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  [No.468] 半耳イーブイ探険隊! 〜プロローグ後編〜夢の始まり 加筆補正版 投稿者:ふにょん   投稿日:2011/05/24(Tue) 02:26:37   54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 赤いレンガでできた小さな街並みを、山から現れた太陽が照らす。
 ベッドの上で丸まっていた私の体に暖かい光が当たる。
 まぶしい。もう少し寝ていたい。起こさないで。
 なんだろう。この光は。
 
 
 朝だ。


 今日も朝から晴れ。
 洗濯でもしようか。
 それとも、もう少し寝てようか……

 朝のぼーっとタイムが始まる。
 窓から朝の通りを眺めつつ、今日は何をして過ごそうか、と考える。
 
 ぐぎゅるるるるるるる

 ……お腹すいた。
 そう言えば、昨日の夜何も食べてない。
 頭痛くて寝ちゃったからなぁ……

 タイミング悪く襲ってくる頭痛を恨めしく思いつつ、ペリッパーが運んできてくれた食べ物を手に取る。
 何食べようかなぁ……

 毒とかマヒとか治っても、頭痛を治す木の実はないらしい。
 あんまり薬好きじゃないんだけど、頭痛くなったら薬飲むしかない。
 
 生ものは早く食べちゃわないと……腐って地獄を見る。
 グミは長持ちするから後回しでもいい。
 一年放置しても食べれたからね。お腹壊したけど。
 
 うん。これにしよう、と今朝の朝食を決める。
 オレンの実とカゴの実という、がっちがちに硬い朝食。
 そのままじゃ食べれないから、すりつぶしてから食べる。
 これがまた重労働で、数分もやると疲れて体のあちこちが痛くなる。
 酷い時は次の日筋肉痛に襲われる。
 モモンの実とか柔らかいものが食べたい……が
 ペリッパーが運んできてくれないからしょうがない。
 今度頼んでおこう、と心に決めながら、木の実をすりつぶす。
 なんだか今日の木の実は固い。収穫時期間違えたんじゃないの? ってくらいに。

 コンコンコン!

 ゴリゴリという音に混ざって、何かをたたく音が聞こえる。
 音は玄関のほうから聞こえる。
 こんな朝早くから誰だろう?
 今忙しいのに。
 
 はーい。今出ますよー。と返事を一応しておく。
 居留守してもいいんだが。
 ペリッパーだったら困るから、一応出ておく。
 何もかも一応。一応が大事。
 一応やっておけばだれにも何も言われないからね。

 がちゃ。

 木でできた扉をあける。 
 見た目によらず結構重い。一体何の木材だ。昔から気になってる。
 まぁ、丈夫だからいいけど。

 誰が来たのかを確認する……が、誰もいない。
 いわゆる『ピンポンダッシュ』ってやつだろうか。
 家には呼び鈴ついてないぞ。
 ってことは、『ノックダッシュ』だろう。たぶん。
 
 自分でもくだらないことを考えてるなぁと思いつつ、家の中に戻ろうとする。

 戻ろうとする。
 戻ろうとしている。
 戻ろうとしてるんだよ。
 戻ろうとしてるんだけど。

 なんか体が動かない。
 きっと、動かないって言うのは気のせいなんだ。
 動かないと思うから動かないんだ。
 体に何か縄が巻きつけられてるのも、気のせいなんだ。
 いきなり上から現れた何者かに縛られたって言うのも、気のせいなんだよ。きっと。

 うん。

 前、後ろ足はしっかり縛られてる。
 体もぐるぐる巻き。
 口にはなんかのテープ。

 気のせいじゃないよね。これ。
 なんかよくわからないけど、今、私は縛られてる。
 今わかることは、それだけ。
 それ以外は全く理解できない。


 何がどうしてこうなった。


「よぉ。可愛いイーブイさん。昨日は世話になったな。」

 声のするほうを見ると……黒い何かが見える。
 私に世話になった? 何か私がしたっけ? 

「あんたが俺の逃げた方向をばらまいてくれたおかげで、俺はあいつらに捕まりかけたんだぜ?」

 ようやく誰かがわかった。
 この黒色に白い線が入ったような体は、ヘルガーだ。
 
「まぁ、しっかり借りは返させてもらわねぇとな。」

 ヘルガーが私を縛っているロープに噛みつき、そのまま持ち上げる。
 このままどこかへ連れて行く気らしい。
 多少暴れてはみるものの、体長30cmがどう暴れたって、140cmに敵うはずがない。
 助けを呼ぼうにも、口に巻かれているテープのせいで、声が出せない。

「おとなしくしてろよ? じゃないと後が酷いぜ?」

 ロープが体にくい込んで痛い。
 ぐるぐる巻きにされているせいで息もしづらい。
 一体このままどこに行くんだろう。
 
 こういう時に限って、誰もいない。
 こんな状況を見たなら、誰だって怪しむはず。
 そうすれば、誰かが助けてくれるはず……なのに。

  
 
 ――――――――――――――――――――――――――――――

 しばらく走っていたヘルガーが、急に足を止めた。
 かなりの時間つれてこられた気がする。
 周りは町ではなく、山奥の森といった感じだ。

「この辺なら誰も見てねぇな。よし、降ろすぞ。」

 ドサ……

 乱暴に落ち葉の上に落とされる。
 石が当たって痛い。 
 
「さて、本題に入るが、お前は俺のことをプクリン達に話した。そうだな?」

 質問をされるが、口がふさがっていて、答えられるはずがない。
 
「まぁ、ビッパとかいうやつがイーブイに聞いたって言ってたからな。お前に間違いないことはわかってるんだが。」

 じゃあ質問しなくてもいいじゃないか。
 何のために聞いてきたのだろう……

「んーっとな、つまりだ。お前があいつらに俺の逃げた方向を教えなかったら、俺はアジトを離れずに済んだ。わかるか?」

 首を横に振る。
 アジトとどういうかかわりがあるのかがわからない。 
 
「簡単に言うとだな、お前が言ったせいで、俺のアジトがばれて、捕まりかけたんだ。だからこうして仕返ししにきたってわけさ。」
 
 仕返し……?
 一体何をするつもりだろうか……?

「俺に狙われた奴はどうなるか知ってるか? ただでは戻れないぜ?」

 ヘルガーの表情が一瞬にして変わる。
 今までとは比べ物にならない恐ろしいものを感じる。

「さて、どこからにしようか? 可愛いイーブイさんよ。」

 怖い……
 背筋が凍りそうなほど寒い。
 一歩一歩ヘルガーが近寄ってくる。
 近寄ってくるほど、心臓がはじけそうなくらいに早く脈打つ。
 
「まずはその……でっかい耳からだな。」

 ガブッ!

 ーーーーーーー!!!!!
 ヘルガーが思いっきり右の耳に噛みついてきた。
 あまりの痛みに悲鳴を上げたいが、口がふさがれていて声が出ない。

「ふん……この程度じゃあ……まだまだだな。もっと……苦しめ。あのアジトにいったいどのくらいのお宝があったと思ってるんだ? お前が言ったせいでな、俺様が五年以上かけて集めてきた物、全部パァだぜ?」

 ヘルガーが耳に噛みついたまま、思い切り首を引く。
 相当怒っているようで、さっきまでの軽いノリはどこにも見当たらない。
 
 どうせお宝といっても……盗んだものだろう。
 もともと自分の物ではないのに……見つかって当然だ。

 大声でそう言ってやりたかったが、今は口どころか、手足も動かない。
 ただ、なされるがまま。 

 ヘルガーが歯にかける力をあげてきた。
 
 痛い……
 こんなに『痛い』と感じたのは久しぶりだ……
 
 なんでこんなに冷静でいられるんだろう。
 さっきとは違い、不思議と心が落ち着いている。
 これはきっと……自分の中で認めているのだろう。
 
 どうしようもない……ということを。
  

 ブチッ 
 
 ヘルガーが思い切り首を引いた瞬間、鈍い音があたりに響いた。


 ……どうやら耳を食いちぎられたようだ。
 耳のあたりから鋭い痛みと生温かい物を感じる。

 落ち葉の上を流れる赤い液体。
 ヘルガーの口からも赤い液体があふれている。  

「久し……が……わ……も……よ…………」

 何か言っているようだが、頭に入ってこない。
  
 頭の中が真っ白になっていく。
 目の前の景色がぼやけていく。
 意識が遠のいていく。
 このままあっちの世界に行っちゃうんじゃないだろうか。

「さて、つぎは尻尾でも行こうか?」

 ヘルガーが再び大きな口をあけて噛みつこうとする。

 もう、どうなったっていい。
 どうせ病弱な自分だから、ここで死んだってそんなに変わらない。
 このまま……あっちの世界に行ったとしても、ね。

 が、その瞬間、ものすごい衝撃波が押し寄せ、ヘルガーを吹き飛ばした。

「ワタシから逃げれると思ったら大違いだよ!」
「ヘルガー! もう自由にはさせないですわ! きゃー!」
「ヘイヘイ! プクリンのギルドの名にかけて!」
「えーっと、逮捕するでゲス!」 
「みんな、行くよ! たぁー!」

 ヘルガーを吹き飛ばしたのはオウムのようなポケモンの大声。
 どうやらあっちの世界はお祭中だったらしい。
 物凄く賑やかだ。

「こいつら! なぜ俺の居場所が分かった! ここに来るまでは誰にも見られてなかったはずなのに!」
「本当にそうか?」
「誰だ!?」

 地面から四匹の茶色いポケモンが現れた。
 四匹……じゃない。二匹だ。
 ダグトリオとディグダ。
 
「まさか、地面の下でつけられているとは思わなかっただろう?」
「流石お父さんだね!」
「くそっ! ひとまず逃げるぜ! お前らに俺は捕まらないさ!」

『やってみなければわからないよ!』

「なんだと!?」
「残念だったね♪ もう後ろは取ってあるよ♪」
 
 プクリンがヘルガーの後ろに立っている。
 今まで別のところにいたはずなのだが。

「観念してね♪」
「くそ……しかたないな。ほら、連れてけよ。」
「依頼完了だね☆」
 
 プクリンとその弟子たちに、ヘルガーが連れて行かれる。
 
 連れていかれる間際、ちらっとヘルガーがこちらを見た。

 ……あれ? 
 
 今、一瞬ヘルガーが笑ったような気がする。
 捕まって観念したのだろうか……?

 いや、ただの見間違いだったようだ。
 こんな状況になって笑っていられるはずは……ない。





 ――――――こうして、ヘルガーは捕まった。




 私はあの後、ドゴームって言うポケモンに担がれて、すぐに病院に運ばれた。
 もう少し遅かったら、血が多く出すぎて危なかったかもって。
 
 しばらく入院してたけど、その間、プクリンやその弟子たちが、かわるがわるお見舞いに来てくれたんだ。
 
 ある時にはダグトリオとディグダが二匹(?)そろって来た時があった。

「すまない! ……あのとき私達が判断に躊躇しなければ……あなたの右耳の半分は無くならずに済んだかもしれない。許してもらえるとは思っていないが、一応……謝罪だけでも聞いてほしい。」

 いきなり頭をさげられて驚いたが、すでに起きてしまったことはしょうがないとしか言えないし、
 それに……
 助けてもらったポケモンに謝ってもらうなんて……なんかおかしいと思うんだ。
 
 そのことはしっかり伝えておいたよ。気にしないで、って。

 その後も三日に一度くらいのペースでお見舞いが続いた。
 ある時、一回しか会ってないのになんでこんなによくしてくれるの? って聞いたら、

「怪我してたらほおっておけないでしょ? ともだち! ともだち〜〜〜!」  

 って言うんだ。
 他の弟子ともいろいろお話できたし、いつになく楽しかったな。
 
 楽しい日々はすぐ過ぎていく。

 
 右耳は半分無くなっちゃったけど、無事退院できる日がやってきた。

 別に、退院できる日とは言っても、誰もおめでとうとか言ってくれるポケモンはいないし、喜んでくれるポケモンもいない。
 ずうーっと部屋に籠りっきりだったから。
 
 そう思ってた。
 だけど、違った。

 病院を出ると、声が聞こえてきた。

「やぁっ! 退院おめでとう♪ 元気そうでなにより♪」

 声のしたほうを振り向くと、そこにはプクリンがいた。
 私のために来てくれたのだろうか?

「お忍びで来てるから、早くしないとペラップに怒られちゃうよ〜」

 あれ?
 なんだか目から涙が……

「ん〜? どうしたの? 涙なんか出しちゃって。 涙なんかにあわないよぅ♪ ほら、わらって〜?」

 なんでだろう。
 このポケモンを見てると不思議な気分になる。

「じゃあ、ボクはそろそろ行くね♪ じゃあね〜! ともだち〜〜〜!」

 ……かっこいい。
 あれがギルドのおやかたなんだ。
 

 …………私もあんな風になりたいな。

 だけど、こんな私じゃなれないよね。


 
『やってみないとわからないよ!』 



 え? プクリン?
 辺りを見回す。
 だけど、どこにもプクリンの姿はない。

 一体なんだったのだろうか……

 ……やってみないとわからない、か。

 もしかしたら、こんな私でも、なれるかもしれない。
 
 ……よし。

 行ってみよう。プクリンのギルドに。


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――            

 冒険は、始まったばかりだ。



 続く……




 〜プロローグを書いてみて〜

 なんかいきなり危ないシーンが(ry
 この後、半分の右耳がトレードマークになったりならなかったり。 
 
 ヘルガーさん頭に血が上りすぎです。
 冷静を装っているようですが。
 冷静ならばいきなり耳に噛みつくなんてことはしないでしょうなぁ。


 次回予告(?)

 一人プクリンのギルド目指して歩いていた時、思わぬ出会いが……
 それが思わぬ展開に!?
 半耳イーブイの運命はどーなる?


―――――――――――――――――――

 補足説明2
 
 っ【いきなり噛みつくとか……ヘルガーいきなり何やってるんっスか?】
 
 仕返しということで頭に血が上ってて思いつきでやった、みたいな状況を表現したかったのですが……
 やっぱりキツかったですね。すいません。

 っ【ダグトリオ出てくるタイミング考えて欲しいッス。】

 これはもう完全にふにょんのせいです。ごめんなさい。
 もし、追いついていたのなら、そこで技を出せば効果抜群で、耳も噛み切られずに済んだのでは?
 とのご指摘をいただきました。
 一応、仲間を呼びに戻ってしまった&技の出すタイミング、場所を見計らっていたら時間がかかってしまったということにしておいてください。
 いい加減ですいません。
 
 っ【なんでヘルガーはイーブイの家を知ってるんっスか?】
 
 ……これはごめんなさいとしか言えない。
 思いつきで書いてしまった自分が恨めしい。
 これについては、
『イーブイの住んでいる町の近くにヘルガーのアジトがあったので、
 周辺地理については、詳しく調べ上げていたので知っていた。』
 という理由があったのですが、出すタイミングがなく、けっきょくこういう形になってしまいました。
 もっと考えるべきでした。すいません。


  
  


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