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ミルホッグのキョロは、結構のんき。バトル中にピンチに陥っても、ボロボロになりながら平然としてるから
、逆にわたしがキズぐすりを片手にオロオロしちゃうこともある。それでよくその辺をキョロキョロしてるから
、キョロ。
あと、これはオスだからか、街の外で休んでる時に、物をその辺にポイポイ投げるのが困りもの。
街の外にはいっぱいポケモンが住んでるんだから、散らかしたらダメだよ。って言うんだけど、なかなかこの
癖は直らない。今日もポイポイものをその辺に散らかしている。どうもわたしが持たせている道具とはまた別に
、いろんなものを毛皮の中に隠してるみたい。
キョロなりの宝物なのか、休んでいる時にそういうものを取り出しては眺めている。
それはビー玉だったり、何の変哲もない石だったり、さびたどこかのカギだったりするけど、なんとなく大事
にしてるのもわかるかなーって気もする。
その宝物の山の中に、わたしは見覚えのある物をみつけた。オレンジと黄色のストライプも、見るからに甘く
ておいしそうな缶。
ミックスオレの入っていた缶。
「キョロ、まだこれとっておいてたんだ」
「ギュギュ……ホグー」
あ、そっぽ向かれちゃった。もう結構仲良くなれたと思ったんだけどなあ。
「これって なあに?」のミルホッくんみたいに、言ってることがわかればいいのになあとときどき思う。
○
キョロとは、ザンギ牧場のちかくにある、20ばんどうろで出会った。わたしは、ちっちゃいころからネズミ
ポケモンが好き。だからルリたまも仲間にしたし、ミネズミだったキョロも仲間にした。
でも……ミネズミには、ちょっと気まずくなっちゃう思い出がある。だから、わたしがミネズミのキョロを仲
間にした時最初に言ったのは、よろしくね、でもはじめましてでもなくて、
「あの時はゴメンね!」
という、ゴメンなさいの言葉だった。なんのことだかわからないキョロは周りをキョロキョロするばかりだっ
たけど。
わたしはむかし、ミネズミをいじめちゃったことがある。と言うと、元プラズマ団の人に怒られそうなんだけ
ど、わたしとしてはいじめるつもりはなかった。
ただ、ヒオウギの町の中に迷って入ってきたミネズミが、すっごくかわいくて、一緒に遊ぼうと思って、追い
かけ回しちゃったの。そのミネズミは、もちろん野生だったから、ちっちゃい頃のわたしが追っかけ回してくる
のが怖かったんだと思う。
行きなり逃げるのをやめたと思ったら、あのするどそうな歯を、わたしに向けてきた。びっくりしたわたしは
どうすることもできなくて、ただ体が固まっちゃって、あと少しで噛まれちゃう、ってところで、ヒュウちゃん
が割って入って代わりに噛まれちゃった。
わたしはミネズミがヒュウちゃんを噛んで逃げちゃったことと、ヒュウちゃんがわたしのせいでケガしちゃっ
たのとで、悲しくてボロボロ泣くばっかりで、あの時のわたしって本当にバカだったんだなあって思う。今もバ
カってたまにヒュウちゃんに言われるけど。ともかく、そういうことがあったから、わたしはキョロに反射的に
ゴメンねって言っちゃったんだ。
もちろんあの時のミネズミとキョロは別の子だってことは、わたしにもわかってた。でも同じミネズミである
キョロを見ていると、勝手に言葉が出てきちゃったの。
それからわたしは、いつもミネズミだったキョロのことを注意して見てた気がする。のんきな性分が変な方向
に行っちゃってるのか、キズだらけになってもボケっとしてるのが、なんだかわたしよりも危なっかしくて。
その日のキョロの回復のお薬が、少しおそい仲間になったお祝いも兼ねたミックスオレだったっていう、ただ
それだけのお話。
「なつかしいね。いろんなことがあったから、ずっと前のことみたい」
「ギュウウウウ……」
Nさんじゃないから、ポケモンの言葉を理解するのはムリだけど。
今のキョロの気持ちはなんとなくわかった。
恥ずかしかったんだ。