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フウジョタウンの中央広場にファイアローとオンバーンを折り立たせ、
→フウジョタウンの中央広場にファイアローとオンバーンを降り立たせ、
折り立たせ→降り立たせ
険しい山脈が東西に走り、南北を隔てる島国・イヨノフタナ地方。
ポケモンリーグが存在しない辺境の地方だが、各地に点在する寺院は、古くから人とポケモンが共に歩む道筋を求道していた言い伝えが残り、現在もポケモンジムに代り、多くのトレーナーとポケモンたちの修行場として親しまれている。
この地方で一人前のポケモントレーナーとして認められるには、各地に点在する八十八の寺院を巡り、全ての試練を乗り越えなければならない。
その風習は『お遍路』と呼ばれ、現在も廃れる事なく受け継がれており、多くのポケモントレーナーたちが挑戦しにやってくる。
八門書房刊『赤井勇のお遍路ぶらり旅』より
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雲ひとつ見当たらない快晴の青空、太陽がギラギラと地上を照らす。
その真下、鮮やかな紅葉が広がる山林のどこか、周囲の紅葉と交わるように、赤い鳥居がひっそりと立つ。
鳥居の先には長い階段が続いており、駆け上がってみれば厳かな雰囲気のある立派な寺院が佇んでいた。
ここはイヨノフタナ地方八十八箇所の一つ、キュウコン寺。
聖なる力を持つ九人の仙人が合体したとされる伝説のキュウコンが本尊と共に祀られている。
住職はキュウコン使いの専門家(エキスパート)として名高く、キュウコンの力を最大限に引き出す心得、秘伝の奥義を代々引き継ぎ、寺を訪れる後進のポケモントレーナーたちの指導に当たっている。
お遍路の挑戦者は、住職が手塩をかけて育てたキュウコンと手合わせし、彼等に認めてもらわなければならない。
キュウコン寺の境内の奥に設置されたポケモンバトルの試合場では、たった今、一人のポケモントレーナーがお遍路の試練に挑戦しようとしていた。
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「 カントー地方の生ける伝説と謳われたポケモンチャンピオンとお手合わせできる日が来るとは・・・・・・この僥倖しかと応えなければなりませんね」
法衣を纏う坊主頭の壮年の男性は、朗らかな微笑みを浮かべながら、モンスターボールをバトルフィールドに投げ込んだ。
「推して参れキュウコン!」
モンスターボールが解放され、眩い光と共に出現したのは、金色に輝く美しい毛並みに、九本の長い尻尾を生やした赤眼のキツネポケモン・キュウコン。
キュウコンの平均的な体長は約1.1m前後くらいだが、この個体はその倍以上の大きさはあるようだ。
対する挑戦者、赤色のキャップ帽を被り、赤と白のラグランTシャツ・青いジーンズを身に付けたラフな格好の青年・・・・・・ポケモントレーナーのレッドは、肩に乗せていた体長0.4m体重6.0kg両頬に電気を蓄える赤い袋を有する黄色い体色のネズミポケモンをフィールドに送り込む。
「任せたピカチュウ」
「ピカァっ!!」
巨大キュウコンと対面したピカチュウは、臆する様子を見せる事なく掛け声を上げると、両頬の電気袋をスパークさせて臨戦態勢に入る。
真剣勝負の場に進化前のポケモンを出すなど、ルーキーでない限り、対戦相手を舐めた態度と受け取られかれないが・・・・・・レッドにとってピカチュウは先鋒を任せられる立派な切込み隊長である。
誤解を解くには語るよりも力を示した方が手っ取り早く、それ故に彼のピカチュウは手持ちのメンバーの中でもレベルが一番高い。
坊主は笑っているように見えてしまう糸目を微かに見開き、対戦相手たちを品定めするように見つめ、キュウコンに指示を仰ぐ。
「小型ポケモンと侮ってはいけませんね。九尾の構えで迎え撃ちましょう」
坊主の指示を受けたキュウコンは、その場から動く事ない。しかし、九本の尻尾がたなびく度に、周囲の空間に微かな歪みが生じて見える。
その異変を探るべくレッドは、ピカチュウに指示を出した。
「10万ボルトで攻撃しろ」
「ピッカァァァアアアっ!!!」
ピカチュウは両頬の電気袋から、キュウコンに目掛けて一直線に強烈な電撃を放つ。
しかし、ピカチュウの必殺の一撃は見えない障壁によって防がれてしまう。
電流が見えない障壁の表面を駆け巡ると、一瞬だけ空気に溶け込んだ透明な九本の尻尾が姿を顕す。それはキュウコンの九尾から伸びているようで、うねりながら本体を丸々包み込んでいた。
(あれは・・・・・・サイコショックの類いか)
レッドは積み重ねてきた戦闘経験を頼りに、透明な障壁の正体を見破った。サイコショックとは不思議な念波を実体化させて攻撃する技だ。キュウコンは九本の尻尾一本一本から不思議な念波を発生させ、透明な尻尾を実体化させているようだ。
キュウコンの尻尾には神秘的な神通力が宿っていると言い伝えがあり、ふざけて尻尾を掴む者は1000年祟られると言われる程、それだけ特別な部位である。
あの透明な九尾は本物の尻尾を保護する為、独自に発展させた技術なのだろうか?
何にせよこのままではやり辛い・・・・・・トリックのタネを見破る事はできても、攻防一体の透明な九尾を対処するのは骨が折れそうだ。
しかし、そんなレッドの心情を見透かしたのように、キュウコンは透明な九尾の輪郭を金色に輝かせ、目視できるようにしてみせた。
金色に輝く九尾のオーラは、空間を揺らぎ、奇妙に歪ませるが、その姿はまるで後光をさす仏様が如く神々しく美しい。
「・・・・・・!」
「あのままでは、フェアプレイの精神に欠けますのでね。さぁ戦いはこれからですよ!」
坊主は相変わらず張り付いたような微笑みを振り撒く。トレーナーとポケモン双方から自分の思考を見抜かれているような気がするが、レッドは悪い気持ちにはならなかった。
この対戦相手は今まで相見えた事のない強さを秘めている予感がする・・・・・・ならば俄然闘志が燃え上がるものだ。
「九重の神通力!その極意をお見せしましょう!九尾の構え壱ノ型!鉄扇!」
坊主の指示を受けた途端、キュウコンは姿を消した・・・・・・かのように、目にも写らぬ速さでピカチュウの目前に迫り、体を旋回、金色の九尾のオーラで薙ぎ払う。通常のキュウコンも素早い部類に入るポケモンだが、このキュウコンは通常個体を遥かに上回る高速の身のこなしで襲い掛かってきた。
ピカチュウはとっさに閃光の如き光速の身のこなし『電光石火』で身に迫る危機を回避する。九尾のオーラが目標なき虚空を薙ぎ払うと、大地が抉り取られるように砕け散る。
「そのままボルテッカー」
レッドは反撃の号令をかける。ピカチュウは光速の身のこなしを維持したまま、両頬の電気袋から膨大な電力を放出しながらフィールドを駆け巡る。その光景は圧巻、激しい迅雷が四方八方縦横無尽に閃いたかと思えば束の間、キュウコンの頭上目掛け落雷のように突撃する。
並みの動体視力・反射神経ではまず捉える事のできない光速の動きだが、キュウコンはこの動きを予測していたかのように、金色の九尾のオーラを重ね合わせ、九重の守りの体勢に入った。
電撃のエネルギーと超能力のエネルギーがぶつかり合うかと思えば、キュウコンは九尾のオーラを巧みに操り、強烈な推力を柳のように受け流す。さらに畳み掛けるように、いなしたピカチュウ目掛けて、口から灼熱の業火を放射する。その一連の動きにトレーナーたちが介入する隙はなかった。
全身全霊の攻撃を避けられたピカチュウだが、勢い余って地面に衝突するような事はなく、身を翻して『電光石火』の身のこなしを継続、全身に電力を纏わせたまま『ボルテッカー』の体勢まで維持しながら、背後から迫り来る『火炎放射』の驚異から逃れようとする。
炎は光速で動くピカチュウを掠める事すら出来ず空を焦がすが・・・・・・突如、キュウコンの姿を思わせるよな輪郭を描いたかと思えば虚空を旋回、紅蓮に燃え盛る灼熱の九尾がフィールド全域を薙ぎ払おうとする。
キュウコンは神通力を用いて火炎を自在に操る能力を持つが、ここまで大規模且つ複雑な火炎操作はレッドも初めて見る。
「ピカチュウ、光の壁だ」
レッドは闇雲に攻撃を避けようとするピカチュウを静止した。炎の猛追を避けきる事は可能かもしれないが、そこにキュウコン本体の追撃が加われば回避する事は至難、さらに致命傷を受けかねない。
主人の意図を汲み取ったピカチュウは体を丸めて防御体勢に入りながら、周囲に光輝く半透明の防御壁を展開する。
刹那、戦場に紅蓮の大輪が咲き、辺りは火の海に包まれる。そしてキュウコンは猛火の勢いなどものともせず、ピカチュウとの距離を一瞬で詰めると一転、体を丸めて前方に宙返り、九尾のオーラを頗る勢いで叩きつけた。
衝撃で大地が砕け散るが・・・・・・特殊攻撃の威力を軽減するフィルター『光の壁』は砕けない。
九重の九連撃を受けきったピカチュウは、満身喪失の状態になりながらも不敵な笑みを浮かべ、両頬をスパークさせて臨戦態勢を継続している。
キュウコンはそんなピカチュウを見つめると、瞬く間に後方に身を退き、遠吠えをあげると辺りの炎を鎮火させた。先程のように『火炎放射』で畳み掛ける事もできるハズだが・・・・・・挑戦者に情けをかけているのか、或いは次の展開を先読みしているのか、若しくは相手の思考を読み取っているのかもしれない。
無論キュウコンの出方がどうあれ、レッドも空元気でバトルを続行しようとする相棒をこれ以上闘わせる事は良しとしない。
「もういい、戻れピカチュウ」
レッドはモンスタボールを構え、ピカチュウをボールの中に回収すると、即座に新たなポケモンをモンスタボールから呼び出す。
「君に決めたカメックス」
現れたのは背中の甲羅に二対の大砲を備えた青い体色の亀型ポケモン・カメックス。炎タイプとは相性的に有利な水タイプのポケモンだ。
相手がキュウコンであるなら先鋒を任せても良かったが、戦いを通じて相手の実力や戦法を知ろうとする事もポケモンバトルの醍醐味の一つである。
ピカチュウの奮戦のおかげ、九重の神通力の一端も垣間見え、相手の強みを推し測る事が出来てきた。
キュウコンがこれまで見せてきた戦法は、九尾に纏わせた『サイコショック』による九重の攻防に、変幻自在の『火炎放射』が織り成す波状攻撃だが、その裏で距離を一瞬で縮める高速移動術・縮地法、相手の思考を読み解く読心術、未来を見通す予知能力等、いわゆる超能力或いは神通力と呼ばれる不思議な力を活用して、こちらの攻撃を的確に回避しているようだ。
ポケモンの技にも『神通力』と呼称されるエスパータイプの攻撃技があるが、このキュウコンが扱う神通力とは、仏教の原典で言い伝えられる仏や菩薩が会得した特殊能力の類いに近いのかもしれない。
相手の全容は未だ不鮮明、見せてない手の内・搦め手は当然あるだろうが、相手が見せてきたこれまでの戦法に対抗できる術をレッドは知っている。
「これは一筋縄ではいかないようですね」
「キュウ・・・・・・」
坊主たちも相手がこれから何をしてくるのか検討がついているらしい。
「カメックス、悪の波導弾」
「ガメエエエエエエ!!!」
カメックスは二対の大砲から、悪タイプのエネルギーを帯びた暗黒の波導弾が発射される。
それは文字通り『悪の波動』と『波導弾』を掛け合わせた合成技。エスパータイプの技『サイコショック』を元に発展させた九尾のオーラの守りも、超能力に干渉されない悪タイプのエネルギーが貫き、神通力を活用する超回避能力は、相手を追尾する波導の攻撃で対応できる。
この戦い、最早無傷では済まされない・・・・・・坊主とキュウコンはレッドの対抗策に即座に対応する。
「悪狐の相!」
キュウコンの赤い瞳から黒煙のような闘気が立ち上がる
と、金色に輝いていた九尾のオーラが瞬く間にドス黒く変色、禍禍しい闇のオーラに様変わりする。『悪の波動』には『悪の波動』で対抗し、さらに+αの技術を加える。
「九尾の構え 弐ノ型 回天!!」
キュウコンは闇の九尾のオーラを全身に包み込ませ、その場で独楽のように超高速回転する。その様は闇の球体だ。
二対の暗黒弾は吸い寄せらるように接触し炸裂するが、回転の勢いは止まらず、まるでダメージを与えられていないようだ。
刹那、闇の球体は突如引き裂かれ、九尾が纏う闇のオーラが伸び広がると、真っ黒な悪の大輪がバトルフィールドに花咲かす。
九重の『悪の波動』がカメックスの胴体に連撃をお見舞いするが、ピカチュウがフィールドに残した『光の壁』が威力を軽減し、戦闘不能には至らず。
カメックスのタフさもあり戦闘は継続可能だが、容赦ない連撃に威圧されたカメックスは一瞬怯んでしまった。その隙をキュウコンたちは見逃さない。
「奥義 ・・・悪滅!」
キュウコンは九尾の闇のオーラを一つに束ねると真一文字に一閃、闇はカメックスを吹き飛ばすのではなく呑み込んだまま、バトルフィールドに残留する。そこにキュウコンは束ねた九尾のオーラを紐解き、四方八方から九重の連撃を浴びせる。
まるで墨汁を染み込ませた書道筆で乱雑に塗り潰したかのように、辺りは不自然な闇に侵食され異常な景色が出来上がった。
「・・・カメックス!」
これには流石のレッドも驚きを隠せず、闇に閉じ込められた仲間の名を叫ばずにいられなかった。
相手が手練れたキュウコン使いである事は重々承知していたが、ここまで神通力を使いこなされてしまっては、いよいよ手も足も出せない。
闇は徐々に薄れていく最中、坊主は新たな指示を出した。
「せめて安らかに・・・・・・闇を祓え!九尾の構え 参ノ型、燈幻郷(とうげんきょう)!」
九尾の本体を覆い隠す禍禍しい闇のオーラは、坊主の号令と共に罅割れ、金色に光輝く神々しいオーラが再び顕現し、眩い閃光を放つ。
閃光はバトルフィールドに残留する闇を瞬く間にかき消した。闇の中に取り込まれていたカメックスは『光の壁』の中で、四肢や頭部・二対の大砲・尻尾を甲羅の中に忍ばせ、殻に籠っている状態でいた。
身を守る術を持たないポケモンなら、悪滅・・・・・・『悪の波動』を帯びた九尾の連撃に耐えきれず戦闘不能に陥るか、真っ暗闇の中で攻撃の苛烈さに威圧されて戦闘不能になるまで怯み続ける事だろう。
カメックスは甲羅から尻尾だけを伸ばし、主人に戦闘続行可能である事をアピールしてみせた。
それだけの事が堪らなく嬉しくて、笑みが溢れてしまう。
「よくやったな」
レッドは怒濤の連撃に怯みながらも、咄嗟に防御態勢に入ったカメックスに賞賛の言葉を送り、反撃の号令を仕掛ける。
「これで決めるぞ波導の嵐!」
カメックスは甲羅に空いた四肢の洞穴から波導のエネルギーを噴射、超高速回転をしながら宙を舞うと、波動のエネルギー弾を乱射する。
かつて戦った事のある同郷のポケモントレーナーは、ゼニガメの『ハイドロポンプ』を甲羅の穴から放出させ、宙を舞いながら戦いを繰り広げていた。その動作をヒントに、ロータの波導使いに稽古をつけてもらい編み出したとっておきの必殺技だ。
「これは・・・!」
坊主は自分の判断が誤っていた事を悟る。
燈幻郷は『怪しい光』と『催眠術』を掛け合わせた閃光を放ち、相手の意識を争いとは無縁の平和な別天地に飛ばして無力化する業だが、カメックスは殻に籠った状態で防御態勢に入っており、視覚から催眠状態を引き起こす燈幻郷は不発に終わった。
奥義で仕留めきれなかった相手を瀕死の状態にせず無力化して退場を促す・・・・・・そんな坊主の驕った甘さが仇となったのだ。
「回天!!」
キュウコンは金色の九尾のオーラを全身に包み込ませ高速回転・・・・・・攻撃をいなし反撃に転じる返し業を繰り出す。
波導のエネルギー弾は高速回転する金色の球体に吸い寄せられるように接触するが、やはり弾き返されてしまう。
しかし、カメックスの回転が止まらない限り波導の猛攻は止まらず、キュウコンは決して反撃に転ずる事はできない。
どちらが先に止まるかの持久戦となれば、両者ともに長くは持たないだろうが・・・・・・回天は長時間の継続を想定した業ではない。『身代わり』を修得していれば、ここから反撃に転じられる型分けの技術はあるが、無い物強請りをしても意味はない。
坊主は溜め込んでいた息を吐き出して宣言する。
「・・・・・・参りました。貴方たちの勝利です」
卍
「噂通り素晴らしい腕前ですね」
「貴方こそ」
戦いを終えたレッドと坊主は、ポケモンたちを労いながらモンスターボールに戻すと、先ほどの戦いについて談話を交えていた。
「何故降参したんですか?」
レッドは率直な疑問をぶつける。
もし自分が坊主ならあの時どうしていたかと考えると、ふと打開策があったのではないかと邪推してしまう。
例えば、一瞬で距離を詰められる高速移動術を修得しているのであれば、『波導弾』をひきつけて宙を舞うカメックスにぶつける・・・とか 、ポケモンバトルを追求する者として、戦いの途中で降参する事にはつい疑問を浮かべてしまう。
対する坊主は負けても相変わらず、朗らかな笑みを浮かべながら返答する。
「あのままでは、我々が押し負けていた事でしょう。私は君のカメックスを侮り不利な戦局を招いてしまったのです」
「・・・見切るのが早いですね」
「戦いは傷つけ合う事が常ですが、不用意に傷つける必要はありません。勝敗だけが戦いの価値を決めるとは限らないのですよ」
「・・・・・・?」
「私の友達は尻尾を一番の武器にしていますが、とても大切にしていてね。あのまま戦っていれば友達の大切なものを傷つけてしまいそうだった。無理に戦えば勝っていたかもしれませんが、そんな戦い方をしていては共に歩む仲間の信頼は決して勝ち取れないでしょう。一つの戦いの中にも様々な戦いがあるのです」
「・・・・・・なるほど納得できました。ありがとうございます」
レッドはようやく腑に落ちた様子で、頭を下げて一礼する。
ふと先ほどのバトルを思い返せば、キュウコンがピカチュウに追撃をしなかったのは、情けをかけた分けでも、交代する事を先読みしていたのでもなかったのだろう。
ポケモンバトルに毒されていたなと、レッドは苦笑いを浮かべながら自省する。
「野暮なことを聞いてしまい申し訳ありませんでした」
「いえいえ謝らないでください。それより君はお遍路の試練に打ち勝ちました。まだまだ先は長いですが、ご武運を祈りしています」
「ありがとうございます」
糸目の坊主は最後まで笑顔を絶さず、次の札所に向かうレッドの背を見送った。
彼のキュウコンには九人・・・・・・否それ以上の歴代住職とその相棒が切磋琢磨して編み出した数々の技術を宿していたが、それでも負ける時は負けてしまう。
しかし、その敗北は決して無価値なものではなく、彼等が受け継ぐ技術の一部に姿を変えて組み込まれて往く。
イヨノフタナ地方には、そんな古豪の強者たちが他にも沢山いる。例えば・・・・・・キュウコン寺を見下ろす紅葉の木々に紛れ、真っ赤な顔をしたスリーパーが、ひっそりと戦いを観戦していた。
修験者、或いは山伏が着るような衣装を見にまとっており、その姿はまるで天狗のようだ。
その背に少年をおんぶしているが・・・・・・このスリーパーは決して誘拐犯でも天狗拐いの怪異でもない。
「ぎょーこーさん、ほんきだったのにまけちゃった。つよいねあのおにーちゃん」
赤いスリーパーはこくりと頷きながら、自分が対峙した別のポケモントレーナーたちの事を思い出す。
ツンツン頭でチャラそうだが実力派の青年、マントを羽織る由緒正しいドラゴン使い、石マニアの御曹司、黒衣に映える金髪の美しい女性、変わった髪型に変わった格好をした科学者・・・・・・他に多々いるが、どいつもこいつもべら棒に強かった。
辺境の古豪たちは、次世代の強者たちに通用するのか・・・・・・彼等はお遍路の挑戦者を楽しみに待ち構えている。
卍 続く 卍
オリジナルの地方を舞台に、原作キャラクターVS『ぼくのかんがえたさいきょうのポケモン』を戦わせるだけのお話し。
オリジナルのフォームや技や特性(と言う名の他作品のキャラの設定をポケモン風に再現もといパクり)とかバンバン出して妄想を発散させつつ、原作キャラクターに花を持たせていきたいです。
Subject ID:
#80023
Subject Name:
砂山の守り人
Registration Date:
1995-05-12
Precaution Level:
Level 1
Handling Instructions:
本案件の案件副担当者には、レベル1以上のセキュリティクリアランスを持つ所定の携帯獣職員が割り当てられます。割り当て可能な携帯獣職員については、リストL-80023-1を参照してください。現在の副担当者には、オオタチのレベル2局員が割り当てられています。
携帯獣#80023には本人の了解を得て常時稼働する小型GPS発信機を装着しています。案件担当者は対応するGPS受信機を使用することでいつでも携帯獣#80023の正確な位置を確認することができます。携帯獣#80023のGPS発信機には、事象#80023が発生した際に出発/到着地点と出発/到着時刻を記録する機能が追加でセットアップされています。このログはGPS受信機からも参照可能です。
案件担当者が定期的に携帯獣#80023の位置を確認すると共にGPS機器が正常に稼働していることを確認すること、案件副担当者が携帯獣#80023に対してヒアリングを行うことを除いては、現状では追加の対応は必要ありません。
Subject Details:
案件#80023は、小規模な空間歪曲能力(能力#80023)を持つ一体の携帯獣(携帯獣#80023)と、それに係る一連の案件です。
携帯獣#80023は♂のボスゴドラで、外見的に非異常のボスゴドラと区別がつきません。身体能力や行使可能な技能についても、一般的なボスゴドラ個体から逸脱するところはありません。気質/性格についてもまた同様で、携帯獣#80023は山を縄張りとして生活しています。縄張りとなる山を荒らす者に対しては敵対的な姿勢を見せ、戦いを挑んでいくこともあります。その一方で、単に山を見学に訪れた人間や携帯獣、あるいはゴミ拾いや植樹をするなど山にとってプラスと考えられる行動を取る人間や携帯獣に対しては友好的に接します。
この携帯獣#80023が持つ特異性は、人間や携帯獣が海岸の砂浜や公園の砂場などで「砂山」を作成し、作成者以外がそれを損壊しようとした際に発現します。対象が砂山の損壊を試みた時、能力#80023が発動します。能力#80023は一種のテレポーテーション能力であり、これにより対象のおよそ半径3メートル以内の場所に携帯獣#80023が前触れなく出現します。携帯獣#80023は怒りを露わにして対象を捕獲し、速やかに砂山を荒らすことを止めるよう強く警告します。これまで確認された事例すべてで、この時点で対象は砂山に手を出さないことを誓約します。これは対象が人間であっても携帯獣であっても同様です。砂山の安全が確保されると携帯獣#80023は満足して対象を解放し、出現時と同様に突如として消失します。
携帯獣#80023はホウエン地方ムロタウン北部に位置する山を住処としており、そこからおよそ半径5キロメートル以内が能力#80023の有効範囲内と見られます。圏内で砂山の損壊を検知すると、能力#80023が自動的に発動するようです。携帯獣#80023はこの事象に困惑した様子を見せておらず、むしろ有用であると認識しています。携帯獣#80023は砂山の保護を重要な仕事だと考えていて、その任に当たっている自身に誇りを持っているようです。
同時期に砂山の損壊事案が複数の箇所で発生すると、携帯獣#80023はきわめて正確に先に発生した事案の解決に向かいます。自分の到着前に砂山が全損してしまった場合などで保護に失敗した場合は、損壊した人物を威嚇して強く叱責するとともに、砂山の作成者を(ボスゴドラ由来の強大な腕力で傷つけてしまわないよう)ごく弱い力で抱きしめ、砂山が損壊された悲しみを慰めながら、自身で砂を集めて砂山を修復します。砂山が元通り修復されると、携帯獣#80023は一声鳴いて(案件副担当者のヒアリングにより、これは「次はもっと早く来るよ」と言っていることが分かりました)から能力#80023を発現させてその場を離れます。
一連の事象に於いて、携帯獣#80023は砂山を損壊する対象に向けて攻撃的な姿勢を露わにしますが、実際に攻撃した事例は確認されていません。これまで発生したケースでは対象はいずれも携帯獣#80023の威容を受けて砂山の損壊を即時停止し、携帯獣#80023の指示に忠実に従います。仮に携帯獣#80023の指示を無視して砂山の損壊を試みた場合、携帯獣#80023は対象を攻撃する可能性こそありますが、自発的な攻撃は一度も確認されていません。
砂山の損壊を試みる対象についてはほぼ例外なく敵対姿勢を露わにする携帯獣#80023ですが、唯一の例外となるのが砂山の作成者自身によるものです。砂山の作成者自身が砂山を元の砂地へ戻す行為について、携帯獣#80023は決して妨害することはありません。砂山がおよそ92%喪失した時点で、第三者が砂山だったものに接触しても携帯獣#80023は出現しなくなります。ただし、同じ砂場で再度砂山が作成されると、その砂山は再び携帯獣#80023の監視/保護対象となります。
以下は、案件副担当者による携帯獣#80023に対する定期ヒアリング記録の抜粋です。このヒアリングは第十四回目であり、案件副担当者と携帯獣#80023の間に十分な信頼関係が構築されていることを前提としてください:
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案件副担当者:
[携帯獣#80023の愛称]さん、今週はいくつの山を守ったんです?
携帯獣#80023:
ざあっと16ってとこか。山を傷付けるヤツぁ、おらが許しちゃおかねぇ。
案件副担当者:
もうすっかり「決め台詞」になっちゃってますね、それ。
携帯獣#80023:
おらでもちっとは格好付けたくなることくらいあるさ。ああ、そうだそうだ。縞模様の姉ちゃん。こないだ頼まれたこと――
案件副担当者:
ありがとうございます。[携帯獣#80023の愛称]さんが、どうやって山から砂場へ移動しているかについてですね。
携帯獣#80023:
んだ。ただ、おらにもよく分からねぇだ。山が壊されてるって思うと、ふっと頭ん中にその風景が浮かんできて、そのすぐ後にゃその場所にいるだ。
案件副担当者:
となると、[携帯獣#80023の愛称]さんが自分で移動する場所を決めているわけではないみたいですね。
携帯獣#80023:
そうだろうなぁ。おらと違って、他の山守(*1)たちにゃこんなことできねぇからなぁ。けんどよ、前から言ってる通り、おらはこいつに感謝してるだ。
案件副担当者:
誰かの作った山を守ることができるから、そうですよね。
携帯獣#80023:
かぁーっ、姉ちゃんに言われるとちぃとこっぱずかしいな。だけんどその通りだ。ちっこいとは言え山は山、壊されるのは辛抱ならねぇ。
案件副担当者:
ですよね。あの……一つだけ気になるんですけど、訊いてもいいですか?
携帯獣#80023:
ん、いいだ。訊いてくれ。
案件副担当者:
大したことじゃないんですけど……山を作った人が山を壊すのは、止めないんです?
携帯獣#80023:
んだ。そいつは止めやしねぇ。
携帯獣#80023:
山ができたからにゃ、いつか壊れる時も来る。作ったやつが壊すのは、そりゃ仕方ない。おらの山だって神さん(*2)が作った。おらは神様の代わりに山を守ってるだけだけん、神さんが壊す言うなら、その山は壊れるのが道理だ。
*1……やまもり。ボスゴドラの同族に対する一般的な呼称です。
*2……ここで述べられている「神様」は特定の宗教上における信仰対象と言うよりも、より通俗的な「偉大な存在」を指しているように見受けられます。
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携帯獣#80023の性質を鑑み、当局の管理する収容房への収容は困難及び不要と判断されたため、携帯獣#80023については今後も継続監視することで対応するものとします。
Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。
Subject ID:
#121634
Subject Name:
『案件#121634 「ピカチュウのなつやすみ」』
Registration Date:
2008-07-18
Precaution Level:
Level 3
Handling Instructions:
映像#121634に対応する管理文書#121634が新たに発見された場合、映像#121634について管理文書#121634に基づくテストを可能な範囲で実施の上、管理文書#121634が虚偽と見做された場合は本案件の付帯資料としてアーカイブの上管理してください。本案件は映像#121634と管理文書#121634に関連する案件の最上位に位置付けられます。仮に管理文書#121634の記載が正しいケースが確認された場合、別個の案件番号が付与されることになっています。
管理局データベースのブロック33-Cは他のデータベースよりも精密なログ採取を行う設定が追加されます。情報管理部門は週次の定期メンテナンス時に、データベースのブロック33-Cにおけるログ取得設定が変更されていないことを少なくとも2名以上の複眼で確認してください。管理文書#121634はデータベースのブロック33-Cに予兆なしに追加されることが分かっています。案件担当者以外が未知の管理文書#121634を発見した場合、速やかに案件担当者へ報告することが求められます。
管理文書#121634が当局局員により作成されたものでないことを確認してください。標準手順M-99761に基づき電子文書の監査を行い、ファイルシステムに記録された所有者/作成者/更新者を記録することにより確認プロセスは完了します。確認プロセスによって得られたログファイルは管理局データベースのブロック21-Dへ別途保管してください。管理文書#121634の出現するブロック33-Cに保管してはなりません。
Subject Details:
案件#121634は、当局が管理する案件データベースの所定のブロックに不定期に出現する作成者不明の案件管理文書(管理文書#121634)と、発見されたすべての管理文書#121634が異常特性を持つオブジェクトだと主張する映像作品(映像#121634)、及びそれらに掛かる一連の案件です。
管理文書#121634が初めて観測されたのは、2008-02-14 16:34時点です。システム管理者によるメンテナンス時にデータベースのインデックスに登録されていない状態のまま保管されている孤立した案件管理文書が発見され、通常の連絡経路に沿って拠点監督者に報告されました。拠点監督者はシステム管理者にデータベースのロックとオフライン化を指示し、この操作は10分以内に正常に完了しました。抗ミーム汚染措置が施された専用端末に未知の案件管理文書を移動の上閲覧したところ、案件管理文書自体からは異常性が確認されませんでした。臨時の収容プロトコルが確立され、文書は高セキュア環境のサーバへ移動させられました。
管理文書#121634は、当局が作成/管理している案件管理文書と合致する書式/形式に則って作成されたと思しき電子ドキュメントです。管理文書#121634は常に「案件#121634」について記載され、名称として「ピカチュウのなつやすみ」が設定されます。他の案件番号/案件名称が設定されたものはこれまでのところ確認されていません。これに加えて、管理文書#121634はいずれも「映像#121634」という特異性を持つ映像に対する取扱手順と案件詳細について記載されています。これまでに計35の管理文書#121634が作成され、管理文書#121634-1から-35に分類されています。これらの管理文書#121634は当局における正規の管理文書として認可されません。
映像#121634は、すべての管理文書#121634並びに案件#121634において、1998年に上映された短編映画である「ピカチュウのなつやすみ」を指しています。これはいずれも明確にタイトルが指定されており、当局の推論に基づくものではありません。管理文書#121634は「ピカチュウのなつやすみ」を程度の違いはあれど異常または危険な映像であると指摘しており、現実的な収容手順について記載しています。
管理文書#121634の記載内容に反して、映像#121634に指定された「ピカチュウのなつやすみ」についてはこれまでのところ何ら異常な兆候を見つけ出すことができていません。例として、管理文書#121634-12は特定の条件下において映像#121634を視聴した場合に人体に顕著な悪影響を及ぼす事象について記述され、管理文書#121634-29は所定の状況下で映像#121634を放送した場合にレベル7-現実崩壊シナリオが発生する虞があることを示していますが、いずれも当局の検査に於いて虚偽の内容であるとの見方が示されています。
以下は、これまでに当局の案件データベースに作成された管理文書#121634の抜粋と、その記載内容の要約です:
[管理文書#121634-1]
警戒レベル: 5
取扱手順: あらゆる媒体に記録された映像#121634を回収し、研究目的のサンプルを残してすべてを破壊することを指示しています。
案件詳細: VHS媒体に記録された映像#121634を民生用のビデオ機器で再生した際、21:03時点に存在する1フレーム間の画像(赤い背景に黒い直方体が描かれています)が人間並びにあらゆる携帯獣に致命的な認識災害をもたらすと記載されています。文書には加工された当該画像が添付されていました。検査により、VHS媒体に記録された映像#121634にそのような画像は記録されていないことが分かりました。
[管理文書#121634-2]
警戒レベル: 4
取扱手順: 管理文書#121634-1と同様の記載がなされています。
案件詳細: 映像#121634を少なくとも50人以上の10歳以下の児童に対して同時に視聴させた場合、児童全員の意識が「池上博人」と名乗る7歳の少年のものに置換されます。管理文書#121634-2は児童を被験者#121634と分類しています。同一の場所に複数の「池上博人」が出現することにより、被験者#121634は例外なく極端なパニック状態に陥ります。管理文書#121634-2は映像#121634によって被験者#121634となった児童を少なくとも25,126人収容していると記載しています。これまでの調査で、映像#121634に管理文書#121634-2のような効果は確認されていません。
[管理文書#121634-5]
警戒レベル: 4
取扱手順: この管理文書における映像#121634は、その顕著な自己増殖性から収容不可能であるとされています。
案件詳細: インターネット上の動画共有サイトにアップロードされた映像#121634を視聴した人間(対象#121634に指定)は、自身の経験したもっとも有意義な「夏休み」について空想を巡らせるようになります。対象#121634が72時間以内にプロトコルUX-レベル3以上の記憶処理を受けなかった場合、空想した「夏休み」を求めて居住地を離れます。この時対象#121634は映像#121634を視聴した機器を持ち出し、同じ異常特性を持つ映像#121634の完全なコピーをインターネット上の動画共有サイトへ不定期にアップロードし始めます。失踪した対象#121634を追跡する試みにはことごとく失敗した旨が記載されています。
[管理文書#121634-7]
警戒レベル: [なつやすみ]
取扱手順: ただ「[なつやすみ]」とのみ記載されています。
案件詳細: ただ「[なつやすみ]」とのみ記載されています。
補足: この管理文書#121634で定義されているはずだった映像#121634には顕著な情報の破壊特性があり、本来の内容が喪失した可能性が示唆されています。
[管理文書#121634-12]
警戒レベル: 5
取扱手順: 管理文書#121634-1と同様の記載に加えて、研究目的であっても映像#121634を視聴することを禁じる文言が追加されています。
案件詳細: 映像#121634を累計3時間以上視聴した人間は、その時点で外見的特徴を除くあらゆる生物学的特徴が携帯獣の「ピカチュウ」と同等のものに置換されます。端的に言えば、外見に関する情報のみが元の人間であり、内部構造は(顕著な矛盾を孕んでいるにも拘らず)ピカチュウに変化するということです。この影響を受けた人間は対象#121634と分類されます。管理文書#121634-12はこれまでに3,118体の対象#121634を収容していると記述しています。
[管理文書#121634-17]
警戒レベル: 1
取扱手順: 管理文書#121634-1と同様の記載に加えて、研究目的であっても映像#121634を視聴することを禁じる文言が追加されています。管理文書#121634-12とは記述内容が異なっています。
案件詳細: 映像#121634は実害が無いにもかかわらず繰り返し異常なオブジェクトとして市民から通報される旨が記載されています。実害が無いと定義しているにも関わらず、案件担当者には映像#121634の積極的な破棄を指示しています。
補足: 文書の体裁は映像#121634に対する詳細な言及を避け、本来の性質を隠匿しようとしているように見受けられます。レベル5以上のセキュリティクリアランス保持者は付帯資料にアクセス可能との記載がありますが、付帯資料は出現しませんでした。
[管理文書#121634-24]
警戒レベル: 4
取扱手順: ただ「[データ破損]」とのみ記載されています。
案件詳細: ただ「[データ破損]」とのみ記載されています。
[管理文書#121634-29]
警戒レベル: 6
取扱手順: 案件#121634を適切に収容するための取扱手順が制定できておらず、事態の収拾に向けた活動が行えない旨の記載がされています。暫定措置として、あらゆる媒体に記録された映像#121634を破棄することが指示されています。
案件詳細: 未知の技術によりレベル7-現実崩壊シナリオが予測され、その根本的な原因となるのが映像#121634であるとされています。2028/07/18 09:00よりあらゆる映像端末に映像#121634が放送され、視聴したすべての生物(携帯獣を含む)が映像#121634に取り込まれて喪失すると記載されています。案件担当者は、2018/07/18までに映像を視聴可能なあらゆる端末を破壊するための大規模作戦の展開を裁定委員会に諮っている旨を記載しています。裁定委員会は計画の詳細についてさらなる検討が必要としつつも、作戦自体について肯定的な見解を示しています。当局の危機予測システムはこのような事象を観測していません。
これまで確認された管理文書#121634-1から-35の内容は、少なくとも現状で検証可能な範囲についてはいずれも正確ではありません。管理文書#121634-29のように未来に発生する事象について言及したものも複数存在していますが、それらが実際に起こり得る兆候は確認できていません。
管理文書#121634の実情に関する仮説は2件提起されています。一つは管理文書#121634は未知の存在が当局をかく乱する目的でデータベースに作成しているというものです。現時点でひとつとして正当性を検証できた管理文書#121634が存在しないことがその根拠です。もう一つは管理文書#121634が現在の時間軸/次元軸とは異なる当局によって作成されたものであり、何らかの理由により当局の存在する時間軸/次元軸に流出しているというものです。この文書の流出が偶発的なものなのか意図されたものなのかは判断が分かれています。
Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。
Subject ID:
#99535
Subject Name:
インサイド・アウトサイド
Registration Date:
2001-07-16
Precaution Level:
Level 3
Handling Instructions:
事案#99379にて回収されたオブジェクト#99535群については、イッシュ地方セッカシティ第四支局の中異常性物品保管庫へ移送の上、標準的な耐火金庫に収容する形で保管されています。金庫のセキュリティロックは案件担当者と副担当者が個別に設定し、開錠に際しては両者が同時にセキュリティコードを入力しなければなりません。明確な理由のないオブジェクト#99535の持ち出しは、当局の情報管理手続きに基づき禁止されています。
オブジェクト#99535に関連すると見られる参考人#99535の行方を追ってください。これまでに実在する人物と関連付けが行われた参考人#99535の一覧はリストL-99535-3を、関連付けが完了していない参考人#99535の一覧はリストL-99535-4を参照してください。参考人#99535の関連付けに成功した場合は、リストL-99535-3及び-4をそれぞれ更新してください。更新は案件担当者のコミットを以って完了となります。
回収済みのオブジェクト#99535に対するあらゆる試験は禁止されています。過去に発生した事例から、オブジェクト#99535は潜在的に当局に対して敵対的な姿勢を持っていると考えられています。オブジェクト#99535が所持者に与える認識異常/情報災害については未知の点が多く存在していますが、オブジェクト#99535への接触を避けることにより少なくともそれらのミームハザードに曝露する危険性は最小限に留めることが可能です。
Subject Details:
案件#99535は、外見上人間の子供と見られる生命体が格納された携帯捕獲装置――所謂「モンスターボール」(オブジェクト#99535)と、オブジェクト#99535内部に存在する人物と一致する一般市民(参考人#99535)、及びそれらに係る一連の案件です。
2001年6月末頃、イッシュ地方セッカシティ近隣を散策していたポケモントレーナーより「子供が閉じ込められたモンスターボールを見つけた」という通報が寄せられました。後にオブジェクト#99535に指定されるモンスターボールは合わせて21個発見され、そのすべてについておよそ八歳から十四歳頃と見られる子供が格納されていました。対応に当たった局員がすべてのオブジェクト#99535を回収し、格納された子供の救助を試みましたが、この時点での救助はすべて失敗に終わりました。異常事案発生の虞ありと見做され、局員の報告に基づき案件立ち上げが決定されました。この時点で、モンスターボールはオブジェクト#99535-1から-21に分類されました。
オブジェクト#99535は、外見上一般的な「モンスターボール」に見える球状の物体です。構造は非異常性のモンスターボールと変わりないように見えますが、上部から透けて見える内部には人間の子供に類似した未知の生命体が格納されています。子供は着衣のまま仰向けに寝転ぶ形で格納されており、いずれも目を閉じていて意識がないように見受けられます。ボールに存在する情報表示用のボタンを押下すると、格納されている子供に関する詳細な情報(本名/トレーナーID/住所/年齢/血液型等)を得ることができます。これらの情報はいずれも正確なものであると立証されています。
非異常性のモンスターボールは中央のボタンを押下することにより展開し内部に格納された携帯獣を解放することができますが、オブジェクト#99535はその機能が欠如または故障しているか、または初めから設計に組み込まれていません。これまで行われた457ケースの解放テストすべてについて、オブジェクト#99535はいずれも内部の子供を解放しませんでした。
本件については初動対応に当たった局員が引き継ぐ形で案件担当者に割り当てられ、当該局員もこれを了承しました。その後の調査により、オブジェクト#99535のうち-6/-9/-13/-18/-21について、内部に格納されている人物と一致する人物が割り出されました。当該人物はいずれもポケモントレーナーであり、その全員が失踪中であることが判明しています。オブジェクト#99535に格納された人物が失踪したポケモントレーナーであることが確定的となったため、オブジェクト#99535を破壊して内部の市民を救出する申請を裁定委員会に提出しています。
[2001-08-11 Update]
案件担当者によるオブジェクト#99535の破壊試験は却下されました。
[2001-08-21 Update]
案件担当者は計画を修正の上、裁定委員会に再申請を行いました。
[2001-08-30 Update]
案件担当者によるオブジェクト#99535の破壊試験は却下されました。
[2001-09-06 Update]
案件担当者は計画を修正の上、裁定委員会に再申請を行いました。
[2001-09-26 Update]
案件担当者によるオブジェクト#99535の破壊試験は却下されました。
[2001-10-02 Update]
案件担当者は計画を修正の上、裁定委員会に再申請を行いました。
[2001-10-14 Update]
案件担当者によるオブジェクト#99535の破壊試験は却下されました。
[2001-10-18 Update]
案件担当者は計画を修正の上、裁定委員会に再申請を行いました。
[2001-10-27 Update]
案件担当者によるオブジェクト#99535の破壊試験は却下されました。
[2001-10-30 Update]
案件担当者は計画を修正の上、裁定委員会に再申請を行いました。
[2001-11-08 Update]
案件担当者によるオブジェクト#99535の破壊試験は却下されました。
[2001-11-10 Update]
案件担当者は計画を修正の上、裁定委員会に再申請を行いました。
[2001-11-29 Update]
案件担当者によるオブジェクト#99535の破壊試験は却下されました。
[2001-11-30 Update]
案件担当者は計画を修正の上、裁定委員会に再申請を行いました。
[2001-12-09 Update]
案件担当者によるオブジェクト#99535の破壊試験は却下されました。案件担当者はこの裁定を不服とし、倫理委員会に上申を行いました。
[2002-01-14 Update]
案件担当者による倫理委員会への上申は却下されました。案件担当者はこの裁定を不服とし、倫理委員会に即日再申請を行いました。
[2002-01-20 Update]
監査部門により、裁定委員会及び倫理委員会への上申が極端に多い案件として本案件がピックアップされ、案件担当者に対するヒアリングが実施されました。案件担当者は監査部門の担当者に非協力的な態度を取り、オブジェクト#99535は速やかに破壊されなければならないと繰り返しました。精神状態が職務遂行に著しい問題を来たすレベルで悪化しているとの見方が示され、案件担当者は当該案件から別案件へ転任させることが決定されました。案件担当者にはプロトコルUXに基づく記憶処理が施され、ホウエン地方トウカシティ第十五支局へ異動となりました。
[2002-02-06 Update]
前任担当者の離任に伴い、新しい案件担当者が割り当てられました。前任担当者はオブジェクト#99535がもたらすミームハザードに曝露した状態で報告書を作成した虞があり、新任担当者はオブジェクト#99535に接触した履歴のない局員が選ばれました。新任担当者は情報災害防止機構を搭載した端末を使用して前任担当者が作成したレポートを複写し、改めてその内容の検証を実施しました。
検証の結果、オブジェクト#99535-6/-9/-13/-18/-21に格納されているとされた参考人#99535はいずれも実在する人物ではありますが、失踪中との情報はなくいずれも容易にコンタクトを取ることに成功しました。それぞれの参考人#99535にヒアリングを実施し、オブジェクト#99535との関連性について調査が行われましたが、有意な情報を得ることはできませんでした。参考人#99535の全員について、オブジェクト#99535との関連性を明確に否定しています。
[2002-05-09 Update]
収容中のオブジェクトに対する定期検査により、オブジェクト#99535-14(およそ9歳頃に見える少女が格納されている)について、情報表示部全域に以下のテキストが繰り返し記述されているのが確認されました。
こ こ か ら だ し て
このテキストは以前の検査時点では表示されておらず、オブジェクト#99535-14に何らかの性質変化があったものと見られています。
[2002-06-11 Update]
収容中のオブジェクトに対する定期検査により、オブジェクト#99535-7(およそ12歳頃に見える少年が格納されている)について、情報表示部全域に以下のテキストが繰り返し記述されているのが確認されました。
ぼ く を そ と へ だ し て
オブジェクト#99535-14とほぼ同様の変化を見せたため、案件担当者の指示により定期検査を日次化することが決定されました。
[2002-06-17 Update]
オブジェクト#99535-7及び-14に対応する参考人#99535-7及び-14とコンタクトを試みましたが、案件担当者によるコンタクトは失敗に終わりました。案件担当者はオブジェクト#99535-7及び-14の即時無力化を裁定委員会に申請しました。
[2002-07-09 Update]
案件担当者によるオブジェクト#99535に対する無力化の申請は却下されました。
[2002-08-12 Update]
案件担当者はオブジェクト#99535を無断で持ち出し、小火器を用いて破壊することを試みました。セキュリティ担当者が錯乱状態の案件担当者を拘束し、すべてのセキュリティクリアランスが剥奪されました。オブジェクト#99535に破損の兆候は見られません。案件#99535には新たな担当者が割り当てられる予定です。
Supplementary Items:
以下は認識異常/情報災害部門に在籍するコウヅキ研究員が付記した、オブジェクト#99535の性質に関する提言です。
[コウヅキ研究員の提言]
オブジェクト#99535に関連して発生した2件の事案については、いずれも案件担当者がオブジェクト#99535を破壊しようとした点で一致を見ています。この結果から、オブジェクト#99535には接触した対象に自分自身を破壊させようとする認識異常または情報災害を齎すとの見方が可能です。初期の担当者は「内部の人間を救助するため」、後任の担当者は「オブジェクト#99535を無力化するため」と理由は異なっていますが、最終的に至った結論がオブジェクト#99535の破壊であることは特筆すべき事項と言えます。
現在の取扱手順はオブジェクト#99535の主体をモンスターボール型の機器にあると定義していますが、上述した性質を鑑み、オブジェクト#99535の実体は内部に格納された人型生命体である可能性を指摘します。モンスターボール型の機器はオブジェクト#99535の真の実体である人型生命体を収容するために使用されており、内部の人型生命体が収容を突破することを試みているのだとすれば、オブジェクト#99535が自分自身を外的要因によって破壊させる情報災害を引き起こすことにも説明が付きます。内部の人型生命体は非常に危険な性質を持っている可能性があり、モンスターボール型の機器はそれを封じ込めているという見方ができるということです。オブジェクト#99535に曝露した直後から、案件担当者が本来であればコンタクト可能な対応する参考人#99535を認識できなくなる事象が双方の事例に於いて発生している点も特筆すべきでしょう。
ただし、別の懸念点もあります。一部の参考人#99535から得られたヒアリングデータから、微弱ながらオブジェクト#99535に類似したミームハザード特性を持つデータパターンが検出されています。これは現段階に於いて参考人#99535を直ちに収容する根拠とはなりませんが、少なくともフィールドワーカーを配置して監視を継続する理由にはなり得ます。仮に参考人#99535が異常特性を持つ人型生命体の場合、一転して疑うべきは内部の人型生命体ではなくやはりモンスターボール型の機器という結論に至ります。この場合、参考人#99535についても追加調査が必要になると考えます。
いずれにせよ、オブジェクト#99535の「内」と「外」の関係性が確定するまでは、オブジェクト#99535を用いたあらゆる試験/実験は無期限に延期されるべきです。
Subject ID:
#128650
Subject Name:
魔法の家
Registration Date:
2010-10-08
Precaution Level:
Level 4 (2010-10-08時点) → Level 0 (2016-04-27時点)
Handling Instructions:
エリア#128650はその特異な性質から、当局による直接的な収容は極めて困難です。このため、案件担当者がエリア#128650の居住者である住民#128650-2及び住民#128650-3と定期的に連絡を取り合い、エリア#128650の特異性を発現させている住民#128650-1を継続監視する代替の収容手順が策定されました。この収容手順はエリア#128650の特異性が失われるまで継続されます。住民#128650-2と住民#128650-3の実子である住民#128650-4及び住民#128650-5については、当局による監視の下で寄宿制の学校へ通学させています。
住民#128650-1については3年ほど前から案件担当者に対して種々の体調不良を訴えており、また住民#128650が持つ性質から近代医学に基づく医療措置を受けることも不可能であると考えられるため、当局から具体的なアクションを起こす予定はありません。これまでに得られた情報から、住民#128650-1の死去をもって、エリア#128650の特異性は失われるとの見方が示されています。
[2016-04-27 Update]
2016-04-20をもって住民#128650-1は老衰のため死去し、それと同時にエリア#128650は特異な性質を喪失しました。エリア#128650における資源の利用制約はなくなり、高度な電子機器を含むすべての資源が利用可能になります。エリア#128650に於ける特異性の消失をもって、当案件の警戒レベルは「0」に再設定されました。
エリア#128650は事後検査のため一か月間管理下におかれ、その後事象#128650の再発が確認されなかった場合、当局より住民#128650-2に返還される予定です。エリア#128650の返還に際しては、現存する住民#128650全員(-2, -3, -4, -5)に対してプロトコルUXに基づく記憶処理が行われます。
Subject Details:
案件#128650は、ある異常性を持った一軒家及びその近隣(エリア#128650)、エリア#128650内に居住していた五人の人間(住民#128650)、並びにエリア#128650に於いて発生していた事象(事象#128650)、及びそれらに係る一連の案件です。
2010年9月上旬、住民#128650-2から当局へ「子供が家を出たまま帰らない」と通報が寄せられました。警察機関ではなく案件管理局へ直接通報がなされたことが当局の注意を引き、住民#128650-2にヒアリングを実施しました。ヒアリングによってエリア#128650及び事象#128650について情報が得られ、エリア#128650が当局の管理下に置かれることとなりました。住民#128650-4及び-5については、コガネシティ第三支局所属のフィールドワーカーが一時保護の上警察に引き渡していたことが分かり、警察当局より当局へ身柄が移管されました。
エリア#128650は一貫する異常性を帯びた165平方メートルの空間です。エリア#128650における異常性は事象#128650として分類され、その根本的な起源はエリア#128650における住民の一人である住民#128650-1にあると突き止められました。住民#128650-2から-5については、住民#128650-1と直接の血縁関係にあるにもかかわらず、事象#128650やそれに類する事象を発生させる能力を保持していません。
住民#128650-1はエリア#128650に居住する七十六歳の女性で、住民#128650-2の母親に相当する人物です。住民#128650-2は住民#128650-2の実の娘で、住民#128650-3とは婚姻関係にあります。住民#128650-4及び-5は住民#128650-2及び-3の間に生まれた実子で、それぞれ十歳の女性と八歳の男性です。住民#128650-1を除き、すべての住民#128650が当局の管理下に置かれることを了承しています。また住民#128650-4及び-5については、保護者である住民#128650-2及び-3と当事者である住民#128650-4及び-5両者からの申し出により、エリア#128650に戻るのではなく寄宿制の学校へ転校する措置が執られました。この措置は、当局の倫理委員会の承認に基づくものです。
事象#128650は、事象が発生している区域内に於いて(恐らくは)1950年以前に実用化されていなかった物品が一時的に機能を喪失して利用できなくなるという事象です。事象#128650の対象となるのは物品が実用化されていなかったケースであり、物品個々の製造年ではないことに注意してください。例えば2010年に製造された一般的な鉛筆については、「鉛筆」という概念そのものは1950年時点で存在していたことが明らかであるため、影響を受けることなく使用することができます。また、1950年以降に出生した人物についても、エリア#128650内で問題なく活動することが可能です。この点は住民#128650-1を除く住民#128650が全員1950年よりも後に出生したことからも証明されています。
以下は案件担当者が住民#128650-2と共にエリア#128650に対して物品を持ち込み、利用の可否についてテストを行った結果の抜粋です:
[ケース番号1]
対象物品:ゼブラ社製の油性ボールペン
利用可否:利用不可。ボールペンは芯を出すことができませんでした。芯を出したまま持ち込まれたものについては、インクが十分残っているにも関わらず紙への筆記ができませんでした。エリア#128650から退出した直後から正常に利用可能になったことを確認しました。
[ケース番号4]
対象物品:Apple社製のスマートフォン「iPhone 3G」
利用可否:利用不可。電源を投入したまま持ち込まれたiPhone 3Gは即座にシャットダウンされ、エリア#128650内部での再起動の試みはすべて失敗に終わりました。エリア#128650からの退出後は再び正常に稼働しましたが、シャットダウン時のログは記録されていませんでした。
[ケース番号11]
対象物品:プラスチック製のストロー
利用可否:利用不可。未知の原理によりストローの機能が失われ、液体を吸い上げられなくなっていることが分かりました。無作為に選ばれた13本のサンプルすべてで同一の事象が発生しました。エリア#128650からの退出後、すべてのストローが正常に利用できることを確認しました。
[ケース番号12]
対象物品:森永乳業製アイスクリーム「ピノ」
利用可否:利用不可。持ち込まれた「ピノ」はいかなる手段を用いても容器から取り外すことができませんでした。あらかじめ容器から出しておいたものについても、実験に当たった局員が「鉄のように固い」とコメントし、摂食できませんでした。この実験結果から、事象#128650は食品に対しても作用するとの知見が得られました。
[ケース番号16]
対象物品:1950年以降に開発・販売されたカレールーを使用したカレー
利用可否:利用可能。カレーの概念自体は1950年以前に確立されていたことが理由と推定されます。
[ケース番号17]
対象物品:ケース番号16の調理時に使用したカレールー
利用可否:利用不可。エリア#128650内においてカレールーはケース番号12と同じ理由で容器から取り出せず、あらかじめ取り出しておいたものについても利用できませんでした。対象のカレールーが市販されたのが1960年代以降であることが理由と考えられています。
[ケース番号18]
対象物品:ケース番号16で調理したカレーをプラスチック製の容器に盛り付けたもの
利用可否:利用不可。持ち込んだ直後に未知の理由によりカレーが食器から滑り落ちました。プラスチック製の食器は1950年以前に実用化されていなかったことが原因と推定されます。
[ケース番号26]
対象物品:電池駆動の針式腕時計
利用可否:利用不可。腕時計の概念は1950年以前に確立されていましたが、電池駆動のものは1960年代になるまで実用化されていなかったためと見られます。
[ケース番号28]
対象物品:ぜんまい動力による針式腕時計
利用可否:利用可能。このタイプの腕時計は1950年時点で実用化されていたためと見られます。
[ケース番号29]
対象物品:1950年代の仕様に基づき2000年代に製造されたぜんまい動力による針式腕時計
利用可否:利用可能。製造年は事象#128650に直接関与するものではないことが明らかにされました。
エリア#128650における事象#128650の性質により、住民#128650-2から-5は1950年代当時の水準で生活することを余儀なくされていました。住民#128650-4及び-5はこの生活環境に対して非常に強いストレスを感じており、エリア#128650を出る直接の原因になったと局員に語っています。エリア#128650で居住していた際は友人を家へ呼ぶこともできなかったと語っていることから、エリア#128650について住民#128650以外に知識を持っている人物はいないと考えられます。住民#128650-4及び-5は当局局員が勤務する寄宿制の学校へ転校させられました。
住民#128650-1は少なくとも2004年頃から「近頃は便利になりすぎた」と周囲に語っており、近代化された生活を嫌悪していたとの複数の証言を得ています。いかなる原理により事象#128650が発生しているのかは定かではありませんが、事象#128650の性質を鑑みてその発生に住民#128650-1が深く関与していると見られています。
事象#128650の「所定の道具を使用できなくする」という特徴から、事象#128650については携帯獣の技能の一つ「マジックルーム」に類似した性質を持つと考えられています。正確な性質については今後さらに調査が行われる予定です。
[2016-04-27 Update]
住民#128650-1の死後エリア#128650に残置された物品の一部について、事象#128650の影響下に長期間置かれ続けたため性質を変貌させた虞のあるものが確認されました。該当する物品については当局が押収し、ジョウト地方エンジュシティ第六支局の中異常性物品保管庫へ移送/保管しています。これら物品の詳細については、押収時に作成された目録L-128650-4を参照してください。今後エリア#128650内で同様の物品が発見された場合、収容措置を執ると共に目録L-128650-1を更新してください。
Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。
『はねる』という技は、遠方の地方では自らを鼓舞することによって攻撃力を上げる特殊な効果があるそうだ。
だが、それを除けば特に何も起こらない意味のない技。言ってしまえば価値のない技だと、幼い頃のオイラは考えていた。
あの人……オイラのじいちゃんと、じいちゃんのアマカジとポケモンバトルするまでは、その意見を曲げる気はなかったんだ。
あれはオイラがポケモンバトルになかなか勝てなくなり、スランプに陥ってた頃のこと。悩んでたオイラにじいちゃんはこう言ったんだ。
「ソテツ、お前は『はねる』という技をどう思う?」
最初はその質問の意味が分からなかった。余裕のなかったオイラは半ば八つ当たり気味に「なんの意味も無い役に立たない技」と吐き捨ててしまったんだ。昔のオイラは、ポケモンバトルは強い技を使いこなす者たちが勝てるって、心の底から信じていたからね。
するとじいちゃんはオイラに拳骨を一発食らわせた。あれは痛かったしびっくりしたさ。でもそれ以上に驚くことをじいちゃんは言ったんだ。
「お前さんのフシギダネとわしのアマカジでバトルするぞ。お前さんらをアマカジの『はねる』だけで倒してやるから覚悟しろ」
何を言ってんだ。いくらなんでもそれは無理だろ。とうとうボケたのか……って当時のオイラは思ったよ。
でも、じいちゃんとアマカジは本気だった。本気でオイラとフシギダネにぶつかってきてくれた。
……結果はオイラたちの惨敗だった。見事に『はねる』だけでオイラとフシギダネは惨めに負けてしまった。
『すてみタックル』で突撃させる――――『はねる』でかわされた。
『タネばくだん』を放たせる――――『はねる』で器用に打ち返される。
『ソーラービーム』を撃たせた――――溜めの時間に『はねる』でフシギダネが蹴られる。
『はなびらのまい』を発動させる。さすがにこれはかわせないだろう――――花びら一枚一枚を『はねる』の踏み台にされる。
疲れ果てて、混乱するフシギダネ。フシギダネが混乱で自滅するたびに、ヒメリの実で『はねる』のPPを回復するじいちゃん。
「ずっる!」
「何を言う! そっちの方がPPあるんじゃから文句言うな! 備えて来んかったお前が悪い!」
当時は納得できなかったけど、そういう本気もあるって、今は思える。
じいちゃんが居なければ、オイラはもっと遅くまで、技の強さばかりに固執していたかもしれない。
今のオイラのバトルスタイルは、生まれなかったかもしれない。ある意味、そのアマカジの『はねる』が転機だったんだ。
**************************
「――――このことから言えるのは、どんな技にも特徴がある。一つの技にも、いろんな使い方がある。何パターンも使い道を用意しておけば、コンボも出来るし戦略の幅が広がる。『はねる』一つでさえこんなにもバリエーションがあるんだ。組み合わせは無限大ってのは言い過ぎかもしれないけど役割を与えてやれば、活きる技は多いはずだ――――オイラの強さ、もとい強みを知りたいって質問だったけど。これで答えになったかい、アサヒちゃん?」
「はい! 大変参考になりましたソテツ師匠!」
笑顔で返事をして手帳にオイラの教えをメモしていく少女、アサヒちゃん。
彼女はオイラのことを師匠と呼び、ことあるごとにポケモンバトルのテクニックを教えてくれと付きまとってくる。正直に言うと相手するのが面倒な女の子だ。
アサヒちゃんは理由があって、この自警団〈エレメンツ〉の本部からの外出を許されていない。しかし彼女は行動派で、本部内で出来ることを片っ端からやっているのを見かける。情けないけど、炊事なんかは彼女が抜けるとかなりきつい。悔しいが彼女は任務についていなくても、〈エレメンツ〉に貢献していた。
それでも彼女は時間を持て余して暇なのか、メンバーとちょくちょく会話し、時にはポケモンバトルの自主練をしていた。
どこで話を聞いたのかは分からないが、自警団内で実力を認められたオイラに教えを乞うようになる。
最初はちょっとしたアドバイスをするつもりだけだったけど、それが失敗だった。まさか師匠にされるとは。
周囲からもオイラは“アサヒちゃんの師匠”と認識されてしまったのもまた厄介だ。「師匠なんだから弟子をほったらかすな」なんて言われるのも面倒くさい。
適当にあしらえばいいというのも一理ある。だが悲しいかな。中途半端に投げ出すのも、なんだかアサヒちゃんに負けるようで嫌だったんだ。引くのは彼女からでないと嫌だった。
しかし、この子はしぶとい。外見のふわっとした印象に比べてかなり頑固だ。てごわい。ハングリーだ。
でも裏返せば、まだまだ頭が固かった。
「……バトルスタイルはアサヒちゃんが自分で作り出すものだからね」
「私が、作り出す……」
「他人の意見を参考にするのはいいけど、鵜呑みにして自分で考えることを怠るなってこと」
「……そうだよね、うん……確かに」
「そこで真に受けるのも、流されてる証拠だけどね」
「ええー……」
わはは悩め悩め。と考え込む彼女を見ていたら、話が思わぬ方向にそれた。
アサヒちゃんは、あまり見せない疲れた表情をして、オイラに質問を投げかける。
「師匠、私の行動も『はねる』みたいに意味があるのでしょうか」
いきなり始まる人生相談。付き合うつもりはなかったんだけど……はぐらかす方法もなくはなかったんだけども、オイラは思ったままの言葉を並べた。
「アサヒちゃんは意味がないと何も行動しないのかね」
「それは……」
「……オイラはアマカジの『はねる』自体は、特になんの意味も無い技だったと今でも思っている。でもオイラのじいちゃんはそこに意味を見出した。最初から意味があったんじゃない。後付けだったんだ。意味のある行動とかいったら、それこそオイラたち自警団〈エレメンツ〉のしている活動だって、意味があるのかいまだによくわからない。でも、後から誰かが評価してくれるだけでも意味があったってことなのだろう。意味なんて、そんなものだと思う」
そんな言葉をかけると、彼女が今にも泣き出しそうな面持ちでこちらの顔をじっと見てきた。見つめられるのに耐えかねて目をそらし、とっさに慰めの言葉を口走る。
「まあ、周りに影響を与えていることは確かなのではないかい? それにアサヒちゃんの作るご飯、美味しいし?」
……何を言っているのだオイラ。苦し紛れにしては恥ずかしい。恥ずかしいぞ。
そして努力はむなしく、その言葉がきっかけで彼女の涙腺は決壊した。
「ししょううううわあああああ……!」
「泣くな、泣くんじゃないぞアサヒちゃん。これではオイラが泣かせたみたいではないか……!」
アサヒちゃんの泣き声につられてぞろぞろと集まる他のメンバーたち。オイラは仲間呼びなんて教えた覚えはないっ!
言い訳などする暇もなく……オイラが泣かせた扱いになり、自警団の女性陣から叱られるはめになったとさ。
その時にふと思った。
(これ『はねる』より『なきごえ』の方が、影響力が大きいのではないか……?)
その疑問に答えてくれそうなじいちゃんは、今は行方知れず。ここにはいない。
だから一人で『なきごえ』を使った新たな戦法がないか思案しつつ、気が向いたときにでもアサヒちゃんの訓練で試してやろうとオイラは画策した。
*あとがき
ソテツとアサヒの過去エピソードその1でした。ショートショートみたく増やしていけたらと思っています。
Subject ID:
#137972
Subject Name:
フェアリー・システム
Registration Date:
2014-09-21
Precaution Level:
Level 1
Handling Instructions:
機器#137972と拡張機器#137972はそれぞれ異なる低異常性物品用の汎用金庫に保管し、開錠に必要な暗証番号を案件担当者と副担当者がそれぞれ設定します。機器#137972と拡張機器#137972は相互に接続されていない限り、異常な性質を発揮することはありません。機器#137972に対応するその他の拡張機器#137972の存在が示唆されており、今後拡張機器#137972の回収に成功した場合、拡張機器#137972について再分類が行われる可能性があります。
Subject Details:
案件#137972は、ある限定的な特異性を持つ機器(機器#137972)及びその拡張機器(拡張機器#137972)、及びそれらに係る一連の案件です。
2014年8月中旬、カロス地方ミアレシティ北東部に位置する建物の管理者より、かつての入居者が残置した物品を確認及び回収してもらいたいとの依頼が寄せられました。該当するテナントが要注意団体の一つである「エーテル財団」の活動拠点であったことから、当局は専任の回収チームを派遣して作業に当たらせました。物品の接収は成功裡に終了し、残置されていた物品はすべて当局が回収しました。機器#137972及び拡張機器#137972は、この回収作戦の実行時に発見されたものです。
機器#137972は外見上ヒューレット・パッカード社製のラップトップ型コンピュータ「HP Pavilion g4-1000」モデルと一致する電子機器で、動作させるためには一般的なACアダプターを用いた給電が必要になります。機器#137972にはマイクロソフト社のオペレーティングシステム「Windows 7」の英語版がインストールされており、一般的なWindows 7端末と同様に使用することができます。当局によるハードディスクの検査ではWindows 7のインストールされた領域の外に異なるオペレーティングシステムがインストールされ、起動するシステムを任意に選択可能にするデュアルブート仕様となっていた可能性が示唆されていますが、Windows 7のインストールされた領域以外のディスクはすべてゼロフィル処理が行われており、具体的なシステム構成を突き止めることには失敗しました。
機器#137972が持つ左側のUSBポートには、既知のあらゆるデバイスと一致しない未知のカードリーダー装置が取り付けられています。カードリーダー装置は機器#137972と構造的に一体化しており、非破壊的に取り外すことはできません。機器#137972に搭載されたマザーボード及びWindows 7は、カードリーダー装置を「リムーバブルデバイス」と認識しています。これは一般的なカードリーダー装置に対する振る舞いと同一のものです。
拡張機器#137972は機器#137972のカードリーダー装置に挿入可能なカード型のリムーバブルデバイスであり、こちらも既知のリムーバブルデバイスと一致するものは確認されていません。拡張機器#137972の端子部分の構造は一般的なSDカードに類似していますが、非異常性のSDカードリーダーでの拡張機器#137972の読み取りテストはいずれもデバイス不良エラーにより失敗に終わっています。このことから、拡張機器#137972はSDカードをベースとした媒体ではありますが、エーテル財団が何らかの目的をもって構造に改変を加えたとの見方が示されています。
機器#137972に拡張機器#137972が挿入されると、Windows 7はリムーバブルデバイスに関連付けられた「ar_b1035.exe」というアプリケーションを自動的に起動します。ar_b1035.exeは起動後に拡張機器#137972に対する読み取りテストを行い、テストをパスした場合はサブウィンドウを開き「#17: verified / certified.」という文字列を表示します。文字列表示後のar_b1035.exeは待ち状態に入り、これ以上の変化を見せません。ar_b1035.exeは通常のアプリケーション終了手順でいつでも終了させることができ、システムにおける位置づけは一般的なアプリケーションソフトウェアと変わりません。また、終了後もar_b1035.exeがインストールされたパスを指定することにより、手動で実行させることが可能です。
拡張機器#137972を挿入した後の機器#137972に見られる特異性は、一般的な携帯獣用のデバイスのほぼすべてが、機器#137972を「フェアリータイプを持つ未知の携帯獣」と認識するようになることが挙げられます。多くのモンスターボールは活性化した機器#137972に対して投擲されることにより、通常の捕獲プロセスの実行を試みます。これは携帯獣でない生体/物体に対して投擲した際には顕著に異なる挙動です。確認された事例すべてでモンスターボールは機器#137972に対してプロセスを完遂することができず、機器#137972の捕獲は失敗します。モンスターボールに記録されたログからは、機器#137972を携帯獣として認識しつつも、対象が携帯獣としての要件を満たさないことから捕獲プロセスが異常終了したことが確認できます。
フェアリータイプの携帯獣と誤認されることを除き、機器#137972及び拡張機器#137972に特異な性質は確認されていません。また、拡張機器#137972が挿入されていない機器#137972に関しては、先述した特異性も発揮されません。機器#137972の電源を落とし、拡張機器#137972と個別に保管することで容易に異常性を喪失させることが可能です。現在の収容手順はこの性質に基づいて策定されました。
拡張機器#137972を挿入した際のメッセージから、当局が未確認の拡張機器#137972が存在し、機器#137972に対して異なる異常性を与える機能を持っている可能性が示唆されていますが、これまでのところ拡張機器#137972に類する異常な物品が回収された記録は存在しません。
現在の案件対応方針は、エーテル財団が機器#137972及び拡張機器#137972を開発/保有していた目的について探ることに焦点が当てられています。
Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。
Subject ID:
#134474
Subject Name:
動く森林火災
Registration Date:
2012-08-12
Precaution Level:
Level 4
Handling Instructions:
オブジェクト#134474は、アローラ地方ウラウラ島中央部に存在する砂漠地帯にて当局の建設した収容施設の管理下に置かれます。回収されたオブジェクト#134474はナンバリングされ、相互接触がなされないよう少なくとも200メートル以上の距離を置いて収容します。これまでに計3体のオブジェクト#134474が回収され、それらはオブジェクト#134474-1から-3のナンバリングがされています。
オブジェクト#134474の持つ性質上、対象は常に砂漠地帯へ係留しておく必要があります。例え研究目的であったとしても、オブジェクト#134474を施設外へ出すことは許可されません。オブジェクト#134474を用いた実験を行う場合、書式F-134474-1に基づき事前申請を行い、完全なテスト計画書を合わせて提出する必要があります。テストによって得られたエビデンスは、案件別サーバに暗号化の上保管してください。
これまでに行われた実験から、オブジェクト#134474を非異常性の手順を用いて無力化することは極めて困難か、または不可能であるとの結論が得られています。オブジェクト#134474を無力化することを目的として、当局の管理する異常性物品を用いた実験を行うことが検討されています。
Subject Details:
案件#134474は、顕著な異常特性を持つ携帯獣に近しい存在(オブジェクト#134474)と、それに係る一連の案件です。
2012年6月下旬頃、当局と部分的な協力関係を結んでいる団体組織「エーテル財団」のエージェントから、オブジェクト#134474に関する情報が寄せられました。財団は当初オブジェクト#134474の保護を試みたとのことですが、調査の結果財団の保護下に置くことは困難と結論付けられ、これまでに得られた情報と併せて当局への収容を要請してきました。当局がこれを受諾したことにより、財団からオブジェクト#134474並びに関連情報を譲渡されました。その後当局と財団はアローラ地方ウラウラ島中央部の砂漠地帯に共同で収容施設を建設し、オブジェクト#134474の収容体制を確立しました。
エーテル財団が作成したレポートによると、財団の職員がオブジェクト#134474を発見したのは2012年2月12日で、当初は重傷を負った携帯獣であると見做されていたとのことです。時間経過と共にオブジェクト#134474は異常特性を発揮し始め、収容していた財団の施設や資産に損害を与えたほか、同類と見られるオブジェクト#134474-2及び-3を呼び寄せるといった敵対的姿勢が見られるようになりました。財団内部ではオブジェクト#134474を継続して収容すべきとの意見も見られましたが、アローラ支部の拠点監督者により、当局への譲渡が決定されました。
オブジェクト#134474は、全身に重度の火傷を負った携帯獣の「ドダイトス」に類似した存在です。外見的特徴は一般的なドダイトス個体と一致していますが、携帯獣向けに開発された種々の機器は対象を携帯獣であると認識することができず、モンスターボールやボックスへの移動は成功しません。この性質から、情報化による完全試験は未だ実施できていない状態です。
オブジェクト#134474の持つ異常特性として、背中に当たる部位が常に激しく炎上していることが挙げられます。その様子は森林火災に例えられ、一般的なドダイトス個体の背中に存在する植物類が燃え上がっている様子を観察することができます。この火災は未知の理由により鎮静することができず、また時間経過により弱化することもありません。水や薬剤の散布による鎮火の試みは、オブジェクト#134474の炎上をより激しくする結果を招きました。オブジェクト#134474は自分自身の背中が炎上していることを認識しており、また火災を広めようと動く傾向があります。エーテル財団がオブジェクト#134474を収容したのも、アローラ地方メレメレ島北東部にて大規模な森林火災が発生した際に、逃げ遅れた携帯獣を救助していた最中のことだったとの報告が存在しています。
大規模な火災を容易に引き起こす性質を持っていることから、オブジェクト#13447は非常に危険です。現在の収容プロトコルは、オブジェクト#134474が物理的に火災を引き起こすことのできない場所を収容拠点とすることで確立されています。オブジェクト#134474は知性を持ち、また人類に対してとても敵対的です。同種のオブジェクト#134474を呼び出すことで収容違反を誘発させようとしたことから、当局並びに財団の管理下から逃れようとしていることが伺えます。オブジェクト#134474の収容違反が発生した場合、致命的な大規模火災を引き起こす虞があることから、オブジェクト#134474は収容プロトコルの遵守が最優先事項として挙げられています。
当局はこれまでに3体のオブジェクト#134474を収容していますが、これはオブジェクト#134474が3体のみ存在すると言うことを意味しません。現時点で未収容となっているオブジェクト#134474が存在するという前提のもと、当局の管轄地域内で発生した火災並びに森林火災に関する情報が集積されています。それらに未だ収容されていないオブジェクト#134474が関与していることが認められた場合、緊急収容計画が策定されることになっています。
Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。
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