マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
このフォームからは投稿できません。
name
e-mail
url
subject
comment

[新規順タイトル表示] [ツリー表示] [新着順記事] [留意事項] [ワード検索] [過去ログ] [管理用]

  [No.408] ほうきとタマゴ 投稿者:スズメ   投稿日:2011/05/05(Thu) 23:57:33   63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 暖かい春の、昼下がり。
ステイを捕まえた我が学校が見渡せる、景色がいい丘にある育て屋さん。
名前も決めていない適当なそだてや夫婦の育て屋さんの庭。
時刻はちょうど、一番暑くなる頃のはず。
日差しは暑いくせに、風はひんやりと・・・芝生の上を通り過ぎていく。
すぐ近くに植わったシンボルツリーは、とても大きくてさわさわと揺れる日陰を作っていた。
シンボルツリーの近くにある小さな泉には、透明な水の中に時折影が浮かび上がる。
ポケモンたちは植え込みの木や、草むら(わざわざ作られた)に隠れながら遠巻きにこちらの様子を伺っていた。
怯えなくても、食べるつもりはないんだけれどな。
手に持った箒は、一昔前にはやった魔女の乗るような竹箒。
その箒でがしゃがしゃと地面を掃いていく。
バイトを始めて数日。
今のところ、ひたすら箒で芝生の上を掃き続けていたりする。




「何をしてるんだ」

 クラスメイトの友人ことソラメ(別名アブソルオタク)の視線が痛い。
僕ってそんなへんなことしてるかな?

 ちょっと、自分の様子をみてみた。
頭の上には尻尾のちょん切れたポッポ。名前はパト。
エプロン&三角巾で掃除の叔母さんと化した僕。
掃除のための箒にじゃれ付くステイことオタチ。
簡単に言うと、そだてやの敷地内で掃除をしているだけ。
こら、パトも首が痛いから頭から降りろ。
確かに帽子代わりになるけれど、パトは体温が高いせいで頭がゆでたこになってしまう。
後で鏡を見ようものなら羽だらけの自分を見る羽目になるんだよ、パト・・・
あ、あと背中のリュックにタマゴを二つほど入れているか。
育て屋のおじいさんがトレーナーに渡し損ねたって、職務怠慢じゃないのかなぁ?
タマゴの中身は不明。
そだてるのが大変だからって押し付けられた。まあいいんだけどさ。
 
 結論的に言えば、育て屋の敷地内で掃除をしているだけ。
そういえば、ソラメたちにはバイト始めるって伝えてなかったっけ。
いきなり働き出したからおどろいたんだろうな、たぶん。そうだと思いたい。
ちょん切れたパトの短い尾羽が肩に当たる。そして、耳がつつかれる。
何気に痛い・・・いや、痛くはないくすぐったい。
動くな、跳ねるな、甘噛みするな! 
ちょこちょこ跳ねる度に、ちょん切れた尻尾がくすぐったい。

「・・・。」

 なんか、ソラメの視線が冷たくなった。
うーん、まあ真面目に掃除を始めた方がいいよね。

 相変わらず、パトの散切り尻尾が首に当たってかゆい、くすぐったい。
どっかにおいてみようか。
とりあえず、パトをステイの上においてみた。

 「キュ、キョ!」
 「ポッッ」

 いきなり頭が重くなったせいで、ステイが混乱して回りだした。
グルグルグルグルグルグルグワン・・・
あ、こけた。
パトは・・・あ、玉のように転がっていったみたいだ。
拾いに行くべきか、先に掃除をするか。
んー、バイト代減らされても困る。あれだ、こいつらのえさ代のためにバイト始めたんだから。
落ち葉と一緒に丸い玉(ボールもどき)が二つ、箒にさらわれてゴロゴロゴロ・・・
しまった、こいつらも一緒に掃いちゃだめだろう、洗うのが大変だしなぁ。
箒を近くの木に立てかけて、丸まった二匹を回収しに向かう。
ステイの毛にはたくさんの葉っぱがこれでもかとばかりに付着。
ブラシは作業室に置いてあるから・・・しかたがない、転がしておくか。

 「ヂィゥゥゥ(ごろごろごろ)」

 なんか悲痛な声が聞こえた気がするけれど気にしない。
ムクリと起き上がったステイの尻尾は、膨らんでふぁっさふぁさ。
怒っているんだろうな・・・さすがにかわいそうだったか。
ヂィウヂィウー?! と講義の声を発して訴えている。
声の高低に比例して、尻尾もばたばたもふもふ・・・ステイはわかりやすいよね。
あとで、ステイのために甘いミックスオレを買ってこようか。
あ、ミックスオレにつられておとなしくなった。
ボソッとつぶやいただけなのに・・・地獄耳め。
大丈夫、あとでブラッシングもしてやるから。
そう言ってなでたステイの頭は、ふかふかだった。
目を閉じて、なんだか幸せそうな顔をしている。
・・・転がしてごめん。


 手の中には、羽毛球。
ステイの頭とはまた違ったふわふわ感が、暖かい。
くちばしがこつっと、手のひらに当たる。
ポッポの平均サイズは、30cm
パトの現状サイズは、20cm強
両手で包み込めるぐらいに小さい、羽毛球。
日向ぼっこを始めたステイの尻尾より小さい。

 チラッと振り返れば、ソラメが・・・え。
いつの間にそだてやに進入したんだ、さっきまで柵の外の道路にいただろ。

「乗り越えた」

 ・・・柵乗り越えてきたのかよ、おいおいって。
相変わらず、アブソルのジャンプ力ってすごいねー。
ソラメの視線が、パトに突き刺さった。目つき鋭すぎだよ、もうちょっと温かい目でみてやってよ。
視線は、パトの尻尾に吸い込まれて・・・はいはい、説明するから。決して携帯獣虐待なんかじゃないから。
わしゃわしゃアブソルを片手でなでつつ、丸く羽を膨らませたパトを、手のひらに乗せた。
相変わらず、尾羽は真ん中辺りでみんなちょん切れている。
保険の先生いわく、車とかこの辺では今時珍しい(らしい)のに尾羽を轢かれたんじゃないかと。
昨日パトが、道路でこけたままのところを発見。
そのままにする気は出来ず、保護→結局手持ちに追加。
サイズ的に、子供。
どっかの巣から落ちたか、さらわれたか。
どうしようもないみたいなので、とりあえず、手持ちに追加中だったりする。
パトはちっちゃくて、ふわふわで、大人気。
手当てをしてもらって、部屋に帰ろうとすると、すれ違った人がみんな、かわいーかわいーって。
尾羽の説明をすれば、かわいそうの連発。
口をそろえていうのは、頑張ってお母さんを探してあげてね。
なんともまあ、無責任な。どうしろっていうんだよ。
今現在、おそらくピジョットである本物の親探し(一応ね)中。
一度人間に保護されちゃってるから親はもう受け入れてくれないだろうな。
ついでに木の実でも探してくるかな・・・?
以上説明終わり。パト、疲れたならタマゴと一緒にリュックに入っていなよ。

「ヂィウ」

 ・・・ステイは無理。
まあいいや、今日は掃除も終わりでいいかな。

「いいのか?」

 まあ、適当に掃除しておいてといわれただけだし。
本格的な仕事は、その辺にいるお客さん(ポケモン)が僕になれてきたらね。
さっきと言っていることが正反対なのは気のせい、フシギダネ。

 「おつかれさーん、明日もよろしくな〜」

 そういいながら手を振っているのは、育て屋の爺さん。
ほのぼの老人という言葉が良く似合うナイスガイ。
そういえば、ナイスガイってどんな意味だっけ?
ま、多分いい言葉だし、結果オーライ。
ソラメも、パトの親探し手伝ってもらえない?
昨日、帰るときに野生ポケモンに追っかけられたんだよね。
ステイはやめとけ、吹っ飛ばされて終わるから。せめてトレーナー戦で勝てるようになってからな。
・・・だめだ、毒なんかになったら毒消しもないんだから(貧乏)モモンのみは持ち運びにむかないし。
親の心、子知らずって、本当なのかと一瞬思ってしまったけれど、とりあえず行こうか。
ほら、ステイはボール入っておけ。今度また問題起こされたら大変だし。



 ただいま、おやつの時間をお届けしまーす・・・ちがう。
時間はあっているけれど、おやつは食べていない。
むしろ食べられそうだ。
現在、隣町に続く道(途中から森の中に突っ込んで、洞窟まで抜けないと隣町につかない)
パトを拾った辺りに来たのはいいけれど、出てきたのはリングマさん。
そもそもなんで昨日こんなところに来たのかは・・・知らなかったんだよ。
隣町に行くのがこんなに大変だとは。地域で学校が併合されちゃったわけだ。

 「不意打ち」

 ソラメの合図で、アブソルの攻撃開始。
実際に不意打ちされたのは僕らだけどね。リングマさんが、いきなりガオーって出てきたんだ。
今バトルをしているアブソルは・・・多分ヤイバ。
多分っていうのは、いっぱいいすぎて時々間違えるから。
今まで確認しただけで三匹は見たよ。ソラメのポケモンはみんなアブソルなんじゃないかと。

 ガオーって擬音語が似合いそうな勢いて、リングマが腕を振った。
その後ろから、ヤイバが登場、不意打ち命中。よっぽど威力が高かったのか、リングマさんは体制を崩した。
さすがソラメ、最初から予想済みだったらしく、合図もなしにヤイバさんの追撃が入る。
いつの間に命令したんだよ。
バトルは休むまもなく続行中で、今度はリングマさんの反撃。
みだれひっかきと思われる爪攻撃がヤイバに命中・・・しなかった。
ソラメの合図でヤイバは跳んだ。
高さは・・・リングマを飛び越えるぐらい(実際に飛び越えた)すごいジャンプ力だよね、まったく。
フィニッシュとばかりにヤイバの鎌が一閃。
かなりの傷を負ったリングマは、最初の勢いはどこに行ったのとばかりに草むらに消えた。
ポケモンってすごいよね。あんなに傷だらけになっても、健康なら次の日にはほぼ全快しているんだし。
ほめてほめてとばかりにヤイバがソラメに擦り寄っている。なつかれているなー。
命の危機が去ったので、改めて回りの確認。
こら、ステイはいつの間にボールから出たんだ。
前来たときは、勝手にスピアーの巣にちょっかいかけてぼろぼろになっていただろ、戻ってろよ。

「チュ、チィ、ヂュヂュゥヂュ」

 もうしないからと、身振り手振りで必死に説明をしだした。
手が上下に動くと、尻尾も上下に。左右に動けば、左右に。
尻尾はぐるぐる動いて、ばたばた地面に当たって跳ね上がって・・・
もふっとちっこい頭に手を置いて、判った判ったといってみた。
ただし面倒なことはするなよ、草むらに入るとかな。
ステイの目が光ったのは、気のせいか。

 目当てのもの(ポッポの巣)を探して、辺りの木を見上げる。
さわざわと葉っぱが揺れて、肩に乗っているパトが身震いをした。
足元ではステイが自分も肩に乗せろと騒いでいる。
出来れば空気を読めるようになって欲しいというか、ステイを乗せると僕がつぶれる。
ちょうどパトがこけていた(倒れていた)場所の上、木の枝にはアーボの抜け殻。
パトの兄弟はアーボに食べられちゃったとか?
でもさ、蛇って脱皮の直前には何も食べなくなるはずだよなぁ・・・ポケモンはわからないか。

 がさがさと、揺れる草むら。
チロリとはみ出た尻尾。
ぴんっと、立った耳まで揺れている草むらプラス@
ついさっき草むらに入るなっていったばかりじゃないかな、このステイやろう。
がさがさ引っ張り出してきたのは、ノコッチ。
ツチノコ発見!・・・じゃないって、何やってるんだよ。
あ、へびにらみされた。ステイは大丈夫か?
ぐるぐるぐるーと尻尾で掘った穴にノコッチは消えた。
あのしっぽって、ドリルみたいに使うんだね。

「ウキュ、キュ」

 なんかぴくぴく痙攣(麻痺)している。
クラボのみってあったっけ? まったく、麻痺だけでよかったな。 
あ、こらは罰ゲームだからさっさと食え。
甘党のおまえにはきつかろう、さっさと食いやがれ!
もし残したら、チーゴの実も食わせるからな。
・・・あ、この木ってカゴの実かな。
近くの木の一つ、少し細くてごつごつした木を見上げる。
やっぱりそうだ、野生のものだけあって細い中にも強さが垣間見える。特に虫食いの跡とか。
パトって渋い木の実が好きだったっけ? あ、ふつうなのか。
まあ、せっかくだしとって帰ろうか。その前にポケナビの新機能でアーボノ抜け殻をパチリ。
証拠写真的なものも撮ったことだし、目的達成かな?

「ポッポ、クー!」

 ・・・どうしたパト、そんなにばたばたしてこら、つつくなどうした!
甘えていると勘違いしたのか、ヤイバがソラメに擦り寄っている。
もさもさだ、尻尾でパトを牽制しているようにも見える。
パトは・・・何慌てているんだろう。上を見上げてって、あれ、ステイがいない。
ソラメは、なんでそんな苦虫をかみ締めたみたいな顔を?

「・・・前回は何に追っかけられたんだ」

 もしかもしてあれか・・・と、真剣な表情で指差された先を見た。
苦々しい顔の意味がわかった、よくないけれど。
あー、もしかもして昨日ステイが壊した巣の方々ですかねぇ。
あっという間に再建しちゃって、スピアーの建築能力ってすごいと思ったんだ、思うよね。

「のんきなことを言っている場合か」

 そういい終わるのが早いか、ステイが落ちてきたのが早かったか。
逃げるしかないんだろうなーとつぶやきつつ、ステイをキャッチ。
あれ、ステイちょっと重くなった? パトはリュックの中に入ってなよ、走っているときに落ちたら困るし。
リュックのチャックも閉めて、ステイも引きずって・・・ヤイバ(ソラメのアブソル)がくわえてくれた。
背中の皮が伸びてる伸びてる・・・結局尻尾は引きずられてるし。
車も通れるように舗装された道路だから(洞窟の前まで)走るのには問題なし。
頭上と背後からは、無数の羽音、身震いしたくなるそよ風。
ってステイ、何持ってるんだ、コクーンなんてつかむな捨てろ!!
違う齧るなそれは食べれないだろ。
むっとした顔をしたステイは、持っているもの(コクーン)を投げ捨てた。
振りかぶって、ポーイ。
捨て方にも、もっと別の方法が・・・全力疾走中だから仕方がないか。
投げられたコクーンはこーんと岩に衝突、スーパーボールのように跳ね返ってはまたポーン。
あ、枝に引っかかった(みたいだ)後ろなんて振り返れないからわからないけれど・・・。
多分無事にスピアーに保護されたんだろう、追い手のスピードが落ちたからね。

 やっとついた森の出口、育て屋の近く。
背中のリュックをおろせば、器用にチャックを開けてはパトが出現。
ステイは・・・背中の皮が伸びたのか、自業自得だろうそれ。
わしゃわしゃ毛づくろいをする姿は本物のウサギみたいだ、サイズ以外。
走っている最中も終始無言だったソラメは、ヤイバのブラッシング中。
スピアーに対しての感想もなし・・・お叱りもなし。良かったねステイ。

 ぽっぽ、とパトが呼んでいるので、リュックのチャックを全開にしてみた。
中からはタマゴがごろごろ×2
・・・走ったのがまずかったかな、ひびが入っている。
ボンドで塞いではだめかな? 中身は出ていないし。
よく見れば微妙に動くタマゴ。
生きてるみたいだから大丈夫かな?
タマゴの割れ目からは光がちろちろと見える。
もう一つの卵が、ボスンボスンと大暴れ。

「歩くと早く生まれてくるとは言うが」

 いつの間に近くに来たんだよ、ソラメ。
足音消すな。え、消してないのか。
大暴れしているタマゴと、割れ目が焦げているタマゴ・・・。
ステイとパトの弟か妹達だね。
こんなに早く生まれるとは思わなかったけれどさ。
うれしそうにふられる尻尾はぼさぼさ。引きずられていたもんね。
パトもクッククックとうれしそうにさえずっている。
ヤイバは・・・割るのは手伝わないでいいから、見ていてあげてよ。

タマゴが割れた、出てきたのはどんな子?

【批評していいのよ】【書いてもいいのよ】【描いてもいいのよ】


- 関連一覧ツリー (★ をクリックするとツリー全体を一括表示します)

- 以下のフォームから自分の投稿記事を修正・削除することができます -
処理 記事No 削除キー