途端に、次女エーフィが口を開いた。
「みんながどう言おうと構わない。あたしはもう諦めるべきだと思うの。」
カタッ…。僅かに音がした。シャワーズが立ち上がった音だ。
「そっそんな!諦めるなんてッ……。あの子を………あの子を見捨てろって言ふのぉ!?」
少し感情的になりすぎたか。
言葉が途切れ、噛んでしまった。
「姉さん、落ち着いて…。」
四女リーフィアが顔を赤くしたシャワーズを宥める(なだめる)。
しかし、先ほどのエーフィの言葉がよほど気に入らなかったのか、興奮が収まる様子はない。
それでも、リーフィアの宥めもあって、ようやくソファに腰をおろす。
エーフィも言い過ぎたと感じているのか、顔をそむけ、シャワーズの方を見ようとしない。
そもそもこれを読んでいる皆様は、何の事だかちんぷんかんぷんだろう。
『諦める』『あの子を見捨てる』
勘の鋭い方はこれで気付いたかもしれない。しかし、まだわからない方は多いだろう。
簡単に言うなら『失踪事件』だ。
ブイズ一家の次男に当たるブースターが、モンハンを買いに行くと言って出ていき、六ヶ月間音沙汰無しなのだ。
一、二日ならまだわかる。もう一人での外出が制限される年ではない。大方友達の家に行ったのだろう……。
そう予測できる。しかし、六ヶ月も家に帰らないのはさすがにありえない。家具や日用品もそのままだった。
ことがわかれば、読者の皆様の殆どはシャワーズに付くだろう。
そして、血の繋がった弟を探すことに諦めの意を示したエーフィを、ひどく、心底軽蔑するだろう。
しかし、本当にそうなのだろうか。
本当に、エーフィが極悪非道の姉だと言えるのだろか。
答えはNoだ。
確かに、読者の皆様には、エーフィの言葉は冷たく感じられただろう。
しかし、億が一ブースターが死んでしまっていたら?
死んでしまった兄弟のことを、あれこれ言い合う為に、月に一度わざわざ屋敷に集まるのか?虚しくないのか?
そんなことをするのであれば、もう諦めてしまった方がよいのではないか。
ブースターを亡き者とし、ケジメを付けた方がよっぽど楽になれるのではないだろうか。
これが、エーフィの考えである。
決して心を失った哀しいポケモンなどと思わないでほしい。
いや、別にエーフィ推しじゃないけど。
さて、親族会議に戻ろう。
シャワーズが座ってから五分間。皆無口だった。
咳をする者も、紅茶を飲む者もいない。
一家の中には、五分間が何時間にも感じた者もいただろう。
そんな時、ブラッキーが口を開いた。
「……。何か意見がある者はいないか?」
少し、間を置いてだ。
「………。」
三女グレイシアが挙手した。
「確かにエーフィ姉さんの言い分にも一理あるわ。でも、だからと言って弟を見過ごすことはできない、もし生きている可能性が一%でもあるとしたら…。」
その続きは言わなかった。言わなくてもわかると思ったのだろう。
またしても皆無口。エーフィも顔をそむけたままだ。
どうなってしまう事やら……。