むかしむかし なんびゃくねんもむかし きみのおじいさん おばあさんが こどもだったころよりむかし
やまのなかに うつくしいまちがあった ちずにのることのない ちいさなまちがあった
ひとびとはまわりのやまから きのみやみずをとってきて しずかにくらしていた
ときどきべつのまちにいき じょうほうをもらうこともあった
あるとき そのまちにびょうきがりゅうこうした
こどもたちがたおれていく ふしぎなことにこどもしかかからなかった
ちょうどそのじきに ほかのまちからたびびとがやってきた
たびびとはいった 「わたしのもっているくすりをつかってください」
そのくすりを かれらはみたことがなかった
それもそのはずだ かれらがつかうのは じぶんでつくったものだけ
かがくがはったつして カプセルいりのくすりがとかいではつくられていた
たびびとのくすりによって こどもたちのびょうきは あっというまになおった
だがまちのひとびとは たびびとにおれいをいうどころか ぼうりょくをふるった
こわかったのだ えたいのしれないなにかで こどもたちをすくわれたじじつが
なぐる けるをくりかえし とうとうたびびとはしんでしまった
だがさいごにかれはいった
「かならず かならずわざわいがおきるぞ!こうかいしてもおそい!」
そのことばがかれらのみみに こびりついた
それからふつかご ひとりのむすめがあくむにうなされた
てのほどこしようがなく たったすうじかんでしんだ
ひとびとはそのとき はじめてことのじゅうだいさをしった
あのたびびとが ひとではなかったとかんがえた
それからそのまちでは いちねんにいちど かならずひとりのむすめがしぬ
きのうまでげんきだったものでも そのひになると かならずしぬのだ
やがてかれらはそれを やみのおうとよぶようになった
このまちにわざわいをおこさないために むすめをいけにえにする
そのむすめを ひかりのひめぎみとよんだ
だれももう ていこうしなかった
ていこうしようにも えたいのしれないなにかがあいてでは なにもできない
だが ひそかにしんじていた しんじていたかった
いつのひか だれかがまちのそとからやってきて こののろいをおわらせてくれると
そして そのひはやってくる――