遅いクリスマスはゲンガーお手製のクリスマスケーキをゴーストポケどもが食い散らかすという大惨事。どうやら私が帰ってくる前に片づけをすまそうとした形跡らしきものがあった。ようするにわちゃわちゃ。
仕事納めでようやくゆっくりできると思った矢先にこれか。お前ら居候の分際で何やってくれてんだこの野郎ども。
ホウエンから帰った時以上にひでぇぞ、こりゃ。
おいそこ、逃げるな。大掃除すっぞ。
年末の大掃除、というかただのクリスマスパーティの後片付けというか。要するに兼ねればいいんだ、両方。
手のある奴はハタキ持って手のない奴も雑巾絞って働く!ゴーストタイプだろう。それくらいの超常現象は起こせ。
ヌケニン達は草刈りよろしく。ヤミラミは草取り。根っこまで処理しないと意味ないんだよ。フワンテ持ってくんな遊ぶんじゃねぇ。御霊の塔はちょっとばかし崩しても問題ないから。
・・・なんだよミカルゲ。おんみょんうるさいぞ。文句いうな、お前のニックネームを『ぼんのう』にしてやるぞ。・・よし、大人しくなった。
サボる度胸がある奴は毎度お馴染み掃除機→高速脱水コースだ。さすがに身に染みてきてるな。みんな真面目でよろしい。
何でこんな時にチャイムなんか鳴るんだ。押し売りか?セールスか?こっちは大掃除で忙しいっつーの。誰か驚かして追い返して来い。・・手が離せないっぽいな。しゃあない、私が行く。
「すいません、今ちょっと立て込んでまして」
玄関を開けたら、ヨノワールがいた。
『大掃除中にお邪魔するとはとんだ失礼をしまして・・・』
さらさらっと当たり前のように紙に書かれた謝罪の言葉(ゲンガー通訳)にどうすりゃいいの分からないままにとりあえず食堂に通した。
これ御土産です、とばかりに手渡されたのは。
「・・・いかりまんじゅう・・」
出張土産です、とのメモ付き。いや、まぁ、ご苦労様です。何の出張か分かんないけど。
なんか適当に御茶受け、というと『どうぞお構いなく』(っぽいジェスチャー)。・・なんだこのよくできた人、じゃないポケは。
えーと、とりあえずどちらさんですか。うちの居候のどれかの親戚かなんかでしょーか。にしても、あのでかい手じゃ来客用の湯のみが小さすぎるな。つまむようにして飲んでるよ・・。
紙来た。相変わらずゲンガ―の字が達筆過ぎる。『親戚、というより上司に当たります』。上司・・?え、ちょ、お前らどういう事。
ここから要するにゴーストタイプって何やってんのかを説明するヨノワールさん(と、それを全部文章にするゲンガ―)。なんか、すごい必死。
でまぁ、すごいざっくり言うと。ゴーストタイプの仕事は2つで、死んだ生物の魂を霊界に持っていくのと、もう1つが企業秘密だそうで。気になるけど。
『一匹一匹にノルマがあるもんですから、あれこれ裏工作してノルマを達成しようとする輩が多くて困るんですよ』
・・それはあれか?やたらとゴーストポケモンの図鑑説明が怖いことに対する弁解か何かか?フォローになってねぇよ。そっちの都合とか余計こと怖いわ!
まー私が知ってるゴーストポケモンっつーのは掃除機に吸い込まれるガス玉、本職のくせに超ビビり、パティシエ、ポニテ、脱殻、職人、黒坊主、恨み人形、案内人、アフターケア、風船、気球、コーディネーター、後ぼんのう。・・おい、図鑑説明どこ行った。
で、この洋館はそーゆー仕事をさぼる奴のたまり場・・・おい。お前ら。今一斉に私から目をそらしたな。この二ートポケモン共ぉぉぉ!居候してる上に本来の仕事をしていないってど―ゆーことだっ!
ダメだ、働かないポケモンだらけかここは。だから上司がわざわざ来たんじゃねーの。精々怒られろよお前ら。
あ、でもすいません。うち何匹かはうちの仕事で使ってます。と、言ってみるとそこも調査済みだとか何とか。マジか。良いのか。分からん。
結局のところご用件は。
『働くように発破かけに来たのと、ご挨拶に』
年内のうちに来たかったらしい。もう新年のあいさつを兼ねてくれば良かったんじゃないか、と突っ込むと『それもそうですね』。要領が悪いのか機転が利かなかったのか。まあいいか。
年の瀬にお邪魔しました、とここまで丁寧にされちゃこっちの腰も連れられて低くなる。つくづくよくできたポケである。
いえいえお構いなく。またいつでもどうぞ。
顔をあげたらもういなかった。
と、思ったら帰ってきた。え、お願いがある?うちのマッサージを受けたい。予約取ってなら良いんじゃないんですか?あ、嬉しそうに帰っていった。
「ポケモンの世界も大変だな、こりゃ」
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余談 ヨノワールって働く仕事のできる上司なイメージです。
【今日一日で行けるのか】
【お好きにどうぞ】