マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
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  [No.623] 05 サンヨウシティ 投稿者:夏夜   投稿日:2011/08/02(Tue) 11:48:23   40clap [■この記事に拍手する] [Tweet]



「トウヤ!!」
 チョロネコの騒動の翌日、ケンタと別れたトウヤとリュウヤが2番道路の出口、ちょうど、サンヨウシティに抜けようというときに、そんな明るい声と共に、金髪に黄緑色の帽子を被った少女が、リュウヤの背中に飛びついてきた。
 リュウヤは声で誰だかわかったので、落ち着いた声で言う。
「どうしたの? ベル」
「うん、あのね!! トウヤ、バトルしよ!! 新しいコも仲間になったんだよ!!」
 飛びついたのがリュウヤだとは気づかずに、ベルは“トウヤ”に向かって話を進める。
「……別にいいけど、どこでやる?」
 自身の兄に飛びついたままのベルに、ツタージャを連れたトウヤが問う。
「ここでやろ!! ……って、あれ?」
 自分が飛びついていない方のトウヤが返事をしたことにより、ベルはやっと、自分がリュウヤに飛びついていたことに気づく。
「ごっごごごごごごごめんなさい!!」
 ぱっとすぐにベルはリュウヤから体を離す。
 そして真っ赤になりながら、
「……今度こそ間違ってないとおもったのになぁ」
「それ、全く根拠のない自信だよね?」
 ぼやくベルに、ため息交じりに、トウヤが言う。
「俺は役得だから、別にいいけどねー」
 はははっとリュウヤは笑うが、トウヤの膝蹴りを背中に食らって悶絶した。

「使用ポケモンは1体、どちらか先に先頭不能になった者の負け!!」
 ベルがおぼつかないようすでモンスターボールを取り出しながら言った。
 トウヤはツタージャ1体しか持っていないので、使用ポケモンも何もないとは思うのだが、ルールを明確にするのは、何処でも何でも大切な事だ。……世間知らずでマイペースなベルがそこまで考えているとは到底思えないのだが。
「じゃ、勝負、はじめっ」
 審判を勤めるのは、例のごとくチラーミィを頭にのせたリュウヤだ。
 このチラーミィ、リュウヤになついているのか、それともモンスターボールに入るのが嫌なのか、初めてバトルしたあの日から一向にモンスターボールに戻ろうとしない。トウヤは不思議がっていたが、ポケモンがモンスターボールを嫌って入らないという事例もあるという事を、リュウヤは知っていたので、さして気にも留めなかった。
 だがしかし、ある程度の実害は伴うようで、
「チラーミィ」
 ポケモンバトルを繰り広げる2人の横で、リュウヤが半分苛立ったような声をだす。
 しかし、反応はない。
「チラーミィさーん?」
 しばらくしてからもう1度リュウヤはチラーミィを呼ぶ。
 しかし、顔はチラーミィの体に隠されてて見えない。チラーミィが、リュウヤの帽子のつばにぶら下がっているのだ。
「どいてくださーい」
 チラーミィは ぐうぐう ねむっている ▼
「……」
 リュウヤはため息をついてから、帽子を180°回転させた。
 チラーミィが帽子のつばと一緒に、後頭部の方へと移動する。
「……これでやっと見れる」
 やっとリュウヤがバトルを見れるようになった頃、トウヤとベルのバトルは、もう終盤がかっていた、いや、正確には、リュウヤが見れるようになったと同時に、ツタージャのグラスミキサーが、ベルのヨーテリーに決まり勝負がついた。
「あーあ……」
 がっかりしたようにリュウヤがため息をつく。
「お前のせいでまーた見れなかっただろー」
 後頭部にいるチラーミィの額を一指し指でくすぐりながら、リュウヤが悪態をつく。
「兄さん、すっっっっごい、うるさかったよ」
「……すまん」
 トウヤに冷たい目で見られ、リュウヤは気まずそうに頬を掻きながら謝る。
 ベルは戦闘不能になったヨーテリーをモンスターボールに戻してから、トウヤとリュウヤの元に駆け寄ってきた。
「あははっ、やっぱりトウヤは強いやー……私ももっと頑張らなきゃ」
「……ん、でも、次だって負けない」
「私だって次こそは勝つんだから!!」
「……」
 そんな2人のやりとりを見ながら、リュウヤは故郷のライバルたちの事を思い出す。
(俺は最初のバトルは……レッドに負けて、ブルーに馬鹿にされて、グリーンに怒られたんだっけ? グリーンは今ジムリーダーで、レッドはチャンピオンかぁ……半幽霊状態らしいけど。ブルーは……)
「兄さん?」
「うぉっ!? なんだ?」
「……サンヨウシティ、行くよ」
「……おう」
 トウヤに促され、リュウヤはトウヤの隣を歩き出す。ベルはもう先に行ってしまったようだ。
(皆、なんだかんだですげー事、やってるのになぁ……)
 故郷の友人達の職業を思って、トウヤは苦笑いをこぼす。

(俺は、何をやってるんだか……)







 イッシュ地方、サンヨウシティ。
 それなりに高い建物があり、(なかにはマコモという人の研究施設もあるそうだ)サンヨウジムと、トレーナースクール、そしてかつて科学者たちが夢を描き、集ったといわれている“夢の跡地”が有名な町だ。
 小さな町だが、活気はある。
「何処に行く?」
「ジム」
 リュウヤの質問に間髪いれずに答えてから、「ああでも、アララギ博士にマコモという研究者に会えって言われてる」とぼやいた。しかしトウヤはまっすぐサンヨウジムのある喫茶店に向かう。
 扉の前には1人の男性がいた。
 バーテンの服のようなものを着用した、人の良さそうな顔の緑色の頭の青年で、なかなかの美形だ。細長いシルエットのそれは、ジムに近づいてくる2人を見つけて、声をかけてきた。
「ジム戦希望の方かい?」
「……はい」
 青年の聞いていると癒されるような、澄んだ声に、トウヤの方が頷く。
「君の1番最初のポケモンは?」
「え?」
 唐突に訊かれ、トウヤは首を傾げる。
「ツタージャですが」
「いや、聞かれたの兄さんじゃないし」
 勝手に答えるリュウヤにトウヤは言う。
「で、どうなんだい?」
「あ、いえ、ツタージャです」
重複する答えを、恥ずかしそうに赤面しながら、トウヤは答える。リュウヤは面白いものを見るかのようにバーテン服の青年を見て、リュウヤはトウヤを引っぱって店の端に連れて行く。
「何なの?兄さん、話の途中に」
「あの優男、サンヨウジムのジムリーダーだぞ」
「え?」
「この前買った雑誌に載ってた」
「へ、へぇ? それで?」
 いきなりな話にトウヤはまごつきながら聞き返す。
「あのジムは新人トレーナーに“タイプ相性の恐ろしさ”を叩き込むといわれるジムだ。名前からしてどういうジムかわかるな?」
「……絶対に苦手なタイプが出てくるって事?」
 それで最初最初のポケモンのタイプを聞いてきたのか、とトウヤは思い(それって反則くさくないか?)とわずかに疑問に思う。
「そうだ、だから、お前の相手は必ずと言っていいほど炎タイプで間違いない」
「……なんで教えてくれるの?」
「……俺も最初のジムは他人の助言を借りたからな、こうしないと不平等だろ?」
「……」
「そして、これはその時譲り受けたわざマシンだ」
「……?」
 リュウヤの差し出したディスクのような装置を、トウヤは首を捻りながら受け取る。
「俺は、マコモって研究者のところに行ってきてやろう」
「は?」
「用件はちゃんと後で教えてやるからさ、それと、名前と性格、借りるからな」
 そう言ってリュウヤはトウヤに背を向け、街の住宅街の方へ歩き出す。
「あ、ああ、うん」
 暗に“お前の振りして行ってくる”と言ったリュウヤの背中を横目で見送り、リュウヤ曰く“ジムリーダー”の優男のもとへ戻る。
「すみません、ジム戦、今からお願いできますか?」
「ああ! もちろんさ!! 僕はジムリーダーの1人、デント、よろしく!!」
(……兄さんすげぇ)
 手の中にあるわざマシンをそっと握りしめた。






「さーて・・・・・・何処にあるのかな?」
 サンヨウジムの前でトウヤと別れたリュウヤは、マコモ博士(何の博士かはわからなかったが、とりあえずそう呼ぶことにした)を探して、住宅街をふらついていた。
「普通博士って研究所とかにいるんじゃねぇのかな?」
 しかし、この街のマップには、それらしき建物は無い。
 当てもなくフラフラしてると、チェレンに会った。
「あ、チェレン」
「なんだ、リュウヤか」
「……(ちょっと雰囲気似せたつもりだったのになぁ)」
「トウヤの真似したって無駄だよ、君とトウヤじゃ全然違うもの」
「……お前には敵わないね」
 はぁ、とため息をついて、肩をすくめる。
「君は何してるの? トウヤは何処?」
「……トウヤはジム戦、俺はマコモ博士のところに行く所」
「へぇ、じゃあ、ジムに向かうのはもう少し後のほうがいいね」
「おう、そうしとけ。ところでさ……」
 リュウヤはマコモ博士の研究所を知ってるか、チェレンに訊ねた。チェレンは大きなマンションを指さし、「あそこの2階だよ」と言った。
「じゃあ、僕はトレーナーズ・スクールの方を見に行くから」
「え? お前は行かないの?」
「興味ないし」
 ぽつりと言って「それに……」とつなげた。
「僕がいないほうが、トウヤを演じるには都合がいいんじゃない?」
「む……」
 フッと嫌味な顔をして笑うチェレンに、リュウヤはムッとした表情を向ける。
「お前、嫌味な奴だな」
「君に言われたくないね」
 チェレンはそう言って、とスクールのある方向へ歩いていく。
 フン、と鼻を鳴らしてリュウヤも、チェレンに教えてもらったマンションに向かって歩き出した。


 マンションは新築のようで、内装も外装も綺麗だった。薄い黄色のこのマンションは、コンクリート作りで、全体的にひんやりしている。1階に入ると、マコモの妹を名乗る少女に中に通された。
 白い壁、白い天井、白い床……と、真っ白い空間の中に、ばかでかい機械(リュウヤも今までに見た事のないものだった)と、茶色いソファが異様に目立つ部屋だった。
「あら、ごきげんよう」
 部屋にいたのは、膝まであろうかというほど長い髪の毛を揺らした、丸い大きな目の白衣の美女で、桃色の髪飾りをしていた。
「……あなたが、マコモ博士ですか?」
「ええ」
 美人博士、マコモは頷き、優雅に一礼した。
「ようこそ、私の研究所へ」


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