タグ: | 【2012夏・納涼短編集】 【多分ポケダン】 |
小さな頃、宝物を失くしたことがあったの。
子供の時って、大人から見れば全然大したものじゃないものを、ものすごく大切にしたりするでしょう?
河原で拾ったきれいな石とか、他より少しだけ大きなタネとか、贈り物を包んでいたリボンとか、使えなくなった機械のネジとか。
そういうちょっとしたものを集めては、小さな箱に入れていく。そうやって、大事に大事にとってたの。
ある日私は野原に行ったの。
そうしたらそこには、きれいな花が一面に咲いてたわ。
私は嬉しくなって、その中の1輪を摘んで帰って、いつもの箱に入れておいたの。
でも、次の日箱を開けると、きれいだったお花はすっかり枯れていたわ。
私はまた野原に行ったの。だけどどのお花も、昨日持って帰ったお花とは違った。同じ花だけど、やっぱり違う。
枯れてしまったお花は、もう二度と戻らない。
私はすごく悲しくって、いっぱいいっぱい泣いたわ。
私も大きくなったから、あのお花がもう一度ほしい、なんて事はもうないわ。
幼いころの「宝箱」を開けて、何でこんなのが大事だったんだろう、って苦笑いすることもある。
でも、大好きなものが、とっても大事なものが変わってしまうのは、とても悲しいこと。
それは今でも同じ。ずっと変わらない。
だけど、咲いた花はいつか散るし、生きているものは老いて死ぬ。
一目見て好きになったの。つやつやした赤いハサミも、琥珀のような金色の目も、とっても素敵。
あなたに綺麗だよって言われて、私はとても嬉しかったわ。
だけど、永遠には続かない。
いずれは死がふたりを別つことになるでしょう。
今少しだけ近づいた心も、あっという間に離れていくかもしれない。
時が止められればいいのに、と誰でも思うでしょう?
この幸せな時間が永遠なら、と思うのは当然のことでしょう?
私は伝説のポケモンじゃないから、時間を止めるのはとても無理。
でももし、その瞬間を留めておける力があるとしたら?
体も、心も、全部私のもの。
この先ずっと一緒。私とあなたは、永遠に一緒。
あなたはずっと変わらず、私のそばにいてくれればそれでいいじゃない。
ほら、見て。
氷に包まれたあなた、とても綺麗よ。
+++
きとらさんに無茶ぶりされたメノコ×ハッサム(多分ポケダン)
(2012.7.26)