マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
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  [No.346] ゴーストにデートに誘われた 投稿者:音色   投稿日:2011/05/02(Mon) 23:55:34   73clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 敷金礼金家賃ゼロ円。驚愕のボロボロシェア住宅(大量の埃まみれゴ―ス付き)に引っ越してきて早2週間。
 人間の順応能力って言うのは恐ろしいもので早くもこの環境に慣れつつある。すげーな、おい。
 三日かけて人が快適に住める環境に掃除し終えて、アルバイトも見つかって、実家から食糧も送ってもらって、とりあえず順風満帆じゃん自分!とか思ってたら。
 デートに誘われた。しかもポケモンに。



 三日かけて吸い取ったゴ―スどもの数は大量すぎて、今日も洗濯機にぶち込んでいたら、ゴーストが壁をすり抜けてやってきた。
 二階の左から四つ目の部屋にはでっかい絵がかけられていて、その絵を気に入っているのかどうか知らないが、その部屋にはゴ―スの進化形どもがたむろしていた。
 はっきり言って、芸術なんて煮ても焼いても食えないものに興味なんてないんで、何故こいつらがこの意味不明な絵のある部屋にしか集まらないのかはさっぱり分からない。
 さすがに進化形どもは掃除機に吸いこまれるようなヘマをすることはなかったのでまだこいつらを洗濯機にはぶち込んでいない。いや、洗いたいわけじゃないんだけど。
 そんな奴があの絵のある部屋から移動してしかもわざわざこっちに来るとはこれいかに。つーか、何の用だ。
 こいつらと一緒に洗われたいのかー、冗談で言ってみた。頭をものすごい勢いで振って全否定。洗濯機怖いのか?
 それにしても、どことなくそわそわしている。全く何しに来たんだこいつ。もーすぐ脱水終わるんだけど。
 意を決したようになにやら後ろ手に隠し持っていたらしい紙を突き付けてきた。受け取れってこと?
 とりあえずもらってひっくり返してみると、へったくそなひらがなとカタカナで

『デえとシてクレ』

 ・・・。
 え、なにこれ。デえとってなに。もしかしてデートのことなのか。こいつデートの意味分かってんのか。それ以前に、デートってどういう事。
 というか、なんでこいつ、文字書けてんの?
 ・・そういえば、あの埃まみれの書庫に『マンキーでも分かるひらがな・カタカナ絵本』ってあったけど、まさか。
 あ、おい、もじもじすんな、顔真っ赤にするな!真っ赤になりたいのはこっちなんだよ!
 茫然としている間に、洗濯機は「脱水終わったぜ―」とばかりピーピー言いだして、ゴーストはそそくさと壁をすり抜けて出て行った。
 

 お客さーんかゆいところはないですかーなんて言いながら最後の一匹を乾かし終わり、ふよふよと小ざっぱりしたゴーストと入れ違いに、さっきのゴーストが入ってきた。
 さーて、こいつをどう料理してやろうか。この紙きれはデートの申し込みというわけなのか。そこから問いただす必要があるな。
 とりあえず、お前デートの意味分かってんのか?
 こくこくと頷く。何処で知ったんだかなぁ。
 ん、つーか何持ってんだ。雑誌?随分ボロいな・・。どうせあの書庫から持ってきたんだろ?その顔は図星か・・。
 えーと、『お勧めのデートコースランキング!』・・なるほど、情報源はこれか。納得。
 この赤いマルは?行きたいところか?映画館、カラオケ・・おい、最後のホテルってなんだ。
 ・・・わからずにマルしたっぽいな。いや、それならいいんだ・・。
 で、なんで行きたいのよ。

 以下、ゴーストとの筆談会話まとめ。あんまりにも書くのがのろくておまけに汚かったから解読して会話するのにすんごく時間がかかった。
 で、どうやらこいつ、見たい映画があるらしい。
 そんなら一人で見に行ってこいよ。ポケモンだしタダで見られるじゃん。という突っ込みに対して

『さビしい』

 こんなセリフをよわよわしい字で書いてきやがった。
 だったらほかの奴ら誘えば良いじゃんかと言えば、誰も一緒に行ってくれないという。案外冷たい奴多いな。
 で、最終手段発動。人間と一緒に行く・・って、最終手段かい。
 あのなー、こっちはバイトだってあるんだぞ。・・そんなにしょげるなよ。
 ・・わかった。行ってやるってば。
 ・・・。
 そんなにうれしそうな笑顔すんな。口が裂けてて不気味だぞ。


 ・・ま、あいつの必死さに根負けした形になったわけで。
 今宵、ゴーストとデートです。


 一応、余所行き防寒着来て準備万端。にしてもデート初体験の相手がポケモンって一体・・。まぁ、いいか。
 デートコース確認。ゴーストに配慮して夜中の七時に出発。決して深夜の方がチケット代が安いからではない。
 まず映画館で見たがっていた映画を見て深夜営業のカラオケを予約。ホテル?外泊代なんか出せるか。
 そんなわけで、夜の街へゴー。


『ギャアアァォォォォス!』
『きゃあああぁ――――!』

 おー、さすがホリウッド。すっげぇ特殊メイク。いくら金かけてんのかねー。ポケモンもうまいこと利用してるよな、このセット。
 ・・・にしても。
 ゴーストビビりすぎじゃないか?さっきからスクリーン見てないし人の腕につかまって震えてるだけだし。何故『バイオロジーハザード』なんて見に来たの。ゴーストタイプがホラー映画にビビってどうすんだかなー。
 あ、涙目になってきた。え?出るの?これからいいとこなのに?
 ・・わかったわかった。あーあ、チケット代もったいねー。


 映画館から出たって言うのにまだガタガタ震えてるよ。そんなに人の腕にすがりつくなって。ほら、街はまだまだ明るいじゃん。
 はいはい、カラオケつきましたよ―。・・こいつ、完全にダッコちゃん状態だな。つーか、ポケモンに歌える歌ってカラオケにあるのか・・?


 ・・マイク握ったら別人じゃん。つーか、復活は早っ。部屋に入った瞬間に元気になりやがったこいつ。
 しかもジャイカル・マクソンの『スラリー』を流暢に歌いやがった。日本語喋れないのにそっちはオッケーなのか。つーか、『スラリー』のPVは良いのにさっきの映画はだめなのか。こいつの趣味わかんないな―。
 なんだよ、マイク突き出して。デュエットしろってか?ノリノリだなこいつ。
 はいはいわかりましたよ。歌えばいいんだろ歌えば―。


 あーくそ、やっぱ歌うんじゃなかった。音痴で悪かったな!
 こら笑うな!人が気にしてるんだから!
 まったく・・。ん?くしゃみしたな。さすがにこの時間帯は冷え込むからな―。
 ・・そうだ、風呂入るか。銭湯だよ、銭湯。多分この時間帯も大丈夫だろ。ポケモン用の風呂もあるぞ―。
 

 おばちゃーん、まだ大丈夫?あ、そう。よかったー。ほら入れ。大丈夫だってよ。
 おまえあっちな。・・そんな顔するなよ。ポケモン用と人間用、一応別々なんだから。
 ほらほら、ぬくいぞー。・・あ、またくしゃみした。早く行った行った。風邪ひくぞ。


 ふはー・・・。天国だなー。この時間帯は誰も来ないからまさに独り占めってわけだ。ふふふ。館も風呂も自分専用。一国一城の主はこうでなくっちゃなー。
 ・・あそこ、風呂はないけどよ。ま、バイト先の銭湯はタダで使わせてもらってるから、気分は専用浴場付きみたいなもんか。
 ゴーストもうっとりした顔してるし・・って、おい!なんでここにいるんだ!・・寂しいから来たってか?おまえ、筋金入りのさびしんぼだな。呆れた。
 ったく・・。誰もいないからよかったけどなー、他の人がいたら大騒ぎだぞ。ここ女湯なんだから。
 ・・そーだ、お前洗ってやろうか?いっつもゴ―スは洗濯機だし。ゴーストは風呂場でシャンプーだ。我ながら意味不明だな。まぁいっか。
 
 
 壁はすり抜けるが泡はすり抜けないみたいだな。よしよし。かゆいところはございませんかー?なんつって。
 ほらすすぐぞー。おりゃ。え?目に染みたか?悪い悪い。はじめてなもんで。
 うーん、ポケモンと裸の付き合い。割とふつーだな。
 ・・おい、お前のぼせてきてないか?そろそろ出るか。


 おばちゃーん、コーヒー牛乳プリーズ。お前もなんか飲む?じゃ、イチゴ牛乳もプリーズ。ほら。
 いいかー。風呂上がりは、腰に手を当てて、一気に飲む!
 ぷはー。これ最高。未成年にはビールなんかよりもこっちの方がぐっと来るねぇ。
 うん、おばちゃん、ありがとー。よし、帰るぞ。今日は帰って寝るぞ―!


 数日後。ゴ―スを洗濯していたら、大量の映画のパンフレットを抱えてゴーストが来た。
 
「・・・もう行かんぞ」


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