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臆病そうな見た目に反して、大胆でいて力強いプレイングだ。
俺のバトル場にはギャラドス130/130。ベンチにはヤジロン50/50と炎エネルギーが一枚、水エネルギーが二枚ついたコモルー80/80。残りのサイドは五枚。
対戦相手の井上心大のバトル場は超、ワープエネルギーとワザマシンTS−1が二つ、ワザマシンTS−2が三つついたポリゴンZ120/120、ベンチにはユクシー70/70、アグノム70/70、超エネルギーとワザマシンTS−1がついているポリゴン50/50、そして超エネルギーのついたムクホークFB LV.X100/100。そして残りのサイドカードは俺より一枚少ない四枚となっている。
ベンチの充実具合でも俺の方が劣っている。そして井上には常にサポーターカードを供給できるムクホークFB LV.X、140ダメージを叩き出すことのできるポリゴンZと難敵が揃っている。
「俺のターン。サポーターのミズキの検索を使う」
手札のスージーの抽選をデッキに戻してボーマンダをサーチする。今回の俺のデッキのエースはギャラドスだけでなく、ボーマンダとの二大エースだ。
「炎エネルギーをコモルーにつけてボーマンダに進化させる」
大型ドラゴンのボーマンダ140/140がベンチに現れ、雄叫びをあげる。迫力のあまり井上は少し体を震わせた。
「ギャラドスでポリゴンZを攻撃。リベンジテール!」
先ほどはコイキングが二匹しかトラッシュにいなかったが今は三匹いる。よって与えるダメージは30×3=90。ポリゴンZのHPも半分を切り30/120。
90や140という大台ダメージが序盤から飛びまくっている。ここまで乱打戦になるとは戦う前の井上の印象を見ると予想だにしてなかった。
「俺はターンエンドだ」
「それじゃあ僕のターン。ムクホークFB LV.Xのファーストコールでデッキからミズキの検索を手札に加えて効果発動。僕は手札を一枚戻してポリゴン2をデッキから加え、ポリゴンを進化させます」
角ばったポリゴンのフォルムが白い光に包まれながら丸みを帯び、ポリゴン270/70に進化してゆく。
「ポリゴン2のダウンロードでオーキド博士の訪問を選択。ポリゴン2のポケパワー、ダウンロードは手札のサポーターをトラッシュする効果でその効果を得ることが出来る。僕は三枚ドローして一枚デッキボトムに戻します」
一ターンにサポーター二枚を使って自分の場を出来るだけ綺麗に整えていくこの素早さが井上の戦法だろうか。そしてポリゴンZの熱暴走の恐ろしい威力で相手の場が立つ前に倒しきるみたいだ。
「ムクホークFB LV.Xに超エネルギーをつけ、ポリゴン2にワザマシンTS−2を一枚つけて攻撃します。ポリゴンZで熱暴走!」
熱を帯びて真っ赤に染まりゆくポリゴンZが溜めていた熱を四方八方に飛ばしていく。異常な熱気に包まれただろうギャラドスのHPはみるみる削られて0。
熱暴走の威力は基本ダメージ40に、ポリゴンZがつけているワザマシンの数×20ダメージ増えていく。今ポリゴンZにはワザマシンが五つあるので、40+20×5=140ダメージ、130しかHPのないギャラドスはあっさり倒れるしかない。
しかしこれで問題はない。むしろ十分良いほどに事が運んでいる。
「ボーマンダをバトル場に出そう」
「サイドを一枚引いてターンエンドです」
「よし、俺のターン!」
引いたカードはミズキの検索。いいところに来たもんだ。
「サポーターカード、ミズキの検索を使わせてもらう。俺は手札を一枚デッキに戻してネンドール(80/80)を手札に加え、ベンチのヤジロンをそれに進化させる」
今の手札は二枚。ネンドールのポケパワーであるコスモパワーをめいいっぱい使うにはベストな状態だが、ここでもう一枚だけ使わせてもらおう。
「俺は手札の水エネルギーをボーマンダにつけてからネンドールのコスモパワーを発動だ。手札を一枚戻し、六枚に手札がなるようドロー。俺の手札は一枚戻したことによって0。よって六枚ドローだ」
井上には火力だけでなく速攻性でも完全に後れを取っている。俺のポケモンは残り二匹だけで、サイドも井上は残り三枚しかない。
しかしそれでも井上には弱点があった。
「手札からタツベイ(50/50)をベンチに出し、エムリット(70/70)をベンチに出す。更にこの瞬間、エムリットのポケパワーが発動する。サイコバインド!」
井上の場の全てのポケモンの周りに一匹に対しそれぞれ二つの紫色の輪っかが現れる。しかしそれらの輪っかは何をするでもなく井上のポケモンの周りを舞っているだけだ。
「このポケパワーはエムリットをベンチに手札から出した時に使えるもの。次の相手の番、相手プレイヤーはポケパワーを使う事ができなくなる」
これはムクホークFB LV.Xとポリゴン2のシナジーを抑えるためのモノ。これ以上都合勝手にはさせない。
「そしてボーマンダで直撃攻撃!」
ボーマンダが勢いよく体一つでポリゴンZに猛スピードで突進していく。飛行機にはねられたかのような強力な一撃がポリゴンZを簡単に吹き飛ばした。
もちろん吹き飛ばしたのはポリゴンZの体だけではなく、HPもだ。直撃は相手の弱点、抵抗力、ワザの効果に無関係に50ダメージを与えるワザ。残りHP30のポリゴンZは50ダメージを受け0、気絶だ。
ただしこれはただの気絶よりも強力な意味合いを持つ。ポリゴンZ以外にも進化前、ついているエネルギーもそうだが何よりワザマシンもトラッシュされること。
ワザマシンは一度トラッシュに行ってしまえば墓地から回収することは困難極まりない。つまりこれ以上今ベンチにいるポリゴン2にワザマシンが新たにつけられる可能性が極めて低いのだ。
このポリゴンZを倒したことで井上のポケモンの火力は全体的にダウンする。現に井上の表情は早くも曇っていた。
「ポリゴン2をバトル場に出します……」
「俺もサイドを引かせてもらおう。ターンエンドだ」
「僕のターン」
井上のターンが始まると同時に井上の場の全てのポケモンが、先ほど現れた二つの紫色の輪っかに絞めつけられる。これで相手のポケパワーは封じられた。
「僕は、ポリゴン2をポリゴンZ(120/120)に進化させてサイクロンエネルギーをポリゴンZにつけ、その効果を発動します」
サイクロンエネルギーがポリゴンZにつけた刹那、ボーマンダの足元から竜巻が現れてベンチに強制的に飛ばされてしまった。
「サイクロンエネルギーは無色エネルギー一個ぶんとして働き、このカードを手札からバトルポケモンにつけたとき、相手のバトルポケモンをベンチポケモンと入れ替えさせる。入れ替えるポケモンは相手が選びます」
まだ自分で選べるだけいくらかマシだろう。
「エムリットをバトル場に出そう」
「サポーター、クロツグの貢献を発動します。その効果でトラッシュのポケモン、基本エネルギーを合計五枚までデッキに戻せるので僕は超エネルギー、アンノーンG、ポリゴン、ポリゴン2、ポリゴンZを選択します」
五枚トラッシュから回収することで少なくなったデッキを補ったのだろう。
「ポリゴンZで熱暴走攻撃!」
今ポリゴンZについているワザマシンの数は三つ。よって与えるダメージは40+20×3=100、エムリットの最大HP70を上回る一撃になる。
一匹目のポリゴンZが倒されたら倒されたですぐに戦法を変えてくるところは評価できる。
倒されたエムリットの代わりに再びボーマンダをバトル場に出した。
「サイドを一枚引いてターンエンドです」
ターンエンドと同時に井上のポケモンを縛り付けていた二つの紫の輪っかは消滅していく。
「俺のターンだ。ドロー!」
すでに井上のサイドは残り二枚。しかし焦ることはない、戦術は既に整っている。
「グッズカード、不思議なアメを手札から発動。ベンチのタツベイをボーマンダ(140/140)へと進化させ炎エネルギーをつける! ネンドールにポケモンの道具、ベンチシールドもつけよう」
ベンチシールドはこのポケモンがベンチにいる限りワザによるダメージを守るもの。井上のポケモンでそういう攻撃を仕掛けるポケモンは今のところ見当たらないが念には念を、だ。
「コスモパワーを発動し、手札を二枚デッキの底に戻す。そして六枚ドローだ。ミズキの検索を使う。手札を一枚戻しレジアイスを手札に加える。そしてボーマンダで攻撃を仕掛けよう。水エネルギーを二枚トラッシュしてドラゴンフィニッシュ!」
バトル場のボーマンダが大きく地面を踏みならすとベンチにいるムクホークFB LV.Xの足元から強力な水柱が現れてムクホークFB LV.Xに強力なダメージを与える。
「ベンチにっ!?」
「ドラゴンフィニッシュは攻撃前に水エネルギー二枚または炎エネルギー二枚をトラッシュしなければならない厄介なワザだ。だがトラッシュするエネルギーによってワザの効果が変わる面白いワザでもある。そして水エネルギーを二枚トラッシュした場合、相手のベンチポケモン一匹に100ダメージを与える」
水柱が無くなり、高く飛ばされていたムクホークFB LV.X0/100が力なく落ちてゆく。
「これでサポーターを自由に供給できなくなったな。サイドを一枚引いてターンエンド」
サイドは俺が残り三枚、井上が残り二枚。そろそろバトルも最終段階というところか。
「僕のターン。ハマナのリサーチを発動。デッキからポリゴン、超エネルギーを手札に加えてベンチにポリゴン50/50を出して超エネルギーをつけます。ここでバトル場のポリゴンZをポリゴンZLV.Xにレベルアップ!」
ここでレベルアップか。だがしかしポリゴンZLV.X130/130には新たに攻撃ワザがなく、その代わりポケパワーが二つあるだけだ。
しかもそのうちのポケパワーの一つ、モードクラッシュはレベルアップさせたときに使え、相手の場の特殊エネルギーをトラッシュするもの。俺の場には特殊エネルギーなど一枚もない。
「ポリゴンZLV.Xのポケパワー、デコードを発動します。自分のターンに一度だけ使え、自分の山札の好きなカードを二枚選び出しデッキをシャッフル。そののち選んだカードを好きな順にして山札の上に戻します。最後にポリゴンZLV.X熱暴走攻撃!」
レベルアップしたからとはいえワザの威力は変わらない。100ダメージは非常に強力な一撃だがHP140のボーマンダを倒すには足りない。
「俺のターン。バトル場のボーマンダに水エネルギーをつけ、スージーの抽選を発動。手札の不思議なアメを二枚トラッシュして四枚ドロー。ボーマンダの炎エネルギーを二枚トラッシュしてドラゴンフィニッシュ!」
先ほどとは違い、ボーマンダの口から灼熱の炎が放たれバトル場のポリゴンZLV.Xを焼き尽くす。
炎エネルギーを二枚トラッシュしたドラゴンフィニッシュは、相手のバトルポケモンに対し100ダメージを与えるもの。ポリゴンZに比べると同じダメージでもいささか効率の悪いように見えるかもしれない。
しかしそれも今のうちは、だ。ポリゴンZLV.Xの残りHPは30/130。あと一歩というところにまで体力を減らせば十分だ。
「……、心を、心を強く!」
井上は胸に手をあて深く深呼吸をする。最後に両手で両頬をパチンと叩くと落ち着いた眼差しで場を睨んでいた。
「僕のターン。手札からハンサムの訪問を使います。その効果でまず相手の手札を確認できる」
自分の手札のカードを井上に見せる。手札は七枚あるが、特にこれといった特徴のない手札である。ハンサムの捜査はこの後自分か相手を選択して選択されたプレイヤーは手札を全てデッキに戻しシャッフル、その後五枚までドロー出来る。井上は自分を選択して新たにカードをドローした。
「ベンチにいるポリゴンをポリゴン2(70/70)に進化させてポリゴン2のダウンロードを発動! 手札のハマナのリサーチをトラッシュし、デッキから超エネルギーとユクシーを手札に加えます。そして超エネルギーをポリゴン2につけ、ポリゴンZLV.Xで熱暴走攻撃!」
100ダメージの攻撃がボーマンダに止めを刺す。俺の次のポケモンは引き続きベンチに控えていたボーマンダだが、井上はボーマンダを倒したことによってサイドを一枚ドロー。よって残りのサイドが一枚となった。
「よし」
井上は胸に手を当て一息ついた。終盤に来てサイド差二枚はひっくりかえせまいと思っているからか。
「……。俺のターンだ! 手札の水エネルギーをボーマンダにつけてサポーターのクロツグの貢献を発動。トラッシュの水エネルギー二枚、炎エネルギー一枚とコイキング、ギャラドスをデッキに戻しシャッフルする。そしてボーマンダでポリゴンZLV.Xに直撃攻撃!」
弾丸のようなスピードでボーマンダがポリゴンZLV.Xに突撃する。固定50ダメージは残りHP30のポリゴンZLV.Xを確実に気絶させた。
「くっ! 僕はポリゴン2をバトル場に出します!」
「サイドを一枚引いてターンエンド」
六、七、八。ジャストだな。PCCのレギュレーションでポリゴンZにつけれるワザマシンは八枚。そしてトラッシュに送ってやったワザマシンは八枚だ。これで完全に井上の攻めの芽を完全に摘んだ。
井上の攻撃パターンは基本的にポリゴンZの熱暴走のみ。他のポケモンは全てそれにおいてのアシスト。
そしてエネルギーもサイクロン、ワープエネルギーを組んでいるところからみていち早く相手のポケモンを倒すことをモットーとしている。
熱暴走の火力を上げるワザマシンは何度も言っているがサルベージの方法がごくわずかなので、ポリゴンZが倒されると同時にトラッシュされると熱暴走の元の威力40から火力を上げれずただの平凡な、むしろ二進化にしては虚弱なポケモンでしかない。
よってワザマシンが無くなる前に、いわゆる「殺られる前に殺る」戦法の相手にはその剣を叩き折ってしまえばいい。ワザマシンが切れた井上はもはや恐れるに足らず、だ。
「こ、……」
井上が弱弱しく右手を挙げながら震える声で発する。
「こ?」
「降参し───」
「ふざけるなァ!」
降参しかけた井上に対し、俺はバトルテーブルを右手で強く叩きつけ大きく一喝する。周りが一瞬で静まり返ったように思える。
「お前がこのPCCに賭けている情熱はその程度なのか? お前はそんな生半可な気持ちで今ここにいるのか?」
驚きと困惑が交差している井上は上げかけていた右手を下ろす。だがしかし、井上のリアクションはそれだけで、特に何も言い返しそうにないので勝手に続けることにした。
「勝ったものには負けたものの気持ちを受け継ぐ義務がある。お前がこのPCC二回戦に勝ち進むまでに倒した相手は四人だ。四人分の気持ちをお前は背負っているんだ。勝ちたかった、もっと上へ進みたかった。お前が倒した相手は皆が皆そう思っていただろう。そして倒した相手はお前に自分のぶんまで戦ってほしいと想いを託したはずだ! なのにお前のそのザマはなんだ! 自分が少し不利になったからといって降参? そんな態度でお前に敗れたヤツらは喜ぶのか? 喜ぶわけがないだろ!」
「ぼ、僕は……」
「降参するのも自由だ。諦めずに戦いを続けるのも自由だ。だが、その想いを背負わず捨てたりすることは許さん。それを背負った上でせめて自分の真っすぐな気持ちをプレイにぶつけてみろ!」
「……。僕の、ターン!」
再び井上の目に強い闘志が蘇った。
あのまま降参させれば俺が勝っていた? そんなのでは満足しない。去年の九月、翔と出会うまではポケモンカードがこんなに熱いものとは知らなかった。楽しいのは楽しいがただただ単純に勝利を求めるだけの俺に、それ以外の良さを教えてくれた翔のように。俺も全ての感情をぶつけあう、そういう熱い勝負がしたいのだ。今の井上のように。
「ポリゴン2をポリゴンZ(120/120)に進化させてサポーターカードを発動。マイのお願い! 自分のトラッシュから名前の違うトレーナーのカードを二枚選び相手プレイヤーに見せて、そのうち一枚を相手が選択。そして選択されたカードを手札に加え残りをトラッシュする! 僕はワザマシンTS−1、ワザマシンTS−2を選択!」
「なるほど、どっちにしろワザマシンしか選ばせないというわけか。TS−1を選択する」
「僕はワザマシンTS−1をポリゴンZにつけて熱暴走攻撃!」
40+20×1=60のダメージ。ボーマンダの豊富なHPが幸いして80/140と半分以上余している。
だが油断は一切出来ない。次のターンにもう一度マイのお願いを使われてワザマシンをつければ80ダメージを食らうことになる。そうすればこちらが終わりだ。それを未然に防ぐには……。
「俺のターン! こいつをボーマンダにつけよう。達人の帯! 達人の帯をつけたポケモンは最大HP、そして与えるワザのダメージが20足される!」
もちろんデメリットとして達人の帯をつけたポケモンが気絶した場合相手はサイドを余計一枚多く引ける。しかし残りサイド一枚の井上には無関係なデメリット。そしてボーマンダのHPは100/140。強化された熱暴走が来ても問題はない。
「ボーマンダに炎エネルギーをつけ、ハマナのリサーチを使ってデッキから水エネルギーとクロバットGを手札に加える。そしてクロバットGをベンチに出してワープポイントを発動!」
バトル場にいるボーマンダとポリゴンZの足元に青い渦が現れて二匹を飲み込んでしまう。
「ワープポイントは互いにバトル場とベンチのポケモンを入れ替えさせるグッズカードだ。俺はベンチに出したばかりのクロバットGをバトル場にだす」
「僕はユクシーをバトル場に」
「クロバットGを逃がして(クロバットGの逃げるエネルギーはなし)ボーマンダを再びバトル場に戻す。ユクシーに直撃攻撃!」
激しい一撃がユクシー70/70に襲いかかる。ボーマンダに突き飛ばされたユクシーのHPは50+20(達人の帯)=70のダメージを受けて尽きる。
「直撃は全ての効果に関係ないんじゃあ!」
「それは『相手の効果』限定だ。ボーマンダ自身の変化は普通に受け付けるぞ」
「なっ……! ぼ、僕はポリゴンZをバトル場に出します!」
「サイドを一枚引いてターンエンド。これで共に残り一枚ずつ、だ」
残り一枚ずつとはいえどダメージを受けているボーマンダを抱えてるこちらが分が悪い。達人の帯でHP20強化したとはいえ向こうも達人の帯とワザマシンをつけてしまえばHP100は簡単に吹き飛んでしまう。
「僕のターン! マイのお願いを発動。ワザマシンTS−1、TS−2を選択」
「TS−1を選んでもらう」
「そのワザマシンTS−1をポリゴンZにつけて熱暴走攻撃!」
これで熱暴走の威力は40+20×2=80となる。ギリギリのところでボーマンダ20/160が踏みとどまった結果だ。
井上は額の汗をぬぐう。ボーマンダを倒しきれなかったのだが、その顔は先ほどのおどおどした表情と違ってむしろこの勝負自体を楽しんでいた。
「行くぞ! 俺のターン。俺の全てを、情熱を見せてやる! ボーマンダに水エネルギーをつける。そして炎エネルギーを二枚トラッシュしてドラゴンフィニッシュ!」
達人の帯も相まって100+20=120のダメージを与える超火力の炎がボーマンダからポリゴンZめがけて放射される。
炎のエフェクトの向こう側にいた井上も、俺が最後のサイドを引くまでこの勝負の中で一番の表情をしていた。
風見「今日のキーカードはボーマンダだ。
バトル場もベンチも、どこにだって攻撃できる。
これこそが圧倒的な力だ!」
ボーマンダLv.62 HP140 無 (DP3)
無無 ちょくげき 50
このワザは、相手の弱点・抵抗力・すべての効果に関係なく、ダメージを与える。
炎炎水水 ドラゴンフィニッシュ
自分の炎の基本エネルギーを2枚、または、水の基本エネルギーを2枚トラッシュ。炎をトラッシュしたなら、相手に100ダメージ。水をトラッシュしたなら、相手のベンチポケモン1匹に、100ダメージ。(トラッシュできないなら、このワザは失敗)
弱点 無+30 抵抗力 闘−20 にげる 3
───
おまけ・ポケカ番外編
「ホクロ七星」
(次の授業が体育なので着替え中)
蜂谷「新しくギャツビーの制汗スプレー買ってみたんだけど授業の後使ってみる?」
拓哉「ゴキジェット?」
蜂谷「ベタなボケありがとう。っていうか拓哉がボケたのか、なんか斬新」
(シャツを脱ぎ蜂谷は上半身すっぽんぽんに)
蜂谷「三月は涼しいから体育にはちょうどいいよな」
翔「あれ?」
蜂谷「どうかした?」
翔「それってもしかして」
(蜂谷に近づく翔)
翔「胸に七つのホクロを持つ男!」
蜂谷「うわっ、ちょうど北斗七星の形に……」
翔「ホクロ神拳!」
蜂谷「ねーよ!」
翔「ホクロ毛(ホクロから生える毛)が見える」
蜂谷「死兆星が見えるみたいに言うな言うな」
拓哉「あれ、でもこれ」
(拓哉は蜂谷に近づき蜂谷のホクロ七星のうちの一個のホクロを指す)
拓哉「ここにもホクロあるね」
蜂谷「死兆星の位置にホクロが! 俺もう死ぬの!? ってかラオウと戦える資格あるじゃん!(っていうか俺ケンシロウポジションじゃないの?)」
翔「ラオウなら」(と言って恭介を指差す)
蜂谷「髪の色しか一致してねーぞ!」
恭介「我が生涯に一片の悔い無し!」
蜂谷「しかももう死んでるし!」
(このあと授業のバスケで蜂谷は突き指しました)
健闘虚しく破れてしまった向井だったが、その隣では藤原が開始僅か七分で相手を仕留めるという速攻プレイで準々決勝を決めた。
その準々決勝で藤原が戦うのは能力者の高津。高津のプレイを見ていたが、強烈なパワーで相手をねじ込むタイプのプレイヤーのようだ。
そしてこの二回戦、今から俺、翔、長岡と戦う訳だがもう一戦は能力者の山本と松野さんの勝負。
彼女のことだから負けるだなんてことは微塵も思っていない。だから俺はただただ上へ進むことを望むだけだ。
このPCC、能力者の事で頭がいっぱいになっているがあくまで普通の公式大会なのだ。
東京の予選を勝ち抜いて、全国大会へと出場。果ては世界大会へ行って頂点を目指すのはここにいる誰もが思っていること。
例外なくこの俺もそうだ。こんなとこで負けてられない。少なくとも全国へ行って「あいつ」にリベンジを……。
「風見、そろそろ行こうぜ」
「ああ」
長岡が俺の肩をポンと叩くと、先に向かって行った。この二回戦、俺と長岡の両方が勝てばこいつと当たることになる。
まだポケモンカードを初めて一年どころか半年も経っていないが、持ち前の運の強さはもちろん実力も着々とついているのは認めよう。だからといって負ける気はさらさらない。なにしろ風見杯では勝っているのだ、どちらかというと得意な相手の部類に入るだろう。
とはいえまずはこの二回戦だ。勝ちにいかないと。この試合も勝って、その次も勝たないと。
「よろしく」
「よろしくお願いします!」
対戦相手は井上 心大(いのがみ しんた)という一つ年下の小柄な少年だ。一見すると活発そうに見える外はねの黒髪だが、そう見えないのは臆病そうにおどおどとした表情のせいだろう。
黒のハイネックに橙色系のパーカー。紺のニット帽を深めに被っている。
最初のポケモンは井上がポリゴン50/50、俺のバトル場にはコイキング30/30とベンチにタツベイ50/50。
「僕の先攻で行きます。ポリゴンに超エネルギーをつけて、ポリゴンのワザの計算を使用。その効果で自分のデッキの上三枚を確認し、そのカードを好きな順番に入れ替えることができます」
相手は序盤は様子見から始めるのだろう。定石だ。
「俺のターン、ドロー!」
初戦は手札の運がよく非常に流れの早いバトルで相手をいなしたが、今回は芳しくないようだ。序盤から苦しい展開は必至だが、それでも最善の手を選んで自分の流れが来るまで耐えるしかない。
「手札からスタジアムカードの破れた時空を使わせてもらう。このカードがあるとき、互いのプレイヤーはその番に場に出た、及びその番に進化したポケモンも進化させることができる。俺はコイキングをギャラドスに進化させよう」
まだ小さなポケモンしか場にいなかった中、急にギャラドス130/130という大型ポケモンが現れたことによって途端に場全体にプレッシャーが降りかかる。
井上は一瞬びくっ、と体を震わせたがそれでも目にははっきり闘志のようなものを感じた。芯が強いタイプだろう、こういうタイプは中々折れないため意外と厄介だ。
「タツベイに水エネルギーをつけ、手札からサポーターカードのハマナのリサーチを発動する。デッキからヤジロンとコイキングを手札に加え、ヤジロン(50/50)をベンチに出してターンエンド」
ハマナのリサーチはデッキからたねポケモンまたは基本エネルギーを計二枚まで選んで手札に加えれるカードだ。
そしてギャラドスは使えるワザがないので今はターンエンドするしかない。
「僕の番です。ドロー! ポリゴンをポリゴン2に進化させ、ポリゴン2のポケパワーのダウンロードを発動します。ダウンロードは手札のサポーターをトラッシュすることでそのカードの効果をこのポケパワーとして扱います。僕はハマナのリサーチをトラッシュしてその効果を得ます。デッキからムクホークFBとポリゴンを加え、それぞれをベンチに出します」
井上のベンチにポリゴン50/50とムクホークFB80/80が現れる。ここからどう仕掛ける。
「そしてサポーターカードを発動。ミズキの検索。手札を一枚戻し、デッキから好きなポケモンを手札に加えます。僕はユクシーを選択。さらに特殊エネルギーのワープエネルギーをポリゴン2につけることでワープエネルギーの効果を使います。ワープエネルギーをバトルポケモンにつけたとき、バトルポケモンをベンチポケモンと入れ替えます! よってポリゴン2とポリゴンを入れ替えてターンエンド」
もうターンエンドするのか? 攻撃しなくていいのか?
相手も引きが悪いとみなすか、攻撃を誘っているとみなすかだがどちらにせよ立ちふさがる敵をなぎ倒すだけだ。
「だったら行かせてもらおう。俺のターン! 手札のサポーター、スージーの抽選を発動。手札を二枚トラッシュして四枚ドロー」
スージーの抽選においてドローは副次的なもの。一番肝心なのはカードをトラッシュすることにある。
手札を効率よく捨てるカードが少ないポケモンカードでは貴重な一枚だ。
「ミズキの検索を発動だ。手札を一枚戻しデッキからネンドールを加え、ヤジロンをネンドール(80/80)に進化させる」
今の手札は三枚。最初の良くない手札をなんとかここまで持っていくことができた。しかしこのデッキは手札を結構消費するから供給も絶えず必要だ。
「ネンドールのポケパワー、コスモパワー。手札を二枚デッキの底に戻し、手札が六枚になるまでドロー」
三枚から二枚減らしたので五枚ドロー出来る。さっきの手札になかったエネルギーがようやっと来た。
「タツベイに水エネルギーをつけてギャラドスで攻撃。リベンジテール!」
「エネルギーなしで攻撃!?」
「リベンジテールはエネルギーなしで攻撃出来る。そしてその威力はトラッシュにいるコイキングの数×30だ」
「でもトラッシュにコイキングは……」
ギャラドスが体を大きくうねらせて尻尾で井上のポリゴンを上から叩きつける。弾かれたボールのように飛んで行ったポリゴンのHPバーは0。
「先ほど使ったスージーの抽選のコストでトラッシュしたカード、それはコイキングが二枚だ。よって30×2=60となってポリゴンのHPを削り切るには十分だ」
井上はまさか、というような困惑した表情を浮かべるとムクホークFBをバトル場に送りだした。
「サイドを一枚引いてターンエンド」
「えっと僕のターン。ムクホークFBをムクホークFB LV.Xにレベルアップさせてベンチのポリゴン2と入れ替えます!」
ムクホークFB LV.X100/100は逃げるエネルギーを必要としないポケモンだ。そしてすぐにベンチに戻すという事は戦わせるのがメインではなくてベンチにいさせるのがメイン、つまり置物タイプのポケモンか。
「ポリゴン2のダウンロードでデンジの哲学を発動。手札のアンノーンGをトラッシュし、手札が六枚になるまでドローします」
井上は今手札をトラッシュすることで一枚となった。つまり五枚もカードを引くのか。
「ワザマシンTS−1を二枚ポリゴン2につけ、さらにワザマシンTS−2も一枚ポリゴン2につけます」
「……ワザマシンか」
ワザマシンはポケモンの道具のようにつけれ、そのテキストにかかれているワザをつけたポケモンのワザとして使う事が出来る。
まったく使えないことはないのだが、たかが知れている程度の効果なのでデッキに入れる必要性がそこまでない。
しかも一匹に対し一枚使うならともかく、同じワザマシンが重複している中で三枚もつけるのは異端なんてレベルじゃない。
「ベンチのムクホークFB LV.Xのポケパワーを使います。ファーストコール!」
ムクホークFB LV.Xは両翼を広げると、天井に向かって大きく鳴き声を上げる。まるで何かを呼んでいるかのようだ。
「ファーストコールは自分の番に一度だけ使え、山札のサポーターを相手に見せてから手札に加える効果を持ちます。よって僕はミズキの検索を手札に加えて発動。手札を一枚戻してポリゴンZを手札に加え、バトル場のポリゴン2に進化させます」
こっちがエースポケモンか? ポリゴンZ120/120は進化するやいなや、首を360度回転しているが無表情なせいで周りの出来事に興味がなさそうだ。
「そして手札からベンチにユクシーを出してセットアップを発動」
セットアップはユクシー70/70を手札からベンチに出した時のみ使え、手札が七枚になるようにドローする非常に強力なドローソースである。井上はその効果で六枚も新たにドローする。
「超エネルギーをムクホークFB LV.Xに、ワザマシンTS−2を二枚ポリゴンZにつけます」
これで計五枚のワザマシンがポリゴンZについたことになる。ここまでワザマシンをつける意味は一体なんだ?
ワザマシンTS−1にはエヴォリューターというワザがあり、自分のデッキから自分のポケモン一匹から進化するカードを選びそのポケモンの上に乗せて進化させる進化促成のワザ。
そしてワザマシンTS−2はデヴォリューターがあり、相手の進化ポケモン一匹を一進化分退化させるという風変わりでトリッキーなワザを覚えさせることが出来る。
しかし大量につける意味はどこにもない。一枚あれば十分なのになぜこうも五枚もつけるのか。
「ポリゴンZでギャラドスに攻撃。熱暴走!」
首を回していたポリゴンZの動きが急に止まると、ヒーターのようにポリゴンZの体が真っ赤に輝き出し、そこから熱量を持った電子が四方八方へ放出される。
ギャラドスは非常に痛々しそうな表情を作るもなんとか堪えようとする。しかし無情にも130もあるHPがあっという間に0へ。HPバーが空になったギャラドスはついに自重を支える力を失い倒れ伏す。嘘だろう。まだこんな早いターンで130オーバーのダメージを叩き出すだと?
「熱暴走はワザマシンの数×20ダメージ威力を上げることが出来るワザ。よって元の威力40に20×5を足して140ダメージです!」
なるほど、あの大量のワザマシンにはそういう意図があったのか。ポリゴンZをどうにかしたいところだが、こちらは一撃で120ダメージを叩き出せるポケモンもいない。ベンチにはネンドール80/80とタツベイ50/50しかいないのだ。仕方ない、ドローソースのネンドールを捨てて準備を整えるしかないだろう。
「俺はネンドールを次のポケモンに選ぶ」
「サイドを一枚引いてターンエンドです」
「よし、行くぞ。俺のターン。タツベイに炎エネルギーをつけ、コモルー(80/80)に進化させる。そしてハマナのリサーチを発動しデッキからコイキングとヤジロンを手札に加えそれぞれベンチに出す」
コイキング30/30とヤジロン50/50を出したことでベンチのポケモン総数が井上を上回る。しかし皆が皆低HPで育ちあがっていない。あまり使いたくないカードだが止む得ずだ。
「グッズの時空の歪みを発動。コイントスを三回し、オモテの回数分トラッシュからポケモンを手札に加えることが出来る」
コイントス運がことごとく弱い俺だが、他のカードではトラッシュのポケモンをデッキに戻せても手札に戻せない。苦肉の策だ。
ウラ、ウラ、オモテ。かろうじてオモテが出たことに安堵し、トラッシュのギャラドスを手札に戻す。
「手札に戻したギャラドス(130/130)をコイキングから進化させ、ネンドールのコスモパワーを発動。二枚戻して三枚ドローだ。ターンエンド」
ギャラドスを立てることはなんとか叶ったが、ネンドールを逃げさせることが出来ない。こちらも苦肉の策、チャンスを待とう。
「僕のターンです。ムクホークFB LV.Xのファーストコールでデッキからサポーターのオーキド博士の訪問を加え発動します。デッキから三枚ドローし、手札を一枚デッキの底に戻す。そしてベンチに新しいポリゴン(50/50)を出してポリゴンに超エネルギーをつけます」
やはりというかファーストコールで常にサポーターを引き当てることが出来るためバトルの組み立てが早い。ポリゴンZも勿論厄介だがムクホークFB LV.Xも中々凶悪だ。
「さらにポリゴンにワザマシンTS−1をつけ、アグノムをベンチに出します。そしてアグノムのポケパワー、タイムウォーク!」
タイムウォークは自分のサイドを確認し、その中のポケモンのカードを一枚手札に加えてその代わり自分の手札一枚を戻すことが出来る便利なポケパワーだ。
いわゆるサイド落ちしたカードを回収することが出来る上に自分のサイドのどこに何があるかという情報を得ることが出来る。
相手のポケモンを倒してサイドを引く際に適当に引いて、望んだカードでないときがあるのでそれを未然に防ぐのにも役立つ。
「僕はポリゴンZを手札に加え、手札のカードを一枚サイドに戻す。そしてポリゴンZで熱暴走!」
ポリゴンZから再び激しい攻撃が発せられネンドールを襲う。HPが80/80のネンドールはその倍近くある140ダメージを受けて気絶させられてしまう。
「なら次はもう一度ギャラドスで行かせてもらう」
「うん、サイドを一枚引いてターンエンドです」
俺よりも一枚少ない井上のサイドはまだ四枚。そうだ、まだまだ序盤。今回俺がこの大会に懸ける想いはここで負けて終わるようなもんじゃない。ポリゴンZを破る策は整った、これから逆転へ向かって進むだけだ。
風見「今回のキーカードはポリゴンZ。
ワザマシンをつけることでワザの威力がより強力になる。
200ダメージを叩き出すのも夢じゃないぞ」
ポリゴンZLv.56 HP120 無 (PROMO)
ポケパワー インストール
自分の番に何回でも使える。自分のポケモンについている「ワザマシン」を1枚、自分の別のポケモンにつけ替える。このパワーは、このポケモンが特殊状態なら使えない。
─ ラーニング
自分の山札から、自分のポケモン1匹からレベルアップする「ポケモンLV.X」を1枚選び、そのポケモンの上にのせ、レベルアップさせる。その後、山札を切る。
無無 ねつぼうそう 40+
自分についている「ワザマシン」の数×20ダメージを追加。
弱点 闘+30 抵抗力 にげる 2
───
番外編「正月」
雫「あっ、日付変わった。あけましておめでとう」
翔「こちらこそ」
風見「今年もよろしく」
雫「よろしくー。……ってあれ!?」
風見「どうしたんですか?」
雫「どうしたんですかじゃなくて! なんでさも平然とうちにいたの!?」
風見「さっきからいました」
雫「そっちじゃなくて!」
翔「正月一人では暇でやること無いんだってさ」
雫「もう……。まあいいわ、今年もよろしくね」
「レックウザC LV.Xでラグラージに攻撃。ファイナルブラスト!」
深く息を吸い込んだレックウザC LV.Xの口から無慈悲なほど巨大で強大な極太レーザーが発射された。
あまりの光で目が、爆発するかのような音で耳が、大気を震わす衝撃で平衡感覚がどうにかなってしまいそうだった。なんとか両膝を足につけて堪える。
レーザーにすっぽり飲み込まれてしまったラグラージはHPバーを確認するまでもなく0となり、散っていく。
「これがポケモンカード最大火力、200ダメージ。ポケモンカードでHPが200を越すポケモンはいない。つまりどんな相手でも一撃で倒す強烈なワザだ。ルートプロテクターなんていう小細工も通用しないよ」
「でもそれほどの威力ならデメリットも……」
「ファイナルブラストは確かにデメリットを持っている。……が、それを回避出来るんだ」
「回避?」
「このワザは自分のエネルギーを全てトラッシュしなくてはならないデメリットがある。しかし手札が0のとき、その効果はなくなるんだよ」
ニヤリ。ああ、あれは勝負師の笑みだ。いや、でも中西さんは本気で僕を相手してくれている。だからこそ諦めちゃダメだ。僕を認めてくれている。こちらも全力で戦ってそれに応じなくてはならない。
中西さんのレックウザC LV.Xにはポケモンの道具のエネルギーリンクが、エネルギーは水が二つ、超、マルチ・エネルギーがついているが残りHPは30/100。ベンチにはジュペッタ50/70、ベンチシールドをつけているネンドール60/60、エネルギーリンクをつけた色違いのミロカロス40/60がいる。
今僕のベンチにはネンドール60/60、メタグロス40/110、特殊鋼エネルギーがついたメタグロス110/110。レックウザC LV.Xの残りHPは僅かだが、それに止めを刺すにはどのポケモンでもワザエネルギーが不足している。
メタグロスのグラビテーションというポケボディーで全てのポケモンのHPを20ずつ下げている。残りサイドは僕が五枚で中西さんが四枚。
「僕はメタグロス(40/110)をバトル場に出す」
「サイドを引いて私はターンエンドだ」
これで中西さんとのサイド差は二枚になった。
「僕のターン。ポケモンパルシティの効果でデッキの上から七枚確認し、その中のたねポケモンを好きなだけ確認してベンチに出す。……、ミズゴロウ40/40(グラビテーション計算済み)をベンチに出してデッキをシャッフル!」
そういえば先ほどのターン、中西さんはパルシティを使わなかった。しかし次のターン使われるかもしれない。こういう相互に有益のあるカードは早いうちに自分から潰しておくべき。
「ポケモンパルシティをトラッシュし、破れた時空を発動。さらにメタグロス(110/110)に鋼エネルギーをつける」
可愛げのある街から元の会場へ戻り、休む間もなく破れた時空へと周囲が様変わりだ。このエフェクトは目が疲れるからもう少しなんとかしてもらいたいなぁ。
「ネンドールのコスモパワーで手札を二枚戻して四枚ドロー」
この状況をなんとかできそうなカードを引き当てれた。もう少しこれは温存しておこう。
「ターンエンド」
「それではわたしのターン。手札の超エネルギーをジュペッタにつけ、こちらもネンドールのポケパワーを発動。手札を一枚戻して六枚ドロー」
またもや六枚ドロー。今度は一体何をするのか……。
「ヒンバス10/10(グラビテーション計算済み)をベンチに出し、破れた時空の効果でヒンバスを色ミロカロス60/60(計算済み)に進化させる」
これで一番の難敵色ミロカロスが二匹揃ってしまった。しかし色ミロカロスの欠点として、ワザエネルギーが水水無の3つもあることが挙げられる。今の色ミロカロスは二匹ともエネルギーがない。まだ大丈夫、まだしばらく大丈夫だ。
「そしてジュペッタの癇癪。手札を四枚捨てる」
「四枚ということは40ダメージ……!」
中西さんは手札から夜のメンテナンス、ワンダー・プラチナ、思い出の実、ハマナのリサーチを捨ててまたもや手札を0。そして癇癪は棄てた枚数だけジュペッタにダメージカウンターを乗せるポケパワーであり、合計40ダメージ分受けて残りは僅か10/70とギリギリだ。
「さあ、ファイナルブラスト!」
もう一発、激しい光の束がメタグロスを丸ごと包み込む。自然と目を塞ぎ手で耳を押さえる。大気の震えで体がガクガク震える。本当にこれが3Dなのか、なんていう迫力、パワーだ。もちろんワザとしての威力は言うまでもない。今バトル場にいるメタグロスは当然気絶となる。
「次もメタグロスをバトル場に!」
「サイドを引いて終わりだ。これで残りのサイドは二枚だね」
そう、中西さんのサイドは既に表向きになっているミラクル・ダイヤモンドとミステリアス・パールだけだ。
「まだまだ! 僕のターン、メタグロスに闘エネルギーをつけてミズゴロウをヌマクロー60/60(グラビテーション計算済み)に進化させてメタグロスでジオインパクト!」
メタグロスが腕で地面をえぐりながらレックウザC LV.Xに接近し、腕を勢いよく地面から離すとレックウザC LV.Xを下から上へ殴りつける。上へ殴り飛ばされたレックウザC LV.XはHPバーを0に減らしつつ宙を舞うと、そのまま自由落下していく。ズドンと重い音を鳴らして崩れていった。
「む……。それではジュペッタをバトル場に出そう」
「サイドを一枚引いてターンエンド!」
まだ僕のサイドは四枚も残っている。でもまだまだ諦めない! ようやく一番攻撃力のあるレックウザC LV.Xを倒したのだ。ここからは少し楽になるはず。
「私のターン。ダメージを受けていない方の色ミロカロスに水エネルギーをつけよう。そしてジュペッタの超エネルギーをトラッシュしてダークスイッチ!」
ジュペッタは口についているファスナを開き、顎が外れるのではないかと疑うくらい大きく開けると、口の中から火の玉と思わしきものが六つ程出てきた。そしてなんとジュペッタのHPが先ほどまで10/70だったのに対し今は70/70となっている。
それら火の玉はジュペッタの元を離れてメタグロスの傍によると、メタグロスの体の中に侵入していく。火の玉が一つ侵入していくにつれメタグロスのHPは10ずつ下がり、結果的に50/110と60も減らされてしまった。これはまるで……。
「ダメカンが入れ替わった……?」
「その通り。ジュペッタのダークスイッチは自分のエネルギーを一つトラッシュすることで、自分と相手のダメージカウンターをすべて乗せ換えるモノ。癇癪で蓄えていたダメージをここで放出したわけだ」
「ぐっ……。僕のターン! ヌマクローのポケパワーの飛び込むを発動! ベンチにこのポケモンがいるときコイントスをし、オモテの場合自分のバトルポケモンについているエネルギーをすべてこのポケモンにつけかえてバトルポケモンと入れ替える!」
ここでオモテを出しておかないと後で辛い展開になるのは必至……!
「残念、ウラだね?」
しかし無情にもオモテは出なかった。決死のポケパワーも決まらなかった。
「だったらヌマクローに水エネルギーをつけてミズキの検索を発動。手札を一枚戻し、デッキからラグラージを手札に加える。ネンドールのコスモパワーでデッキの底に手札を二枚戻し、三枚ドロー」
いや、よくよく考えるとジュペッタは次のターンワザを使えない。なぜならジュペッタにワザエネルギーはなく、ワザエネルギー一個で使えるワザはダークスイッチのみ。わざわざ使う意味がないからだ。
だから飛び込むを使うタイミングを間違えていた。ある意味ウラが出てよかったかもしれない。
「メタグロスでジオインパクト!」
ジュペッタに重い一撃が襲いかかる。先ほどダークスイッチでHPをマンタンに戻したにもかかわらず再び10/70とさっきと同じHPまで下げてやった。
「私のターン。手札から水エネルギーをまだダメージを受けていない色ミロカロスにつけ、グッズカードの夜のメンテナンスを使わせてもらうおう。このカードでトラッシュにあるポケモン、基本エネルギーを合計三枚まで戻すことができる」
中西さんが指定したのは水エネルギー二枚と超エネルギー一枚。エネルギー蒐集に回ろうとしているのか?
「そしてターンエンドとしておこう」
やはりジュペッタは棄てに入ったか。しかしそれでも中西さんの手札は再び0になっていた。
「僕のターン。手札の闘エネルギーをヌマクローにつけて飛び込む!」
今度のコイントスはきっちりオモテ。メタグロスの鋼、闘、特殊鋼エネルギーをも引き継ぐことになった。
「ここでヌマクローをラグラージ110/110(計算済み)に進化し、押し倒す攻撃。今ラグラージには闘エネルギーが二つついているから、60に20足して80ダメージ!」
残りHP10のジュペッタを一撃であっさり倒してしまうオーバーキルだ。次のポケモンには先ほどからエネルギーをちまちまと蓄え続けていた色ミロカロス60/60。本当は引きずり出すでこちらを攻撃したかったのだが相手の手札は0枚、アクアミラージュでダメージを与えられない。
「サイドを一枚引いてターンエンド」
「私のターン。ネンドールのポケパワー、コスモパワーで今引いたカードをデッキの底に戻し、手札が六枚になるようにつまり六枚引かせてもらう。ベンチにカゲボウズ30/30、ヒンバス10/10(どちらも計算済み)を出し、ミズキの検索を発動。手札を一枚デッキに戻してデッキからミロカロスを手札に加えるよ。そして破れた時空の効果でヒンバスをミロカロス70/70(計算済み)に進化し、カゲボウズにポケモンの道具の達人の帯をつける。この効果でカゲボウズのHPと与えるワザのダメージは20ずつ上がりHPは50/50となる。そして最後にバトル場の色ミロカロスに水エネルギーをつけて引き潮攻撃だ」
ラグラージの背後から襲いかかる波はラグラージを大きく飲み込みダメージを与える。今バトル場にいるミロカロスはダメージを受けていず、引き潮の効果で与えるダメージは80のままだ。これであっさりとラグラージのHPは30/110へと減らされてしまう。
「さあ、君のターンだ。と言っても私の色ミロカロスにダメージを与えることができるかな?」
「出来るさ」
「……?」
「僕のターン。手札からサポーターカードのハンサムの捜査を発動!」
「ハンサムの捜査……。そうかその手が!」
「このカードは相手の手札を確認し、そののち自分か相手を指定して指定されたプレイヤーは手札を全てデッキに戻して手札が五枚までドローしなくてはならない。そうすればそのハンドレスコンボも終わりだ!」
「くっ……」
中西さんが初めて苦しい表情を見せ、カードを二枚ドローする。ハンサムの捜査は五枚「まで」ドローするカードなので一枚以上五枚以下であれば任意の数だけ引くことができるのだ。
「ベンチのメタグロスに水エネルギーをつけてラグラージで色ミロカロスに押し倒す攻撃!」
ラグラージがミロカロスに向かって飛びかかる。ズン。と鈍い、重い音を立てて色ミロカロスはバランスを崩すと、そのままラグラージの下敷きになってしまった。
「闘エネルギーが二枚ついているから80ダメージ、その色ミロカロスは気絶! サイドを一枚引いてターンエンド!」
よし、この調子ならまだまだ行ける。中西さんが次に出したのはHPが僅か50/50で達人の帯をつけた、エネルギーがまだ一枚もないカゲボウズ。
達人の帯をつけるとHPとワザの威力が20ずつ上昇するものの、このポケモンが気絶したとき逆に相手はサイドを一枚多く引けるデメリットがある。
そしてラグラージには進化していないポケモンから受けるダメージを20減らすルートプロテクターというポケボディーがあるから一撃でやられるなんてそうそうないだろう。逆にこちらが次のターンカゲボウズを倒してしまえば僕の勝ちとなる。勝てるんだ!
「私のターン。バトル場のカゲボウズに超エネルギーをつけさせてもらい、攻撃だ。ぱっと消える」
ふよふよとラグラージのそばにやってきたカゲボウズが、頭の棘でチクリとラグラージに攻撃する。見た目通りの威力のなさそうなワザだ。
「残念ですけどラグラージにはルートプロテクターというポケボディーがあって進化していない───」
「それは分かっているよ。ただいろいろ言う前に君のラグラージを確認してごらん」
一瞬何を言いたいか分からなかったが、ラグラージのHPバーを確認してすぐに分かった。残り30あったHPが尽きている。
「そんな……。50ダメージ与えないと倒せないのに」
「ぱっと消えるの元々の威力は30だが、達人の帯で20プラスされて50ダメージということだ」
「でもカゲボウズのHPは僅か、すぐに倒せば……」
「倒せれるかな?」
「!?」
中西さんの場を確認するが、なぜかバトル場にはカゲボウズではなくネンドール60/60。ベンチを探してみてもカゲボウズの姿はない。
「ぱっと消えるは自分と自分についているカードを全て手札に戻す効果がある、さすがに手札のポケモンを攻撃する術はないだろう」
「くっ……」
仕方なくメタグロス50/110を再びバトル場に繰り出す。
「サイドを引いて、これでリーチだ」
「まだまだ! 僕のターン。鋼エネルギーをメタグロスにつけてターンエンド」
「私のターン、カゲボウズ30/30(計算済み)を再びベンチに出し、カゲボウズに超エネルギーをつけてこちらもターンエンドだ」
どちらもワザエネルギーが足りなくて攻撃ができないのだ。
「僕のターン、手札のマルチ・エネルギーをメタグロスにつけてジオインパクト!」
重い一撃がネンドールの足元から襲いかかる。巨体が空を舞って無抵抗に落ちていく。HPは一撃圏内だったからこれで僕もサイドを更に一枚引いて同じくリーチになった。次に中西さんが出すポケモンが最期のポケモン。
「私はカゲボウズ(30/30)をバトル場に出そう」
カゲボウズが出たという事は……。
「そして私のターン。カゲボウズに達人の帯をつけてぱっと消える!」
中西さんの最後の攻撃がメタグロスに襲いかかる。
「くっ……」
ヌマクローで飛び込むをした際に特殊鋼エネルギーも移動させてしまったのが後々響いてしまった。
やっぱり僕じゃダメだったのか……。
カゲボウズの可愛げな頭突きがきっちりメタグロスのHPを0にしていく。
中西さんは表向きになっている最後のサイドカード、ミステリアス・パールを引いてこの勝負を終わらせた。
持てる力を出したはずだが、それでもまだ及ばなかった。少し目頭が熱くなった、もしかすると潤目になっているかもしれない。
「前と比べてかなり腕をあげたね。私のコンボを破られた時は本当に危なかったよ。でも、今回は勝たせてもらった」
中西さんは優しげな眼でこちらを見つめている。
「次はどうなるかは分からないけどね。また、機会があればそのときは……」
そう言って中西さんは去って行った。
悔しかった。中西さんが僕を認めてくれたのは嬉しかったが、ポケモンカードでこんなに悔しかったのは初めてだ。
抑えていた感情が急に溢れそうになったのでバトルベルトとデッキを急いで直すと人気のないところに走って行った。
向井「今回のキーカードはレックウザC LV.X。
圧倒的なそのパワー。威力200は最高火力!
手札が0なら何回でも打てる!」
レックウザC LV.X HP120 無 (DPt3)
ポケボディー ドラゴンスピリット
このポケモンが、バトル場で相手のワザのダメージを受けたとき(このポケモンのHPがなくなった場合はのぞく)、自分のトラッシュのエネルギーを1枚、このポケモンにつけてよい。
水超闘無 ファイナルブラスト 200
自分のエネルギーをすべてトラッシュ。自分の手札が1枚もないなら、エネルギーをトラッシュする効果はなくなる。
─このカードは、バトル場のレックウザC[チャンピオン]に重ねてレベルアップさせる。レベルアップ前のワザ・ポケパワーも使うことができ、ポケボディーもはたらく。─
弱点 無×2 抵抗力 闘−20 にげる 3
手札が0。
カードゲームでは果てしなく無謀に近い行為だ。手札が0ということはやることがない、出来ることが無いというのと同意。しかし目の前にいる中西さんは簡単にやってみせた。
僕の場には闘、鋼、特殊鋼エネルギーがついているメタグロス40/110とベンチにはヌマクローとネンドールどちらも60/60。
中西さんの方にはエネルギーリンクと水エネルギー三つつけた色違いのミロカロス40/60と、ベンチシールドのついたネンドール60/60、エネルギーリンクのあるミロカロス10/60とカゲボウズ30/30がいる。
全体的にHPが少ないのは僕のメタグロスのポケボディー、グラビテーションのせいだ。全てのポケモンの最大HPが20ずつ下がるという特徴あるポケボディー。
しかしこれより強烈なのは中西さんの色ミロカロスのポケボディーだ。アクアミラージュは手札が0枚の時、相手のワザのダメージを受けない。さっきも述べたが今の中西さんの手札がそれだ。つまりダメージを与えれない。
「このままじゃあ……。僕のターン!」
……。今引いたカードはミズキの検索。このカードで何が出来るか。
「長考かい? まあ軽率な行動をせずにじっくり考えるのはとてもいいことだね。でもこのハンドレス(手札0)コンボを攻略出来るかな?」
「ここは運否天賦で! ヌマクローのポケパワーを使います。飛び込む!」
デッキポケット横のコイントスボタンを押す。コインが回転するアニメーションが出る。そしてその結果は。
「オモテか……」
もしこれでウラだったら万策尽きていた。ほっと胸を撫でる。
「このポケパワーはコイントスでオモテだったときに効果を得、自分のバトル場のポケモンのエネルギーを全てヌマクローにつけかえてヌマクローとそのポケモンを入れ替える!」
メタグロスがベンチに戻ると、ヌマクローが水泳の飛び込みの要領でバトル場にやってきた。ヌマクローはメタグロスの鋼、闘、鋼特殊エネルギーを引き継いだが、鋼特殊エネルギーの効果は当然受けることができない。
「? これが一体……。ヌマクローのワザでは私のミロカロスは突破できない上に次の私の番に攻撃すればヌマクローは気絶なのだけども」
「もちろんこれだけじゃないですよ。ミズキの検索を発動。手札を一枚戻してデッキからラグラージを加え、進化!」
ヌマクローの体が光に包まれ大きくなり、ラグラージへ変わっていく。足はもちろん両手を地につけてから雄たけびをするパフォーマンスも中々良い。
「なるほど、ラグラージのHPは130。正しくはメタグロスのグラビテーションで110/110になるけどもこれでなんとか次の番は凌げるね」
「それだけじゃありませんよ」
「……?」
「ラグラージに水エネルギーをつけて手札を一枚戻しネンドールのコスモパワー! 今の手札が二枚だから四枚ドロー。そしてベンチにミズゴロウ40/40(グラビテーション計算済み)を出して、ラグラージで攻撃! 引きずり出す!」
ラグラージは僕のバトル場から跳躍して相手の場へと向かう。
「攻撃? 私の色ミロカロスは───」
しかしラグラージはその色ミロカロスの上を通過し、ベンチで控えている普通のミロカロスに地面に着く際に拳でハンマーのように殴りつけた。ズシンと会場震える程の音で勢いよく殴りつけられたミロカロスは気を失い、さらにラグラージはミロカロスを掴むと乱雑にバトル場へブン投げる。場所を失った色ミロカロスはベンチへ仕方なく下がるしかなかった。
「これは……」
「ラグラージの引きずり出すはダメージを与える前に相手のベンチポケモンを一匹を無理やりバトル場に文字通り引きずり出すことが出来るワザ。これならアクアミラージュをかわして攻撃出来る!」
中西さんは参ったなと顎を撫でた。引きずり出すは威力30のワザだが、虫の息だったミロカロスを倒すには十分だ。中西さんは懲りずに色ミロカロスをバトル場に出す。
「サイドを一枚引いてターンエンド」
「いいね。私のターン。……それじゃあ私もネンドールのコスモパワーだ。手札を一枚デッキの底に戻し、手札が六枚になるようにドローする」
今の中西さんの手札は1枚、それを一枚戻してからドローなので六枚ドロー。だけど何故ハンドレスをやめる? 手札を六枚消費するのは中々骨で、ポケモンカードならたねポケモンがいないのに進化ポケモンが来ると詰んでしまう。
「私はカゲボウズをジュペッタ70/70(グラビテーション計算済み)に進化させる。そしてレックウザC80/80(同じく)をベンチに出そう」
グラビテーション下でたねポケモンなのに80/80なんて、なんてHPの高さだ。
「更にレックウザCにエネルギーリンクと超エネルギーを一つつけるよ」
あっという間に残り手札が二枚。でもこの二枚を処理するのは流石に厳しいはず!
「ここでジュペッタのポケパワーだ。癇癪!」
合図と共にベンチでジュペッタが一人暴れだす。しかしそれは誰に向けられたものでなく、自分を傷つけるだけであった。ジュペッタのHPが50/70へ、20下がる。自分を傷つけるポケパワー、一体どういうことだ?
「この癇癪は自分の手札を好きなだけトラッシュし、トラッシュした枚数分のダメージカウンターをこのジュペッタに乗せるんだ。私は残りの手札二枚をトラッシュしてジュペッタにダメージを与えたと言う訳だ」
リスクはあるもののきちんとそういうための策も取ってあると言う事か。トラッシュされたカードはカゲボウズ、マルチ・エネルギーの二枚。そして中西さんの手札は再び0となった。
「それでは攻撃。ミロカロスで引き潮だ」
色ミロカロスに乗っているダメージカウンターは依然二つ。80から20引かれた60ダメージがラグラージに襲いかかり、HPは50/110となる。このままでは次のターン気絶してしまう。
「さあ、君のターンだ」
いや、気絶してしまう。というトラップか! よくよく考えればそれは必然じゃあないか。色ミロカロスにダメージを与える方法は意外と簡単なところにあった。問題なのは自分の場ではそれをやるだけの役者が揃っていないということ。
「僕のターン、ドロー!」
引いたカードはアンノーンQ。このカードを使えばやろうとしていることが案外簡単にできるかもしれない。
「アンノーンQ10/10(グラビテーション計算済み)をベンチに出します」
「HPがたった10……」
「そしてダンバル30/30(グラビテーション計算済み)を出してこいつに鋼の特殊エネルギーをつけます。さらに破れた時空の効果でダンバルをメタング60/60(計算済み)に進化させ、ネンドールのコスモパワー。手札を二枚デッキの底に戻して四枚ドロー。そしてアンノーンQのポケパワーをここで使います。QUICK!」
ベンチでぼんやりとしてたアンノーンQは指令と共にバトル場のラグラージによると、そのまま背中に張り付いた。まるでアンノーンQがシールになったかのようだ。
「QUICKは1ターンに一度このポケモンについているすべてのカードをトラッシュしてこのポケモンをポケモンの道具として自分のポケモンにつけることができる。このカードをつけているポケモンの逃げるエネルギーは一個分少なくなる。だからラグラージの逃げるエネルギーは二から一へ下がるんだ。そしてラグラージの特殊鋼エネルギーをトラッシュしてベンチのミズゴロウと入れ替える。ターンエンド!」
「ミズゴロウ……。なるほど、確かに」
中西さんはまるで出したクイズの答えを当てられたかのような表情をする。
「私の色ミロカロスが相手を気絶してサイドを一枚引くとなると私に手札が発生する。そして色ミロカロスのアクアミラージュは効果を失う。確かにその通りだ」
だがその顔には余裕がある。
「私がその辺の対策をしていないとでも?」
一気に血の気が引いた気がする。そして積み上げたものが一気に瓦壊したような。
「それでは私のターン。エネルギーリンクの効果で色ミロカロスについている水エネルギーを二つ程レックウザCに動かそう」
色ミロカロスとレックウザCについている装置が共鳴しあって、色ミロカロスについている水シンボル二つがレックウザCに移る。
「そして水エネルギーを一つトラッシュして色ミロカロスをベンチに逃がし、レックウザCをバトル場に」
わざわざ色ミロカロスを控えるのか。そこまで大事にするのは、色ミロカロスが中途半端なダメージを受けると邪魔にしかならないからだろう。確かにそうだ。それが定石だ。自分目線でしか考えれていなかった。
「レックウザCにマルチ・エネルギーをつける。このカードは、これ以外の特殊エネルギーがついているなら無色1個ぶんにしかならないが、そうでなければ全てのタイプのエネルギー1個分として働く。レックウザCで竜巻攻撃」
中西さんはワザの指定と同時にコイントスを二回行った。ウラ、オモテ。その判定が終わるとレックウザが強力な風を吹き起こす。それはバトル場で一つの竜巻となって、ミズゴロウの体を飲み込んでいく。暴風の中でぐるんぐるんと回され、終いには空高くはじき出されたミズゴロウはそのまま地面に打ち付けられてHPバーを0にする。
テキストを確認するとこの竜巻というワザは威力50のワザで、二回コイントスしてオモテの数だけ相手のエネルギーをトラッシュしてしまうものだ。ただし二回裏だとこのワザ自体が失敗してしまう。決して安定したワザとはいえない。
全ての予定がこれで狂ってしまった。しかしここはラグラージでいくしかない。
「さて、サイドを一枚引いてターンエンドだ」
「僕のターン!」
あのレックウザCを一撃で沈める方法はあることはある。しかしその条件が、そのためのカードが引けない……!
「くそっ、どうしよう」
今の手札はミズキの検索、ポケモンパルシティ、ネンドール、破れた時空、水エネルギー、鋼エネルギー、ラグラージ。どうにかしないと。どうにかしてチャンスを作り出さないと。
「ミズキの検索を使って、手札を一枚戻してメタグロスを手札に! それでメタングを進化だ」
ラグラージをデッキに戻してメタグロスを加え、そしてメタグロス110/110(グラビテーション計算済み)に進化。しかしメタグロスのグラビテーションは重複しなのでHPが40減ることはなく、20しか変動がない。
「破れた時空をトラッシュし、新しいスタジアムカードのポケモンパルシティを使う」
周りの風景が元の会場に戻ると、間髪入れずにポケモンがモチーフとなった建物が並ぶ街並みに変わった。ピカチュウの顔の形をした家や、あちこち空にモンスターボールのバルーンが浮かんでいる。
「そしてパルシティの効果発動。各プレイヤーは自分のターンに一度、デッキの上からカードを七枚確認してその中のたねポケモンを好きなだけベンチに出すことが出来る」
しかしベンチに出せるたねポケモンがない。確認した後、シャッフルさせる。これで僕の手札は四枚。
「ネンドールのコスモパワー。手札を二枚戻し、四枚ドローだ」
手札の水エネルギーとネンドールを戻してこのドローに賭けてみた。しかし結果はうまい事行かず。
「ぐっ、水エネルギーをラグラージにつけて押し倒す」
ラグラージは、レックウザCに向かって走り出すと途中で飛びかかった。そのままショルダータックルをかましてレックウザCのバランスを崩すと、気合いのこもった右拳がレックウザCの体に打ち込まれた。強烈な攻撃を受けたレックウザCは思わずバトル場に倒れ伏し、そのレックウザCの背の上にラグラージが立っていた。辛そうなレックウザCのHPは気絶手前の10/80。
「このワザの元々の威力は60だけど、このカードについている闘エネルギーの数かける10ダメージ追加される! 合計70ダメージだ」
本当はさっきのコスモパワーで闘エネルギーを引くことができ、それをラグラージにつければ80ダメージ与えれてレックウザCを気絶させることができたのだが、闘エネルギーを引くことができなかったのだ。
だがしかしラグラージにはルートプロテクターというポケボディーを持っていて、進化していないポケモンから受けるワザの威力を20弱める効果がある。再び竜巻攻撃が来ても50−20で30ダメージだけ。ラグラージは凌ぎきることが出来る。
「それでは私のターンだ。ミラクル・ダイヤモンドを発動」
「ミラクル・ダイヤモンド!?」
これも超レアなプロモカードだ。ミステリアス・パールといいとても珍しいカードを持っている。
そしてミラクル・ダイヤモンドのカードは自分のサイドを全て確認し、その中にあるトレーナーのカードを一枚手札に加えることができ、加えた場合このミラクル・ダイヤモンドを表向きにしてサイドに置くというものだ。
「ミラクル・ダイヤモンドでミズキの検索を手札に加え、早速使うよ。手札を一枚戻してレックウザC LV.Xをデッキから加えてレベルアップだ!」
バトル場のレックウザCが力に溢れた輝きを放つ。残り僅かしかなかったHPも、30/100とまだある程度まで増やした。しかし問題は威圧感を強く放っていることだ。なんていう力強さを放つカード。
「さて、再び私の手札は0」
中西さんはまるで可愛い幼子を遠目で見るような微笑みで僕を見つめる。
「ポケモンカードでの最大火力を御見舞してあげよう」
向井「今回のキーカードはラグラージです。
ルートプロテクターで相手の攻撃を防ぎつつ、
引きずり出して押し倒すパワースタイルがウリです」
ラグラージLv.60 HP130 水 (DPt3)
ポケボディー ルートプロテクター
このポケモンが受ける、相手の「進化していないポケモン」のワザのダメージは、「−20」される。
水無無 ひきずりだす 30
のぞむなら、ダメージを与える前に、相手のベンチポケモンを1匹選び、相手のバトルポケモンと入れ替えてよい(新しく出てきたポケモンにダメージを与える)。
水無無無 おしたおす 60+
自分の闘エネルギー×10ダメージを追加。
弱点 草+30 抵抗力 − にげる 2
───
おまけ・ポケカ番外編
「芸能人事情2」
恭介「俺さ、昨日家の近くのコンビニではんにゃの二人にあったんだ!」
翔「また芸能人ネタかい」
恭介「俺ほど芸能人に会う人はいねーだろー!」
翔「芸能人っていうかお笑い芸人ばっかじゃん」
恭介「一応芸能人じゃん!」
翔「俺はこないだ知念君を見かけたぜ」
恭介「お前もジャニーズばっかだろ!」
翔「知らんよ! なんで俺に言うの」
恭介「なあ蜂谷、お前も何か言ってやれよ!」
蜂谷「俺はこないだ上野公園でアンガールズの田中見かけたから声をかけたら苔食わされた」
翔&恭介(なんでいちいち声かけるのかな……)
「石川おめでと」
辛くも勝利をもぎ取ってきた石川が溢れんばかりの笑みを携え俺達の元に戻ってきた。
「……。あのさ、なんかよそよそしいから下の名前で呼んでくれない?」
「下の名前はえーっと。薫だっけ?」
「うん」
「薫、おめでと」
「うん、ありがとう」
あれ、こいつってこんなキャラだったかな。
「けっ、陽気な事だな」
拓哉(裏)が呆れた目でこちらを見る。こいつの言いたいことはだいたいわかる。
「はいはい。二回戦ももう始まるな」
「二回戦といえば翔とあたしが対戦だね」
と、薫。そういやそうだった。他にもこの二回戦は蜂谷を下した沙羅比香里と、能力者の高津洋二の対戦。そして松野さんともう一人の能力者の山本信幸の対戦もある。注目のカードが多い二回戦だ。
「さて行ってくるか」
「拓哉しっかりな」
「誰に向かって言ってやがる」
相変わらずコミュニケーションの取りにくい奴である。素直になれ素直に。ま、らしいと言えばらしいのだが。
「あっ剛出番だ」
「うん?」
二回戦第一ブロックでは俺らの中では拓哉(裏)と向井剛が出番となる。ちなみにここで二人は潰しあう事はなく、二人が戦うのは順当に行けば準決勝(四回戦)だ。沙羅と高津の対戦もこのブロック。
一方第二ブロックは恭介、風見、俺と薫に松野さんの五人が出て忙しい。恭介と風見は共に勝てば三回戦での対戦。風見杯以来の勝負だ。そして俺か薫のどちらかと松野さんか山本が三回戦で当たることになる。
「頑張ってね」
「……僕も負けないように頑張るよ」
向井の声はどうも弱気だ。
「うーん、剛ももっと自信持てばいいのに」
今から対戦に向かう向井と喋っていた薫を見つめる。……松野さんが負けるとは思わないのだが、万が一。もし俺が負けて薫が勝ち上がって、それで山本も勝って二人の対戦となって山本が勝てば、薫は植物状態になってしまう。
こういう変なややこざに薫はもちろん恭介達を巻き込んじゃダメだ。絶対に勝たなければならない。元より負けるつもりで勝負に挑む気なんてさらさらないのだが。
自信を持て、というのは小さい頃から言われ続けていたことであって、特に小さい頃から馴染みのある薫には事あるごとに言われ続けた。
でも自信を持つというのはどういうことなのか分からず、気丈な振りをしたりもした。
自信というのは辞書によると自分の才能等を信じるということらしいのだが周りの人は僕よりも立派なそれを持っているのでとてもじゃないが信じれない。奥村先輩、風見先輩、長岡先輩、藤原先輩。誰もかれもがこないだの風見杯で上位にいたメンツだ。
手元にあるのは今にも消えそうな炎。しかし周りにはより強い輝きを持つ大きな炎だらけ。委縮するのも仕方ない。
実際ここまで来れたのも、予選といい一回戦といい御世辞にも上手じゃない初心者といったような感じの相手ばかりであったからで、なんとか利を拾う形となっていた。
だがもうそれも通用しない。今、僕の目の前に対戦相手として立っているのは過去の大会(大会に参加したわけではないので聞いた話)やイベントなどで何度も勝ち続けてきた男。中西 哲(なかにし てつ)だ。
スーツを着た四十を越えているパパさんプレイヤーで、柔和な顔つきをしているのだが、それに反して鋭いプレイングで他を寄せ付けない。優勝候補の一角を担う人だ。そして過去に僕自身ジムチャレで完膚なきまで叩きつぶされたことがある。
「お久しぶりですね」
「君は……、先月のジムチャレでの。あのときは私の息子が御世話になりました」
「まぁ……」
二月に行われたジムチャレで彼と対戦した後、小学校中学年くらいの彼の息子とも対戦したのであった。ちなみにそっちは勝てた。
「さて、そろそろ始めますか。私も息子に負けるなと言われているんですよ。というわけで君には悪いが手抜かりは一切ナシで行かせてもらうよ」
「……お願いします」
バトルベルトを起動して対戦の準備を整える。前回はコテンパンにされたのだから、今回は前よりはマシな戦いをすることを目標だ。そう、たとえばせめてサイドを四枚引くくらいか。
「さて、私が先攻をさせてもらってもよろしいですかな」
「はい」
中西さんの最初のバトルポケモンはヒンバス30/30。ベンチにはヤジロン50/50。前戦った時の中西さんのデッキは闘タイプメインのパワーデッキだったがあの時とはまた違うデッキのようだ。
一方僕のバトルポケモンはダンバル50/50でベンチにも同じダンバルが一匹。理想の形ではないが戦えない訳ではない。
「それでは私のターンから。手札の水エネルギーをヒンバスにつけまして、ヒンバスのワザのカウントドローを使わせていただきます。このカウントドローは相手の場にある進化していないポケモンの数だけ山札からカードを引く効果を持っています。今君の場にいる条件に該当するポケモンは二匹。よって二枚引かせてもらい、ターンエンドです」
今回の彼のデッキはどういうデッキなのか、出来れば早めに見切りたかったのだが。もしかして準備に手間がかかるのか?
「僕のターン。ゴージャスボールを使います」
ゴージャスボールはデッキから好きなポケモン(ただしLV.X除く)を手札に一枚加えることのできるグッズだ。僕が選んだのはヌマクロー。
「更にハマナのリサーチを使って僕はデッキから鋼エネルギーとミズゴロウを手札に加え、ベンチにミズゴロウを出します」
ハマナのリサーチはデッキから基本エネルギーまたはたねポケモンを二枚まで選んで手札に加えることのできるサポーターだ。そしてベンチに出したミズゴロウ60/60は二進化するたねポケモンでは高水準のHPを持つ部類だ。
「さっき加えた鋼エネルギーをダンバルにつけてピットサーチ!」
ダンバルの赤い眼から真っすぐ会場の天井に向けて同じ赤いレーザーポイントのような光が発せられる。このワザは自分のデッキからスタジアムカードを一枚選んで相手プレイヤーに見せてから手札に加えるもの。僕は破れた時空を加えた。
「私のターンだね。手札からサポーターカードのデパートガールを使わせてもらうよ。このカードの効果で私は自分の山札からポケモンの道具を三つ手札に加えるんだ。私はエネルギーリンク二枚とベンチシールドを一枚手札に入れてそのベンチシールドをヤジロンにつけさせてもらおうか」
ベンチシールドをつけたポケモンはベンチにいるかぎりワザのダメージを受けない。つまりヤジロンにダメージを与えるならバトル場にひきずりださないといけないわけだ。
「さらにグッズカードのミステリアス・パールを発動。このカードの効果で自分のサイドを全て確認し、その中にあるポケモンを一匹相手に見せてから手札に加えることができる。加えた場合はこのミステリアス・パールをオモテにしてサイドに置くんだ。私はミロカロスを加えるよ」
ミステリアス・パールはかなり人気なレアカードだ。大会上位者のみもらえる限定カード。よく持っているな。
「そしてヒンバスをミロカロスへと進化させて水エネルギーをつけよう」
小さい小さいヒンバスが、光り輝きながらそのフォルムをより大きく、美しく作り変えていく。ミロカロス90/90はヒンバスのHPの三倍もある。これはどう切り抜けるべきか。
「ミロカロスで攻撃といこうか。クリアリング」
大きな体を活かしたミロカロスの攻撃がダンバルに襲いかかる。しかしダメージは思ったより軽く20で済んだ。まだHPは30/50残っている。
「僕のターン! 手札からスタジアムカード、破れた時空を発動」
フィールド全体が破れた時空に姿を変えていく。このスタジアムが場にある限り、お互いのプレイヤーは自分のターンに場に出したばかりのポケモンを進化させられる。
「バトル場のダンバル、ベンチのミズゴロウをそれぞれ進化させる!」
これで僕のポケモンは全体的に強化された。メタング60/80もヌマクロー80/80もHPは一進化の平均。簡単には倒されまい。
「そしてメタングのポケボディー、メタルフロートの効果で逃げるエネルギーがなくなったメタングを逃がしベンチのダンバルを新しくバトル場に出してメタングに闘エネルギーをつける!」
メタングのメタルフロートはこのポケモンに鋼エネルギーがついているなら逃げるエネルギーがなくなるというもの。ここはダンバルを盾にして自分の体勢を整えておきたい。
「ダンバルにはエネルギーがついてないからワザは使えない。ここでターンエンド」
「では私のターン。遠慮はしないよ。ヤジロンをネンドール(80/80)に進化させてポケパワーのコスモパワーを使おう。この効果は手札を一枚か二枚を山札の底に戻して手札が六枚になるようにドローするものだ。今の私の手札は六枚。そのうち二枚を山札の底に戻して山札から二枚引く。そしてサポーターのミズキの検索を発動だ」
ミズキの検索は手札のカードを一枚戻してデッキからポケモンのカードを手札に加えるサポーター。一気に攻めてくるつもりか。
「私はヒンバスを手札に加えてベンチに出す。さらに破れた時空の効果で、ヒンバスをミロカロスに進化だ」
しかし今回のミロカロスはさっきのミロカロスと違う。色違いのミロカロス80/80だ。既にバトル場にいるミロカロスよりもHPが10少ない。
「バトル場のミロカロスに水エネルギーをつけて攻撃だ。スケイルブルー!」
ミロカロスの足元から僕の背丈の三倍くらいはありそうな巨大な波が発生し、ダンバルに打ちつける。見た目通りの壮絶な威力で、あっという間にHPが0だ。次のポケモンに僕はメタングを選択。
「このワザの威力は90から自分の手札の枚数かける10引いたものでね、今の私の手札は二枚。だから与えるダメージは70だ。サイドを引いてターンエンド」
サイドを引く……。つまり手札が一枚増えたことになる。だからなんだっていうんだ。でも何か引っかかる。
「それじゃあ僕のターン! 手札からハマナのリサーチを使って闘エネルギーとヤジロンを手札に加え、ヤジロン(50/50)をベンチに出す。そして破れた時空の効果でヤジロンをネンドール(80/80)に進化させ、僕もコスモパワー!」
手札を一枚だけデッキの底に戻す。これで二枚になったから四枚ドローだ。
「メタングに鋼の特殊エネルギーをつけ、メタグロスへ進化だ! メタグロスのポケボディー、グラビテーションの効果で場のポケモンのHPは全て20ずつ小さくなる!」
メタグロスを中心に薄い紫色のドームが形成され場のポケモン全てを包み込んだ。その中にいるポケモンは変な重力に押しつぶされそうでいる。
このポケボディーで僕のポケモンのHPはメタグロスが90/110、ヌマクローとネンドールが60/60。中西さんのポケモンはミロカロス70/70にネンドールと色違いのミロカロスが60/60。
更にメタグロスにつけた鋼の特殊エネルギーは通常の鋼エネルギーと違って鋼ポケモンについているなら受けるワザのダメージを10減らしてくれる。これでグラビテーションのディスアドバンテージも多少はどうにかなる。
「10足りない……。くっ、メタグロスでミロカロスに攻撃。ジオインパクト!」
メタグロスが四つもつ腕のうち一つを地面に擦りつけながら低空移動しミロカロスに近づく。そしてずっと地面に擦りつけていた腕を一気にアッパーカートのように振り上げミロカロスに強大な一撃を喰らわせた。さらに地面から腕を振り上げた際に同時に地中から飛び出した岩がベンチの色ミロカロスに襲いかかる。
「ジオインパクトは場に自分のスタジアムがあるとき、攻撃した相手と同じタイプのポケモンにも20ダメージを与える」
このジオインパクトの元の威力は60。よって相手のミロカロスのHPは10/70、ベンチの色ミロカロスは40/60。
「むっ」
中西さんの表情が僅かに陰る。
「なかなかいい攻撃だ。だが少しだけ足りなかったね」
そう、バトル場のミロカロスは10だけHPを残している。さっき引かれた分のサイドをここで取り返しておきたかったのだが……。
「それでは私のターン。ベンチにカゲボウズ(グラビテーションの効果を受けてHPは30/30)を出そう。そしてバトル場のミロカロスについている超エネルギーをトラッシュしてベンチの色ミロカロスと交代だ」
ここで交代か。だが意図することが分からない。次にジオインパクトを食らえば二匹ともども気絶なのに。更に色ミロカロスにはまだエネルギーはついていない。ワザを使うにはエネルギーが三つ必要なのだ。
「更に手札のポケモンの道具、エネルギーリンクをバトル場の色ミロカロス、ベンチのミロカロスにつけて効果を発動。エネルギーリンクがついているポケモン同士ではエネルギーの移動が自由になるのでね、ミロカロスについている水エネルギー二枚をバトル場の色ミロカロスに移動させ、手札の水エネルギーを色ミロカロスにつけるよ」
これであっという間に色ミロカロスにエネルギーが三枚ついた。早すぎる。
「色ミロカロスで引き潮攻撃といこう」
引き寄せる波がメタグロスを襲う。グラビーテションが発動している中ではいつもよりもダメージの比率が大きい。だから僅かなダメージでも痛いのだが。
引き潮攻撃は80に、色ミロカロスに乗っているダメージカウンターの数×10だけ引いた分の威力を与えるモノ。今色ミロカロスには二つダメカンがあるから80−20で60、更に鋼の特殊エネルギーで10引いて50ダメージだ。これでメタグロスのHPは40/110。
「……」
次同じだけダメージを受ければまずいな。確実にダメージを与えていきたいところだが……。
「先に言っておくが、この色ミロカロスにはアクアミラージュというポケボディーがあるんだ。アクアミラージュは手札が一枚もないときこのポケモンはダメージを受けないというものでね、今の私の手札は?」
「0……」
「そう。だから次のターンに色ミロカロスがダメージを受けることはなく、君のメタグロスを確実に仕留めるよ」
中西さんが前もって説明するということは当然余裕があるということだ。このままでは前と同じく一方的にやられて終わるだけだ。
そんなのは、イヤだ……!
向井「僕もこのコーナーいいんですか?
えっと、それじゃあ今回のキーカードはメタグロスです。
ポケボディーのグラビテーションをどう使うかがカギです」
メタグロスLv.68 HP130 鋼 (DPt3)
ポケボディー グラビデーション
おたがいの場のポケモン全員の最大HPは、それぞれ「20」ずつ小さくなる。おたがいの場で複数の「グラビテーション」がはたらいていても、小さくなるHPは「20」。
鋼鋼無 ジオインパクト 60
場に自分の「スタジアム」があるなら、相手と同じタイプの相手のベンチポケモン全員にも、それぞれ20ダメージ。
弱点 炎+30 抵抗力 超−20 にげる 3
他の二試合も終わり、一回戦はこの試合だけとなった。残りサイドは如月が二枚、こちらは四枚。
その如月のバトル場には残りHP10/110のルカリオLV.X、ベンチにはグライガー60/60とキュウコン80/80。更に炎と闘エネルギーが一枚ずつついているウインディ100/100がいる。
こっちのバトル場には水エネルギーが二枚ついたオムスター120/120とベンチにはプテラ80/80にネンドール80/80。終盤に来てかなり余裕がなくなってきた。
「あ、あたしのターン!」
なんだかまだ慣れないな……。ちょっと自分でも恥ずかしいような、なんというか。いや、そんなことを考えてる暇はなかった。
「プテラの発掘でデッキからかいの化石を手札に」
プテラの発掘は自分のデッキからかいの化石、こうらの化石、ひみつのコハクのうち一枚を手札に加えるカード。ずがいの化石などには対応していない。
「手札からこうらの化石をベンチに出してグッズカードのふしぎなアメを発動。自分の場のたねポケモンから進化するポケモンを手札から選んで進化させる。あたしはこうらの化石をカブトプスに進化させるわ」
カブトプス130/130の三度目の登場だ。指定された手札をトラッシュしないと高い火力が出せないものの、やはりうちのエースカードだ。
「ネンドールのコスモパワーを発動。手札を一枚戻して二枚ドロー」
コスモパワーは手札を一枚か二枚デッキの一番下に戻し、手札が六枚になるようにドローするポケパワーだ。
「とりあえずはオムスターで攻撃。原始の触手!」
のろい動きでルカリオLV.Xの元まで詰め寄ったオムスターは触手を使ってルカリオLV.Xの体を縛り上げるとそのまま締め上げる。このワザの元々の威力は30。それに自分のトラッシュにある化石カードの数かける10ダメージ追加出来る。今あたしのトラッシュにはひみつのコハクとこうらの化石が二枚、かいの化石が一枚あるので50追加となり80ダメージ。残りわずかしかHPのないルカリオLV.Xはこれで気絶だ。
「わたしの次のポケモンはウインディよ」
「サイドを一枚引いてターンエンドだ」
「あと一息ね。わたしのターン! 手札の炎エネルギーをウインディにつけ、更にミズキの検索を発動。手札を一枚戻してデッキから好きなポケモンを手札に加えるわ。わたしが加えるのはグライオン! ベンチのグライガーを進化させるわよ」
今、如月の手札にはグライオンLV.Xがいる。ここでグライオン80/80がレベルアップしたとき、序盤と同じように状態異常ラッシュを食らうようになってしまうことへの対策も練っていかなければ。
「ウインディで怒りの炎!」
真っ赤な炎を体に纏ったウインディがオムスター目がけ突進してくる。簡単に撥ねられたオムスターのHPは60減って60/120。怒りの炎は威力60に、炎エネルギーを一つトラッシュしてこのポケモンに乗っているダメカンの数かける10だけ威力が上がるワザ。だがまだウインディにダメカンはないので威力は60のままだ。
「怒りの炎の効果でこのポケモンの炎エネルギーをトラッシュするわ。ターンエンド」
「あたしのターンだ。カブトプスに闘エネルギーをつけて……」
ウインディのHP100に対し、原始の触手の威力は80。そしてウインディは水タイプに対し弱点+20を持っている。本来なら80+20でなんなくウインディを倒せる。……はずなのだがウインディにはフレアコンディションというポケボディーがある。このポケボディーはウインディに炎エネルギーがついているとき、弱点が全てなくなるというものだ。だから原始の触手では倒せない。
いや、出来る。化石カードの基本効果をすっかり忘れていたじゃないか。
「よし、プテラの発掘でこうらの化石を手札に加えて手札からベンチにこうらとかいの化石を出す……わ」
「今さらそんなに化石を出してなんになるのよ」
「この二枚の化石を自身の効果でトラッシュさせるわ! もちろんこの効果はトラッシュするだけであって気絶判定にはならない」
「自分で自分をトラッシュ……?」
「全ての化石カードは、このカードの持ち主は自分の番に場からこのカードをトラッシュしてよい、この効果は気絶とはならない。という効果を持っている。これを使わせてもらっただけだ」
「だからそんなことして何になるのよ」
「トラッシュの化石が増えたと言う事だ。……いや、言う事よ。オムスターで原始の触手!」
このワザはトラッシュにある化石の数だけ威力が増すワザ。元の威力30に対し、これでトラッシュの化石は七枚で足される威力は70。よって与えれるダメージは100! 弱点計算無しで決めれた。ウインディの巨体も軽々と持ち上げた触手はHPバーが底に尽きるまで絞め続けた。
「これで追いついた!」
「む……。わたしの次のポケモンはグライオンよ。分かってるわよね」
「う……」
ウインディを倒したことによってサイドはどちらも二枚ずつ。だがダメージを受けているオムスターを抱えている分こちらが幾分不利だ。
「わたしのターン。手札の炎エネルギーをキュウコンにつけ、グライオンをレベルアップ! そしてスピットポイズン!」
グライオンLV.X110/110が羽を広げて飛んできて、オムスターに噛みつく。オムスターのHPバーにマヒと毒のアイコンが現れた。
スピットポイズンはレベルアップしたときにだけ使えて相手のポケモンを毒とマヒ状態にする恐ろしいポケパワーだ。
「さらにグライオンLV.Xでバーニングポイズン! 相手を毒または火傷にし、その後このポケモンについているカードを自分の手札に戻してもよい。この効果で火傷を選ぶわ。そしてこのグライオンLV.Xはまだ手札に戻さない!」
状態異常を三つも抱えるハメになってしまった。如月のターンが終わると同時にポケモンチェック。毒のダメージで10ダメージを受けHPは50/120。そして火傷はコイントスを行ってオモテならノーダメージ、ウラなら20ダメージ。ここでウラを出すと余裕がなくなる。が、無情にもコイントスの結果はウラ。これで残りHPは30/130。
「あたしのターン。手札の闘エネルギーをカブトプスにつけて、アンノーンG(50/50)をベンチに出す……わよ」
「アンノーン……?」
マヒになっているオムスターはワザを使うのはもちろんベンチに逃げることも出来ない。
「やることがないのでターンエンドだ」
ここで再びポケモンチェック。毒のダメージで10受け、続いて火傷の判定。ここでオモテを出さなければオムスターはここで気絶、この後始まる如月のターンで相手のポケモンの攻撃をモロに受けてしまう事になる。お願いっ……!
「うーん」
と唸ったのは如月の方だ。なんとかオモテを出したのでオムスターは延命。そして二回目のポケモンチェックなのでマヒもここで自動的に回復。しかしオムスターのHPはもう20/130しかない。
「わたしのターンよ。手札から炎エネルギーをキュウコンにつけてターンエンドね」
グライオンLV.Xは逃げるエネルギーが0。その気になればキュウコンでオムスターに止めをさすことができたのだろうがする必要がないと判断されたのだろうか。
毒のダメージで残りHPは10。そして火傷の判定。ここでオモテが出ればオムスターで……。
「運はあまり良い方じゃなかったわね」
無情にも結果はウラ。これでオムスターのHPは尽きて気絶となる。先にリーチをかけたのは如月だった。あたしの最後のポケモンはカブトプス。しかし、化石カードはもうデッキに一枚も残ってはいない。このデッキにはひみつのコハクとかいの化石が三枚ずつ、こうらの化石が四枚という構成にしてあるのだ。
カブトプス得意の原始のカマは効果を使うことはできず、ただの20ダメージしか与えれない地味なワザに降格してしまう。
「あたしだって負けたくない……。あたしのターン! 手札の闘エネルギーをカブトプスにつけて、アンノーンGのポケパワー、GUARDを発動! ベンチにいるこのポケモンについているカードをトラッシュし、このカードをポケモンの道具として自分のポケモンにつけることができる。あたしはカブトプスにアンノーンGをつける」
ベンチにいたアンノーンGがバトル場にいるカブトプスの元までやってきてシールを貼り付けたかのようにカブトプスにひっついた。
「カブトプスで岩雪崩攻撃!」
大量の岩が相手の場を一斉に襲いかかる。このワザは威力60、効果は相手のベンチポケモン二匹にも10ダメージを与えるというものだ。このワザでグライオンLV.XのHPは50/110。ベンチにいたキュウコンは70/80。如月には他のベンチポケモンがいないので岩雪崩のダメージを受けるポケモンはこの二匹だけだ。
「しつこいわね。わたしのターン! グライオンLV.Xでバーニングポイズン!」
グライオンLV.Xがカブトプスに噛みついてきた。だがしかしカブトプスには先ほどと同じように状態異常のマーカーが現れることはなかった。
「ど、どうして?」
驚きを露わにして戸惑う如月、勝負どころでついにボロが出てしまった。相手のカードのテキストを読むという至極普通な行為を忘れると言うミスだ。
「アンノーンGがポケモンの道具として働いている時、アンノーンGをつけているポケモンは相手のワザの『効果』を一切受け付けない! 攻撃するならダメージを与えるワザで戦うべき……ね」
「しまっ……。でもバーニングポイズンの効果でグライオンLV.Xを手札には戻すわ。これはグライオンLV.Xに対する効果であってカブトプスに対する効果ではないもんね」
如月お得意のヒット&アウェイ。だがしかしなぜキュウコン70/80しか場に残らないのを承知でそんなことを。
原始のカマが来ないと分かるのはデッキに何を何枚入れたかしっている自分だけのはず。原始のカマを食らってしまえばキュウコンは気絶して、それで勝負は終わりなのだ。
「あんたのデッキにもう化石カードがないのは分かり切ってるわよ」
「……」
「さっきからずっと続けていたプテラの発掘を、急に使わなくなった、いや、使えなくなったと言った方がいいかしら。そこから簡単に導き出せるわよ。そして手札についてでもさっきのオムスターの原始の触手のワザの威力を上げるために使った策のときのあんたの表情見ればあれで化石が尽きたっていうことはすぐに分かるわ。喜怒哀楽が浮かびやすいのがあんたの弱点ね」
何も言い返せない。御名答です。そんなに表情に出しているつもりはなかったのだがこれはこれからの課題かな。でも、この試合はまだポーカーフェイスにはならないでいよう。わざとニヤッと笑みを作る。
「一つだけ忘れていたことがあるんじゃないか?」
「なっ、何よ。そんなブラフ(※はったり)には引っ掛からないわよ」
「ならば自分で確かめる……のよ。あたしのターン、手札からサポーターカードのバクのトレーニングを使うわ」
如月の表情が驚きと慄きで一杯になった。バクのトレーニングはデッキからカードを二枚ドローする以外にもう一つ効果を持つサポーターだ。
「確かに化石カードはもうデッキにはない。でもそれでもバクのトレーニングが一枚しかないとは限らない」
そのもう一つの効果はこのカードを使ったターン、自分のポケモンの与えるダメージの量を+10するもの。
そう、中盤でグライオンを倒したときと似ているシチュエーションだ。
「カブトプスで岩雪崩!」
威力が+10されてこのワザの威力は70。そしてキュウコンの残りHPは70/80。そして如月のベンチポケモンは一匹もいない。戦えるポケモンがベンチにいなくなったことでこの勝負は決着となった。
「あんたの勝ちね。約束通り、翔様には───」
「そのことなんだけど、やっぱりその賭けやめないか?」
「えっ?」
試合が終わって握手を交わしながら如月に提案してみる。
「そんなことしても誰も嬉しくないからそんな賭けやめよう」
「でも。あんた」
「またどこかで会えることを楽しみにしてる……わ」
「はぁ。分かったわ。そこまで言うなら賭けはなかったことにしてあげる。……それじゃあ、またね」
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おれ……いや、あたしよりも年が一つ下なのにそんなあたしよりも強い意思を持って、そして一度口にしたら曲げない性格で。そんな彼女の事は忘れないだろう。自分が変わるきっかけとなったライバルなのだから。
そういえばメルアドか何か聞いとけば良かったなあと、人ごみに紛れて消えてしまった如月の背中を探しつつぼんやり思うのであった。
「ようやく一回戦も終わりね、一之瀬君」
「そうですねえ。良い試合多くて見応えありますね」
スペース的にバトルベルトを使った勝負は同時に四つしか行えない。32人いた一回戦は四つに分けて対戦していたが、16人に減った二回戦では二つに分けて対戦することになる。
そして能力者は高津洋二は沙羅比香里と、山本信幸は私こと松野藍と対戦する。
「絶対に勝たなくちゃ。こんな変な能力のせいで私達のポケモンカードが汚されるなんてたまらないわ」
「松野さん……」
「もし、私に何かあった場合は悪いけどよろしく頼むわ」
「珍しく弱気ですね」
「ええ、何せ山本信幸は対戦相手を植物状態にさせてしまう最悪の能力者だから」
「……」
一之瀬君の難しそうな顔は、普段見る穏やかなそれとは別人のように見えた。
石川「今日のキーカードはカブトプス。
闘エネルギー一個でMAX70ダメージ。
序盤から一気に畳み掛けれるわ!」
カブトプスLv.59 HP130 闘 (DPt4)
闘 げんしのカマ 20+
のぞむなら、自分の手札から、「かいの化石」「こうらの化石」「ひみつのコハク」のうち1枚を選び、トラッシュしてよい。その場合、50ダメージを追加。
闘無無 いわなだれ 60
相手のベンチポkモン2匹にも、それぞれ10ダメージ。
弱点 草+30 抵抗力 − にげる 2
───
おまけ・ポケカ番外編
「芸能人事情」
恭介「なあなあ聞いてくれよ!」
翔「朝から騒がしいなおい」
恭介「俺さ、昨日さ、五反田ではるな愛を見たんだ! 芸能人みっけたの久しぶりだったぜ」
翔「俺もこないだ学校の帰りに生田斗真くん見たぞ」
恭介「いやいやはるな愛の方がレアだろ」
翔「一体レアの基準はなんだよ」
恭介「そういえば蜂谷はなんか芸能人と会ったことある?」
蜂谷「俺は……。先週に新宿のビッグカメラの傍で岡本信人を見つけたから声をかけたら野草を食わされた……」
翔&恭介「……」
「よし、そろそろ始まるぞ。さっさと準備しな」
「は、はい」
9月12日、土曜日。俺達はタンバシティ所有の多目的コートに来ていた。もちろん試合に出るためだ。朝日がまぶしいぜ。
俺達は試合が近かったので、ベンチに陣取り待っていた。周囲の目はひどいもんだ、仕方ないことではあるが。しかし、これに萎縮しちまっている奴が1人。イスムカは表情硬く、辺りにせわしなく目を泳がせている。
「なんだ、緊張してんのか? 頼りねえなあ」
「そ、そんなことはありませんよ。ね、ねえ2人共」
イスムカはやや震えた声だ。おいおい、頼むぜ。
「ええ、私は落ち着いていますよ」
「オイラも大丈夫でマス」
それに引き替え、ラディヤとターリブンは中々の強心臓らしいな。ターリブンに至っては鼻の下が伸びてやがる。呑気もここまで来れば、ある種の実力だな。
「……さて、冗談はこのくらいにしとこう。今日の対戦相手は超タンバ高校という新しい学校らしいな。まあ、こちらも人のことを言える程長くやってないみたいだが」
「実力はいか程なのでしょうか?」
ラディヤが尋ねた。至極まっとうな質問だな。なにせ新しい学校、情報を集めるのは良いことだ。しかし、俺は腕組みし、眉間にしわを寄せながら答えた。
「それがな、どうも中々やってくれるらしい。俺達の学園に対抗心があるみたいで、例の件も奴らとの試合の後に公表されたそうだ。ちなみに、その試合はタンバ学園が勝っている」
「……なんだか、負けた腹いせみたいですね」
イスムカが上手く反応してくれた。これで俺もスムーズに話を続けられる。
「だな。しかし、それでも俺達は前進するしかない。奴らに、俺達は何度でも蘇ることを教えてやりな」
「はい!」
「承知致しました」
「任せるでマス」
3人とも力強く返事をし、ゆっくりコートの所定の位置に移動した。午前9時か……そろそろ試合だな。相手も準備できたようで、審判がこう宣言した。
「これより、秋期タンバ大会マルチシングルの部1回戦を始めます。対戦チームはタンバ学園、超タンバ高校。使用ポケモンは最大6匹。以上、始め!」
「いくでマス、ボーマンダ!」
「出番だ、パルシェン!」
タンバ学園の再起を賭けた勝負の火蓋が切って落とされた。相手の1人目は確か、ムハンマドだったか。各校の1人目は試合前に提示されたから分かるぜ。……そう言えば、向こうの監督の姿が見えないな。今は気にする程ではないが。
で、こちらの先発はターリブンだ。ターリブンはボーマンダ、ムハンマドはパルシェンが先発である。ボーマンダは、出会い頭にパルシェンを威嚇した。
「パルシェンたあ、いきなり勝負に出たな」
俺は思わずつぶやいた。パルシェンは近年様々な技の発見により見違える程強くなったポケモンの1匹だ。例えば、スキルリンクの特性からのつららばりやロックブラストは、マルチスケイルを持つ俺のカイリューも耐えられねえ。さて、ターリブンはどう出るか。
「……氷タイプ相手には戦略的撤退でマス、メタグロス!」
まずはターリブンが動いた。奴はボーマンダを引っ込めると、メタグロスを繰り出した。……良いんじゃねえのか? そんなことを考えていたら、ムハンマドもパルシェンに指示を出した。その声は自信に満ちあふれている。
「からをやぶるだ!」
「な、なんでマスと! か、殻が1枚になったでマス」
パルシェンは突然蒸気を放つと、外側の殻を粉々に砕いちまった。……これで、また一段とゴースに近づいたな、なんて言ってる場合じゃねえ。からをやぶるはパルシェンの強さを支える技で、守りを犠牲に能力を上げることができる。メタグロスなら1発くらい捌けそうだが、奴の個体は……。
「あ、良く考えれば倒すチャンスでマスね。メタグロス、バレットパンチでマス!」
「……今だ、ハイドロポンプ!」
ここでターリブンは頬を緩め、メタグロスを突っ込ませた。メタグロスは鋼鉄の弾丸の如く飛び、パルシェンを蹴散らそうと懸命に殴る。だが、守りを捨てた状態でもパルシェンの防御は伊達じゃない。バレットパンチを軽く受け流したパルシェンは、水の槍で反撃。真正面から食らったメタグロスは頭のバツ印の鋼板で弾こうとするものの、その勢いは尋常ではない。550キログラムの巨体は紙切れみたいに吹き飛び、そのまま気絶した。
「メタグロス戦闘不能、パルシェンの勝ち!」
「や、やられたでマスー!」
「試合終了! この試合、6対0で超タンバ高校の勝ち!」
「……なんてこったい」
完敗だ。弁解の仕様は無い。俺達はさっさと荷物をまとめると、足早にその場を後にするのであった。
・次回予告
来年の飛躍を狙う俺達だったが、そこに待ったをかける奴が現れた。そいつは俺に難題をけしかけてきやがる。まあ、それは所詮一般的な難題。俺は必ず突破してみせる。次回、第12話「危険な事態」。俺の明日は俺が決める。
・あつあ通信vol.77
私は、高校生の頃部活で登山をやっていました。大会もあったのですが、トーナメント形式ではなく、得点で順位を競う形でした。県毎に基準は違いますが、大体速さ、炊事、マナー、読図、天気図、応急措置、知識、計画書、テント設営が対象ですね。得点は小数第1位まで競うので、年によっては0.1点差に泣くこともありました。登山の途中で食べる行動食は大抵飴やお菓子、カロリーメイト等ですが、中にはキュウリやバナナ、キウイ、果てはパイナップル丸々1個のツワモノもいました。
ダメージ計算は、レベル50、6V、パルシェンやんちゃ攻撃252特攻172素早84振り、メタグロス陽気攻撃素早振り。パルシェンはからをやぶる1回で130族抜き、無振りメタグロスをからをやぶる1回からのハイドロポンプで確定1発となっています。また、メタグロスのバレットパンチではパルシェンを確定1発にできません。
あつあ通信vol.77、編者あつあつおでん
ブ「んーよく寝たw」
今日はいつもより早く起きた。
だってダイとかと遊園地に行く日だもん!
私は寝癖をととのえて必要なものをつめこみドアを突き破った。
ブ「うわぁ、せっかくはやくおきたのに、準備にめっちゃかかったw
確か待ち合わせ場所は広場の噴水前だったよねw
あ、皆いたw」
ダ「遅いぞww」
ブ「ごめんごめんww」
あつまってたのはブラッキーのダイ、エーフィのアル、ミジュマルのミジュ、ラプラスのプラアナcとプラスルのプラス、マイナンのマイナ、ププリンのルラcアレ?多くね?
アル「どーでもいいけどはやくいかね?」
ブ「はいはい^^v」
続
今回からマスあまったらキャラ紹介します^^
ブイ 種族はイーブイ。♀。
ポケアイの主人公。ダイのことが…?
とにかく元気。遅刻度パナイ。
ミジュをよく使う。
ダイ 種族はブラッキー。♂。
たまに影薄い。
まさに池面www
ブイのことが…?
つまり両おm(ゲフンゲフン
「おはよーございまーす!」
「…ブイちゃん…今何時だと?」
ブ「11時ですけど?」
「11時にくるもんじゃないでしょ。普通8時までにくるもんなんだけど。」
ブ「いいじゃないですか。シャワーズせんせぇ」
シャ「放課後、漢字500かいてからかえってね。」
ブ「えぇぇー、けちぃぃ」
「大変だね…」
ブ「あ、ミジュマル君手伝って!
ミジュ「えぇぇ、無…」
ブ「手伝え(黒笑」
ミジュ「スミマセェェェン(泣」
放課後
「ブイ、一緒にかえろうぜ^^」
ブ「ダイ君か。いいよ^^」
ミジュ「え、ちょ、漢字どうするのぉぉ」
ブ「まかせるww」
ミジュ「エェェェェェェェ(半泣
続く^^
「んー、もうあさかぁ。
よっこらせっと。
学校いかないとね!」
のんきにいっているがもう10時。完璧遅刻である。
「今日も頑張るか^^」
そういって家をでていった。
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