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  [No.1200] 6.ツルのツジャータツタージャです 投稿者:焼き肉   《URL》   投稿日:2014/09/21(Sun) 16:05:44   61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:ツタージャ→ジャローダ

「ツジャータじゃなくて、ツタージャなんですか?」
「うん、そうだよ?」

 ベルさんは赤いメガネの奥にある緑の瞳を、ちょっと細めてうなずく。わたしは今のいままでツジャータだと
思ってた。

 後でワシボンの名前も間違えて覚えていたことに気がつくんだけど、それはまた別のお話。

 ツタージャ、ツタージャ……。

「ツタージャ、ツタージャ……」

 頭の中で唱えてから、口にも出してみると、たしかにそっちのほうがしっくり来るような気がした。ツジャー
タなんて言いにくくて嫌な感じ。何で間違えてたんだろう。

 ツタージャって名前が言いやすいのは、日常で使っている言葉と同じ響きを連想させるからだ。

「もしかしてツタージャのツタ、って植物のツタのことですか?」
「うん、そう。この子はね、少し育てれば「つるのムチ」って技を覚えるんだよ。一番早く覚える草タイプの技
が、ツルなんだよねえ。手よりもツルのほうが、器用に動くみたい」

 ベルさんの補足説明してくれたけれど、カントーの方で新人トレーナーがもらえる、背中に種を背負った草タ
イプのポケモンは、種をまく技を最初に覚えるらしい。名前がそのまま、行動とか姿を表してるんだね。ツター
ジャかあ。そういえば何となくこの子はハブネークとおんなじ感じがするけど、分類はヘビさんなのかな?
 
「ツタとヘビかあ……よし、あなたの名前は、ツル!」

 植物のツタは、ツルを伸ばして大きくなるもんね。わたしはツタージャ改めツルの入ったボールに向かって笑
ったら、ボールが怯えたように震えた。

 どうしたのかと思ったけど、後でツルはおくびょうな性格なのだとわかった。

 ○

 おくびょうで驚いてばかりのツルは負けず嫌いでもあったから、バトルに出すと自分より大きな体のポケモン
でもゆうかんに立ち向かっていった。そのおかげでツルは、まさに植物って感じにグングン成長していって、あ
っという間にジャノビーになっちゃった。

 かわいいけれど怖いキバを持ったメグロコを、ツルの首の後ろから伸びた蔓が容赦なくひっぱたく。効果抜群
の技に、たった一撃でメグロコは倒れた。

「ツルすごい! つのドリルみたいな一撃必殺だったよ!」

 砂漠の中に一人で立っているツルわたしが心からの拍手を送ると、ツルは当然って感じに、大きくなった体を
後ろにそらしていばるのポーズを取った。

 ツルはいばる覚えてないんだけどね。カッコよかったから、口を開けてのびてるメグロコのキバを見てひいっ
てなったのは見なかったことにしてあげよう。

 ○

 ジャローダになるころにはバトルの経験も積んでツルなりに自信をつけたみたいで、バトル中でもこう、貫禄
のようなものが出るようになった。

「ツル、やどりぎのタネ!」

 体からツルと同じ色のツル植物が伸びたかと思うと、先端に白いつぼみをつけ、咲かせ、あっという間に枯れ
て、大きな種を作り上げる。この間、わずか数秒。遠くの地方の森にいるという、時の神様がお手伝いをしてい
るみたいな早ワザだ。

 その種が、対戦相手のヒヤッキーに向かって飛んで行く。ヒヤッキーの体についた種は、さっきよりも速いス
ピードで体を伸ばし、ぐるぐるとヒヤッキーの体を覆う。

 みずポケモンだからか、心なしか他のポケモンに種を植えつけた時より成長スピードが早い気がする。気のせ
いだろうけれど。ヒヤッキーが一瞬ガクリと膝をつく。膝をつきながら彼女(彼?)は、いつも笑顔だけれど、
目の奥は闘志にメラメラ燃えている。

 相手トレーナーが指示を出した。笑顔の瞳がキラリと光る。ホースのように伸びたしっぽがツルを見る。フワ
フワのしっぽから、鉄砲のような勢いで水が発射された!

「ハイドロポンプ……!」

 わたしは奥歯を噛み締めた。くさタイプのツルに、水タイプのハイドロポンプはあまり効かないけれど、強力
な技が勢揃いな水タイプの技の中でも、最終兵器ともいえるこの技は、向こうがこっちと相性が悪いと言っても
油断できない。ただでさえこのあたりのトレーナーは強いのだ。

 直撃を受けたツルは、吹っ飛びそうになりながらもしっぽを地面に突き立てて耐えた。すごい勢いの水しぶき
がこっちにも飛んでくる。わたしのところに来る頃には威力は弱まっていたけれど、それでもあっちのレベルが
高いのもあって、結構なパワーが残ってた。

 髪の毛も服もずぶ濡れになって、踏ん張った足が濡れた地面に足を取られて転びそうになる。ツルもそれなり
のダメージを受けたみたいだけれど、流石はくさタイプの貫禄、まだまだ大丈夫そう。

 ヤドリギの植物がツルに持ってくるヒヤッキーの体力も、こっちを助けてくれる。
 
「よーし、ツル、ギガドレイン!!」 

 若草色の光球がヒヤッキーの体から飛び出てきて、ツルの長い体に入っていく。

 対抗して、もう一度ホースのしっぽがハイドロポンプを撃ってきた。

 だけどやどりぎとドレイン、二重に水から栄養を奪いとったくさタイプのツルは、元気に飛び跳ねてその攻撃
をよける!

 当然こっちに来た流れ弾を、わたしも間一髪でよけたけれど、一瞬髪がかすった。鉄砲水に引っ張られてちょ
っと痛い。

 日よけの水を被ったサンバイザーの位置を直しながら、わたしはツルに向かって叫んだ。

「もういっちょ、ギガドレイン!!」

 それで勝負がついた。やどりぎに巻きつかれたまま、ヒヤッキーの体が地面に向かって倒れる。

 ……それにしても。わたしが頼んだんだけど、結構怖いバトルの仕方かも。このやどりぎとドレイン戦法、相
性さえよければ結構一方的にのしちゃうことも出来るから、ツルもお気に入りみたい。

 これをやってる時のツルも怖い。さっきから「フシャシャシャシャシャ!」とか笑い声が止まってない。まさ
に女王さま。ツルはツタージャにはちょっとめずらしい、女の子だったからね。男の子だったら王さまになるの
かなあ。

 なんて考えてたら、通りすがりのヤンヤンマが高笑いしてるツルに直撃した。

 すっかり成長したツルなら、ちょっとたいあたりされたくらいじゃ全然痛くないと思うんだけど、ツルは「フ
ジャー!!!」って少しチョロネコっぽい感じの叫び声をあげた。タイプ的に虫ポケモン自体が怖いっていうの
はわかるんだけど……。

 ああ、女王さまになってもおくびょうなのは相変わらずなんだなあ。


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