マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
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  [No.467] 半耳イーブイ探険隊! 〜プロローグ前編〜夢の始まりの始まり 投稿者:ふにょん   投稿日:2011/05/24(Tue) 02:24:57   63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 私は、生まれつき体が弱かった。
 グレイシアのお母さんからイーブイとしてこの小さな町に生まれた時から。
 風邪なんかはしょっちゅうひいてたし、もっと重い病気にかかって生死の淵をさまよった時だってある。
 健康な時よりも、怪我や病気で家にいたときのほうが長かった。
 外で他のポケモンが遊んでても、いつも眺めてるだけ。
 
 みんなはいいな……
  
 私もこんなに体が弱くなければみんなと遊べるのに……
 
 毎日毎日そんなことを考えながら過ごしてきた。 
 
 お母さんは十四歳の時に、出かけたっきり戻ってこない。
 優しくて強いお母さんのことだから……
 この街じゃないところで、きっと幸せに暮らしてるはず。  
 
 
 こんな私も、もう十六歳。 
 きっと、今まで生きてこれたことも奇跡だと思う。
 
 
 ――――――そんなある日
    
 
 私はいつも通り、窓から外を眺めていた。
 相変わらず、外には出れない。
 家の前のレンガでできた赤い街並みをただ眺めるだけ。
 いつもこうやって時間を過ごす。
 歩いて行くさまざまなポケモン。
 楽しそうに会話しているミズゴロウとウパー。
 落ち込んだ様子で歩いて行くミミロル。
 並んで飛んでゆくオニスズメとオニドリルの親子。
 あたりをキョロキョロ見ながら何かを大切そうに運んでゆくヘルガー。 
 
 毎日違う景色になる。
 だけど、自分はその中にはいない。
 
 助けてくれる家族もいないし、話してくれる友達もいない。 
 知り合いといえば、日用品をいつも運んでくれるペリッパーさんだけ。
 少し会話もするけど、大抵は次の仕事があるから、ってすぐに行ってしまう。
 
 
 別に、寂しくはない。
 もう、一匹でいることになれちゃったから。
  
 
 夕日が山の向こうに沈んでいく。
 今日も何事もなく、終わってゆく。
 朝から晩まで、ずーっと眺めるだけの生活。
 明日も、明後日も、ずーっと死ぬまで続くかもしれない。
 死ぬまで続くにしても、どうせそのうちすぐその時が来るんじゃないかなぁ、と考えたりもする。
 
 そんなことを考えてつつボーっとしていたら、通りの向こうから声が聞こえてきた。
 
「おい! 見ろよ! こんな田舎にあの有名なプクリンのギルドの一行が来てるぜ!?」
「本当だ! あのピンク色の姿をしたのは間違いなくプクリンだ!」
 
 何やら騒がしい。
 一応目の前の通りはこの街一番の通りだから、通るポケモンも多く、賑やかではある。
 だけど、いつもとはまた違った騒がしさだ。
 
 確か、プクリンのギルドとか言ってなかったっけ?
 
 プクリンのギルド……ああ、昔一度ペリッパーさんから聞いたことがある。  
 お宝を探して手に入れたり、困ってる人を助けたり。
 ギルドって言うのは、そんなことをするポケモンたちの集まりらしい。
 その中でも、プクリンのギルドはこのあたりで一番有名、と言っていた。
 
 確かに、有名ということはある。
 通りは既にポケモンだかりができはじめていた。
 
  
「やぁ! 僕はプクリン! よろしくね♪ ともだち! ともだち〜〜〜!」
「おやかたさま! 誰に言ってるんですか!」
「え〜? ここにいるともだちにだよ?」
「ともだちって……全員初対面の方ばかりじゃないですか!」
「顔が合えばみんなともだち!」
「おやかたさま……」
 
 窓から見る限り、プクリンとぺラップしか見えない。
 こんな田舎町に何をしに来たんだろう?
 
「ねぇ! 友達のみんな! 一つ聞いていいかい? このあたりに、ヘルガーって言うとっても悪ーいポケモンが逃げ込んだらしいんだけど、みんな知らない?」
「これがそのヘルガーだ。誰か知らないか?」
 
 ぺラップが空から何かの似顔絵のようなものが入った紙をばらまいている。
 私は、体は弱くても、目はいい方だと思ってる。
 数メートル先のものだったら読める。
 
 ――――――――――――――〜依頼詳細〜――――――――――――――― 
 
 ミチユクポケモンヲ ウシロカラオソッテハ ドウグヲウバイマス
 モクテキノタメニハシュダンヲエラバズ ナニヲシテクルカモワカリマセン
 ケガヲシタポケモンモオオク カナリキケンデス 
 ゴネンイジョウトウボウシテオリ ヒガシノヤマノホウコウニ ニゲタトノジョウホウイライ
 ショウソクガ ツカメテイマセン  ジョウホウトタイホニ ゴキョウリョククダサイ!
 
 依頼主:ジバコイル
 目的:ヘルガーの情報収集と逮捕
 難しさ:☆9(1500)
 お礼:???
 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 
  
 カタカナが多くて読みにくい。
 って言うか、こういった文字自体そんなに見かけない。
 足形文字のほうがよく使う。
 へぇ……犯人はヘルガーなんだ……
 
 ん? ヘルガー?
 
 そう言えばさっき……
  何かを大切そうに運んでゆくヘルガー。
 
 ……………………まさか。
 まさかまさかまさか。
 
 で、依頼書。 
  ミチユクポケモンヲ ウシロカラオソッテハ ドウグヲウバイマス
 やっぱりそうだ。
 さっき大事そうに持ってたのは多分、盗んだ道具なんじゃないかな。
 
「ランク☆9の大悪党だ。逮捕のために、ギルドをあげてやって来たんだ。誰か少しでも情報があったら教えてほしい。」
「教えて! ともだち〜〜〜!」
 
 どうしようか。言いに行くべきだろうか。
 ……でも、家から出るのなんて……何か月ぶりだろう。
 病院に行った時以来、かな。
 
 ……うん。行こう。
 
 心を決め、玄関から数か月ぶりに外へ出る。
 たくさんのポケモンたちが、プクリン達の周りを囲んでいる。
 
 プクリンに話すために、進もうとする……が。
 自分よりひとまわり、ふたまわりも大きいポケモンたちに押し返されてしまう。
 ただでさえ小さな種族なのに、運動したり、たくさん食べたりしていなかったから、更に小さかった。
 
 
 メタグロスに踏まれそうになったり、ダストダスに埋まりながらも、ポケモンたちの足元をすり抜け、最前列についた。
 そして、「そのポケモン知ってます」と、プクリンたちに向かって言う。
 が、周りのポケモンの声にかき消されて伝わらない。
 自分の出せる精一杯の声でもう一度。
 
『そのポケモン知ってます!』
 
 しーん……
 
 その声を聞いた群衆が一瞬にして静かになる。
 ペラップが、こちらに近づいてきて、話しかけてくる。
 
「そこの君、今、知ってるって言ったよね? 本当かい?」
「は……はい。」
 
 周りを見回す。
 みんなが私を見ている。
  
 とくとくとくとく。
 自分の心臓の音が耳元で聞こえる。
 緊張で気を失ってしまいそうだが、なんとか意識を呼びとめる。 
 
「そんなに緊張しなくてもいい。ワタシはペラップ♪ さぁ、知っていること、なんでもいいから教えてくれ。」
「あ……あの……その……ヘルガーです……よね?」
「そうだ。先日、このあたりで目撃情報があったらしい。」
「え……えーっと……今日の夕方……あ……あっちの山の方角に……何かを運んでいる……ヘルガーを見ました。」
 
 声が上手く出ない。
 どうしてもカチコチしてしまう。
 理解してくれただろうか……? 
 
「おやかたさま。」
「うん。わかってる。ともだち! ありがと〜!」
「では、後を追うことにしましょう。」
「じゃあ、ぼくたちはいくよ。またね♪ ともだち! ともだち〜〜〜!」
 
 どうやら理解してくれたみたいだ。
 プクリンとぺラップは何やら嬉しそうに去っていった。
 
 ……あれ? 
 さっき、『プクリンの一行』って言ってなかったっけ?
 一行って言う割には、二匹しかいなかったけど……  
 
 でも、ちゃんと伝わったみたい……よか……った。
 
 緊張の糸が途切れてか、目の前の景色が一瞬にして歪んで見えなくなった。
 
 どうしてあそこまで緊張しちゃってたのだろうか。
 しばらくして自分の部屋で気がついた後、しばらく考えていた。
 あそこで気を失って倒れた後、メタグロスが運んでくれたらしい。
 気がつく前に帰っちゃったみたいだけど。
 
 もうすっかり暗くなっている。
 どの位の時間気を失ってたんだろう?
 頭が痛い。薬飲んで寝よう。
 夜更かししても何の得もないし…… 
 
 お休みなさい……
 
 ――――――――――――――――――――――――――――――
続く。

 





 補足
※年の数え方は人間とは違うかもしれません1年≠1歳


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