友人が鍬をもって土を耕していた。フリルたっぷりのエプロンがやたらに似合う。
「なにやってんの?」
「土を耕してる」
「見りゃわかるよ。なんで土耕してるのかって訊いてるんだ」
「よくぞ訊いてくれた。まずは、こいつを見てくれ」
タブンネ色のエプロンで手を軽く拭った友人は、ポケットからボールを取り出した。ボールを土に向かって放り投げる。収容されているのは、小豆色の身体がぼこボコぼこと三つ並び、つぶらな黒ごまの目が三対のもぐら。幼稚園児でもかんたんに描けるポケモンナンバーワン、ないしはナンバーツー。
下半身が永遠の謎、ダグトリオである。
しかしながら、いま俺の目の前にいるこいつをトリオと呼んで良いのか、はなはだ疑問である。
「なんか足りなくね? 明らかに足らないよな」
「そうなんだよ。朝起きたら、足りなくなってたんだ。おどろきだよな」
「もっと驚けよ!」
「驚いてるって」
ほけほけ笑う友人は放っておいて、ダグトリオを見る。足りない。なにかが決定的に足りない。いまの状態を強いて言うなら、ダグコンビ。ぼこボコぼこのうち、真ん中のボコが欠けている。
「ポケセン行けよ、ポケセン」
「行った。そしたら、畑をよく耕して肥料撒いてダグトリオを一晩放しておけば元通りに生えてくるて言われた」
「作物か? こいつは作物かなにかなのか?」
「いや、この時期になると多いらしくてサ。っと、おまえも耕せよ〜」
ダグト……いや、ダグコンビがダグダグと上下して土を掘り起こしていく。不在の真ん中部分だけが、耕されずに残っている。
「ま、明日の朝になっても元に戻ってなかったら、もう一回ポケセン行ってみるよ」
「ほんとに大丈夫なのか、コレ」
「大丈夫だって。隣のおっさんのギギギアルなんて、真ん中の歯車どっか行っちゃったらしいからさぁ。元に戻ってたら、連絡するから見に来てよ」
翌朝、友人のダグコンビはしっかりダグトリオになっていました。
朝一番で俺ん家を訪れた友人はにっかりと笑って、トリオに戻ったもぐらを見せる。
「どうだ、戻っただろ」
「生えたのか?」
「生えたよ。裏のおっちゃんが拝んでいった」
「……ルジュランス行こうぜ、おっちゃん」
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ふたつ同じようなのがくっついてるだけのポケモンって、きっとこういう事があると思う。
ダグトリオとかギアルギギアルギギギアルとかレアコイルとか。
一瞬、ドードリオで書こうと思ったのは内緒。