マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
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  [No.1188] しっぽの気持ち(サトセレ) 投稿者:焼き肉   《URL》   投稿日:2014/09/04(Thu) 23:35:55   46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:サトシ】 【セレナ】 【サトセレ

 ユリーカと二人、やって来た街を観光して歩いていると、一つの小さなお店を通りがかった瞬間、とってもい
い匂いが鼻先をくすぐった。甘い、おいしい、ポフレとはちょっと違う幸福なお菓子。

 香ばしくてとてつもなく、すごい勢いでお腹の虫をくすぐってくるもの。ガラス張りの店内を見れば、それは
ケーキ屋さんだった。ちょうど出来たてらしいクッキーを、お店のガラスのケースに陳列しているところだ。

「ねえねえセレナ、すごおーく、おいしそうだよ?」

 一緒にいたユリーカが、ヨダレを垂らさんばかりの勢いで店内を指さしている。愛用のポシェットから首を出
しているデデンネも、ぴょこぴょこしっぽを振って落ち着かない。お腹の虫はずっとくすぐられ続けている。

「じゃあ、買っていこっか」

 毎朝気を使って一生懸命ブラッシングしている、ヘアスタイルの奥の脳味噌の中枢神経なんやかやは、お見事
なほど匂いに陥落してしまった。


 値段もそれほどではなかったそれを、ユリーカとセレナはついつい自分のポケモンのぶんまで買ってしまった
。一人(あるいは一匹)一袋行き渡ることになったそれらを、ユリーカもセレナもフォッコもデデンネも、みん
なしてあっという間に食べ尽くしてしまう。

 匂いの誘い通り、クッキーはとってもおいしい。一つの袋の中に、種類の違う小さめのクッキーが、ぎゅうぎ
ゅうと入っていた。食べた時の味がふわふわくるくる変わるそれは、手がいつまでも止まらない。

「デデンネにおしゃれさせてあげるね」
「デネデネーッ!」
 
 食べ終わって手持ちぶさたになったユリーカが、クッキーの袋口を縛っていた赤いリボンをデデンネのしっぽ
にくるっと結びつけた。兄に似て案外手先が器用なユリーカは、瞬く間にデデンネのしっぽを彩ってしまう。

「デデンネ、似合ってるー。よーし、あたしもっ!」

 しっぽを彩られ、その場をくるくると回り喜びを表現するちっちゃな相棒がうらやましくなったのか、ユリー
カは自分のサイドで縛った髪の根元に、自分のクッキーについていたリボンをくるっと結びつけて、おそろいに
してしまった。

「どーお、セレナッ!」
「うん、すっごくかわいいっ! 似合ってるよっ!」
「わーい!! あたしたち、かわいいって、デデンネ」
「デネーッ!」

 ぴょんぴょんと自分の体を登ってきて頬ずりをするユリーカに、こっちもなんとなくうらやましさを感じて、
そっとフォッコのしっぽにリボンを結びつけてみた。ユリーカは器用らしい。いざやってみると、ちょこちょこ
落ち着かないフォッコにリボンをつけてあげるのは骨が折れた。

「よーし、フォッコもかわいいかわいいっ。わたしもやっちゃおーっと」

 先っぽだけまとめた自分の髪の毛先を持ってきて、さっと真っ赤なリボンを縛り付ける。

「わー、セレナもフォッコも、かわいいねー」
「えへへ、ありがと」

 ピン、と指で髪をはじいて定位置に戻しながらユリーカに笑いかけて、それからちょっとだけ、よこしまなこ
とを考えた。

 ──サトシもかわいいって、言ってくれるかな。


 待ち合わせ場所のポケモンセンターのドアをくぐるなり、ユリーカは真っ先に入り口近くのベンチに座ってい
たサトシとシトロンを見つけて、パタパタせわしなく走っていく。

「ただいまー!」
「ああおかえりユリーカ、セレナ。面白いものあったか?」
「うん! きれいな噴水とか、かわいいお店とか、いろいろ見て回ってきたよ」
「そっか。こっちはちょっと途中でギブアップしちゃってな」

 ピカチュウを抱き上げながら、サトシはグロッキー状態のシトロンを目線だけで指す。特訓場所を探すついで
に、シトロンの買い物につき合うと言って別行動を取っていたのだが、この様子では無事買い物を全て終えたの
か怪しいところである。と思った瞬間、「買い物は無事終わりました!」という妙に気合いの入った声が、グロ
ッキー状態のシトロンの口から発せられた。いいパーツでも見つかったのであろうか。

「見て見てサトシ、お兄ちゃん、デデンネのしっぽかわいいでしょ!」
「ああ、ホントだ。かわいいな」
「これはかわいいですね」
「ふふふー、おそろいなんだよっ」

 ポシェットに入っていたデデンネを、バッとサトシ達の顔の近くまで抱え上げて、ユリーカは体全体で相棒と
同じ物を身につけていることを表現する。ユリーカみたいにサラッと、何気なく言えたらいいのになあ。そう思
いながら、自分も足元のフォッコを抱え上げて、さりげなく、自分の髪の毛のしっぽの部分も見えるように肩に
かけて、サトシに見えるようにしながら、なるべくさりげなく、ユリーカと同じように声をかけた。

「あのね、フォッコとわたしも、同じようにしてみたんだけど・・・・・・」
「へー、かわいいじゃないか」

 やったあ! フォッコを抱えているため実際には出来ないが、セレナは内心でガッツポーズを取った。サトシ
はセレナに抱え上げられたフォッコの頭を撫でながら、ニコニコ笑っている。

「フォッコの真っ赤なリボン似合ってるぞ」
「フォッコォッ!」

 誉められて撫でられてフォッコは上機嫌だったが、セレナは反対にズッコケそうになった。やっぱりフォッコ
をかかえているので実際には出来ないのだが。

 ほんのちょっぴりだけムッとしながらも、セレナはサトシを怒る気にもなれなかった。何故なら、サトシの自
然にポケモンに優しく出来るところも、セレナは大好きだからだ。


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