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  [No.1316] ポケットに時間割 一時間目「おはようペラップ」 投稿者:GPS   投稿日:2015/07/24(Fri) 20:44:05   47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

一年生のあやのは、あさがとってもきらいでした。
どうしてかというと、あさは「おはよう」をいわなければいけないからです。
あやのは「おはよう」をいうことがにがてでした。

小学校にいくようになって、たくさんの人に「おはよう」をいわれるようになりましたが、あやのはそうされるたびにこまってしまいます。
ようちえんのころよりもきびしい先生たちも、せのたかいおにいさんやおねえさんも、みんなわらってあいさつするのですが、あやのにとってはこわいものでしかありません。

とくに、あやのが一ばんこわいとおもっているのは、となりのせきの男の子でした。
その子はとてもらんぼうで、あやのを「なきむし」といいながらぶったりするのです。
あやのはその男の子がときどき、まえにテレビにうつっていたバンギラスに見えるほどです。
きょうのあさも、その子が「おはよう」をいってきたのですが、あやのはこわくてへんじができませんでした。
男の子はおこって、やっぱりバンギラスのようなかおになって、あやのをなんどかぶちました。

先生や、おにいさんやおねえさんにも「おはよう」がいえなかったあやのは、とぼとぼとろうかをあるいています。
一じかんめのこくごでつかう本を、としょしつからとってくるように、こくごがかりのあやのはたのまれたのでした。
としょしつまで一人でいかなくてはならないのはふあんでしたが、じゅぎょうをやっている学校はしずかで、「おはよう」をいわれることもいうこともないため、あやのはすこしだけほっとしていました。

本をかりてきょうしつにかえるとちゅうで、あやのは「あっ」とこえを出しました。
かぜを入れるためにあけられたまどのそとに、木にとまった一わのペラップがいて、あやののことを見ていたのです。
あやのは、ほんもののペラップを見るのははじめてでしたから、まどにちかづいてみました。

「オハヨウ」

すると、そのペラップがいきなりそういったので、あやのは、びっくりして、ちかづくのをやめてしまいました。

「オハヨウ」

ペラップは、またおなじことをいいました。かわったかたちのあたまが、すこしななめになって、あやののことを見ています。
とてもにがてなそのことばに、あやのは足をうごかせずにいましたが、しかし、それはペラップのなきごえであることに気がつきました。
ペラップは、にんげんや、ほかのポケモンのことばをまねして、じぶんのなきごえにしてしまうときいたことがあります。
これもきっと、この学校のせいとがいっているのを、まねするようになったのでしょう。
ペラップが、じぶんに「おはよう」をいってきたのではないとわかると、あやのはあんしんしました。

「オハヨウ」

しかし、なんどもそのことばをきいているうちに、あやのは、それがじぶんのこえであることがわかりました。
オハヨウ、オハヨウ、と、ペラップはあやののこえでいうのです。
あやのはとてもかなしくなりました。だって、あやのは「おはよう」をいえないのに、ペラップがあやののこえで、「オハヨウ」をいうのですから。

「わたしのおはよう、かえしてよ」

あやのは、まどのそとのペラップにいいました。
しかし、ペラップはそんなあやのなんて気にしていないみたいで、「オハヨウ、オハヨウ」といいつづけるだけです。
人のことばをまねするペラップですが、まねされることばをいえないあやのをまねするだなんて、こんなにおかしいことはありません。
「オハヨウ」をくりかえすペラップに、あやのはなきだしたくなりました。

「そうだ。それなら、わたしだってまねすればいいんだ」

そうおもったあやのは、ペラップをじっとみつめました。
ペラップが「オハヨウ」というと、あやのが小さく「おはよう」といいます。
もう一度ペラップが「オハヨウ」というと、あやのももう一度「おはよう」といいます。
さらにペラップが「オハヨウ」というと、あやのもさらに「おはよう」といいます。

オハヨウ、おはよう、オハヨウ、おはよう……。

おなじこえで、おなじことばをくりかえしているうちに、あやのは「アッ」とこえをあげました。
あれだけにがてで、いえなかったことばが、いえるようになったのです。
あやのはペラップに「おはよう」といいました。
ペラップも「オハヨウ」といいました。
いま、いえるようになった、こえとことばでした。

「おはよう、おはよう」といいながら、あやのはきょうしつにもどりました。
先生に本をわたして、じぶんのせきにもどると、となりのせきの男の子が、ちらり、とあやのを見ました。
あやのはやっぱりその子がこわかったのですが、それでも、さっきおぼえたばかりのことばを、小さなこえでいいました。

「おはよう」

男の子はびっくりしたかおをしましたが、「おせぇよ」とほっぺをふくらませたあとに、あやのに「おはよう」とかえしました。
あやのは、男の子にぶたれなかったことと、男の子がわらったことと、男の子があまりこわく見えなかったことにおどろきました。
あやのはろうかのほうをすこし見ましたが、そこにはもちろん、ペラップなんていないのでした。


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