マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
このフォームからは投稿できません。
name
e-mail
url
subject
comment

[新規順タイトル表示] [ツリー表示] [新着順記事] [留意事項] [ワード検索] [過去ログ] [管理用]

  [No.248] vol.3 命の危機と恋心 投稿者:マコ   投稿日:2011/03/23(Wed) 11:15:14   59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

バトルサブウェイでは、一周、つまり7連勝するごとに休憩がはさめる。
その時に、ポケモンをチェンジすることも可能なのだ。
私達はお互いの手持ちを知るという意味を兼ねて、一周終わるごとにポケモンをチェンジした。
私の他の手持ちはドレディア、ウォーグル、メタグロス、ゼブライカ。
ケンジ先輩の他の手持ちはキングドラ、ロズレイド、ウインディ、ルカリオだった。
そのメンバーで勝ち続ける中で、2周目の途中、こんなことがあった。

対戦相手のうちの一人がこういうことを言ってきたのだ。
「何でお前、ドレディアなんて使ってんだ?草技しか使えない能無しに……」
心なしか、ドレディアが泣きそうだ。ビーズのような、橙色の瞳が潤んでいる。
「お前何アホなこと言うて……」
私はケンジ先輩の言葉を遮って言った。
「ドレディアをバカにしないで!……ドレディア、あなたは私の大事な仲間の一人だから。ケンジ先輩、……ここは私があいつに断罪してやります。」
「わかった。」
「ドレディア、蝶の舞、そして、花びらの舞。」
「バカか!お前。花びらの舞は何回か強い威力で攻撃できるけど、その後混乱するじゃねぇか!しかもさぁ、キーの実持ってねぇじゃん!」
「私のドレディアは混乱しないんですよ。」
「バカだろ、どうせお前も」
「最後まで聞いて下さい。私のドレディアの特性はマイペースです。我を見失わないマイペース。」
「……!」
蝶の舞で威力が上がった花びらの舞は相手を追い込むのに良かった。
「ポケモンのことをバカにするあなたに、バトルサブウェイは厳しいの。考え方変えないとダメだね。」
私はうなだれる相手にそう言った。
「お前、なかなかカッコ良かったで。俺、あんなに落ち着いて相手を怒れへん。」
ケンジ先輩に言われた私はこう返した。
「自分をバカにされることは耐えられます。でも……、自分の仲間や、大切に思う人がバカにされることは耐えられません。」

そして、いよいよ20戦目。これに勝つと、サブウェイマスターと戦える。3周目なんて初めてだ。相手もかなり強いし。
ただ、相手を見て私は絶句した。最初にケンジ先輩に言い寄ってきた女がタッグを組んで、私達のもとにきたのだ。
「まぁだこんなブスと組んでたのオオバヤシくん。」
ふざけるな。あなた達は気持ちが汚れてる。
何で僻むことしかできないの?
尊敬ができないの?
「サカモトを悪く言うんや。お前ら最低や。」
「ブスの女のことでしょう?」
ケンジ先輩は極めて冷静に言った。
「最低なのはお前らや。心がアカンってここ乗る前に言うたよな?何回も言わすな。」
「オオバヤシくんに好かれるために……ブス女を潰してやる。」

バトルは始まったけど、事件はすぐに起きた。
女達はホイーガとダブランを出した。
私はメタグロスを、ケンジ先輩はウインディを出した。
ウインディが神速で駆け出し、ダブランを弾き飛ばしてノックアウトしたと同時に、ホイーガはメタグロスに毒針を出した。メタグロスに毒は効かないが、なんと、その毒針は私に刺さったのだ!
「ホーッホッホッ!私はホイーガに『ブス女に毒針を撃って』と命令したのよ!これでトレーナーが一人だけだから私の勝ちね」

バシッ!!!

乾いた音が車内に響いた。
「お前……自分がしたことの重大さ分かっとるんか?あぁ?!トレーナーとして最低のことしよるやんけボケェ!」
「ケンジ……先輩……?」
周りの景色が歪んできてる。

ピンポンパンポーン

「マルチトレイン20戦目の女性2人連れ、バトルサブウェイ規約第3条に違反したことにより、警察があなた方を連行します。トレーナー資格剥奪の厳罰も覚悟して下さい。」
女達は、雪崩れ込む警官隊に連れられて、どこかに行った。



「サカモト、頼む……生きてくれ!」
俺はバッグの中にあるモモンの実をサカモトに口移しで与えた。弱っている人に口移しで食べ物を与えるのはいい方法だろう。モモンの実なら人にも合う味で、解毒作用もある。
「ルカリオ、癒しの波動。」
他のポケモンを癒す技、癒しの波動をサカモトに行った。あくまでポケモンの技やから、人に効くか微妙やけど、やるしかない。



私、嫌、私の意識は真っ白な場所で目を覚ました。
「ここ、どこ?電車は?ポケモンは?ケンジ先輩は?」
川が私の目の前にあった。多分これが三途の川だろう。
「あぁ、私、死んだんだ。」
その川の向こう側に2人いた。
「おじいちゃん、おばあちゃん!」
私は駆け寄ろうとしたけど、
「マイちゃん、あんたはまだ来ちゃいけないよ。」
おばあちゃんに止められた。
「何で、私死んだのに」
「あんたを助けるために必死になっている男の子とポケモンがいるのに、あんたはそれを見捨てるの?」
「嫌、それは嫌だ。みんな心配してるのに、私が諦めたら、今まで歩いてきたポケモンと、大切な人が悲しむ。」
私は号泣した。
「走って戻れば間に合うから行きなさい。」
「わかった、おじいちゃん、おばあちゃん!」
私は走り出した。みんなのために。自分のために。



先輩、初めて見た時から言葉には出せなかったけど、大好きが溢れ出しそうでした。
カッコ良くて、口数はあまり多くないけど、音楽とバトルでの勇姿が輝いてました。直接話す機会が少なかったのに、話した時に親身になって聞いていたのが嬉しかったんです。
高校時代から数年後、今日、ここで再会した時、言葉に出すと恥ずかしいけど、運命ってこういうものかなって思いました。
生きて帰ったら言います。
「ケンジ先輩、あなたの全てが大好きです。」



俺はみんなが思うほどカッコ良くない。ケンジくん、ケンジくんってみんなちやほや言うけど、ちやほやされんの嫌やねん。
けど、お前は違ってた。俺に憧れてたのはみんなと一緒やったけど、あまり積極的にアタックして来ぉへんねん。
その控えめさが逆に良かった。
実は、高校時代からサカモトのこと好きやった。けど、言われへんかった。
俺が好きって言うたらあいつは嫉妬されまくっていじめられてここにいないはずや。あぁ、この頃からか。俺が恋を叶えられないのは。
再会して、バトルサブウェイでタッグを組んで、相棒としてぴったりやったって感じた。
お前が帰ってきたら言うわ。
「サカモト、俺はお前が大好きや。」



「……モト、サカモト!」
ケンジ先輩の声がする。
「……先輩……」
やっとのことで声を絞り出すと、ケンジ先輩が強く抱き締めてきた。
泣いているのかもしれない。嫌、ケンジ先輩は泣いていた。
「お前が、生きて帰って来てくれて、良かった。」
「私もです。先輩。」
私達はしばらくお互いを離そうとしなかった。


続く


マコです。いよいよ佳境です。次で完結するはずです。
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【2人がどうなるか温かく見守ってほしいのよ】


- 関連一覧ツリー (★ をクリックするとツリー全体を一括表示します)

- 以下のフォームから自分の投稿記事を修正・削除することができます -
処理 記事No 削除キー