大掃除の最中に古新聞とか手紙類とかも整理していたら見覚えのある物を引っ張り出してしまった。自分のアルバムとかそんなんじゃなくて、ついこの間の写真だけど。
うわーこれは、焼却処分すべきだろうなぁ。黒歴史だ、間違いなく。思い出すのも恥ずかしい。あの時の格好が悔やまれる。
ハロウィンのシーズンあたりで菓子を寄越せとうるさいゴーストポケモン共に大量購入した怨念飴をばらまいていたらゲンガーが友達を連れてきた。
さて、どんなポケモンやらと思ったら、なんかもじもじしてないか。その、雪女、じゃないユキメノコ。照れ屋さん?へー。飴いる?どうぞ。
まぁいらっしゃい。ゆっくりしていって・・え、何?私に用事?はぁ、なんでしょう。
ゲンガーが翻訳。『コンテストに一緒に出てください』すっごい可愛らしい文字で書いてあるけども、えーと。
どゆこと?
このユキメノコ、何かのきっかけで見たポケモンコンテストに憧れがあって、どうしても出たい!・・と思い詰めているらしい。
いや、それなら普通にトレーナーを見つけて出れば良いんじゃないか、とも思ったけどそれってある種賭けだよなぁ。いや、案外コンテスト会場近くでトレーナーの近くに行けば・・まぁ、部外者があれこれ言える立場でもないか。
で、私と。まぁ、確かにゴーストホイホイ体質のおかげかこうやって通訳できるポケモンもいるし、事情も分かるもんなぁ。
しかし、その、私は自分のポケモンを持ったこともないし、バトルは愚かコンテストなんてやったことないぞ?いいの?
・・・『私も初めてだからお互い頑張ります。よろしくお願いします!』・・ですか、すっごい真っ直ぐな眼差してこっち見てるよ。あー弱ったな。私は目立つの嫌だし・・。
ほら、コンテストってテレビ放送なんだよね・・。あれだよ、後からテレビ見たよーって注目とかされるのが嫌なんだよ。
悪いけど他を当たって・・ほしいんだけど・・・なんでゲンガ―までそんな目で見るんだよ。嫌なんだからしょうがないじゃないか。こればっかりは曲げないよ。
『一生のお願いです!一度だけ、一度でいいんです!お願いします!』・・の横に『こっちからもお願い。なんならここにいるゴーストポケ達から署名を集めたっていい』と脅迫まがいのゲンガ―の意見。
そんな目で見るな。私が悪役見たいじゃないか。わかった、分かったってば!一回だけだよ!
で、とりあえず館の本棚をあさると『必勝!コンテスト攻略』なる古臭い本が見つかった。今から本屋に買いに行くのもあれだし、とりあえずこれを参考にするか。
えーと、まずはどんな技が使えるのか聞いてみる。ゲンガーが書いた紙には。
『吹雪 怪しい風 ギガインパクト 氷の飛礫』
あれ、なんか明らかに変なの混ざってないですか。ギガインパクトって・・野生で覚えるの?
・・・そんなあからさまにもじもじされても困るんですが。まぁ。いいや。深く追求しない方がよさそうだ。
本によると『第一審査をまずクリア―するために!コンボ技を決めろ!』・・あー、コンテストって一次と二次があるのか。テレビに長いこと映りたくないから一次落ちを目指せばいいわけね。
と、ゆーわけでコンボは決めない方向で。・・・そんな目をするなよ―。第一コンボって何。わからん。
コンボの前にそれぞれがどんな感じの技なのか披露してもらった。正直な感想、すげぇ寒かった。あと迫力があった。そんくらい。
プロってどうやってコンボとやらを決めてるんだ・・。本にはお手本らしきコンボ、があったが残念なことにユキメノコに応用できそうなもんは見当たらなかった。つーか、よく分からんかった。
本人にこうしたいとかそういうのがあるのかと聞いてみる。
『こ、個人的になんですが!最初に怪しい風で氷の飛礫を巻き込んだ後吹雪でこうぱあっと持って上がってギガインパクトでフィニッシュが良いです!』
じゃあ、考えるの面倒だからそれでいいや。ていうか、本人ちゃんとイメージできてんじゃん。私はお飾りだもんなぁ。うん、安心。本は燃えるゴミに出そう。
コンテスト当日。初参加なんですが、と受付で行ったらカードを作ってくれた。エントリーに間にあってとりあえずホッとする。
・・で、この衣装の数は何だ。テレビに出てくるコーディネーターって派手だよな―衣装自前かなーと思っていたらここで借りられる・・もとい、強制的に着せられるらしい。
あんな派手なドレス着たくない。が、後ろでスタッフさんが物凄い笑顔で待ち構えている。怖い、これは、ちょっと、すごい怖い。逃げたい。ユキメノコまでビビっている。
結局、着せられたのはドレスではなく軍服みたいな・・えーと、まぁよく分からん。感想を聞いてみる。『超イケメン!』byゲンガー。『すごく格好良いです』byユキメノコ。やっぱりそーゆー方面でしか褒められんのか、私の容姿は。
顔を出したくない、といって見るとマスクを手渡された。・・・これってあれだよな、なんかの有名なオペラに出てくる奴じゃねぇ?まぁ、顔バレするよりマシだし。どうせ一次だけ出てすぐ帰るし。
番号が呼ばれた。それじゃあ行きますか!
我ながらこのいで立ちにファントムマスクは痛い。痛すぎる。破り捨てようかと思ったけども、それもまたあれだよなぁ。写真をしまう。
結局の所、演技が終ったあとに結果を確認せずにさっさと荷物をまとめて帰ったのちに、新聞に『仮面のコーディネーター失踪 〜仮面の怪人の噂〜』という謎の見出しで記事を飾ってしまうのを見つけてしまい大騒動になるんだけども、また別の思い出。
「さて、仕事に戻るか」
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余談 コンテストの話はアニメ寄りです。ゲームの奴は正直難しいと思う。
【後二体!】
【好きにしちまえ】