【008】いつか帰る その日まで 作:一刀流。

☆24 ☆☆4 ☆☆☆2 =38


☆☆☆
 テーマはタマゴと思われる。誤字脱字及び話の流れに不自然な点は見当たらなかった(5/11時点)。テーマのタマゴは全体的に話に入っており、作品の中で重要なものであると判断できる。以上の点から☆☆☆とした。これは評価と関係ないが、重い話が多い今回の作品の中で、ややお笑いに走っているので非常に好感が持てた。
あつあつおでん


 グッと来た文【「答えは簡単。同じく育て屋さんに勤めている、中島さんのことが好きだからだ」】
 育て屋に働く理由から仕事中での行動に……歩君、中島さんにメタ惚れしてますなぁ。(ドキドキ)最後のいつか孵るという言葉から、いつか中島さんのところに帰って、生まれ変わった自分を見せるぞ! という歩君の意志がビシビシ伝わってきましたです。歩君の恋心も個人的に甘酸っぱい感じがして良かったです。 好きな子との距離を縮めようと告白を試みようとするところなんかは特に。(ドキドキ)
巳佑


 お題:タマゴ(物理的、育て屋)
 主人公の育て屋に勤め始めた動機の不純さ、それがいい!(爆)しかし、幸せから一転、ラストでそれが一気に展開されるところで、うわあああああとディスプレイの前で主人公と同じく悲しみを味わってました。でもそのせいで、どうしてもタマゴよりカゲマルよりケンタロスの印象が強くなっちゃうのがなぁ…
>次の日。僕は退職の有無を来宮さんと中島さんに伝えた。……「有無?」誤字でしょうか?
レイニー

☆☆☆
 主人公の軽妙な語り口は主人公が育て屋で働くまでになった経緯と相まって、主人公のお気楽な若者らしさが伝わってきた。また、中島さんを描写する時は、主人公の中島さんに対する愛がうまく表れていて、中島さんのビジュアルが容易に想像できた。ただ、一度の失敗で育て屋をやめるというのは少々物足りなく感じた。
西条流月


 そんな大げさな。というのが読んだ率直な感想です。彼女がこんな目にあったのは別に軽々しい気持ちで好きになったからではなく、歩が注意力散漫だったからでしょう。好きであっても、注意力をつけようと思えばいくらでもつけられると思うのですよ。極端な行動に走るのは周りからしたらただのドアホウです。大事なことが何一つ見えていない。歩がやるべきことは、仕事の一つ一つにもっと注意を払って業務をこなすことではないでしょうか。この子がやってることはただの逃げです。それでいいのか!
乃響じゅん。

(自由感想)
・ニックネーム「いつかまで」 ・くどい。同じ内容を繰り返しすぎ。
・主人公は気持ち悪かった(思い込みが強すぎる)。
・男の中では最高にかっこいいかもしれないけれど、中島さんからしたら捨てられた話も同然。
りえ大統領


最後の旅立ちの理由を物語にして、旅立つ決意で終わるのはおもしろいと思いました。また「帰る」と「孵る」はやはりかけているのでしょうか、そこもおもしろいと思いました。ちょっと気になったのですが、来宮さんが言っていたのは、タマゴの中に「苦しみ」を入れて、その苦しみを受け入れられるまでしまっておくということでしたが、歩くんがタマゴの中に入れたのは「彼女への想い」でした。苦しみ=彼女への想い と単純に受け取ろうとは思いませんが、なんだか来宮さんと歩くんの解釈のずれが生じていると感じました。さらに引用してしまって申し訳ないのですが、「悲しさも、苦しさも、悔しさも、全部受け入れることが出来るくらい、強くならなければいけない。そしてその想いを糧に、さらに強くなっていかなければならない。」この部分を読んでしまうとつまり、さらに強くさらに強くと終わりがなくて、自分で自分を認めることのできる時なんて来ないんじゃ……と思ってちょっと悲しくなりました。切ない悲恋の物語でした。少し直すだけでもっとよくなると思います。一部で言葉の誤用があったように思いますが、私の貧弱な語彙では判断しかねるのでその部分は評価対象にしませんでした。



読みやすい文章でした。


 テーマは悪くないが、ドラマのイントロだけがあって、これから本編が始まるぞ、というところで尻切れトンボになってしまっていると言う印象。人間関係(特に主人公とヒロイン)の描写が物足りない。告白してOKをもらっているような間柄には全然見えない。普通に片思いでいいのでは。>僕──岸本 歩(きしもと あゆむ)──>彼女──中島 優(なかしま ゆう)さん──を呼びに行った。のような表記が少々うるさく感じる。もっと本文の中に埋め込んだ形のほうがいいのではないか。どうせ語りは主人公の一人称だし、必ずしも無理に名前出す必要もないかも。
>務め始めてから一ヶ月ほど経った頃、僕は中島さんに告白した。務める→勤めるでは?
>次の日。僕は退職の有無を来宮さんと中島さんに伝えた。退職の「意思」等では?「有無」ではおかしい。
サトチ


 軽妙で、文字通りライトなノベル。そういう意味での文体のまとまりはあるが、内容が淡泊で作中主体に魅力がない。
 ケンタロスの尻尾を踏む件までは、全編明るい陽光に照らされた雰囲気で、まさに地に足の着いていない“天にも昇る心地”の作中主体そのものである。それは悪くない。
 が、彼女のオーケーをもらった次の大段落で、またヒトカゲと暮らす喜びのオンパレードとなる。そこでは“美味しいものを食べた時、面接に合格した時、プレゼントをもらった時。”と喜びを例えているが、ついさっき天に昇ったばかりでは、これらの喜びは霞んでしまう。
 むしろここで彼女のいる喜びと、育て屋としての喜びを並列させることで、人間的成長を見せなければならなかった。育て屋としての喜びが日に日に膨らんで、仕事の技量は高まり、責任感も増してくる。そんな彼を中島さんが頼もしく見つめる。こうした描写が皆無である。 よって“人生というのは、自分を大きくしていくものなんじゃ。”という来宮氏の言葉がまったく活きていない。彼はタマゴが窮屈になって旅に出るのではなく、ただ逃げ出したようにしか見えない。
 四千字以上の文字とこれだけの行空けを使って、この内容では評価はできない。「スラムダンク」の安西先生よろしく、来宮氏にいい台詞を言ってほしかっただけなのではないか。
渡邉健太


 ボーイ・ミーツ・ガールと言うヤツですね。
 ……自分には到底書けない、繊細なジャンルです(苦笑)字数は適当で登場人物も自然体。 ストーリーも余計な寄り道はせず、直線的で無駄がありません。 純粋に物語を楽しむには、非常に適した作品形態です。主人公の心理描写も好人物感が漂っていて、感情移入も容易でした。 ……まぁ、毒気が無さ過ぎて反って恥ずかしくもあった面もありますけどね!(笑)けれどもそう言った諸要素は、裏を返せばまた、弱点にも繋がってしまいます。 文章全体が大人しいという事は、山や谷が少ないと言う風にも取る事が出来ますし、寄り道せずに一直線なストーリーでは、そう言うジャンルに感心の浅い読者の心を惹き付ける事が出来ません。後、一番強く感じた点なんですが……これ、別にポケモンじゃなくともいい気がするんです(汗) 作品を読み終えた時に感じるのは、主人公の純粋さに対するエールなのですが、そこにはポケモン世界ならではの感触や感慨と言ったものが、非常に薄い。魔法や武芸を駆使したファンタジーは勿論、普通の現実世界にも、すんなり置き換えられそうな感じ。
 もう少し、ポケモンならではの味を生かして欲しかったですね。
 駆け抜けるような青春の一コマ。 願わくば、次の作品はより一層深く引き込まれる世界観で語られるように!これからも頑張ってくださいね。
クーウィ


 第一に、主人公のバックグラウンドをちゃんと語れ、ということを主張したい。
 きっと主人公は彼女に出会うまで、何の目的も無く、渇いた人生を歩いてきたんだろう。彼女に出会い、アルバイトに応募、毎日が発見の連続。生活に潤いが出てきたのだろう。
 だが、読者がそれを感じるためには情報があまりに不足していないだろうか。 なぜ主人公はポケモントレーナーにならなかったのだろう? 育て屋のアルバイトをする以前はどうしていたのだろう? 普段どんな生活を送っていたの? ポケモンが好きだっていうけど実際どの程度関わってたの? どれくらいのことを知ってるの? という情報が。
 憧れのあの子に近づくためにアルバイトに応募。それを読者がどう評価するか、それは事前の情報(何かの折に触れて示してもよい)にかかっている。 だが現状、彼と云う人間をどう扱ったらいいのか読者が判断できないのだ。 結果としては、主人公がポケモンをうまく扱えなかったために彼女にケガをさせてしまったのだが。だから読者は「ポケモンが好きといっても、あんまり関わってなかったんだろうな。トレーナーにもならなかったし、毎日なんとなく過ごしてたんだろうな」ということをなんとか想像することが出来る。(※ただし、審査のために、好意的に理解しようと読んだ場合に限る)
 そして第二に旅の目的をしっかり示しなさいということを言いたい。守れるくらい強くなるって具体的に何をするのかさっぱりわからないのである。トレーナーとして修行をすることで、ポケモンとうまく付き合えるようになるのか、あるいは別の方法をとるのか。それこそ生まれたヒトカゲ(ちょうど初心者用のポケモンだし)を貰ってトレーナー修行をする、とかだったら、かなり明確になったと思う。
 彼女を守る力を得る為に今の場所に留まって修行したっていいのである。旅立つなら目標を示しなさい。具体さを示さぬ旅立ちは彼女からの逃げにしか見えない。
※言いたい放題になってしまったのでフォローしておく。不純な動機からある世界に入る(きっかけってそんなもんだよね) → その世界の魅力に気づく → だが、自身の未熟さから何らかのトラブルになる → 今のままではだめなんだと気づいて行動に出る という構図は、誰でも何かしらの経験があって共感を覚えるんじゃないだろうか(そこでやめてしまうのか、続けるのかの差はあるが)。舞台設定自体は非常にいいと思う。
お題:タマゴ
タグ:一人称、育て屋、ヒトカゲ、ケンタロス
地方:不明
死亡:なし
No.017


 来宮さんええ人やでぇ! と言った側からなんですが、キャラの名前を文章自体が短いのに大量に出されても誰が誰かほとんど分からなかったです。個人的には名前の必要性ははっきり言えばほとんど無い(出しても一人くらいで良かった)ように思います。僕とか彼女とかの方が分かりやすかった。 それに庭などの設定が十分に活かされておらず、他にも様々無駄が多いように感じます。特にこれほんとに要らないだろと思ったのが、
>ちなみに中島さんの誕生日は二月四日だ。
 知ったこっちゃない。これは流石になんなんだとちょっと来ちゃいました。そもそも今が何時か知らないのにそんなこと言われてもなんの意味もない。ところでわたしの誕生日は12月15日です。で、何? と思いました? そう思ったら普通の反応です。そうでないならちょっと……。 あと、ほのぼのした話が続くと思ったのにケンタロスの件から展開が全力疾走したため置いていかれた感じがあります。いつの間にこんなシリアスに。
>いつかは正社員になってみせる。
 育て屋って企業なの!? 活轤ト屋とか笈轤ト屋とかそんな感じだったのね……。確かに企業でなければ土地や食料とかが……。でもやはり企業とはイメージしづらい。説明が欲しいところです。
>息を荒くした僕と、洗剤の泡で手を白く膨らませた中島さんが戻ってきた頃には、 中島さん先に手を拭かないの!?>自信を持て、歩。僕は中島さんに相応しい男だ。
 相応しい理由が中島さんがオーケーしてくれたというなら弱い。もっとなんらかの確証が欲しい。
>だから彼女へのこの想いも、しばらくタマゴの中に閉じ込める。
 苦しみを閉じ込めるんじゃないんですか? このままでは彼女への好意を閉じ込めたように感じます。
 タマゴというお題がただの舞台設定止まり。育て屋じゃなかったらタマゴ要素ないですよね。
でりでり


一読目:いきなりリア充か。とか思ったことは否定しないけどね。ただ、展開が唐突。ケンタロスが彼女に突っ込んで彼氏が旅に出るって、どういうこと?それを踏まえて乗り越えないの?とか思った。
二読目:じっくり読んでいくと「何故に?」と思うポイントがいくつか。最初はヒトカゲの卵がでてきて、テーマどおりかなと思いきや歩くんが彼女への愛と魅力を語りだす。幸せムードいっぱい、でケンタロスの尻尾踏むアクシデント。それで彼女にふさわしい男になろうと旅に出る…ってなんじゃこりゃあ。なんというか、この歩君なる主人公の思考回路が読めないというか。旅に出た間に彼女さんに新しい彼氏ができた場合こいつはどうなるんだ、とか余計なことを考えてしまった。
三から八読目:うーん。悪くはないしそこそこ面白い。けどやっぱりなんだかなぁ。
九から十読目:結論、☆一つ。だってなぁ、結局歩君は彼女を守るために強くなろうと旅に出るわけだ。「うん、で?」という感じが強くなってきたんだよね、何度も読んでいくと。終りがちょっと拍子抜けする。
音色


<作品情報>
テーマ種別 →タマゴ
作品タグ →【物理的なタマゴ】【観念的なタマゴ】【急転直下】
ポケットモンスターシリーズの二次創作としての意義 →問題ないレベル。
テーマの消化度合い →良くも悪くも普通。
<講評>
 タマゴの誕生という物理的なタマゴの側面、そして殻を破って成長する観念的なタマゴの側面。この両方が盛り込まれている作品と言えます。主人公が憧れの中島さんと同じ職場に属し、有頂天になっていたところをガツンと(ほぼ文字通り)一撃食らわされ、己の不甲斐なさを恥じて旅立つ……そういった流れになっています。構成としては破綻していませんし、大きな問題があるとも言えません。
 ただ、如何せん展開が急転直下に過ぎます。読者が「何が起きたのか」を把握する前に岸本さんが育て屋を止めてしまい、そのまま〆まで滑り込んでしまうような印象です。岸本さんにとって大きな出来事だったにも拘らず、割かれている文章量が他のシーンと比較しても圧倒的に少ないです。多ければいい、というものもありませんが、これについては少なすぎると言わざるを得ません。それに至るまでの経緯もかなり軽いノリで書かれていて、岸本さんの心情が上手く伝わってきません。ここは大いに改善の余地があるかと思います。いろいろ指摘しましたが、私としてはこの評価です。今後の更なる活躍に期待しております。
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