「……い、おい、かえん!」
ハッと目を覚ますと、そこは洞窟の中で、長老さんとみずきがオレの顔を覗きこんでいた。変身は解けていて、オレの首にはいつのまにか七色戦士に変身するためのパワーストーンが下げられていた。
「やっと気がついたか」
「かえん……大丈夫?」
「ああ……大丈夫だ。けど……長老さん。一体アイツらは何だったんですか? それからオレ、「フレアドライブ」を出せたんですが……」
「待て待て待て。そんなに矢継ぎ早に質問するな。ちゃんと答えるから」
長老さんは咳払いを1つすると、話し始めた。
「ーーまず、あのワルビル達はの、テレパシーで伝えた通り、作り物じゃ」
「作り物って、どういうことですか?」
オレの隣にいたみずきが、長老さんに詰め寄る。
「つまり、何者かがこの地を荒らすためだけに作った命の宿らぬ兵器……ということじゃな」
「兵器!? でも……一体、誰がそんなことを?」
戦った感触では、普通のポケモンとはなんら変わりないように感じた。そんな物をあんなに大量に作り出せるポケモンなんて……とオレとみずきが考えていると、長老さんが驚くべき名前を口にした。
「ーーアルセウス」
「アルセウス!? ……って、神話に登場する、この世界を作ったとされるポケモンのことですか?」
「そうじゃ」
神話によると、アルセウスは何もない所にあったタマゴから生まれ、この世界を作り出したポケモン……らしい。
「確かに、創造神と言われているくらいだから、ポケモンを作り出すことだってできるわよね……」
「でも、アルセウスって本当に存在するんですか? 神話でしか聞いたことないんですが……」
そこで長老さんが、本日2度目の爆弾を投下した。
「アルセウスは存在するぞ? わしは合ったことがあるからの♪」
一瞬の沈黙……そして、
「「えええええーーっ!?」」
洞窟にこだまする、オレとみずきの叫び声。
「……しまった、これは内緒の話じゃったな」
長老さんは気まずい顔をしている。
「あ、あったことがあるって、長老さんって本当に何者なんですか!?」
「テレパシーといい、気になるんですが!?」
オレとみずきの2匹で、長老さんに言葉を浴びせる。
「あー……ま、今のところは ひ み つ じゃ♪」
「秘密って……!」
……長老さんは本当に何者なのだろうか……。
「それよりもうひとつ、かえんが何故「フレアドライブ」を出せたのかじゃろ♪」
オレはハッとして、未だ長老さんに「つららばり」の如く言葉を次々と浴びせているみずきを押しのけ、長老さんに詰め寄った。
「そうです! なんでオレ、「フレアドライブ」を出せたんですか?」
「それはの、七色戦士の力の一つじゃ。七色戦士はそれぞれ「究極技」という物を持っておっての。ブイレッドの究極技が、「フレアドライブ」なのじゃ」
「究極技……」
「しかし、究極技は多大なリスクを伴う技が多くての……一回の変身で一回しか放てないのじゃ。 そして体力を大幅に消耗する上、変身が解けてしまうこともある」
「なるほど……」
オレは納得した。変身が解けていたのは、究極技を使ったからなんだな。
と、そこでオレはあることに気付いた。
「長老さん、あの……1つ質問いいですか?」
「なんじゃ? かえん」
「すっかり忘れてたんですが……らいどはどこにいるんですか?」
「……あ、らいど!」
オレが質問すると同時にみずきは走り去る。
「ああ、らいどはの。ワルビアルから受けた攻撃で気を失って、かえん、おぬしと共にみずきが運んできたのじゃ。今は別の部屋で休んでおるぞ」
「……部屋?」
「おや、気付かなかったかのう? この洞窟は案外広くての。 えーと、ここのすぐ隣の部屋じゃ」
「そうなんですか……痛っ」
オレが動こうとすると、体に痛みが走った。
「かえんはもう少し寝ているといい。 わしはらいどの様子を見てくるでの♪」
長老さんはそう言うと、いそいそと部屋を出ていった。
長老は部屋を出てらいどがいる部屋へ向かいながら、小さく呟いた。
「ふう、危なかった……。かえん達にはまだ、「あのこと」は秘密にしておかねばの……♪」
……中編に続く!