に過ぎなかったのである・・・。
〈このお話の履歴〉
2011年2月6日、ポケ書内ポケボード・ラティアス部屋にて掲載。
隕石落下から数日、シンジ湖周辺では、警察部隊やポケモンレンジャーが賢明な捜索活動を行っていた。だが、活動の甲斐もなく隕石本体は未だに発見できていなかったのである。
「これだけ探しても見つからないって言うことは、隕石は落下するときに全部燃え尽きてしまったのかなぁ?」
チヒロがアスカに尋ねる。
「その可能性も否定できないわ。だけど、この近くに落ちたって言う情報は、たくさん寄せられているわ。だから、探せばきっと見つかると思うわ。」そのとき、上空に緑色のオーロラが光り始めたのである。
「あれは!?」
「オーロラだわ!」アスカが思わず空を見上げる。「シンオウでもオーロラが見られるのはかなり珍しいわ。どうしたのかしら。」
緑色のオーロラ。それはシンオウよりもさらに北の地方――現在のところゲームやアニメでもそれを明示する地方の名前は取り上げられていないが――でよく見かけられる。これは太陽からの磁気嵐を主な起因としているのだが、多くの場合、シンオウで見られるのは微弱な、それも赤いオーロラである。これほどはっきりと緑色のオーロラが見られるのはシンオウ地方ではかなり珍しいことである。
そこにキャプチャ・スタイラーにボイスメールが入る。
「アスカさんとチヒロさんですね。あなた方にお会いしたい方がいらっしゃるそうです。」
声の主は作戦本部のオペレーターだった。
「あたし達に?」
「はい。今回の隕石とオーロラの関係について、詳しくお話ししたいそうです。」
その人物がアスカ達にコンタクトする場所として指定したのは、作戦本部として設営されたテントの前だった。
アスカとチヒロがしばらく待っていると、白衣をまとった研究者とおぼしき人物が現れた。
「初めまして。私はナナカマド博士の助手をやっているコレキヨと言うものです。」
「あたしはアスカ。ポケモンレンジャーです。」
「同じくチヒロです。」
「今回の隕石ですが、どうも通常の隕石とは違う性質があると思うのです。」
「通常の隕石と違う性質・・・?」
アスカがコレキヨの言った言葉に思わず聞き返していた。
「はい。この隕石はこれだけ探しているというのに未だに本体が発見できない。おそらく普通の人が聞かれたら、大気圏に突入するときに本体のほとんどが燃え尽きてしまったと考えるのが筋だと思います。ですが、私はそうとは思いません。」
「と言いますと・・・?」
隕石が燃え尽きたというわけではない。コレキヨの言葉は1回聞いただけでは信じられるものではなかった。チヒロも思わず耳を疑う。
「私は、この隕石は落下した後、自力で移動しているのではないかと思うのです。」
「えっ!?」
アスカとチヒロは思わず互いの顔を見合わせていた。隕石が自力で移動する。そう言う話をこれまで聞いた人が、一体全体どこの世の中にいるというのだろうか。そもそも普通の人が聞いたら、このコレキヨと言う人物は頭でもおかしくなっているのではと考えるだろう。
「このマップを見てください。」コレキヨはそう言って、携えていたシンオウ地方の地図を広げた。「これは、ここ数日間に発生した、怪奇現象とでも言うべき出来事が起きた地点をまとめたものです。」
それは隕石のニュースと平行して、しばしば流されていることだった。――隕石落下と呼応したのか、シンジ湖周辺ではガラス瓶などがあっという間に消失しているという妙な現象が数件報告されていたのだった。ポケモンレンジャーもこの怪現象を解明するべく、一部のレンジャーをこのミッションに回していたのだったが、どういう訳か手がかりをつかむことができなかったのである。
「どう言う訳か知りませんが、おいしいみずやサイコソーダ、ミックスオレ、モーモーミルクなどを詰めるのに使うガラス瓶や、各所との通信に使う光ファイバー網が、なぜか跡形もなく消失するという現象が、ここ数日のうちに相次いで報告されているのです。」
さらにコレキヨは続ける。
「しかも、この地図を見ていただければわかるかと思いますが、消失ポイントが次第にコトブキシティに近づきつつあるのです。」
すでにコトブキシティの郊外にまでそのポイントは広がっていた。しかも不気味なまでにはっきりと方向が一致しているのである。このまま進むとコトブキシティの中心地に達しかねない。
「チヒロ、この隕石はただの隕石ではないかもしれないわ。気をつけようね!」
「うん。でもお姉ちゃん、あたし、ちょっと怖いの・・・。」
チヒロは表情では落ち着いていることを装いつつも、その心はどことなく不安に彩られていたのだった。
〈このお話の履歴〉
2011年2月6日、ポケ書内ポケボード・ラティアス部屋にて掲載。
シンジ湖に落下したとされる隕石。その本体を調べよと言うミッションを受け、ポケモンレンジャーのアスカとチヒロがシンジ湖を訪れた。
すでに夜は明け始めており、アスカ達のほかにも各地から派遣されたレンジャーや警察部隊などが隕石の調査に携わっていたのだった。
「ポケモンレンジャーのアスカです。」
「同じくチヒロです。隕石の調査のために派遣されました。」
「アスカさんとチヒロさんですね。どうぞ。」
そう言っている間にも上空は隕石の落下でおびえていたのだろう、ムックルやズバットなど、この周辺に生息する飛行ポケモンが群れをなしているのが見受けられた。
「空からも探した方がいいわね。」
「うん!」
アスカとチヒロはムックルやズバットをキャプチャする。他のレンジャーもそうした方がいいと判断したのだろう、上空を飛び交うポケモンをキャプチャして状況を判断しつつ捜索を行うのだった。
「昨夜、シンオウ地方・シンジ湖付近に、隕石群が落下したという情報が入りました。隕石本体を確認するべく、現在、警察部隊やポケモンレンジャーがシンジ湖周辺を捜索しています。なお現在、フタバタウンからマサゴタウン付近にかけては厳しい交通規制が敷かれており、とりわけシンジ湖周辺における一般人の立ち入りは、厳しく制限されております・・・。」
グリーンフィールドのポケモンセンター。マサト達はジョウト地方でも有数の観光地として知られるグリーンフィールドに滞在していたのだった。
「ポケモンレンジャーも派遣されてるんだね。」
テレビ画面を見つめながらマサトが聞く。
「そうね。」と、コトミも言葉を続ける。「あ、あれはアスカさんじゃないかしら。」
「本当だわ!アスカさん、それにチヒロさんも派遣されてるわね。かなり大がかりになっているわ。」
ミキも画面を食い入る形で見つめる。
「こうして見ると、隕石ってかなり大きかったのかもしれないね。」
「でもそれだけ大きな隕石だったら、すぐ本体が見つかってもおかしくないはずでしょ?なのに、未だに本体が見つからないって、不思議な気がするわ。」
マサトとコトミがテレビ画面を見つめて言う。確かに、それだけ大きな隕石が落ちたのであれば、本体がどこかしこに残っていても不思議ではない。だが、警察部隊やポケモンレンジャーの捜索の甲斐もなく、未だに隕石本体が発見されたという報告はなされていないのである。
「ちょっと待って!」ミキがマサト達の言葉を遮って言った。「画面の上、妙なものが浮かんでいる気がするわ。注意して見てごらん!」
その言葉に気づいてマサト達は画面を見つめる。
「・・・!!」
マサトとコトミは驚いて息を飲み込んだ。
何と、画面に映し出されたシンジ湖のライブ映像に、緑色のオーロラが映り込んだのである。
「妙だわ。シンオウでもあんなオーロラが鮮明に写り込むなんて言うことはほとんどないわ。」
ミキの言うとおりである。カントーやジョウトと比べれば緯度の高いシンオウ地方とはいえ、この時間帯にオーロラというのはごくまれである。しかも緑色のオーロラと言うこと自体が珍しい話である。そしてミキはさらに続けた。
「確かマサト君って、以前サトシ君達と一緒に冒険してたとき、ラルースシティでデオキシスとレックウザのバトルを目撃してたのよね(注:裂空の訪問者・デオキシスより)。あのときはどうだったの?」
「あのときは、デオキシスは仲間を求めていて、それでオーロラを交信手段として使っていました。ですが、今回のオーロラはデオキシスとは全く違います。少なくとも、ラルースシティのときはこんなオーロラは見たことがなかったです。」
「マサト、それは本当だったの?」コトミも聞き返す。「あたし、ラルースの出来事は小さかったのであまり覚えていないんだけど、復旧までにかなり時間がかかったって言うのは覚えてるわ。だけど、本当にデオキシスのときとは違うの?」
マサトはうなずいた。
「デオキシスではない、となると、どう言ったことが起こるのかしら・・・。」
ミキはどことなく表情が曇っていたのだった。
〈このお話の履歴〉
2011年2月6日、ポケ書内ポケボード・ラティアス部屋にて掲載。
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