「今日もありがとうございます」
「なあに、お安い御用ですよ。もっとも、部員達はどう思っているか知りませんが」
4月24日の土曜日、昼。今日はサファリパークでボランティアをした。これを始めて半年は経ち、今では園内の仕事を手伝うことも増えてきた。現在は休憩中。部員達は俺達の目が届く範囲で弁当を食べている。この後は実戦訓練だ。
しかし、バオバ園長もしっかりしてるな。俺の言葉にこう返してきた。
「それでも結構ですよ。最近では『若者のボランティアを受け入れている』と評判で、教育のモデルケースとして扱われているのです。おかげでここもますます繁盛しています。あ、もちろん皆さんのことは伏せていますよ。こう見えて顔が利きますから」
「なるほど、確かに人が増えている。ですが、それは別の要因もあるでしょう」
俺は辺りを見回した。園内東側はサファリパーク、ポケモンが潜んでいる場所だ。こちらにも人が来るのだが、近頃では西側がごった返すようになっている。そこには苗や鉢植えが満載だ。
「……さすがに鋭い。ボールの投げ方といい、人並みならぬ力を感じますね。予想通り、事業繁栄は1つの要因だけではありえません。3月から始めた農園が好調なのですよ」
「やはり。どうも敷地が広がっていると思ったぜ」
俺はうなずいた。以前も草刈りやらをボランティアと称してやっていたが、農地に使うとは意外だったな。いや、サファリパークのことを考えたら自然か? どちらも、人工的な自然という点で一致している。バオバ園長は続ける。
「近郊の住民はもとより、カントーからの栽培委託もしているのですが、『自分で作ったものを食べられる』と好評なのですよ」
「自分で作った、ねえ……」
俺は皮肉まじりにつぶやいた。人に作るのを頼んで「自分で作った」とは傲慢ここに極まれりだな、自分で植え付けた奴はまだしも。しかしそうだな、丁度良い。ここに保険をかけるのも悪くないな。
「ところで、俺もいくらか場所を借りて植え付けをしたいのですが、構わないですか? 今回は俺個人の頼みなんだ」
「ほう、テンサイ様直々の申し込みですか。もちろん大歓迎ですよ。区画と期間で料金が異なりますので、まずはそちらのご説明からしましょう」
「ええ、よろしくお願いします」
こうして、俺とバオバ園長の交渉が始まるのであった。……ふむふむ、これは良い条件だな。
・次回予告
雨の日ってのは嫌いじゃない。昔の記憶を洗い流してくれるからだ。しかしこういうことは一向にお断りだな。次回、第46話「相合傘はよそでやれ」。俺の明日は俺が決める。
・あつあ通信vol.110
自然自然と言いますが、自然って代物は定義が難しいです。人工的に杉を植えまくった山を自然と言えるのか、ビルにツタを垂らしたら自然と言えるのか。それらはおそらく、コンクリートを植物に置き換えただけの人工的なものなのだと思うのです。皆さんの考えはどうですか。
あつあ通信vol.110、編者あつあつおでん