昔々、世界のどこかにあるというカントー地方に、鳥ポケモンがたくさん暮らす森がありました。いつでもひざしがさしこみ、おいしい水がながれているこの森は、それはそれはにぎやかだったそうです。これは、その森にすむ、1匹のポケモンのお話。
「お、そこにいるのは……アッカ先輩じゃないっすかww」
「う、なんだよドードリオ」
ある日のおひるさがり、ドードリオ(31)とカモネギのアッカ(24)がばったり出会いました。アッカはドードリオの先輩でしたが、後輩より弱かったのです。
「この前はこだわりスカーフ持ってても僕より遅かったっすけど、少しは速くなったっすかw?」
「それが……僕は弱いから、勝てずに経験値がたまらず、レベルアップできないんだ」
「そうっすかそうっすか、まあそんなことだろうと思ったっすけどねww」
いつもはけんかばかりしているドードリオの3つの頭は、この時ばかりと揃って笑いころげます。このように、ドードリオはいつもアッカのことを笑っていたのです。
そんな時、どこからともなく立派な鳥ポケモンがやってきました。この森をしきっている1匹のムクホーク(55)です。彼はアッカと同い年でした。
「あ!先輩、どーも僕です」
「アッカにドードリオか。またアッカをおちょくっていたのか?」
「まさか!親愛なるアッカ先輩にそんな失礼なこと……」
ドードリオは思わずツボをつつきました。知らず知らずに動きが速くなりました。
「まあいい。アッカ、お前に話があるんだが」
「話?いったいなんだい改まって」
「それがな、湖にいるスワンナに聞いたのだが……イッシュ地方というところに、『しんかのきせき』と呼ばれる石があるらしい」
「しんかのきせき?初めて聞く名前だね」
アッカは首をかしげながら、目をキラキラさせました。カモネギというポケモンはかれこれ15年ほど前に見つかったのですが、いまだにしんかの兆しすらなかったのです。そんな彼にとって、「しんか」の響きはとても素敵なものでした。
「どうやらそいつは、『しんかしていないポケモンの力を引き出す』ものみたいだ。お前はまだしんかしていないし、おあつらえ向きだろ?」
「確かに……そんなものが手にはいれば、まちがいなく強くなれるね」
「だろ?ものは試しというわけで、イッシュ地方まで行ってみたらどうだ?」
ムクホークのことばに、アッカはなみだをながして答えました。
「ありがとうムクホーク!僕のためにそんなすごい話を教えてくれるなんて。じゃあ僕、さっそく行ってみるよ!」
「ああ、きをつけて行けよ」
ムクホークがおわかれを言うと、アッカはすぐさま森をでていきました。
「先輩、いいんですか?アッカ先輩なんかにそんなこと教えて」
「だいじょうぶだ、もんだいない。しんかのきせきは『しんかしないポケモン』には意味がない。それに、もうすぐ『鳥ポケモン・タイプ対抗大会』がある。我々ノーマル・ひこう組にあのようなやつがいては困るからな」
「なるほど、そりゃ名案っすね!」
ポケモンの後ろにある数字はレベルです。ドードリオは31で進化するから(31)としているのです。指摘があったので追記しときます。