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  [No.785] ダブルスプーン☆森ガール 投稿者:リナ   投稿日:2011/10/20(Thu) 22:27:22   73clap [■この記事に拍手する] [Tweet]


 いやはや、まさか某(それがし)に執筆を振られるとは思いもよりませんでしたな。
 お初にお目にかかる方もいらっしゃいましょう。改めて某、シュンヤ殿のパートナーを、僭越ながら務めさせてもらっております、フーディンのルーカスと申します。以後、お見知りおきを。

 さて、今回はいつものスプーンを万年筆に持ち替えて、ナタネ殿が養子として迎えられた頃の話を、つらつら綴っていきたいと考えております。なにせ某、知能が高い部類に分類されているとはいえ所詮ポケモン、お見苦しい文章かと思いますが、読んでいただければと思います。





『ダブルスプーン☆森ガール page6』





 時は某がまだケーシィの頃に遡ります。シュンヤ殿はまだ小学校四年生。彼は相当なやんちゃ者で、しょっちゅう職員室に呼びだされておりましたな。やれ窓ガラスに油性ペンでいたずら描きをするわ、女子生徒の悪口を言って泣かすわ――時には先生方にもちょっかいを出して、学校中を困らせておりました。かく言う某も、あの頃はその悪行に加担し、彼のいたずらをえすかれーとさせていたうちの一人――もとい、一匹でございました。うとうとと舟を漕ぎながらでも可能であった某の「テレポート」は、いたずら少年にとって夢のような術でございましたから。
 もちろん、父上殿と母上殿はたいそう頭を悩ませました。母上殿は責任を感じ、毎晩のように泣いていた時期もございましたし、父上殿はあまり怒鳴り声を上げてお叱りになる方ではございませんでしたので、一体どうしたらよいか分からない。そんな日々が続いておりました。そんな様でしたので、シュンヤ殿のいたずらはとどまるところを知らず、ついには小学校のぴーてーえー――保護者の皆さまの会合のことですな――がお怒りになり、学校全体の問題へと発展するほどでした。
 そんなシュンヤ殿でも、一人だけ逆らうことのできない人物がおりましてな。それが当時のハクタイシティジムリーダーを務めておりました、祖父のシゲクニ殿でございます。
 寡黙で頭の切れる方でした。それでいて家族や友人を大切にしておりまして、ハクタイシティの人々からは絶対の信頼を置かれていました。彼は他のジムリーダーとは違い、ただポケモンバトルを極めるだけでなく、街の振興にも尽力しておりました。今現在、ハクタイシティで毎年開かれるお祭りのいくつかは彼が主催したのが事の始まりでしたし、ハクタイの森で当時から問題になっていた不法投棄の改善にも、彼は手を尽くしました。
 思うに、彼ほどこの街を愛し、街のために生きた人物は他にいないでしょう。
 ところで、ナタネ殿のお書きになった文章を拝見するに、シュンヤ殿の悪行はシゲクニ殿が一喝したことによって無くなっていったとされているようですな。確かにシゲクニ殿によってシュンヤ殿が行いを改めた部分はございます。シュンヤ殿はシゲクニ殿にポケモントレーナーとしての才能を認められて、こっそりバトルの稽古をつけてもらっておりました。そのこともあり、シュンヤ殿はシゲクニ殿を尊敬しておりましたから。
 ですが、シュンヤ殿がいたずらを控えるようになった本当の理由は、他にございました。

 父上殿と母上殿は、以前からずっと女の子を授かりたいと考えておりましたが、シュンヤ殿以降子宝には恵まれず、悩んでおりました。そしてついにお二人は、ある児童養護施設から女の子を一人、養子に迎えることを決めたのです。

 当時小学二年生の彼女の名は、ナタネと言いました。

「聞いてよルーカス! 僕に妹ができるんだ!」

 部屋のソファでうとうとしていた私を揺さぶり、シュンヤ殿は目を輝かせて歓喜しておりました。

「血の繋がった子じゃないけど、でも僕の妹だ。僕、お兄ちゃんになるんだ!」

 某は当時、そのシュンヤ殿を見て驚いたものです。なにせ彼は普段、ほとんどのことに無関心で、何をやっていても楽しくない――そんな顔をしておりましたからな。悪友といたずらを決行する時も、本気で笑ったシュンヤ殿を見ることはできませんでした。口元だけで冷たく笑った後、すぐに表情を閉ざす。そんな男の子だったのです。
 妹ができることが嬉しくてたまらなかったのでしょう。仕事で忙しい両親と、なかなかジムを空けることができない祖父。彼はこの広い森の洋館でいつも独りぼっちでした。
 しかし彼はその喜びを両親や祖父の前で現すことはありませんでした。ナタネ殿と始めて顔を合わせた時も、挨拶一つしないで部屋に走って戻ってしまいました。本当は一緒に遊びたいと思っているのに、自分の中の嬉しい気持ちに正直になることができなかったのでしょうな。
 その頃からシュンヤ殿は悪事を働かなくなりました。悪友たちはポカンとした顔であきれていましたし、職員室は驚きと安堵で包まれました。手を焼いていた学校一の問題児が突然大人しくなったのですから。

「お兄ちゃんなんだからさ、ちゃんとしないといけないだろ?」

 シュンヤ殿は、自分の部屋で某の前でだけ、そう言っていましたな。ナタネ殿本人の前では、依然としてつっけんどんな態度をとっておりました。

 ここまでで済んでいたら、大人になるにつれてシュンヤ殿も心を開き、仲の良い兄妹になっていたと、某は思うております。しかし、彼は両親や祖父の笑顔や優しい言葉がナタネ殿へと傾いていくのに気付き始めてしまいます。

 ナタネ殿は――今でさえあのような性格でたくましく生きておられますが――当時はおしとやかで女の子らしく、勉強もでき、そして魅力的な笑顔を持った子でございました。両親にとってナタネ殿は、たとえ養子で迎えた子だとしても、自慢の「我が子」でございました。当然ながらご近所様の評判もすこぶる良く、小学校のクラスでは入学してすぐに注目の的となりました。
 極め付けが、ナタネ殿にポケモントレーナーとしての才能があったことでした。しかもそれを認めたのは他でもない、祖父のシゲクニ殿だった。嗚呼、今思い出してもシュンヤ殿には辛いことです。ナタネ殿が来る前はむしろシュンヤ殿がシゲクニ殿に才能を認められていたのですから。

 ある朝のこと、家族で朝食を取っている時でした。ナタネ殿がうっかり牛乳をテーブルにこぼしてしまったのです。母上殿は「しょうがない子ねえ」と優しくナプキンでテーブルを拭き始めました。シュンヤ殿は恐らく思ってしまったのでしょう。こぼしたのがもし自分だったら、お母さんは僕を激しく怒鳴りつけるのだろう、と。

「何やってんだよ! ノロマ!」

 気付いた時には、既に口にしてしまった後でございました。シュンヤ殿にそう言われたナタネ殿はみるみるうちに顔を真っ赤にし、ボロボロと涙をこぼして泣き始めてしまいました。

「シュンヤ! いい加減にしろ!」

 怒鳴り声を上げたのは、普段めったに大声を出さない父上殿でございました。「いい加減に」とは、シュンヤ殿がナタネ殿に対して取ってきたこれまでの態度のことを指しておりました。

 思い起こせば、シュンヤ殿のいたずらの標的がクラスの女の子や学校の窓ガラスからナタネ殿に変わったのはこの些細な事件からでございました。
 シュンヤ殿はナタネ殿を部屋へ閉じ込めたり、嘘のかくれんぼに誘って森に置き去りにしたりと、たちの悪いいたずらを繰り返しました。このことはナタネ殿も書いておりますな。そのたびにお叱りを受けるのは当然シュンヤ殿で、慰められるのは泣きやまぬナタネ殿の方でございました。
 当時既に亡くなられていたおばあ様のナエトル――タネキチは、ナタネ殿の十歳の誕生日にプレゼントされました。これもまた、シュンヤ殿の嫉妬心に火を付けてしまいました。
 一度は改めた悪行も、妬みと恨みによってぶり返してしまったのです。これはとても悲しいことです。彼は部屋ではいつも「ナタネは僕の妹だからさ――」と、口癖のように言っておりました。私がユンゲラーに進化した頃も、彼が高校生になった頃も、ずっと言っておられました。
 しかしながら、その言葉は一度もナタネ殿に届けられることなく、シュンヤ殿は高校二年生の時にこの家を出ました。さすがにいたずらは無くなっていたものの、二人の間にできた分厚い壁は、結局取り除かれることのないまま。シュンヤ殿は軽口を叩くことによってナタネ殿との間に気まずい雰囲気が流れるのを防ぐ術を身に付けておりましたが、それは最後まで、その場しのぎの言葉でしかありませんでした。
 ナタネ殿は酷く責任を感じていることでしょう。自分がシュンヤ殿の居場所を奪ってしまったと。ですが、そう落ち込むことはございません。確かにシュンヤ殿はナタネ殿とのことで傷つきましたし、大変辛い時期を過ごしました。
 ですが、既に申し上げました通り、シュンヤ殿は家を出る最後の最後までナタネ殿を妹だと言っていたのです。某は、そのことだけで、いずれ二人の仲は修復されると考えております。
 それに、シュンヤ殿が家を出た理由は、また別のところにあります。シゲクニ殿は、ちゃんとシュンヤ殿の才能を見抜いておられました。
 さて、某の話は一端この辺りで止めにしておきましょう。あまり多くをいっぺんに語るのはいけません。
 それに、そろそろ次の仕事の時間です。それではまた、お会いできることを。



 ――――――――――――――



 ルー「最低限の文章作法はわきまえたつもりですが、どうですかな?」

 森ガ「――ポケモンでこれ書けたら十分w」


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