ゴ―スを洗濯しゴーストとのデートを断りゲンガ―と菓子作りにいそしむ毎日。充実してるなー。いろんな意味で。
バイトも順調。貯金も堅実。あー、平和だ―。
そんな平和な日常、いきなり波乱万丈なことが・・
・・起こるわけないじゃない。
チョロネコヤマトから正式な社員にならないかとオファーがあってウキウキしながら帰宅したら、ゴ―スどもが裁判をしていた。
被告席に一匹バツの悪そうな顔をした奴。傍聴席に大量のゴ―スども。裁判官ところに偉そうにゲンガーがふんぞり返り、検事のいる場所にゴーストが神妙な顔でふわふわしている。
・・つーかお前ら、食堂の机と椅子の配置勝手に変えてんじゃねぇ。
って、おいゲンガ―、お前持ってるトンカチどっから持ってきた!?危ないから叩くなよ、ちょ、まじで!
あ、被告人・・被告ポケ?がしゃべりだした。尋問かなんかですか?
弁護人のやつが机を叩いた。『異議あり!』ってか?ちょいちょい、世界違うだろ。
なにこれ。見物するのは面白いんだけどお前らが何しゃべってんのかは分かんないから。誰か通訳プリーズ。おい、そこ。今の状況報告よこせ。
・・相も変わらず悪筆だな。まぁ、ゴ―スがペン系をあつかえるようになっただけマシか・・。
えーと・・、『かノジョがいるやツはかさみぐがまけグみか』・・。彼女がいる奴はかさみぐ・・勝ち組?か負け組か。さとちが反対だぞ。
またわけのわからんことしてるな。彼女いるいないの前にお前らの間にカップルという概念があるのか?え、あるの?・・あ、そう。
別に勝ち組とか負け組とか関係ないだろうが。幸せならそれで良いだろ?こっちは別に彼氏いないけど毎日楽しいぞ?
ていうか、お前ら身内でカップルとかいないの?いるだろ。何匹かいちゃいちゃしてるの見たことあるし。ゲンガ―なんか意中の人いるっぽいしな。
・・・え?それもあるけど別の問題?じゃあ何よ。
ゴ―スどもがひょいと傍聴席の一角を見る。つられてそちらに視線をやると。
ムウマがいました。
おめめぱっちり。ちょっと小さめ。どことなくふわふわ。人間から見ても、あらかわいい(←おばさん風味)。
・・ちょい待て、すんませんあれ誰の彼女ですか。つーか家に彼女連れ込むとはいい度胸してんな、おい。
なるほど、ゴ―スどものイライラ空気の原因はこれか。あれだけかわいい子連れてきたらそりゃあみんなこうなるわな。
・・こっちむいた。あの、そんな興味深そうな目でこっち見ないでくれるかな?
ん、こっち来た。おいお前らそんな目で見るな!向こうからこっちに来てるんだよ!
この子・・筆談できない・・よな。そりゃあ。おーい、誰か通訳・・。うわっ、押し合いへしあいの大バトル勃発した。そんなにこの子とお近づきになりたいのか。つーか、この子彼氏いるんじゃなかったっけ。
しかもさりげなくそいつらを尻目にささっとゴーストがやってきた。悪知恵働くなー・・と思ったら、抜け駆け許さんとばかりに他の奴が襲ってぼこぼこにし始めた。お前ら、必死だな、おい。
やれやれ・・。そこの被告人席の彼氏君、こんな不毛な争いはほっといて私の部屋で話を聞こうじゃない。
以下、彼氏彼女の事情(ポケモン編)
たまたま散歩中にばったり会ったのがきっかけで仲良くなったけど、どうに友達以上だけど恋人としては見られていないと感じていたゴ―ス。
それが、どうも私が洗濯して脱水して柔軟剤使っておまけにスチームクリーナー使った後にドライヤーかけてやってこぎれい小ざっぱりになったら、彼女の方から告白されたらしい。
ひゅーひゅー。お前みたいな幸せ者は精々ぼこぼこにされとけ。
・・冗談だよ。そんな悲しそうな眼をするな。案外へたれかお前は。・・いや、ここにいるゴ―スども結構本気だから笑えないか。
んで、彼女も綺麗になりたいなーとどうやって綺麗になったのかゴ―スを問い詰めてこっちまでついてきちゃったらしい。
ふんふん、でもなんで綺麗になりたいの。十分かわいいじゃない。
・・え?もっとかわいくなりたい?そんでかわいいねって言われたい?うーん、乙女だねー。おいこらゴ―ス、十分かわいいよってそこで言うな。のろけてんじゃねぇ。
しかし・・ムウマを洗濯するわけにはいかないしな・・。ゴ―スはガスだから問題ないけど・・。いやあるかもしんないけど。ムウマは・・自慢の髪がボロボロになってもあれだし。
ごめんねー。出来ると言ったら銭湯で洗ってドライヤーするくらいかな。
あぁ、がっかりしないで、ね?今度洗ったげるからさ。その時にね。
・・そろそろ帰る?そっか、気を付けてねー。ほら彼氏、送って行かんかい。
窓から二匹を送り出したのと同時に、部屋にバトルの勝者と思われるボロボロのゴ―スが何匹か入ってきた。残念、手遅れです。
・・そんな恨めしそうな目で見るなって。お前らにもきっと春は来るからさ。多分。
数日後、午前で配達が終ったからお先に帰りまーすって挨拶して勝手口から出たら、ムウマがふわふわ浮いていた。
ありゃ、あんたこの間の?こくこくうなずく。なんかあったか?喧嘩でもしたか?首をぶんぶん振る。じゃあ何だ?あ、ちょ、どこ行くの。待ってってば。
追いかけると街のちょっと賑やかな通りに出た。そう言えばここには雑貨店がたくさんあるんだよなー。・・あ、いた。
こちらの目の高さに合わせる様にふわふわしている。昼間なもんだからちょっと眠たそうな眼をしているけど、大丈夫か?え、そう?無理するなよ。
通訳がいないのでムウマの表情から言いたいことを汲み取るしかない。何か食べたいの?違う。洗濯?違う。買い物?・・え、そうなの?
一緒に買い物してくれと。女の子だねー。
まぁ、ウィンドーショッピングもたまには良いでしょ。おっけー、つきあったげよう。・・そんな笑顔、ゴ―スどもが見たら全員無条件でメロメロにかかるぞ。
思ったけどお金持ってる・・わけないよね。はいはい、ちょっとしたものならおごったげますよ。ちょっとしたものよ、高いものは駄目よ!
・・人の話聞かずにまっすぐ宝石店に飛んでいったな。まぁ、光物は女の子の憧れだからね。
どれどれ?やっぱり赤いのが好きなの?そうでもないか。まぁ、いっつも同じだと変わり映えしないしねぇ。
・・うん、ごめん。そんなキラキラした目で見られても、さすがにそれは無理かな・・。ン十万円するようなものは・・。
がっかりされても無理なモノは無理だし・・ね?あ、分かってくれた。
とある雑貨店の店内で、どうやら髪ゴムが欲しいらしく、あれこれ眺めまわっている。うーん、その様子だけ見ると年頃の女の子と変わらないね、ポケモンも。
ありゃ、うまくまとめられないみたい。やったげるよ?はいはい、動かないでねー。
・・・。
悩殺級ポニーテール完成。ムウマのポニーテールってこんなに可愛いのね。あ、はずさないで。めちゃくちゃかわいいから。写真撮りたい。カメラないけど。それ以前にゴーストタイプってうまく写るのかな・・。
自分でも気に入ったぽいね。よーし、そのシュシュ買ったげよう。
家に帰るころにはすっかり日が傾いてしまった。ムウマは堪能したらしく、すっかりご機嫌である。買ったげたのはシュシュだけだけどね。
ポニーテール気にったみたいであれからずっとつけっぱなし。うーん、本当に可愛いぞ。くそ、ゴ―スうらやましいなおい!
ほらほら、うちのゴ―スに見つかる前に早くおうちに帰りな。今度のデートの時までその髪型は秘密にしとけよー。おめかしはとっとくもんだ。
うん?なに?すり寄ってきた。よしよし。頭なでてやろう。ほんとにかわいいなー。・・何回これ連発した?まぁ、いいか。
夕暮れの中、ポニーテールを揺らしながらムウマはふわふわ帰って行った。
数日後。彼氏ゴ―スは毎日のようにぼこぼこにされていた。
助けを求めるようにこっちを見てくるがあえて無視。
「幸せ者め」