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  [No.675] 第1話「誕生! 奇跡の七色戦士! 前編」 投稿者:akuro   投稿日:2011/08/31(Wed) 09:06:15   32clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 これは、ポケモンだけが暮らす世界で起こった奇跡の物語。

 空は曇り、木は焼け焦げ、地面はひび割れた見るも無残な広い荒れ地を、赤い体に黄色い首周りの毛……1匹のブースターが走っていた。肩でハアハアと息をして、汗だくで今にも倒れそうだ。

 「……くそっ」

 その後ろを、かなりの速さで3匹のグラエナが追いかけてきていた。その目は血走っていて、見るからに普通の状態でないことが分かる。

 「グルルル……待てぇ!」

 「ま、待ってたまるかよ……!」

 ブースターはそう言うが、後ろからどんどんグラエナ達は追いついてくる。 

 そして1匹のグラエナの鋭いキバが自分に遅いかかろうとしたその瞬間、ブースターは覚悟を決めた。

 ーーもう、ダメか……!






 その時だった。

「ううううおおりゃああああ!」

 その叫びと共に、空から激しい「かみなり」がグラエナ達に降り注いだ。

 グラエナ達は「ぐわぁ」や「ギャア」と言いながら地面に倒れ、ブースターは突然目の前に現れたポケモンに驚き、目を見開く。

 「だ、誰だ……?」

 目の前には、自分と同い年くらいに見える黄色いトゲトゲのポケモン……サンダースがいた。

「自己紹介は後だ! オイ、これ食え!」

 そう言ってサンダースはブースターに、体力回復効果があるオレンのみを放り投げた。ブースターはすぐさま口に含み、噛み砕いた。

「早く逃げるぞ!」

「ムグ……て、ちょ!?」

 サンダースはそう言って、まだオレンを飲み込めていないブースターの手を握ると、ものすごい速さで駆け出した。

 ブースターには周りの景色が風の様に早く過ぎていくように感じた。

「オ、オイ! 速すぎる! ちょっとスピード落とせ!」

「あ? これでも普段の8分の1だぜ!」

「8分の1!? これがか!?」

 これの8倍なんて体験したら摩擦で体が燃え上がりそうだ、と感じていたブースターは目の前の光景を見て驚き、叫んだ。

「うわあ! おまっ、前見ろ前!」

「ああ? 前がどうし……って、おわあああ!」


 その叫びと共に2匹は足を滑らせ、盛大な水しぶきと共に橋の掛かっていない川に転落した。

 ブースターはひっしでもがく。

「お、おい! どうすんだよ! オレ水苦手なんだよー!」

「オイラに言われても知るか! こんなとこにある川が悪い!」

「川のせいにすんな! ……ゴボッ! み、水が……」

「おい! しっかりしろ! 誰か助けてくれー!」

 サンダースはブースターを抱えながら叫んだ。




 川の上流でその叫び声を聞いた者がいた。

 「なんかうるさいわね……行ってみましょうか」

 青い体に青い尻尾のポケモン……シャワーズはそう呟くと、下流に向かって泳ぎ初めた。




「……」
 
 少女が見たのは、溺れかけているブースターと、それを必死で助けようとしているサンダースだった。


「あ、オイそこのシャワーズ! 助けてくれ!」

 サンダースがシャワーズに呼びかける。ブースターの方は首の毛に水が入り、その重さで今にも沈みそうだ。

 「……とにかく、助けなきゃいけないみたいね」

 少女はそう呟くと、巨大な波を操る「なみのり」を繰り出し2匹を岸辺へと押し上げた。

 「……ぐぇっ!」
 ブースターはまだ辛うじて意識があったようで、地面に激突してうめき声をあげた。

 「うわっ! おい、もっと優しくやれよ!」

 サンダースの方は自慢の脚力で綺麗に宙返りし、スタッと地面に着地した。

 「はあ……助かったんだからいいじゃない」

 「よくねーわ!」

 ギャーギャーと2匹が騒いでいると、遠くの方から先程のグラエナ達の声が聞こえてきた。

 「……ヤバッ! おいお前ら! オイラについてこい!」

 「「……はい?」」

 サンダースが何故かキメ顔でそう言うと、2匹の声がハモッた。ブースターは大分復活していて、シャワーズの方は陸地に上がっていた。

 「いいから早く!」

 サンダースはそうまくしたて、走りだした。

 「おい、まてよ!」

 「なんなのよあんた!」

 2匹も急いで後を追う。

 「だから速いって! スピード落とせ!」

 「ちょっと! 乙女に全力疾走させないでよ!」

 「うるっせー! つべこべいわずに走れー!」

 3匹は騒ぎながら、近くの森へと消えていった。


  ……後編に続く!


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