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「ポケモンリーグは6回戦まで進みました。今日は12日目。トレーナー達は次々と姿を消し、残るはたったの8人です。今大会は大番狂わせや予想外の選手の活躍が目立ち、大変盛り上がっています。さあ、そろそろ試合が始まります。世間的には準々決勝、ポケモンリーグ的には6回戦、選手入場!」
「さて、今日も戦いぬくぞ」
ダルマは今日もスタジアムに乗り込んだ。日に日に大きくなる歓声とカメラのフラッシュにも、もはや物怖じする気配は微塵も感じられない。
「ようやく会えましたね、ダルマ様」
「ユミじゃないか! まさかここまで勝ち残るなんてびっくりだよ」
ダルマは対戦相手を見て思わず興奮したようである。無理もない、彼に立ちはだかるのはずっと旅をしてきたユミなのだから。彼女は穏やかな口調で受け答えした。
「ふふ、私はダルマ様のライバルですからね。そう簡単に負けてしまっては、ダルマ様に顔向けできません」
「……今も顔を背けているみたいだけど?」
ダルマはさりげなく指摘した。彼の言う通り、ユミは少し目線がふらついている。彼女は一瞬飛び上がったものの、何事もなかったかのように流した。
「そ、そんなことありません。それより早く試合を始めましょう」
「……まあ良いか。審判さん、お願いします」
腑に落ちない表情ながら、ダルマはボールを手に取った。その動きを確認した審判はいつものように試合開始を告げる。
「これより、ポケモンリーグ本選6回戦第1試合を始めます。対戦者はダルマ、ユミ。使用ポケモンは最大6匹。以上、始め!」
「ゆけ、キマワリ!」
「いきますよ、ガブリアス!」
ダルマとユミ、ライバルの2人による対決が幕を開けた。ダルマはキマワリ、ユミは黒ずんだ青色のポケモンが先発である。その色に、観客席から驚嘆の声が漏れた。
「ダルマ選手はキマワリ、ユミ選手はガブリアスで始まりました6回戦第1試合。ガブリアスとはまた強力なポケモンですね、しかも色違いだ!」
「ガブリアスって、もしかしてフカマルのか」
ダルマは図鑑を開いた。ガブリアスはガバイトの進化形で、現在最も強いポケモンの1匹である。高い素早さ、攻撃、耐久を兼ね備え、技も強力なものばかり。真正面はもちろん、交代からでも軽く2、3匹は倒してしまう。倒すなら早いにこしたことはない。
「なるほど、ドラゴンタイプだけど草タイプは効くのか。よし、まずはリーフストームだ!」
「ガブリアス、つるぎのまいです!」
先手はガブリアスだ。ガブリアスは悠々と戦いの舞いを披露した。一方キマワリは、懐から若草色の石を取り出し、噛み砕く。それから嵐に尖った葉っぱを乗せて飛ばした。その威力はいつもより明らかに強く、ガブリアスに深々と葉っぱが突き刺さる。だが、ほうほうの体ながらガブリアスは耐えきった。
「キマワリ、初手からジュエルリーフストームを決めてきました。しかしガブリアスは硬い、なんとか首の皮1枚でつながりました」
「おいおい嘘だろ、素で耐えるなんて」
ダルマは息を呑んだ。その姿を前にして、ユミは自信満々に指示を出す。
「……これが私の実力ですわ。ガブリアス、げきりん!」
「やばっ、戻れキマワリ、オーダイル!」
ダルマはキマワリを引っ込め、オーダイルを繰り出した。他方、ガブリアスは頭から湯気を放ちながら滅茶苦茶に暴れだした。つるぎのまいで強化されていることもあり、オーダイルは苦渋に顔を歪ませる。だが、ぎりぎりのところで踏みとどまった。ダルマはここぞとばかりに叫ぶ。
「げきりんの途中なら逃げられない、アクアジェットでとどめだ!」
オーダイルは全身に水をまとい、突撃した。激流の如き砲弾はガブリアスを蹴散らし、沈めた。
「ガブリアス戦闘不能、オーダイルの勝ち!」
「よし、これで1歩リードだ」
「さすがダルマ様、そう易々とは勝たせてくれませんね。では2匹目、メガニウム!」
ユミはガブリアスをボールに戻すと、次のポケモンを送り出した。出てきたのは、首周りに花びらがあるポケモンだ。そのポケモンが呼吸をする度、辺りの空気が清々しいものになる。
「メガニウムか。オーダイルよりちょっとだけ速いんだよな、あの姿で」
ダルマは図鑑をチェックした。メガニウムはベイリーフの進化形である。その吐息には枯れた植物を蘇らせる力がある。能力はHP、防御、特防が高く、耐久型がよく使われる。草タイプだがかなり硬いので色々厄介だ。
「先制技が使えるオーダイルはまだ使い道がある。よし、戻れオーダイル、キュウコン!」
「隙あり、ひかりのかべ!」
ダルマはオーダイルを戻し、キュウコンを投入。スタジアム上空の雲が瞬く間に消えて晴れ上がった。その間にメガニウムは薄い赤紫の壁を張った。
「キュウコン登場、スタジアムは日差しが強くなったあ! ダルマ選手、ユミ選手、共に場を整えてきました」
「へへ、晴れていたら苦しいでしょ。さあ、大文字で焼き払え!」
「……この時を待ってましたよ。メガニウム戻って、バンギラス!」
キュウコンが大の字の炎を撃とうとした、まさにその時。ユミは素早くメガニウムを回収し、別のポケモンに交代した。2メートル程の高さに若緑の鎧を装備し、頭にハチマキを巻き、非常に威圧感のあるポケモンである。しかもそのポケモンが唸ると、たちどころに天気が砂嵐になったではないか。晴れの恩恵を得られないキュウコンの大文字は、そのポケモンに傷1つをつけるのがやっとだった。
「な、なんだと! 天気が砂嵐に……しかも全然効いてないじゃないか!」
ダルマは図鑑を覗き込んだ。バンギラスはサナギラスの進化形で、能力が非常に高い。素早さこそ低いものの、持ち前の耐久でそれをカバー。特性のすなおこしは天気を砂嵐にするというもの。砂嵐状態だと岩タイプの特防が上昇する。バンギラスは岩、悪タイプ故に、素の耐久もあるためとても硬い。しかし弱点も多い。相性がはっきりしているポケモンである。
「ふふっ、早くセキエイ高原に着いたので、シロガネ山で捕まえておいたんです。これで私の勝ちは決まりですね」
「それはどうかな。また場に出せば良いだけのこと。戻れキュウ……」
「逃がしませんよ、おいうち!」
ダルマはキュウコンを別のポケモンと入れ替えようとした。バンギラスはそれを狙っておいうちを仕掛ける。不意の1発を受け、キュウコンは気絶してしまった。
「キュウコン戦闘不能、バンギラスの勝ち!」
「おっと、ダルマ選手は要のキュウコンを早々と失ってしまいました。ここからどのように戦うのでしょうか」
「や、やられた……。うかつだった、こんな隠し玉がいたなんて。まずはこいつをなんとかしないとな……」
ダルマは頭をかきむしりながら次のポケモンを場に出すのであった。
・次回予告
ユミのハイスペックなポケモンに押され、中々自分の流れを掴めないダルマ。果たして彼は勝利を手にできるのか。次回、第81話「ポケモンリーグ6回戦第1試合後編」。ダルマの明日はどっちだっ。
・あつあ通信vol.61
今日は登場人物のポケモンの紹介をしてみます。メインの3人で唯一シンオウのポケモンを持っているユミ。彼女のガブリアスは陽気HP172攻撃44防御4特防36素早252振りです。この振り方はHPが205になることから205ガブリアスと呼ばれます。耐久は、特化ヘラクロス@拘り鉢巻のインファイトと、無補正全振りサンダーのめざぱ氷を確定で耐えます。実際はもう少し効率の良い201ガブリアスもあるのですが、身代わりが地球投げを耐えるのでこちらも中々人気。剣の舞を確実に使うのが狙いとなっています。さすが現状最強ポケモン、やることが違う。
ダメージ計算は、レベル50、6V、ガブリアス陽気205ガブリアス調整、キマワリ@草ジュエル臆病特攻素早振り、オーダイル意地っ張りHP攻撃振り、メガニウム穏やかHP特防振り、キュウコン臆病特攻素早振り、バンギラス@意地っ張りHP252攻撃220特防36振り。バンギラスの調整は、メジャーな「拘りメガネ臆病ラティオスの竜星群を半減込みで2回耐える」ものです。これで交代しなくても追い討ちでHP4振りラティオスを砂嵐で超高乱数1発にできます。で、キマワリのジュエルリーフストームをガブリアスは確定で耐えます。ガブリアスの剣舞逆鱗はオーダイルを中乱数1発、半分くらいの確率で耐えます。そこからの激流アクアジェットでキマワリの与えたダメージを合わせて確定で倒せます。キュウコンの大文字は壁と砂嵐のあるバンギラスにはたった14〜16ダメージ、乱数13〜15発という超耐久。そして交代際追い討ちで砂嵐なしでもキュウコンを確定1発。バンギラス強すぎる。まさに相手を選ぶポケモンですね。
あつあ通信vol.61、編者あつあつおでん
バトルチャレンジにて俺と地蔵っぽいの(バトルシートを確認したところ、名前は喜田敏光というらしい)の勝負が始まる。
最初のポケモンは俺がゴウカザル四90/90。相手はペラップ60/60でベンチにラルトス60/60。そしてサイドは互いに三枚。
俺の手札は少なくともいいとは言えないが、いつでも挽回の効く範囲だ。
さすがにペラップじゃあ1キルは起きないだろうし、それに警戒する必要もないだろう。
「俺のターン。ペラップに闘エネルギーをつけて、ワザ、仲間を呼ぶを発動。その効果でデッキからラルトス(60/60)をベンチに出す」
ラルトスのような超ポケモンがいるにも関わらず闘エネルギーがあるということはエルレイドがいるってことか……。
「俺のターン、ドロー!」
引いたカードはゴウカザル四LV.X。だが、互いに最初のターンはレベルアップは出来ない。
「サポーターカード発動。アカギの策略! 自分のデッキからサポーターと基本エネルギーと名前に『ギンガ団の発明』とつくトレーナーをそれぞれ一枚ずつ選んで相手に見せてから手札に加える」
自分のデッキを一枚ずつ確認していき、目当てのカードを探す。
「俺が選ぶのはアカギの策略と炎エネルギーと、ギンガ団の発明G-101 エナジーゲインや!」
サーチしたカードを喜田に見せつける。喜田は了承したと首を縦に振る。
「手札のガブリアスC(80/80)をベンチに出す。そしてゴウカザル四に炎エネルギーをつけて、ポケモンの道具のエナジーゲインをゴウカザル四につける」
エナジーゲインはSPポケモン専用の道具で、これがついたポケモンは必要なワザエネルギーが無色エネルギー一つ分減る。実質エネルギーカードをつけているようなもので、ワザエネルギーが多いSPポケモンには必須のカードだ。
ちなみにSPポケモンとは昔のジムリーダーのなになにみたいなポケモンであり、全てたねポケモンとして扱われる。SPポケモンはポケモンの名前の後に四だのGLだのCだのGだのついているのが特徴。
「ゴウカザル四で攻撃。爆裂弾! このワザは相手のポケモン二匹に20ダメージを与える。俺が選ぶのはベンチのラルトス二匹や!」
ベンチのラルトス二匹のHPが40/60に。目の前のペラップを殴らない理由は、展開ポケモンとしてはぺラップは弱い部類で害が少なく、俺のキーカードで瞬殺出来ると踏んだからだ。
「俺の番だ!」
喜田が勢いよくドローする。喜田が座っているパイプ椅子が少しボロいせいで、ギィィと耳を突くような音が聞こえる。
「闘エネルギーをラルトスにつけ、サポーター発動。ミズキの検索」
ミズキの検索は自分の手札を一枚デッキに戻し、デッキから好きなポケモンを手札に加える効果をもつ。
「俺はエルレイドを手札に加える!」
やはりエルレイドがデッキに入っていたか。
「グッズの不思議なアメを使って、闘エネルギーのついたラルトスをエルレイドに進化させる」
不思議なアメは自分の進化していないポケモンを、1進化及び二進化ポケモンに進化させるカード。
その効果によって、ポケモンを出した番にも進化できるし、通常はラルトス、キルリア、エルレイドと順番を経ていかないといけない進化も今のようにラルトスからエルレイド110/130へ、いわゆる飛び進化ができる。
「そしてペラップで仲間を呼ぶ。デッキからまた新たなラルトス(60/60)をベンチに出す」
これで相手のベンチはエルレイドとラルトス二匹が並ぶことになる。
「俺のターン!」
引いたカードはアグノム70/70。
「手札のアグノムをベンチに出す。そしてこの瞬間にアグノムのポケパワー発動や! タイムウォーク! タイムウォークの効果によって俺はサイドを確認し、その中のポケモンのカードを相手に見せてから手札に加えてよい。俺はレントラーGLを手札に加える。そして手札一枚をウラにしてサイドに戻す!」
戻したカードは雷エネルギー。エネルギーに関しては困っていないので、このカードを戻すのは当然とも言える。
「レントラーGL(80/80)をベンチに出し、更にゴウカザル四をレベルアップさせる!」
ゴウカザル四LV.X110/110が現れたことで場は整った、ペースはこちら側に確実に傾いている。押すなら今だ!
「ゴウカザル四LV.Xのポケパワーを発動。威嚇の雄叫び! 相手のバトルポケモンとベンチポケモンを入れ換える。入れ換えるポケモンは相手が選ぶ」
「ならペラップとダメージのないラルトスを入れ換える」
やはりそう来たか。このままだと攻撃してもHPが10届かない!
「手札のアカギの策略を発動! その効果によってアカギの策略と炎エネルギー、そしてギンガ団の発明G-105 ポケターンを手札に加える」
再び消費した手札をリカバリーする。これによって手札は六枚。
「炎エネルギーをゴウカザル四LV.Xにつけて攻撃」
レベルアップした今ゴウカザルが使える技は三種類。そのうち一つが先のターンに使った爆裂弾。そして飛び膝蹴りと炎の渦。
飛び膝蹴りは相手に50ダメージを与えるワザだが、それではHP60/60のラルトスを倒せない。だったら、リスクはあるが……。
「炎の渦! このワザのリスクとしてゴウカザルについているエネルギーを二つトラッシュする。せやけど100ダメージや!」
ゴウカザルの炎エネルギーを二枚トラッシュに置くが、相手も気絶したラルトス0/60をトラッシュする。これでサイドを一枚引く。
先手は打てた! 流れは掴めたはずだ。喜田はエルレイド110/130をバトル場に繰り出した。
「俺の番。ドローだ!」
喜田の手札は僅か二枚。手札も試合運びも俺が押している。
「手札からエネルギー付け替えを使う」
「エネルギー付け替え!?」
「その効果によってペラップについている闘エネルギーをエルレイドに付け替える」
喜田はベンチのペラップについていた闘エネルギーをエルレイドつけなおす。これでエルレイドには闘エネルギーが二つついていることになる。
「手札からサポーター発動、デンジの哲学。デンジの哲学は自分の手札が六枚になるようドローするカード。そして今の俺の手札は0。よって六枚ドロー!」
大幅に手札補強を図ったか。どう攻めてくるんだ。
「ベンチのラルトスをキルリア(60/80)に進化させ、エルレイドに超エネルギーをつける。更にエルレイドにポケモンの道具、達人の帯もつけさせてもらう」
達人の帯はつけたポケモンのHPを20上げるだけでなくワザで与えるダメージも20増える。が、達人の帯をつけたポケモンが気絶した場合に相手がとるサイドは二枚となるカード。メリットとデメリットが混ざった強力カードだ。
エルレイドのHPが20上昇し、130/150。もう倒すの難しくなる。
「エルレイドでゴウカザル四LV.Xを攻撃。サイコカッター! このとき、ウラになっている自分のサイドを好きなだけ選び、オモテにしてよい。その場合、オモテにした枚数かける20ダメージを追加する! 俺はサイドを二枚オモテにする!」
「なっ!」
サイコカッターの元の威力は60。それが達人の帯で20、サイドを二枚オモテにしたことによって40ダメージ追加されてゴウカザル四LV.Xが受けるダメージは120。ゴウカザルのHP110/110を上回るダメージだ。一撃でゴウカザル四LV.Xが気絶だなんて。
「俺もサイドを引かしてもらう」
相手の場には強力なエルレイドが残っているのが極めて厄介だ。しかしこいつを倒さなければ勝つことは出来ない。
俺の二番手はレントラーGL80/80。しかしこのままではエルレイドを突破できそうにない。どうしたものか。
「俺のターン!」
引いたカードは四枚目のアカギの策略。トラッシュに既に二枚あり、先のターンにあらかじめ一枚を手札に加えていたので、これで手札に二枚アカギの策略が入ったことになる。
「アカギの策略を発動。その効果で雷エネルギー、クロツグの貢献、ギンガ団の発明G-109 SPレーダーを手札に加え、俺は手札からSPレーダーを発動だ!」
SPレーダーは手札を一枚デッキに戻すことで、SPポケモンをデッキから一枚手札に加えれる強力なサーチカードだ。
「俺はレントラーGL LV.Xを手札に加える。そしてレントラーに雷エネルギー、エナジーゲインをつけ、レントラーをレベルアップ! そしてこの瞬間にレントラーGL LV.X(110/110)のポケパワーを発動させる! 輝く眼差し!」
「なにっ!?」
「このポケパワーによって、相手のポケモンを入れ換える。エルレイドとキルリアを入れ換えてもらうで!」
喜田がベンチのカードの入れ換えを行う。目の前のエルレイドが倒せないのなら相手のベンチを潰すまでだ。
「レントラーで攻撃。フラッシュインパクト! 相手に60ダメージ! だがこのワザの効果によって、自分のポケモン一匹も30ダメージ受ける」
フラッシュインパクトの威力は60。目の前のHPが残り60のキルリアは撃破できたが、ワザの効果でベンチのアグノムにも30ダメージだ。これでアグノムの残りHPは40/70。
喜田は気絶したキルリアをトラッシュし、再びエルレイドをバトル場に出す。
「俺はサイドを一枚引いてターンエンドだ」
取って取られての繰り返しの、気の抜けない戦いが続く。
啓史「今回のキーカードはエルレイド!
サイコカッターでダメージを調整。
相手を一撃で押しきれ!」
エルレイドLv.55 HP130 闘 (DP3)
闘無 ソニックブレード
相手の残りHPが「50」になるように、相手にダメージカウンターをのせる。のせた場合、相手を相手のベンチポケモンと入れ替える。入れ替えるベンチポケモンは相手プレイヤーが選ぶ。
超無無 サイコカッター 60+
のぞむなら、ウラになっている自分のサイドを好きなだけ選び、オモテにしてよい。その場合、オモテにした枚数×20ダメージを追加。(オモテにしたサイドは、そのカードをとるまでオモテのまま。)
弱点 超+30 抵抗力 ― にげる 2
電車を乗り継いで自宅のあるマンションへ向かう。23区内にある築六年、2LDKのそこそこのマンションが俺の家だ。
一人で暮らすにはちょっと広すぎて寂しい。家と云っても勉強するスペースとパソコン、ベッドと風呂トイレがあれば問題なかったのだが、なんだかんだでここに決めてしまった。アクセスが良いのが何よりだった。
まだ新しいエレベーターに乗り込み、俺の家がある九階に止まる。外廊下はまだ冷える風が直接かかって少し寒い。
そして風見と表札に書かれた自宅の前にたどり着いた時、家の中から誰もいないはずなのに僅かに声が聞こえた。
泥棒か? と、逸る気持ちが胸の鼓動を早くさせるが、盗られて困るような物は特にない。落ちついてとりあえず様子を見てみよう。こういうときこそ冷静にならないと。
玄関の扉に耳をあてる。冷たさに体が一瞬震えたが、すぐに慣れて中の声が聞こえてきた。
「風見君は何作ったら喜んでくれるかなー? ラザニア? チャーハン? カルパッチョ?」
聞こえた声は泥棒とはまるでかけ離れた平和なものだが、それはある種、俺にとっては泥棒よりも驚異的な存在だ。
足音を立てないよう、こっそりとエレベーターホールへ逆走する。
なんだってあいつがいるんだ。
あいつ、というだけあって『一応』知り合いである。知り合いたくなかったがどうしてか知り合ってしまった。
それは京都の大手の製薬会社の跡取り娘の久遠寺麗華(くおんじ れいか)。繰り返すがどういうわけか知り合ってしまい、俺に一目惚れしたらしい。
かつて北海道に居たときにパーティーだなんだで偶然向こうから話しかけられて以来、感覚的に余り良い印象が無い。
そもそも俺が東京にいることすら教えていないはずなのだがどうしてここに、というより家の中にいるんだ。鍵は俺が持ってないはずだ。確認してポケットに手を伸ばせば、確かにそこにあった。
とりあえずあいつがどこか行くまで誰かの家に厄介しよう。携帯を取り出して目ぼしい相手に連絡をつけてみる。
『すまんな、さすがに無理だ』
『俺は行けるけど親がなぁ』
『この電話は電波のつながらないところに───』
翔、蜂谷、恭介諸共壊滅。恭介に至っては電波がダメ。次にあてになりそうな人は……。藤原の家にかけるのは億劫だな。親子仲がよろしいという感じの話を一度も聞いたことが無い。
「退くわけにはいくまい」
家に泊めてくれと言えそうな人はもうこの人しかいない。
「もしもし、風見です」
『あら、風見くん。珍しいわね』
「松野さん、えーと、無理を承知で言うんですが、家に泊めてくれませんか?」
『……は? ごめん。なんかあったの?』
「実は──」
結局OKをもらってしまった。
松野さんの家は同じ23区内だが区が違う上に離れているので徒歩では行けず、東京メトロを駆使して約二十分かけて松野さんが住むマンションに向かう。
大きくないが駐車場まで完備してあるしっかりとしたマンションだ。インターホンを潜り抜け、七階までエレベーターで昇ると、エレベーターホールで松野さんが待っててくれていた。それにしても中廊下はいいな、風が来なくて暖かい。
松野さんの家は黒色のソファーと透明なテーブルのようにシックな家具が多く、大人な雰囲気を放つ……のだが、ところどころにあるポケドールが折角のシックさを削っていく。
「風見君はご飯食べてるの?」
「いえ、食べてないです」
「じゃあ何食べたい? ある程度のものなら作れるつもりなんだけど」
「うーん。それじゃあお世話になります。……しっかりしたものが食べたいです」
「それじゃあそぼろ丼でも作るわ。適当にくつろいどいて」
と言われてもやることがない。なんとなくテレビを見ながらソファーでごろごろしていよう。こういう無意味な時間を味わうのが久しぶりなような気がして、どこか新鮮な感じがする。
……しかしテレビを観てもまるで面白さを感じない。それにしてもソファーが気持ちいいが、このままでは寝てしまいそうになる。いつもより重力がかかっているように感じられる体に鞭打ち、ソファーから立ち上がらせる。
が、疲れからか足元がふらついてよろけてしまう。両手をばたばたさせて何か支えになるようなものを掴めないか手さぐりする。
あった。右手でがっちり握る。……と、そのとき取っ手が動いた。完全にバランスを崩した俺は尻もちをついてしまう。
だけならよかったのだが、さらに大量の衣類が被さってきた。
どうやら握ったのはくの字型に開くクローゼットで、掴んだはいいものの体の重心が後ろに傾き、それと同時にクローゼットを引いてしまったらしい。
そしてクローゼットに無理やり山積みにされてた衣類が大雪崩を引き起こしたのだ。
良い感じに動けない。体の四方をどっさりと衣類で囲まれ、ついでに頭には紫色のブラジャーがちょこんと居座っている。
目の前のブラジャーのタグを見ると、Bとしっかり表記されていた。……、Bあったのか。ちなみにこの間、ソファーから立ち上がってわずか三十秒足らず。
「大きな音立てて何かあったの──ってちょっ、風見くん!」
物音を聞いて様子を見に来た松野さんがお箸を片手に慌てふためく。
「すみません、動けないんで助けてください」
「あ、うん。そうね。そうよね」
いつもは冷静な松野さんがこんなに取り乱すなんてちょっと意外で可笑しい。
松野さんの懸命な救出作業の甲斐もあり、なんとか動けるようになった。何やってんのよと怒られて弁明したが、むしろなんでこんなにたくさん衣服が積まれてたんですかと返すと顔を真っ赤にして背を向け、返事をせずに逃げるようにキッチンへ向かった。
そういえば松野さんのデスクもいろいろ物がかさばっていたような記憶が──。
「風見くん、そぼろ丼出来たわよ」
「おっと、ありがとうございます」
キッチンから戻ってきた松野さんの両手にはおいしそうな匂いのする茶色のどんぶり茶碗。松野さんは先に食べといて、と言って再びキッチンへ戻った。
「いただきます」
そぼろ丼だなんて中々食べる機会がないな。折角だから堪能しよう。木製のスプーンで掬いあげ、口に入れ咀嚼する。ふんわりとした卵と肉汁が溢れるようなミンチ肉が食欲を更に加速する。これはおいしい!
「気にいった?」
微笑みながら戻ってきた松野さんの両手にはワインとワイングラス。
「そぼろ丼にワインですか?」
「あは、私はこれでも結構ワインが大好きなのよ。毎週火、木、土曜日はワインっていう自己週間」
まるでゴミ出しの曜日みたいだ。
「風見くんも飲む?」
「遠慮します。それよりもアレ……」
未だに事故現場となる大量の衣類に視線を移す。
「……私実は片付けが苦手なのよ」
あははと乾いた笑みを浮かべる松野さん。すみません知ってました。
「片付け手伝いますよ」
「それじゃあ折角だし、い、衣服は自分でやるから他のを頼もうかしら……」
「はいはい、分かりました。ご飯奢ってもらうだけでは申し訳ないですし。それより一人暮らしなんですね」
「……。まあね、私は実家が嫌で東京に逃げ出したクチなの」
「東京出身じゃないんですか」
「ええ。広島よ。でも小さい頃からこっちにいたから広島弁は抜けてるけどね」
「そうだったんですか」
「うちの親父がうるさくてちょっといろいろね。中学から東京の女子校に寮住まいしに上京してたわ」
やはり複雑な家庭事情を抱えているのは俺だけではない、か。誰もが何かしらの事情を抱えている。そんなことは分かっている。ただ、それでも自分の方がと心のどこかで奢っていたのかもしれない。松野さんの瞳を見て、ふとそう思った。
「……ごちそうさまでした。そぼろ丼おいしかったです」
「それは結構」
松野さんがにっこり笑う。それにつられて、俺も頬の筋肉が緩んだ。食器を下げようと立ち上がると、家のチャイムが鳴り響いた。
「あら、結構遅い時間なのに。宅配便かしら。まだ食べてるから代わりに出てくれない?」
タイミングが悪い。折角立ち上がったばかりなのに、食器を再びテーブルの上に置き直して玄関へ向かう。
後から思えば玄関のごく小さい丸窓などで一体誰が来たのかを確かめずに、玄関の扉を無警戒で開けたのが失敗だった。
なぜなら扉を開けた先には、わざわざ捲いたはずの久遠寺麗華がいたのだから。
風見「次回のキーカードとなるギャラドスだ。
三種類の技で多彩に攻めろ!
テールリベンジの威力には素晴らしいものがある」
ギャラドスLv.52 HP130 水 (破空)
─ テールリベンジ
自分のトラッシュの「コイキング」の数×30ダメージ。
水無 あばれまくる 40
ウラが出るまでコインを投げ続け、オモテの数ぶんのカードを、相手の山札の上からトラッシュ。
水水無無無 ドラゴンビート 100
コインを1回投げオモテなら、相手のポケモン全員から、エネルギーをそれぞれ1個ずつトラッシュ。
弱点 雷+30 抵抗力 闘−20 にげる 3
1
他人の悪事など基本的にはどうでもいい、と季時九夜は思っている。隣で殺人が起きようが、自分に関係がなければ、基本的には、どうでもいい。そう思っている。だが、思ってはいても、理性や思考とは無関係に、身体が動くことはあった。
仕事の用事で、地下鉄に乗る機会があった。ホームで電車を待っていた時だ。他の乗客は、本を読んでいたり、携帯電話をいじっていたり、忙しそうだった。季時は白衣のポケットに両手を突っ込んで、ぼーっと電車を待っていた。ぼーっと、とは言っても、常に周囲を観察していた。目の前には若い女性がいた。いや、女の子、と形容するべきだ。中学生くらいだろうか。私服だった。彼女も季時同様に、何もせずに、電車を待っている。彼女が先頭で、季時は二番目だった。
電車の振動が、遠くから聞こえてくる。ようやく椅子に座れるな、と思った瞬間だった。前にいた少女が、足を一歩前に踏み出した。それは、数秒後に行われるべき行為だった。今はまだ、足を置く場所が到着していない。そのまま少女が前傾していく。季時の頭の中で、数秒後の未来が予測される。このままの速度で彼女が前に倒れ、電車が来る。電車の速度、パワー、少女と電車が接触する面積。その後の状況。様々な計算を除外しても、得られる結果は死のみだった。
「危ない!」
声を出すことになんの意味があるのだろう? 自分への警告だろうか。あるいは、周囲の人間の注意を引くためか。その問いの答えは未だに出ないままだ。季時は少女の腹部に手を回し、彼女を引っ張った。あまりに強く、こちら側へ引き戻そう、という力が働いたせいか、季時は彼女と共に、後方へ倒れた。周囲から、おおっ、とか、きゃ、とか、ざわめきが聞こえた。うるさい、静かにしろ、と心の中で訴える。電車は既にホームに到着していた。
「……」
何かを言うべきだった。危ないだろう、死ぬところだった、何を考えているんだ。様々な言葉を思い浮かべたが、どれも的外れで、自分には関心のないことだ、という結論を得た。季時は彼女の拘束を解くと、ゆっくりと立ち上がり、服を叩いて、何事もなかったように、電車に乗り込んだ。
周囲の人たちも、怪訝そうにしてはいたが、電車に乗り込んでくる。季時は今の行為は夢だと思い込むことにした。いや、最近疲れているから、白昼夢だったのだろう。椅子に座り、ふう、と溜め息をつく。動悸が乱れていた。こんなところで、生涯決まっている鼓動の回数を無駄遣いするのは忍びない。
ドアが閉まり、電車は何事もなかったかのように、走り出した。自殺未遂。それを救った男。そんな事実は、存在しなかった。電車が走り出すと、心地良い振動が、季時に与えられる。
「あのさ」
ふいに、隣から声をかけられた。面倒臭い、と思ったが、薄目を開けて、隣を覗った。若い女性だった。いや、やはり女の子、と形容すべきだろう。
「何かな」
「なんで助けたの」
「答えはまだ出ていない」季時は咄嗟にそう答えた。「答えが出たら、聞きたいの?」
「別に……」
少女は視線を逸らした。
季時も視線を元に戻し、目を閉じる。
ああ、また面倒なことをしてしまった、と、季時は自分の行動を悔いた。無意識のうちに、季時は命を救いたいと思ってしまう。獣医の道を諦め、一教師として生活しているのに、その思想だけは、まだ消えないままだった。
2
仕事はすぐに終わった。以前に務めていた高校で、手続きをしなければならなかった。当時は不自由していなかったが、しばらく離れてみると、随分田舎だな、と思った。電車の多い町で、車両基地があった。季時は仕事を終えたあと、次の電車が来るまで、ベンチに座って、車両基地を眺めていた。乗り物は好きだ。人を乗せて動く、という明確な役目を与えられている。そのためだけに存在するというのに、美しい外観をしていた。飾らなくても、ただ存在するために、美しくある、というものが季時は好きだ。ポケモンが好きなのも、白衣が好きなのも同じ理由だ。機能美とでも言うのだろうか。その存在そのものが、ただひたすらに美しい。
「ねえ」
レールのビスの数を数えていると、またふいに、声を掛けられた。先ほどの少女だった。季時は視線をそちらに向ける。関わり合いたくないな、というのが本音だったが、子ども相手に無視というのも、大人げない。
「何かな」
「何してるの?」
「どこまで具体的に答えればいい?」
「もういい」少女は季時の隣に腰を下ろした。「ねえ、なんでさっき、助けてくれたの」
「答えを考えていなかった」季時は立ち上がる。「缶コーヒーを飲むけど、君、何か飲む?」
「いらない」
「じゃあ、ソーダかな」季時はすぐ近くの自販機で、缶ジュースを二つ買った。「僕は性格が悪いからね、人がいらないっていうと、あげたくなる」
「助けて欲しくなかったって言ったら?」
「喜ぶね」季時は缶ジュースを少女に渡した。「いつまでに答えればいい?」
「別にいいよ、もう」
「君、何歳?」
「十五歳」
「中三?」
「来年からね」
「死ぬなら一人で死ぬといい」季時はプルタブを起こした。「何もあんな、人の多い場所で死ななくてもいいだろう。君は会話のリズムがいいね。きっと頭が良いんだろう。ならもっとまともな死に方が出来るはずだ」
「別に、死のうと思ったんじゃないよ。ただ、なんとなく、ここで死んでもいいやって思った」
「今、この橋から落ちたら、運が良ければ死ねる」
「そうだね。死んで欲しい?」
「どちらでも」
「また助ける?」
「そのつもりはないけれど、断言は出来ない」
少女もプルタブを起こした。一口だけ飲んで、すぐに口を離した。薄手の長袖でも寒い季節だ。冷たいソーダは、合わなかった。
「コーヒー美味しい?」
「いや」季時は首を振る。「美味しいと思ったことは一度もない」
「なんで飲んでるの?」
「さあ」
「美味しいもの飲めばいいじゃん」
「望んだ人生ばかりは選べないよ」季時は空を見上げた。「段々味覚が麻痺してきて、甘いものとか、そういうものが、苦手になる」
「何歳?」
「少なくとも君よりは上だ」
「何してる人?」
「どこまで具体的に答えればいい?」
「仕事」
「高校教師だよ」
「何の?」
「生物学。主にポケモンを扱っているよ」
「へえ。頭良いんだ」
「僕の一番嫌いな言い方だ」
「自分で言ったんじゃん」
「それもそうだね」
季時はそこでまたコーヒーを飲んだ。
電車はまだ来ない。
田舎町は、電車の本数が少ない。
「ポケモン、持ってる?」
「一応ね」
「見せてよ」
「嫌だな」季時は露骨に顔をしかめる。「死にたがりが移ると困る」
「別に、死にたかったわけじゃない」
「簡潔に君の人生を教えてくれたら、ポケモンを触らせるのもやぶさかではない」
「別に。ただなんか、人生ってつまらないなって思っただけ。言われるままに学校に行って、中学生になって、来年から受験生で、高校生になって、ただなんとなく学校に行って、また受験をして、なんとなく大学に行って、なんとなく就職をして、なんとなく死んで行くんでしょう」
「素晴らしい予測力だね」季時は微笑んだ。「僕の人生と似ている箇所が多い」
「そんな人生、つまらなくないの?」
「つまらないよ」季時は笑ったままで言った。「どうしようもなくね。たまに死んでみたくなる」
「でしょ?」
「だけどね、僕は死なない」
「どうして?」
「確率の問題だよ。死ぬよりも、生きた方が、面白いことがありそうだ。死んだら、永遠につまらないが継続する。それはちょっとね」
「死んだら、思考力なんてなくなるんじゃないの」
「答えてくれたお礼に、見せてあげようか」
話題がすぐに変わったので、少女は一瞬躊躇ったが、すぐにポケモンのことだと分かった。季時は白衣からボールを取り出すと、それを優しく地面に転がした。
「なんていうポケモン?」
「カゲボウズ」
「ふうん」
「人形でね、怨念が詰まってる」
「こわっ」
「そう、怖い。でも元は人間にあった感情だ。人形ポケモンって、不思議な話だろう? 人形は、人間がいたから作られたものだ。ということはつまり、このカゲボウズというポケモンは、人間が生まれてから誕生した生き物なんだ。それまでは存在しなかった。人間よりもあとに生まれた。人間が作った人形を媒体にして、人間の感情を詰め込んで活動している。ほとんど、人間みたいなものなんだよ」
「へえ」
「ポケモンというのはね、大半は人間が生まれる前からいた。けれど、人間が作ったポケモンや、人間の生活の影響を受けて生まれたポケモンも少なからず存在する。いや、今はかなり多くなっているね。人間が環境汚染をして生まれたポケモンもいるし、遺伝子操作をして生み出されたポケモンもいる。こういう点から、人間とポケモンの関係は根強いと言われている。君、ポケモンは?」
「持ってない。勉強の邪魔になるんだって」
「君の家は厳しいの?」
「別に。怒られたことはないけど。反抗したことないから」
「反抗しないの?」
「面倒臭いじゃん。どうせ怒られるって分かってるし」
「なるほどね」季時はカゲボウズを撫でる。「そして君の予測はいつも正しかったわけだ」
「そうだよ」
「死ねなかったのに?」
季時が言うと、少女は視線を逸らした。
「君が思うほど、人生は思い通りには行かないよ」
「でも、思っているほど面白くはならない」
「君との会話は、結構、僕は気に入っているけどね」
少女は答えなかった。自分の感情を表す適当な言葉を知らなかったのだろう。
「カゲボウズって、どうしてポケモンって言うの」
「それは、動物ではないのか、ということかな」
「そう」
「要するに、解明出来ていないんだ。動物と分類されている生き物は、ある程度解明出来ている。けどポケモンは分からないことが多くて、未だに研究が続けられている。不思議なものでね、カゲボウズは人間がいるから生み出されたポケモンであるのに、人間はカゲボウズを理解することが出来ない」
「へえ」
「でも、人間だって同じだろう」
「どういうこと?」
「僕は君を理解出来ないよ」
「当たり前だと思う」
「人体の構造は理解出来てもね、気持ちは分からない。じゃあ、生物って、身体の構造だけ理解出来れば、それで理解したことになるの? 違うよね。僕たちは心まで含めて、人間なんだからさ」
「それは、そうだけど」
「だったら、結局動物だって解明出来ていない。でも、特別不思議な、物理法則を無視していたり、今まで生み出されてきた理論では証明出来ない者たちを、我々はポケモンと呼んでいるよ」
「ふうん」
「こういう仕事をしているよ」
「え?」
「生物学。こういう話をするんだ」
「それ、楽しい?」
「いや、仕事だからね、楽しくないよ」
「どうして続けてるの?」
「それが知りたいんだよ」
ゆっくりと振動が伝わってきて、電車が来たことを知らせていた。「君は帰るの?」と季時が訊ねると、少女は「次の電車で帰る」と答えた。
缶コーヒーを飲み干して、ゴミ箱に空き缶を捨てる。
「次死ぬ時も助けがあるとは限らない」
「そうだね」
「じゃ、また」
「あ、待って」
橋を降りて行く季時に向かって、橋の上から、少女は声を掛ける。季時はそのままホームに降り立つ。この駅には、電車が五分ほど停車する。季時はホームで、ゆっくりと上を見上げた。
「名前は?」
「聞いてどうするの?」
「どこの高校か調べて、受験する」
「高校名を聞いた方が早いんじゃない?」
「再来年もいるとは限らないから」
「頭がいいね」季時は微笑む。「季時九夜」
「きとききゅうや?」
「季時が苗字で、九夜が名前」
「珍しい名前だね」
少女は笑った。
「よく言われるよ」
「きゅーやんって呼んでいい?」
「他人の呼称には不満を言わないようにしている」
「じゃあ、きゅーやん、さようなら」
「さようならと言われると、また会いたくなるな」
季時は笑って、電車の中に消えた。
3
いつ実行するかを決めかねていた掃除を、季時はついに敢行していた。二時間も授業が空いてしまって、暇だったというのが大きな理由だ。しかし予想以上に作業は手間取った。出てくるものが思い出を喚起させることが多く、以前務めていた高校の名前が書かれた書類を見つけて、季時は二年前の出来事を思い出していた。
季時にしては珍しく、美しい、と思える類の記憶だった。そのことを思い出していたら、授業の終了を終えるチャイムが二度鳴っていた。もう、掃除は諦めることにした。どうせ片付けても、また同じ状態になる。人生というものはそういうものだ。
そろそろ冬も本格的になる、という時期だった。丁度同じ時期に、そんな出来事があった。少し肌寒くて、温かい缶コーヒーがとても似合った。
諦めて昼食でも食べようか、と思っていたところで、ドアをノックする音が聞こえた。気の利いた言葉を考えて、「入ってます」と答えた。すぐにドアが開いた。
「ああ、いたいた」
「常川君か」丁度彼女のことを思い出していたところだった。いいタイミングだな、と季時は思った。「二度確認するほどのことかな」
「なんで部屋汚くなってるの?」
「いや、掃除をしたんだよ」
「綺麗になってないじゃん」
「何かを整えるためにはね、汚さないといけないんだ。君、数学得意だろう? 途中式はいつも美しくないよ」
「はいはい。はいはいはい。はいはいはいはいはい」常川はそう言いながら、机の上の書類を掻き分ける。「今日はすぐ帰るよ。これ渡しに来ただけだから」
常川は包装されたものを机の上に置いた。重くはなさそうだった。
「何?」
「マフラー」
「マフラーね。君が作ったの?」
「うん」
「ふうん。どうして?」
「部活だから」
「なんで包んであるの? 評価しにくいんだけど」
「だから、きゅーやんにあげるの」
常川は季時を睨み付ける。
「マフラーを? 僕に? 手作りのを?」
「そう」
「なんで?」
「もういい」常川は唇を尖らせて、振り返る。「失礼しました」
「なんで怒ってるの?」
「怒ってませんよ」
「君が怒る合図を僕は知っている」
「機嫌が悪いの」
「機嫌が悪いけど、怒ってはいないの?」
「気に入らないなら捨てていいよ」
「これ? いや、もらえるならもらうよ。最近、自転車通勤も寒いしね。かといって、自分で買いに行くのも面倒だから」
「そう」
「いや、ありがとう。理由が分からなかったから戸惑っただけだよ。ちゃんと使うよ。へえ、見てもいい? というか、僕のものだから、確認を取る必要はないね」
「好きにすれば」
季時は包みを開けた。それは、カゲボウズと同じ色をしたマフラーだった。「いいセンスだね」と季時は言って、それをクビに巻いた。
「私は好きな色じゃないけどね」
「そうなの? じゃあどうして作ったの?」
「きゅーやんが好きそうだから」
「ああ、最初から僕のために作ってくれたのか。ありがとう」
「どういたしまして」
「で、どうして?」
「まだ答えは出てないかな」常川はそう言って微笑んだ。「答えが出たら、聞きたい?」
季時は五秒間考えて、口元を緩めた。
「別に」
1
季時九夜は基本的には面倒臭がりであるが、しかし、仕事はきちんとこなす人間だった。それが普通であるコツだからだ。生徒に質問をされれば質問に答えるし、教師から頼み事をされたら基本的には応じるし、補習授業があれば休日であろうと対応をした。
そして今日、久々に、季時は特殊な仕事をすることになっていた。無論、季時にとっては、という話である。他の教師にしてみれば、日常的な仕事だ。季時は生物準備室に鍵を掛けて、実技室へと向かった。体育館とほぼ同じ構造の建物で、名前だけが違った。
重い扉を開ける。見知った生徒が多くいた。
「あ、季時先生、こんにちは」
「こんにちは」
少し肌寒いな、と思った。まだ二学期も始まったばかりなのに、もう冬が近づいている。
ドアを閉め、中心に向かって行く。五名の生徒と、五匹のポケモンがいた。この実技室は、例外的に、ポケモンの所持が認められている。ここが、そういうことのために作られた施設であるからだ。
「さて、じゃあ、始めようか」
季時は面倒臭そうに宣言した。
「どうして今まで、うちにはこの手の部活動がなかったんだろうね」
「適任の先生がいなかったそうですよ」
「なるほどね。僕はもう、四年くらいいるけど」
「一念発起する生徒がいなかったんですね!」
「それも正しい」季時は五人の生徒を見渡した。「じゃあ、部長は誰?」
「私です」
「適任だね。じゃあ、桐生君、始めよう」
季時はそう言って、二度手を鳴らした。
2
闘技部というのがその部活動の名前だった。活動内容は、ポケモン同士を戦わせて、その強さを競うというもの。部活動としては、かなりメジャーな部類であるのだが、この学校には昔から存在が確認されていなかった。この部活動を設立するためには、強くなったポケモンを止めることが出来る強さを持った責任者が必要だ。前任の生物学教師は戦闘においての知識がなかったために設立に至らず、季時が来てからも、そのままなんとなく、誰も作らずにいたのだという。
「部長が桐生君で、副部長が水際君ね」
「はい!」
「なんで君、副部長、というか、入部したの?」
「部活をやっていないみたいだったので」答えたのは桐生だった。「名前だけでも、とお願いしたんです」
「季時先生が顧問をされるということだったので、是非と!」
「ああ、そう」季時は面倒臭そうに答えた。「そっちの二人は?」
「萌花に頼まれたので」白凪は、桐生の名前を出した。
「ふうん。君は?」
「あ、俺は……先輩に頼まれて」
絹衣は控えめに答えた。居心地が悪い、という感じだった。
季時はこの時、初めて絹衣のポケモンを見た。ヨーギラス、という、目つきの悪いポケモンだ。男子生徒が好みやすい、怪獣型のポケモンである。
「頼まれたの?」季時は意地の悪い表情を浮かべた。「君に? 白凪君が? ふうん」
「なんですか!」
「いや、なんでもないよ。美化委員はいいの?」
「私はもうすぐ卒業ですし、委員会と部活動は活動時間があまり被りませんから」
「で、最後に……宮野君はどういう繋がり?」
「えっと……先生が顧問をするって聞いたので……」
ジュペッタを抱きしめながら、宮野はゆっくりと答えた。季時はこの生徒が苦手だった。嫌いである、とか、遠ざけている、というわけではない。単純に、相性が悪かった。しかし、ポケモン関係の部活には適任だと言える。
「でも君、手芸部だろう?」
「掛け持ちオッケーみたいなのでー……」宮野は微笑んだ。「両方続けるつもりです」
「ふうん。そう言えば、正規部員が三人で、最低五人以上の部員と顧問が集まれば、発足出来るんだっけね。緩い校則だね」季時はひどく面倒臭そうに言った。「まあ、じゃあ、分かったとしよう。で、どんな活動をしていくつもり?」
「私、この前先生と課外授業をした時、何かあった時に、自分もポケモンも守るためには、強くならないといけないかな、と思ったんです。だから、そのために、戦う方法を教えてもらいたいな、って」
「他の意見は?」
他の四名は何も言わなかった。だが、答えられない、ではなく、同じような意見だ、という意味の沈黙だった。
「で、僕は何をすればいい?」
「たまに顔を出してくだされば、嬉しいです。毎日来てもらうというのは、迷惑だと思いますし……週に一回、少しの時間でもいいので、来ていただいて、色々と教えてもらえればと思います」
「ふうん。まあ、それくらいなら、別にいいかな……」
季時は、桐生に甘い、という自覚があった。自分と似ているからだろう。いや、自分の夢を託したい、という、邪な想いがあったのかもしれない。白凪に対しても、強く出られないし、宮野に至っては、天敵だ。面倒な部活の顧問を任されたものだと、季時は溜め息をついた。
「じゃあ、部活動っぽく、基礎練習から始めようか」
季時は白衣のポケットからボールを取り出した。そしてそれを素早く投げつける。カゲボウズが現れて、辺りをきょろきょろと見回している。
「最初に、この動作を、一日五十回」
「えっと……ボールを投げるのをですか?」
「というか、投げて戻す」季時は足下に落ちたボールを拾い上げる。「スナップを利かせて投げる。そうすると、ボールがこっち側に転がる。バックスピンって分かる?」
「あー、俺、分かります。それ、小学校で流行りました」絹衣が手を上げた。「それ、大事なことなんですか?」
「バトルで一番大事なんじゃないかな」
「そんなにですか」
「僕たちは所詮、人間だからね。僕たちが鍛える部分って、このボールを投げる動作と、ポケモンを回収する動作くらいなものだよ。だからね、君たちがこれから戦うためのポケモンを育てるつもりなら、ボールは旧式の方が良いよ。最近流行ってる、超小型のボールだと、スピンはかけられないし、草むらに落とすと、見つけにくい」
「へー……」桐生は熱心にメモを取り始める。「一日五十回ですね」
「これもセットでね」季時はボールにカゲボウズを収納した。「これを五十回。最初はポケモンも戸惑うと思うけど、すぐに慣れるよ。ウォーミングアップみたいな感じでやって、それから部活を始めるように」
「分かりました」
「あと、白凪君と水際君のボールは、三年生だし、まあ出る機会もないとは思うけど……公式大会とかでは使わせてもらえないから、あとで市販のものと取り替えよう。もし旧型のボールが欲しい人がいたら、あげるよ。未使用のものがいくつかあるから。いる人は?」
季時が訊ねると、五人全員がゆっくりと手を挙げた。「素直でいいね」と、季時は満足そうに頷いた。
「あとは毎日、ただ戦い続けるだけだね。僕たちが走り込みをする必要はないし、トレーニングをする必要もない。ただポケモンを戦わせるだけだ。まあ、適当にやってよ」季時はボールをポケットに入れた。「じゃあ、ボール取ってくるから、談笑でもしていてよ。お互いの持ってるポケモンのことを話していてもいいかもね」
「あの」
声を上げたのは桐生だった。
「ん?」
「先生ってもしかして、こういう部活してました?」
「ああ、うん、よく分かったね」
「いえ、なんだか楽しそうだったので」
季時はそう言われて、自分の顔を触ってみた。物理的な変化は見受けられない。感触では分からないのかもしれない。
「そう?」
「そうですよ」絹衣が言った。「なんか、テンション高いっていうか、いや、いいことなんですけど」
「ふうん。まあ、懐かしかったのかな」
「大会とかもあったんですか?」白凪が訊ねる。「高校時代でしょうか」
「そうだね。全国大会とか、懐かしいね」
「へえ……先生、すごいんすね」
「いや、すごいのはポケモンだよ」季時は首を振った。「じゃあ、取ってくるから」
「あ、私、手伝います……」
「いや、いい」季時は宮野の申し出を断る。「君は質問攻めにされるといい。みんな知らないだろう? この子、ポケモンと会話が出来るんだ」
「えっ」桐生がすぐに声を上げた。「本当?」
「え、あ、はい……」
「へえ! すごいな君! 言葉が通じるってこと?」
特別な人間だと分かったからか、水際も過剰に反応し始める。宮野は年上ばかりの部活動に困惑しているようだったが、少しずつ、言葉を返していた。
季時はそのまま何も言わずに、実技室をあとにする。少々特殊な生徒たちが集まったな、と、五人の輪を見て思った。自分の学生時代を思い出すようで、それは少し、普段よりも楽しい仕事だった。
3
段ボール箱に赤と白のボールを五つ詰めて、季時は廊下を歩いていた。珍しく荷物を運ぶ行為が苦ではなかった。こうした作業は、学生時代に何度もやったはずだ。当時と同じように、対価を求めない気持ちが働いていた。普段の仕事もこうなればいいのに、と、季時は少しだけ考える。
「あれっ、きゅーやんだ」
「やあ」常川だった。「今日も元気がいいね」
「えっ、気持ち悪い。どうしたのきゅーやん」
「普段通りだよ」
「普段のきゅーやんは元気という言葉は使わないと思う」
「ふうん。よく観察しているね」
「どうしたの? 具合悪い?」
常川は季時の隣についてきた。いつもなら不満の一つも口にするところだが、季時はその行為を黙認した。
「今日から部活が始まったんだよ」
「え、ああ、何部だっけ」
「闘技部」
「仰々しい名前だよね。宮野ちゃんがいるんだっけ?」
「そうだね。手芸部、掛け持ちしていいんだってね」
「あー、そうだね。私は戦うのって好きじゃないから、あんまり……でもきゅーやんが顧問って面白そうだね」
「僕はあまり顔を出さないけどね」
「ふうん。ま、来年廃部になりそうだったら、入ってもいいかな。今は制作物で忙しいし」
「手芸部?」
「うん。あのねえ、文化祭前に一つ制作するの。それが終わったら、入ってもいいかなあ。三年生が多いって聞いたし」
「ふうん。何作ってるの?」
「内緒」
「そう」季時はそれ以上追求しなかった。「そろそろ寒くなるし、手芸部のみんなで、お世話になっている教師にプレゼント、とかしないの?」
「え、するわけないじゃん」常川は真面目な口調で言った。「あ、文化祭、手芸部とか来ないでね」
「僕は文化祭は自宅で寝るよ」
「最低」
「身長は君より高いよ」季時は階段を降りて行く。「どこまでついてくる予定?」
「ちょっと部活覗いてみようかなーって」
「手芸部は?」
「やってる途中だけど、たまたまきゅーやんがいたから」
「ふうん」
頭の中で、手芸部のあるB棟一階の家庭科室と、三階にある生物準備室に用事のある人間同士が、たまたま巡り会う可能性はいくつあるか、と考えてみた。しかし思考が完全に組み上がる前に、季時は実技室に到着していた。
「段ボール箱を持つのとドアを開けるの、どっちがいい?」
季時が訊ねると、常川は面倒臭そうに、重いドアを開けた。気分が良かったので、「ありがとう」と、季時にしては珍しく、感謝の言葉を口にした。
「あ、常川さん」
「やっほう」常川は宮野に手を振った。「わあ、結構広いんだね」
「来たことないの?」
「体育でポケモンの授業あるのって、二年からじゃないの?」
「ああ、君、まだ一年生か」季時は思い出したように言った。「付き合い長いからなあ」
男子生徒二人は、水際の持っている旧型と同じサイズのボールで、バックスピンの練習をしていた。練習熱心だな、と微笑ましくなる。
「全部同じだから、好きに使って」
季時が言うと、部員たちはすぐに段ボール箱に群がった。
ボールも個性の一つ、あるいは住処の一つだと考えられる時代になり、ボールの移し替えも簡易的になった。季時が学生の頃までは、まだ、ボールは一生物という考え方が大きかった。たった十数年で飛躍的に進歩していく。科学の力はすごい。
「常川さんも、一緒にやらない?」ジュペッタを抱きしめながら、宮野が訊ねる。
「うーん、少人数で結構楽しそうだね。それに、ピカチュウと学校で触れ合えるのはいいかも。ねえきゅーやん、休み時間とかに実技室使ってもいいの?」
「えーと……部長としては?」
「あ、学校側が良いなら、いいですけど」桐生は常川に言った。「飲食禁止だったりしますか?」
「そういう校則はないね。まあ、今後出来るかもしれないけれど、今のところは」
「じゃあ、いいんじゃないかな。まだ部室もないし。来年か、来学期くらいに、生徒総会があるから、その時に空いている部室がもらえるかもしれないけれど。私たちは今年で卒業しちゃうから、一年生の人がたくさん入ってくれると嬉しいかな」
「うーん、そうですよね。残るのって、宮野ちゃんだけ?」
「ああ、俺も残るよ」ボールを弄びながら、絹衣が言う。「来年は俺が部長になるのかな? あ、継続って何人いればいいんですっけ」
「部活動の継続は、三人ね」白凪が答える。「もう一人入ってくれれば、来年も一応、部活動は出来そうですね」
「ううーん……軽い気持ちで来たのに、責任重大な感じがしてきた」
「まあ、無理してやることはないよ」季時は床に腰を下ろす。「楽しんでやるのが一番だ。ポケモン関係のことはね。無理するようになったら、全部やめた方がいい」
「と……とりあえず手芸部の作品が出来上がるまで」
「待ってるね」宮野は微笑んで言った。
「先生、ボールの入れ替えって、どうするんですか?」白凪がボールを持って来て言った。「さっぱり分からないんですけど」
「あ、僕も分からないです!」
「ああ……組み込まれてるチップを入れ替えればいいよ。じゃあ、水際君のを貸してくれるかな。試しにやってみるから」
水際のボールを手にして、ふと季時は動きを止める。
「あれ、これツボツボだよね。ツボツボで戦うの?」
「はい! 堅実な戦い方をしようと思います」
「ふうん。ま、君には合ってるかな。ツボツボ使いは頭が良くないとね」ボールを操作しながら、顔を上げないままで、季時は続ける。「白凪君はヤブクロンだけど、どうする?」
「とりあえずは育ててみようかなと思います」
「進化すると、悲惨だよ」
「容姿がですか?」
「うん」
「問題があるとは思えませんが」
「いい答えだね」季時はボールを水際に返す。「どうしてもね、ポケモンの性能差っていうのは出てくるよ。これは仕方がない。多分この中だと、一番強くなるのは……」
季時は生徒たちを見渡して、絹衣に目を留めた。
「君かな」
「俺っすか?」
「というか、ポケモンがね。ヨーギラスはきちんと育てれば、かなり強くなる。もっとも、それに対応するように育てれば、他のみんなにも勝ち目はあるけどね。でも、一匹のポケモンに対応したら、他のポケモンに対してどうすればいいか分からなくなるから、それじゃだめだ」
季時は立ち上がり、六人の生徒を見渡した。
「……たまには教師らしいことでも言うか」
「何、もったいぶって」
「せっかく、他の生徒では得られないような経験をするんだ。君たちに是非知っておいて欲しいことがある」
季時は自分のボールを取り出して、それを眺めた。
「君たちは若いし、幾通りもの可能性がある。これからね。例えば、とりあえず大学に行く者、なんとなく就職をする者、がんばって夢を目指す者、たくさんだ。全部素敵なことだと僕は思う。だけどね、あまり一つに固執しない方がいい」
「視野を広くということですか?」白凪が言う。
「似たようなことだね。このポケモンが強いから、このポケモンを倒すために、じゃあ例えば、火を倒すために水を育てる。そうすると草に負ける。そのためには火だ。だけど水に負ける。そうやって堂々巡りしてしまうことだってある。三竦みだね。だからね、僕は君たちに、あまり固執して欲しくない。出来るだけ、不安定で、曖昧であって欲しい。最終的な結論を出すのは、それからでいい。まずはなんでも試してみて欲しい。そのあとで、自分の信じた結論を出せばいい」
「いいこと言うじゃん」常川が、茶化すように言った。「まあ、きゅーやんは前からいいこと言うけどね」
「どうもありがとう。それじゃ、基礎練習をしようか」
季時はそう言って、二度手を鳴らした。
「今日は仕事は終わりだ。みんなでポケモンと触れ合おう」
季時が言うと、全員がその言葉に驚き、しかしすぐに、笑顔を見せた。
プラズマ団との激戦が終わって、3日後のことだった。
マイコは、病院の一室でようやく目を覚ました。
彼女の周りには、脱出の際にいたカイトを含め、7人の男性が勢揃いしていた。
「3日も眠り続けとったから、マイコはこのまま起きんかと思ったわ」
「失礼な!私はそんなにヤワじゃないからね!」
「でもこいつらだって1日眠り続けたって看護師さんが言ってたぜ。おあいこじゃねえのか?」
『カイト!!!余計なこと言うなや!!!』
カイトの一言がきっかけで、マイコの目の前で追いかけっこが始まっていた。
「悔しかったら捕まえてみろよ!」
「デンチュラ、クモの巣を張れ!」
「エルフーンは綿胞子で動きを止めろ!!」
「ドレディアは眠り粉を撒いてくれ!」
「クロバットは黒い眼差しで見張って!」
もう、あらゆる手を使ってでもカイトを捕まえようとしている。
そして、ようやくカイトが捕まる、となったその時だった。
ゴオッ!バチドカグサッ!!!
爆音とともに、ベッドを抜け出し、6匹のポケモンを従えたマイコがいた。
その表情は、まるで鬼のようであった。
「誰が追いかけっこを大規模に病院の中でしていいって言った!?病人は大人しくベッドで寝てなさい!!!騒がしすぎるんだよ!!!」
『すみません……』
マイコの恐ろしすぎる説教に、全員が委縮して謝っていた。
しかし、彼らの心中では、
(お前が一番病人やんけ)
(一番騒がしいのはお前やろ)
こんなことが言われていたのを、きっとマイコは知らない。
そもそも、何故、マイコ達が病院にいたか、というと、プラズマ団の城から脱出した際、みんなのたまり場としての劇場に着地点を決め、降り立ったのだが、
ドサドサドサッ!!!
「きゃああああっ!!!」
カイト以外の7人が意識を失い、その場に倒れこんでしまった。当然、目の前でそれを見た女の子達(劇場に来場してきた人)は大絶叫。結局、カイトがユクシーに頼んで彼女達の記憶からそこの部分のみを消してもらい、7人を病院に入院させた、というわけだ。
そういうわけで新聞沙汰になることは避けられたが、全員しばらく眠り続けていたのだ。戦いで削られた精神力を回復させるためには、特殊な薬湯を飲むこと以外には、眠ることくらいしかないらしい。
暇になったマイコは、テレビのニュースをつけた。
するとそこには、ニュース原稿を読むキャスターの姿があった。
「速報です!3日ほど前に失踪した人々が続々と見つかったとの情報が入ってきました!みなさん軽い怪我くらいで済んだとのことです。700人以上の安否がつかめなかった未曾有の大事件が、ようやく終止符を打ちそうです!」
その画面に夢中になっていると、ギイッ、という音とともにドアが開き、みんなが入って来た。
「さっきはゴメンな」
「マイコの気も知らんとワーワー騒いで……」
「……もう怒ってないし、いいよ。元気じゃないと楽しくないし。それより、トウキョウで失踪したって人達、こっちに戻って来れた、ってさ。さっきニュースで言ってたよ」
すぐに仲直りする様子を物陰で見ていたカイトは、7人に聞こえないように、言った。
「……どうやら、僕のサポートはもうなくても大丈夫みたいだな。あのみんななら、どんなことがあってもやっていけそうだし。ひいおばあちゃんもちゃんと生きていけそうだし。邪魔にならないうちに、行くとするか」
そして、テレポートで飛んで行った。
日本を揺るがす大きな邪魔者は消え去った。彼らは、彼女は、日常を生きてゆく。
絆で結ばれたポケモン達とともに。
おしまい
マコです。ようやく完結です。
平和な日常が戻ってきました。
でも、皆さん、病院内では決して騒がないでくださいね。
これにて、ポケリア+(プラス)!はフィナーレです。
また細々と色々書いていくつもりです。
それでは!
「あたしの番よ。手札の水エネルギーをタマザラシにつけて、ギンガ団のマーズを発動。デッキから二枚ドローしたのち、相手の手札を表を見ずに一枚選択し、それをデッキの底に戻す。一番右のカードを戻してもらうわ」
「くっ……」
ポケドロアー+がデッキの底に戻される。煩わしい……!
「タマザラシをトドクラーに進化させてターンエンドよ」
今、俺のバトル場には炎エネルギーを三枚つけたバクフーン110/110と、ベンチにはHPが風前の灯火となったマグマラシ10/80。そして姉さんのバトル場にはトドゼルガ70/130と、ベンチにはデリバード60/70、水エネが二枚ついているユキメノコ80/80と水エネルギーを一枚つけたトドクラー80/80。
ポケモン的には俺の方が不利だが、流れは今俺に来ている。まだワンチャンスはあるはずだ。
「俺のターン。手札の炎エネルギーをマグマラシにつけてバクフーンで攻撃。気化熱!」
炎と蒸気のエフェクトを受け、大きく後ずさったトドゼルガのHPバーが0に近づく。60ダメージを受けて残りはわずか10/130。トドゼルガはエネルギーが足りないのでワザを使えず、逃げることも出来ない。次の番には倒せるはずだ。
「あたしの番ね。トドクラーに水エネルギーをつけて、……そうね。終わりよ」
姉さんの手札は未だ一枚のまま。その調子が続く限り、姉さんも大きな動きは出来ないはず。姉さんが動けないうちに一気に押してやる。
「俺のターン。もういっちょバクフーンで攻撃、気化熱だ!」
トドゼルガ0/130の悶絶する声と共にズシンとその巨体が倒れ、気絶する。サイドカードを一枚引くと、姉さんはユキメノコをバトル場に出す。
やっと初めて引けたサイドだ。このまま俺のペースをキープしたい。
しかも今引いたカードはヒトカゲ。たねポケモンを新たに加えられたことで、次の俺の番再びまた新たなポケモンを育てられる。
今バトル場にいるバクフーンが倒されると、ベンチにいるのはマグマラシ10/80のみ。でもこれで不安が残るベンチに安寧の風が流れるだろう。
「あたしの番よ。トドクラーをトドゼルガに進化させるわ」
「進化? ということはまさか……」
「そのまさかよ! この瞬間にトドゼルガのポケパワー発動。氷結!」
進化したときのみ使え、二回連続コイントスをオモテにすれば、相手のバトルポケモンをトラッシュさせる強力なポケパワー。確率は四分の一だし、さっきもそれでリザードンが倒されてしまっている。だから今度こそ無いと信じたいところだが。
「よそ見してていいの?」
はっ、と気付いた時には時すでに遅し。バクフーンが目の前で氷漬けになっていた。氷結が成功していたのだ。
「今日はなんか運がいいわね」
「ちょっ、えー!?」
バクフーンはトラッシュされ、今や残るは瀕死のマグマラシ10/80のみ。そして止めの一撃が襲いかかる。
「ユキメノコでマグマラシに攻撃。霜柱!」
再び鋭い音と共に巨大な霜柱がフィールドにいくつも現れ、マグマラシ0/80を下から突き刺すように襲う。
「ぬおおっ!」
「マグマラシが倒れたからサイドを一枚引くわ。でも、今マグマラシが倒れて、翔の場にポケモンがいなくなったからあたしの勝ちね」
「え。あー、しまった!」
時既に遅し。気付いた時には既に決着が着いており、場のポケモンの映像が全て消滅していた。
敗因はほとんどコイントスによるものだ。運で負けるというのはどうもやりきれない悔しさが勝って気が晴れない。
さて、ギャラリーの子供たちは姉さんの元に集まっていく。すごいねー、だの強いねー、だのかんだのと、そういう称えるような声が聞こえた。
やや不貞腐れながらバトルベルトを直していると、突如野次馬の子供のうちの一人が俺の顔の傍にやってきてボソッと呟く。
「全然ダメじゃん」
その声を聞いて、俺は寒空の中膝から崩れ落ちた。
「ほらほら、翔。そんなに落ち込まないの。そうだ、今日は外食に行こうか!」
「どーせ弁当屋だろ。落ち込んでないし」
「どーせ、って失礼ね。なんなら翔だけ晩御飯無しでもいいんだけど」
「いや、あの。ごめん」
「分かればよろしい。さ、行くよ」
ああ、なるほど。これで二連敗ってことか。確かにダメかもなー俺。
口から漏れた白い息に顔を隠し、ひっそりと姉さんの後に着いて行った。
雫「今回のキーカードはユキメノコね。
進化したとき、好きなカードを一枚サーチ!
霜柱もエネルギー二個で50ダメージよ」
ユキメノコLv.45 HP80 水 (DPt4)
ポケパワー ゆきのてみやげ
自分の番に、このカードを手札から出してポケモンを進化させたとき、1回使える。自分の山札の好きなカードを1枚、手札に加える。その後、山札を切る。
水無 しもばしら 50
場に「スタジアム」があるなら、このワザは失敗。
弱点 鋼+20 抵抗力 ─ にげる 3
最近会ってないし、全く手がかりもつかめてない。ホウエン地方って広すぎる。
ぼーっと海を眺めながら吹いていたせいだ。いつの間にか音は外れ、それに気付いて息を入れるのをやめる。師匠より習ったこの楽譜のない曲は、耳の良さと集中力がものを言う。どこかの民族の舞曲で、神様が降りる曲だと言われているが、未だに見た事がない。カイナシティの港に腰掛けて、銀色の笛をケースにしまう。
本来ならばこんな潮風の強いところで出すと塩気に当てられてすぐに痛んでしまう。けれど手がかりもなく、何をしていいかも解らない状態で、やることがなかった。
「もうここに来て何ヶ月も経つのに、手がかり一つないなんて」
海に向かって歌う。先ほどの曲を口ずさんで。美しく、どこか引きつけられる旋律は、現代の楽譜に表すことなど出来ないのだろう。もし出来たとしても、記号が多そうな曲だ。
「竜の舞、ですか?」
後ろから話しかけられて、何のためらいもなく振り向いた。
「竜の舞を知ってる人がこの現代にもいるとは思いもしませんでした」
「よく知ってるのね」
不思議な雰囲気は変わらず。その深紅の目は宝石のように見入られる。ハウトという名前も本名かどうかも妖しいのに、本人の前では自然と警戒を解いてしまう。
「私はその舞が出来た当時の完全な踊りを現代に伝えています」
「結構激しい踊りなような気がするけど、ダンスも出来たのね」
「ええ、結構踊っていませんが、その曲を聞くと体が動き出すようです。ところでミズキさん」
「なに?」
「もしよろしければ明日、ミナモシティから出る船に乗りませんか?」
ハウトが差し出したのは、一枚の紙切れ。不思議な模様が描いてあり、見ているとその世界に吸い込まれそうだ。
「貴方の探しているもの、見つからないのでしょう?」
ミズキは黙ってハウトを見る。誰にも探しに来たことを教えていないはず。なのに心の中を見透かすようなハウトの言葉は、ミズキに不信感しか与えない。
「たまには気分転換も良いと思いますよ」
何者なのか喋らせようとしたが、遅かった。ハウトは早足で街の方に歩いて行き、倉庫の影に一瞬だけ隠れたと思えば、すでに姿はなかった。
朝は早い。久しぶりに自宅へ戻ったせいか、今までより深く寝ていたようだ。体を起こすと、身の回りの支度を始める。鏡を覗き込み、あの頃から全く変わってくれない白い髪を見る。誰もがいつかは戻るって言ったけれど、何も戻る気配もなかった。
鞄に必要な道具、そしてモンスターボールを確認する。まだキーチが眠そうだ。他は皆起きていた。そして一つのボールに目を向ける。
アブソルだ。災害を予知して人の前に現れるというアブソル。触りたくも無かったが、道行くトレーナーに白い毛並みがお揃いだと言われたり、かっこいいと言われたりして、そうそう悪いものではないと思い返す。アブソル自身が災害を起こしているわけではない。特にアブソルは天災を予知はできるが人災など予知できない。
「お前にずっと濡れ衣着せてたな。ごめんな」
人の言葉など理解できるわけがない。モンスターボールを準備して、ザフィールは外に出る。直後、オオスバメの元気な鳴き声が朝のミシロタウンに響き渡った。
ミナモシティはすでに活気づいていた。漁港ではすでに競りが始まっているし、客船では準備に大忙しだ。それらに合わせて店の開店時間はどこよりも早い。その中を時間になるまでザフィールは色々見回っていた。何度か来たことはあるけれど、やはりその日によって出ているものが違う。
「もうそんな季節か」
季節の魚と銘打って安くなっているのを見て、時間の流れを感じる。毎年のことだが、今年だけは物凄く早いように感じた。頭を振り、過去は変えられないとわき上がる気持ちを押さえる。
ため息まじりに息を吐く。そして遠くを見た。その景色の中に、知ってる人間が混じっている。人ごみをかき分けてザフィールは走る。
「ミツル!」
その人物も振り向いた。サーナイトを連れたのは、間違いなく彼だった。この三ヶ月、幾度となく会っていたし、頼りにしていた。その彼にこんなところで会うなんて思いもしない。
「あれ、ザフィールさん!どうしたんですか?」
「俺も聞きたいよ。何してんだこんなところで」
「いや、その……」
ミツルが一瞬だけ目をそらす。けど後ろのサーナイトが手を肩に手を置いた。本当のことを言えと言うように。
「僕、家出してきたんです」
「なんだって!?なんでそんなさらっと言えるんだよ」
「これはスピカのために出ることにしました。確かにシダケタウンはいいところです。だけどスピカはそんなところに収まるポケモンじゃないって思いました」
「どうして?」
「他のポケモンを育ててきて思ったんです。成長の度合いが他と違います。戦う為に生まれたような、そんな気がします」
「ミツル……サーナイトとかって、人間の気持ちに応えて成長するんだ。だから……」
これ以上は言っても仕方ない。サーナイトがそれだけミツルの強い気持ちに応えようとしたこと、他人に言われるまでもないだろう。言葉で言わなくても、何となく理解できていれば、言うことなんてない。
「まあ、そう言いますよね。だからこそ、スピカにはたくさん強くなってもらいたいんです」
「無茶だけはするなよ。おじさんだってすっごい心配してるんだから」
ふとニューキンセツに行ったときのことを思い出す。あの時はまだ何も方向性がなかったミツルだったのに、なんだか立場が逆になっているような気がした。同じ時間しか経ってないのに、この違いはなんだろう。おそらくこれが、過去にとらわれて進まなかった自分とミツルの違い。ザフィールはふとため息をついた。
「そういうザフィールさんこそ、まだ家に帰ってないんですか?」
「いや、昨日帰ったよ。そんでこんなものもらったんだ。あ、そうだ、今日は予定ない?ないなら2枚もらったからどうよ?」
チケットらしきものを見せる。ミツルも同じことをいった。何にも書いてないと。
「……大丈夫です。けど、行き先も何もないのは怖いですね」
「俺もそう思うんだけど、ちょっとこのチケットは色々あって」
ザフィールが届いた経緯を話す。それにはミツルも不思議そうな顔をしていた。
「俺はそんなイタズラみたいなことをするやつを突き止めようと思う。そういう冗談でもやっていい事と悪い事ってあるだろ」
「僕も行きますよ。ガーネットさんに続いてザフィールさんもいなくなったら僕も嫌です」
サーナイトも頷いた。ミツルに不思議な色のチケットを渡す。自分だけが読めることに、疑問どころか答えしか出て来ない。藍色の珠に関係あることなのだ。まだ終わっていない。ザフィールは気取られないように、明るく振る舞っていた。
そこそこ大きな船だった。客船にしては、乗客がいない。自分たち以外に乗ってないのではないか。船の中を一周しかけた時、懐かしい姿を見つける。ザフィールは声をかける。
「ミズキ!」
船の手すりからずっと外を眺めている彼女は、一瞬みただけではサーナイトのようだった。
「あ!しばらくぶり!元気だった!?」
ミナモシティで会った時から変わってない、ように思える。眠そうな顔でそれでもサーナイトのように言葉で包容してくれたのを今でも忘れない。
「あの時は本当、死んじゃうかと思った!でも元気そうでなにより。あれ?今日は一人?ガーネットは一緒じゃないんだね」
「ああ、ミズキにはまだ言ってなかったか。あいつは……もういないんだ」
言葉に出すたび、息がつまりそうになる。まだ認めたくない。認められない。
「へ?どういう意味?なんで?意味わからないんだけど!」
おとなしめな彼女が、いきなり早口になる。それほど彼女にとっても衝撃的な事実だった。
「だから、そのままの意味だよ」
「なんで?なんでよ?だったら……いやなんでもない」
ミズキは黙る。そして海の方をみた。誰かに詫びるような目をして。
「誰のせいでもないんだ」
ザフィールは言う。それでもミズキは納得いかないようで、ずっと海を見ていた。
かなりの時間、船に揺られていただろうか。正午近い時間になって、ようやく着くというアナウンスが入る。外に出てみれば、遠くにかすむ島が見えた。人が住んでいなそうな島で、木々に覆われている。こんなところに何の用があるというのだろう。
船を降りる。ミツルのサーナイトが彼の腕を掴む。行くな、と。なだめるようにミツルが撫でるが、サーナイトの態度は変わらない。
「スピカ。サーナイトなら、僕の気持ち解るよね?」
頷く。けれどかたくなに行かせようとしない。どうしてかミツルの言うことを聞こうとしなかった。仕方なくミツルはボールに戻す。そして3人は何もない森のような島を歩き出した。
歩けど歩けど何にもない。熱帯に生息しているような植物があるばかりで、何も見えて来ない。しかも山のように坂になっているから、足もだるい。それでもこの先に何かあると感じて、3人は歩き続ける。
「あれ、何もない?」
道は終わり。山頂には、逆に木が少なく、原っぱのようになっていた。その真ん中に神秘的な色をした石が一つ。
「イタズラにしては程が過ぎる」
ザフィールがついに怒ったようす。人影などなく、気配もない。そんなところにこんなことをされて平気でいられるほど寛容ではない。
「イタズラではありませんよ」
落ち着いた声。その声の主を見ようと顔を上げた。
「ハウト?それにフォールも?」
ミズキが驚いたようにその名前を呼ぶ。先ほどまでいなかった石の向こうに、いきなり現れた二人。
「私たちは貴方たちを呼びました。全てを終わらせるために」
ハウトが一歩踏み出す。思わずザフィールは息を飲んだ。その神秘的な目が3人に予想以上のプレッシャーを与える。
「終わらせる……?」
「お分かりになりませんか、ミズキさん。せっかくだから教えてあげてはいかがでしょう。貴方は本来ここにいるべき人間ではない。貴方は……」
動揺するザフィールとミツルをよそにミズキはハウトの声を遮るように、そして挑発するように話しだす。
「そうよ。ごめんね、二人とも。私は本来、貴方たちより物凄い年下。むしろ子世代」
「へ?なんで?俺より年上じゃないの?」
「私は変わってしまった歴史を取り返すために来た。私の存在を守るために過去に来た。誰にも邪魔はさせない」
その場の空気が変わった。ザフィールとミツルは驚きのあまり声が出ない。そもそも状況が理解できない。過去に来た、そして年下ということから未来から来た人間?そもそも時間を越えてどうやって。中々正解を出せない二人をおいて、ミズキはさらに続ける。
「でもハウト、それはフェアじゃないわ。私が嘘をついていたように、貴方たちも嘘をついている。何度も見破ろうしてもダメだった。今こそ正体を全て見せなさい!」
「もうとっくにお分かりでしたよね」
ハウトとフォールの口角が少し上がったような気がした。そして二人の空間がねじ曲がる。そう見えた。そのねじ曲がった空間の向こう、そこにいたのは青い鳥のような竜と赤い鳥のような竜だった。
「私はラティオス」
「私はラティアス」
「私たちは、レジ様たちに従い、ホウエンを汚すものを排除します」
そのイリュージョンには誰もが二の句をつなげない。何を言ったらいいのか、何を言ってはいけないのか。目の前で起きたことなのに、全く信じられなかった。
「ここからが本番だ、カモネギ!」
「ダルマ選手、次のポケモンはカモネギ。現状ではダルマ選手がかなり有利ですが、まだまだ油断なりません」
ダルマはオーダイルを引っ込め、カモネギを繰り出した。カモネギには出て早々岩が食い込む。ドーゲンは腰に装備するボールを眺めながら戦況を読む。
「ふむ、カモネギか。真意は計りかねるが、交代しても得策とは言えんな。よし、ドリルくちばしだ」
「させるか、アクロバット!」
エアームドより先にカモネギが動いた。カモネギは懐から何かの石を取り出し、それを砕いた。そして軽やかにエアームドを攻撃。予想外の1発にエアームドはたまらずダウンした。
「エアームド戦闘不能、カモネギの勝ち!」
「よし、あと2匹だ」
「見る限り、あれは飛行のジュエルか。中々良い出来だ。……久々に熱くなってきたぞ。実に良い気分だ。そろそろこいつを出すのも悪くない、出でよ我が秘密兵器!」
ドーゲンは興奮した様子で新たなポケモンを場に出した。出てきたのは、ハサミと数珠が連なったような尻尾が特徴的なポケモンである。
「ドーゲン選手の6匹目はグライオンです。これで全てのポケモンが出揃いました。あとはこのポケモンとラッキーを残すのみです」
「グライオンか……でかいな」
ダルマは図鑑を開いた。グライオンはグライガーの進化形で、非常に高い防御を持つ。そのタイプと能力から、耐久型で大概の格闘タイプを手玉に取れる程の実力者。また、格闘タイプを起点につるぎのまいを使い、ジュエルとアクロバットで攻める物理型も侮れない。ダルマは図鑑を閉じると、慎重に指示を飛ばした。
「まずはアクロバットで様子を伺うんだ!」
「グライオン、守る!」
カモネギは手始めに茎でグライオンを切り付けた。しかしグライオンにガードされてしまい、軽く弾かれてしまった。その直後、グライオンから大量の毒が吹き出してきた。ダルマは思わず身構える。
「おっと、グライオンは猛毒を食らってしまった! あれはどくどくだまでしょうか?」
「ま、また何か企んでるのか? けど今は攻めるしかない。カモネギ、とにかく攻撃し続けるんだ、アクロバット!」
「そんな半端な攻撃効かん、つばめがえしで返り討ちだ」
ここからチャンバラが展開された。カモネギは茎、グライオンはハサミでお互いを殴りあう。だがステルスロックのダメージとそもそもの能力差により、2回攻撃したところでカモネギは倒されてしまった。
「カモネギ戦闘不能、グライオンの勝ち!」
「くっそー、硬いなさすがに。……ん、ちょっと待てよ。もしかしてグライオンの体力、回復してるのか?」
ダルマはグライオンを凝視した。本来、猛毒状態ならダメージを受けるはずである。しかしグライオンはダメージはおろか、カモネギの攻撃により傷すら余裕といった感じだ。ドーゲンは不敵な笑みを浮かべながら説明する。
「ほう、よく気付いたな。俺のグライオンの特性はポイズンヒール、毒状態で体力を回復できるのだ。この耐久に回復が合わされば、どんなポケモンでも倒せるというカラクリよ」
「……なるほどね、そういうことか。なら一撃で仕留めないと、キュウコン!」
ダルマはカモネギを戻し、キュウコンを呼び出した。またしても岩が刺さり、いきなり肩で息をする状態だ。
「ダルマ選手、再びキュウコンの登場です。それと同時にスタジアムは急に晴れあがりました。まるでダルマ選手に天気が味方しているようです」
「一気に決めるぞ、大文字!」
「なんの、地震で終わりだ!」
キュウコンはグライオンよりも速く大文字を放った。グライオンは地震を起こすことができずに直撃、そのまま落ち葉のように地面に舞い落ちた。
「グライオン戦闘不能、キュウコンの勝ち!」
「なんと、幾度もの逆転をしてきた俺が追い詰められたとは……。しかし、これで勝ったと思うなよダルマ! 俺には最後の砦たるラッキーがいるのだ!」
ドーゲンはグライオンを回収し、ラッキーを送り出した。驚くことに、ラッキーは耳をはばたかせて宙に浮いたではないか。しばらくして落下したが、スタジアムの度肝を抜いたのは間違いない。
「ドーゲン選手、最後のラッキーを場に出しました。晴れ大文字を軽々耐えるその硬さで、どこまで抵抗できるでしょうか」
「こちらは4匹、あっちはラッキーのみ。なのにあの自信はどこから湧いてくるんだ? いやそれより、体力的に身代わりはできないな。仕方ない、大文字だ!」
「そうはいかん、ちきゅうなげ!」
最後の勝負が始まった。キュウコンは白みがかった大の字の炎を撃った。一方ラッキーはキュウコン目がけて前進。あろうことか大文字をも蹴散らしキュウコンを掴み、バックドロップを決めた。まさかの攻撃にキュウコンは気絶した。
「キュウコン戦闘不能、ラッキーの勝ち!」
「そ、そんな馬鹿な! 大文字を突き破るなんて……」
「ふっ、ラッキーを舐めてもらっては困る。名前通りの幸運な勝利、必ず手にしてみせる。さあ、どこからでもかかってこい!」
「……こうなったら、頼むぞブースター」
ダルマはキュウコンを収め、ブースターに交代。晴れているせいか、ブースターは口から火を漏らしている。
「はん、性懲りもなく特殊アタッカーで来たか。ダルマ、敗れたり!」
「それはどうかな。馬鹿力で決めろ!」
ブースターは急加速してラッキーに接近した。それからラッキーの頭上にジャンプ。そして4本の足でラッキーを蹴りつける。攻撃を終えたブースターはダルマの元へ撤収した。ラッキーは気丈に振る舞おうとしたが、万事休す。目を渦巻きにして仰向けで倒れた。
「ラッキー戦闘不能、ブースターの勝ち! よって勝者、ダルマ選手!」
審判が決着のジャッジを下した。ダルマは飛び上がって叫んだ。他方、ドーゲンはその場にしゃがみこむ。
「よし、5回戦突破!」
「ぬ、ぬうう……俺のポケモンリーグもここまでか。30年越しの悲願には届かずじまい。まあ、ある意味俺らしいな、ははははは!」
ドーゲンは腹の底から笑った。それに共鳴するかのように、スタジアム中から万雷の拍手が鳴り響いてきた。
「これは、観客席からスタンディングオベーションの嵐が巻き起こりました! スタジアムが親子の健闘を称えています。私も、不覚にも目から汗が……」
実況は徐々に鼻声になり、実況にならなくなった。鳴り止まない拍手の中、ダルマはドーゲンに近寄った。
「父さんお疲れ。まさかここまで強いとは思わなかったよ」
「お前もな。よもやこの短期間で俺を超えていくとは、あっぱれだ。……俺はお前が旅に出ると決めた時、『野心が途中でなくなる』とからかった。だがお前はあらゆる困難に打ち勝ち、遂にポケモンリーグの頂点を目指せる位置にまでいる。大したものよ」
「父さん……」
ダルマは息を呑んだ。ドーゲンは立ち上がりダルマの瞳を注視する。
「ここまで来たら、俺に言えるのはただ1つ。戦えダルマ。戦って戦って戦いぬいて、その先に何が待っていようと、決して諦めるな! 諦めないその心が、最大の武器になるのだからな。……以上、俺は家に帰るぞ。仕事が入ったからな。優勝したら一緒に飯でも食おう」
ドーゲンはそう言い残すと、ダルマの返事も聞かずにスタジアムを後にした。父を見送ったダルマに、陽光と拍手がいつまでも降り注ぐのであった。
・次回予告
ポケモンリーグに残るトレーナーは、あと8人。その中にダルマもいる。5回戦を勝ち抜いてきた彼に立ちはだかるのは、予想だにしない人物であった。次回、第80話「ポケモンリーグ6回戦第1試合前編」。ダルマの明日はどっちだっ。
・あつあ通信vol.60
非常に今更ではありますが、当連載のおすすめの見かたを紹介。それは、BGMを流しながら読むことです。今なら話の流れ上、熱い戦闘曲をニコニコ辺りで再生しながら読めば、臨場感は3割増し(当社比)に。是非ご活用ください。
今回ドーゲンさんが使ったラッキー、グライオン、エアームドの組み合わせを俗にラキグライムドと呼びます。早い話が、受けループに持ち込みステルスロックや毒々でダメージを稼ぐのが狙いです。スイクンやクレセリアがいればより安定しそうですが、伝説ポケモンを出すのはあれなのでこのように。対策はパルシェンやゴウカザル、マジックミラーやマジックガードくらいでしょうか。
ダメージ計算はレベル50、6V、カモネギ@飛行ジュエル陽気攻撃素早振り、グライオン@どくどくだまわんぱくHP防御振り、ブースター意地っ張り攻撃素早振り。カモネギのジュエルアクロバットでとどめ。カモネギはステルスロック込みでグライオンの燕返しが確定2発。キュウコンの大文字とカモネギの与えたダメージでグライオンは乱数。ブースターの馬鹿力で大文字2発受けたラッキーを確実に倒します。
しかし、そろそろポケモンリーグも終盤。ダルマの相手を予想できるのもあと3回。次回は誰と勝負するのかしら。
あつあ通信vol.60、編者あつあつおでん
イベント当日。学校に行く日と同じ時刻に起きた。
学校のそばが会場なので、この時刻に起きるのは当然と言えば当然だ。
とはいえ日曜日なのにこんな早くから起きるのは気にくわないのだが、二度寝をしてしまわないうちに芋虫のようにベッドから這い出る。
地元のJRの駅の改札で待ち合わせをしていた。駅の側のコンビニでお茶のペットボトルを買い、一人先に待つ。
待ち合わせの時間は七時十分。もう八分なのに二人が来る気配が一切感じられない。
いわゆる時間にルーズというものが信じられないタチなのでだいたい十分前に集合場所に来るのがモットーなのだがいかんせん他の二人は遅すぎる。
携帯をいじいじしてるとようやく由香里がやって来た。十七分になってからだった。
黄文字で雑多に書かれた英語をプリントしたピンクの長袖のシャツと、白のプリーツスカートで現れた由香里は着くや否や肩で息をする。
「間に合った?」
「全然間に合ってへんわ」
これだけ待たして何を抜かす。仕方ないのでペットボトルを渡してやると、ありがとうと一言言ってからガブガブ飲み始める。一口のつもりがこの野郎。
さて、問題はあと一人だが―――。
「ちょっとタカに電話してくる」
由香里も遅刻癖があるが、特別タカは時間にルーズ過ぎる。
ルーズというかただ単に朝が弱いというか、七割近く寝坊してるだろう。
しつこく電話をかけて四回目でようやく繋がった。
今もう出るとこだ、とタカは言っていたが今もう起きたとこだの間違いだ。声が寝惚けている。しっかりしなさい。そんなことを言っても何もならないので通話を切る。
あと二十分待ちか……。このとき既に時刻は七時二十分を越えようとしていた。
京都駅に着いたのは九時になってからだった。
由香里とタカの遅刻者二名に加え、人身事故で電車が遅れたため更に予定が狂っていく。集合時間を早めに設定していて本当に良かった。
「いつも八条西口から学校に向かって行ってるけど、今日は反対(こっち)側からやねんな」
「会場にはバスで行かなあかんからな。アホみたいにバス停多いこっちから行かな」
梅田のバス地獄で経験済みだが、バスが大量にある場所ではどのバスがどこにつながるか確認しなければならない。特に三人ともあまりバスを使わないタイプなのでこの作業は困難だった。
バスの路線図がびっしり書かれている大きなボードの前に立ち、目的のバスはどれかと探していると、背後の人とぶつかった。
「あっ、すいません」
そう言って、左に体を動かした。
ぶつかった男も申し訳ないように軽く会釈する。
少し太った体型と、大きな黒縁眼鏡。なのに坊主頭な地蔵を思わせるその男と目があったが、意外と愛嬌のある顔だった。
後から「はよせー!」と、由香里の怒号が飛びかかり、我に帰る。いやいやお前も手伝え。
ようやく目的のバスを見つけると、今にも発車しそうなそれに俺達三人は駆け込んだ。
ようやく着いた。
会場のあるショッピングモールは、中に入ればここが会場だよという甘いものではない。むしろ会場を探すのはここからだ。
アホみたいに広いショッピングモールの一角にある会場を自分達で探さなければいけない。地図はあれどもそこまでが遠い。
割りと人見知りな俺とタカは、由香里に職員に会場がどこか尋ねる仕事を押し付けてようやく会場にたどり着く。
バトルチャレンジ会場。既に熱い対戦があちこちで始まっていた。
ちびっこ共がゲームで、その隣のスペースでは大きいお友だちがカードで戦いを繰り広げている。
ちなみにグッズ売り場もあり、カードや各種グッズが売ってある。
「んじゃ行ってくるわ」
「おう」
俺と由香里は目的の違うタカとは別れ、カードコーナーへ。
用紙(正式名はバトルシート?)を受け取り、列に並ぶ。
カードをする机には数が限られているので、溢れた人らは机が開くまで、係員の指示に従って並ぶのが一般的。今回もそうだ。だいたいこの時間がすごく退屈。
列から目を凝らせば、少しばかし対戦の様子が伺える。
デッキシールドが東方、しかもその相手は恋姫無双、いわゆるキャラスリーブかよ。分かる自分もアレやけど、回りのテーブルを見たら他にもいろいろあるのにポケモンスリーブが少なすぎる。
ちなみに俺のデッキシールドはアルセウスが書かれた暗い青色のものである。逆に浮きそう。
「ボサッとすんな」
急に体を引っ張られる。
列が進んだから、お前も前に来い、と前にいる由香里に引っ張られた。申し訳ない。
ところで今の列は、俺の前には由香里とおっさん(に見えるだけで実際は若いかも)が一人いるだけなので、テーブルが二つ開けば出番だ。いつでも戦えるようにデッキケースからデッキを出しておく。
そんなことをしていると、由香里とその前の人が机につき、そして俺の番が回って来て俺も席につく。
子供の付き添いで来ました風のパパさんプレイヤーが相手だったため、大人気なくスタン(スタンダードデッキの略)にも関わらず速攻を決めて倒してしまった。
まずは一勝。このイベントでは勝てば勝つほどプロモカードがもらえる。
プロモカードはごく一部を覗いて扱い辛いカードだが、コレクター的には希少価値はある。
スタッフからカードをもらって机に構える。
そして続けてやってきた人にも圧勝し、勝利のメダル(プロモカードの名前)をもらって最後の挑戦者を待つ。
そうして俺の前に座ったのは、京都駅のバス停で会った地蔵のような人だった。
「よろしくお願いします」
デッキを互いにシャッフルして手札のポケモンを伏せ、最後にサイドを並べる。
最初のポケモンは俺がゴウカザル四90/90。相手はペラップ60/60でベンチにラルトス60/60。
先攻を決めるじゃんけんで負けた俺は後攻からのスタートだ。
啓史「今日のキーカードはゴウカザル四。
四っていうのは四天王の四って意味な。
レベルアップしてからがこいつの本領発揮やで」
ゴウカザル四[してんのう]Lv.55 HP90 炎 (DPt)
炎無 ばくれつだん
相手のポケモン2匹に、それぞれ20ダメージ。
炎無無 とびひざげり 50
弱点 水×2 抵抗力 ― にげる 1
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