注・暗いです。
いつの間にかあの子の姿を目で追っていました。あの子はかわいくてまぶしかったからです。あの子には好き
な人がいて、ボクもその人のことは好意的に見ていました。ボクにはその好きな二人を引きはがしたり、割って
入ったりする勇気はありません。だからせめて、ボクは二人に置いていかれないよう、走って走って、必死に隣
にいようと思ったのです。
なのに彼らの姿はどんどん遠ざかっていきます。ボクはみっともなく息を切らして、苦手な走りを頑張っても
どうしようもないのです。
走っても走っても、いつまでもあのきれいな茶色い長い髪はずっと遠いままで、全く、何を、どうあがいても
追いつけないのです。