マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ
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  [No.2381] コミュニケーション・後編 投稿者:リング   投稿日:2012/04/12(Thu) 21:06:30   87clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 ブームというものは案外早く過ぎ去ってしまうもの。我が家から手話が絶えることはなかったが、2年もすれば注目もすっかり治まり周囲では日常が戻っていった。
 季節は、桜も散り行き暖かさは徐々に暑さに変わる初夏の頃。
「ねーちゃん、早くしろよー」
「ごめんごめん……っていうか、あんた準備が早過ぎるのよー。女はもっと準備に時間かけるもんでしょー?」
 同じ女なのに、キズナは小5になってもオシャレに無頓着。我が妹ながら、隣を歩いて恥ずかしいレベルだ。
「アキツに乗れば速いからって油断しすぎなんじゃないの? そんなんじゃ、音速でも間に合わなくなるよ?」
 ぐ、あいも変わらず痛いところを突く妹だ。
「うっさいわねー。そんなこと言ってないで、私の準備を応援しなさいなー」
「髪整えたって見る人なんていないから……彼氏とデートに行くわけでもないのに、髪がどうのこうの、服の色合いがどうのこうの、バッグに付けるぬいぐるみがどうのこうの、本当に厄介ねー」
「うっさい!! 今からそんなんだと、中学になっても彼氏出来ないわよ?」
「まるで中学で彼氏が出来たみたいないい方ねー? 彼氏の一人もいない人に言われたくないなぁ」
 家族との仲の良さはアキツに手話を教える前からと同じく、円満なものである。アキツに対して漏らしていた愚痴を、今は別の誰かにしなければならなくなったと母さんも父さんも嘆いているが、そんなことも小さな問題だ。今ではむしろ家族の仲は以前よりよくなったんじゃないかと思う。
 けれど、キズナとのやり取りは相変わらずこんな感じ。ほぼ確実に会話の主導権はキズナが握ってしまうのだ。
「中学生で付き合ってたら早すぎるわよ」
「アオイねーちゃん。さっきの自分の発言に責任持ってよ? それなら中学生で付き合えなくってもいいじゃないのさ?」
 ぐ……確かに。
「練習よ練習。彼氏が出来た時にいい女に見せるための!! 中学生から身に着けとかんと、高校生になったらどうするのよ」
「もーわかったから。良いから早く準備しなさいな。俺もう待ちくたびれているんだけれど……」
「大体、自分の事を『俺』って言っている時点で何か女として間違っているでしょうが。」
「いいんだよ。俺はこのままで。『私』とか言ってなよなよしていたら道場で舐められちまう」
 全く、キズナは道場に青春を費やす気か? 我が妹ながら情けない。
「あんたもうちょっと女として生きなさいよー」
 つややかな黒髪を肩まで伸ばして、お似合い(母親曰く)の髪留めで飾り、上下の服との兼ね合いもばっちりな私。今は見えないが履いているサンダルもオシャレなものだと自負している。

 対してキズナは、まだ季節は初夏だというのに、半袖短パンに無骨なサンダルという見た目。信じられないことに石鹸で髪を洗う始末だから、髪の毛は痛み放題のボッサボサ。よく外で遊んだりトレーニングをしているから、すでにして日焼けた肌は小麦色。
 街へ行かない日ならば、足を鍛えるためにと言って裸足で過ごす日だってあるくらいにはオシャレを排している。『田舎なんだから靴以外は大体こんなものなんだけれど』、なんて言って、キズナは『せめて靴をきちんと履いてくれ』と私が言っても納得してくれない。
 わが妹ながら、本当にどうにかならないものか。素材だけはいいから、珠のパーティーでオシャレをすれば私よりも一回りは美人というのが腹立たしい。
「いーじゃん。子供のうちに出来ることをやっておかないと。大人になったらこんな格好も出来ないしね」
 そこまで分かっているんなら、今から大人の格好に慣れとかんかい!
「若いうちにオシャレするのも大事なのに」
「まるで年取ったみたいないい方だなぁ。姉ちゃん、おばさんなんだ」
「ぐっ……」
 髪を整えながら、キズナに痛いところを突かれて私は閉口する。本当に口の達者な妹め……
「大体、髪を整えてもムースかなんかで整えなきゃ結局はアキツの飛行で乱れちゃうでしょうに。髪を整えるための整髪料なんてウチにはないというのに、ご苦労なことだねぇ、ねーちゃんは」
「うっさいわねー。じゃあもういいわよぉ」
 叩きつけるように乱暴な仕草で櫛を棚のポケットに叩きこみ、私は鏡の前から踵を返す。
「図星だったんだねー、ねーちゃん。ねーちゃんは喋るたびにボロが出るからなぁ」
「うっさぁい!!」
「声を荒げちゃってまぁ。オシャレ気取るんなら、口調もオシャレかおしとやかにした方がいいのに……と、思わずにはいられない私なのでした」
「殴るよ」
「そんなことしたらたぶん、姉ちゃんの方が痛い目にあうと思うけれど? 俺が防御しているだけでも姉ちゃんが先に倒れる自身があるぜ」
 最近は姉としての最終手段まで使えなくなっちゃったし……あーあ、良く出来た妹を持つと気がめいる……。

 ◇

 とにもかくにも、私達はブラックモールへと向かう。ホワイトフォレストの町役場付近。町自体はドがつくほどの田舎だというのに、一つだけ不釣り合いなほどに威容を誇るは白の中の黒、ブラックモール。街をアブソルの顔に例えた時、そこはアブソルの額の黒にあたる場所らしく、逆にブラックシティにもホワイトブッシュというアブソルの牙にあたる場所がある。
 ブラックシティほど遠くない場所にあるこのショッピングモールは手に入るものは多かれど、ブラックシティよろしく盗品も少なくない危ない場所。そんな場所でも、ホワイトフォレストでまともな買い物ができる唯一の場所なので、この町の住人は欲しいものがあればこぞってここで買い物をする。
 私達姉妹も、父さんの休日であるこの日曜日にアキツを借りてお買いものや映画を見に出かけることがある。ブラックモールは意外と広い場所だから、買い物をせずに商品を見ているだけでもあっという間に時間が潰せる素敵な場所なのだ。

 難点は、ショッピングモールの周囲に隣接するノーブランドの店舗が立ち並ぶ商店街の治安の悪さだろうか。入り組んだ店舗と店舗の境目の路地裏などで野性のポケモンなどが縄張りを持っていたりすること。客の食べ物をねだったりするうちは可愛いのだが、たまにどこぞのマダムが逃がしてしまって野性化したボーマンダが飛んでくることさえあるから始末に負えない。
 そんな場所でも、刺激的だからとついついやってきちゃう人は多くて、私達もその口。少ないお小遣いを握りしめて、私達はまず最初に映画を見て、そのあと店を回る。ほとんどはこれが可愛い、あれが可愛いと連呼するだけで何を買うでもないが、雑貨屋でオシャレな家具や置物を見回ったり、服を持って鏡の前に立ったり、UFOキャッチャーの景品を眺めたり。
 フレンドリィショップに連れてこられたポケモンを見て、あのゾロア可愛いなどと褒めてみたり。そんなこんなで時間を潰しているとあっという間に時間は過ぎていく。
 締めは夕方の商店街めぐり。アウトローな物品が多く、ゲームの中古ソフトから盗んだバイク。裏通りまでもぐりこめば、広大な自然の中で育てられたイケナイ葉っぱや薬までいろいろ売っている。こっちは、ショッピングモールで可愛いと連呼したのとは対照的に、『これマジでヤバイよ』とはしゃぐための場所で、同じ穴のムンナな女子や頭の悪そうな男子学生。
 ナンパ待ちの女性と品定め中の男性などがちらほら見受けられた。
 私達も適当に見回りながら、中古と銘打って売り出されている格安バイクを見て、どんな人から買い取ったのか? どんな人が買っていくのかを想像しては、キズナと一緒に面白おかしく茶化して回る。

「あ、見て。ドレディアだぁ」
 肝試し紛いの買い物からの帰り際、沈んでゆく夕日をに照らされたドレディアがちょこんとしたたたずまいで、私達の前に現れる。私がキズナに呼びかけるようにドレディアを指差し腰をかがめて声をかけると、彼女はみずみずしい葉っぱの腕を持ち上げて手招きする。
 かわいらしい所作で手招きした後は、笑顔のままに振り返って路地裏へと消えていった。
「あのドレデイアついて来いってさ、キズナ。行って来る!!」
 なんて可愛らしいドレディアだろう。頭のお花も綺麗だし、白い素肌も陶器のようで、まるで野性じゃないみたい。もし仲良くなれたら、アキツに通訳でもしてもらっていろいろお話したいな。
「馬鹿言っていないで行くよ、ねーちゃん? 野性のポケモンに餌を上げるのはナンセンスだよ。ポケモンがますます調子に乗るし、糞や死体や窃盗で害を受けるのはこの商店街に店出している人達だぞ?」
「いーじゃん。私達が上げる餌を狩ってくるお店は潤うんだし」
 そんなこと気にし手られますかーっと。可愛いは正義でしょうに。
「その分ポケモンが増長して商品盗まれてりゃ、損だっつーに……あーもー……ポケモンに誘われちゃって、ねーちゃん何やっているんだか」
 呆れ気味にため息をついて、キズナは路地裏の前で待つことにしたようだ。私はドレディアに誘われるがままに路地裏について行くと、突然目の前に星が散り、体の自由が利かなくなる。
 な、何? 目を白黒させながら痛みが襲いかかって来た方向を見ると、そこにはデンチュラが。デンチュラの電気糸に絡め取られた私は、叫ぶことも出来ずに麻痺させられる。

 ◇

「遅いな」
 なんだかトイレの前で同級生を待っている気分で、すごく煩わしい。姉ちゃんの帰りを30秒ほど待ってみたが中々帰ってこない。ここのポケモンは、街の見えない力の影響なのか。性格が悪く凶暴な奴が多く、そんなポケモンに襲われでもしていたら困るので、俺はダゲキのタイショウをあらかじめ出して路地裏に行く。
 人間と似た背格好のこいつだが、真っ青な体のこいつは夕暮れに時間となると非常に暗く見えにくい。羽織った真っ白な胴着だけが、くりぬかれるように夕日に映えてオレンジ色に染まる。
「もしかしたら先頭になるかもしれないから、その時は頼むぜ、タイショウ?」
 俺がそう問いかけると、タイショウは『まかせろ』と、右肩に置いた右手の指を前に差し出すようにして意思表示。片方の眉がない顔で頼もしげに笑んでいた。

 タイショウを連れて行った先で見たのは、デンチュラの糸に巻かれて痺れさせられている姉ちゃんの姿。ガラの悪そうなスキンヘッドの男がアオイ姉ちゃんを壁に押し付け、ポケットやらバッグやら何やらを漁っている。先程のドレディアも一緒だという事は、あのドレディアもこの男とグルなのか。
 アキツをボールから出して男をぶっ殺してやろうかと思ったが、この狭い路地じゃ出すことも出来ない。とにもかくにも、尻を向けて糸を吐いているデンチュラに先手必勝とダゲキに襲わせ、踏みつぶさせる。
 後ろからの不意打ちも完璧に食らって、デンチュラは一撃で粉砕。追い打ちとばかりに俺が踏みつぶすことでとどめを刺してやった。
「俺の姉ちゃんになにやってんだてめぇ!! 舐めてんじゃねえぞ、表でろやコラァッ!!」
 俺が大声で凄むと、相手はドレディアを盾にして慌てた様子を見せる。慌てているのは、ダゲキや俺が怖いというよりはどちらかというと大声を出されたことらしい。
「な、なんだてめえは……それ以上来るんじゃねえ。大声も出すな……この女がどうなってもいいのか?」
「……じゃあ、早いところ姉ちゃんを返せよ。そうすりゃ穏便に終わらせてやる」
「ったく、俺は金が欲しいだけだってのによぉ……そんな取って喰うような怖い表情見せなくたっていいじゃねえかよ……」
「うるせぇ……その細い腕、捻り壊されてえのか?」
 周囲を伺いながら逃げる準備をしているゴロツキに脅しをかけるように、俺はコジョフーのアサヒを出す。タイショウもアサヒも、家族になってから日は浅いが、手話の物覚えもいいし、なんだかんだで懐いてくれている可愛い奴らだ。出しておいて足手纏いになることはないはずだ。
 アサヒはボールの中から状況を伺っていたのか、すでに戦闘態勢に入っており、構えた彼女の隙を突くのは難しかろう。
「とっととねーちゃんを放せよ。御託はいいからさぁ」
 さらに凄むと、相手は舌打ちをする。
「あぁ、わかったよっ!!」
 そう言って男は姉ちゃんを蹴り飛ばして逃げた。麻痺しているのに、縛られているのに。受け身も取れない状態でそんなことをされたら……怪我は避けられないじゃないか。そう思うが早いか、姉ちゃんは鈍い音と、衝撃音を立てて無防備に倒れ伏す。
「姉ちゃん!!」
 駆け寄ってみると、当然だが姉ちゃんはぐったりしてる。
「くっそ、タイショウ、アサヒ!! さっきの男をボコボコのボロ雑巾にしてもってこい!!」
 俺はタイショウとアサヒにそう命令して、とにもかくにも姉ちゃんを路地から引きずり出そうとしたが――まずい、倒れた時に背骨をビール瓶の上に叩きつけたらしい。背中と、頭も打って血を流している。
 大切な部分である頭や腰を打っている以上、下手に動かないほうがよさそうだ。そんなことよりも、一刻も早く救急車を呼ぶため、姉の携帯電話を借りる。あとは、気が動転していたよく覚えていないものの、犯人が結局路地の道を塞ぎながら逃げたために、上手い事まかれてしまったこと。警察が回収されていないデンチュラから身元を割り出すから心配しないでとか、そんなことを言っていたのをなんとなく覚えている。

 ◇

 目が覚めると、病室だった。
 起き上がろうとして手をついてみるが、腕が重くてなかなか動かなかった。まるで金縛りにあったような感覚で、しばらく声も出なかった。腕をもじもじと動かし、血行を良くしている、のだろうか。そうしているうちにやっと腕が動くようになった私は、ようやく目も開いて、言葉にならない言葉を呟けるようになる。
 母さんがそれに気づいて私の腕を握る。暖かくて、揉まれる感触が少し気持ちよかった。しばらく私の体調を気遣ってくれた母さんは、最後に足の様子を尋ねてみる。足に何か感じるかと聞かれ、考えてみると足が何だか重い。
 そう答えると、母さんは医者を呼んで、私の状態についての説明をしてくれた。

「下半身不随……なに、それ?」
「その……神経自体の傷はなかったらしく……場合によって回復することもあり得るのですが……悪くすると、そのまま一生足が動かないという事に……」
「なによ、それ……」
 私は拳を握りしめる。
 母さんが治るかもしれないと説得する。父さんも、希望はあると説得する。なんで、なんで、そんな目に合わないといけないの、私が何したの。
 私これからどうなるの? 私はこれからどうすればいいの? 気休めよりも、治るって言ってよお医者さん。

 リハビリの予定とか、術後の経過とか、頭に入ってこなくて、気づけば私は消灯時間に一人で病室にいた。眠ろうと思っても、寝すぎたせいと、足が重くて、鈍い痛みが走って、不安で、イラついて、とにかく眠れない。昔、歯を抜くために麻酔をかけたことがあったけれど……あれが下半身全体に広がっている。
 存在は認識できるのに、鉛にでも浸かっているように重くって、動かせなくって、枕を抱きながら寝返りをうとうにも下半身が動かないおかげで一苦労。自分の身体が今どうなっているのかすらわからなくて、すごく怖い。不安で不安で眠れなくて、そうこうしているうちに時間が過ぎていく。
 時計の音がうるさくて眠れない。こうなって来るともう、何もかも敵に見えてくる。暗闇の中、星明りやわずかに届く街灯の光と音を頼りに、壁に掛けられた時計に向かって枕を投げる。だいぶ力の戻った腕は勢いよく枕を飛ばしてくれたが、それが終わると私は投げるものがなくなった。たまらず、私はベッドを叩いたりシーツを引き裂いたり、とにかく暴れて発散した。
 疲れて動きたくもなくなると、足の鈍痛に苛まれながら私は眠りについた。目を閉じていても、涙ばっかり流れていた。

 翌日から色んなことを試してみるが、足は指がピクリと動かせる程度。叩いても抓っても、私の足は痛みも何も感じない。傷の経過を見守りながら、徐々に出来る事を増やそうと医者は言うのだが、『出来る事』というのに『足を動かすこと』は含まれていない。動く可能性があるというのは、頑張れば動くとかそういう類のものでもないらしく、言ってしまえば今この時点で歩けるのかどうかはほぼ決まっているらしい。
 事故によって機能を失ってしまった神経が今後復活するか否かは、私の骨の中にある神経を圧迫する血塊が、どれほど『まし』な状態であるか否かにかかっているのだと。今はもう移動も、物を取ることも、排泄もままならない。

 私はただでさえ、最近出来のいい妹と比べられ続けているというのに……これじゃ、私は本当に要らない子になっちゃうじゃない。
 そんな生活に嫌気がさして、私は苛立ちばかり募って、家族に当たり散らして、その自己嫌悪でまたいらだちが募る。特に妹に対しては、あんたのせいだと罵倒して、手につかんだ花瓶の中身をぶちまけたり。微動だにせずそれをかぶったキズナは、水と花に塗れながらも表情を変えずに見下ろしていた。
 気づけば私は、もう誰とも顔を合わせたくなくて、病院のスタッフにも家族にも、無視を続けるようになった。排泄が面倒な上にとても汚く感じられて、出される食事にもほとんど手は付けられないし、話しかけられたくないからリハビリにも乗り気ではない。
 鉄は熱いうちに打つべきだって家族も医者もい言っている。それはわかっているんだけれど、自分はまだ踏み出せない。
「なんで、かな……」
 暇だし、だからと言って勉強もゲームもやれるような気分ではない。リハビリは疲れると言ったって、もう動けなくなるとかそんなに辛い疲れでもないのに、どうして踏み出せないのか。


「なー……ねーちゃん、たまには外に出ようぜ? 下半身以外はどこも悪くないんだしさー。車椅子なら俺が乗せてやるからさー」
 キズナは、あんなにひどいことをしたっていうのに、いまだに私に優しい言葉をかける。私は合わせる顔もなくて、ただただ壁の方を向いて黙っていた。
「勉強もしてねーんだろ? 出来ることからやらないと……悪い頭がさらに悪くなっちまうぞー?」
 わかってるけれどさ。勉強しないでもいい点とれるアンタとの差が、今まで以上に急速に離れていっていることくらい。でも、今は放っておいて欲しいよ。

 こっちが徹底的に無言を貫いていると、キズナも黙って私を見ている。この体制がそろそろ辛くなってきたのに、妹はずっと立ち竦んだまま私を見ている。
 結局、キズナは数分間、パジャマを着た私の後ろ姿を見ていって、これ以上は無駄なのだと判断したのだろう。
「ねーちゃん……これ、置いて行くから」
 そう言ってそのままキズナは去って行った。すぐに振り返ったら負けだと思いつつ、1分か2分か、しばらく待って私は寝返りを打ち、手の届く位置にあった妹の置き土産を見る。一つは封筒、もう一つはモンスターボール。
 封筒の中には、アサヒを病室に入れることに関する許可証が入っていた。思えばもう背中の傷は塞がっているし、この病室もそれほど衛生に気遣うべき場所ではないからと、簡単な検疫と消毒を済ませればポケモンを出すことを許可されているらしい。看護師やジョーイさんからの判を押されたこの紙は、許可証のようだ。
 そして、もう一つの置き土産はアサヒの入ったボールと、櫛。そういえばいつもアサヒの毛づくろいをしてあげていたっけか。私は、すでに遠い昔のように感じる日常を思い起こして、ため息をついた。

「アサヒ……」
 何を思ってこの子を寄越したのか知らないが、そういえば入院してから一度もポケモンとは顔を合わせていなかった。家族とは結局ほとんど話が出来ていないけれど、この子達となら、どうなんだろうか?
 アサヒを繰り出す。彼女は、まだミルクを飲んでいるころから私も良く世話をしているコジョフーだ。この子は四肢の朱色も、体幹のクリーム色も鮮やかで、艶やかで、バトルに使うのはもったいないくらいに毛並みが綺麗なんだけれど、見た目だけじゃなく性格まで妹に似て活発な子で、バトルが好きな問題児だ。
 それでも、この子は毛づくろいされるのが好きで、よく私に甘えてくる。すっかり生気を失った私だけれど、甘えてくれるだろうか?
「『こんにちは』、アサヒ」
 アサヒはこっちを見て、ベッドに飛び乗ってきた。私はベッドの下のレバーをまわし、リクライミングシートを上げて起き上がる。
「『こんにちは』」
 私の挨拶を認めてアサヒも挨拶を返す。いつもならこの調子で顔を舐めてくるのがアサヒの反応だけれど、今日は匂いを嗅ぐところから始めている。私の事が分からないわけではないようだけれど、こんな生活で匂いでも変わって少し警戒しているのだろうか?
「どうしたの、アサヒ?」
 私は力なく笑って語りかける。
「『怪我』『匂う』」
 すると、アサヒは身振り手振りで怪我が匂うと言って来る。よく意味は分からないが、傷がふさがっていてもポケモンの嗅覚ならば捉えられる何かがあるのだろう。
「『匂う』? 『どこ』が?」
 そう尋ねると、アサヒは私の体に黒い鼻を押し付け、きちんとベッドに挟まれて届かない背中の傷を指示した。
「『怪我』『痛い』?」
「うぅん、『痛く』ないわ」
 問いかけるアサヒに、私は首を振る。だが、アサヒも対抗して首を振る。
「『しかし』『元気』『ない』『なぜ』?」
「『脚』がね……『動か』ないの」
「『それ』『悲しい』?」
 無邪気なアサヒは、なんの悪気もなくそう聞いてくる。そういえば、『悲しい』なんて言葉この子達に教えたっけか……? 最近、アキツも一緒になって言葉を教えているからたまにわからなくなるし、私がいない間に家族の誰かが教えていたのかもしれない。
「うん、『悲しい』」
 ともかく、私は自分の気持ちを素直に吐露した。家族にはすごく甘えづらかったけれど、この子ぐらいには本音で話しても構わないと思った。
「『治す』」
 私の言葉に、アサヒは手を交差させて治すと言う。
「『どうやって』?」
 と、聞いてみたが、アサヒは手を構えたまま動かそうとしない。手話で表すべき単語が分からないらしく、彼女は自分の手の平を舐めて、意志を伝える。そして、無言のまま寝返りを打ってとばかりに私の体を軽く持ち上げる動作をする。
「『舐める』のね」
 舐めても、治るわけがないのに……
「『無理』だよ……」
 私は言ってみるが、アサヒは否定する。
「『大丈夫』『治す』」
 と言って、聞かなかった。舐めてもらうにはうつぶせにならなきゃいけないし、リクライミングシートも倒さなければならない。それはひどく面倒くさいはずなのに、私はなぜか突き動かされるように、アサヒの言葉や行動に従っていた。
 アサヒはパジャマをずらして露わになった私の背中に舌を這わせる。私は何も感じなかったけれど、微かな音が舐めていることを感じさせてくれる。そんなもので治るはずもないのに、献身的なその態度が身に沁みる。気付けば私は、仰向けになったまま、手話も見せずに懺悔を垂れ流していた。

「私ね……妹のキズナが優秀すぎて、最近よく比べられてさ……自分が、要らない子なんじゃないかって、少しだけれど思っていた。怪我してからは……本気でいらない子になっちゃったなんて思いこんで……面倒だけれど世間体のために私の世話を焼いているだけとか、ほんとは疎んでいるんでしょとか、酷いことも言っちゃった」
 嗚咽が漏れて、私は言葉を詰まらせる。
「けれど、私達家族だもんね」
 正直なところ、こんな言葉を使ってもアサヒに通じるとは思っていなかった。けれど、どうしても吐き出したい言葉を口に出して、私はただ楽になりたかったのだ。
「世間体とか、そんなものを気にしないでも済むポケモンのアンタがこんな風に気を使ってくれているんだもの……きっと、母さんも、父さんも、キズナも……多分、純粋に治って欲しいんだよね。いつかは、謝らなくっちゃ……ね」
 アサヒはチラリと私を見たのか、舌の動きを止めたが、すぐに舐める作業に戻る。そのまま舌の疲れに甘えることもなく、いつまでもいつまでも、延々とアサヒは傷を舐め続けた。ポケモンが野性で生きていくうえで培った、傷を舐めた者達が生き残るという遺伝子に刻まれた本能の告げるままに、淡々と。
 どんな言葉で謝ればいいのかを考えているうちに、気が付けば眠くなってしまっている自分がいて、突如それを切り裂く声が響く。

「ねーちゃん、ノックくらい答えろよ……」
 どうやら私はノックにすら反応していなかったらしい。そんなことを言いながら、汗だくの状態のまま不躾に入って来るキズナに、私は思わず声を上げた。
「ちょ、ちょ、ちょっと待って……」
「どした、アオイ姉ちゃん? いつもは無言なのに珍しいなー。おしっこ漏らしたんなら俺がオムツ変えてやっても構わんぜー?」
 そんなわけないでしょ、と大声で否定したかったが、無情にもキズナはぺたぺたと歩いてこちらにやってくる(裸足なのかよ)。私は早いところずりあげたパジャマを下して、アサヒをどけないと何と言っていいのやらわからない醜態をさらすことになる。寝返りは打てなくてもいいからせめて、と思ったのだが。
「あー……何やってるの? マッサージ?」
 見られた。顔から、火が出そうなほど恥ずかしい。
「こ、これは……違うのよ」
 私は目を逸らしながら、何の言い訳にもなっていない言い訳をする。
「いや、何も言っていないのに、何が違うのかもわからないし……」
 そんな苦し紛れの私の言葉は、キズナの言葉通りでしかなかった。
「あ、そ、その……アサヒが舐めたいって言うから舐めさせているだけで……」
「ははぁ……そっかぁ。ポケモンは、舐めることで傷を治すんだな……アサヒは、アオイ姉ちゃんの『怪我』を『治そ』うとしてくれたんだな。『ありがとう』」
 手刀を切り、手話を交えながらキズナはアサヒに言う。
「ほら、ねーちゃんは『ありがとう』って言ったか? こういう時のための手話だろうに?」
「えっと……」
 そういえば、私はちゃんとしたお礼を言っていなかった。キズナの言うとおり、こういう時のために伝える手段があるのに、情けない。
「『ありがとう』、アサヒ」
 キズナがアサヒを抱っこしてくれたので、私は寝返りを打って、手話を交えてお礼を言う。出来うる限り、私の感情を込めたつもりだ。
「『どういたしまして』」
 アサヒはキズナに抱かれたまま、立てた右手の小指を2回顎に当てて、口の前で手を振る。得意げなアサヒの顔から伺えるのは、褒められてうれしいという感情と、喜んでくれて嬉しいという、どちらにしても嬉しいという感情であった。

「さて、俺がここに来たのは面会時間が終わる前にポケモンを回収しないと怒られるから……なんだけれど。大丈夫?」
 キズナはアサヒを抱きながら、困り顔で言う。
「か、構わない……わよ」
 私は何を話して良いものかわからず(おそらくキズナも同じだろう)、キズナが抱いているアサヒに目をやりながら私は言う。
「わかった、俺はアサヒは連れて帰るよ」
 そう言って、キズナはアサヒをベッドの上に置く。
「その『前に』、ねーちゃんに『あいさつ』『しろ』よな」
 キズナがアサヒに命令すると、まだ私と一緒に居たいらしいアサヒは一瞬キズナを振り返って様子を伺ったが、ずっとボールを構え続けるキズナを見て諦めたようだ。
「『さようなら』」
 と、アサヒは身振りで言った。ボールに彼女をしまう際の絆の顔は得意げで誇らしげ。
「姉ちゃん、明日も放課後に見舞いに来るね」
 今まではこうまではっきり言うことをしなかった『また今度』の言葉を、今日のキズナはハッキリと言ってきた。きっと、言ってもよさそうな雰囲気だと悟ったのだろう。その雰囲気を作ったのはアサヒのおかげだから、恥ずかしい思いはしちゃったけれど……私もアサヒには感謝しなきゃ。
「あ、うん……」
 そして、このいい雰囲気に促されるまま、私はキズナに返答した。いつもは無視しか出来なかったのに、今日は答えられるのか。本当に、アサヒには感謝しないと。
「それじゃ、また明日」
 アサヒが傷を舐めてくれただけで、私も少しは吹っ切れたのだろうかと思いながら、私は病室を去るキズナを見守る。私の心臓は知らず知らずのうちにドキドキしていたようで、心地よい鼓動を抱きながら、私はいつまでもアサヒの余韻を確かめる。
 ふんわりと暖かくて、手の中で滑るような毛皮の感触。思えば久しぶりに感じた命の感触だった。

 ◇

「熱い熱い熱い熱い!! うっひー!!」
「裸足で来るからいけないんでしょーが」
「大丈夫、火傷なんてしないから。火傷する前に足を上げれば火傷しない……これは常識」
「炎天下のアスファルトの上をはだしで歩かないのも常識でしょうが……」
 キズナが炎天下の中で熱されたアスファルトの上を車椅子を押して走る。走っているから熱いと感じる前に足が離せば熱くないというのが本人の弁だが、私には馬鹿なことをやっているようにしか思えない。そんなわけで、早足になるしかない妹は、車椅子を押しながら走っている。車椅子が小石に躓かないかは心配だが、意外にも綺麗に舗装されたこの道路ではそんな心配もなさそうだ。








 アサヒとタイショウを隣に付けて走っていると、キズナのトレーニングついでの退院だというのに気分が弾む。そして、今日のトレーニングにはゲストが一人。
「にしても、隣を走られると……転ばれたら怖いわねぇ」
 デカ過ぎて病室に入れないからという理由で、徹底的な面会謝絶を喰らっていたアキツも一緒である。面会謝絶とはいっても、外出許可が出てからは、何度か病院の外で顔を合わせていたため、久しぶりの顔合わせというわけではないのだが。他の利用者の迷惑を考える必要もないこの広々とした道路を走れるのは嬉しいらしい。走りに付き合っていると言いつつも歩幅が大きいために歩いているようにしか見えないが、アキツの足取りはどこかはずんで見えた。
 ポケモン達総出で私を迎えに来て、家に帰る道のり。退院祝いとはいえ、体の機能は戻っていないから、退院祝いというのも特に行うことはせず、家で待っているのは普通の食事なのだという。
 それでも、久しぶりの温かいご飯である。母さんがお見舞いに持ってきてくれた、冷めた料理も味は悪くはなかったが、出来たての料理はそれだけでずっとずっとありがたみがあるというものだ。アサヒのおかげで少しずつ心を開けていた私は素直に嬉しい。

 それもこれも、全部じゃないけれどポケモンのおかげであることがありがたい。舐めるというポケモンならではの行為で心を開くきっかけを与えてくれたこと。治って欲しいという思いを混じり気なく、率直に伝えてくれたこと。これはアサヒのみならず、タイショウやアキツも申し合わせたように『早く』『元気に』と慰めていてくれたし、本当に全員に感謝だ。
 どこまでその俗説が本当かは知らないが、ポケモンは嘘をつかないというし、だからこそ私も彼らの言葉は受け入れられたし、私が自分が置かれた状況ときちんと向き合えるようになったのもそのおかげ。
 なんにせよ、気持ちを伝える手段があるっていいことだよね。人間が使う言葉でも、私達がポケモンに教えた手話でも、言葉じゃどうにもならないアサヒの気遣いのような方法でも。気持ちを伝える手段があるからこそ、俺のポケモンやアキツは人間と積極的に交流を図っているような気もするし、そんな積極性がまた、あの時私の傷跡を舐める行為につながったのだろう。
 そんなことを病室で一人になった時に考えて、私は一つの考えを導き出した。

「ねぇ、キズナ」
「ん、何だい姉ちゃん?」
 車椅子を押しながら、キズナは視線を下げて私を見る。
「タイショウね、とっても力持ちで……車椅子に乗る時に近くにいてくれると、とっても助かるの」
「そりゃ、格闘タイプだもんな。俺と一緒に毎日足腰鍛えているから力は強いさ」
 俺の自慢のポケモンだからなと付け加えて、キズナは得意げに語る。
「うん……それに、手話でコミュニケーションも取れるしね……でさ、思ったの。まだこの子達は介助ポケモンの認可を取っていないから、場所によってはポケモンをボールに出すことを制限される……けれど、もしもこの子達が介助ポケモンになってくれたら、こんなに頼もしいことってないと思うの」
「だな。介助ポケモンはそう少なくはないけれど……手話ができるんなら、そこいらの介助ポケモンなんかにゃあ負けないな……何の勝負かはわからないけれど」
「そうね、何の勝負かはわからないけれど、負けないわね……他にも、耳が聞こえない人のための聴導ポケモンなんてのもいるそうだけれど……手話ができるって、いろんな面で普通のポケモンよりもずっと役に立つと思うの。
 でさ……私ね、ポケモンブリーダーになりたいの。将来の夢が……おぼろげだけれど決まってさ」
「そ、そりゃあ……なんとコメントしてよいのやら、反応に困るなぁ。思いつきで言うんじゃなく、ちゃんと調べてものを言っているのか?」
「当たり前でしょ……確かに、車椅子でポケモンブリーダーってのは聞いたことないし……私自身リハビリを続けても治るかどうかも知れないこんな体だけれど……こんな私だからこそ、どんな時にどんなポケモンがいてくれると助かるかってのがわかると思うし……その……手話も、教えられるし……。そう、これをセールスポイントにしたいのよ」
「ふぅん……きちんと調べてそう思ったなら、それでいいんじゃないの? でも、俺は、その……まだ子供だからよくわかんないや。素敵な夢だとは思うけれどさ……」
「わかってる。アサヒをけしかけてくれた貴方に一番に話しておきたかっただけで……ちゃんと、父さんにも母さんにも話すわよ、キズナ」
「楽な道じゃなさそうだけれど、本当に大丈夫か?」
「さあ、どうでしょうね? やってみないことにはわからないし……でも、さ」
 言いながら、私はアキツに目配せをする。
「アキツ。『私』『立ち』たいの。『協力』して」
 胸に手を当て『私』。人差し指と中指を使って足を表わし、『立つ』動作をさせ、パーの左手でグーの右手を軽くたたくことで『協力』。そう指示すると、アキツは尋ねる。
「『肩』『持つ』『いい』?」
 肩を叩いて指示し、それを持つ。つまり肩をもちげることで支え、そうして立たせるという解釈で大丈夫かとアキツは尋ねた。
「そう、『それ』で『いい』わ。『お願い』」
 言い終えると、私は腕を広げて体を十の字にし、アキツは大きく腰をかがめて腋の下から私を支え、車椅子から拾い上げた。そうして私はいわゆる羽交い絞めのような体勢となり、まだ指が少し動くだけでなんの力もこもらない脚を地面に付けて立ち上がる。
 立ちあがっていると言えるのかどうかはわからないが、何はともあれ久しぶりにキズナを見下ろした私の表情は、自然と笑っていた。
 それにしても、アオイ姉ちゃんが苦しそうにしていないという事は、アキツの力加減は絶妙なんだな。
「みんなの協力があったとはいえ、アキツがこうして私と会話できるようになったんだもの。タイショウもアサヒも、今は不完全だけれど……いつか絶対に会話できるようになる。そして、させてみせる。そしてそれを、職業にする……むずかしいことだけれど、不可能じゃないって……私は思うんだ」
「まぁ、隣町には何でも売り物にしてしまう世界があるくらいだし……育てたポケモンに買い手がつけば……生活は出来るんじゃないかな? なんて、夢のないこと言っちゃったな。とにかくそんときゃ、俺も応援するよ、姉ちゃん」
「『ありがとう』、キズナ」
 キズナに向けて手話を交えつつ、私は言う。
「『みんな』も、『応援』してね」
 タイショウとアサヒに向かい、私は声をかける。どこまで分かっているかは定かではないが、二人とも頷いていい顔で返して拳を振り上げてくれた。
「『ありがとう』、アキツ。もういいわ」
 そう言って、車椅子に座りなおされた私を、キズナが再び押して運ぶ。
「みんな姉ちゃんを慕っていていいことだけれどさー……でも、こいつら俺のポケモンなんだけれどなぁ……」
「そうね……私も自分のポケモン持とうかしら?」
「それがいいよ。自分のポケモンってのは愛着湧くぜ?」
 二人がそんなとりとめのない話をしながら歩く炎天下の道のりの途中。遠くにある我が家を目指して、私はタイショウに介助ポケモンとしての第一歩が始めさせてみた。タイショウは足の裏が丈夫なのか、ペタペタと紳士的な速さで歩き、車椅子を安定させて運んでくれる。
 ゆっくり走らなければいけないという矛盾を強要され、手持無沙汰なキズナが足の裏を火傷させないようにしょっちゅう足踏みをしている。その横でアサヒが、タイショウの真似をしたがっているのが嬉しかった。
「アサヒはコジョンドに進化したらね」
 私は腕を伸ばしてアサヒの頭を撫でる。アサヒは積極的に頭を寄せて、気持ちよさそうに一声鳴いた。
 よし、せっかく妹と比べられないような夢を見つけたんだ。リハビリも勉強も、これから頑張ろう。








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