「ポケモンリーグも7日目に突入しました。現在32人のトレーナーが勝ち残っています。今日から4回戦を2日で行い、1日の休みが入ります。それ以降最大6匹使える5回戦へと続きます。果たして後半戦へ進むことができるのは誰でしょう。では4回戦第1試合、選手入場!」
本日もダルマの1日はスタジアムへの入場から始まった。トーナメント表をチェックし、対戦相手が誰なのか確かめる。そしてルーチンが終わったら驚くのが常だ。
「ジョバンニさん! 思った以上に残りましたね」
「4回戦はダルマ君ですかー。……トウサに勝った君と勝負するなんて、何か縁がありそうですねー」
ダルマと対峙するのはジョバンニであった。今日も背広姿で高速スピンをしている。ダルマはまずこう述べた。
「あの時は助かりました。トウサさんの過去を知らなければ、今回の事件はいつか忘れたでしょう。尊敬する人の真相に近づけた……それだけでも旅をした甲斐がありましたよ。もちろん、ポケモンリーグも大事ですけどね」
「ほー、嬉しいことを言ってくれますねー。しかし、私もかつては旋風を巻き起こした身。手加減なしでいくので覚悟してくださーい」
「望むところですよ!」
ダルマは腕まくりをした。既に右手にはボールが握られている。頃合いと判断した審判は試合開始を宣告した。
「これより、ポケモンリーグ本選4回戦第1試合を始めます。対戦者はダルマ、ジョバンニ。使用ポケモンは3匹。以上、始め!」
「行け、ブースター!」
「ナッシー、出番でーす」
両者最初のポケモンを繰り出した。ダルマの先発は何やらもふもふした赤いポケモン。対するジョバンニの1匹目は頭が3つあるポケモンである。
「さあ4回戦が始まりました。ダルマ選手はブースター、ジョバンニ選手はナッシー。ジョバンニ選手は20年前の大会で準優勝している実力者、ダルマ選手との勝負は今大会屈指の好カードとなっています」
「ブースターですかー。進化させたということですねー?」
「ええ、昨日。ジョバンニさんはナッシーからか」
ダルマは図鑑を取り出した。ナッシーはタマタマの進化形で、弱点の数が7個もある。もっとも耐性も6個あるので、強い弱いがはっきりしている。特性のようりょくそを活かして晴れパーティで使うと活躍が期待できるだろう。
「ナッシーを倒した後も考えると、あの技かな。まずはニトロチャージだ!」
「甘いでーす、トリックルーム!」
バトルの歯車が回りだした。先手を取ったブースターは全身に炎をまとい突進した。これをナッシーの頭の1つは冷静な顔で耐え、頭の葉っぱを揺らした。すると驚くべきことに、スタジアム全体が歪んで見えるではないか。明らかに妙な状態に、ダルマは辺りを見回す。
「な、なんだこれ?」
「これはどういうことでしょう! 歪んでいます……おかしい……何かが……スタジアムの……」
「ほっほっほっ、トリックルームを使うと遅いポケモンから動けるのでーす。ではナッシー、だいばくはついきましょー!」
観客席がざわめく中、ジョバンニは調子が上がってきたみたいだ。回転しながらナッシーに指示を送ると、ナッシーはいきなり爆発した。頭は飛び散り葉っぱは宙を舞い、胴体は破裂する。会場全体を煙が包み、爆風はブースターにも襲いかかった。
「な、なんだってー!」
「どぅわぁいぶぁくはつが決まったー!」
ダルマは吹き飛ばされないよう、目を閉じ前屈みで耐えた。やがて煙が晴れて目を開けると、気絶したブースターとナッシーがいた。審判が落ち着いてジャッジを下す。
「……ナッシー、ブースター、共に戦闘不能!」
「な、なんてこったい。予想外すぎる……」
「バトルはナッシーのだいばくはつで状況が一変、2対2となりました! これがこの先の勝負にどのような影響を与えるのでしょうか!」
ダルマはブースターをボールに戻しながら必死に次の手を考える。それを尻目にジョバンニは不敵な笑みを浮かべるのであった。
「ふふふ……まだまだこれからですよ!」
・次回予告
ジョバンニが扱うトリックルームでバトルは大混乱。完全にアウェーな状況に立たされたダルマは、このピンチをしのげるのか。次回、第76話「ポケモンリーグ4回戦第1試合後編」。ダルマの明日はどっちだっ。
・あつあ通信vol.56
今回のバトルは久々に難産でした。
ダメージ計算はレベル50、6V、ナッシー冷静HP特攻振り、ブースター意地っ張り攻撃素早振り。ブースターのニトロチャージはナッシーに確定2発、ナッシーの大爆発はブースターを高乱数1発。威力が下がっても大爆発は優秀な退場技ですね、特にトリパなら。
あつあ通信vol.56、編者あつあつおでん