「ふわーあ、眠い眠い」
「ダルマ様、昨日は遅くまで起きていたようですが、大丈夫ですか?」
「うん、大丈いてっ」
ここはくらやみの洞穴。一寸先は闇という言葉が見事にマッチするこの洞窟は、整備がほとんどなされていない天然の迷路だ。それゆえ明かりなど望むべくもなく、利用者は数えるほどもいない。そのような道で、フスベシティを出発した一同はキキョウシティを目指して歩を進めていた。そんな中、ダルマとユミは小声で会話をしている。
「ほら、やっぱり疲れているようですわ」
「……どうやらそうみたいだ。けど、少しでも速くキキョウシティに到着しないと」
「それはそうですが……。発電所がこちらの管理下にある今、幾分は有利になったわけですから。休憩はちゃんととってくださいね」
「そうするよ。にしても、全員で歩くと狭いなここは」
ダルマは壁に触れながら進む。進軍における安全確保の理由から光源は一切使用されておらず、セキエイ陣営は文字通り手探りで歩く。ダルマの付近にいるのはユミ、ドーゲン、ジョバンニ、ワタル、ボルト、ハンサム、カラシだが、驚くことにこれで全員である。また、暗がりに話し声とポケモンの鳴き声がこだまする。
「仕方ないだろう。この人数を分散させたら各個撃破されるのは、火を見るより明らかだからな。フスベのトレーナーも町の防衛に必要である。交換システムを停止したとはいえ、強襲の可能性はある」
「ハンサムさん。……前々から思ったのですが、ハンサムさんは何か得意なものはないんですか? 訓練中もあまりバトルが強そうには感じられませんでしたけど」
話に割り込んできたハンサムに対し、ダルマはふと質問を投げかけた。するとハンサムは不敵な笑みを浮かべながら答えた。
「良い質問だ。私の得意技はずばり、変装だ」
「へ、変装?」
「その通り。人の姿をそっくりそのまま借りられるのだ。人だけではなく、岩に擬態したこともある。いずれもばれた試しはない」
「岩……まるで学芸会の木みたいですわね」
ユミの一言は彼にクリーンヒットしたこともようだ。ハンサムは苦笑いをしながら話題を変えた。
「そ、そうそう。この辺りはジョウト地方でも進化の石が豊富な場所らしいな。開拓はあまり進んでないようだが」
「進化の石って、イーブイの進化なんかに使うあれですか?」
「うむ。ほれ、君達の足元にあるじゃないか」
ハンサムは地面を指差した。ダルマとユミは目を凝らして観察してみると、彩り豊かな石が点在することに気付いた。
「こ、これが全部そうなんですか?」
「おそらく。君達は石で進化するポケモンを持っていたな。ダルマ君はイーブイとヒマナッツ、ユミ君はイーブイ。せっかくだから失敬したらどうだい? 誰もケチをつけることはないだろうし、戦力の充実にもなるからね」
「……それもそうですね。では頂きますか」
「私もお言葉に甘えて失礼します」
ダルマとユミは腰をかがめ、手元にあった石を抜いたり別の石で折ったりした。ダルマの収穫は炎の石2個と太陽の石1個、ユミは水の石1個である。
「進化の石かあ……こういうのも人の手で作れればいいんだけどなあ、ふわーあ」
ダルマは大あくびをして口を手で押さえた。それから伸びをすると、元気に出口を目指すのであった。
・次回予告
キキョウシティまでたどり着いたダルマ達は解放作戦を決行する。ダルマの任務はマダツボミの塔の攻略となり、意気込むのだが……。次回、第47話「キキョウシティ解放作戦前編」。ダルマの明日はどっちだっ。
・あつあ通信vol.27
実はゴロウには「ゲットの際にボールを投げるのが壊滅的にノーコンで、2匹目が中々手に入らない」という裏設定があります。現実の世界にポケモンがいたら、このようなトレーナーは必ずいると思われます。例えば私とか。逆にサトシやらのアニメキャラはコントロール良すぎです。やはりスーパーマサラ人は格が違う。
あつあ通信vol.27、編者あつあつおでん