マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
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  [No.337] 世にも騒がしくて可愛い(?)イケニエ話 投稿者:巳佑   投稿日:2011/05/02(Mon) 22:17:24   44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]



【1】

昔、とある場所にお酒造りが主流の小さな村がありました。
その村ではモモンの実やマトマの実といった木の実を発酵させて木の実酒を造っては、
ふもとにある城下町に売り歩いていました。
人気の方はといいますと……可もなければ不可もなく、いたって普通でした。
「おとうさーん、今日の発注分、荷台に積んどきましたよ〜」
「おう! お疲れ、咲羅(さら)! それじゃ、行ってくる!」
その村にある一軒の木造の家から一人の小柄ながらもたくましい隆起を持った筋肉を身につけた男が現れました。
家の前には人間を三人ほど乗せることが可能な手押し車と――。
「気をつけて下さいね、おとうさん。最近、物騒な話もあるみたいですから〜」
「オレはお前を留守にさせるほうが心配だ。悪い虫がつくかもと思うとなぁ……思うとなぁ……!!」
「大丈夫ですから。心配しないで。ほら、早く行かないと、遅くなっちゃいますよ〜」
涙ぐんでいる男をなんとかなだめているのは、その男の実の娘で、
腰まで垂れているのは世にも珍しい桃色の雲のようにふわふわとした髪。
そして両目から覗くのは透き通るほどの空色。
身の丈も六尺を超えていて、スラッとしているその娘は
村一番の可愛い娘でした。


【2】

ある日のことです。
「み、みんなぁ〜。今日の夜、オラの家に集まってくれべぇ〜」
この村の村長が青い顔をしながら言うものだったので、村の皆はざわめきを隠せませんでした。
各々、心に不安を残しながら満月の夜の下、村長の家に向かいました。
広い居間にて、囲炉裏(いろり)を中心に囲むように村人が集まってきており、その中には咲羅と父の姿も漏れなくありました。
「村長……話ってなんだべさ?」
一人の村人が声をあげると、村長は自分の身に起きたことを思い出したかのように
ガクガクとバチュルのように震えております。
「今日な……ふもとの城下町の帰りの山道でさ、緑色の大きなヘビにあったんだべさ」
「大きさってどんぐれいなんだよ?」
「こんぐら〜〜〜〜〜〜いだべさ」
膝を曲げながら、村長は左手で長い波線を描きました。
「十尺くらいか?」
「分かるのかよ!?」
「おぉ!! よく分かったべ! 確かに、そんぐらいはあったべな」
「当たりなのかよ!?」

そんな(?)勝手な茶番は置いといて。

「そんでなぁ……その緑色のヘビに言われたんだべよ。
 村から一人、イケニエを差し出せってよう……しかも村一番のかわええ……」
「まさかオレの娘か!?」
村長の言葉に思わず悪い予感を口走ってしまった親馬鹿者が一人いました。
……いわずもがな、その場にいた皆の視線が一点に集まっていきます。

「えっと、わたくし……ですか〜?」
ゆっくりと、そう自分に人差し指を向けながら言ったのは他ならぬ咲羅でした。

「……んだべ。村一番のかわええ娘を要求されたんだべよう」
村長が申し訳なさそうに言うと周りの人達がざわめき始め、
信じられないといったような、どよめきがその場で渦をえがいています。
「そんな! 咲羅さんがイケニエなんて! 信じられませんよ! ねぇ、おとうさん?」
「貴様にお義父さんと呼ばれる筋合いなんてない!!」
「咲羅さんは……村で二番目に可愛い女の子なんです!! だから咲羅さんが行く必要は……」
「貴様! ウチの娘が可愛くないというのか!!??」
「一番じゃダメなんか? 二番目でも充分だと思うよ、おとうさん」
「だからオレのことをお義父さんと呼ぶなと言っているだろう!!」
イライラが蓄積されていき、風船が割れたかのような音が咲羅の父の頭から響きました。
その形相はオニゴーリの如く、しかし、顔色は憤怒の赤に染まっていました。

「ウチの娘が一番可愛いに決まっているだろう!!!」

怒号が辺り一帯に飛び散り、周りにいた人たちは背中に電流を走らせたかのように硬直しました。
「……おとうさん、大丈夫ですか〜?」
自分がイケニエになることが決まりかけているのに、咲羅は肩で息をしている父の背中をさすっていました。
そのマイペースな咲羅の声に導かれるように一人の村人が声をあげます。
「……村長、もし……そのヘビとの約束を破ったら、どうなっちまうんだ?」
同じく硬直していた村長もその質問で我に帰って、答えようとしましたが……その顔色がよりいっそう悪くなっていくように見え、
唇が恐怖に動かされているようにブルブルと震えています。
「……も、もしな、約束を破ったらな……」
村長が息をのむ音がやけに大きく聞こえました。
「仲間のヘビ、七匹、連れてこの村にやってくるって……!!」



【3】

「へっくしゅっ!!」
満月の夜空の下、一匹の何かがクシャミをしました。
透き通るような水色と純白をその体に塗らせていて、頭の上には角が一本と両側からは小さな羽根のようなもの、
首元には水晶玉のようなものをつけており、尾の方にも小さいながらも二つ立派な水晶玉をつけていました。
「変なウワサでもされてるんじゃないのか?」
そう言いながらそのモノに紅の瞳を向けたのは大きな緑色の蛇でした。
「特にこれといったものはないはずですが……」
「何を言ってる、キサマにはアレがあるではないか」
「ま、まぁ……でも本当は僕には関係ないような……」
大きな緑色のヘビは何かを思い出したような顔つきになります。
「あぁ、それよりも、イケニエ要求してきたから」
「え!? い、いつの間に!? ちょ、ちょっとぉ……!」
「何か文句があるのか? 前にもキサマ言ったよな? わらわのやり方でお願いします、と」
「そ、それは……その……」
「それ以上、文句の一つでも垂れたら、グラスミキサーで刺身にするからな」
大きな緑色の蛇はほくそ笑みながら明るく、そう言いましたが、言葉の中身は鋭利で冷たいものでした。
何も言えなくなった相手に満足したのか分かりませんが、大きな緑色の蛇の口は更に速度を上げていきます。
「あ、そうそう。約束を破ったら仲間の蛇を七匹連れてくるとか言っといたから」
「……それ、脅迫じゃないですか……」
「何を言っておる。脅迫ほど、潤滑(じゅんかつ)に物事が進むものはないと思うぞ?」
「それでも……後が怖いですって……ん?」
相手は何かが引っかかる感覚を覚えました。
そこで、大きな緑色の蛇との会話を頭の中で巻き戻して、再生させて――。

『あ、そうそう。約束を破ったら、仲間の蛇を七匹連れてくるから』

『仲間の蛇を七匹連れてくるから』

『蛇を七匹』

『蛇』

「ちょっとぉ!? 待ってくださいよ!」
「ん? なんじゃ?」
大きな緑色の蛇の紅の瞳に臆せず(おくせず)、というより、これだけは譲れないといった感じの顔で――。

「僕は蛇じゃないって、一体、何百回言えば分かるんですかぁー!!!」 



【4】

「咲羅……うぅ、咲羅ぁ……!」
「おとうさん、そんなに泣かないでください〜。大丈夫ですよ、きっと」
「何を言ってる、このバカもん!! イケニエの意味を分かっているのか!?」
「え……と、確か、相手を悦ばす(よろこばす)為につくす、でしたよね?」
「咲羅!! それはぁ、むぐ!? ぐむぐぐむぐぐ!?」
突然、咲羅の父の口が村人の手によって塞がれました。
その村人は咲羅の父よりも屈強で、村一番の強い男でしたから、咲羅の父はその手から逃れることはできませんでした。
真実を知っていないのならば、その方が咲羅の為でもある、と考えた村長からの命令だったのです。
できるだけ、咲羅に恐怖を与える事は避けるように、村長は険しい顔つきになります。
「咲羅よ……頼んだべよ」
「はい〜。しっかりと役目を果たしてきます。村長様」
雲一つもない快晴の青空の下、村の入り口には村人全員と、
人を三人乗せることが可能な、例の手押し車があり、そこには機嫌取りの為のお酒のタルが数本積まれており、
そして咲羅自身も背負える分だけお酒のタルを持っていました。
「それでは、行って参りますね〜」
村人皆が泣きながら自分を送ってくれるなんて、不思議な感覚と思いながら咲羅は元気よく出発しました。
その村人たちの涙の本当の意味も知らずに。
その咲羅の桃色の背中を見送りながら一人の男が呟きました。

「うぅ……これで、村一番の屈強な娘も消えてしまったなぁ……うぅううぅ……」



【5】

空で繰り広げられているマメパトとポッポの決闘を見送りながら
野を超え、
我の巫女にならぬか? というキュウコンの誘い(ナンパともいう)を丁重に断りながら
坂を上ったり、
ゴーリキーにしつこく戦いを挑まれたので、とりあえず受けて、そして勝って、
坂を下ったり、
マッギョを踏んでも、なんともなく、
長い長い起伏のある山を登り――。
ようやく、咲羅は大きな緑色の蛇が指定したという、裏山の山頂にたどりつきました。
まもなく日も沈むこともあってか、広場のように広がっている山頂の真ん中には焚き火が施されており、
それを囲むように座っている八匹の何かが見えました。

紫色をした小さな蛇。
紫色に大きな怖い顔を持った蛇。
所々に黄色の模様をつけて、長くて赤い牙を口からのぞかせている黒い蛇。
小さい手足を持った緑色のモノ。
その緑色よりも少し大きいモノ。
水色と白色を体に塗らせた小さな蛇(?)
同じく水色と白色を体に塗らせ、その体には三つの水晶をつけている蛇(?)
そして――。

「おっ、どうやら来たみたいだな」
大きな緑色の蛇が沈みゆく夕日に照らされた咲羅の存在に気が付きました。
そして凛(りん)とした声とともに他の七匹も咲羅のほうに視線を向けました。
「すいませ〜ん。遅くなってしましたか〜?」
咲羅は伸びやかな声を出しながら焚き火のほうに近づいていきます。
もちろん近づいてくる咲羅の大荷物にその場の一匹を除く七匹が目を丸くさせていました。
「……あんな重そうな物を持っていて、よく涼しい顔ができますね……」
一匹がそう呟いた後に心底楽しそうな笑い声が響き渡りました――例の大きな緑色の蛇です。
「ふふふふ! 実に愉快、愉快! さて、わらわの方にちこうよれ、娘」
大きな緑色の蛇が尾で手招きの真似事をしているのに導かれ、咲羅は大きな緑色の蛇の近くまで進むと立ち止まりました。
実際に目の前にすると、その大きな緑色の蛇の大きさが存在感強く伝わってきます。
そして、その迫力もさることながら、その大きな緑色の蛇からは何か高貴さというものがあるようだと咲羅には感じられました。
この場に集まっている八匹の中で一番に美しい。
「まぁ、座るといい……早速だが、名はなんというのかのう?」
「あ、はい。咲羅といいます」
「ほう、咲羅というのか。わらわはジャローダという、よろしくのう」
正体を名乗った大きな緑色――ジャローダはいきなり咲羅の頬(ほお)に口づけをつけました。
その音色は艶やかに塗られたような、そんな甘い響きが漂っています。
「姐(あね)さん!! いきなり、そんな……! すいません、咲羅さん。だいじょう――」
最後の『ぶ』という言葉が生まれるはずだった場所には、ムチを思いっきり地に叩き(たたき)つけたかのような音が鎮座しました。
「だ、大丈夫ですか〜?」
「大丈夫だよ。兄ちゃんはこれで旅立ちから356回、ジャローダさんに殴られているから、だよ」
「う……まさか……数えていたとは……弟よ……」 
「あ、ぼくはミニリュウっていうんだよ。よろしくだよ。なんか君とは気が合いそうなんだよ」
「あ、よろしくお願いします〜」
自分と同じ匂いがしたような気がしたからか、ミニリュウと名乗ったものは笑顔で尾を振っていました。
その後、ミニリュウの自己紹介が引き金を引いたのでしょうか、他のものたちも咲羅の近くに集まってきました。

まずは紫色をした小さな蛇。
「おれっちはアーボっていうんだぜ! よろしくな! ピッチピチのねぇちゃん!!」

次に紫色に大きな怖い顔の模様を持った蛇。
「ハハハァ!! ワシはアーボック、ゆうんじゃけん、よろしゅうな!」

続いて、所々に黄色の模様をつけて、長くて赤い牙を口からのぞかせている黒い蛇。
「…………よろしく。自分、ハブネークっていいます……」

更に小さい手足を持った緑色のモノ。
「ボクはツタージャといいますです。そこそこ天才です。よろしくです」

そして、その緑色よりも少し大きいモノ。
「私は紳士のジャノビーと申します。以後、お見知りおきを。あ、あと私とツタージャはジャローダお姉さまの弟でございます」

それと――。
「で、今、ここで無様に倒れておるのがハクリューという、駄目蛇――」
ハクリューにとって譲れない単語がハクリューを立ち上がらせます。
「僕は蛇ではなくて、竜、と何回言えば分かるんです――」
最後の『か!?』という声のかわりに、ムチが打たれたかのような音と甲高い悲鳴が横入りしました。
地面にのびて伏しているハクリューにミニリュウが溜め息をもらします。

「兄ちゃんが竜だってことをちゃんと認めさせないのが悪いんだよ。そんなんじゃ、立派なカイリューにはなれないんだよ?」



【6】

夕日は沈み、裏山の山頂に漂っているのは……誰かを酔わせる危険な香りでした。
「ガハハハ!! ニンゲンはうまいで!! グヘッ!!」
「ヒクッ確かにニンゲンはうまいぜ! ヒャハハ!!」
アーボックとアーボの下品な笑い声が響き渡ります。
その口元にはなにやら……赤いものが付着しており、それはすぐに長い舌で舐め取られ――。

「まったく……言葉がおかしいですん。正しくはニンゲンの造ったお酒がおいしい、ですんっ」
「アーボさん、アーボックさん! アナタたちは紳士として、それはどうなんですか!? それが紳士の振る舞いだと申されるのですか!? 私は認めませんよ!?」
「……みなさん……怖いです………………自分……なんか……自信を持てなそうで……う、うぅううっ!」
「ハブネークさん! そんなんで、紳士になれるというのですか!? 紳士に涙はいらないのです!! しっかりしてください!!!」
「そんなことを…………言われましても…………」
「紳士には言い訳も不要なのです!! 紳士を甘く見ているのではないですか!? いいですか!? 紳士というものは…………!!!」

六匹の蛇と二匹の竜は咲羅が持って来たお酒をいただいていて、タルの中に顔を入れて、酒を飲んではそれぞれ大いに酔っていました。
場の空気は全体に陽気なもので、見ていて飽きることがなさそうな喜劇が繰り広げられています。
ジャノビーが紳士というものを語っている、その近くではもちろん、咲羅とジャローダ、ミニリュウとハクリューがお酒を飲んでいました。
「すいませんね……お酒をもらってしまって、なんか申し訳ないというか……」
「いいえ、こちらこそ〜、お口にあいますか〜?」
「本当にすいません。どっちかというとおいしいです。あぁ! 本当にこんなことしか言えなくてごめんなさい! 申し訳ありません!!」
「いいえ〜、おいしいのなら〜、持ってきて良かったです〜」
「本当に重い荷物を持たしてしまって申し訳ありませんでした! 本当に本当に――」
もう一回ハクリューが謝ろうとした矢先に奏でられたのはムチが打たれたかのような音色でした。
「しつこいんじゃ、キサマは」
再び、地に伏したハクリューを心配そうな顔で覗く咲羅にミニリュウが顔を向けました。
「だいじょうぶだよ。兄ちゃんは酔っ払うと、あやまりグセが出てくるだけだから、だよ。あ、ちなみにぼくはけっこう、強いんだよ」
ミニリュウは倒れた兄であるハクリューを哀れむように見やると、再び飲み始めます。
とりあえず一安心した咲羅でしたが、いつのまにか体をジャローダに巻かれていて、ジャローダの顔が近づいてきました。
咲羅のふわふわな桃色の髪に顔を更に近づけたジャローダは鼻をひくひくと楽しむかのように動かして、
その後、咲羅の髪の毛を噛みました(かみました)。
「ひゃうっ?」
ジャローダの噛み方(かみかた)が甘噛みだったからでしょうか、咲羅はなんだか不思議な気持ちでした。
「ひゃあ、くすぐったいです〜、ひゃう、ひゃあっ」
くすぐったいのが逆に気持ちよくて、咲羅には更に不思議な感覚でした。
ジャローダが一旦(いったん)甘噛みを止めると、閉じていた紅の瞳を開けて、妖しく(あやしく)微笑みます。
「ふふふ、甘露、甘露。なかなか見た目を裏切らない甘い髪じゃのう〜」
耳元でささやかれて、咲羅は更に酔ったような感じになります。
何か……このまま、おぼれてしまいそうな、でも止めることができない、そんな感じでした。
そんな咲羅の様子に更に調子に乗ったジャローダはまず、咲羅の唇にそっと重ねるだけの口つげをした後に、
頬を一舐め、二舐め、それから口づけを乗せていきます。
「ひゃう、あう、ジャローダさん……」
それから首元にもジャローダに口づけをされてゆき、
優しくなでられているかのような、甘い響きが咲羅の中に広がっていき、
その度に咲羅の口から艶かしい(なまめかしい)吐息がこぼれてしまいます。
「ひゃあ、あうう、ひゃう……ジャローダさ〜ん……」
「ふふふふふふ、中々、よくとけた顔をするではないか……咲羅」
このままではいけないような……と咲羅も思っていたのですが、その思考すらもジャローダからの甘い誘惑に絡め取られてしまいます。
「もっと、鳴いてもいいのだぞ……咲羅」
ジャローダが一回、舌舐めずりしますと、自分の尾の方を咲羅の服の中へ――。

「ストーップ!!!! 姐さん、何やってるんですか!? これ以上は駄目ですよ!!!!
 咲羅さんに(ごめんなさい。ハクリューが何か言っていますが……掲載できません。ご了承下さい。)
 本当にもう、何考えてんですかぁ!!??」

「……黙れ、駄目蛇が」

ジャローダがあっという間に咲羅の体を離すと、『つるのむち』を一発思いっきり放って、ハクリューを上空にふっ飛ばします。
そして紅の瞳が鋭く光ったかと思えば、ジャローダの周りには緑葉が何枚も舞っていて――。

「あ〜あ、だよ。ジャローダさんは酔うと、(一線を越すかもしれない)絡みグセ(女性限定)があるんだよ〜。
 そして、その絡みをジャマした男は…………」

咲羅が我に返ったのと、ジャローダの周りに漂っていた緑葉たちが空へ舞って行ったのは、ほぼ同時でした。

「ジャローダさんの本気の『リーフストーム』は下手したら死んじゃうんだよ。まぁ、兄ちゃんなら(多分)だいじょうぶ、だよ」

ミニリュウがやれやれといった顔で咲羅に説明したのと、
なにやら、空から断末魔(だんまつま)のような嫌な歌声が響いてきたのはほぼ同時のことでした。



【7】

咲羅が持って来たお酒もすっかりなくなってしまい、夜も更に更けて月が高く昇る頃には、いくつかの寝息が協奏曲を奏でています。
「ふふふ、寒くないかのう? 咲羅」
「大丈夫です〜。焚き火もまだついてますし、ジャローダさんの体も暖かいですから」
今、起きているのは、ジャローダと、そのジャローダの体に優しく抱き寄せられている咲羅。
「まったく……最初から、そうしていればいいじゃないですか……」
「……何か言ったかのう? 駄目蛇」
ジャローダに蛇にらみされて、身をすくんでしまっているハクリュー。
ちなみにある一説によると、本当は蛇というのは竜の眷属(けんぞく)といいまして……つまり、簡単に言いますと、竜の方が蛇より偉いはというのがあるのですが……。
少なくとも、このジャローダとハクリューの場合は立場が逆のようです。
「何も言ってません! うぅ、まだ傷が痛みます……」
「もう、兄ちゃんのじごうじとくなんだよ?」
(奇跡的に)傷だらけ(で済んだ)になった兄を戒める(いましめる)ミニリュウ、この計一人と三匹がまだ起きていました。


「ふふふ、まぁ、実に愉快であったのう。さて……咲羅にはこの恩返しをせねばのう……」
「恩返し、ですか? いいですよ、そんなの〜、それよりも、わたくしはイケニエとして……皆様を悦ばせられたでしょうか?」
咲羅の言葉にミニリュウやハクリュー、そしてジャローダの目が丸くなりました。
咲羅はもう酔っていません……となると、と考えたジャローダの口元が大きく上がったと思えば、盛大に笑い始めました。
「ふふふ、はははははは!!!! 成る程のう! 実に肝が据わった(すわった)娘かと思っていたが……ははは!!!」
ミニリュウも楽しそうに笑っている中、ハクリューだけは申し訳なさそうな気持ち全開な顔になっていました。
もちろん咲羅の頭の上では疑問符が元気よく跳ね回っています。
「ははははは!! 実に愉快じゃ! のう咲羅、ちょいとここいらで、わらわたちの話を聞いておくれ、のう?」
「あ、はい。いいですよ〜」
紅の瞳に涙を浮かべる程、笑ったジャローダは改めて話をする為に一つ咳払いを入れます。

「わらわたちはのう、ちょっとワケありの旅をしておってな…………咲羅は『八尾のハクリュー』という昔話を知っておるかのう?」
「聞いたことがあるような、ないような……」
「ふふふ、じゃあ、話をさせてもらうとな、昔、八匹のハクリューが世界を転々と旅をしながら、悪さをしておったんじゃ。
 例えば……そうじゃな、ニンゲンの女をイケニエとして集めて、酒池肉林のような生活をしておったりとかのう」

楽しそうに語るジャローダにハクリューはバツが悪そうな顔をしてます。

「このままではいかぬと、ある日、一人のニンゲンの、娘がその八匹のハクリューが住んでおった洞穴に乗り込んでのう、
 自分が精一杯、尽くすから、どうかこれ以上、悪さをしないでおくれ、と。その女をいたく気に入った八匹のハクリューはのう、
 その娘の願いを聞き入れたのじゃ。そして、その娘は死ぬまで実に五十年以上、その八匹のハクリューの為に尽くした……ここまで良いのう?」

咲羅が頷いた(うなずいた)ので、ジャローダは先を進みます。

「その娘が死ぬとな、八匹のハクリューはまた悪さを始めようとした……そのときじゃった。
 一人のニンゲンの天女が空から現れたんじゃ……実はのう、その天女はあの五十年以上、八匹のハクリューに尽くしていた娘じゃった。
 ニンゲンや他のポケモンを八匹のハクリューから助ける為に、その天女はニンゲンの娘に生まれて来たと語ったのじゃ」
「……その天女さんとの約束を破ってしまうなんて……ひどい話ですね〜」

ハクリューの顔が更にバツが悪いものになっていきます。

「その天女はのう、悲しい顔をしておった。どうして約束を破るのかと。
 しかし、その八匹のハクリューは約束などないわ、とゲラゲラ笑って返したとき、天女が遂にブチ切れたのじゃよ」

どとうの展開に咲羅は思わず息を飲み込みます。

「ブチ切れた天女は八匹のハクリューでも太刀打ちできなくてのう、ついに、その八匹のハクリューを滅ぼしたのじゃ。
 ……だが、天女の怒りはこれで止まらなくてのう、ある一つの呪いをかけたんじゃ。
 ハクリューの首元に一つの水晶玉みたいなのがあろう? その水晶玉にそれぞれの魂を閉じ込めてな、
 この水晶玉に善の気持ちを込めなければ、貴様たちに安息の日は与えぬと、な」

ジャローダがそう言いながら、出したものは――。

「これが、その八つの水晶玉じゃ。この八つの水晶玉に善の気持ちを込めて、全て割らぬといかぬ。
 そして、それを全て割らぬ日が続く限り、ミニリュウはハクリューに進化できるのじゃが、
 ハクリューはカイリューに進化することはできぬ、とな、のう?」

ジャローダの視線が一匹の――。

「ハクリュー?」

ジャローダの紅の瞳に見つめられたハクリューは重い溜め息をもらしました。
咲羅が再び疑問符を頭に跳ねさせたのを見たジャローダは説明を続けようとするが、ミニリュウがそれを制した。

「ここからは、ぼくが言ったほうがいいんだよ。あのね、どういう生活をしていたかは分からないだけど、だよ。
 その天女さんは一匹のミニリュウを産んだんだよ。それが…………」
「……つまり、あの八匹のハクリューのどれかは……分かりませんが、僕たちの祖先なんです。お恥ずかしながら」

今まで重く口を閉じていたハクリューが口を開けました。
まるで、自分があの八匹のハクリューの中の一匹だったかもしれないと訴えるような目をしていました。

「ある日のことでした。僕は夢を見たんです。美しいニンゲンの女性、まぁ、恐らくあの天女だと思われる方に出逢って、
 先程、ジャローダさんが言ってくれた昔話と、その真実を語ってくれて、そして、この八つの水晶玉を託されたんです」

忌々しいものを見るかのようにハクリューは八つの水晶玉を見つめました。
遠くても、自分と血の繋がった祖先のハクリューの所業に呪いたくても呪えない、
逆にその呪いを受け続けているという処遇に何度、憤り(いきどおり)を覚えたことだか、と、昔話の真実はハクリューの生真面目な性格には深く食い込んでくるものでした。

「それで、まぁ、わらわはこの駄目蛇と小さい頃からの腐れ縁でのう、
 どうしようもなかったのじゃろうな、こやつはわらわに助けて欲しいと頼みに来たんじゃ。自分だけではどうしようもないと、泣きながらのう」

更に恥ずかしいところを咲羅に聞かれてしまったハクリューは駄目蛇と言われても、なんとも言えませんでした。

「ぼくも待っているだけじゃいやだったからね、一緒に行くことにしたんだよ」
「そして、弟のツタージャとジャノビーのやつらにも、今回の旅は色々、学べることが多いと思ってのう、強制連行じゃ」

ジャローダは尾を使って、夢の中を歩いている、とある一匹を示します。

「他のやつらは道中で出逢って、ついて行きたいと言ったやつらなんじゃが……まずはハブネークじゃな。
 あやつは遠くに旅立ってしまったザングースというポケモンに逢いに行きたいらしくてのう、
 そして、次にアーボとアーボック。あやつらは親子でのう、逃げられた妻を探しておってな……まったく、なんの因果か、八匹になってしまったのう、ハクリュー?」
「別に、悪さをする為の旅ではないんですから、そこまで気にしてたら、それこそ、駄目蛇だと思いますよ」

ハクリューは力ない微笑みをジャローダに向けると、それを受けたジャローダは咲羅に視線を向けました。

「というわけで、要約するとのう、友を探しながら、逃げられた妻を追いながら、八つの水晶玉を壊す為に善の気持ちを集めて……いや、
 いいことをしまくっていこう! というのが、わらわたちの旅じゃ。分かってくれたかのう? 咲羅?」

色々と展開していった話で頭がこんがらそうになった咲羅でしたが、ジャローダの一言で不思議と頭の中が一気に整理されました。
一方、ハクリューは省きすぎなんでは……? と目で訴えていたようですが。

「はい、分かりましたです〜」
「うむ、よくできたのう。さて、咲羅よ、お主は何をして欲しいのじゃ?」
今までのジャローダの話からすると、ジャローダたちに何かを願うことは自分たちを助けることにもなりますし、
そしてジャローダたちを助けることに繋がる……ということは遠慮はいらないということで。
「あのう、ぜひとも、力を貸して欲しいのですが〜」



【8】

「う〜ん、もうちょっと、寝かしておいたほうがいいかもだよ。それと、なるべく温度は下げないようにするといいんだよ」
とある倉庫の中、タルから顔を出したミニリュウがそう告げました。
人間が一人、その言葉を聞いてウンウンと頷いていました。
「なるほどだべ、確かに味がちょいと足りねぇと思っていたところだべ、参考になるべなぁ〜」
その人間になでられたミニリュウは笑顔で尾を振っていました。

ここは咲羅が住んでいる村。
あの後、咲羅が無事に戻ってきて驚いた村人たちは更に驚いて目玉を飛び出しそうになります。
なんと、あの村長の話していた大きな緑色のヘビと仲間であるらしい七匹のヘビまでもが一緒にいたのですから。
咲羅はすぐに事情を説明し、ジャローダも非礼を詫びたことから村人たちの理解を得るのに時間はそうかかりませんでした。
そして、次にジャローダたちが移った行動が、お酒を飲むことでした。

『あの〜、わたくしが住んでいるの村のお酒を見てくれませんか?』

咲羅のお願いは村の酒の質の向上でした。
村の酒がもっと人気を出せるようになれば、村も繁栄できてよいのではないだろうかと、咲羅は考えたのです。
八匹の中ではミニリュウ、ジャローダ、ハクリュー、ハブネークが村の酒を調べて、
他のアーボ、アーボック、ツタージャ、ジャノビーは売り子の手伝いや、見張りなどにも手を貸してくれました。
全員が酔うとタチが悪いからとジャローダが考えて決めた役割決めで、無事になにごともなく、日が過ぎていきます。
村の酒を調べる四匹のセンスは抜群で、徐々に村の酒の質が向上されていきました。
一月、二月と、村の酒の人気は上がっていき、今では、ふもとの街に住んでいる貴族の心をもつかむ味となりました。
村人と八匹のポケモンの仲もよくなっていき、最初こそはジャローダの怖がっていた村長も、今ではすっかりそのジャローダの姉御肌にほれてしまっていました。

そして、そのままもう一月が流れていこうとした、その日の夜。
「もう、三月もこの村に留まってしまったのう。その成果じゃな、きっと」
「なんですか? お話って……ここに呼び出して……」
村の外ではジャローダとハクリューが二匹っきり、月が高く昇る空の下で座っていました。
「これじゃよ。この水晶玉を見よ」
「え……えぇっ!?」
ジャローダが取り出したのは件(くだん)の水晶玉一つで、その水晶玉はほのかな光を出しながら、徐々にその光を強くしていき、
やがて、瞬間的に強く輝いたと二匹が思った矢先のことでした。

「あの〜、もしかしてジャローダさんとハクリューさん、そこにいますか〜?」
伸びる一つの穏やかな声に二匹が振り返りますと、そこには咲羅がいました。

「なんじゃ、咲羅じゃったのか、どうしたのじゃ? まぁ、とりあえず、隣に座るがよい」
ジャローダが勧めた場所に咲羅はゆっくりと座りました。
相も変わらず、ふわふわな桃色の髪が揺れています。
「あの〜、皆さんはまた旅をするんですよね〜?」
「もちろんじゃ。もうすぐ旅立とうと思っておる」
「そうですか〜。では……お願いしてもいいですか〜?」
「なんじゃ? なんでも言ってみるがよいぞ」

咲羅は一息入れると、ジャローダとハクリューをまっすぐ見つめながら告げました。

「わたくしも、旅を一緒にしてはだめでしょうか〜?」

ジャローダとハクリューが目を丸くしている間に咲羅が続けます。

「今回、皆さんと出逢いまして〜、世の中が広いことが伝わって来たのです〜。
 わたくしも、ジャローダさんたちについて行って、もっと色々なことを知りたいのです〜。
 それに……ハクリューさんを助けたいですし〜」

咲羅が自分の意思を伝えると、ジャローダが一回目を閉じて、それから開けると、咲羅を抱き寄せました。

「ふふふ、ははははは! 本当にお主は可愛い娘じゃな!! うむ! よくぞ言ったぞ咲羅! ともに行こうではないか! ははははは!!!」
「ちょ、ちょっと!? 姐さん!? いきなりいいんですか!? そんなこと決めて……!!」
抗議を入れようとするハクリューにジャローダは微笑みながらにらみつけます。
「わらわが決めたと言ったら、それで決定なのじゃ! なんか……文句でもあるかのう?」
笑っていない、その微笑みの冷たさを感じたハクリューは一発で腰が折れました。
まぁ、根はいい子ですし……と呟きながら、一つ、二つ、後ろに下がりました。
「よし! 決めたぞ! 明日から旅立つ事にしたからのう! 今日は早く戻って早速、準備してくるとよいぞ、咲羅!!」
「あ、はい〜! ありがとうございます〜!! これからよろしくお願いします〜!」
ジャローダからの許しを得た咲羅は早速、旅立ちの準備をする為に村の方へと走って行きました。その後ろ姿は嬉しそうに揺れていました。

「……まったく、勝手なこと言っちゃうんですから……姐さんは、もう」
「よいではないか。あの度胸とか根性とか、まさしく旅向きではないか! どこかの駄目蛇よりは、存分に役立つじゃろう」
「だから、蛇じゃないと何回――」
ジャローダから『つるのむち』で軽く顔を打たれたハクリューからうめき声のような声が一つあがりました。
「いずれ、咲羅も子供ができるじゃろう……そのときにわらわたちの話を聞かせてやるんじゃ。
 そうすれば、色々なものたちに伝わっていくじゃろう……そしてわらわたちの話が決着をつければよいじゃないかのう?」
振り返ったジャローダの笑顔は心底楽しそうで、そして月明かりに照らされたそれは美しくて、思わずハクリューは見とれてしまいました。
「八尾のハクリューの話にな。」
「ジャローダさん…………」
ジャローダは顔をハクリューに思いっきり近づけてきて、ハクリューはその威圧感に思わず後ずさってしまいます。
「貴様、たわけじゃな。あの話はまだ終わりなんかではないんじゃよ。
 勘違いをするでないぞ? あの話はあの話でと勝手に完結させておるから、貴様はたわけなんじゃ。
 悔しいなら、貴様があの話をハッピーエンドで終わらせてみろ、違うかのう?」
ジャローダの紅の瞳がまるで人間の刃のようにハクリューに突き刺さります。
何も言えないハクリューに溜め息を一つ漏らしたジャローダは振り返ると夜空を見上げました。
「たわけが……」
 
ジャローダの呟きと共に、一つの水晶玉から、
ガラスがばらばらに砕け散るような音が月夜に羽ばたいたかと思えば、
その中から現れた一つの光が、砂のようになって、消えていきました。



【9】

翌朝、ジャローダの有言実行で旅立つことになった八匹、
ハブネーク、ツタージャ、ジャノビー、アーボ、アーボック、ミニリュウ、ハクリュー、そしてジャローダは村の入り口にいました。
村人たちは突然の別れに驚き、そして悲しみ、各々、感謝の言葉を述べながら、八匹を見送ります。
しかし、村人たちの悲しみの理由はそれだけではありませんでした。
旅立つ八匹に加わって、新たに旅立つ一人とも別れなければいけなかったからです。
「うあぅ、咲羅さ〜ん! 嘘って言ってくださいよ〜!!」
「咲羅ちゃ〜ん、いがないで〜!!!」
「咲羅しゃ〜ん!!!」
村人たちが涙を流しながら止めようとしましたが、旅の道具を詰まった袋を背負った咲羅の意志は変わりませんでした。
「ごめんなさいです〜。もう決めたことですから〜」
ハクリューたちを助けたい、その気持ちは折れることはありませんでした。
なんだか、『八尾のハクリュー』の話に気の毒になったのもあったのですが、なにより、ハクリューを見ていると、なんだか放って置けないというのもありました。
とにかく、ここで願って待っているのが嫌でした。

「あ、おとうさ〜ん! おとうさんからも何か言ってくださ――」
「お前にお義父さんと呼ばれる筋合いはないと何回言えば分かる!!?」
咲羅に群がってくる男たちを豪腕な腕でなぎ払い、物騒な音をあちこちに散らかしながら咲羅の父が近づいてきました。

「咲羅よ……」
昨晩、咲羅は父に旅立つ旨(むね)を伝えました。
最初は反対していた父でしたが、決して折れない咲羅の言葉に、ついに黙り込んでしまい、今日を迎えていました。
「おとうさん……」
「咲羅、オレは自分の娘には誇りを持ちたい……だから」
咲羅の父は唇を一回、噛み締めてから言いました。
「全てが、終わるまでは、決して帰ってくるんじゃない……!! 分かったな!?」
強く噛み締めた咲羅の父の唇からは赤いものが一滴、二滴、滴り落ちていきました。
「ごめんなさい……おとうさん、ありがとうございます」
咲羅の父は決して、許せないという気持ちがあって、そんなことを言っているのではありませんでした。
今まで、心配していた娘が強く生きている、そのことを強く感じさせられた咲羅の父は逆に娘に対して心配性だった自分が恥ずかしくなったのです。
自分は娘の何を見てきたのだろうか、と。
本当は行って欲しくない、ですが、ここで娘の背中を押してやらないで、父親として、どうなんだ? という想いが強くなったのです。
「それでは、行ってきますね……!」
たくましい咲羅の父らしい言葉は、しっかりと咲羅の背中を押していました。
その証拠に咲羅の歩く姿は力強いものでしたから。


「さ〜てと! これで後、残りの水晶玉は七つじゃな!!」
林の道の中、ジャローダは意気揚々と前進していきます。
その隣は新しい旅の仲間である咲羅が歩いています。
「今度は、どちらへ向かわれるんですか〜?」
「とりあえず、北じゃな! そしてどこかの村に着けばなお良いのう!」
ジャローダの明るい声とは裏腹にハクリューは溜め息をもらします。
「まったく……行き当たりばったりで申し訳ありませんね……」
そんな暗い顔のハクリューに咲羅は顔を横に振りました。
「そんなことないですよ〜。わたくしのときみたいなことはきっとありますよ〜。世界は広いはずですから〜」
前向きな咲羅の言葉にハクリューは思わず息を詰まらせます。
「ははは!!! やっぱり、どこかの駄目蛇よりかは役に立つじゃろう!? ふふふ、ははははは!!!」
ジャローダが大きく笑い始めたのをキッカケに皆、笑い出します。

「だから! 僕は蛇じゃないですってばぁー!!!」

ただ、一匹、泣き言を上げていたものを除いて。

この愉快な八匹と一人の旅は始まったばかりである。







【書いてみました】


昔話界では有名人であろう『ヤマタノオロチ』
今回の話はここから始まりました。

「ヤマタノオロチって要は八匹の蛇が合体してるってことだよね?(間違えてたら、ごめんなさい) 
 じゃあ、そのヤマタノオロチになぞって、蛇ポケモン八匹、考えてみようかな……。
 えーっと、アーボでしょ? アーボックにハブネーク……ジャローダ、まぁ、ジャローダが蛇なら、ツタージャとジャノビーも」
ここまでは良かったのですが、残りの二匹が中々、思い浮かびませんでした。
私の見落としがあるかもしれないのですが……この二匹を出してみました。

「あー、ミニリュウとハクリューって蛇っぽいからいいんじゃね?」

本当は駄目だと思われますが……。(汗 & ごめんよミニリュウ、ハクリュー。特にハクリューにはもうなんて言ったらいいのか)
とりあえず、ミニリュウとハクリューを入れて、物語を考えて書いていったら、こんなに長くなってしまいました。
『八尾のハクリュー』とか……とりあえず、ヤマタノオロチに謝っておきましょうか。(汗)

とりあえず、書いていて一番楽しかったシーンは酒の宴でした。
ジャローダの絡みが「ヤリスギテナイカナー、ダイジョウブカナー(汗、汗、汗)」と思いながら、ここで締めさせてもらいます。


長い話に付き合ってくださって、ありがとうございました!
ちょっとでも、面白かったと思っていただけたら、嬉しい限りです。




それでは、失礼しました。



【何をしてもいいですよ♪】
 


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