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  [No.4067] VS 妖精閃光(マジカルシャイン) 投稿者:あきはばら博士   投稿日:2018/02/15(Thu) 20:28:26   125clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 なんでこんなことになったのか……。
 アンジュは頭を抱えたかった。
 次の大会に向けて練習をしようと野良バトルの募集を掛けていたところ、捕まったのがこの男。

 赤紫色のテカテカピチピチの密着度が高めのボディスーツを身に着けて、さらにそこには何かを勘違いしたような、子どものオモチャみたいな金ピカの装飾品が付属している。
(ダセェ……)
 というのが素直な感想。さらにヤバイのはそこに青黒いマントである。いまどきマントってなんだよ。
「はじめまして、俺はドラゴン使いのターフェ」
 うんうん、ドラゴン使いは知ってる、見れば分かる。かつてトレーナージョブ名鑑で一際異彩を放っていた、密着度の高いクソダサスーツ+マント姿のレア職業、こんな格好で道を歩くなど罰ゲームじゃないかと「いや、こんなヤツいるわけねぇだろww」「だよねーww」と友達と盛り上がっていたのが懐かしい。
(いたよ……)
 本当にいたよ。
 トレーナージョブとはトレーナーの年齢・性別・バッチ数・資格などで名乗ることができる称号である。それぞれに推奨される服装はあるが、守る必要はない。例えば私のジョブ名は『ミニスカート』だがミニなんて履いてないし、短パンを履いてない短パン小僧も多い。ブリーダーやドクターなど名乗るために資格が必要なジョブもあり、多分だけどドラゴン使いを名乗るというのは一種ステータスだろうし、普通では入れない場所も入れるかもしれない、だからと言ってあんな恥ずかしい服を着る必要は無いと思うのに。
 うわ、なんか股間がちょっともっこりしてる。見たくないけど。
「シングル、1対1でいいかな?」
「あ、はい」
「ソナリ、任せた」
 彼は私の心境など露にも気にしてないようで、ジャラランガを出してきた。
「うーん、出番よ ローヌ」
 私はドラゴンタイプに強い手持ちはいなかったので、ロズレイドを出した。


 ▲  ▲  ▲  ▲


「アンジュです、対戦よろしくお願いします」
 お互いにポケモン出し終えたので、ミニスカートのアンジュはとりあえず、対戦の挨拶をした。
「うむ、ではっ! 逆鱗(さかさうろこ)に懸けて勝利を誓う!」
 彼は自らの口上と共に、くるっと体を反転して自らのマントをアンジュに見せつける、マントの後ろには、▼を3つ組み合わせた、ちょうどトライ〇ォースをひっくり返したデザインの紋章が描かれていた。
「【逆鱗狩り】のターフェ、いざ参る!」
 そして顔だけこっちを見て、笑顔で前歯がキラーン。
 そこでアンジュの腹筋が崩壊した。
 突然入ってしまった笑いのツボに、口を押えて必死に踏みとどまるがもうだめだ、口元がによによして耐えられない。個性的な服に、まさかの二つ名を名乗ってくるという衝撃、そこにもっこりした股間がちらっと見えて、さらに自爆。
「竜の舞だ」
「くっ、ふふ……ぐっ、あっ待って」
 お互いにポケモンを出して、名乗り合った時点で、残念ながら戦いは始まっている。こうして体調の不良を訴えて相手が油断したところを騙し討ちにする悪どい手法も横行しているため、このように多少の様子がおかしくても手加減は無用である。
 竜が空中で旋回する様子をイメージしたと言われる、妖しい円を描くような踊りを始めるジャラランガ。
 動きの激しい踊りにあわせて鱗が打ち鳴らされて、じゃらんじゃららんと優美な響きを奏で始める。
 練度と完成度の高い舞だからこそ起こる、その音色には嘆賞の一つくらいは残したい出来映えだったが、あいにく腹筋がそれどころじゃない、いっそのことこのまま地面に転がって、気が済むまで心置きなく笑い転げてしまえばすっきり収まるだろうと思うのだが、もどかしい、こうして無理に我慢するから笑いも増幅されるため、堪えれば堪えるほど呼吸ができない。
「くく、うう、ロ、ローヌ。マジカルシャイン」
 先ほどから主人の様子が気になってしょうがなくて、後ろをチラチラみていたロズレイドだったが、主人に戦闘続行の意思があったので、意を決して身体に力を溜めて、[マジカルシャイン]を放出する。
「ソナリ、舞いながら、ラスターリフレクト」
 ジャラランガは目を閉じて、竜の舞の動きをそのままに、その全身の鱗が鏡のように輝き出す。そこに聖なる閃光が当たると、キラキラとその光を乱反射させて、光輝きながら舞い踊る。マジカルシャインの閃光を浴び……いや閃光を跳ね返しながら[りゅうのまい]を踊り続けた。
 ラスターカノンのワザの原理とは『鋼の表面の光の反射力を利用して、その光を操作して攻撃する』という手順が行われている。ジャラランガはラスターカノンの一部を利用して、受けた光を吸収せずに反射させて弾くという手段でマジカルシャインのダメージを受け流しているのだ。

 笑いが急だったこともあってか、アンジュの笑いは波が引くようして急に収まり、ようやく腹筋に平穏が訪れて、落ち着きを取り戻していた。彼女は思い出し笑いをしないように必死に真顔で、目の前の状況を見る。だが、眩しすぎてよく見えない。
 フェアリー技はジャラランガに効果抜群であり、照射系の全体攻撃なので目を瞑ったり耳を塞いだり横に逃げるなどで防御できるワザではないため、回避が困難である。またバトルフィールドを埋め尽くす眩い閃光に目がくらんで、今がどういう状況になっているのかがまるで把握できてなかったが。着実にダメージは通っているものだとアンジュは思っていた。

 戦局が動いたのは2回分のマジカルシャインの照射を終えたところ、トレーナーのアンジュの眼が慣れてきて、さすがに何かがおかしいと気付いた時だった。状況を確認するべくワザを止めて、ロズレイドは次の動きに備えて呼吸を整える。
 ターフェはこの瞬間を待っていた。機は熟した、腕を横にきって、指示を下す。
「――逆鱗 解放」
『ヴォオオオオーーーーーン!!!』
 ジャラランガは舞を止め、劈(つんざ)く雄叫びをあげて、禍々しい赤いオーラを纏わせる。咆吼に併せてジャラランガの鱗が細かく共鳴し、響きを鳴らす。
 そして両腕をダランと垂らし、湧き上がる[げきりん]のオーラに包まれながら、脱力をする。
「備えながら、牽制、マジカルリーフ」
 アンジュはマジカルリーフで牽制しながら、相手の様子を窺うことにした。
 有効打を与える抜群技がこれしかないとはいえ、効きの悪そうなマジカルシャインを使い続けるのは得策ではないだろう、ここは攻め手を変えてみようと彼女は思った。ジャラランガの特性には防弾と防塵があり、それぞれボール状の攻撃と粉の効果を無効にするものになっている。エナジボール・ヘドロ爆弾・シャドーボール・眠り粉などは効かないものだとして立ち回らなければならない。今後の展開に柔軟に対応できるように、片手でも扱える使い慣れたワザを撃って様子をみる。
「突撃」
 ターフェの指示を聞いて、ジャラランガはカタパルト発進のごとく、ロズレイドに突貫する。
 身構えていたロズレイドはひらりと回避する。 
「(指示が届いた?)」
 アンジュは驚いた。先ほど指示を出して相手が発動しているワザはげきりんのはずだ、花びらの舞と同様にあのジャラランガはトレーナーの指示など聞かずに暴れ回るはずだ。

 ドラゴンポケモンは高い潜在能力を持っている。普段はそれを無意識に制御しているが、そのリミッターを意図的に外すというワザがげきりんである。
 だが、げきりんのワザを使うとドラゴンポケモンはその自らの強すぎる力に振りまわされて、正気を無くして暴れ回り、やがて疲れて動きを止めて混乱してしまう。
 だが、もしも――
 そのげきりんを正気を失わない程度に制御して、リミッターをギリギリまで開いて制御することが出来たとすれば…… ドラゴンの潜在能力をまるまる使いながら戦うことができる。
 ワザ『げきりん』を極めしドラゴン使い【逆鱗狩り】のターフェ、これがその神髄だった。

 げきりんのオーラを保ちながら、それでいてしっかりと相手の姿を見据えて攻撃を加えていくジャラランガ、格闘の竜というだけあり、そのフットワークは軽やかで、流れるように腕を振りおろしながら、すり足で相手への距離を一瞬で詰めつつ、拳を振り上げる。この静かなる逆鱗は、まるでまだ舞を踊っているようだった。
 対してロズレイドはイバラのムチを自在に使いつつ、巧みに相手の攻撃の回避と防御に徹しているが、反撃に移ることができず、防戦一方でジリジリと追い詰められていた。なにしろジャラランガの繰り出す一手一足に一度でもまともに当たってしまえば致命傷になってしまう。竜の舞に加えて逆鱗状態による身体強化が重なり、すさまじいスピードとパワーを持って叩き込まれる連撃を、ロズレイドは必死に捌くので精いっぱいだった。
 そうした攻防がしばらく続いた。


「……ん?」
 ジャラランガの動きが鈍り始めたことに、ターフェは気づいた。
「毒……? 毒びしか」
「……やっと効き始めたわね」
 ロズレイドは防御の合間に地面に少しづつ[どくびし]を撒いていた、地面を暴れ回るジャラランガは知らぬ間にそれを少しづつ踏み続けて体に毒が回っていたのだ。
 あの時に受け続けていたマジカルシャインのダメージは多少は減らすことは出来ていても、それでもすべてを跳ね返せたわけではない。しっかりと、確実にジャラランガの体力を奪い取っていた。そこに毒の蝕みが加わることで、さすがのジャラランガの動きも大きく削がれることになる。
 いまこそが反撃の時間だ。

「ローヌ! いくよっ」
 相手が毒状態の時において抜群の威力を叩き出すワザ『ベノムショック』
 条件さえ揃えばヘドロ爆弾すらも超える威力を誇る、ロズレイドのローヌのとっておきのワザである。
 アンジュとローヌは互いに呼吸を合わせて、そのワザを繰り出そうとする。
「ベノムシ」
「制限全開錠(リミット・フルオープン)っ!!」
『キュォォォォォォォォォォ!!!!』
 ターフェは叫んだ。
 金属を引っ掻くような甲高い吶喊と共に、禍々しくも燃え上がる赤い燈気に加えてさらに蒼い燈気が交じり合い、ジャラランガの体は妖しく燃え上がった。
 いままで途中まで開いていた逆鱗のリミッターをすべて外す。暴走を加速させて自我を完全に失い、これでもう勝負が決するまでトレーナーの指示も制止も聞かなくなる。
 ここまでの疲れも毒のダメージも何も感じなくなり、ただ目の前の存在に向けてまっすぐ突貫するだけ――。

 一度、ベノムショック攻撃の態勢に入ってしまったロズレイドはもう回避動作に入ることはできなかった。それでも[ベノムショック]で生成した特殊な毒液を使い、精一杯の防御でジャラランガの突貫を受け止めることになったが。
 本気の逆鱗の前に圧し徹されてしまい、ロズレイドは地に伏せた。


 ▼  ▼  ▼  ▼


「いい勝負だったね」
 対戦後、ドラゴン使いのターフェは私にそう挨拶をしてくれた。
 彼がボールから出したカイリューが、水筒のお茶を出してくれたので頂くことにした。
「ありがとうございます」
 【逆鱗狩り】のターフェ、逆鱗を狩る、ではなく逆鱗で狩るという意味の二つ名、ということなのだろう。
 強大なワザに強弱の制御を付けるという発想とそれを成し遂げる実力、たった一つのワザを取っても、勉強になる戦い方だと思えた。
「あの、……その服とマントですが」
「おっ このマントに目を付けてくれるとはお目が高い。これは普通の市販品のマントとは違う、龍の聖地フスベで認められたドラゴン使いにしか手に入らず着用が認められないマントなんだ。 カッコいいだろ?」
 本人はとても気に入っていたようで、ご丁寧に『カッコいいだろ?』に併せて決めポーズもしてくれた。
 横にいるカイリューちゃんも、それにノッてくれて一緒に決めポーズに参加している。
「…………」
「……そうか、まだ分からないか」
 たぶん、一生分からないような気がします。

 うーん……
 こうしてみれば、誇り高きドラゴンを扱うというプライドの元に、胸を張ってこうした衣装を身に纏っているわけで、
 案外この服もカッコイイのか――
 ……いや、やっぱり ダサいよなぁ

 ないわー


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

その昔、バトル企画に出したドラゴン使いのターフェ=アイトさんを登場させてみました。
逆鱗を極め、逆鱗しか使わない、逆鱗(さかさうろこ)に懸けて勝利を誓うダサいマントの男(2x歳)です。

名前の元ネタ紹介
・アンジュ→ロゼワインの産地
・ローヌ→ロゼワインの産地
・ソナリ→鈴がいっぱい付いた楽器

なにぃ ドラゴン使いを知らない? いかんいかん! これを見て勉強するのだ!
→ http://www.pokemon.jp/special/dragontype/master/index.html


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