マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
このフォームからは投稿できません。
name
e-mail
url
subject
comment

[新規順タイトル表示] [ツリー表示] [新着順記事] [留意事項] [ワード検索] [過去ログ] [管理用]

  [No.1317] 二時間目「ポッポのゆうびんやさん」 投稿者:GPS   投稿日:2015/07/25(Sat) 20:42:59   44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

あーあ、たいくつだなあ。

二年生のリョウタは、えんぴつをころがしながらそんなことを思っていました。今は算数のじゅぎょう中です。黒ばんには先生が数字をいっぱい書いています。はこの中にモモンのみが六こ入っていて、そのはこが四こある時は全ぶでいくつ、という計算をするみたいです。
リョウタはさっきまで、ノートにきちんとそれを書きうつしていたのですが、つまらなくなってしまいました。いつもなら、じゅぎょうがたいくつになっても、となりのせきのタケルとノートにらくがきをし合うからいいのです。でも、今日はそのせきにだれもいません。タケルはかぜをひいてしまったから、学校をお休みしているのです。

「じゃあ、かけ算をやってみましょう」

先生のことばは、リョウタの耳に入ってきません。ちえ、つまらないよな、と思いながら、リョウタはまどの外を見ました。一ばんうしろのせきなので、リョウタがよそみをしてもおこる人はいません。せきがえをするまえは、いつもうしろの女の子におこられていました。

「わっ」

リョウタが外を見ていると、ちょっと強い風がふきました。リョウタはびっくりして目をつむります。そうして、少し時間がたったあとにあけると、つくえの上に一まいの小さな紙がおいてあるのに気がつきました。

ポッポゆうびん、どんなとこにもお手紙とどけます。

そこには、あまり上手じゃない文字で、そんなことが書いてありました。
何だろうこれ、と思ったリョウタがもう一回まどの外を見ると、小さいポッポが一羽、木の上からリョウタを見ていました。

「本当に、どんなとこにもとどけてくれるの?」

リョウタが小さなこえでたずねると、ポッポは、うん、と言うみたいに「クルック」と鳴きました。リョウタはなんだかおもしろくなって、いつもタケルとやっているみたいに、ノートのはしっこをやぶりました。えんぴつをにぎり、だれにお手紙書こうかな、とかんがえます。
さいしょは、休んでいるタケルに書くことにしました。ねつが出ていると先生が言っていましたから、きっと今ごろタケルはおうちでねているのでしょう。一人でねるだけなんて、タケルもたいくつしているにちがいありません。リョウタはそう思って、ノートのきれはしに、タケルへのお手紙を書きました。

『タケルへ
早くかぜなおせよな。おまえがいないとじゅぎょうがつまらない。サッカーもできない。今日のきゅう食はカレーライスだよ。食べたかったら来い。
リョウタより』

紙が小さくて、さいごの方は文字がきたなくなってしまいましたが、ちゃんと自分の名前まで書けました。
リョウタは、手紙をまどのわくにのせました。すると、木の上のポッポがすっととんできて、手紙をくわえてしまったのです。ポッポはそのまま、青空のむこうにとんでいきました。ちゃんととどくといいなあ、とリョウタは思いました。

いつのまにか、木の上にはポッポがたくさんならんでいました。ゆうびんやさんがこんなにいるのか、とリョウタはおどろきましたが、それだけ、いっぱい手紙を書けるのだということです。リョウタはうれしくなって、いろいろなあいてに手紙を書きました。
どんなとこにもとどけてくれるのですから、だれにでも書くことができます。遠くにすんでいるおばあちゃんや、何年かまえにひっこしてしまったユウトに手紙を書きました。いえにいるサイホーンのハヤテにも、ときどきいくおもちゃやさんのおじさんにも書きました。サッカーせんしゅになった、みらいの自分にも書いてあげました。
リョウタがノートをやぶって、手紙を書きおえるたびに、ポッポはそれをくわえてとんでいきました。


「こら、リョウタよそみをしない!」

きゅうに、先生のおこった声がしました。リョウタはあわてて、ごめんなさい、と言って黒ばんの数字をノートに書きはじめます。
先生の声にびっくりしたらしく、まどの外にならんでいたポッポたちはみんなとんでいってしまいました。先生がうしろをむいている間に、リョウタがこっそり外を見てみると、木のえだの上でポッポたちがあそんでいました。
ポッポたちはくちばしで、ノートのきれはしを、すきかってにやぶいて楽しそうにしています。なーんだ、とリョウタはがっかりしてためいきをつきました。
ポッポゆうびんなんて、なかったんだ。あれはぐうぜん、だれかのいたずら書きをポッポがはこんできたんだ。リョウタはそう思って、かなしくなりながら計算もんだいをやりはじめました。

いくつか、もんだいをといた時です。さっきのように、つくえの上に、一まいの紙きれが落ちてきました。
それは、タケルの文字でした。タケルの書いた手紙でした。

『リョウタへ
おれも早くあそびたい。ずっとねてなきゃいけなくて、すごいつまらない。カレーライスも食べたい。明日は、ぜったい行くから、あそぼう。
タケルより』

リョウタはおどろいて、まどの外を見ました。
木の上から、小さいポッポが一羽、「クルック」と鳴きながらリョウタを見ていました。


- 関連一覧ツリー (★ をクリックするとツリー全体を一括表示します)

- 以下のフォームから自分の投稿記事を修正・削除することができます -
処理 記事No 削除キー