マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ
このフォームからは投稿できません。
name
e-mail
url
subject
comment

[新規順タイトル表示] [ツリー表示] [新着順記事] [留意事項] [ワード検索] [過去ログ] [管理用]

  [No.3825] このゆびとまれ 投稿者:   投稿日:2015/09/06(Sun) 22:28:09   250clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:XD】 【べえ〜っだ!】 【いつまでも】 【相手してもらえると】 【思うなよ!



「おはようございます」

 よく晴れたとある朝。
 アズマは妹のマナからクレインが呼んでいるとの伝言を受け、所長室を訪れた。

「やあ、おはようアズマ。早くから呼んで澄まないね。クロノスもおはよう」

 クレインは操作していたパソコンから少年へと視線を向け、彼と、彼の足元を歩いて来たポケモンに声をかける。クロノスと名付けられた雄のブースターは、後肢を下げ返事をするように一声鳴いた。
 少年の頭髪とブースターの体毛はどちらも赤く、クレインはふたりを見る度に似ているな、と微笑ましく思う。

「まずはONBSの取材対応、お疲れさま。僕たちも何度か話を訊かれたけれど、君はことさら大変だったろう?」

 心無き戦闘マシンと化したポケモン《ダークポケモン》を操り、オーレ地方の征服を目論んでいた組織シャドー。五年前もそれと対峙した経験を持つパイラタウンのテレビ局ONBSは、総帥デスゴルドを打ち負かしたアズマに、是非特集を組んで放送したいので軌跡を取材させて欲しい、と頼み込んで来た。

「知ってる人ばかりだったから話し易かったけど、思い出すのが難しかったです」

 幸いONBS創設者であるスレッドやレンを始め、アズマは局員の大半と面識があった。幾度か援助してもらった恩もあったので二つ返事で承諾し、つい先日まで彼らとの対談漬けの日々を送っていたのであった。
 その甲斐あって先週末に第一回が放送されたドキュメンタリー『アズマが行く! 〜オーレ地方の夜明けは近いぜ〜』(全六回放送予定)は大反響を呼び、五年前に大ヒットしたアニメ『スナッチマン☆アスカ』の最高視聴率を超えたそうだ。アズマの住居も兼ねるここ、ポケモン総合研究所にも問い合わせが殺到し、中々大変な騒ぎになった。

「ははは、そうだね。色々な事が次々に起きたから……」

 クレインはアズマの先程の発言を、多発した事件に揉まれ続けたことで記憶があやふやになっているもの、と解釈したが――実際は大分違った。
 アズマ少年には、自分が無用だと思う事柄にエネルギーを費やさない……興味を惹かれない事象には留意しないという欠点がある。しかしポケモン、殊にバトルにおいては類い稀な適性を備えているため、物臭でいい加減という弱点に目を向けられにくかった。つい今し方、十数年来の付き合いであるクレインでもあっさり見逃したほどに。

 そういう訳で、アズマはポケモンとはあまり関係の無い部分を殆んど憶えておらず――幹部や総帥の口調や立ち居振る舞いだとか、彼らとどんな話をしただとか。あそこのトレーナーがどんなポケモンでどんな技を使用したか云々は猟奇的に記憶しているのだが――面倒だが仕方無しに書き列ねていたレポートの、我ながらテキトーだと思う箇条書き・走り書き・殴り書きを頼りに、どうにかこうにか記者たちが満足する形に持って行った。見当違いなことを言ってクロノス(おっとりした性格)に体当たりを食らわされたりしながらも。

「用事ってなんですか?」

 対話にしても無駄や面倒を避けるのは同じで、単刀直入な物の言い方を好む。文面だけ見ればぶっきらぼうな印象になりがちだが、声色や表情までは節約していないので、彼を冷たいと表する者は一人も居ない。今も人好きのする笑顔でクレインに問いかけていた。

「うん。前にも話したけれど、君がスナッチしたダークポケモンたち……リブラ号に乗っていたポケモンたちだね。あれは他の地方から、オーレの人たちが引き取る約束をしていたものだったんだ」

 オーレは陸地のおよそ八割が砂漠という厳しい自然環境を有する地域だ。ここ最近になってついに野生ポケモンが見つかるようになったものの、ごく限られた場所に、両手で数えられる程度の種類しか確認されていない。よってオーレの人々が思い思いのポケモンを入手するためには、他方のブリーダーや施設から譲り受けること、出掛けた先で捕まえることが不可欠だった。
 この研究所で暮らすポケモンたちも各地の研究所を介してやって来たもの、勤務するスタッフが他の土地で手に入れたものばかりだったし、アズマが父親から貰ったイーブイも元はと言えば、ジョウト地方の研究者が飼育していた内の一匹だったらしい。

 クレインは話を続ける。

「大方のポケモンは予定通り、依頼主に返すことが出来たよ。でも中にはキャンセルされた子もいて……ダークポケモンにされたっていう、それだけの理由でね。リライブセレモニーは済んでいるし、心配することは無いんだけど……一般の人からして見たら、いっときでも戦闘マシンにされていたかと思うと、恐ろしく感じてしまうのも無理は無いんだろうな」

 特に第二進化を済ませているもの、戦闘能力の高いものに傾向が強いらしい。

 確かに、ダークポケモンは悪意に染まった禍々しい技《ダーク技》しか行使出来ないし、行動もどこか機械的だ。更にバトルをさせていると度々発症したリバース状態――纏わりついた負のエネルギーにポケモンが耐えられなくなり、肉体を蝕ばまれてしまう現象――には、アズマも相当悩まされた。
 リライブが進行するにつれ頻発するその現象は、逆に全く心を開いていないダークポケモンには牙を剥かない。そのことを知ってからは、リバース状態に冒されるポケモンはもうすぐ正常な姿に戻すことが出来る、という一つの目安となり、冷静に対応出来るようになった。

 ダーク技やリバース状態は、リライブセレモニーを終えて通常のポケモンに返すことで、二度と発現しなくなる。アズマが冒険を共にした仲間ポケモンはクロノス以外全員が、元ダークポケモンだ。その彼らがリライブ完了から一度も暴走したことが無いのだから大丈夫だと、アズマは自信を持って断言出来る。ゆえに、クレインの告げた事実はとても悲しいものだった。

「そのこともレイラさんに伝えておいた。放送が切っ掛けで、彼らに対する考えを改めてもらえるかも知れないしね」
「レイラさんなら安心ですよ」

 ONBSの武器とモットーは、真実の報道。そんな組織の記者頭に立つレイラは、真相を知る為、それを報道する為ならばどのような危うい渦中にでも果敢に飛び込む、熱血ジャーナリストだ。
 シャドーのフェナスシティ乗っ取り現場を目撃した時も、計画を指揮していた幹部とアズマの正面衝突を目前にした時も、自身の危険も顧みず記録を優先し、オーレ全域に発信させた至高のジャーナリズム精神の持ち主。彼女が連れのカメラマンに撮らせたフェナス奪還の映像のお陰で、アズマは当時一躍有名人になったものだ。
 彼女に任せておけば残された元ダークポケモンの悲しい現状も、緩和するに違いない。

「それからアズマが仲間として育てたポケモンたちだけど、今さら君から引き離すのは酷だものね。これは仕方無い」
「はい」

 それらを譲り受ける予定だった人々には、アズマが直接連絡を入れて詫びたのだが、皆怒るどころか非常に喜んでいたのが印象的だった。自分が選んだポケモンがシャドー撲滅に一役買ったのなら光栄だ、とのことだった。

「残るはリブラ号と無関係の四体。ファイヤー、サンダー、フリーザー、そしてルギア。これらは滅多に出会えるポケモンじゃないから、幾つかデータを取らせてもらってから、各地のポケモン博士と場所を相談して放す予定だ」
「伝説のポケモンなんですよね」
「そうそう。特にカントーとジョウトで有名みたいだよ。デスゴルドはどうやって彼らを捕らえたんだろう……っと、それはまあ置いておくとして」

 クレインは長らく少年に向けていた視線を、パソコンの画面へ映した。手招きされ、アズマとクロノスも画面を見やる。そこにはP★DAのダークポケモンモニターとよく似た一覧が表示されていた。

「無事に受理されたものと手続き中のものは灰色。キャンセルされたものと、研究対象としてしばらくここで預かるポケモンは白い字だよ」

 画面をスクロールし、白字で打たれたポケモンの名前を数えてみた。二十一匹。
 思わず多い、とアズマは呟く。

「ね。君の仲間を外してみてもこの数だ。他に引き取り先が見つかるまでと考えても、全員を同時に世話するのはちょっと厳しい。ここの研究員は優秀な人材ばかりだけど、僕も含め、トレーナーとしての腕は平均より下……バトル山で言えばエリア2くらいかな」

 と言うクレインは茶色い猫毛を右手で掻き上げ、申し訳無さそうにはにかむ。
 保留ポケモンの中にはバトル山で言うところのエリア6レベルが多数いる。そんなポケモンに暴れられでもしたら、研究員たちの手にはとても負えないだろう。

「アズマに頼りきりも良くないし……何人か、腕のいいトレーナーをアシスタントとして雇おうと考えているんだ」
「トレーナーを?」
「うん。それが今日君を呼んだ理由なんだよ」

 要約すると、オーレ中を旅して回って来たアズマに、研究所の手伝いが出来そうなトレーナーを見繕って欲しいということだった。アズマとまではいかなくともエリア6、せめて5レベルの腕前を持った者が理想だと言う。

「この人はと思うトレーナーがいるなら、持ちかけてみてくれないか?」

 そこまで話すとクレインはバインダーから、クリップで止めた書類を何組か取って少年に差し出した。紙面にはアシスタント募集要項の詳細、頁を捲ると総合研究所の案内や連絡先が事細かに書き記されていた。依頼する相手に渡せ、と言うことのようだ。

 書類の文字を目で追いながらアズマは、でもなあ、とぼんやり思う。

 オーレ地方の優秀なトレーナーは揃ってバトル山に属している。彼の地へ修行にやって来るトレーナーがいつどのエリアに挑戦するかは解らないので、ブースを受け持つ側は長時間その場を離れることは出来ないはず。彼らを除外すると、クレインの希望に添う人材を探し出せる気がしないのだ。

 残念だが自分が見て来た中に当案件適任者は居ない、と結論づけようとしたところでふと、アズマの頭上でデンリュウが閃いた。

「……あ」

 いつか、転職を考えていると宣った腕の確かな顔見知りが一人、居たことを思い出したのだ。

「おっ。その顔は、心当たりがあるみたいだね」

 機敏に少年の表情の変化に気がついたクレインに、アズマは首を縦に振る。

「そろそろ会いに行こうと思ってたんです、ちょうどいいや」

 善は急げ。
 書類をクリアファイルに入れてもらい、再度受け取ると小脇に抱える。

「行って来ます」
「よろしく頼むね。吉報を待ってるよ、気をつけて!」

 クレインの声を背に、所長室にもう一つある扉から別棟へ移る。エレベーターで住居スペースである一階へ下り、研究所の庭に置いてあるスクーターに手をかけた。これに触るのも随分と久しぶりだ。
 ブースターをボールに入れ、腰に回した鞄の奥にしっかりとしまう。ちゃんと作動するか何度か確認したのち、林間を、南に伸びる砂利道へとスクーターを発進させた。







 オーレ中心部に広がる荒涼とした砂原の間に、忽然と現われる怪しい研究施設。
 かつてダークポケモン生成基地として建造されたこのラボは、シャドーの計画が挫かれた後も取り壊されずに放置されていた。それから五年後に当たるつい最近、再起した同社の活動拠点の一つとして利用されるようになってしまったのだが、アズマがこの場を監督していた幹部を退けたことが切っ掛けで、再び打ち棄てられたのであった……
 が。
 無人のはずのラボの正面には今、色違いの衣装に身を包む酷く相似した体型の六人組が、円陣を組んで佇立していた。
 丘陵からその姿を発見・確認したアズマはスクーターのアクセルを緩め、出来るだけ静かに接近する。

「〜〜〜〜?」
「――。――――!」
「…………、……」

 体型だけでなく声も皆同じという不可思議な男たち。まるでクローンだ。会話の内容はこの距離では瞭然としないが、声色からは心配事がある時のような落ち着きの無さが見て取れた。
 逸る気持ちを抑え、ラボの影に身を潜めて様子を窺う。誰一人としてアズマに気がついていない。

 長らく観察していると不意に六人全員がこちらへ背を向けたので、今だ、と建物の影から一二歩踏み出し、呼びかけた。

「ヘイ、ブラザーズ」
『ギャア!!!!!!』

 仰天した六人組は気の毒なほど大袈裟に跳び上がった。売れっ子コメディアンも思わず嫉妬を催しそうな、絶妙に息の合った跳躍だった。
 想像を遥かに超えた六人の醜態に、アズマは腹を抱えて笑う。

「お前……」

 けたけた言う声に振り向き、最初に口を開いたのは青色の衣装の男だ。他の五人も次々に、少年に話しかける。

「また来たのかよ!」
「もう来ないもんだと思ってたぞ」

 続いたのは茶色の衣装の男。次いで紫色の衣装の男がそれぞれ動悸激しい胸を抑えつつ、へらへらと破顔している少年に応えた。

「ずっと来てたんだから、そりゃ来るよ」

 驚かせたことを軽く詫び、アズマは六人の方へ歩み寄った。

 この六人組、彼ら呼んで六つ子ブラザーズ。体型も声も同じなのは、クローンだからではなく六つ子だから。このような場所にいるのは、彼らがシャドーの戦闘員だからだ。

 今は昔、シャドーに誘拐されたクレインを追って初めてラボを訪れた際、アズマは彼らと遭遇した。他の戦闘員に比べ緊迫感に欠けたひょうきんな発言・態度と、男子なら一度は熱狂する戦隊ヒーローさながらのカラフルな戦闘服を着込んだ姿に魅せられ、このような砂漠の真ん中まで頻繁に会いに来てはバトルを吹っかけられ……たが、しっかり勝ち星を納めてきた。

「さてはお前、オレたちを手頃な遊び相手だと思ってるだろう!」

 ようやく我に返ったらしい赤色の戦闘服の長男・モノルが噛みつき、先の笑いが抜け切らず未だにやにや顔のアズマが速答する。

「ううん。サンドバッグ」
「なお酷い!」

 緑色の戦闘服の末弟・ヘキルのツッコミに、にいっと口の端を歪めたかと思えば直後思案顔になり、「でも」と一呼吸置いてから、言い放った。

「ポケモンたちに悪いね」
「オレたちには悪いと思わないのか!」

 黄色の戦闘服の四男・テトルの食い気味の台詞。少年は今度は努めたようにぼんやりと「あんまり」と返答した。

「べえ〜っだ! いつまでも相手してもらえると思うなよ!」

 リーダーらしからぬ子供じみた仕草を交えモノルが吠える。弟たちもやいのやいのと騒ぎ、アズマはまた腹を抱えた。


「そう言えば、テレビ見たぞ」

 少しして、青色の戦闘服の次男・ジレルが思い出したように言った。
 ラボには何故だかまだ電気が通っており、地下には泊まり込みの研究員のため用意されていた家電が一通り揃っているので、ちゃっかり使わせてもらっているのだと言う。ニュースは無論、例のドキュメンタリーも視聴したとのことだ。

「お前も有名になったもんだよなあ」
「うん。オーレのヒーロー」
「自分で言うなよ!」

 ぼそっと漏らす少年に、ジレルは半笑いを口元に浮かべて返してやる。

「こんなお子ちゃまに一組織が潰されるなんて、人生どこでどうなるか分かったもんじゃないな」

 紫色の戦闘服の五男・ペタルがしみじみと息を吐き、モノルが自身らのトップを討ち取った天敵を一瞥する。

「どこにでもいる、遊びたい盛りの普通の子供にしか見えないのにな」
「わざわざこんな辺鄙な所までちょっかい出しに来やがって。ほんとここじゃただの、……ちょっとバトルが強いだけの子供だってのに」

 茶色の戦闘服の三男・トリルの呆れた口調に触発され、アズマは「六人が寂しそうだから」と返す。すると、

「寂しくない!」
 とヘキルが声を上げた。

「じゃあ、ヒマそうだから」
 取って付けたようなことを続けて言うと

「ヒマじゃない!」
 とテトルが抗議をした。

 アズマはぷくくと頬を膨らませ、打てば響く、と言う言葉を脳裏に浮かべる。これだからここに来るのをやめられない。
 ずらりと目の前に並び、真剣な表情でこちらを見据えペンを走らせる取材陣との、熱く長い談義の毎日がつらかったという訳では無いけれど。一刻も早く終わらせて、ここへ遊びに来たいと何度思いを巡らせていたことか。
 しかし六つ子とのやり取りがいくら痛快だろうと、目上をからかい回すのは良くない。本気で立腹させて相手をしてもらえなくなるのは悲しい。
 アズマは慌てて膨れた頬を手の平で押し潰し、ふすふすと息と共に笑いを吐き出しながら

「うそ。オレが楽しいから」

 そのように口にした。

『………………』

 六つ子は絶句した。
 戦闘員の標準装備、目元まで隠れるヘルメットの所為でよく解らないが、どうやら面食らった様子だ。ただ、彼らが驚いた理由は少年がそのように考えていたことにではなく、急に本音を伝えて来たことに対してだ。

 この子供が自分たちに親しみを持って絡んで来るのは、全員がよく解っていた。モノルやトリルは好意につんけんしてしまうこともあるが、元々六人共に愛情深い性質であるし、年下に慕われるのはさして悪い気はしないものだ。
 アズマが六つ子に会うのを楽しみにしているのと同様に、六つ子も少年が遊びに来るのを心待ちにしていた節がある。ゆえのくだんのやり取りだ。
 鬱陶しいなら端から相手はしない。彼は悪戯好きだが悪ガキではないし、自分たちも少なからず楽しいと感じていたから、今まで相手して来たのだ。

 先程少年が隠れていた時に六人が話していたのも、実はアズマのことだった。

 シャドーの本拠地ニケルダーク島に単身乗り込んで総帥の陰謀を砕き、数多のダークポケモンとXD001を保護して帰還したとの報道から一ヶ月強、ラボに姿を見せなかった少年。今や彼はオーレ地方の英雄だ、自分らのことなど忘却の彼方に追いやるほど忙しくなったのだろう、と六人は各々自身に言い聞かせていたが、一抹の寂寥感は否めなかった。こんな砂漠の真ん中には、少年以外に来る者は居ないのだ。

 だから今日、何事も無かったかのようにやって来て、最後に会った時と変わらない姿を見せてくれたことに、無性に安心してしまった。以前と同じ軽口を叩かれ、不覚にもとても嬉しくなってしまった。

 年下の何気無い言動に六人共が一喜一憂していると知られるのは癪なので、間違っても本人に打ち明けてはやりはしないが。

「仕方無いヤツめ! そこまで言うなら相手してやらないことも無いぞ!」

 モノルが言った。恩着せがましいこと無上だが、アズマはにこにこしてありがとうと礼をした。

「けど今日はバトルしに来たんじゃなくて、トリルさん」
「!? なんだ!?」

 脈絡も無く自分の名が呼ばれ、ややそっぽを向いていたトリルは肩と声をびくつかせて振り返った。
 アズマが真っ直ぐ茶色の戦闘服を着た自身を見据えている。何やら書類をこちらへ差し出していた。無言で受け取り紙面をちらと眺め、すぐに顔を上げた。

「アシスタントスタッフ募集。…………??」
「求人広告か?」
「なんでこんなもんトリルに?」

 三男に手渡された書類を両隣から覗き込み、やはりすぐさま少年を見やったジレルとテトルが、本人の疑問を引き継ぎ問い質す。アズマは簡潔に答えた。

「仕事辞めたいって言ってたでしょ」

 瞬時にトリルは、以前ぽろりと「バトルが嫌いだ」とアズマに打ち明けたことを思い出した。場所はフェナスシティの市長宅、乗っ取り作戦の最中だったと記憶している。そうした回想をしているとアズマが「そろそろ廃業したいけど兄弟がなぁ……」などと言う愚痴も一緒に零していたと、事の発端を兄弟たちに説明していた。嫌な予感がする。
 アズマの報告を聞き終えた茶色以外の六つ子が、残る一人を揃って凝視した。注目の的になったトリルは兄弟たちが、ヘルメットの下から非難の眼差しを向けていると理解し、固まる。直後、紫色と青色の咎めるような言葉が響いた。

「お子ちゃま相手になに人生相談してるんだよ」
「馴れ合い過ぎだろ」

 正直馴れ合っているのは六人全員共だったし、皆がそれを自覚していた。お互い様だったから、今の今まで一度でも言及しなかった。
 しかし今回つい指摘したくなったのも致し方無い。トリルが転職を希望するほどポケモンバトルを嫌っていたとは、五人は一人として聞いていなかったのだ。
 ヘキルの口癖である『オレたち六人、兄弟愛六倍!』は伊達じゃないと自負していたのに、人生を左右するくらい重大な悩みを自分たちには話さず、赤の他人、それも子供に相談していたなんて、裏切りもいいところだ。

 一方のトリルはなんだか腹が立つやら恥ずかしいやら涙が出るやら、よく解らないけども大変な心境に陥った。兄弟はじとーっと睨んでいるし、アズマはアズマで期待の眼差しで見つめているし。

 しばらくそのまま固まっていたトリルだが、自力で麻痺状態を治すといの一番「お節介め!」と少年に吐きつけ、いつの間にやらヘキルが手にしていた書類を、乱暴に奪取した。

「あんなの真に受けやがって……」

 ぶつくさ言うものの、トリルは言葉通り不快に感じている訳ではない。少年らに背を向けはしたが、少し経つと手元の紙面をまじまじ見つめ、兄弟にも聞こえるよう音読し始めた。すると先刻までの不機嫌さはどこへやら、五人はトリルの声に耳を澄ませ始める。

 アズマは満足気に頬笑み、三男が募集要項を最後まで読み上げるのを、モノルらと共に待った。

「――ポケモン総合研究所より、アシスタントスタッフ募集のお知らせ。先達てのシャドー・XD計画の阻止に伴い、無事保護し正常な状態に復帰させたポケモンの一部が、現在当研究所に在留しております。これらのポケモンはいずれも高い戦闘能力を備えており、現在勤務しているスタッフで世話を賄うことは難しいとの意見で一致したため、実力あるポケモントレーナーをアシスタントとして雇用することに致しました。アシスタントスタッフの業務は各自割り当てられたポケモンの体調管理と調教、研究補助となります。なお当募集は一般公募ではありません。見込みあるトレーナーの方へのみ、直々にご案内させて頂いております。ぜひ一度ご検討下さりますよう、よろしくお願い申し上げます。ポケモン総合研究所所長クレイン……」

 文書にはまだ続きがあったが、トリルの朗読はそこでぷつりと途切れた。


『……………………』

 六人は顔を見合わせる。全員、開いた口が塞がらない。
 ややあって、六人はアズマの方へゆるゆると視線を向ける。確認したいことが多過ぎた。

「お前これさ……渡す相手か渡す物、間違えてるだろ」

 右手で書類をぺらぺら揺らし、疑惑に溢れた声色でトリルが詰る。アズマはちょっと首を捻ってから、素直に応じた。

「間違えてない。出来そうな人に渡してくれって所長に頼まれた」
「“見込みあるトレーナー”ってのの推薦を任されたのか? お前が」
「うん」
「トリルに渡したってことは、トリルが“見込みあるトレーナー”だってお前が判断した訳か?」
「うん。ちょうどいい仕事でしょ」

 長男と次男からの続け様の質問に頷き、そう付け加えた。いい加減とも取れる少年の発言に、話題の中心人物である三男は一瞬だけ鼻白み、そして猛々しく開口する。

「おいおいおい! お前オレたちを誰だと思ってるんだ? シャドーの戦闘員だぞ!?」
「解ってるよ。でもシャドーは壊滅した」
「知ってるよ! 壊滅の原因お前だろうが! そういうこっちゃなくて!」
「リライブ研究の第一人者が、“元”でもシャドーの人間を雇うはずが無いだろ」

 気ばかり焦って咄嗟に妥当な言い回しが出て来ない兄に代わり、四男が鋭く突いた。「それだ!」とトリルが叫ぶ。

「クレインって男、ここに軟禁されて幹部にいくら詰め寄られても、XD計画を全否定して協力を拒んでいた、って聞いたぜ」
「下っ端だろうと、オレたち一度はダークポケモンを使っていたんだ。いくらオレらが腕のいいトレーナーって言っても、トップがそれじゃあ期待するだけ無駄だろ」

 と、五男六男が続く。

 どう贔屓目で見ても優男にしか見えないクレインは、その実外柔内剛で、自分の意に反することには特に一徹だった。彼を懐柔しようと目論んだ幹部ラブリナも、その頑固さを前に匙を直属の部下に投げつけ、最後はアズマから説得してくれと異様な頼み事をする始末であった。

 二人の言う通り、この人事にクレインは難色を示すに違いない。
 けれど今のアズマには、争わずして彼を納得させられるだけの力があった。

「シャドーと戦って負かして、全部のダークポケモンをスナッチしたオレが“いい”って言うんだ。大丈夫」

 右手の親指をびしと立て、アズマは得意顔になった。

 自信満々が過ぎていっそ無責任なくらい軽く宣言した少年に、六人は再度閉口せざるを得ない。
 どこにそんな明言を呈するに至らせる理由があるのだろう。それは次に続く発言で判明した。

「いざとなったらみんなのポケモンを見てもらえれば、腕がいいか悪いか、所長にはすぐ解るし」

 ポケモントレーナーの腕前は、バトルの勝敗だけでは定まらない。勝ちが多いに越したことは無いが、ポケモンの健康状態と信頼関係をこそ、人は重要視する。バトルをしない人間なら尚更顕著だ。

 彼ら六人が持つポケモンは、どれも常に万全の状態に調えられており、そしてとても強かに育て上げられていた。皆分け隔て無く調教しているのだろう、各自のポケモンは全て同等の実力を備え、回数を重ねる毎に手強い相手になっていった。結果的にはアズマの勝利でも、彼のポケモンが一匹でも倒れなかったことなど一度も無い。相手側の一匹に、アズマのポケモンが続けて何匹も打ちのめされることも少なくないのだ。(余談だが、アズマは六つ子が持つポケモンの中ではトリルのケッキングが一番強(こわ)いと思っている。ジュゴンの手助けでキノガッサのスカイアッパーを強化し、一撃で仕留めようと考えた折に燕返しをお見舞いされ、キノガッサが文字通り手も足も出せず撃沈したという、かなり苦じょっぱい思い出を刻まれたことがあった。トリルのバトル嫌い、それに反するポケモンの強さは“好きと得意は違う”の良い見本になるだろうか。)

 敵対していたシャドーの人間を前にした時、クレインも母リリアも、研究所の人々は一人としていい顔をしないだろうことは、想像に難くない。
 だが一旦両者の間を、主である人間に大切にされて来たポケモンが通ってしまえば、善も悪も敵も味方も、概念ごと消失してしまう。
 『ポケモンを愛する人に悪い人はいない』という不思議な法則によって、先入観や価値観を有耶無耶にされてしまう。
 ちょうど今ここにいる自分たちが、ポケモンを通じて繋がりを持ち、交遊を得たように。

 穏やかに明るく、アズマは話した。

 それなのに彼の澄んだエメラルドの瞳は、どこか真摯で必死な色を宿していて、なんとしてでも彼らを説き伏せようとしているかのように見えた。泣いて縋りつく幼児を彷彿とさせる。

 少年のその目つきに気圧された訳では無いが、六つ子はしばし黙り込んだ。
 それから、

「なあ、坊主……その雇用、あと五人くらい名乗り上げちゃダメか?」

 不意にそう、ヘキルが問うた。

「今となっちゃ、オレらも廃業したい……って言うより、現に廃業してるしな……」
「ダメ元で行ってもいいか?」

 末弟に続けとばかりに、モノルとペタルが言葉を発した。
 皆互いの言わんとすることを予期していたようで、一切動揺を見せない。三人の提言に心情と眼差しとを揺らめかせたのは、アズマだけだ。
 少年は、知らず知らず張り詰めさせていた緊張の糸をほどき、返す。

「ダメじゃないよ。シャドーはもう無い、いつまでもここにいなくたっていいでしょ」

 先程の少年の反応を六つ子が踏襲する。それは、安堵の情だ。
 アズマは緩やかになった心中でほっと息を吐いた。
 本当は始めから六人共を誘うつもりだったのだ、彼らの申し出は願ったり叶ったりだった。

「研究所からここまで来るの大変だ。同じ場所にいたらすぐ遊んでもらえる」

 少年の出方を窺う様子だった六つ子だが、そんな台詞を投げられるとにわかに、いつもの調子が戻って来た。

「お前、そんなにオレたちに遊んでもらいたいのか?」

 そんなモノルの問いに対し、アズマは

「オレ妹しかいないもん」

 少しだけ悄気た顔で、答えた。

「弟になるかってテトルさんに訊かれて、すごく嬉しかった」

 いつかのバトルの後、「オレたちの兄弟になるか?」とテトルに訊ねられた少年が非常ににこやかに応じていたことがあったが、あれが本心からの返事だったとは、四男含め全員が夢にも思わなかった。

「お兄さん、欲しいなって思ってたんだ」


 長子という己の立場や妹の存在が気に入らないのではなかった。
 マナのことは生意気だと感じる時もあるが、自分によく懐いてくれているし、守ってやりたいと思っている。マナの面倒をよく見てアズマは偉い、流石はお兄さん、などと褒められるのも誇らしいものだ。
 でも妹が、母や周囲の人々に甘やかされているのを見ると、いつの間にか彼女を羨望している自分に気がついて、なんとも侘しい気持ちになった。そして決まって、自分も誰かにわがままを言って困らせたくなる衝動に駆られたのだが、リリアやクレインが相手では、アズマは自分がそうしている姿を全く想像出来なかった。親や、それに近い歳の人間を相手に求めている訳ではなかったのだと思う。

 それから六つ子と知り合い、親しむようになってからしばらくして納得した。
 彼らにちょっかいを出し、軽口を叩き、からかって、怒られ、笑う。その時の自分が不自然ではなく、その時間がやたらに楽しく、次が待ち遠しくなって。こんな兄たちが居てくれたらいいのにと憧れ始めた。自分も誰かの弟になりたかったのだと、気がついた。

「子供って、あんまり思われなくなったし。オレまだ大人じゃないのに」

 言って、アズマは目を伏せる。

『………………』

 初めて見る意気消沈した少年の姿に、六つ子は甚く心が痛んだ。自分たちと相対する時はいつも、にこにこか、へらへらか、にやにやしているだけに、尋常でない違和感だ。

 生まれてからたった十年とちょっとという幼さで、あれほどのことをやって退けたのだ。一人前扱いは当然の処遇と言える。
 しかし六人から見るアズマは、テレビが連日讃えるほどの英気を備えた大人ではなかった。
 その雰囲気は英雄でもなければ神童でもない、まだまだ悪戯盛りで半人前の人間のそれ。他より少しだけポケモンバトルの才能に恵まれた、至って普通の男児だった。

 大人として扱われ、兄として気丈な態度を求められ――。
 冷血とまではいかないけれど、どちらかと言えば感情的ではない印象の少年が、恐らくそういった無意識の束縛に表情を曇らせている。余程鬱屈しているのだと六人は解した。

「六人と話したりバトルしたり楽しい。みんなはオレを子供扱いしてくれるもん」

 どこへ行っても不分相応の待遇を受けてしまう自分を、しょうがない子供だと言って構ってくれる、それがとても嬉しいと少年は伝え、口元だけで薄らと笑んだ。アズマにとって六人は、数少ない息抜きの場を作ってくれる存在だった。少年が六つ子と親しくなったのはポケモンのお陰でもあり、彼らと自分が持つ性質が上手く作用した結果なのだろう。

「みんな研究所に来てくれたら、毎日楽しいだろうなあ」

 頼りなげな微笑を浮かべていたアズマはそこでやっと、六人が馴れ親しんだやや締まりの無い、そして屈託の無い笑顔を見せた。

 その笑みと稚拙な台詞に、六人は思案する。

 少年が、己が快く生活する為だけに自分たちを研究所へ引き込もうとしているのなら、それは究極のわがままだ。
 なんと自分勝手で、傍若無人で、幼稚な振る舞いだろう。
 けれど、不快には思わない。呆れてはしまうが、怒る気にはならない。困った仕業だとは思うが、多分それは、今の彼が抱く唯一の切望なのだと、六人には感じられるのだ。


「…………まったく」

 やがてモノルがやれやれとかぶりを振り、一つ溜息して口を開いた。

 今の自分たちに、目指すべき当ては無い。
 だったら、彼のわがままに付き合ってやるのも悪くない。
 この子供の望みに付き合うことが、わずかとはいえ悪事に手を染めたことへの罪滅ぼしになるのなら、これほど愉快な贖罪は、きっと他に無いだろう。

「つくづくしょうがない子供だな、お前は!」

 優しい言葉をかけてやることも出来なくはなかったけれど、多分これまで同様、無闇に啖呵を切る方が、自分たちの間柄に相応しいと思える。

「そこまで言うなら行ってやるか!」
「他に当てが無いから行ってやるだけだからな!」

 モノルに倣い、ジレルとトリルも偉ぶった口調で続いた。

「その代わり絶対全員雇わせろよ!」
「給料はたんまり弾めよ! って所長にやんわり頼めよ!」

 更にテトルとペタルが理不尽な言葉を続けて、そして。

「解ったのか、坊主!」

 ヘキルの脅迫めいた締めの台詞にアズマは、とびきり輝かしい笑顔で応えた。

「うん!!」


 少年のあどけない満面の笑みをヘルメット越しに眺めながら、六つ子は「それに」と心中で付け加える。

 彼が姿を眩ました一ヶ月強の間――
 じわじわと味わわされたあの言い様の無い寂しさだけは、二度とごめんだ! と。







 早速今から研究所に来てくれとの少年の言葉に、六人はわずかに気後れするも、了解した。こうしてのんべんだらりとしている間にも、研究員とポケモンたちは名手の到着を待ち侘びているはずだ。
 善は急げ。

「じゃあモノルさんは後ろに乗って」
「おう」

 アズマはスクーターの座席の、普段より前方に腰掛けて、長兄に乗るよう促した。
 次にラボの玄関脇に無造作に停められた、グラードンを想起させるカラーリングのトラック(アズマはテレビや書物でですら実際の姿を見たことが無いが、カミンコ博士が発明したメカ・グラードンに似ていると思ったので、本物にも似ているのだろうと解釈した)に目を留める。

「あの車、動くの?」

 テトルが頷く。

「ああ。昨日も乗ったし給油したてだ」
「三人乗れる? なら、テトルさんとペタルさんとヘキルさんは車で」
「オーケイ」

「…………えーと?」

 呼ばれた三人がトラックに乗り込むのを傍らに見、残る二人が「オレたちは?」とでも言いたげに首を傾げる。アズマは彼らの所作に気がつくと、その片割れにこう訊ねた。

「ジレルさんのメタグロス、元気?」
「は? 元気だけど……」

 それがどうかしたかと訊き返そうとしたジレルより先に、トリルが「まさか」と小さな声を漏らした。

「メタグロスって、二人くらいなら乗れそうだよね」
「そのまさかだった!!」


 そうした一悶着を交えつつも、七人はシャドーのラボを無事発った。二人乗りのスクーターを中心に、三人乗りのトラックと二人乗りのメタグロス(四足を折り畳んでの低空磁力飛行)が、広大な砂漠を北西へと並走する。
 その間じゅう、アズマはなんやかやと連れ合いに話を振っていたのだが、彼が名を呼んでそちらへ視線を投げる度、六人は到底信じられない心持ちにさせられた。

 何故なら、この六人兄弟を一人も間違えずに指し示すことが出来た他人を、初めて目の当たりにしたから。両親ですら完全に一致させたのは片手の指でも余るほどの数だったのに。シャドー入団時、解り易いようテーマカラーを設定したが、ついぞ組織の誰にも覚えてもらえなかったというのに。
 当初はまぐれだろうと高を括ったものだが、アズマの声にも目にもまるで迷いの影が見当たらず、「完璧に把握していやがるぜこいつ」との判断が満場一致で下された。

 やはりこいつ、ただの子供じゃないかも知れない……。
 ほんの少しだけ空恐ろしくなる。

 六人がそんな風に考えていることも露知らず、少年はのんきな顔でスクーターを運転している。
 彼がポケモンのこと以外でここまで情報を整理し、記憶しているのは前代未聞、未曾有の事態だ。アズマの随分な物臭気質を知る由も無い六つ子が真相を知って、なんとも名状し難い気分になるのは、いつのことになるだろうか。




 しかしそれにしても、だ。

「まさかこんなお子ちゃまに就職を支援してもらうなんてな……」
「本当、人生どこでどうなるか分からないよな……」

 車内でペタルとヘキルがぼそぼそ言い合いうんうん頷いている横で、スクーター側の席に座るテトルが少年に話しかけた。

「ところでお前、好きな色考えたか?」

 吹きつける風の音や車両のホバー音に負けじと、朗々とした声で問うてきた四男に、アズマは大きく頷き、言った。

「無色透明」
『ありのままか! 今の状態だろそれ! ブラザーズする気さらさら無いな!!』

 示し合わせたはずが無いのに見事なセクステットが背後と両隣から跳ね返って来て、アズマはからからからからっとソルロックみたいな声で笑った。
 心に一点の曇りも無い。そんな風に笑う少年に釣られて、やがて六つ子も皆笑い出す。しまいにあろうことか、機械さながらな風貌のメタグロスがグガグガ笑った(?)。

「ぅおアアーっ!!」

 がくんがくん揺れてジレルとトリルが転落しかけた。




 ――かくしてアズマの推薦の下、六つ子ブラザーズはシャドー戦闘員から研究所スタッフにジョブチェンジし、ポケモン総合研究所はまた一段と賑やかに華やかに(色合い的な意味で)なったとか……
 ならなかったとか。





《おしまい(多分続かない)》


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
鳩さん、先日は大層な品を頂いてしまいまして、有難うございます!!(いきなり私信)
お礼申し上げがてら何か投稿しようと思いました。頂き物に便乗して、温め過ぎてでろでろに溶けているBWのフォルクローレ的な話を短くして書くつもりが、今個人的に熱いXDに…。トリルの廃業希望発言で浮かんだ妄想でした。病気?いいえ正常です。アズマそこ代われ。
書く内にどんどん入れたいことが浮かんで、どれが必要でどれが不要か整理するのに時間がかかるの、どうにかなりませんかね。ガラケーで連日打っても二週間かかるなんて(涙)。
秋まで待てないってお前もう秋じゃないか!(ヒント:長編板)

それはさておき、十年の時を経てXD2ndプレイしています。コロシアムもやり直したいですがダキム戦の守る+地震コンボがトラウマで手付かずで候。
話の通り六つ子が大好きです可愛い。お前ら何歳なんだ。顔見せろ!……やっぱ見せなくていい!(複雑なオタク心
兄弟順が解らなくなったのでWikiを見たら名前の由来も解ってすっきりです。ついでにモノズとジヘッドも理解。由来が解ると楽しいですね。
ラストに備えてレベル上げ中のため、エンディング後についてはあやふやです。引用した台詞も多少あやふや。←
ちなみにアスカは拙宅のコロシアム主人公です。原作にはそんなアニメは出て来ませんので悪しからず(当たり前)。オーレの夜明け云々は後半にONBS本社で目に出来ますが、ドキュメンタリーかどうかは…。捏造って素敵ですよね。

修正しにまた来ると思います…何回も見直ししてると訳が解らなくなってきます…
■追記:とりあえず修正しました。途中、以前から調子が悪かったガラケーが帰らぬひとになりました。最後の大仕事、お疲れさまでした……(合掌)。

ダーク・ルギアに拉致られて(誤)飛行していた輸送船をホエルオーと見間違え、周囲に馬鹿言うんじゃないよと否定されて拗ねたアゲトビレッジ在住のご老人、ビルボーさんの台詞「ホエルオーは空を飛ぶんじゃ!」にときめきました。うきくじら!

▼十年前の絵で恐縮ですがおまけ。ちょっと季節先取り。

このゆびとまれ (画像サイズ: 682×469 79kB)

- 関連一覧ツリー (★ をクリックするとツリー全体を一括表示します)

- 以下のフォームから自分の投稿記事を修正・削除することができます -
処理 記事No 削除キー