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  [No.2684] 時渡りの英雄より(ポケダン空のアグノムイベント) 投稿者:リング   投稿日:2012/11/06(Tue) 22:04:21   46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

コリン:物語の主人公の1人。ジュプトル
アグノム:やれば出来る子


 周囲の気配に気を配りながら歩いているうちに、コリンは不意に殺気を感じた。右手に見える湖から、突如顔を出しての火炎放射。直前まで気配を感じさせなかった不意打ちにしかし、コリンは冷静に前方へ転がって避ける。
 不意打ちをしてきた相手はまだ戦闘経験も浅いのだろう、この静かな場所で気配を消せていたのはさすがであるし攻撃能力は高そうだが、最後まで殺気を消せないあたりは落第点だ。コリンは大きな道具が入っている袋を投げ捨て、戦闘に備える。
「……お前が、ここの番人か」
「一応聞いておく……お前がテレスやアンナから歯車を奪ったやつだな?」
 殺気に満ちた形相でアグノムはコリンを睨みつける。
「……ユクシーとエムリットのことなら、それで正解だ。二人は生きているか?」
 済ました顔で、嘘偽り無くコリンは問いに答え、質問を返した。アグノムの殺気が増した。
「生きている……」
「そうか、よかったな……」
「なにが『よかった』だ!! そんな言葉で惑わそうとしたって無駄だ!! お前は僕の敵だってことに変わりはない!!」
 アグノムはサイコキネシスで砕け散った水晶を湖から引き上げ、大量の礫となったそれをコリンへと投げつける。
 大量に投げられた破片は回避が不可能で、コリンは急所をかばうが、体のいたるところに擦過傷と裂傷が刻まれる。もちろん、その間コリンはただ怯んでいたわけでは無い。
 腕についた葉で顔面を守りつつ、水晶の暴風雨がやむと同時に、チャージしたエナジーボールを撃つ。しかし、アグノムは木の葉のようにひらりとかわして、反撃とばかりに、追加で水晶の欠片を大量にばらまいた。
 敵は見た目通りというべきか、やはりどんな攻撃も簡単にかわしてしまうだけの身軽さと小ささを併せ持ってる。直接攻撃じゃないとまともに当らないと判断したコリンは走って接近し、虫の波導を纏った腕の葉で、アグノムを十字に切り裂いた。
 アグノムは硬質化させた尻尾で受け止め、ダメージを最小限にとどめるものの、相性の悪い虫の波導を喰らって如何にも痛そうな顔をしている。
 ふわり、コリンの体にサイコキネシスの力が及んでいることを示す青い光が纏わりつく。コリンはユクシーから湖へ溺れさせられ、エムリットもあのヒコザルに同じことをした恐怖を思い出し、素早く湖とは反対の方向へ飛びのいた。
 例え攻撃力のきわめて高いポケモンであろうと、これだけ距離も離れていれば、いかなサイコキネシスと言えど、湖まで運ばれる前に振り払ってやれるさ――と、タカを括っていたが、コリンは忘れていた。
 まだ、床に散らばった水晶のカケラはそのままなのだ。サイコキネシスでコリンは鋭くとがった欠片へ叩きつけられる。冷たい、の後に熱い。二つの感覚が同時に背中へと奔った。
(なるほど……そのための破片だったというわけだ。だが、サイコキネシスは一度振り払われれば、連続使用が出来るものではない。今のうちに、勝負を……決めてやればいい……)
 今度はシザークロスなどという柔な技では済まさないつもりで、跳ね起きたコリンは、次にサイコキネシスを使われる前にアグノムに距離を詰める。アグノムが苦し紛れに放つ火炎放射を前方に受身を取りながら飛び込み頭の葉を焦がしながら紙一重で避ける。
 転がりながら体を捻り、右前方へ移動し、勢いを殺さないようにジグザグ移動。下は磨き上げられた水晶の床だけに、もしも足の裏に棘がなければ滑って転ぶことは避けられなかったであろう。本当に、この体の構造には感謝である。
 アグノムは、湖の上にさえいれば直接攻撃もできないであろうと、水上まで避難していた。しかし、コリンは止まらない。すさまじい脚力でもって水面を走り、アグノムの尻尾を掴みそのポテッと膨らんだわき腹に牙を突きたて、噛み砕く。コリンはアグノムを抱えたまま走って、水面に浮かぶ水晶までたどり着くと、口からアグノムを放し、鋭い六角柱の水晶に後頭部を叩き付ける。コリンは勢いを殺さず自身の足で水晶を蹴って反転、湖畔まで跳ね戻る。
 アグノムを自身が仕掛けた砕けた水晶に突っ込ませ、かつ自分の被害をなるべく最小限にとどめるべく、その上で効率よくダメージを与えられるように――コリンは空中でアグノムの頭にしっかりと爪を食い込ませ、その後頭部を下にして着地。砕けた水晶が小さな体に余すところなく食い込んだ。

 濡れた水晶の上では、叩きつけられた後も体がスリップして、水晶には血の路線図が描かれる。その滑りが止まる前にコリンは再び噛みつきを再開し、顎に力を込める内に、グチャリという血肉の爆ぜるような音。歯が食い込ませた肉の一部が胴体から粘土のように千切られ、アグノムは子供が泣き叫ぶような甲高い声を上げる。鼓膜に直接引っ掻き傷をつけるというか、絹を裂くというか、そんな表現がよく似合う嬌声を上げながら、痛みに耐えかねてコリンを突き飛ばし、のたうった。

 普段何を食べているかも知れないような伝説のポケモン達の血肉。味など想像だにしなかったが、コリンは咀嚼してみると存外に美味い事に気がついた。肉の臭みが、ゼロと言ってもいい。癖があまりにも無いから、肉が苦手な者でも美味しく食べられそうだ。
 アグノムの生き血を啜るなど、ご利益があるのかそれともバチが当たるのか、そのどちらでもないのかは分からない。
 ただ、バチを当てるにしても、アグノムの『意志が消えうせ、何も出来なくなる』ようなバチを与えることは不可能だろう。コリン自身がどこかに姿を消してしまえば、コリンが意志のない人形になったまま野垂れ死に、時の歯車は永遠に行方不明と言うこともありうる。
 だから、相手も下手に呪いをかけることは出来ないはずだ。
(じゃあ、少なくとも七日間は姿を消しておかねばな……)
 明らかに戦いを続行できないような傷を負ったアグノムはたとえ不屈の心をもってしても、あの痛みでは精神を集中して波導を練ることは不可能である。勝負はすでについており、勝者であるコリンは少し余裕のできた心持で、これからの事を漠然と考える。

***
なんというかあれだ。コレは酷い……

使用した技

コリン=ジュプトル
・シザークロス
・たたきつける(水晶に)
・エナジーボール
・噛み砕く(と言うか噛み千切った)
・高速移動(水面も走れます)

アグノム
・サイコキネシス
・アイアンテール(防御に使ってた)
・火炎放射


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