「フワンテおかえりー!」 「ふっゆゆーん!」 今日の朝は、珍しく風車が動いていた。風が強い日には、フワンテは小さな旅をして、数日後には帰ってくる。だから、そろそろ帰ってくるんじゃないかなぁって思ってたんだ。さっきまではシャンデラも一緒に待ってたんだけど、お父さんが明かりがほしいって言って連れて行ってしまった。あとでシャンデラに会いに行かなくっちゃ……ね? でも、今日はフワンテだけじゃなかった。フワンテのまわりに黒いふわふわが5つ、くっついている。なんだろう、アレ。フワンテがだんだんこっちに近づいてくると、ようやく私にもその正体がわかった。私だって、カントーのポケモンくらいなら百科事典見なくてもわかる。アレは確か……ゴース。フワンテと同じゴーストポケモンのゴースだ。 「フワンテおかえりっ!」 私は宙にういているフワンテの手を引っ張って、フワンテを自分に引き寄せた。大切なお人形を抱きしめるようにぎゅっとすると、フワンテは私の胸でぷわわーと鳴いた。 「ねぇフワンテ。このゴースたちはフワンテのお友だち?」 私がそう聞くと、フワンテはこくこくと頷き、ゴースたちはにこにこした。へぇ……ランプラー吊ってきたことはあったけど、お友だちを連れてくるなんて初めてだ。 私はフワンテを腕から解放し、ゴースを呼んでみた。すると、1匹のゴースがふわふわとこっちにやってきた。私がゴースをぎゅっとしながらなでると、まわりのゴースが驚いたようにざわざわし始めた。 「きゅきゅいきゅきゅい!」 「ふゆーん?」 「きゅ……きゅきゅうい!」 フワンテとゴースがおしゃべりしてる……?と思ったら、フワンテが急に家の中に入っていってしまった。それを追いかけて家の中に入ると、フワンテは私が小さい頃に使っていた五十音順ひらがな表と、30センチものさしを出していた。たたんであったひらがな表を器用に広げ、ものさしを手に持ったフワンテは、またゴースとしゃべり始めた。 「ふゆ?」 「きゅ、きゅきゅい、きゅきゅっきゅ。」 それを聞いて頷いたフワンテは、ものさしで文字を指し始めた。
おれらに さわれた にんげん はじめて
おぉっ。話が通じる。新しい意思の疎通方法だ。フワンテいつこんなの覚えたの?
ごーすと に おしえて もらった
ほうほう、ゴーストってゴースの進化系よね。ゴースの友だち?え?一緒に住んでる?へぇ、そうなんだ。
いっしょに すんでる おんな も すごい けど おまえ も すごい
えっあっ……ありがとう。何がすごいのかさっぱりわからないけどありがとう。 腕の中でゴースがすごくにこにこしてる。そっか、この子たちは人間のぬくもりを知らないんだ。一緒に住んで、一緒に笑って……そういうぬくもりを感じることはできても、人間のからだのぬくもりは知らないんだ。だから、からだがこんなにも冷たいのかもしれない。 「いつでも遊びにおいで。」 「きゅい!」 「私も、いつかゴースの住んでる家に行ってみたいなぁ。ねぇ、フワンテ。フワライドに進化したら、私も連れて行ってくれる?」 「ふゆーん♪」 「約束ね?」 その後ゴースは、牧場でめいっぱい遊んで、私に洗われて帰っていった。
『いっしょに すんでる おんな も すごい けど おまえ も すごい』
いつか、その女の子に会ってみたいなぁ……なんて思いながら、私はフワンテと一緒にゴースたちを見送った。
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