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学校生活はまだ先があるからとかなんとか思っている内に足早に過ぎ去ってしまう。
入学式翌日から新入生オリエーテーションやら身体測定やら、そしてもちろん授業も進んでいく。
入学したてのクラスの子たちはまだ若干ぎこちない様子を見せているのが大半だった。
恐らくは彼らの背中を押す意味でこのような催し物があるのだろう。
タマムシ高校恒例の新一年生宿泊会が。
朝日が上ってまだ一、二時間経過するかしないかという頃。
タマムシ高校の正門にはどうやら一年生たちが集まっていて、
皆、ワイワイがやがやと井戸端会議のように隣と話していた。
よく見ると、五人で一つに集まっているようである。
ちなみに一人一人、学校指定の紺色のジャージを着用していて、
ちなみに胸元には『T』と『M』が格好良く組み合されているロゴがあった。
そして、その五人組の中には――。
「今日は皆ヨロシクな!」
アニメ・ゲーム大好き、特技兼趣味はイラスト。赤い色のふちを持つ眼鏡が眩しい日生川健太。
「ふわぁぁ……朝から元気ね。」
朝日を浴びて強くきらめくおでこをかきながら少し眠たげな朝嶋鈴子。
「え、え……と。よ、よろしくおねがいします……」
恥ずかしそうに朱色のツインテールを揺らしている光沢しずく。
そして――。
「……なんで、こないなところまで、おんどれと一緒やねん」
「しょうがないだろ。くじ引きが悪かったんだからな」
赤茶色の髪に白銀色のかんざしを挿していて、そして若干ご機嫌ナナメの天姫灯夢。
寝ぐせの髪を手でいじっている日暮山治斗。
以上の五人が一つに集まっていた。
「ウチを貧乏くじ野郎って言いたいんか、おんどれは!?」
そして、灯夢の怒声がこの場に集まった者たちにとって目覚まし時計となっていた。
[宿泊会一日目:朝]
「というわけですからね、皆さんね。
このタマムシの森を回って行きますとね、
チェックポイントがいくつかありますからね。
そこでハンコを押してもらってですね、またこの場所まで戻って来てくださいね」
バスに揺られながら約一時間半。
タマムシの森にたどり着いた新一年生たちは
いくつかのヴァンガローが立っている広場に集まって、
1−Fの担当で国語教師の長束吉男からウォークラリー大会の説明を受けていた。
ルールはいたって簡単。
タマムシの森にいくつか散らばったチェックポイントにハンコがあるので
それを全部押してきて再びこの広場に戻ってくるというものであった。
各班(一班五名)にはそれぞれ地図が渡され、
その地図の示す場所に向かうだけでよいというシンプルなものである。
タマムシの森は散歩コースと銘打って歩道用の道がちゃんとなされており、
若干、正規の道から外れたところにチェックポイントがあるのだが、
深入りしなければ心配ないぐらいであった。
「いいですかね、皆さんね。
チャックポイントの順番はですね、自由ですからね。
あっそうそう。成績上位者にはですね、
お楽しみがですね、 ありますからね。
それではですね、準備ができた班からですね、スタートしてくださいね」
長束の声で新一年生たちは皆立ち上がり、スタートしていった。
ごほうび効果かどうかは分からないが、
瞳の中に炎を立てている新一年生が多かった。
無論、この班も例外ではなかった。
「成績上位者には何がもらえるんだろうな!? オレ、フィギュアとかがいいんだけど」
「お菓子とか、そういうのじゃないの?」
目を光らせながら何やら期待している健太をやや呆れ顔で見る鈴子。
「ウチ、みたらし団子がええ!!」
「おまっ、バスの中でも食ってたじゃねぇか!?」
「これだからみたらし団子は罪やで。
何本何本食うてもウチを完ぺきに満足させることができへん」
「……そこまでみたらし団子が好きだったのか」
「いいか!? おんどれ! みたらし団子を馬鹿にすることがあったら許さへんからな!! 覚えとき!」
若干、暴走しがちな灯夢に相変わらず手を焼いている感じの治斗。
「……あ、あの、がんばりましょうね……?」
どうしたらよいのか分からない困り顔のしずくの言葉を先頭に治斗たちは森の奥へと入って行った。
カントー地方の有名な森といえばトキワの森である。
そしてタマムシシティでキャンプ地として利用されているのがこのタマムシの森である。
面積はトキワの森に比べればさほど広大というわけでもなく、
また人の手が入っていたりしているためか、
少なくともトキワの森よりも複雑ではないはずであった。
「……で、どうしてアタシたち迷っちゃったわけかしら?」
「なんでだろうなぁ?」
「……」
「……」
「……」
「ん? なんだよ、みんなしてオレのこと見つめちゃって」
「おんどれが勝手に動きよるからやろ!!」
灯夢の怒声が森の中に響き渡った。
チェックポイントを二つほど経過した、そこまでは順風満帆だった。
しかしここで事件が発生した。
目ざといのかどうかは分からないが、
健太が急にポケモンを見つけたと追いかけ始めてしまったのである。
治斗たちの方は健太を追いかけて、
ようやく健太が逃げられたと言いながら止まったところで無事に合流……した地点で、
一行は正規の道から大きく外れてしまっていた。
元来た道をたどって行けばいいという考えは
右に左に疾走していく健太を追いかけているときに捨てて来た。
「しょうがないじゃん。ポケモンがオレのことを誘惑するから」
あくまでも前向きな態度に笑顔を乗せた健太に
怒る気力をなくしたかのように鈴子が苦笑いしながらため息をついた。
「……でも……ここはどこ、なんでしょうか……?」
あちらこちらに顔を向かせながら、しずくが不安の色に上塗りされた声を出す。
朱色のツインテールも行き場がないと示すかのような揺れを見せていた。
トキワの森のように深くて複雑ではないとはいえ、森は森。
一瞬の迷いが不安の元になる。
そよ風が立てる葉っぱの小さくささやくような音に不安感をより一層あおられてしまう。
鈴子はこのままではラチが明かないと思ったかのように手をたたいた。
「ともかく、ここはなんとかして、
とりあえずバンガローの広場に戻って来ることだけを考えましょ」
弾けるような乾いた音とともに治斗、灯夢、健太、しずくは鈴子を見やる。
「考えるって方法は?」
治斗の素朴な疑問に鈴子はポケットから何やら取り出す。
赤と白に塗られたボール――モンスターボールだった。
「一応、野生のポケモンに襲われても対処できるように
班の中に必ず一人はポケモンを持っている人を入れるってルールがあったでしょう?」
人の手が通っているとはいえ、元々はポケモンの住みかであるタマムシの森だ。
野生のポケモンが出てきてもおかしくはない。
しかし、人間に警戒してるのか森の奥の方を住みかにしているポケモンが殆どを占めているかもしれないから、
遭遇率は比較的に低いほうである。
まぁ、たまに正規のルートの近くに顔を出す野生のポケモンもいるようだが。
野生のポケモンはおとなしいのもいるが、気性が激しく襲いかかってくるのもいたりする。
「アタシが一匹、ポケモンを持っていることは班を構成するときに教えたわよね?
あのとき、うっかりみんなに聞くのを忘れてたんだけど、他にポケモンを持っている子っている?」
それを聞いた灯夢は当たり前のように手を挙げながら。
「そないなことやったら、ウチはポケ――」
しかし、それは鈍い殴打音に間を入れられて阻止された。
治斗の『からてチョップ』によって。
綺麗に垂直にそして少し力を込められたソレによって。
ちなみに灯夢の自信満々な顔から何を言おうとしたかは……ご想像にお任せする。
「な・に・すんやねん!! おんどれは!!」
もちろん灯夢の中の何かが切れたのは言うまでもない。
いきなりの出来事に鈴子も健太もしずくも目を丸くさせていた。
「頭に虫が止まってたから仕留めてやろうかと思って」
「な!? おんどれはたわけモンかぁ!? そないな方法でやったら、どうなることぐらい分かるやろ!?」
嘘は人の口を饒舌(じょうぜつ)にさせる。
「分かっててやってみた」
「この、どアホがぁぁぁ!!!」
灯夢の怒りが爆発した、という言葉を見事に表現した音が森の中に鳴り響いた。
みぞ打ち一発。
だけど、これで面倒なことから回避することができたと
大きな任務達成を果たした気分になりながら――。
声にならない悲鳴とともに
治斗はその場にうずくまってしまった。
「……ともかく、話を戻して」
「……え、でも、朝嶋さん。……日暮山さんと天姫さんが……」
「あの二人はポケモンを持っていないってことで話を続けましょ!」
後味がかなり残る、みぞの痛みに悶絶(もんぜつ)している治斗を
見下すように顔を向けながら灯夢が何やら呟いていたが…………気にしない方向で。
「それで! 後の二人はポケモンを持っているかしら!?」
自分の方に注目させるように鈴子はハキハキとした声で健太としずくに訊いた。
「あ……わ、わたしは……持っていなくて……その、ごめんなさい……」
一方は申し訳なさそうに。
「オレはもちろん持ってるぜ!」
かたや一方は『どわすれ』を使ったかのように。
自分が今の状況を作り出した張本人であることを忘れているように。
笑顔で応えていた。
「ドーブル! 出て来い!」
健太がまっ白な球体に赤い線が入ったプレミアボールから出したのはドーブルだった。
ベレー帽のような頭に尻尾の先端で絵を描くことができるポケモンだ。
「へぇー。ドーブルだったのね、アンタの手持ちって」
「おうよ! こいつとは最高のイラスト仲間さ! なぁ? ドーブル!?」
「ブルッ!」
お互いの片腕を組ませてポーズを決める健太とドーブルの
熱い友情の熱に押されそうになりながらも
鈴子は先を続けた。
「それで……そのドーブルでこの状況をなんとかできそう?」
鈴子から健太に。
「なぁ、ドーブル。オレ達さ、道に迷っちまったみたいなんだけど。
なんとかできねぇか?」
健太からドーブルに。
「ブルッブルッ」
ドーブルが首を横に振って。
「無理だってさ」
「……言われなくても、ドーブルを見れば分かるわよ」
鈴子という『ふりだし』に戻った。
しょうがないという意味がこもった、ため息を止めることはできなかった。
ドーブルに非があるわけではない。
全ての元凶はどこからどう見ても健太なのだから。
しかし、ドーブルとしずくが触れあっている様子を笑顔で盛り上げている姿を見ると
あったはずの怒りも消えていってしまった鈴子であった。
「……とりあえず、アタシのポケモンを出すしかないわね。
出ておいで、ピジョン!!」
上に投げ出されたモンスターボールからピジョンが出てくるのを確認した鈴子は
すぐさま空で待機しているピジョンに指令を与える。
「ごめん、ピジョン。ここから近くに川があるところを探して来てくれる?」
「ぴじょ!!」
主である鈴子の頼みを聞いたのと同時にピジョンが飛び去っていく。
「……朝嶋さんのポケモンは……ピジョンだったのですね……」
「そういえば。なんのポケモンを持っているかまでも教えてなかったわね」
「なぁ? 川を探してどうすんだ? 水遊びでもするのか? オレ、コイキングすくいとかやりたいな!」
「この……時期での……水遊びはまだ、さ、寒いと……思いますよ……」
「わかったわかった! これから説明するから!」
収拾がつかなくなる前に鈴子は急いでリュックサックから一枚の紙を取り出した。
タマムシの森の地図である。
「いい? タマムシの森には一本の川が流れているでしょ?
それを沿って下って行けば、下流に着いて、近くの入り口付近に出るはずっていうコト」
「……なるほどです……これなら、その、か、帰れるのですよね?」
「多分、大丈夫だと思うわ。後は野生のポケモンに気をつけることね」
「なぁ、ウォークラリーの方はどうすんだ?」
「ブルッ」
「あのねぇ……今は戻るのが先でしょう?
このまま遭難なんてことになったらシャレにならないし……」
呆れ顔の鈴子はそこで一旦、言葉を切った。
「…………若干一名、重症かもしれないしね」
鈴子の瞳に映っていたのは
依然と見下すかのように治斗をにらみ続けている灯夢と
予想以上のダメージに両腕がみぞ辺りを離さないまま倒れている治斗であった。
No.017さん、いつもお世話になっています。
お返事が遅くなったのは放置体制が整っていたからとかでは決してありません。
ひでんマシンは人から貰うなど、なかなか特殊な方法でしか手に入れられないので、主人公以外のトレーナーだったらどんなようにしてあれを貰っているんだろうな、と思った結果がこれです。
師匠が出てくるのはまだまだ先になりそうですが、というか自分はちゃんと続きを書けるのでしょうか。あれれ。まあ気が向いたときに(そんな姿勢でいいのか?)。
そして鳩の異名を持つNo.017さんならば、空飛びの師匠を名乗るのも難しくないことでしょう。
雑用男へ愛の手を。
>ギャラドス柄のジャンパーのスキンヘッドがピィ出してきたの思い出したw
人を見かけで判断するのは八割ぐらいにしておきましょう、というお話でしtおや、だれか来たようだ
あーsage忘れた!
何か何も書いてないのに上がってしまって申し訳ない……。
実は、サトウキビさんは重要キャラの1人なんですが、いまいち目立たない……。今後の彼にご期待ください。
> 「まあ、そんなことはどうでもいい。ロケット団はポケモンを使って犯罪をしておる集団じゃ。かつてレッドという少年が潰し、その3年後に復活した時も潰されたのじゃが……。懲りないことに、またしても復活しおった」
ロケット団こりないwww
繰り返しはギャグの基本です。
> 「ぐぬおおぉぉぉ…‥!」
> 「落ちた……」
>
> 「落ちましたね」
>
> 「落ちてんじゃねーか!」
>
> 「まあ、予想通りの展開だな」
繰り返しはギャグの基本です。
大事なことなので二度言いました。
> 「ぐぐぐ、なんたることだ。このワシが2度も足を滑らすとは。これではヤドンが……そうじゃ、お前さん達!」
繰り返しはギャグの(ry
> 「大丈夫だ、ワシのポケモンを貸してやる。それに、下っぱは大したことないゆえ、新米でも十分勝てる」
さて、ギャグを繰り返すおじさんのポケモンとは。
言うこと聞くのかしら(
関係ないけどサトウキビさんていい名前ですよね。
>管理人様
こんばんは。批評いただき、どうもありがとうございます。
意見を述べられていただくと今後の作品作りの参考にもなると思います。
>「脚本形式?」
よくお気づきになられたと思います。
と言うのも、この作品は(繰り返しでしつこいかと存じますが・・・)元々あるポケモン情報サイトの中で運営されていた掲示板で連載していたものです。
スレッドが「アニメがこんな内容だったらいいな〜」と言うものだったため、自然と脚本形式となっていたのだと思います。
元をたどれば言わばアニメのオリジナルストーリーを考えようと言うスレッドだったと言うのも、脚本形式を選択した理由の1つだと思っています。
その当時はよもや件のサイトが無期限更新停止、掲示板も閉鎖となってしまうとは夢にも思っていませんでしたので・・・。放送スケジュールもダイヤモンド・パールにポケモンサンデーのままと言うのを見ると、時間が止まってしまったと言う気がしてならないです。
せっかく批評していただいたのに大した意見を述べることができず、逆に申し訳ありません。
ですが、今後スペシャルエピソードのどこかで普通の小説形式の作品を書くと言う構想は練っております。
繰り返しになりますが、批評していただきありがとうございました。今後ともよろしくお願い致します。
「ふぅーっ!やっと抜けられたぜ。おい見ろよ、ヒワダタウンだ!」
一番星が姿を現しだした時分に、ダルマ達はようやく洞窟から抜け出した。実に1日費やしたことになる。外の程よく乾いた空気に叫ぶゴロウに、ダルマは息も絶え絶えに言った。
「はぁはぁ、おいゴロウ、もう少しゆっくり歩け……。町にたどり着くまでにダウンするぞ、ぜぇぜぇ……」
「心配すんなって!あれを見ろよ!」
ゴロウは前方を指差した。ダルマがその先を見ると、何やら明かりが飛び込んで来た。はっきりとは確認できないが、煙突から登る煙も見える。ダルマからため息が漏れた。
「はぁ……やっと着いたな、ヒワダタウンに」
「えらく時間がかかったもんだ。早いところポケモンセンターに行こうぜ」
「そうですね……あれ?」
ふと右手を眺めると、ダルマは何やら妙な光景に気付いた。開けた空き地にはしご付きの井戸があり、その近くに和装の老人がいる。それだけなら何のことはない。ダルマを引き付けたのは、その老人が井戸のはしごに手足をかけようとしていた光景であった。
「む?誰じゃお前達。これは見せ物じゃないぞ!」
ダルマ達に気付いたのか、老人がはしごにかけようとしていた手足を戻し、怒鳴りながら彼らのもとへ歩いてきた。
「なんじゃ若い輩(ともがら)がこんな時間にほっつき歩いて……なるほど、トレーナーか。おおかた、つながりの洞窟で迷ったんじゃろう?顔に出ておるぞ」
老人は間髪入れずに喋り、皆の腰にあるボールを見ると声を出して笑った。少しして、その声が山びことなって帰ってきた。
「ところでお前さん達、名前は何て言うんじゃ?」
「僕達ですか?僕はダルマです。右隣の落ち着きのない奴はゴロウ、左の女の子はユミです。で、そこにいるサングラスをかけた人がサトウキビさんです」
「ふむ、皆旅のトレーナーのようじゃな。お前さん達、今晩の予定は入っておるか?」
「予定ですか?ポケモンセンターで休むくらいですよ」
「そうか。実はな……」
ここまで言って、老人は1度深呼吸をした。彼の着ている、町の名と同じ樋渡色の着流しに木炭のような黒さの帯は、見事に頭の白髪と調和している。また、小柄だが、袖口から垣間見える腕や足は筋骨隆々としており、物言わぬ圧力がひしひしとにじみ出ている。
「お前さん達、ロケット団を知っておるか?」
「ロケット団?何だか聞いたことあるような、ないような……」
「まあ、そんなことはどうでもいい。ロケット団はポケモンを使って犯罪をしておる集団じゃ。かつてレッドという少年が潰し、その3年後に復活した時も潰されたのじゃが……。懲りないことに、またしても復活しおった」
「そういえば、そんなこともあったな。あれからもう10年くらい経つから、ダルマが知らねえのも無理はない」
ダルマが首を右に傾ける側でサトウキビが呟いた。
「それで、そのロケット団がどうしたのですか?」
「そこじゃ!この町にはヤドンというポケモンがおるのじゃが、最近姿を見せなくなった。そして、入れ替わるかのように黒衣の集団が町に出入りするようになったのじゃ」
「それってもしかして……」
「ヤドンが人に変身したのか!?」
このゴロウの言葉の直後、季節はずれの北風が光のごとく通り抜けた。ダルマはさりげなくゴロウの足を踏みながら、話を続けた。
「つまり、黒衣の集団がロケット団で、ヤドンをさらったというわけですか?」
「中々鋭いの。10年前も同じことをやってたんじゃ。ヤドンのしっぽは美味いうえに高く売れるかららしいのじゃが」
「はあ。それで、どうしてあなたはこんな時間に出歩いているのですか?」
「……肝心な場面で鈍いの。ワシはこれからヤドンの井戸の中で、奴らをこらしめてくる。この中を出入りしとるからのう」
「ヤドンの井戸って、あなたが入ろうとしていた井戸ですか?やめといたほうが良いですよ。あの直径だと結構深そうですから、落ちたら大変ですよ」
「なに、心配するな。10年前も落ちたゆえ、警戒は怠らん」
「そうは言ってもですね……」
「それじゃあの、お前さん達。くれぐれも奴らに襲われんよう気を付けるんじゃぞ!」
老人は腰の帯を結び直すと、勢い盛んに彼の真後ろにある井戸へと駆け出した。ダルマ達はそれをただ無言で見送るだけである。
「……さて、俺達はセンターに行くぞ。バトルはしてないけど、俺達のほうは……」
「ぐぬおおぉぉぉ…‥!」
その時である。情けない響きが井戸の中からこだましたと思うや否や、何かが落ちたような音が聞こえてきた。
「落ちた……」
「落ちましたね」
「落ちてんじゃねーか!」
「まあ、予想通りの展開だな」
ダルマ、ユミ、ゴロウ、サトウキビは、各々好き放題言い合った後、皆一様に肩を落とした。
「どうしますか、ダルマ様?」
「しょうがないなぁ。早く休みたいけど、助けに行くか。あの調子じゃ、自力で帰れそうにないし」
「よし!そうと決れば、さっさと行こうぜ!」
「お、おい待てよゴロウ!」
ダルマは、はやるゴロウについていく形で井戸へと入っていった。その後に、ユミとサトウキビも続いた。
ヤドンの井戸は、その名の通りヤドンが住んでいる。大昔、ヤドンがあくびをすると大雨が降ったという伝説もある。今では水を汲むことができないほど水位が下がっている。はじめ井戸は円柱状だったが、徐々にフラスコのように広がり、地面に到達するころにはすっかり広場くらいのスペースができていた。
「おじいさん、大丈夫ですか?」
「ワシはおじいさんじゃない!っつつ……」
はしごを下りた所に、先ほどの老人が腰をさすりながら座っていた。彼の腰をダルマもさする。
「ほら、動かない」
「ぐぐぐ、なんたることだ。このワシが2度も足を滑らすとは。これではヤドンが……そうじゃ、お前さん達!」
「な、なんですか?」
突然老人が炎の灯った目でダルマ達を見ると、こう言い出した。
「こんな時間であれじゃが、お前さん達でロケット団を倒すのじゃ」
「俺達がですか?俺達みたいな新米トレーナーがいくら集まったところで、無謀にもすぎますよ」
「大丈夫だ、ワシのポケモンを貸してやる。それに、下っぱは大したことないゆえ、新米でも十分勝てる」
「でも……」
「今頼れるのはお前さん達しかおらん。それとも、お前さん達は困ったやつを見捨てられるのか?」
老人は力強く語ると、腰から1つのモンスターボールを取り、ダルマの前に差し出した。ダルマは、初め目をうろうろさせていたが、結局ボールを受け取った。
「……やりましょう。ただし、結果は期待しないでくださいね」
「おお、やってくれるか!ならあの横穴を進め。奴らの縄張りになっとるはずだ」
老人は右手でダルマ達の後ろを指差した。ダルマ達が振り返ると、そこには人2人ほどが通れそうな穴があった。穴は風を吸い込み、井戸に落ちた枯葉が物寂しい音を奏でる。
「で、これからどうするんだ?ダルマ」
ここで、サトウキビがさりげなく尋ねた。ダルマは少し頭を抱えたが、すぐにこう答えた。
「そうですね……では、サトウキビさんはおじいさんの介抱をお願いします。一通り済んだら応援に来てください」
「ふん、しょうがねえな。で、残り2人は?」
「ゴロウとユミは、俺と一緒に先に行きます」
「なるほどな。それじゃ、早いとこ行ってきな。俺も後から行く」
「ええ、よろしくお願いします」
ダルマはこう言うと、穴の奥に向かって一歩前進した。
「それじゃあゴロウ、ユミ、準備はできてるか?」
「もちろんだぜ!」
「私も大丈夫ですよ」
「よし、なら出発だ!」
ダルマが大股で歩を進めると、ユミとゴロウもこれに続いて進むのであった。
「気を付けるんじゃぞ、お前さん達!」
こちら(http://masapoke.sakura.ne.jp/ruru.html)でも解説してますが、
ツリー掲示板の上手な使い方をご紹介します。
■ツリー掲示板の上手な使い方
よくあるパターンとして
1話のレスで2話を投稿、さらに2話のレスとして3話を投稿、というのがあります。
このようにやってしまうと、どんどんスレッドが横方向に伸びていってしまいます。
・親記事
・第1話(親記事にレス)
・第2話(第1話レス)
・第3話(第2話にレス)
・第4話(第3話にレス)
・第5話(第4話にレス)
たとえばこの状態で 第4話に感想レスをつけた場合、
・親記事
・第1話(親記事にレス)
・第2話(第1話レス)
・第3話(第2話にレス)
・第4話(第3話にレス)
・第5話(第4話にレス その1)
・第4話感想(第4話にレス その2)
このような位置づけになってしまい、
4話に感想がついたのか、5話に感想がついたのかよくわからなくなってしまいます。
ですので、本編投稿において第○話はすべて親記事に返信にしてください。
すると……
・親記事
・第1話(親記事にレス その1)
・第2話(親記事にレス その2)
・第3話(親記事にレス その3)
・第4話(親記事にレス その4)
・第5話(親記事にレス その5)
このようにまっすぐ記事が伸びるのでわかりやすいですね。
次はこれに感想レスをつけてみましょう。
たとえば第4話まで、読んだ場合なら、第4話にレスする形で感想をつけます。
こんな感じになります。
・親記事
・第1話(親記事にレス)
・第2話(親記事にレス)
・第3話(親記事にレス)
・第4話(親記事にレス)
・第4話読みました!(第4話にレス)
・第5話(親記事にレス)
第四話の感想に作者の方がお礼のレスをします。するとこのようになります。
・親記事
・第1話(親記事にレス)
・第2話(親記事にレス)
・第3話(親記事にレス)
・第4話(親記事にレス)
・第4話読みました!(第4話にレス)
・第4話感想ありがとうございます!(第4話読みました!にレス)
・第5話(親記事にレス)
感想ありがとうございます!
お父さんの台詞を見てもらえるとは……予想外でした。この作品は某野球ゲームやら某裁判ゲームやらを意識しているので、自然とこんな台詞になったのかもしれません。
またお時間があれば読んでいってくださいね。
「……というワケで以上がですね、基本的なことですね。
まぁですね、皆さん。これからの高校生活をですね、謳歌して下さいね。
人生はですね、勉強だけではありませんからね。
あっそうそう。天姫さん。いきなり怒るのは体に悪いですからね。
以後、気を付けるようにして下さいね」
丸底型の眼鏡を掛けた男がそう言うとクラスの皆が笑い出す。
灯夢はバツが悪そうな顔を男に向けていた。
いい加減にしないと自分の中の何かを切らすといったような眼光に
男は背中に冷や汗をかきながら、
しかし顔には出さずにソレを微笑みの中に隠しながら続けた。
「それではですね。皆さん、今日はお疲れ様でしたね。
また明日、お会いしましょうね」
古さを感じさせる丸底型の眼鏡。
背は160センチぐらいで小柄。
少々メタボ気味の体型。
そして苦労を感じさせるちょっとしたハゲ頭。
1−Fの担任と同時に国語教師である長束吉男(ながたば よしお)の一声で
入学式の日の終わりが告げられた。
「……はぁ、今日はなんかとても疲れたで」
「そりゃあ、あんだけ怒ったら疲れるだろ」
「おんどれらがウチに余計な一言ばかり言い寄ってくるからやろ!」
「まだまだ元気じゃねぇか……」
『楓荘』の二階の自室に戻って来た治斗と灯夢は荷物を下ろすなり力なくその場に座り込んだ。
夕暮れが綺麗に映える帰り道では疲れとともに
新しい教科書という大荷物も手伝って、二人の口を閉じらせていたのであった。
ヤミカラスの鳴き声が遠くから聞こえてくる中、このまま眠ってしまいそうになるが
後片付けをしなければいけないという使命感にも似たソレが治斗と灯夢のまぶたに落ちることを禁じていた。
「あかん……。ともかく片付けせえへんと、このままやと力がカンペキに抜けて元の姿になってまう」
「…………」
「なんや? おんどれもさっさと手ぇ動かんさんか」
「いや、分かっているけど、お前ってやっぱり押し入れに住む気なんだな」
治斗が教科書などを机の上などに整理している一方、
灯夢が教科書などを押し入れの中に入れて整理している姿は誰が見ても新鮮だった。
大人一人程度だったらちょうど収まるぐらいの押し入れは二段式で、灯夢は上の段の方を使っていた。
中を覗いてみると本棚がちゃっかりと置いてあり、その中には教科書などが並べられている。
そして茶色のスタンド型の蛍光灯が枕元の方に鎮座(ちんざ)しており、夜中でも勉学などができるようになっていた。
「当たり前やろ? というより、おんどれ……分かっとると思うけど、ウチにことわりにもなく勝手に入ったりとかしたら
特大の『だいもんじ』でヤキ入れてやるからな?」
片付けをする手を動かしながら治斗をにらみつける灯夢の瞳の中には
『本気』という二文字が浮かび上がっているように見えた。
おまけに疲れによるイライラの相乗効果で余計に恐ろしく見えるから手に負えない。
治斗は黙ってうなずくだけにしといて、後片付けの続きに手を動かした。
「……ふぅ、なんかようやく落ち着いた気分やで」
「明日の持ち物はこれでよし……。後は寝るだけか」
今日やるべきことを全てやり終え、後は就寝だけとなった夜中。
ちゃぶ台に置かれた黒いラジカセからラジオが流れてくる中、
治斗は教科書を入れたリュックサックの口を閉めていて
一方、灯夢の方は押し入れの中でゴロゴロしていた。
ロコンの姿に戻っていたので中は比較的広く感じられ、快適そうなエビス顔を浮かべている。
「明日は遅刻しないようにしないとな……」
そう呟いた治斗に灯夢が自慢げな顔を浮かべた。
「ウチはいざっちゅうときは元の姿で『でんこうせっか』するから心配あらへんな」
「……じゃあ、起こさなくても大丈夫ってことだよな?」
「そしたら呪うで?」
「……思ったんだけどさ、こういうときだけソレってズルくねぇか?」
「いいやん別に……ウチは本当のことを言うとるだけやで?」
このときの灯夢の笑顔の意味をどう取るかはご想像にお任せすることにする。
治斗はため息だけ一回つくとラジカセの電源を落とし部屋の電気を消した。
それと同時に灯夢も押し入れの扉を閉めた。
どこからかヨルノズクの鳴き声がお疲れ様というように鳴り響いていた。
[宿泊会のお知らせ]
皆様ご入学おめでとうございます。
入学してまだ慣れないこともたくさんあるでしょう。
そこで毎年の新一年生には親睦を深める為に宿泊会というものを実施しています。
タマムシの森でのウォークラリー大会や協力して料理を作ったりなどして、
最終的にはこの一泊二日の宿泊会を通じて、
皆様の親睦が深められるように祈っております。
月光に触れられた、
治斗の机の上に置かれてある一枚の手紙が
ぼんやりと目を開けていた。
>で、描写の件ですが、キャラ紹介にかっこ書きで書いてあるので、それを理解していただければ問題ないと思うんですが・・・。
残念ながら、作品を読んでいるその時にキャラ紹介を見返したりしませんし、それを見ないとわからないのがどうかな、と。
読んでいる時にわかるのが重要ではないでしょうか。
> それに、書く視点が三人称なのであまり主語を変えると逆におかしくなるんですよね。
逆に三人称だからこそどんどん変えられるんじゃないかな、と私は思います。
たしかに乱発するとわかりにくいのはありますが。
ちょっとここはバランスがむずかしいかな。
まぁこれもあくまで一意見ですので(笑
執筆がんばってくださいね。
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