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書いていても、
楽しくなくなってきたので、
苦痛になってきたので、
連載やめます。
ポモペ打ち切りです。
もうしわけありませんでした
舞台や設定を変えられないのとか、
書きたい話と書きたい話の間の話を作るのとか、
色々不満があったからです。
長編というのは辛いものでした。
書けなかったネタは結構ありますので、
短編に仕立て上げてから、
見せびらかす予定です。
色々ともうしわけありませんでした。
p
m
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[四章]
『俺の願いを叶えた知らない誰かがいっぱい』
「今月の儲けはほとんどポケモンに持ってかれちまったけどな」
「俺達エスエフ的召喚術師グループも解散だな」
「色違い見つけた時は感動したな。
あと御月見山でピッピの変なダンス」
「私バッジ四つ」
「ポケモンバトルなんてもんがあるこの時代に
スポーツ番組見る奴があるか!」
「分かる! 大文字に吹雪、たまらんよなぁ、あの迫力は」
「ドラゴンとか、女かよ!
男なら黙ってサイドンだろうに! あとカメックス」
「ポケモンの性格って大事。バトル嫌いとかだったらどうすんの?」
「レアコイル様は! 華麗なる放電で! 私を苦しめるの!」
ポケモントレーナーの言葉が飛び交う。
羨ましすぎて嫉妬するような会話が飛び交う。
シオンは彼らをねたんでいた。
ポケモンセンターはポケモンの病院である。
この白い空間の中で、ポケモントレーナーでないのは
シオンただ一人であった。
彼らの会話に未だ入っていけず、仲間外れにされた気分だった。
皆と同じことが出来ない。
トレーナーの経験値のない自分が情けない惨めな男に思えた。
それでもシオンはビニール椅子に深く腰かけ、
トレーナー達の会話に耳を傾き続けた。
シオンは釣りをするように、じっと待っている。
「俺のポケモンいらないから、誰か貰ってくれないかな!」
シオンにとって都合のよい言葉を無言で探し求める。
「俺の相棒が最高でさ」
「私のポケモンは命より大切」
「こいつがいてくれたから今の俺があるんだ」
「ポケモンを交換する馬鹿の神経を疑う」
「ありえないよな、逃がすとか」
一時間が経過した。
病院限定のBGMにもウンザリしていた。
とても目当ての言葉が現れる雰囲気ではない。
誰もが確かめ合うようにポケモンの重要性を語っているのだ。
「俺だってお前のポケモンが欲しいのに」
誰にも聞こえないようにぼやく。
時間を無駄にしてしまった。
しかし他にポケモンを入手する手段も分からず、
シオンは行動出来ない。
シオンの背後から声がした。意識せずとも耳に入ってくる。
近いところで、二人の男女がなにやら話していた。
「ねぇ、今月どれだけ儲かった?」
「今月? 僕は五十万ほど」
「え! 嘘! 凄いなぁ。私なんて十万も貯めたってのに、
短パン小僧に負けちゃって半分持ってかれちゃったよ。
おかげで今日で断食二日目」
「ポケモンバトルなんてギャンブルみたいなもんだからね
それよりゴローニャのご飯代は足りてる?」
「岩食べるのにお金取るの?」
「あー、そっか。僕のポケモン達って山ほど食べるんだ。
それで、ちょっとした勘違い」
「ふぅん。そっか……」
シオンの憧れの世界で、彼女は厳しい現実を体験している。
しかしシオンは、自分がトレーナーなら沢山稼げるに
違いないと妄信していた。
「ねぇ、私ってなれるのかな?」
「ポケモンマスターに?」
「うん」
「無理。宝くじで三億ゲット出来ないかな、
って言ってる方がまともなくらいムカつくこと言ってるよ」
「そっか。そうだよね。あのね、私、
そろそろポケモンマスター目指すの止めようかと思ってるんだ」
「今になって? 何かあったの?」
聞いていて腹が煮えくりかえった。
甘ったれるな、と活を入れてやりたくなった。
シオンはポケモントレーナーになりたくてもなれない。
「この前ね、トキワの森で野宿することになったの」
「うん」
「それでね、真夜中にさ、野生のポケモン警戒しながら、
野糞して思ったの。お風呂入りたいなぁ、って」
「なるほどね。気持ちは分かるよ。
でも、未成年の乙女が野糞とか言わない。はしたない」
「ごめん、でも私、恥ずかしい子だから」
「きわどい台詞ホイホイはいちゃうから場がしらけんの」
「そういうあなたは?」
「ポケマスは無理だね、年収1000万のトレーナーでも
無理なんだって。でも最低ジムリーダーぐらいにはなってみせる」
「うへぇ。私より凄いのに、私より目標小さいとか、
なんだか私って馬鹿みたいだ」
「トレーナー以外の人が見たら馬鹿なんだろうね。
そんな僕らが社会問題になるくらい増えてるから、
馬鹿であることに危機感も罪悪感も覚えず、
どんどん戻れなくなってしまうのかもしれないね。
君は賢いよ。引き際を心得てる」
「えへへ。それでさ、就職とかすぐに無理かもだから、
フレンドリィショップあたりでバイトしよっかなぁ、とか思ってるの」
「フレショかぁ。受かるかなぁ。最近ポケモンフリーターって
増えてるからね。ポケモン関連は難しいだろうねぇ」
全力で好きなことが出来る立場なのに、
彼らは夢をあきらめようとしていた。
夢の世界の住民が現実の会話をしている。
それが気に入らなくて、シオンは耳をふさいだ。
シオンは、自分がトレーナーなら、何があっても必ず立ち直り、
最後にはポケモンマスターになれると信じていた。
しかし、シオンの胸の内で確かに焦りを感じていた。
自分より知識も経験もあるであろう彼らが
ポケモンマスターをあきらめている。
認めたくない現実が目の前にあった。
「バカバカしい」
悪態をついても、心は不安の中にあった。
「あなたポケモンは?」
「……えっ?」
自分が声をかけられたと、少し遅れて気がついた。
ポケモンセンターの看護婦だった。
女医の獣医だからジョーイと呼ばれている。
「えっと、なんですか?」
「病院に来てるってのに、
いつまでもポケモンを回復させようとしないじゃない。
ポケモン診せてみなさいよ」
「いや、あの俺ポケモン持ってないんです」
「はい? あなたトレーナー?」
「いえ、まだ、です」
「冷やかしに来たってワケ? 忙しいんだけど?
邪魔しないでもらえるかな?」
急に態度が悪くなった。ムッとして言い返す。
「あなたこそ仕事さぼってる暇があるんじゃないですか?
忙しい人のする行為じゃない」
「用もないのに居座ることないでしょ」
「ポケモンの診断が終わった人も、
ダラダラ過ごしてる人がいるんじゃないですか?」
「ちっ! ああもう! これだからポケモンも使えない人間は!
何様のつもり? ポケモンも扱えない愚図が、
私達と同じ空気吸ってイイと思ってんの?」
「なっ、酷い言いようだな!
俺だって好きでトレーナーじゃないワケじゃない!」
「関係ない! ポケモン育ててない人間はどんな理由があっても屑なのよ!
自分を過大評価してんじゃないわよ! 凡人の分際で!」
ジョーイは床を叩きつけるように歩き去っていった。
酷い差別だった。あまりに凄い気迫だったため、
怒るのを忘れていた。
注目を浴びてしまった。無数の視線を感じる。
今すぐにでもポケモンバトルを仕掛けられそうなほどに。
そろそろ帰りたかったが、なんだか敗北感が付きまとうので、
もう少し居座ることにした。
椅子に長く座っていると、尻が痛くなってくる。
かかとにコツンと弱い衝撃が入った。
何かと思い、腰を曲げて手さぐりで拾う。
ビー玉程の大きさをしている球体、モンスターボールだった。
モンスターボールは中にポケモンが入っている場合、
真ん中のボタンを押すと小さくなる。
後ろには誰もいない。周囲を見渡す。
何かを探す素振りをする誰かがいない。
どこもかしこも知らん顔。
大切な仲間の消失に気付かず呑気にしている愚か者がいる。
ふと千載一遇のチャンスに気がついた。
もう一度周囲を見渡す。シオンに注目する人間はもういない。
動機が激しくなった。少し息苦しくなった。
他に可能な方法が分からないから、
罪を犯すぐらいしなければ駄目だと思った。
このチャンス逃したら、
一生トレーナーになれないような気がした。
自分がどれだけポケモンが欲しいのか、シオンは知っている。
ためらいながらも心は決まっていた。
今一度周囲を見渡した。異常なし。
「すこし借りるだけさ」
ボールを手の平に隠す。
しかし何も起こらない。
頭がぼーっとしてきた。
感覚が自分のモノじゃなくなったみたいだった。
呼吸を忘れそうになった。
立ち上がってみる。
しかし何も起こらない。
ポケモンセンターの雰囲気に変化は無い。
怖い。恐ろしい。
取り返しがつかなくなりそうだ。
大きな罰をあたえられそうだ。
それでも罪悪感に逆らって、足を動かす。
不審に思われぬよう平常心で急がず歩く。
意識しながら呼吸する。
勢いに任せて歩いていた。
自動ドアと向き合った。
「あああああああああああ!」
絶叫が走る。身体がビクンと跳ね、シオンは立ち止まる。
シンとした空間の中でおなじみのBGMが鮮明に響く。
「あいつ俺のポケモン盗みやがった!
恐る恐る後ろを振り向いた。見知らぬ男がシオンを指していた。
バレてしまった。しかし、手の平に隠れ、ボールは見えていない。
周囲のトレーナー達から無数の視線が氷柱のように突き刺さる。
怖い。
逃げたくなって、そっと背を向ける。
「待て!」
手首を掴まれた。自動ドアを越えられない。
誰かと思えば、先ほどの見下し根性丸出し女。
サボり魔のジョーイさん。
「どこに隠した」
「おい、勝手に触るな!」
体中べたべたと触られる。
ポケットを確認される。
強く握っていた手の平を無理矢理こじ開けられる。
モンスターボールが公の場に現れた。
周囲がざわめく。
ひそひそと陰口が飛ぶ。
「うわぁ」
「最低」
「マジかよ」
「屑だな」
罪悪感でいたたまれない。ジョーイが強く睨む。
パァンッ!といい音が響いた。
頬がヒリヒリと痛んだ。
「仕事の邪魔するだけじゃなく、客にまで迷惑かけるとか、
本当にあきれる。これだからポケモンも扱えないゴミは!
……で、警察行く?」
「い、いや、俺は……」
「嫌よね。じゃあ、もう二度とここに近寄らないで。
アンタみたいなのが来て許される場所じゃないの。
分かったら出てって」
自分は責められなければならない。
罪悪感が怖くて、シオンはたまらず逃げるように背を向けた。
この場から早く去ってしまいたかった。
「やっぱり拾いやがったな」
薄いぼやき声がした、自動ドアが閉まった
走った。悪魔の群れから逃げるように。
離れたい。近づきたくない。もっと遠くへ。
たまらないくらい不愉快でいた。
「ちくしょう! 何であんな連中がトレーナーで!
しかも何で俺が悪者なんだよ!
好きでやってるわけじゃない! 何なんだよ! こなくそ! ああ!」
叫んでから恥ずかしくなって、周囲を見渡し、
誰もいないことに、ホッと安堵した。
それから悔しい思いのたけをこめて、
何度も何度も地面を踏んだ。
疲れて、汗をかいて、シオンの怒りは治まってきた。
「くそう。俺がどんな思いで盗んだと思ってるんだ。
誰だか知らないけど、ハメやがって。
やっぱ止めとけばよかったかな」
もしも盗まなかったら、罪を犯さなければ、
トレーナーになれる可能性を自ら潰してしまうことになってしまう。
やってはならないと誰が言おうとも、
シオンにはやらねばならない時であった。
悪びれるのを止め、後悔することも止めた。
ポケモンを手に入れるということが難しいと、
今になって理解した。
シオンは犯罪もまともに出来ない。
果たして何をすればポケモンを手に出来るのか。
答えが分からず、また途方に暮れた。
「ところでナズナさんよ、1つ聞いて良いか?」
「なんですか?」
俺は茶を飲みながら彼女に尋ねた。俺の視界には日めくりが映っている。今日は8月17日だ。まだまだ暑い日が続くが、時折涼しい風が吹き込むと得も言われぬ気分になる。やはり暑いからこそ涼しさが身に染みる。
「あんたはタンバの出身なのか?」
俺は単刀直入に聞いた。そう、俺が最も気になる点はそれだ。10年前に姿を消したのもナズナなら、この女もナズナ。見た目も大して差異が無い。気にならない方がどうかしている。
「私の出身ですか。……ま、テンサイさんなら大丈夫かな。私、元々はコガネシティに住んでたんです。でも、ちょっとした事故が原因で流れ着いたというわけです」
彼女の言葉に俺はむせ込んだ。俺はそれから深呼吸をし、事実関係の確認をした。
「ま、まさか……10年前に起こった研究所での爆発事故か?」
「あ、ご存知でしたか」
「まあな。かなり派手に報道されたから、あんたの名前を聞いた時にもしやと思ったんだ」
事故……いや、事件の当事者だからな、俺は。これを覚えてなかったら、俺はよほどの薄情者か、あるいはぼけてきたかのどちらかだ。しかし……生きていたか。全くもってうれしい限りだぜ。俺は何度も頷いた。だが同時に、罪悪感にも襲われる。果たして、事件の真相を知ったら彼女はどう思うのか。それを考えると、非常に居心地が悪くなってきた。俺は茶を飲み干すと、立ち上がって玄関へ向かった。
「少し散歩してくる」
「はーい。ご飯の時間までには帰ってきてくださいね」
「ほう、職業安定所か。行くあてもない今、仕事の1つくらい探さないと申し訳が立たないしな。少し見てみるか」
しばらくほっつき歩いていたら、町の外れにある小さな建物を見つけた。潮風に当たるせいか、やや古くさい。
俺は重い引き戸を引き、中に入った。まず目に飛び込んできたのは、壁に貼られた求人票だ。早速目ぼしいものを探すとするか。
「何々、工事現場での作業に飲食店のホール、掃除等か。種類自体は多いが……どれもこれも時給制だな。職業安定所のくせにこんなものばかりで良いのかよ」
「おやあんた、何か仕事をお探しかい?」
俺が毒づいた直後、背後から声をかけられた。振り向くと、ミックスオレの缶を持った男がいるじゃねえか。あと、小さな紙片を握っている。この口調からするに、ここの管理人か。
「……あんたが誰かは知らねえが、これだけは言える。仕事を探すつもりの無い奴がこんなところに来るもんか」
「はっは、まあそう言いなさんな。しかし最近は中々求人が来ないんだよねえ」
「ん、確かに。この求人票、どれもこれも1か月以上も前のものだ」
俺は求人票を1枚ずつチェックした。それを見ていると、今が何月か分からなくなりそうだ。大体が7月中頃のものである。6月なんてやつもあった。男はミックスオレに手をつけながら説明する。
「そこまで余裕が無いんだろうねえ。最近は不景気というお題目を唱えられると、求人の拒否だってまともなことのようにされてしまう。……ところがの、たった今新しい求人が来たんだよ。しかもかなり条件が良い。見てみなさい」
「そりゃどうも。どれどれ……」
俺は、男が持つ紙きれに目を通した。……これは、およそ若手が貰える額じゃねえな。内容を吟味すると、明らかにベテランを狙っている。俺も長いことやってきたが……悪くない。やってみるか。どのみち、こんな年寄りを雇う店なんざ無さそうだしな。
「よし、早速準備をするか。それじゃ、失礼させてもらうぜ」
俺は男に一礼すると、一目散に戻るのだった。
・次回予告
俺が向かったのは、非常にでかい施設だった。そこで採用試験を受けるのだが、その内容は予想だにしないものだった。果たして、採用する気があるのか。次回、第4話「採用試験」。俺の明日は俺が決める。
・あつあ通信vol.70
なんだか、ただでさえ字数が少ないのに、最近はそれに拍車がかかったような気がします。一人称ってこんなに書くこと少ないんですかねえ。それなら丁寧に書けば良いだろという話になるのですが、そうするとくどくなると言う罠。まあ、もうすぐバトルが始まるので、そうなればこんなこと考える必要は無くなるでしょう。
あつあ通信vol.70、編者あつあつおでん
「……よし、寝たな」
俺はこっそり布団から出た。ナズナが居眠りしていて中々厄介だが、どうやらまだ起きてないみたいだな。窓の外はすっかり暗い。時計は午前1時を指している。
「礼もせずに申し訳ないが、出発させてもらうぜ」
俺は忍び足で玄関までたどり着き、引き戸を慎重に開けた。その瞬間、雨風が俺の胸に飛び込んでくる。
「ちっ、面倒だな」
俺は脇に目を遣った。傘が2本あるな。1本は真っ赤、もう1本は深い緑。ま、致し方あるまい。ちょっと借りるぜ。俺は緑の傘を手に取り外に出た。
「やっと脱出できたぜ。しかし、この真夜中にどこへ向かうべきか」
俺はふと考えを巡らせた。俺は正体がばれるのを警戒しないといけない。仮に俺に罪が無いとしても、やっちまったことを消すわけにはいかねえからな。ではどうするか。簡単な話だ、一刻も早く別の町に行くしかない。
俺は耳を澄ました。確かタンバには海がある。そこで船にでも乗っちまおう。俺は波の方向に歩き始めた。
歩いて100メートルもしたら、なんと交番があったじゃねえか。ついてねえ、別の道を行くか。そう思った矢先、運悪く警官に出くわしてしまった。白髪だらけの老人である。
「む、お主見かけない顔だな。こんな夜更けに何をしておるのじゃ?」
「いや、特に何も。まあ、強いて言えば散歩だな」
「なるほど。……しかし、それならなぜお主の持っている傘はナズナさんのものなんじゃ?」
おいおい、この年で因縁つけてどうすんだあんた。ぱっと見、脅しができそうな姿ではないぞ。
「なんだと。おい爺さん、変な言いがかりはやめろよ」
「言いがかりではない。ナズナさんはいつもその傘を使うんじゃ。しかもとても大事にしていてのう。あとわしは爺さんではない、ナツメグという名前がある」
……この深緑の傘をか? 中々良い趣味してやがるな。しかし、この傘のせいで爺さんの疑いの眼が俺に向けられてしまったのは事実。うかつだったぜ。
「なぜお主がナズナさんの傘を……もしや、貴様泥棒じゃな? いやきっとそうに違いない!」
「あ、あのなあ……」
「問答無用! 来い、朝まで捕まえておいてやる!」
俺は爺さんに胸ぐらを掴まれると、そのまま交番に連れて行かれるのだった。この爺さん、なんでこんなに力が強いんだよ。
「ナズナさんや、ナズナさんはいるかね?」
「あ、ナツメグおじさん! どうしたんですか、こんな明け方に?」
明朝。俺はナツメグとか言う爺さんに引っ張られ、ナズナの家の前まで来ていた。俺が素性をしゃべらなかったから、被害者との面識の有無を確かめようとのことらしい。俺の腕には手錠がかけられてあり、逃走は不可能だ。雨は既に上がり、台風一過と言わんばかりの晴天である。
「実はな、昨晩お前さんの家に泥棒が入ったみたいでなあ。ほれ、こっちだ!」
「……すまん」
俺は爺さんに突き出された。開口一番、俺は頭を下げて謝罪した。事情はどうあれ、俺が傘を盗んだという形になるのは事実だからな。俺を見て、彼女は声を上げた。
「テンサイさん! 一体どうして……」
「なんじゃ、ナズナさんはこの男を知っとるのか?」
「はい。おとといの夕方彼が倒れているのを発見したので、私が看病していたんです。駄目じゃないですかテンサイさん、体にさわりますよ」
ナズナは爺さんに状況を説明した。すると爺さんはばつが悪そうな表情で頭をかきむしった。
「なるほど、そういうことか。またやってしまったのう。もう誤認逮捕は何回目かわからんわい」
爺さんはそっと俺の手錠の鍵を開けた。俺の手が再び自由になる。……一体、何人がこの駐在の犠牲になったのか。少し興味があるな。
「それじゃ、わしはそろそろ失礼しよう。良いかテンサイとやら、病人の立場を利用して彼女に手を出そうもんならただじゃおかんぞ」
「はいはい、わかりましたよっと」
爺さんは不要な釘を刺すと、のんびりした足取りで帰っていった。彼が視界から外れた後、俺はナズナに詰め寄った。
「おい、なぜ俺を庇ったりしたんだ?」
「なぜって、テンサイさん何も悪いことしてないじゃないですか。まあ、私の傘を勝手に使ってましたけどね」
彼女はいたずらっぽく笑った。陽気なのも、ここまで進めばある種困りものだな。俺は更に彼女を問い詰める。
「……ふん、俺はあんたが考えるほど善人じゃねえよ。むしろ大悪人だ。そのことを知ってたらどうだったんだ? 俺を警察に突き出したか?」
「もちろんそんなことしませんよ」
「な、俺の話ちゃんと聞いてたか?」
「聞いてましたよ。でもテンサイさんは良い人に見えます。それに、もし仮に悪い人でも大丈夫! 私がテンサイさんの心を奪って神様に捧げちゃいますから
ね。これでテンサイさんは善良な人になれますよ!」
彼女は胸を叩いてこう言い切った。……む、俺としたことが、心が震えてやがるぜ。こんな気分になったのは10年以上無かったが、今になって魂を揺さぶられるとは思いもしなかった。だが、そのことを悟られるのもなんだか気恥ずかしい。俺は目頭が熱くなるのを隠しながらこう答えた。
「……くっ、そりゃ結構なことだ。じゃあ、1つ頼むとするか」
「その意気です! さ、そうと決まればまずは寝ましょう。今日は休みですか
ら、ゆっくりできますよ!」
俺は彼女に促され、一緒に家の中に入るのであった。ふっ、今日は久方ぶりにゆっくりできるぜ。
・次回予告
様々な事情を考慮し、彼女は俺を半ば強制的に居候とした。しかし何もしないと頭がおかしくなりそうだからな。仕事を探すとしよう。次回、第3話「科学者、職を探す」。俺の明日は俺が決める。
・あつあ通信vol.69
この話のナズナさんの台詞は、ユゴー作の『ああ無情』が元ネタです。犯罪歴のあるジャン・ヴァルジャンは、その経歴を示すカードのために今晩の宿にありつけない。そこで親切な神父が暖かい食事と寝床を提供しました。しかし彼は神父が大事にしていた銀の燭台を盗んで夜中に部屋を抜けました。案の定捕まり、翌朝神父の前に連れられます。そこで神父の一言。
「ああ、一体どうしたのですか。銀の食器も譲ると言ったではありませんか」
ジャンはこの一言でことなきを得ました。戸惑う彼に、神父はこう述べるのでした。
「ジャン・ヴァルジャンさん、あなたはもう悪人ではありません。あなたの魂を私が買いましょう。あなたの魂を悪から切り離し、神の下に捧げるのです」
この時を境にジャンは更正し……。
非常に素晴らしい作品です。岩波ジュニアであるので、是非とも読んでほしいところ。
あつあ通信vol.69、編者あつあつおでん
三月下旬の日曜日、待ちに待ったPCC(ポケモンチャレンジカップ)の※東京Aの地区予選が開催される日だ。
※東京A・東京は参加する人数が多いため、東京Aと東京Bに分けられることがある。
姉を置いて一人、先に会場となるサンシャインシティを目指し池袋駅に着いた。
「姉を置いて一人」とは言ったものの、日ごろの仲間達とは待ち合わせをしてある。集合場所はJR池袋駅の改札だ。
どうやら一番乗りらしい。集合時間の七分前に来てしまったのだが、とりあえず歩行者の邪魔にならないよう壁際で待つ。
三分ほどしてやってきたのは石川薫だった。
「あれ? 遅れてごめん」
「まだ集合時間の四分前だから問題ないぜ」
「いや、本当はおれが一番に来るつもりだったんだけどやられちまった」
三月下旬の東京はようやく春めいてきた。今日の最高気温は十五度だが、それでも薄着だとそこそこ寒いと感じることもある。
俺もそれを見越して、真ん中に英語がプリントされた長袖のTシャツの上に長袖の赤系チェックシャツを羽織っているのだが、事あろうか石川は肩出しニット一枚だ。ちなみにパンツは俺が薄青ダメージジーンズで、石川がレギンス付きスカートを履いている。
しかし肩にギリギリ届かない程度の石川の髪が、柔らかい雰囲気を持ったためなのか可愛らしい印象を受ける。
「毎度思うけど寒くないの?」
「そもそも今日って寒い? 暖かいと思うんだけど」
「いや、なんでもない」
思えばこいつは真冬にあった風見杯で半袖半ズボンという理解不能な服装をしていた。それに比べれば今回はマシというわけだが、やはり理解に及ばず。
ちなみに石川とはこの間かーどひーろーで会った後にもう一度別の日にかーどひーろーで会い、そこで連絡先を交換した。折角なので、一緒にPCCに行こうと誘ってみたのだ。
「もうすぐ時間かな」
他愛ない話をしている最中、ジーンズの尻ポケットに入れていた携帯で時間を確認する。時刻は丁度集合時間の一分前を指していた。
「おっすー、待たせたな」
図ったかのようなタイミングで人ごみの中から声が聞こえてきた。
まずやってきたのは恭介と蜂谷と拓哉だった。
「ちょっとまてよ翔、そこの女の子はどなただよおい」
蜂谷が眉間にしわ寄せ問うてくる。そんながっつくなよ。
「こないだの大会で戦って、かーどひーろーで再会してから連絡先交換したんだよ。お前も初めてかーどひーろー来た時顔見ただろ?」
人がマジメに答えてやったのに、蜂谷は頭をひねる。そのまま百八十度まわしてやろうか。
「ちょっと待てよ、こないだの大会?」
蜂谷に代わり今度は恭介が食いついてきた。
「ああ、風見杯本戦の二回戦で」
「ってあの季節違いの服装してたやつか! って男じゃないの!?」
やっぱりそういう覚え方してたかー。でも本人の目の前で言うのはどうかと思うぞ。
「おれは女だ!」
「説得力ねー!」
さかさず突っ込んだ石川だが、恭介に返される。互いに睨みあうせいで(恭介が睨む必要性はないと思うが)妙に緊迫した雰囲気になった。
「そういえば確かに風見杯のときと比べて急に印象変わったよね」
俺の問いかけに石川は睨みあいを中断し、素直に首を縦に振る。
「お母さんに、高校に入るんだから女の子らしくしろって言われてさ」
「じゃあ風見杯のアレは黒歴史になるわけか」
「さっきからうっさい!」
「ごべばっ!」
鳩尾を思いっきり殴ってきた。とてつもないダメージで、思わず床に両手をつく。その様子を見ていた恭介は、口は笑っているも目が死んでいた。
「遅れてすまんな。何かあったのか?」
背後から風見の声がした。怪訝な顔を作る風見から手を借りて立ち上がる。
「いや、大丈夫、何でもないさ。おそらくだけど」
「? まあそんなことより時間だしそろそろ行こうか」
「ちょっと待ったぁ!」
会話を割ったのは蜂谷だ。
「風見の後ろにいる人誰?」
「ああ、お前は風見杯に来てなかったんだな。風見杯ベスト16の向井剛だっけか。PCCに来るようだったからな」
要は拾ってきたという事か。向井は恥ずかしそうにお辞儀をした。人見知りっぽいね。
向井と同級生(幼馴染でもあるらしい)である石川は、「一緒にいこーぜ!」と背中をバシバシ叩きまくってる。手綱は石川にアリ、か。
「それじゃあそろそろ行くぞ」
音頭を取ったのは風見だった。皆が風見の後ろをついていく形になる。
風見と絡むようになってから知ったのだが、非常にリーダーシップを持っている。働いているという理由もあるのだろうが、各々に別方向を向いているヤツらを一気に同じ向きに向かせる程のリーダーシップは天性のものだろう。
「今回の会場はサンシャインシティだ。35番出口から出るのが一番早い」
下調べもバッチリか、風見先導のまま地上に出てからも迷うことなく進んでいく。休日日曜の朝も、池袋は人の行き交いがとても盛んだ。七人で固まってあるいていると通れる道も通れないので、自然とだいたいな二列縦隊に組まれる。
俺はなんとなく先頭の風見の左隣りで落ち着いた。俺の後ろには恭介と蜂谷と拓哉、その更に後ろは石川と向井と続く。
「翔、今回の自信の程は?」
「まあ少なからず予選は抜けたいな」
「なんだ、風見杯の優勝者がこんな弱気とは拍子抜けだな」
「本当のことを言うと全国に出たい」
「本音はそっちか。まあ会場に向かう人の大多数が望むことだからな」
「いや、約束なんだ」
「約束?」
風見が眉をひそめる。風見の疑問に応えるために、ポケットに入れていたデッキケースから一枚のカードを取り出す。
「『マニーの決意』? 見た感じ創作カードのようだが」
まるで警察官が証拠品をみるかのように、そのカードをいろんな角度から見る。
このカードは、裏面は普通のカードと変わりないのだが、表面の部分は剥がされ、ザラザラになった表面にボールペン等でイラストとテキストが書かれているものだ。
「一応サポーターか。筆跡は翔のではないな」
風見が呟いたように、一応このカードはサポーター扱いである。どっちにしろ実際に勝負するときには使わないけどね。バクフーンを連れ、腕組みをした男がイラストの部分に鎮座している。
このカードの効果のテキストは、『全国大会で再会する約束を守る』とある。風見が言った通り、これを書いたのは俺ではない。
「これは?」
「中学時代の仲間と書いたんだ。これと同じのがあと二枚、その仲間が各自持ってる」
「ほう、じゃあその仲間というのも翔とあと二人か」
「ああ。一人は今大阪にいて、もう一人は東京にいるはずなんだけど……」
「?」
「連絡がつかないんだ。メールしても電話しても、年賀状も帰ってこないし」
「気になるな」
「冴木才知(さえき さいじ)ってやつなんだけどな……」
「全国に出れば何も分かるかもしれない、ってことか」
黙って頷く。風見が返してきたカードをデッキケースに戻す。
「翔、これを貸しておく。使うか使わないかはお前次第だ」
風見がポケットから十枚程度のカードを裏向けのまま渡した。拒否出来ない雰囲気に負け、何事もないかのように受け取ってしまう。
「よし、後はこのエレベーターで三階まで昇ったら会場だ。気を引き締めていくぞ!」
「おー!」
カリスマ性だな、と感じる。今の風見がとった音頭も、普段は俺がするポジショリングなんだが今日は風見の機嫌がいいような気もする。おー! と返した恭介達の表情も実に柔らかい。
サンシャインシティ、文化会館展示ホールへ向かうエレベーターは四つ。エレベーターホールには、俺たち以外にPCCに出ると思われるような人達が見受けられる。
バトルベルトを既に装着している人はカードで出るのだろうと分かるが、俺のようにまだ未装着の人をゲームかカードかどちらで出るのかは分からない。
「翔、エレベーター来たぞー」
蜂谷に小突かれる。辺りを見回すのに必死で、目の前の目的を忘れるところだった。稼働するエレベーターは四つあるが、どれもこれもエレベーター一つではここにいる人を運びきれない。ちょうど他にも降りてきたエレベーターに人が分かれて乗り込む。
自分の意志でエレベーターに向かわずとも、人ごみに押されて自然とエレベーターの中に収まる。エレベーターが閉まる瞬間、ホールの方から嫌な視線を感じたような気がした。
翔「今回のキーカードはマニーの決意。
一年前の約束のカードだ」
マニーの決意 サポーター
全国大会で再会する約束を守る。
サポーターは、自分の番に1枚だけ使える。使ったら、自分のバトル場の横におき、自分の番の終わりにトラッシュ。
※このカードは実在しません。
「ちょっと、しっかりしてくださいよ!」
「……うん、誰だ……」
あ、頭が割れそうだ。馬鹿でかい声出しやがって。……それにしても、何かざらざらしたものが感じられるな。これは、推理するに砂か? もしそうなら、まさか俺は流れ着いたのか? 小雨が俺に打ちつけている。少なくとも、生きているのは間違いあるまい。
俺に声をかける物好きは、安堵の表情を浮かべた。そいつは、右手に傘を、左手に何か赤いものを持っている。
「あ、生きてる! 良かった……さ、急いで看病しないと。フーディン!」
物好きは赤いものから何かを出した。特徴的なスプーン……フーディンか。余計なことをしてくれるぜ。仕方ない、1つがつんと言っておくか。
「……お、おい。俺のことは気にするな、じきに……」
楽になる、永遠にな。そう言おうとしたが、口が思うように動かない。物好きは俺が言い切る前にまくしたてた。
「そんなわけないじゃないですか! フーディン、構わず行くよ!」
「おいやめ、うがっ」
物好きのフーディンが何やら力を入れた。俺の体が宙に舞う。こ、腰が……。
ここで俺の意識が途絶えた。
「……ここは?」
目が覚めたら、天井が見えた。別に体が縮んだとかいうわけではない。外から雨音が入り込んでくる。俺は辺りに目をやった。畳が敷いてあり、その上に布団がある。俺はここで寝ていたようだ。部屋には特に何もなく、生活感が感じられない。つまりここは空き部屋で、俺を休ませていたということか。
それにしても、妙に頭が軽い。視界も良好で若返ったみたいだ。そう思った矢先、俺は枕元に手ぬぐいとサングラスを発見した。
「……まさか、見られたか」
俺は素早く手ぬぐいを巻き、サングラスをかけた。これは俺が素性を隠すために使っていたのだが、あの物好きめ……全く迷惑な奴だ。
そうこうしているうちに、部屋に誰かやってきた。あれは、さっきの物好きか。ポニーテールで華奢な体系。赤いTシャツに白のジーンズという出で立ちだ。いたずらっぽい笑顔に緩やかな放物線を描く胸部。足は細いが、それでいて筋肉はしっかりついている。器量の良い、いわゆる美人だな。手にはお盆があり、その上に湯気を漏らす湯呑がある。しかし、どこかで見たことあるような姿だ。まあ良い、今は1つ聞いておくとしよう。
「あ、気が付きましたか? 本当に危なかったんですよ、あと1分遅れていたらと思うと……」
「おい、1つ聞かせて欲しいのだが……ここはどこだ?」
「どこって、タンバシティですけど」
「な、なんだと!」
タンバシティ、ジョウトの最西端にある町じゃねえか。先の戦いでは遠いから攻撃対象にしなかったが、まさかその遠い町に流れ着こうとは。
「そうか、なるほど……。自分でも嫌になるしぶとさだぜ」
物好きな女は湯呑みを手渡した。中身は茶だな。俺は1杯含み、喉を潤す。
お、これはナゾノ茶じゃねえか。ずいぶん久々に飲んだ気がするぜ。そもそも、俺は今非常に腹が減っている。一体何日漂流したんだ。
俺は茶を飲み干すと、湯呑みを畳の上に置いた。それを見計らって、物好きは俺にこう尋ねた。
「ところで、あなたの名前はなんですか? 私、どこかで見たことがあるような気がするんですよ」
「名前か? 俺は……」
ここで、俺はふと考えた。俺の今の名前はサトウキビだ。だが、それを言ったら危険じゃないか? じゃあトウサで……いや、今でこそ忘れられた身だが、こんな形で人に見つかったんだ。騒ぎになる可能性が高い。仕方ない、3つ目の名前を作るか。俺は少し腕組みをして唸り、それからこう答えた。
「俺は……テンサイだ」
「テンサイさん? ……くすっ、面白い名前。私はナズナ、教師をやってます!」
げふっげふっ。俺は不意にむせこんだ。な、ナズナだと? もしや、10年前の事故で死んだとばかり思っていた、俺の相棒なのか? ……だが、それを確かめる術は無い。それに触れたら、なんのために正体を隠したのかわからなくなっちまう。ここは適当に話を合わせておくのが吉と見た。
「き、教師か。そりゃ立派な仕事だな。まあ、まずは助かった。感謝する」
「どういたしまして。テンサイさん、今日はもう暗くなります。今晩は私の家でゆっくりしていってくださいね」
「ああ、そうさせてもらおう」
心にも無い言葉を並べ、俺はその場を切り抜けるのだった。これだから人に合わせるのは苦手なんだ。
・次回予告
助けられたその夜、俺は静かに家屋から出た。恩を返さずに去るのは気が引けるが、致し方あるまい。次回、第2話「慈悲の心」。俺の明日は俺が決める。
・あつあ通信vol.68
あー、実に17話もの間離れていた彼が復活しました。サトウキビさん、本名トウサ。どちらの名前も砂糖に関連していると以前述べましたが、今回もそれです。テンサイは砂糖の原料の1つ、彼にはおあつらえ向きでしょう。
あつあ通信vol.68、編者あつあつおでん
……ここはどこだ。太陽が照りつけ、背中には水が感じられる。ああ、そういえばそうだ。俺は身を投げたんだったな。今は日光で体を温めながら大海原を漂流中といったところか。全く……全くもって不本意だ、一思いに命を奪ってくれれば良いものを。
……お、向こうから雲がやってきたな。嵐が近いことを教えてくれている。だが、これでやっと休める。どうあがいてもこれで終わりだろうが、せっかくだ。一足先に寝ておくとくるか。
大長編ポケットモンスター第2部「逆境編」、連載中。作者:あつあつおでん。
・あつあ通信vol.67
お久しぶりです皆さん、あつあつおでんです。大長編シリーズ3部作の第2作を投稿することとなりました。前作とは打って変わった出だしでしたが、いかがでしょう? 今作はかなり雰囲気を変えていますので、前作との相違点を楽しんでもらえれば幸いです。また、今回から第4世代までのポケモンを使いますので、バトルも今まで以上に面白くなります。是非ともご覧ください。
なお、今作のイメージソングは「語れ!涙!(SE× MACHINEGUNS)」です。×はNGワード対策。
※以下はフラグです、真に受けないように。※
書くために素晴らしい場所ができた。素晴らしい読者にも恵まれた。後は結果を出すこと。中堅狙いなんてしない、絶対台頭してやりますよ。そして、人気になったらね。全国の読者さんから「すごいな、おでん。どうやったんだ?」と聞かれた場合を仮定する。ちょっと間を置いて身を正し、澄ました顔をしながら言いますよ。「いや、普通のことをやったまでです」とね。
※以上はフラグです、真に受けないように。※
あつあ通信vol.67、編者あつあつおでん
読んでくださってありがとうございます!
確かに誤字でした><
ご指摘どおり修正しておきました。
今日でミ○ドの半額キャンペーンが終わりました。ドーナツ好きの私としてはもっと続けてほしかった……。
私も冬の商戦に期待しています。キャンペーンがあると美味しいもの食べられて、なおかつ風物詩も更新できる、一石二鳥ですからね!
「風見君、変わりましたわね」
「どういうことだ?」
俺がデッキからドローする前に、久遠寺が急に話しかけてきた。
「昔の風見君と今の風見君、だいぶ変わりましたわね」
「そういうことか、当然だ。俺はこの半年で自分を変えてきた。そして俺は過去と決別する」
「それじゃあわたくしも過去なの? これだけ風見君の事を想ってるのに! ここまで来てすぐ向かいにいるのに!」
「っ……」
「今までわたくしが貴方に接してきたことも全て無になるってこと?」
正直こいつに関してはロクな事があった試しが無い。もっとも、今もそうだが。
「そうだ。そういうことになる」
「あんまりです! ど、どうしてそういうことにっ……。あああああああああああああああ!」
鼓膜が爆発しそうな叫びだった。両手で耳を塞ぎ、姿勢を低く維持する。正面にいる久遠寺の表情は、既に涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていた。
「風見君、もうちょっと他になかったの!?」
「いや、だって……」
「だってじゃない! 余計無駄に怒らせちゃって……、逆に勢いづけてどうするのよ」
「どうするも何も、元より勝つしかないでしょう」
そう答えると、松野さんが深くため息をついて、好きにしなさいと投げやりに言い放った。
「久遠寺、俺がお前とのこの勝負で俺の意志を見せてやる! 俺の番だ」
まずは目の前のハッサムをどうにかしなくてはいけない。先ほどのターン、ハッサムはアクセレートでガブリアスLV.Xを倒したためこのターンはワザのダメージと効果を一切受けない。
俺のバトル場はエネルギーが二つついたガブリアス130/130。ベンチにはユクシー70/70とレジアイス90/90とギャラドス130/130。一方の久遠寺のバトル場は達人の帯をつけ、草エネルギーが二つついたハッサム30/120、ベンチには同じく草エネルギー二つのハッサム100/100とエネルギーなしのチェリムが二匹。それぞれ60/80、80/80。
久遠寺の手札は五枚、サイドは四枚。俺の手札は今九枚でサイドは五枚。スタジアムは久遠寺が発動させた破れた時空がある。押されているがまだいくらでも押し返せる。押し返して見せる。
「水エネルギーをガブリアスにつける。まずはそのハッサムを退けてやる。グッズカード、ワープゾーンを発動。互いのバトルポケモンをベンチポケモンと入れ替える。入れ替えるポケモンを選ぶのは各々だ」
ガブリアスとハッサムの真下に青い穴が現れ、穴が二匹を青い闇に吸い込む。
「俺はその効果でギャラドスを選択する」
ベンチのギャラドスも同じように青い穴に吸い込まれた。久遠寺からは声がしなかったが、ベンチのハッサムを選択したようで、同じように青い穴に吸い込まれる。
そして吸い込まれた計四匹のポケモンはバトル場とベンチを入れ替えて青い穴から現れた。これで俺のバトルポケモンはギャラドス。久遠寺のバトルポケモンは達人の帯がついていないハッサムに変わる。
「更にサポーターのクロツグの貢献を発動。トラッシュのポケモンと基本エネルギーを合計五枚までデッキに戻し、シャッフルする。俺はフカマル、ガブリアス、ガブリアスLV.X、ニドラン♀、水エネルギーの五枚をデッキに戻してシャッフルする」
この一連の操作が、ボタン一つで出来るのはかなり進んだものだなと我ながら思う。デッキポケット隣の青いボタンを押すと、トラッシュからカードを自動回収(オートサルベージ)してバトルテーブル内を通ってデッキポケットに収まり、自動でシャッフルするのだ。
「行くぞ、ギャラドスでハッサムに攻撃。テールリベンジ!」
ギャラドスが大きな尻尾を勢いよくハッサムに叩きつける。轟音と巻き起こる煙とともにハッサム0/100は軽々と吹き飛ばされ地面にバウンドし、仰向けに倒れる。
やられればやられた分だけやり返してやる。リベンジテールの威力はトラッシュにあるコイキングの数×30。今トラッシュにはコイキングは四枚。よって30×4=120ダメージでお返しだ。
「サイドを引かせてもらうぞ」
ようやくイーブン、互いにサイドは四枚か。だが確実に良いペースを掴めている。久遠寺は先ほどベンチに戻されたハッサム30/120をバトル場に出すも、そのHPに限度は見えている。
「わたくしの……ターン。草エネルギーをチェリムにつけますわ」
久遠寺は力ない声と動きでカードを動かす。少し震えている唇からは荒れた吐息が絶え間なく続く。松野さんは能力者との戦いは精神戦と言っていたが……。
「ハッサム、で、振りぬく、攻撃っ」
壊れそうな久遠寺とは打って変わってハッサムの動きは相変わらず機敏にギャラドスに襲いかかる。130あったHPが僅か鋏の一振りで20/130まで削られた。元の威力でさえ高いのに、達人の帯やチェリム達がその威力を増長させる。
「俺の番だ。まずはグッズカード、夜のメンテナンスを発動。トラッシュのポケモン及び基本エネルギーを三枚までデッキに戻してシャッフル。俺はコイキング一枚とニドクインの計二枚をデッキに戻す。夜のメンテナンスで戻せるのは三枚までなのであって、三枚以下であるなら何枚でも可能だ!」
「コ、コイキングをデッキに……?」
「まだだ。俺は手札のスージーの抽選を発動。手札のアンノーンGとミステリアスパールをトラッシュして四枚カードを引く。……ハッサムにはハニカムディフェンダーというポケボディーがあるのは知っている。ハッサムにダメカンが六個以上のっている時、ハッサムが受けるダメージは−40されるという優秀なポケボディーだ。だが、そのハニカムディフエンダーを適用した上でも俺のギャラドスの攻撃は防ぎきれない。ギャラドスでハッサムに攻撃だ、リベンジテール!」
ハッサムは体を硬化させ、攻撃による衝撃を和らげようと動いたものの、それでも威力は90−40=50。これだけあればハッサム0/130を気絶させるのには十分すぎる。
「お前のハッサムには達人の帯がついている。達人の帯はつけたポケモンは最大HPもワザの威力も上がるが、それがついているポケモンが気絶した場合、俺が引けるサイドは二枚となる。これで優劣が一気に変わったな」
中盤でのサイド差二枚。淀んだ表情の久遠寺は、肩で息をしながらバトルテーブル上のカードを動かす。次のポケモンは先ほどエネルギーをつけたチェリムだ。
「ま、まだですわ……。負けるわけにはいきませんの。わたくしの、番です。ベンチのチェリムに、草エネルギーをつけてチェリムで攻げ、コホッ! 攻撃です。甘辛花粉!」
ワザを指定されたチェリムは一度花弁を閉じると、勢いよく開いた。開くと同時に黄色の細かい花粉がギャラドスに襲いかかった。甘辛と名のつくだけに、ギャラドスは花粉に反応して大きな体をぐねらして暴れている。
甘辛花粉の威力20。もっとも、チェリムのポケボディーの効果で20+10×2=40ダメージまで与える威力が増えていく。花粉を振り払おうとギャラドス20/130は、ある程度暴れるとそのままぐたりと動かなくなった。
「風見君、チェリムの甘辛花粉はダメージを与えるだけじゃないわ。自分のポケモン一匹のダメージカウンターを二つ取り除く効果もあるわよ」
松野さんが背後から声を掛けてくれた。ベンチのチェリムの目をやると、先ほど撒き散らされた花粉がベンチのチェリムにも行き届いていたようなのだが、チェリム80/80は回復して元気よく花弁を開かせる。なるほど。どうやらギャラドスにかかったのは辛い花粉で、チェリムにかかったのは甘い花粉ということのようだ。
俺はガブリアスを次のポケモンとしてバトル場に投入した。久遠寺がサイドを引いたのを確認してから俺のターンを始める。
「行くぞ、コイキング(30/30)をベンチに出す。スタジアムの破れた時空の効果により、この番出したばかりのポケモンも進化させられる。その効果でコイキングをギャラドス(130/130)に進化させるぞ!」
手札の残り枚数が危うくなる。手札を増強するカードも手元にないためハンドアドバンテージも稼げない。ならばその分パワーで稼ぐだけだ!
「ガブリアスでチェリムに攻撃。スピードインパクト!」
低く姿勢を落としたガブリアスが急に見えなくなると同時、チェリムの元で衝撃と風が発生する。物凄い初速で突撃したガブリアスの攻撃を受け、チェリム0/80は呆気なく吹き飛ばされて倒れる。
「スピードインパクトは120から相手のエネルギーの数かける20分だけ減らしたモノが威力になる。この場合は与えるダメージは100! チェリムが気絶したことによってサイドを引かせてもらう」
これで残りのサイドは一枚。油断は最後まで出来ない。俺の場にはまだガブリアスもギャラドスもいるが、下手に凌がれるとどうなるか。久遠寺の最後のポケモンは草エネルギーが一枚ついた二匹目のチェリムだ。
しかし久遠寺は固まったまま動く気配が無い。電池が切れたロボットのように。
「どうした久遠寺」
何も答えは返ってこない。先ほどまでドンパチしていたのが嘘のように、ただただ夜の風が駐車場をなぞる。
大人げないだろうと思われるかもしれないが、黙られるということに対してひどく嫌悪する。一体俺に何を思い、何を伝えたいのか分からない、その苛立ちからだ。
「……。黙っていても名にも伝わらないぞ」
「わたくしはどうすればいいのか……。分からなくて……」
「貴女、風見君を見て何も感じてないの?」
久遠寺にどう言葉を返そうと迷っていたところ、松野さんが鋭く一声放った。久遠寺は驚いた様相で顔を上げ、俺の後ろに居る松野さんを見つめる。
「風見君はこの対戦に自分の未来を、進むべき道を懸けているの」
「進む……べき道?」
「そうよ。貴女も自分の望むモノのためにここに来たんでしょ? だったらそれをぶつけないと」
「ぶつける……。わたくしの望むモノ……」
呪文のように幾度か小さく呟いた久遠寺は、やがてハンカチで涙で濡れた顔を拭き、元の強気の表情に戻った。
「風見君! わたくしも全力で戦います。わたくしは、わたくしのために。だからもしわたくしが勝てば──」
「いいだろう。お前が勝てば好きにすればいい。しかし俺は負けるためには決して戦わない。立ちはだかる者は誰であろうと容赦はしない!」
久遠寺は小さく頷いて、デッキトップに手を乗せる。
「わたくしの番です! 草エネルギーをチェリムにつけて、グッズカードを。ポケブロアー+を二枚、発動!」
虚空から赤い手が現れ、ガブリアスを掴む。それだけではなく、再び虚空からもう一つの手が現れてベンチのギャラドスも掴んだ。そして掴んだまま二匹を持ち上げ、二匹それぞれの場所を入れ替える。
「ポケブロアー+は一枚だけで使うときと二枚同時に使うときで効果が異なるカードよ! 今のように二枚同時に使った時は相手のベンチポケモンを一匹選んでバトルポケモンと入れ替える効果を持つわ」
松野さんが背後から再びアシストしてくれる。しかしなぜ、ガブリアスからギャラドスに変えたのか。ギャラドスはエネルギーなしでもワザが使えるのに。
「わたくしはまだ諦めてませんわ! チェリムに草エネルギーと達人の帯をつけて、甘辛花粉!」
ポケモンの道具、達人の帯の効果でチェリムのHPが100/100まで上昇し、ワザの威力も20上がる。チェリムのポケボディー、日本晴れの効果も加えてギャラドスに襲いかかるダメージは合わせて20+20+10=50ダメージ。
花粉を受けて苦しむギャラドス80/130は、しばらくのたうつと花粉を振り払い、大きく吠えて威嚇する。そうだ。まだまだギャラドスは戦える。
「そうだ、立ち向かって来い! 俺のターン。ならばギャラドスで攻撃する。リベンジテール! トラッシュのコイキングは三枚。よって90ダメージを与える」
「チェリムは、水タイプに抵抗を、持っていましてよ! それによって受けるダメージは70ですわ」
つぼみを閉じてチェリム30/100はなんとか身を守り、ダメージを軽減する。そう、このせめぎ合いこそが本当の戦い!
「わたくしの番ですわ! 草エネルギーをチェリムにつけて攻撃」
久遠寺の視線が、静かに闘志を燃やしながら真っすぐ俺を見つめる。そして彼女は右腕を真上に上げて叫んだ。
「ソーラービーム!」
突如夜にも関わらず、太陽を直視したような眩い光と平衡感覚を揺るがす轟音がチェリムから真上に放たれ、やがてギャラドスに降り注いだ。眩さ余り、思わず目を閉じ右腕で顔を覆う。
視界は防がれても、音で何が起きてるかはわかる。ギャラドスのHPバーが尽き、ギャラドス0/130が大きな音を立てて崩れ落ちる。
ようやく視界が戻ったときには久遠寺が五枚目のサイドを引いていたところだった。
「くっ、ソーラービームの元の威力は50、帯とポケボディーで80まで威力が上がったか。確かにギャラドスを倒すには十分……」
バトルテーブルでベンチにあるガブリアスのカードをバトル場へと動かす。それに対応するようにガブリアスが足音を出しながらバトル場へ歩み寄る。
「だがお前の反撃もここまでだ。これが、俺の望むべき道! 今度はガブリアスで攻撃! スピードインパクトォ!」
ガブリアスが突進する前に、久遠寺の目じりに涙が浮かんでいるのを見かけた。その次の瞬間、ガブリアスの突進によって巻き起こる砂煙のビジョンで久遠寺が見えなくなる。
スピードインパクトの威力はその効果によって120−20×3=60ダメージ。衝撃波がフィールドを駆け、撥ねられたチェリム0/100が宙を舞う。
最後のサイドを引くとガブリアス達の映像が消え、そして砂煙のビジョンも晴れる。そして向かい側の久遠寺は、うつ伏せに倒れていた。
「はぁ……、はぁ……」
その刹那、物凄い脱力感が包み込み、疲労が体を支配する。苦さと苦しさに少しだけ目頭がジーンとしてきた。
「風見くん、大丈夫?」
松野さんが必死に背中を支えてくれて、ようやく平静を取り戻した。それでもまだ疲労は残っているが、とにかくバトルテーブルをバトルベルトに戻す。これが能力者との戦いか。風見杯のとき、翔は藤原拓哉と戦ってなおかつまだ俺と戦っていたのか。改めてその強靭さを、こうして身で知るとは。
「なんとか、大丈夫……です」
「それじゃあ私は久遠寺麗華をどうにかするから、悪いけど自力で私の家に行って、ベッドとかでもいいから休んでおきなさい」
松野さんが家の鍵を手渡した。携帯電話で誰かと連絡を取り始めた松野さんをよそに、息を整えてから一人先に駐車場を後にする。
最後にもう一度だけ振り返り、うつ伏せに倒れている久遠寺を見る。別段、こうして互いにぶつかりあった以上可哀想とは思わないが何かこう、胸に来るものがあった。
これが俺の決別、その最初の戦い。やがて次の来るときまで、俺は力を蓄えるだけだ。
松野「今回のキーカードはポケブロアー+。
一枚だけでは効果は微妙だけれど、
二枚使うと相手のポケモンと入れ替えれるわよ」
ポケブロアー+ グッズ
このカードは、同じ名前のカードと2枚同時に使ってもよい。
1枚使ったなら、コインを1回投げる。オモテなら、相手のポケモン1匹に、ダメージカウンターを1個のせる。
2枚使ったなら、相手のベンチポケモンを1匹選び、相手のバトルポケモンと入れ替える。(この効果は、2枚で1回はたらく。)
───
久遠寺麗華の使用デッキ
「ハッサムPB」
http://moraraeru.blog81.fc2.com/blog-entry-719.html
思わずふふふと笑っちゃいました。やはりコミカルな作品は良いですね。冬も期待してますよ。
余談ですが、誤字を1箇所確認。「俺が勝ったD-ポッポ」は「俺が買ったD-ポッポ」ではありませんか?
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