本当は終わるまで待つ心算でありました。 ……しかし、刺激になるやも知れぬのであらば、聖域を汚してみるもまた一興(笑)
と、言ふ事で、ちょっと失礼させて頂きますです……
個々の部分に触れる前、一番最初に入れて置きたい事――それは、自分はこのお話が大好きだと言う事です。 ……と言うか、丁度仰ぎ見るような感覚で拝見させて頂いておりまする。
昔から自分が想起する『二次創作的妄想』と言うヤツは、8割方『歴史・伝奇』関連なのですが、この作品ほどその要素を満たしてくれている文章を、自分はまだ見た事がありませぬ。
自分が最も書きたい物語の図式―『テーマ』と『雰囲気』を、この作品は文字通り掴み出して置いて見せたようなものでして、将来的に書くかどうか迷っている幾つかの作品群に対し、今のこの瞬間も、大きな影響を与え続けてくれています。
元々自分は、『嫉妬心』と言うものに対して非常に強い嫌悪感を持っており、これまでは意識して排除してきたのもあって、特に感じる事はありませんでしたが……どうやら此処に至って、遂にその魔の手に袖を掴まれちまった感じです(苦笑) 全く……こんなもん「ポン」と書けるのは、実に羨ましい(笑)
けれども同時に、他ならぬこの作品こそが、元々目論んでいた妄想の具体化に対して、この上なく明確に道を切り開いて見せ、目に見えない形で激しく尻を叩いてくれている事も、また事実なんですよねぇ(笑)
この『野の火』から自分が得られた物は、こんな形では到底語り尽くせるもんじゃございませんが……それでも、これだけは言わせて頂きましょう。
素晴らしい作品をお書きになって頂き、本当に有難う御座います…! 実に幸せです(笑)
> 今宵、役者は面を被りて、出で立ち進むは石舞台。
> 舞いて祝詞を唱えれば、妖降り立ち甦る。
>
> 神と呼ばれ称えられる者、妖と呼ばれ恐れられる者、
> 今この地に集いし者、遠い昔この地に生きた者、企む者、阻む者、人、ポケモン、
> もろもろを巻き込んで、ポケモン伝記小説「野の火」開幕。
掴みの序文。
テンポと言い語感と内容と言い、この時点でとてもクオリティは高いですが(汗)……物語を読み進め、後から返して読んで見れば、味わいもまた一入の出来。
最後まで読み終えた時はどんな色に見えるのかが、今からでも凄く待ち遠しいです。
> ホウエン地方の蒸し暑い夏が終わり、山々の木々の葉は、緑色の衣から赤や黄に衣替えをはじめていた。
> それは地を彩る草々も例外ではなく、野も山も秋色に染まりつつあった。
> 夕暮れともなれば、あちらこちらから鈴の音に似た音色が耳に届く。
> つい最近までこの音色を聞く度に、まだ夏だというのに気の早い虫もあったものだなどと思っていたのも束の間、今はこの音がしっくりと感じられた。
最初の情景描写は、お定まりで王道パターン。 ……然れども、そこで作者の技量がある程度計れてしまうのも、また事実。
生活感に根ざした夕暮れ時の風景は、容易に目の当たりに出来るほどに鮮やかで、自分のレベルでは文句の付け様もありませんな。 出だしは結構注目しますけど、全く期待を裏切らないこの安心感がいいわ(笑)
> 早々に宿を確保したかった。いわゆるリーグを目指す本業ではないにしろ、トレーナーの免許を持っている青年はポケモンセンターならば無料で宿泊できる。だが、目的の施設が必ずしもこの先にあるとは限らなかった。あったにしても利用客が多かったりすれば相部屋になったり、場合によっては、他の有料宿泊施設を利用しなければならないこともある。何事も早めに越したことは無い。
こう言う細かい設定や背景は、やっぱり個々人の技量(『妄想力』とも言うか)をh(以下略)
野宿や無人施設での宿泊を旨としていた自分から見れば、彼はまだまだ未熟…!() ……と、言っちゃいたい所なんだけど、薄汚れたおいどんと違って、ツキミヤどんに野宿は似合いませんよね(笑)
……でも管理人さんの絵にあったように、仲間達と小さな明かりの中地図を囲むツキミヤどんも、悪くはないと思うんだ。
> 小柄だが、皿のような丸い眼に、きゅっと閉じられた口元は古狸という例えがしっくり来そうだ。それでいて、よく言えば意思が強そうな、悪く言えば頑固そうな顔つきだと彼は思った。
ばっちゃん登場。 この描写好きです(笑)
『古狸』はよく使う比喩だけども、『口元』や『丸い目』と言った裏付けを添えてくれる方って、意外とおられないんですよねぇ……(汗)
> 「ほれ、その肩の鳥ポケモンじゃ。何も考えていなさそうで、実は悟りきっている深遠なその表情。わしの好みじゃ。そりゃなんちゅう名前のポケモンだ?」
> 「……ネイティです」
> 「そうかネイテーというのか、覚えておこう」
>
> 老婆はネイテー、ネイテーと何回か反芻しながら満足げに頷いた。
そして「ネイテー」発言。
トゥートゥー一族の破壊力を存分に振るう穴守ばあちゃん。 ……無敵だ…(汗 笑)
> いつの間にか空はすっかりと暗くなっていて、彼の進む方向に集落の明かりが見えていた。
> それは人の気配。たくさんの人があの場所に居るという証明。
> にわかに太鼓の音、笛の音が聞こえてきた。
地味な部分かもしれないけれど、『旅人』としての視点を明確に内包した一文。 ……ツキミヤどんならではの感性も大きいのだろうけれども、ぶらぶら経験のある人間にとっては、懐かしい感触が尽きない一コマ。
区切りの一文としても秀逸だと思う。
第一話の誤字と思われる部分
> 青年はそんなことを呟いて、あたりを 『っ』 見回したが、
> 老婆は 『消して』『早く』 は無い
ツキミヤどんの親父さんの受け売りの部分は、シリーズ通して何度か出てますが……やっぱり好きだ!(笑)
> 傍から見たら無表情に見えただろうが、なんとなく微妙なニュアンスでうまそうに食っているのが彼にはわかるのだった。ネイティが最後のひとかけらをついばんで飲み込んだ。
なんだかんだ言いつつな両者の関係。 「羨ましいまでに良好である」()
> 思ったとおり、ボールから出したドータクンは米の料理に大して、おおよそ食欲という名の欲望を抱いてはくれなかった。
> 遠い昔の祭具に似た彼の生態はどのような形容詞で説明しても生物的であるとは言い難い。
> ツキミヤは今のところ彼がモノを食べているところを見たことが無いし、どこに口があるのかも知らなかった。
どーたくですから() ポケモンならではの光景ですよね。
こういう無機質な連中を生き生きと描ける技量には憧れます…… 586さんのモールスポリゴン見たく。
> たぶん普段は村の人々が集会所か何かに使っているのだろう。
> 中心にはせめてものといった感じで、火が炊かれ、小さく炎が踊っていた。
> ツキミヤが中に入ると先に来ていた何人かが、お前もかといった眼差しを無言で向けてくる。
此処は不覚にも吹いた(笑) 光景が目に見えるようだわ。
駅地下で新聞紙被って寝たことあるけど、その時も先客の方々に変な顔されたなぁ。
> 青年の意識が半分ほどこちらの世界へと引き戻されるのとほぼ同時に、背中で羽を膨らませていた小鳥ポケモンが飛び起きたという感触が背中から伝わる。
この辺りは本当に芸が細かい。 ……ここでネイティの反応にまで言及している所に、作者と物語とのシンクロの深さを感じる。
> ツキミヤはようやく肯定の意を口にした。
> 眠たい頭なりに記憶の一片にナナクサの存在を認めたのだ。
この行も好き。 ……何気ない一文なんだけど、表現方法はそうそう真似の出来ないレベル。
ここらいは流石に、執筆経験の長さが貫禄として滲み出てるよねぇ……(汗) 自分には到底無理な芸当。
> 「名目上? どういうこと?」
> 「この国の制度下ではトレーナー免許を持っていればいろいろ便利だからね。トレーナーの肩書きを持った兼業っていうのが結構多い。僕もその一人」
しっかりとした世界観を持つ方だけが出来る表現。
二次創作にリアリティを吹き込む為には欠かせない文面なんだけど、実際にやろうとしたらこれも難しいんだよねぇ…… さりげなく言わせてるけど(苦笑)
こういう部分は、駆け出しの人間にはすごく参考になりますです。
> ……ネイティが先かよ。と、声の聞こえない内心でツキミヤは呟いた。
……ワロタ。
済まん、ツキミヤどん……おいどんもネイテーが先だったよ……(爆 笑)
> 「そこまで言われたら、お世話をしている僕はこう提案せざるをえないだろう? では、タマエさん、僕がひとっ走り村を回ってネイテーとコース……じゃない、コースケとネイテーを探してきましょう」
そしてあなたもそーかシュージ君。 同志よ…!()
第三話の誤字と思われる部分
外に飛び出して調べないとわからないことがたくさんある。僕のいる『の』研究室の方針として、」
どこかで寒い思いをしているんじゃないかと『と』ずっと心配してたんだよ。 (「かとか」か「かって」辺りでしょうかね……)
> 相当に旧い、けれどしっかりとした造りの家である。通り過ぎた部屋に垣間見えた柱時計がぼーんぼーんと深夜の時刻を告げていた。
旧家だということを強調する、さりげない配置の柱時計。 ……しつこいよーだが、こう言う所にやっぱ技量が出るんだよn(以下略)
> 両陣営の中に一際目立つポケモンが一匹ずつ在った。ほとんど虫のような大きさの人間達、他のポケモン達に対し、絵巻のほぼ下から上までをほぼ目いっぱい使われて描かれたそれは、誰が見ても特別な存在であることがわかる。実際の大きさがどうであるかはともかくとして、その意味の大きさ、存在の大きさが描かれた大きさとして表れているのだ。
大きさで重要度を表現するという技法は、表現法としてはありふれたものです。 ……が、それを文章の中で説明して頂く事により、よりはっきりとした映像が、頭の中に浮かび上がってくる。
説明を用いて、間接的に『見せたい』ものを想起させる技巧が素晴らしい。 流石は絵師……(汗)
> こんな風呂にゆっくり浸かったのはひさしぶりだった。
> 身体を芯から温める湯の抱擁に身をゆだねながら、眠さに鞭を打ってここまで来た甲斐ががあったなと思う。
漂泊の旅の最大の悩みは、兎に角風呂に入れないこと。 逆に最大の楽しみは、やっぱりゆっくり湯船に浸かること…!
温泉入りたさに5キロ寄り道なんて普通の事。 ……欲求の赴くままに歩き続けられることも、また幸せなのだと今は思える(遠い目)
> そう呟きながら、寝室の襖を開くと、部屋の中心にいかにもやわかかそうな布団と毛布が用意してあった。
> 手でそれを押してみる。たぶん、チルタリスの綿毛が入っているのだ。高級布団である。
ポケモンのいる生活の風景。 チルタリスは見れば見るほどダウンなんだよなぁ……(苦笑)
好きな子だし、「羽を取るために密猟」なんてネタにはなって欲しくは無いなと願いつつも、やっぱり羽毛に目が行ってしまう(爆)
> 「妖怪を泊めた、か……言い得て妙じゃないか」
>
> 青年は面に向かって再び微笑み返した。
はい、フラグ立ちました()
穴守家の客人、またの名を妖怪変化。 抱え込んじまったからには、もう何事も無しには済みゃしませんぜ……?(黒笑)
第四話の誤字と思われる部分
眠さに鞭を打ってここまで来た甲斐が『が』あったなと
いかにもやわ『か』かそうな布団
> 季節を問わずに今でもときどき夢に見ることがある。
> それは、夏の夢。石段を上る夢。
『少年の帰郷』でも痛感したのですが、管理人さんは本当に『夢』の表現が上手いですね…(汗)
「意識が夜の海に潜る。 記憶という名の深い深い海に潜る。夜の海に潜る。」――この表現を見たときに受けたショックの大きさは、マジで半端無かったですぜ(汗)
意識の深層という夢の性質を、此処まで上手く表した二次創作作品を、自分は未だ知りません。 ……と言うか、普通の書籍作品でもあったかどうか(畏)
> 「毎年この時期になると一週間に渡る収穫祭が行われる。昨日はその前夜祭」
> 「前夜だって? あの規模で?」
> 「そう、正式な祭の日は今日から。だから村中大忙しさ。タマエさんもタイキ君も駆り出されちゃって動けない」
意外と大きなお祭りって、前夜祭の方が地元の人達は楽しんでたりするんですよね(笑)
本祭は観光なんかの要素もあって、忙しいんだけど……前夜祭はどちらかと言うと純粋に楽しむ為に挙行して、どんちゃん騒ぐ様を見かける感じです。
> 彼は自分達が歩く道の右と左に広がる水田で実っている米の種類をちらっと見ただけで見分けてしまうのだった。
> 右の水田を差しこれはコシヒカリ、左の水田を指しこっちはササニシキと言う具合にだ。
> ツキミヤも両者を見比べてみたが同じようにしか見えない。
一応退職農家の孫だから、違いぐらいはなんとなく分かる。 ……だが、種類までは到底(爆)
シュージ、恐るべし……()
後、色んな架空の稲の品種が出てきたのには笑いました。 『オニスズメノナミダ』なんかは、後に出てきた云われなんかと引き比べて、「なるほどなぁ」と唸りましたが……『ハトマッシグラ』とか誰得やねん(笑)
そういや昔、鳩がコンクリの畦に三羽並んで、稲穂から直接コメ喰ってやがったな…… 可愛い反面、怒りもあれば可笑しさも込み上げて……(爆 苦笑)
> だんだんと祭の全体像が浮かび上がってくる。
> おそらくは昔、昔から伝統的に引き継がれてきたであろう村の祭。現代に至っては観光資源と言った側が強いだろう。だが、この村にとって祭とは単なる観光資源以上の意味を持っているのだ。
> 古代の人々にとって祭とは今年の収穫への感謝であり、翌年の収穫への祈願だ。収穫量は何人が生き延びることができるかに直結する。そして今や祭の成功は、村の経済に直結している。
純粋に上手いなぁと思った行。 ……この時点でははっきりしないけれども、過去と現在に跨ったこの作品では、この手の描写が読者に与える感慨は、一際大きいもの。
後から読み返した場合は、特にひしひしとそう感じまする。 秀逸な仕掛けだわ……
> 水田を二分して伸びる道の向こう側から歩いてきた二人組と一匹があって、その中の小さい女の子がまっさきに声を掛けてきた。短い髪を二つに結わいた元気のよさそうな女の子だ。
>
> 「やあノゾミちゃん、おはよう。ニョロすけも元気だね」
友情出演のあの子。 クロスオーバーはまさに、作者の積み上げてきたものの結晶です(笑)
管理人さんもその内、手塚オールスター的な作品を書くのだろうか?←
> ノゾミがニョロモを捕まえたという大きな貯水池はいつできたとか、あの雑木林は誰それの所有で幽霊が出る噂があってとか、この一本道では時々マッスグマが競争しているんだとか、タイキのポケモンが駄菓子屋の菓子を盗み食いするのでいつも勘定を払っているとか、道行く過程でいろんなことを話し聞かせてくれた。
> かといって、しょうもないことばかり知っている訳ではなく、彼しか知らないような村の景色を一望できる場所や、四季折々の美しい花が見れる場所、トレーナーなら涎が出てしまうような珍しい木の実の生える場所、冷たい水がこんこんと湧き出る泉の場所を知っていたりする。
こういうシーンは好きですね〜(笑)
作中世界に引きこまれていくというか、なんと言うか。 ……後に使われるシーンの舞台や設定なんかも、ちゃっかりアピールしちゃってるし(笑)
> やってくるだけで、雨。
> おそらくこの神社はホウエン神話の"青いほう"に属しているのだ。
> 研究者としてのツキミヤはそう分析した。
豊縁昔話の世界とリンクする、物語の決定的な最初の一コマ。 ……前の絵も影響はあったけど、やっぱりここでのインパクトの方がずっと強い気がします。
天候変化の予兆が空に兆し、風の香りが少し変わったような感じでしょうか。
> 吐き捨てるようにナナクサは言った。
> ナナクサもこんな風に怒るのだ。今更ながら青年はそんなことを思った。
> ……今ならいい味がするかもしれない。
おいこら、ちょっと待て() ……などと、思わず突っ込みたくなる彼の感想(笑)
しっかりツキミヤどんです。 はい。 安心と信頼のカゲボウズシリーズ主人公。
> 「コウスケ、こういう場所はね、昔むかしの世界への入り口なんだよ」
>
> 売店で買い求めたアイスクリームをスプーンでつつきながら父親は言った。
> 甘い味が染みた木のスプーンを奥歯で噛みながら、そんな父の話を聞いていたのを覚えている。
此処も好きだっ!
親父さんとの大切な思い出と、彼が抱いていた純粋な職業への思い。 アイスクリームの甘い味は、今の主人公の境遇とを暗に比較させ、懐かしい中にもどこか翳りを帯びさせる――
……木のスプーンを奥歯に噛んでとか、昭和世代の郷愁を直撃するようなモン書きやがってぇ!!(笑)
> こんな時でも米の話か! こいつはどれだけ米が好きなんだ、と思う。
不覚にも(以下略)
このタイミングでこれはヒドイ。 笑うところじゃねぇから!(笑)
> それは、四つ足の獣の姿をしていた。
> その瞳は燃える夕焼け空のような紅。青白く輝く、鬼火の色にも似たその毛皮。身体よりも大きく映え、風にたなびくのは九本の長い尾。
> きつねポケモン、キュウコン。それも色違い、白銀の。
>
> ――コウスケ、こういう場所はね、昔むかしの世界への入り口なんだよ
>
> 一瞬の間。
> かつての少年の耳元で父親が囁いた気がした。
夢だと言うことは分かっています。 ……けれども心は呆然と佇む、幽玄な一幕。
今宵夢幻を生み出したるは白き獣。 古の昏き沼を抱く青年の耳に呟いた者は、果たしてこの日が来ることを予期していたのであろうか――
> 「そう、僕は今眠っていて、たぶん耳元でナナクサ君が舞台に出ろ出ろと囁いているに違いない」
>
> いやだなぁ。それってはたから見ると結構あぶない絵じゃないか。
待て待て待て待て。 なんと言うシリアスブレイカー発言……(爆)
いや、むっちゃ笑ったけどよ。
> 「形式とはいえ今は信仰が集まる祭の時期だからな。祭の本質は日常と切り離された特別な期間。ことに夜は格別だ。今や実体を無くし信仰の薄い私でもこうして誰かの夢を覗き見たり、夢枕に立つことくらいはできるのだ」
>
> ツクモは続けた。
> ここは私の夢であり、お前の記憶なのだ、と。
民俗学系の知識が覗くワンカット。
こう言うの大好物(嬉々) 知識と経験は物書きの最大の味方……!
> 「私の若いころは珍しいことではなかった。百を率いる一族の長なら人語くらい操れたものだ。今より昔、ポケモンと人はより近かった。始りの地の神話によればポケモンと人の間に垣根が存在せず夫婦の契りを交わすことすら自然だった時代がある」
> 「僕は断るけどね」
> 「同感だ。妻に迎えるなら美しい毛皮のある者がいい」
>
> 青年と妖狐は同意し、そしてお互いに微かに笑みを浮かべた。
意外と気が合うじゃん(笑)
突っ張りあって丁々発止と受け答えをしていると、結構こう言うシーンが出て来るんですよね。
でも、このネタ自体は物書きには非常に大事なソースなんすから、あんまり否定してはいけませんよ御二人さん()
> 「……皆、個を括るために名を使おうとする」
> 「え?」
> 「たしかに一族や種に名づけられる名はそうかもしれない。けれどね、一人や一匹や一羽だけの為だけにつけられる名はそうでは無いのだ。だから、軽々しく名乗ってはいけない。お前にとって名前とは大切な者に呼ばれるためにあるのだから」
> 「何が言いたい?」
> 「私のようにはなるなということだ、鬼火を連れし者よ」
>
> 重さを持った声でツクモは言った。
> 警告めいた言葉。けれどその後ろにあるものを今のツキミヤが読み取ることはできなかった。
このやり取りには思わず唸らされた。 今の所、全体を通しても三本指に入る位好き……!
自らが歩んだ道を仄めかす、古き産土神の静かな言葉。
過去の存在と通じ合うタイプの伝奇では、一番好みのパターンですね……
作者の世界観を垣間見るような味わいに共感を持った時ほど、読み手としては嬉しいもんも無いです(笑)
> 「出演報酬は豪華だぞ。米俵十俵と……」
> 「そんなもの持って歩けるか」
> 「それだけじゃない。副賞として、一年間ホウエン中のホテルが無料になるエメラルドカードという代物があるらしい」
>
> ぴくり、とツキミヤの肩が動く。
釣られた!(笑) ……結構世故に長けた神様だな。
米俵も、荷物用のモンスターボールに収納すれば大丈夫! ツキミヤどんの場合は、同居人(?)のお陰で一ヶ月持つか分からないが(爆)
> 「お前にならわかるはずだ。周囲の人間達は皆雨が降っているという。けれど、お前だけは本当の天気を知っている。だから、ずっと晴れていると叫び続けなければならない、その孤独が」
>
> 青年の脳裏に父親の姿がよぎった。
> 知ったようなことを言うな。お前に僕の、父さんの何がわかるというのだ。
周囲がみな酔っ払っている時、自分だけが醒めているのは妙なものです。 ……それは時として、命すらも失う可能性のある危険な行為。
けれども、それでも靡かず前に踏み出す旅人の生き様は、何時も我々の心を打つものです。
目に見えるものが全てではなく、残っているものが真実とも限らない。 ……歴史や通説とは、いつも残す者が描くものですから――
> 「私は思い出させてやりたい! 永きに渡り私を貶め、仮初の姿でしか私を知らぬ人間どもに。本来の神が誰であるかをを忘れた村人達に、私の炎を見せてやりたい!」
>
> 妖狐が夜空に吼える。
> 今この刻、抑えていた、たぶん何百年もの間溜め込んでいた何かが解き放たれた。
何故か激しく共感できるワンシーン。 ……何故でしょう?()
まぁ、鬱憤が溜まってるからお話書いてるんでしょうけどね。 自分は(爆)
「『文章に飢えた活字中毒者』は執念深く、怒りと憎しみに満ちた人物ですが、抱えた不満を文字にして叩きつける、悪魔的な習性を持っています。」(原文:HoI、『権力に飢えた扇動者』より)
> そう、僕はこの世界が嫌いだ。
> そうとも。父さんを棄てたこの世界など。
> みんなみんな燃えてしまえばいい、燃えてしまえばいいんだ。
具現化しとる……(汗)
なんかツキミヤどんが、Nのダークサイドみたく思えて来た今日この頃(爆)
……始まっちまったからには止められまい。 行き着くところに行き着くまでは――
> 選考会。ポケモンバトルという形のオーディションの舞台。
> その場所は土を盛り固めて作ったリングの上であった。
バトル…! バトルじゃああああ!!()
男も女も老いも若きも猫も杓子も、総員土俵に上がって乱れ打ち合うのj(強制終了)
> 発案者は知っていたのだろうか。相撲という神事の名を。
> もっともその発案者とやらはもうとっくに村にはいない人であるらしく、今となってはそれもわからない。
この世界では、『相撲』は神事のままなんでしょうな……この描写ですと。
個人的に相撲や柔道みたいなのは大好きです。 ……最近の不祥事が恨めしい(涙)
> それにネイティはタマエに貸し出し中だった。
> どういう訳だかタマエは出会った時から彼をいたくお気に召した様子だった。
> やはり宿を提供してくれた恩人にはそれなりのサービスというものをしなくてはなるまい。
> そしてサービスは現在も継続中なのである。
> もちろんサービス係の小鳥ポケモンにも青年自身がそれなりのアフターサービスをしなければならないだろうが……。
コレもワロタ。 ……管理人さんと言い『プレゼント』の586さんと言い、緩急のつけ方が絶妙なんだよなぁ。
ネイテーは大事にしましょう。 アフターケアは寧ろ喜びです(笑)
> と言って軍配団扇を上げると、ディグダも真っ青になりそうな程の恐るべき速さで土俵際に退散した。
> まともに炎技を喰らいたくないからである。
ぬお!? 神聖なる土俵で何たる体たらく!
カエセェ!モドセェ! プロとしての誇りは無いのかぁ!?()
……とは言ってもまぁ、普通の人間は逃げますよね(笑) 丸焼きとか御免ですし。
> もちろんこんな行為はルール違反である。だがそれを行司に訴える手段は子犬ポケモンにありはしなかった。野生を無くし感じる力が鈍感な人間達はこのトリックに気付けない。
仕方ないさガーディ君…… 人は残念だけど、もう君達とは違う世界に生きているんだよ()
> 「いやあ、いざとなったら君を負かした優勝者以下とそのポケモンの食べるものに下剤でも仕込んで、君を繰り上げ当選させようかと思っていたんだ。裏の山に生えてるキノコにすごいのがあるんだよ」
いや、本気で笑えんから(汗)
ナナクサ君は普段の態度が態度だから、こう言うことになるとやっぱり変な迫力と説得感がある(苦笑)
> 「繰り上げ当選させるんじゃなかったの? 今ならたった三人やるだけでいい。君の負担も軽いぞ」
> 「何のことを言っとるんじゃ」
> 「集団食中毒で収穫祭が中止になる話」
> 「なんじゃそりゃ?」
>
> 意味が分からないという顔をタイキがして「冗談だよ」と、ツキミヤは言った。
おみしゃんも引っ張らない(笑)
……ある意味ヒスイ君は、敗北によって毒飼いから免れたんだよなぁ……(汗) まぁ、目的自体は同じだったけども。
第八話の誤字と思われる部分
ツキミヤの皮肉がわかっているのかわかっていないのか、ナナクサはそのようにまとめた。『。』
> 取った。その影がはっきりと現れたその瞬間、バクーダの背中にある火山が噴火した。
> 炎を司るポケモンに炎は大したダメージを与えられない。だが、質量を伴ったマグマであればどうだ。岩や鉱物をふんだんに含んだ熱い土砂をぶつけるのであれば。それは高威力の打撃技を当てることと同等の意味を持つ。いくら炎ポケモンとはいえこいつの直撃を食らえば無事では済まない。バクーダは勝利を確信する。
ここは良かったですね〜。 『噴火』と言う技の性質と模様を、きちんと目に見える形で描写なされてる。
裏付けがはっきりとしていますから、単なる技の撃ち合いなんかとは比べ物になら無いぐらいの、リアルな味わいがありました……!
結の形も実にお見事です。 良いお手前で…!
> 湧き出した影達が黒く禍々しいオーラの玉をいくつも発生させる。
> それが霧の発生源に向かって何十発も、何十発も打ち込まれた。
> 濃い霧で対象ははっきりとは見えない。が、熱をもったそれはのだいたいの位置を掴むことはできた。これだけの数を打ち込めば無傷ということはあるまい。
戦いは数だよ、アニキ!
なんという民主主義戦法。 ……これが持てる者の力というヤツか(爆)
実に酷いやり方だとつくづく思う(苦笑)
> ツキミヤは挑戦的な台詞を吐く。だが、柔らかい笑みは崩さなかった。その顔はまるでどんな場面でも変わらない表情の能面のようでもあった。面の下の素顔がどんな表情をしているのかは誰も知らない。
常人は非日常を演ずる為に面を被る。 ……しかし彼は、日常を演ずる為に面を被っている。
それを嘆くよりも、その運命を心の中で弄びながら。
けれどもその心の奥底にあるものを、誰も見ようとはしない。 そしてまた彼自身も、それを決して見せようとはしない。
ある意味九十九こそが、彼が初めて出会った共感者なのかもしれませんな。
> 「懐いている? ナナクサ君が僕に?」
> 「気が付かなかったかい。あの子は、コースケ以外を呼び捨てでは呼ばないよ」
これ好きです。 ……まぁ、今はまだ全てが見通せた訳ではありませんから、一概にこの雰囲気に飲み込まれていいのかは分かりませんけど――
> 弱々しい灯かりの周りを羽虫が舞う。
> 人口の灯かりを月の輝きと勘違いした小さな命は、月を追おうとしてぶつかっては弾かれ、また弾かれて、けれど月を目指すことをやめようとしない。
時折挟まれる、この手の小文。
必要に応じ抜かりなく挟み込むことによって、物語の完成度は飛躍的に高まるものですが……そのタイミングを見極めて適時適切に加えて行く難しさは、並大抵のものではありません。
これぞまさしく技量の賜物。 お見事にして、羨ましい限りですな……(笑)
> 彼女は急いで袋の中身を精米機に飲み込ませると、その場を立つ。
> だが、持ち場を離れ、彼女が家の外に飛び出した時、すでに青年の姿は消え失せていた。
> 置き去りにされた精米機だけがごうんごうんと物欲しそうに音を響かせていた。
この回も終わり方は実に良く纏まってて……(汗)
次に待つ波乱を予期させる、含みのある沈黙。 ……精米機の唸りだけが残る風景は、タマエさんの心情を良く表してて、実に良い感じです。
……ただ、実際に精米機を使ってる側としては、連続使用をしてる時に一気に中身をぶちまけると、「詰まっちまうぞ」と突っ込みたくなって困ったり(笑 爆)
> 銅鐸がもう五度ほど動いた。彼はもうひと睨みされたような気がした。
>
> 「すすす、すみませんっ」
>
> 年経た銅鐸に気圧されて若者は矢倉からそそくさと退散していった。
さすがは第四世代の対戦環境を風靡した銅鐸様。 名も無き力自慢など眼力で十分()
まぁ、実際アレに睨まれたらかなり怖そうだよね。
> それから数分ほど経過しただろうか、ツキミヤが指差した先を見てナナクサは驚いた。農村の夜空に謎の飛行物体が現れてこちらに近づいてきたからだ。ゆらゆらと左右に旋回しながら近づいてくるそれは未確認飛行物体――UFOのそれに見えなくも無かった。
>
> 「なんてこった。コウスケは違う星の人間だったのか」
待て待て待て待て(二回目) どーしてそーゆー結論に達する!?
思い出したように飛んで来るギャグ。 対戦での先制技見たいな割合ですが、ギャグが好物な自分にとっては何よりの馳走です(笑)
> 「ああ、あとね、最後にオーバーヒート喰らってもカゲボウズが倒されずにいたのは、ドータクンの特性をスキルスワップしておいたからなんだ」
>
> スキルスワップ。ポケモン同士の特性を入れ替えるトリッキーな技。
> いつのまにかツキミヤはナナクサとは反対方向を向いて、そう解説していた。
此処までの展開や仕掛けは、ある程度予測しやすかったのですが……この最後の一手はしてやられました。 こいつはハタと手を打った……(汗)
ドータクンと言うポケモンをフルに使った物語構成に、改めて敬服した一瞬ですね。 良い仕込みをやってくれたもんだよ。ったく(笑)
> 「あーっ、お前は決勝のジャポニカ種!」
>
> と叫ぶ。
> トレーナーは怪訝な顔をした。
突っ込まん、突っ込まんぞ…! とか思いつつも、やっぱ上げてしまう(笑)
ナナクサさん良い仕事し過ぎ……
なんか見返してみると、結構長くなってますので……取りあえずは、一旦此処で切って置きまする。 ちょっと時間も怪しい感じですし(汗)
さて、残り半分はどうグダってやろうかしら(笑)
では。 また後編にて…… 一旦失礼致しまする〜