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  [No.3550] 何度読んでも 投稿者:ラクダ   投稿日:2015/01/03(Sat) 02:03:23   35clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

>  僕は、僕のポケモンを殺した。
>
>
>  これは紛れもない事実である。

 初読の際、この二行で既にハマりました。ここだけで、なんだなんだ何があったんだ、と先が気になって仕方がありませんでした。
 僕と家族の語りで全貌が掴めるものの、僕の視点はどこまでもカロスのトレーナーで、対する家族の目を通せば重度の錯乱状態にしか見えず。
 おそらく彼の妄想なんだろうなあと思いつつ、僕の語る悲嘆の静かな迫力に圧倒されました。家族も付き合いのない僕のことを理解できず、ひたすら困惑しているのがなんだか寂しい。

 入院をきっかけにいつか我に返るのか、あるいはこのまま悶々としたまま終わってしまうのか……と考えていたら、こうきたか!  

>  幻か、都合のよい錯覚じゃないとしたら或いは、罪人の僕を地獄に連れ行く使者か。三つの首は僕の身体をバラバラに切り刻んで、地の底まで突き落とすつもりなのか。
>  それでもいいと思った。構わない。
>  もう一度、こいつに会えただけで、十分だ。
>
>
> 「――行こう、」
>
>
>  罪人は身体を起こす。
>
>  愛した仲間に、その身を委ねる。
>
>
>
> 「お前たちと一緒なら……たとえ地獄の底だって、最高の冒険だ!!」
>
>
>
>  そして、僕は、
>



>  綺麗に選択されたカーテンを揺らす、優しい風。その入り口となった窓はとても小さくて、両腕を差し入れるだけで精一杯だろう。
>  ふわりとめくれたカーテンの向こうに、よく晴れた青空が見える。一瞬だけ、そこに何か飛ぶものが横切った気がした。
>  恐らく鳥か飛行機か、それか見間違いであろうと思う。俺は静かな病室を最後に今一度見回して、ゆっくりと扉を閉めた。
>
>  
>  廊下をバタバタと看護師たちが駆けていく。何か騒ぎがあったのかな、と思った俺の耳に、救急車のサイレンが響いてきた。中庭だ、何号室の患者だ、という言葉に不穏さを感じつつも、俺は受付がある一階に降りるエレベーターへと乗り込んだ。
>  ポーン、という電子音。あいつと遊ぶと約束したルビサファリメイクの発売日は、明日に迫っていた。


 妄想の果てに幻覚を見て自殺したと取るべきか、解放されて自由になったと取るべきか。結果に苦い思いもありつつ、なんとなくホッとしたのは最後の僕があまりに嬉しそうで楽しそうで、ああ良かったねと言いたいようないや良い状況ではないだろうというか! こう、どう表現していいか分からないくらい複雑な気持ちですが、この何とも言えない余韻がとても好きです。個人的には、本人が望んだある意味幸せな結末だったんじゃないかなー、と。
 家族にしてみればハッピーエンドとは言えないのでしょうが。
 
 家族といえば、両親や兄妹、そして友人から見た「僕」と、語り手の「僕」との間に少し違和感がある気がするのは気のせいでしょうか……? 
 僕がとことんゲームの主人公になりきってしまったのだ、と考えるべきなのでしょうが、家族や友人の「まるで取憑かれたような」「ノイローゼや神経衰弱の類に罹る前兆は無く」「彼に暗さや鬱のようなものを感じたことは一度も無い。精神病に罹るだなんて、その片鱗すらも見せていないと思う」のあたりを繰り返し読むうちに、なんだか別人のようだなあと。
 静かで穏やかな性格で、前日まで普通に振る舞い、引き籠りをやめるために自分からリセットすると吹っ切れて……それでこれほど惑うものなのかと。
 考えていた以上に思い入れが強くて結局吹っ切れなかった? ……あるいは、全てを消去した瞬間に僕も消え「Xの主人公」が「僕」になってしまったのでは? だからあんなに悲嘆に暮れて、最後は肉体を脱ぎ捨てて飛び去って行った…………というのは考えすぎでしょうか。全然的外れだったらごめんなさい(

 良い意味で後味が悪くモヤッとして、気になって何度も読み返してしまいます。こういうお話、大好きです。


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