注意 残酷描写が含まれます。自分では大丈夫かどうか判断しかねますのでご了承ください。
これからはこの注意書き無しで残酷描写が含まれる場合がありますのでそちらもご了承ください。
「いじめられない事です」
皆驚いている。中には笑いを堪えている物やどう見ても悪意の篭った目で何か思案しているような幼稚な奴もいる。もう誰が何を考えているか聞かなくても良く分かる。何度も経験したのだから。
どうせ僕は噂だけはいっちょまえで、チビで、進化しないと何もかも劣っているイーブイで、それも目が殆ど真っ白で異常だ。それにすぐにいじめられる。
父さんがどうしても学校に通わせたのは僕は友達が居ないと一生このままだからである。だけどやっぱり友達なんぞ出来ない。馬鹿みたいな噂が一人歩きして、そこにこんな茶色い毛玉が来るのだから笑いものだしいいカモだ。後できっとカツアゲされる羽目になる。
なんて事を考えながらいつも通りの自己紹介を終え、先生の言葉は殆ど聞き流し、どの席へ座るかだけを聞く。指定された席を見る。見た事の無いポケモンが、他の人とは違う眼差しで見ている。その隣のモコモコした奴も同類を見るような目で見ている。こんな奴らは初めて見る。
不愉快だ。お前らにこの気持ちが分かるもんか。そう思いながら席へ向かう。
なんて強気なことを思うけど、目はきっといつものように虚ろなものだろう。情けない、嗚呼情けない。
気付いたら席についていた。四足用の高い椅子。どうやら無意識に席に座っていたようだ。たった10回程転校するだけでこうも慣れるのか。今気づいた。
「隣よろしくね。アルク君……私の種族分かる?」
突然話しかけられた。青いドラゴンタイプのポケモンのようで両腕に顔……がついている。
――分かるものか。
そう怒鳴りたくなった。けど初対面でそんなこと言えるほど肝が座ってないし、何より向こうは友好的に、真剣に聞いてきた。初対面であんな声で話しかけられるのは初めてだ。母さんの声に似ている優しい声だ。母さんは確か僕が5歳の頃に、死ん
波紋上に広がった を受けて、顔が消し飛んで肩から上が無く、鮮血を吹き出す を僕はただ見ている。体が勝手に動く。僕は文字通り た。
白い目で涙を流しながら、逆の い目でわら……う
突然鮮やかに蘇る記憶。ブンブンと頭を振る。僕は吐き気を抑えて何十年も前のように思える隣のポケモンの質問に答える。
「ごめん。知らない」
ただ質問に答えるだけでイライラしそうだ。でも昔の母に面影を重ねてしまうのだからその感情を露わにすることも叶わず余計イライラが募る。
「私はイッシュに居るべきポケモンよ。種族名はサザンドラ。名前はツグミ。これからよろしくね。あ、そうそう。私生徒会長もやってるからそこもよろしくね」
生徒会長、か。だからこんなに優しくしてるのかな? って確かイッシュは未だに真実を求めるレシラムと理想を求めるゼクロムはいつしか別れ内戦が勃発し、今もそれは続いている。確かそうだった。さっき僕を同類を見るような目で見ていたのは……
ここで思考を止める。
……すべての関心を捨てて自分の世界に引きこもっていたはずの自分はどこへ行ったのだろう? 今回は何かが違う。そんな気がする。とりあえずもう何も考えないでいよう。
「おい。今日は先生用があるから皆自習しとけ」
自習。言い方を変えれば自由。我ながら寒い。
やった。とかよしっ! とかそんな事をほざく奴が居る。先生が出てしばらく様子を伺ってから教室から出ていく奴もいる。教室から出るような奴は少数な上にさっき自分を悪意のこもった目で見ていたやつだが。
取り敢えず、参考書をパラパラと前足で捲る。何故か溜息が出る。
「どうしたの? 溜息ついて。幸せ逃げちゃうぞ」
いつの間にかツグミは自分の机を僕の机に接岸している。
「ちょ! いきなり何を」
「何ってただ仲良くなりたいだけだよ〜」
やっぱりいつも通りの筈のループが少し狂っているような気がした。