マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
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  •   [No.910] 心を繋いで 投稿者:大門 鋼生   投稿日:2012/03/19(Mon) 16:39:45     38clap [■この記事に拍手する] [Tweet]


    こちらは、ゲーム「ポケットモンスター ダイヤモンド・パール・プラチナ」のストーリーに沿いながら書かれている物語です。

    ストーリーの主軸となっているのはプラチナですが、ダイヤモンド・パールの要素やオリジナルを交えながら書いています。

    更新日等は不定期ですが、宜しければお読みいただけると嬉しいです!

    ごゆっくりお楽しみください!


    こちらの全ての記事には
    「描いてもいいのよ」
    「評価してもいいのよ」
    のタグがついております


      [No.908] アルセウスジム編 投稿者:照風めめ   投稿日:2012/03/17(Sat) 11:14:25     31clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

     四月になり学年も上がった翔たち。それぞれがマイライフを謳歌する中、翔たちは一之瀬さんにアルセウスジムというポケモンカードの非公式イベントに誘われる。
     能力騒ぎの終端が徐々に近づく……?


      [No.907] 第二章 投稿者:紀成   投稿日:2012/03/16(Fri) 15:38:43     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    少し霧が出ていたが、街中は比較的明るかった。丘の上から街を見下ろし、入り口を探すこと数十分。一行は石で造られた橋の前に立っていた。先ほどの場所から約二キロ。橋の前に、かつて細工されていたのであろう看板のようなものがポツンと置かれていた。それはたった一人で幾百年もこの街の前の道を見つめ続けて来たのだろう、と思わせる物であった。
    何度もタールのような物で塗りなおされた、街の名前。
    「……『faldown』フォールダウン、か」
    『聞いたことがないぞ』
    「多分電子機器の類を持ってても使えないだろうね」
    変な場所から出たにも関わらず、後ろの道は石だらけだった。風雨に晒されていたにしても足跡の類が全く無い。雑草は生え放題、完全に自然の状態になっている。
    「誰も来ていない。まあ来ようにも来れないだろうけど」
    『地図にも載っていないようだ』
    ほら、とモルテが差し出したのはつい最近更新された紙の地図だった。開発などで土地の移り変わりや古い街が消えていく現代では、五年に一度くらいは地図を書き直さなくてはならないらしい。まあ最も何百年も昔の話じゃあるまいし、今はコンピュータという便利な物があるのでそこまで苦労はしないらしいが……
    「マダムに頼まれて来た洞窟がこの辺り。マダムの地図にも載っていないな。
    『あの』マダムが知らない場所なんてあるのか」
    『彼女が外へ出た話なんて聞いたことがないぞ』
    「趣味の悪いペットは飼ってるけどね。何処から手に入れてきたんだか」
    本人がいないのをいいことに好き勝手言う一人と一匹。
    橋の下を覗き込むと、川が流れていた。川底まで見えるため水が透き通っていることが分かる。ここにはポケモンは生息していないようだ。
    「一先ず入るか。休める場所とかあればいい。ホテルがあればもっといい」
    『地図に無い街にホテルがあるか?』
    「希望的観測だよ」
    ファントムは歩き出した。穿いているブーツの踵がコツコツと音を立てる。そこでふと思い出した。
    「まだツナギとゴーグルのままだった」
    『着替えるわけにもいかないだろう』

    甲高い声が、明けたばかりの空に響き渡る。バサバサと羽音がして、頭上をマメパトとハトーボーの群れが山に向かって飛んでいく。朝食だろうか。
    歩いて分かったが、この街は四つの色の石畳によって分けられていた。先ほど見た丘のから真正面に向かって、右下が住宅街の白。右上が市場の赤茶。左下が入り口の灰色。そしてその上……というより左下までほとんど占めているのが、廃墟のように見えるゴミ置き場だった。馬車に付いていたであろう車輪、破れた布、煉瓦や瓦のような物が積まれている。ヒウンシティの裏通りとまではいかないが、少々臭かった。ちなみに石畳の色は物が置かれすぎているせいで見えない。
    「どこの街もあんまり変わらないもんだね」
    ファントムが廃棄物の中の車輪を持ち上げた。ツナギとゴーグルのせいで似非発明家のように見える。
    『使えそうな物はないな』
    「こんな閉鎖された街に住んでるんだ。別の場所から何か仕入れることもできないし、汚れても壊れてもまた直して使うんだろ」
    歪んだ車輪を元に戻した時、後ろでガシャンという音がした。続いてカゲボウズの一匹がふんふんと鼻を動かして叫ぶ。
    『ワインのにおいがするぞ』
    振り向いて――理由が分かった。紫色のボトルが落ちて粉々に割れ、中身であるワインが石畳を伝って広がっている。その側には紙袋とフランスパンであろう細長いパンが落ちていた。
    そしてその側に立ち尽くしている女。女というよりかはゴムマリと言った方がいいかもしれない。かなり太っている。首が身体に埋まっているように見えた。
    だが気になったのは、その女が言った言葉だった。『どうして――』 何がどうしてなのか。一体全体何をそんなに驚いているのか。顔面蒼白になっているのか。
    「……どういうこと」
    『分からん。分からんが……』
    内容は読めないが、どのような状況に置かれているのかは嫌でも理解できた。コンマ数秒で石の礫が自分のゴーグルに直撃したからだ。幸いにも目に突き刺さりはしなかったが、それでもゴーグルは粉砕した。
    ゴーグルを外し、周りを見ればそこに住んでいるのであろう人間達に囲まれていた。恐怖、畏怖、怯え…… どんな言葉を並べても言い尽くせないくらい、視線は突き刺さるものだった。だがそんな状況下においても一つだけ分かったことがある。
    若い娘が、いない。
    「モルテ」
    『何だ』
    「逃げるぞ」
    あっという間の出来事だった。走り出した途端、石や物が飛んでくる。いくらかかわしたが、それでも当たる物は当たった。そして走っていて分かったこと。この街は見かけより入り組んでいて、ちょっとした路地が変な場所に繋がることがあった。だから、路地の側を走っていていきなり右腕を掴まれて引き摺り込まれたことも…… この場合、引きずり込んだ相手に感謝するべきなのかもしれない。
    「いった」
    「早くこっちに。大丈夫。この地下道は誰も知らないの」
    言われるがまま屋内に入れられた。民家の一つのようだ。路地側に入り口があり、自分が逃げてきた方にドアが開くようになっている。自己紹介をしないまま、相手はキッチンの床にある蓋を開いた。そこから階段になっていた。
    「足元に気をつけて」
    『いいのか』
    モルテが口を出してきた。私も少し考えた後、首を振った。
    「いいわけないだろ」
    『じゃあ何故』
    「理由がよく分からないままなのは、両方同じだ。追いかけられるよりはこちらの方が断然いい」
    『……』
    納得いかない顔のモルテを無視して歩いていくと、灯が見えてきた。蝋燭の乏しい灯だが、地下道の一部分を照らすには十分だった。
    側に石のテーブルと椅子があった。きちんと背もたれも備え付けられている。相手が座るように促した。
    「色々あるけど、とりあえず一番初めに聞きたい。
    ……君は何者?この街の住人なんだろ」
    灯が目の前の人間の顔を照らした。影がそっと被っていたローブを外した。その時驚いたのは、モルテ達だけではない。目の前に鏡があるのかと思っただろう。

    その顔は、ファントムに瓜二つだった。


      [No.906] 第18話「知識の山」 投稿者:あつあつおでん   《URL》   投稿日:2012/03/16(Fri) 09:15:36     71clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    「よし、そろそろ休憩するか」

    「トホホ……勉強は大変だよ」

     10月10日の土曜日、午後3時。俺はいつも通り訓練をこなした後に、誰もいない図書室で勉強の面倒を見ていた。ちなみに、訓練ってのは技術を教え込むことだ。が、これと違って練習は、自ら技術を体得するために取り組むことである。まだまだイスムカ達はひよっこだからな、俺が訓練させていると言うわけだな。

     話はさておき、イスムカとターリブンの勉強不足には困ったもんだ。教科書は落書きしか書いてない、ノートにも自主学習をした様子は微塵も無い。問題集に至っては見るまでもなかった。だから今は基礎から徹底的に叩き込んでいる。まだ1年生だから、矯正する余地はいくらでも残っている。……本人達はだいぶへばってきたみたいだが。

    「それは毎日やってないからですよ。毎日やればイスムカさんもできるようになります」

    「そうなのかなあ」

     ラディヤの正論にも、イスムカは暖簾に腕押しと言った有様だ。仮にも今回の試験のトップの言葉を聞き流すとはな。仕方ねえ、俺からも言っておくか。

    「全くもってその通りだ。ポケモンも学問も、繰り返し鍛練することによってのみ上達の道が開かれる。俺だって、ただのほほんとして上手くなったわけじゃねえしよ」

    「それはそうでマスが、毎日筋トレと勉強だけじゃ飽きるでマス」

    「……いちいちわがままな奴め。仕方ねえ、たまには読書でもするか?」

    「読書? 何を読むんですか?」

    「そうだな、これなんかどうだ?」

     俺は書棚から適当な本を見繕い、イスムカに渡した。イスムカは題名を読むなり首をかしげる。

    「『ロウソクの科学』? どんな本ですか?」

    「簡単に言えば、児童向けに書かれた、科学の面白さを伝える本だ。お前さんにはまだ専門書は早いだろうからな」

    「フフフ、イスムカ君には子供向けがお似合いでマスか。じゃあオイラは……」

    「ああ、ターリブンも同じのを読んどけ」

     俺はターリブンの目の前に同じ本を置いた。なぜ同じ本があるのか気になるが、まあ良い。

    「……だそうだよターリブン」

    「うわーんでマス!」

     そしてこの掛け合いである。全くお気楽な奴らだぜ。

    「じゃあ、ラディヤにはこいつだ」

     2人とは別に、ラディヤに1冊の本を示した。彼女は表紙を眺める。タイトルとモンスターボールが印刷された、簡素な表紙だ。

    「これは……『ポケモンバトルの基礎』と書いてますね。私は違うのですか?」

    「ああ。お前さんは試験でもべらぼうに結果が良かったからな、そのご褒美だ。部活にも精力的に取り組んでいるし、当然と言ったところか」

    「ありがとうございます。部活は……最初はあまり好意的に思っていませんでしたが、入ったからには手を抜かないようにと心がけていますので」

    「感心だな、ここまで良くできた娘も珍しい。男共も見習えよ」

     頭をかいている彼女を見て、俺は何度もうなずいた。彼女は部を支える程成長するだろうな、考え方が子供じゃねえし。やりたいことは全力で、嫌なことでも力を入れる。イスムカ達にもそうなってほしいから、彼女を手本にしろとは言ったが……。

    「き、厳しいでマス……。これは男女差別でマス、セクハラでマス!」

    「おいおい、セクハラはなんか違わないか?」

     2人の反応はこの有様だ。まだまだ先は長いな。ちなみに、セクハラとは性的嫌がらせのことで、差別してるわけでもないからイスムカの指摘は正しい。

    「そいつは失礼な話だな。俺は誰にでも厳しいが、ちゃんとしてる奴を評価しているに過ぎない。自分の怠慢を棚に上げる奴なんざ、生涯モテねえぜ」

     俺の口調はやや熱を帯びてきた。こういうところはきちっとしとかないといけねえからな。

    「子供も大人も、大した差は無い。あるとすれば理解の進度だ。だから俺は、やり方こそ子供向けだが、中身まで子供向けにすることは絶対にしない。だからしつけも手を抜かない。今渡した本も、その一環と言うわけさ」

    「な、なるほど。なんだか、上手くまとめられた気がするけど……まあ良いか」

     そうそう、子供は素直が1番だ。まあ、まだ不服そうに頬をふくらましているターリブンもいるのだが。気にすることでもないな。

    「それじゃ、早速読むとするか。1度読み始めたら止まらなくなるぜ」


    ・次回予告

    ある日、家路についていたらあるおっさんに出会った。いつぞやの警官だ。そのまま俺は、おっさんの世間話に付き合わされることになってしまうのであった。次回、第19話「縁側の駐在」。俺の明日は俺が決める。


    ・あつあ通信vol.84

    この話で紹介した『ロウソクの科学』という本は、実在します。独学の科学者ファラデーが著した児童向けの本で、科学がいかに素晴らしいものかを語っているそうです。

    皆さんの好きな本はなんですか? 私は伝記が好きなんですよね。教科書に載るような偉人も色々失敗続きだと理解できる上、ネタ作りにもってこいですから。味のあるキャラなんだよなあ。小学生の頃読んだ漫画の伝記は今でもいくつか覚えてますよ。


    あつあ通信vol.84、編者あつあつおでん


      [No.905] 第一章 投稿者:紀成   投稿日:2012/03/15(Thu) 21:22:35     36clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    キラキラ光る、溶けない氷。いや、溶けない氷っていう道具があるのは知っていたが、それよりもずっとその表現が似合うと思った。石と呼び名がついているのに、それは薄暗い洞窟の中で自ら輝いていた。
    ピッケルをツナギのポケットに押し込むと、ファントムはそっとそれを引っ張り出した。サクッ、といういい音がして右手に納まる。スコープで状態を確かめる。間違いなく、水の石だ。
    ふう、と息を吐いて洞窟の中を見渡す。前方五十メートルほどにカゲボウズ達が集まって、ナップザックを漁っていた。やる気あるのかと思わず頬が引きつる。
    『ファントム、こちらもあったぞ』
    「何?」
    「炎だ。ほら」
    モルテが差し出した手の中に、オレンジ色の透き通った硝子のような塊がごろりと転がっていた。何度見ても硝子という表現が相応しいと感じてしまう。石なのに。まあ普通の石とは比べ物にならないくらい、貴重な品だが……
    ゴーグルを外し、髪をかき上げる。オールバックにした姿が新鮮に見えた。
    「ゴビット達を連れてこなくて良かった。あの二匹がいたら、洞窟が崩れる」
    『しかし驚いたな。イッシュの外れにこんな場所があったとは』
    「見つかってもそうそう来れないだろうね。何せ、常識人なら来る気も起きないだろうから。こんな……
    天然の迷路なんて」
    彼女の頬を冷や汗が流れた。モルテが悲しそうにうつむく。そう。一人と一匹+αは現在道に迷っていた。
    出口の見えない洞窟の中で……

    始まりは、四時間ほど前に遡る。黄昏堂の使いがファントムの元に突然やってきた。『頼みたいことがあるから至急来てくれ』わざわざ使いを出さなくても、丁度今から向かうつもりだったのだ。鍵を使わなくても入れる時間だったし、最近面白いことがないからパズルでも戦わせてみようかと考えていた。
    だが、来た途端に道具一式と服一着を渡された。状況が飲めない自分に、マダムは言った。
    『ツナギのポケットに入れた地図の場所に行って、進化の石を掘って来てほしい。知る人ぞ知る名所で、透き通った石なら何でも手に入る。水、炎、雷、闇、光。そしてめざめ。別に悪い話ではないはずだ。
    あまった分はお前が持っていてくれて構わない』
    自分の利益になるなら構わないか……と珍しくあっさり承諾してしまったことが、運の尽きだった。というよりあのマダムがこちらに利益のある話を持ってくるはずがないのだ。
    石は見つけた。マダムが前述した石のうち、四種類――闇の石と光の石以外は簡単に見つかった。岩壁を掘れば簡単に出てくるのだ。どれも純度が高く、ブラックシティに持って行けば高値で売れることだろう。
    そんな不純な思いが洞窟に嫌われたのだろうか。
    ケースがパンパンになった頃、ファントムは連れて来ていたポケモン達と共に道に迷ってしまったのだ。だが彼女こそ馬鹿ではない。きちんと壁に道しるべを付けてきていたのに、いくら歩いてもその壁にたどり着かない。
    腕時計を見ると、とっくに深夜を回っていた。だが一体現在地が何処なのか分かるまで眠るわけにもいかない。モルテに支えられながら、ファントムは眠い目を擦りひたすら洞窟を歩いていた。発狂しなかっただけ、彼女の精神力がどれだけ高いかが分かる。ナップザックの中で石同士がぶつかり合い、ごつごつと音を立てていた。
    次にきちんと意識が戻った時、彼女はモルテにおぶられていた。慌てて降り、何がどうなったのかを聞いた。
    『二時間ほど前か。流石に限界だったのか、崩れ落ちてな。そのまま土の上に放っておくわけにはいかないからおぶって移動していたんだ』
    「モルテは大丈夫なのかい。……けっこう重いよ、私」
    『残業に比べればかわいいものだ。それに、道は見つかったぞ』
    あっけなかった。モルテの指差す先に、連れてきたポケモン達が群がっていた。鼻を動かしてみる。微かに……ほんの微かに、空気の匂いがした。どうやらここだけ壁が薄いらしい。
    『この壁の向こうが外らしい』
    「こんなことなら、片っ端から壁を壊していけばよかったな」
    軽口を叩けるだけあって、彼女の体力は大分回復していた。モルテのきあいだまと、ゲンガーのシャドーボールで少しずつ崩していく。隙間から冷たい空気が入って来た。
    全員通れるくらいの大きさになった時、彼女は一体ここが何処なのか分かった。山の岩壁から出てきたらしい。足元には花や草が咲き乱れ、頭上を木々が覆っていた。
    「変な場所まで来ちゃったな」
    『私もこんな場所は見たことがないぞ。どうする』
    「……!」
    ニ.〇の目が、木々に隠れた灯を見通した。見ればその灯の周りにも同じように灯が集まっている。村だろうか。どちらにしろ、有り難い物が見つかった。空と時計を見れば、もうじき夜が明ける時刻だ。
    「一先ず行ってみるか。運が良ければ宿と場所の名前が見つかるだろ」
    『ああ……』
    モルテの声に、ファントムが振り返った。
    「どうした」
    『妙な気がしてな。灯が集まっているということは、少なからず人が多い場所――村や街のはずだ。だがこんな場所、私は一度も来たことがないし、ギラティナの情報網にも引っかかったことがない。
    どういうことだろう……』
    「君がそこまで言うなら、尚更行ってみたくなったよ」
    好奇心を刺激してしまったらしい。モルテは頭を抱えた。

    街が全て見渡せるような場所に来た時、夜は明けていた。朝日が向こう側の山から昇り、建物を照らしていた。
    煉瓦造りの建物だった。道は石畳。早朝の馬車が、街中を走っていく。ギャロップを使っていた。キンと冷えた空気が、ファントム達を包み込んでいる。
    「随分古風な街だね」
    『とりあえず、降りれる場所が何処にあるのか探さないとな』
    「ああ」


    時に、十二月二十九日。早朝六時。
    人知れず時を歩んできた街へ、一人の女が入り込んだ瞬間だった。


      [No.904] Re: 闇の王と光の姫君 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2012/03/15(Thu) 20:47:12     30clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    プロローグ読みましたよ。昔話っぽい感じが出てて良いですね。

    しかし、本編が始まる前に登場人物の紹介があったのはちょっともったいなかったですね。親記事から読む人にとってネタバレになっちゃうのが……。連載板のガイドラインにも「人物紹介は本編が始まってから」とありますし、これらは伏せといた方が良いと思います。

    とはいえ、紀成さんの看板キャラクターによる連載は大変楽しみです。本編が来るのを期待してます!


      [No.903] プロローグ むかしばなし 投稿者:紀成   投稿日:2012/03/15(Thu) 20:28:40     34clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    むかしむかし なんびゃくねんもむかし きみのおじいさん おばあさんが こどもだったころよりむかし
    やまのなかに うつくしいまちがあった ちずにのることのない ちいさなまちがあった
    ひとびとはまわりのやまから きのみやみずをとってきて しずかにくらしていた
    ときどきべつのまちにいき じょうほうをもらうこともあった

    あるとき そのまちにびょうきがりゅうこうした
    こどもたちがたおれていく ふしぎなことにこどもしかかからなかった
    ちょうどそのじきに ほかのまちからたびびとがやってきた
    たびびとはいった 「わたしのもっているくすりをつかってください」

    そのくすりを かれらはみたことがなかった
    それもそのはずだ かれらがつかうのは じぶんでつくったものだけ
    かがくがはったつして カプセルいりのくすりがとかいではつくられていた
    たびびとのくすりによって こどもたちのびょうきは あっというまになおった

    だがまちのひとびとは たびびとにおれいをいうどころか ぼうりょくをふるった
    こわかったのだ えたいのしれないなにかで こどもたちをすくわれたじじつが
    なぐる けるをくりかえし とうとうたびびとはしんでしまった
    だがさいごにかれはいった

    「かならず かならずわざわいがおきるぞ!こうかいしてもおそい!」

    そのことばがかれらのみみに こびりついた

    それからふつかご ひとりのむすめがあくむにうなされた
    てのほどこしようがなく たったすうじかんでしんだ
    ひとびとはそのとき はじめてことのじゅうだいさをしった
    あのたびびとが ひとではなかったとかんがえた

    それからそのまちでは いちねんにいちど かならずひとりのむすめがしぬ
    きのうまでげんきだったものでも そのひになると かならずしぬのだ
    やがてかれらはそれを やみのおうとよぶようになった
    このまちにわざわいをおこさないために むすめをいけにえにする

    そのむすめを ひかりのひめぎみとよんだ

    だれももう ていこうしなかった
    ていこうしようにも えたいのしれないなにかがあいてでは なにもできない

    だが ひそかにしんじていた しんじていたかった
    いつのひか だれかがまちのそとからやってきて こののろいをおわらせてくれると



    そして そのひはやってくる――


      [No.902] 闇の王と光の姫君 投稿者:紀成   投稿日:2012/03/15(Thu) 20:03:14     34clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    こんにちは、紀成です。そろそろ改名しようかと思ってる今日この頃。あんま変わらないけどさ……
    時越えの懐中時計編が全くネタが出てこないので、先にこちらをはじめようかと。
    きちんと終わるかどうか怪しいところだけど、お付き合いいただけたら嬉しいです。

    メインキャラ

    ・レディ・ファントム

    語り手。マダムの理不尽な欲求で進化の石を集めていたら、地図にない街に出てしまった。
    本人は興味ないが、かなりの美女である。

    ・ルーチェ

    地図にない街、フォールダウンの街娘。外見がレディに瓜二つである。性格は正反対。
    あと三日で今年の『光の姫君』となる運命にある。

    ・闇の王

    フォールダウンの昔話に登場する。絵本では化け物のように描かれているが、はたして実態は……
    一年に一度街に現れ、生贄となる娘を攫っていく。


      [No.901] 1巡目―夏の陣2:炎天下を超える温泉旅行記  第二巻 投稿者:巳佑   投稿日:2012/03/15(Thu) 17:26:33     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

     夏の特徴といえば、早朝の風が少しばかり涼しさをもたらしてくれているといったところも一つに入るだろうか。
     南寄りの風だが、日差しの力が臨界点を突破する昼下がりのときに比べれば、まだマシな方な気がする。
     ……ちょっとした慰め(なぐさめ)程度かもしれないが。
     少なくともこの楓荘は若干街外れにあるためか、夏の早朝の風は比較的、涼しげな雰囲気を身にまとっていた。
     熱帯夜との戦いに終止符を打つかのように、その心は少年を更なる深い安眠へと――。

    「はよ! 起きんか!! おんどれぇ!!」

     可愛く言えば狐パンチ。
     ごつい感じで言えば鉄拳。
     忠実に言えば『メガトンパンチ』かもしれない。
    「いってぇえ!?」
     ロコンである灯夢のパンチが治斗の右の頬(ほお)に見事、入った。
     炎タイプの狐ポケモンが格闘タイプの技を発揮している姿なんて、そうそうない。
     肉がへこむような、いい音が部屋を覆った後、治斗は寝ぼけながらも起きた。
    「ちゃんと起きんかぁ!!」
     その重そうなまぶたを再び閉じようとして――それが致命的となった。
     今度は左の頬に灯夢のいいパンチをもらった治斗は………………。

    「あぁ!? おんどれ!? こんぐらいやっても、まだ起きんのか!?」

     気絶した。
     白目をむいているならまだしも、治斗は目を閉じてしまっていた。
     それが、どういう意味をさすのかは想像にお任せすることにする。
     ただ、一言だけ言えば…………。
     本末転倒がイタチごっこをしていた、であった。


     朝日が徐々に昇り始めている中、楓荘の前にいる三人の大人に加わる二人の子供。
     大きめの黒いリュックサックや、滑らかな光沢を持った赤い革のトートバック、頑丈そうな青いスーツケースに、
     可愛い桃色が施されたショルダーバックと、灰色のショルダーバックがそろった。
    「あらぁ、どうしたの? 顔がやけに真っ赤だけど?」
     金色のポニーテールが朝日を受けて眩しい刺激を受けた治斗は思わず目をつむった。
    「……だれかさんのせいで、こうなりました」
    「なんべんもいわせんなや! おんどれがはよう起きんのがいけないやろ!?」
    「だからって、あんなに、なぐることはねぇだろう!!」
    「旅館の食べモンがなくなったら、どないしてくれるんや!」
    「んなこと、知るか! っていうか食い地ばかり張ってるな、お前!」
     一人の少年と一人の少女の激化した口は止まりそうにない。
    「うふふぅ、これがぁ、青春ってやつですよねぇ」
    「若さっていいわよね〜、ま、アタシも現役だ・け・ど」
    「……止めなくても、大丈夫なんですかね? ……まぁ、元気があることはいいことですけど」
     治斗と灯夢の口ゲンカ劇を大人三人――楓山幸、水美、暗下はとりあえず、様子を見ていることにした。
     騒がしい朝だと言わんばかりに空ではポッポたちが羽ばたいていた。


     ビルなどが林立しているタマムシシティの都市部にあるバスターミナル。そこから貸し切りの大型バスに乗り込んだ楓荘一行は、目的地であるハナダシティに向かうことになった。いかにも三十人乗りのバスなのに、乗っているのはたったの五人。ぜいたくなバスの使い方である。
     全員が乗り込んだことを確認した運転手が出発の合図をすると、灯夢と幸と水美のガールズは拳を天井に向けながらかけ声をあげていた。どうやらテンションは順調よく上がっているようだ。一方のダメージが残っている治斗と顔に陰(かげ)を落としている暗下はその彼女達の様子を見やるだけである。このように男と女でこんな差がある中で、バスは重い腰をあげるようにゆっくりと出発していった。
     バスの窓から飛び込んでくる風景に灯夢と幸は眺めており、仕事から直に来たという水美はこれからの行動の為に仮眠を取り始め、暗下は本を読み始めた。それぞれの様子を見ながら、治斗はハナダシティに着くまで何をしてようかと思った。このまま眠るのもいいし、隣に座っている暗下と話をしてもいい。ちなみに、バスの座席は通路を挟んで左右二つずつで、灯夢と幸、治斗と暗下が隣同士で、水美が一人でといった感じである。 
     やはり、ここはこれからの付き合いとかもきっとあるかもしれないからと、治斗は暗下に話しかけた。
    「あの、何を読んでるんです?」
     しかし、暗下からの返事はなかった。
     それなら、自分から覗き込もうと治斗が顔をくいっと動かすと、そこには変な数列や数式が目に入ってきた。
    「なんか、難しそうな本を読んでいるんですね」
     また、暗下からの返事はなかった。
     本を読んでいるのに夢中になっているのかなと、頭をかいた治斗は仕方なく、水美と同じく仮眠を取ることにした。
    「やっほい! なんかいい風が吹いているで」
    「もうすぐぅ、タマムシシティを出ると思いますよぉ」
     いかにも席を立っているらしい灯夢に、楽しそうな幸の後ろ姿を眺めながら、治斗はポケットからウォークマンラジオを取り出し、黒いイヤホンを耳にはめた。スイッチをつけて、好みのラジオ番組にチューニングしてから目を閉じる。

    『はぁーい! カルチャー放送から素敵な音楽と共にお届けしております、オタマロジュークボックス! 皆さん、おはようございます、パーソナリティの珠塚(たまづか)です☆ 昨日も熱帯夜でしたよねー。いやぁ暑い暑い。あまりの暑さに氷枕とか使ってみたんですけど、朝になる前に溶けきちゃって。この溶けきる前に夢の中に落ちることができるかどうか! と、私のように暑さと戦っている人も少なくないんじゃないでしょうか? ちなみに昨日はギリギリ勝てました☆ まぁ、朝起きたら汗でパジャマがぐっしょぐっしょになっていて困るときもあるのですが。この時期、パジャマが足りなくなりそうでやだですよねー。というわけで、今回のメールテーマは私の熱帯夜で募集したいと思いまーす☆ じゃんじゃんばりばり送ってくださいね。リクエスト曲も待っていますよー。さて、本日の一曲目はオーガストさんからのリクエストで、SEIKOの”青いサニーゴ”です、どうぞ☆』
     
     爽やかな雰囲気が漂う曲に身をゆだねがら、治斗はうつらうつらとなっていった。

     
     一方、前の席にいる灯夢と幸は相変わらず風景を眺めていた。
     都会のタマムシティを抜けると、そこから風景は林や草原へと変わり、時間が経つとそこからまた都会へと変わっていく。
    「どうやら、そろそろぉ、ヤマブキシティに着くみたいですねぇ。ここを通って、北上していけばぁ、ハナダシティに着きますよぉ」
    「早いんやな。もう少しで着くんかい」
    「ん〜。まぁ、まだ一時間以上はかかると思いますけどぉ。遅くとも午前中には到着すると思いますよぉ」
     早く着かないだろうかと灯夢の顔は期待でいっぱいだった。
     今、ロコンの姿に戻っているとしたなら、その尻尾はさぞかし左右に踊りまくっていたことだろう。
     九百九十七年生きてきた中で、行ったことのある街はあれど、それはもう数十年も前のこと。街の様相が変わっていてもおかしくなかったし、その変わり映えが当時の旅を重ねてみる灯夢にとっては新鮮であった。それに産まれてこのかた、バスといったような乗り物もあまり経験がなかったことも灯夢の興奮へと繋がっていた。治斗よりも数十倍も長生きしているのだが、その辺りではまだまだ子供っぽい一面を見せるロコンである。
    「灯夢さんはぁ、乗り物酔いとか大丈夫ですかぁ?」
    「ん? 乗り物酔い?」
    「えぇっと。揺られてぇ、気分が悪くなったりしてませんかぁ?」
    「あぁ、もしかして二日酔いみたいなもんかいな?」
    「ちょっと違うような気がしますけどぉ」
     あまり乗り物に経験がない灯夢だからこそ、乗り物に酔うという感覚を知らないかもしれない。
     とりあえず平気な灯夢に対し、後ろからうめき声のようなものと同時に顔色を青くさせている暗下の顔が現れた。
    「……あの、すいません。自分、ちょっと酔ってしまったみたいなんですが……幸さんか灯夢さんで、酔い止め薬持っていませんか?」
    「あらまぁ、ちょっと待っててくださいねぇ。確かバックの中にぃ」
     ガサゴソと手持ちの黒いトートバックを漁り始める幸の隣で、灯夢が大丈夫かと暗下に声をかけると、ちょっと駄目かもしれないという返事が返ってきた。
    「どんな感じなん? こうどこが悪いっちゅうか」
    「……そうですね……おなかとかが特に気持ち悪い感じですかね……さいわい頭は痛くないのですが……」
    「そうか、おなかが調子わるいんか。そんならウチに任し」
    「え」
     妙案を思いついたらしい灯夢に、暗下が首をかしげる。
    「えぇか。ちょいとイスの上に立ってこっち向いてくれへん?」
    「こう……ですか?」
     今はあまり動きたくなかった暗下だったが、もしかしたらいい方法かもしれないと灯夢の言うこ通りに動いてみた。バスは相変わらず揺れるので、暗下はイスの上に立つと、荷物を入れる場所に片手をかけた。
     準備ができた暗下に灯夢がうんうんと頷くと、動かないようにという一言をつけて――。
    「そいや!」
     
     鉄拳一つ、暗下の下腹あたりに直撃した。

     無論、ノーガードの暗下は後ろに吹っ飛び、灯夢はなんだかやり切ったような顔を浮べていた。
    「あらまぁ、すごいですねぇ」
    「悪いところは殴ればええんや、殴れば」
    「すごい効きそうな治療法ですねぇ」
    「吐くもん吐いたらスッキリするやろ?」 
     テレビを直すときのやつと一緒にしてはいけないし、ショック療法だとしても刺激が強すぎる。
     
     無論、暗下がその後、リバースしたのは言うまでもないし、ハナダシティに到着したときには治斗と水美の寝ぼけ眼(まなこ)を覚まさせることとなったのであった。


      [No.900] PCC編を終わって 投稿者:照風めめ   投稿日:2012/03/15(Thu) 00:22:31     36clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

     PCC編の連載期間的には一年3か月くらいでしょうか。キャラ募集も無事成功しました。

     PCSとしてこのPCC編を終わることで大きな意味があります。
     このPCSには三つの区切り方があります。
     ファーストバトル編だとかPCC編だとかの「章」。
     そして翔たちが高校生一年生の区間を示した「年」。
     最後は、この能力編という一番大きな区切りである「編」。
     PCC編が終わることで翔たちが高校一年生を終え、「一年目」という「年」の区切りもつきました。
     ただ、能力編という「編」は本当にこれからというところで、まだまだ盛り上がって行きます。
     そして能力編と同時に風見個人の「編」である、自立編も始まりました。PCC始まる直前の、久遠寺と戦ったとこあたりから。
     こちらはメインである能力編に比べるとやや地味ですが、次の「章」、この自立編は本格的に始動していきます。
     翔も風見も、そしていろんなキャラが人間的に成長していけたらいいなあと思います。

     そして執筆方法にもいろいろ変わって行ったところがあります。
     とはいえ、翔VS山本からなんですが、今までみたいにパソコンで直接その場の思いつきの行き当たりばったりで勝負経過を考えるんじゃなくて、きちんとルーズリーフに練って考察するということも始めました。
     こっちの方がいいですね、どこでどう演出しようなどと考えれるし。

     そして描写方法が変わっただけでなく、次の「章」、アルセウスジム編からは使用するカードも全て一新します!
     今まではDP〜DPtのカードを使っていたのですが、LEGEND〜BWのカードを使うことになります。
     LV.Xポケモンがいなくなり、LEGENDポケモンや、新しいBWルールで戦うキャラクター達にどうかご声援をお願いします。

     なお、本年もPCSにとっては激動な一年となるかもしれません。


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